JP5526565B2 - 転炉製鋼法 - Google Patents

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Description

本発明は、転炉製鋼法に係わり、特に、Cu含有量が多い低品位の鋼スクラップを製鋼用鉄源の一部として多量に使用して得た溶銑(以下、スクラップ溶銑という)と通常の高炉からの溶銑(以下、高炉溶銑という)とを混合した合わせ湯を転炉へ装入し、溶鋼を溶製する操業中に、Cu許容量が厳しい溶鋼(例えば、0.03質量%以下)を溶製するチャージが複数介在しても、通常の高炉溶銑とのさらなる合わせ湯で、それまでに行っていたスクラップ溶解炉や転炉の円滑な操業を継続可能とする技術に関する。
近年、鉄鋼製品の多様化及びそれらの利用量が増加するに伴い、鋼スクラップの発生量が著しく増大している。ちなみに、わが国の粗鋼生産量は年間9000万トン前後で推移しているが、所謂「市中屑」と称する社会循環の鋼スクラップだけでも、その発生量は粗鋼生産量の大略45重量%に達しようとしている。従来、市中屑の鋼スクラップは、材質的に要求が厳しくない普通炭素鋼、例えば土木・建築用材料としての棒鋼や小型形鋼を、電気炉で溶製する際の製鋼用鉄源として再利用されていた。また、量的には少ないが、高炉からの溶銑(以下、高炉溶銑という)を転炉で酸素精錬し溶鋼となす一貫製鉄所でも、熱源として電力を使用せずに、転炉内に装入した高温の高炉溶銑上に装入・溶解し、製鋼用鉄源の一部に再利用していた。
ここで、転炉での鋼スクラップの装入量が少ないのは、熱源を電気とする電気炉と異なり、転炉では高炉溶銑の顕熱及び酸素吹錬による炭素、珪素の酸化熱を熱源としているので、炭素や珪素の含有量が低い鋼スクラップを多量に添加すると、熱量不足で溶解できなくなるからである。ちなみに、転炉操業で鋼スクラップを高炉溶銑に添加できる量は、最大でも15質量%程度が上限であった。この装入量の上限も、最近は転炉での精錬負荷の軽減の観点から転炉装入前に高炉溶銑の脱珪、脱燐及び脱硫するような所謂「溶銑予備処理」が普及したので、転炉に装入された時の高炉溶銑中の炭素、珪素、燐の含有量が少なく、そのために熱源が不足し、10質量%程度へとさらに低下する傾向にある。そこで、省エネ、省資源が強く叫ばれている今日では、コストの高い電力を使用せずに、多種多用な鋼スクラップを従来よりもっと大量に使用して、転炉へ装入する製鋼用鉄源としての溶銑を容易に製造するプロセスの開発が望まれていた。
一方、製鋼用鉄源としての溶銑に含有されるFe以外の成分元素には、製品鋼材に含まれると好ましくないものがあり、製品鋼材の種類に応じた溶鋼を得るには、不要な成分元素を溶銑予備処理や転炉での精錬で低減、あるいは除去している。この傾向は、最近のように、製品鋼材の高級化が要求されている社会環境では、益々高まっている。
ところが、それらの不要な成分元素の中には、Ni,Cu,Sn,Zn等(トランプエレメントと称される)のように、溶銑予備処理工程や転炉工程での酸化を主体とする精錬手段では除去できず、製鋼用鉄源を転炉へ装入する前に、予じめ該製鋼用鉄源中のそれらの含有量を制限しなければならないものもある。一般に、市中屑と称する鋼スクラップは、そのようなトランプエレメントの含有量が多いので、その含有が製鋼用鉄源としての市中屑鋼スクラップの使用量増加を阻害する要因になっている。
そこで、この市中屑鋼スクラップの転炉製鋼における使用量増加という問題を解決するため、鉄以外の元素の含有量が高いスクラップ、又はそのスクラップと鉱石から溶銑を製造し、その溶銑成分を分析する第1工程、鉄鉱石もしくは鉄以外の元素の含有量が低いスクラップと鉄鉱石から溶銑を製造し、その溶銑成分を分析する第2工程、製造予定の鋼種に応じて許容される溶銑の化学組成範囲におさまるように(つまり、トランプエレメントの含有量を制限するように)、上記2つの工程で得られた溶銑の混合比を決めて、それらを合わせ湯する第3の工程とからなる銑鉄の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、鋼スクラップの大量使用だけでなく、製鉄所内の他の精錬工程で発生する高亜鉛含有ダストの処理をも可能にするため、縦型還元溶解炉を高炉と併設し、前記縦型還元溶解炉は鉄源として主にスクラップ(他に、高亜鉛含有ダストで製作した非焼成塊成鉱も配合)を使用しコークスと共に装入して溶銑を製造し、前記縦型溶解還元炉の溶銑中の不純物量を溶銑の単位量ごとに分析して製鋼工程で鋼種毎に要求される溶銑の不純物限界量と比較することにより、前記不純物限界量以下の溶銑になるよう前記縦型溶解還元炉の溶銑と高炉の溶銑とを混合して製鋼工程に供することを特徴とする銑鉄製造方法も開示されている(特許文献2参照)。
特開平5−9600号公報 特開平6−264120号公報
確かに、上記特許文献1及び2に記載の「銑鉄製造方法」を利用して溶鋼を溶製すると、電気炉を用いずに、転炉に装入できる製鋼用鉄源の原材料としての鋼スクラップの使用量は増加する。
しかしながら、例えば、Cu含有量が比較的高い0.1質量%程度の普通炭素溶鋼を連続的に溶製しているさなかに、「Cu含有量がかなり低い(例えば、0.03質量%以下)溶鋼の溶製を複数チャージする」という溶製オーダがあると、前記特許文献1及び2に記載の「銑鉄製造方法」では、そのCu含有量の低い溶鋼を溶製するために転炉へ装入する製鋼用鉄源の確保が質的にも量的にも安定した状態で行えなくなるという問題が生じる場合がある。つまり、それまでに行っていた縦型スクラップ溶解炉や転炉の円滑な操業を継続することに支障が生じるのである。
一般に、一貫製鉄所の高炉及び転炉は、それらの溶銑及び溶鋼の生産能力を予じめほぼある大きさに定めて運用されている。従って、ある時点での高炉溶銑の残銑量(溶銑鍋、混銑車あるいは貯銑炉等とかに保持して、以降の転炉での溶鋼溶製に備えて溶銑ヤード等に確保しておく)が、転炉での製鋼作業の進行状況に影響する。例えば、前記した特許文献1や2の技術を実施すると、次回以降の転炉での溶製に充当できる製鋼用鉄源は、前記縦型還元溶解炉でCu含有量の高い鋼スクラップで溶製されたものが、通常の高炉溶銑と既に合わせ湯され、転炉で低減できないCu含有量の高いものになっている場合には、それまでにCu含有量の低い高炉溶銑の残銑量が十分に確保されていないと、Cu含有のかなり低い溶鋼の溶製が要望されたとしても、その溶製にはすぐに応じられないからである。また、Cu含有量の高い鋼スクラップで溶製されたスクラップ溶銑の残留量が過剰になり、鋼スクラップを溶解する縦型スクラップ溶解炉の操業を中断あるいは停止しなければならない場合も生じる。
なお、トランプエレメントとしては、Cu以外にも、Ni、Cr、Sn等があるが、Ni,Crを含むステンレス鋼等の特殊鋼スクラップや、Snを含むブリキ・スクラップは、比較的容易に選別して通常の鋼スクラップと分離できるので、本発明では、特にCuを含有する溶鋼の溶製を対象としたのである。また、市中屑としての鋼スクラップの場合、Cuは、通常0.2〜0.4質量%含まれるが、転炉での酸素吹錬で除去できないので、Cu含有量が0.03質量%以下と低い溶鋼の溶製には、そのままでは製鋼用鉄源としての利用が難しい。
本発明は、かかる事情に鑑み、製鋼用鉄源にCuを含有する鋼スクラップを多量に利用して転炉操業を行っている途上で、0.03質量%以下とCu含有量のかなり低い溶鋼の溶製要求があっても、スクラップ溶解炉及び転炉のそれまでに行っていた円滑な操業を継続可能な転炉製鋼法を提供することを目的としている。
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
すなわち、本発明は、 高炉を備えた一貫製鉄所の転炉で複数鋼種の溶鋼を酸素吹錬により溶製する転炉製鋼法において、
前記高炉からの通常の溶銑(高炉溶銑と称す)を2つの溶銑保持容器へ分割して出銑し、その一つを待機させ、別の一つには、前記一貫製鉄所に設置したスクラップ溶解炉で鉄源にCuを含有する鋼スクラップを溶解して得た溶銑(スクラップ溶銑と称す)を出銑して第1の合わせ湯を行い、そのCu含有量を定量すると共に、
引き続いての転炉での溶鋼の溶製に際しては、溶製された溶鋼のCu含有量が許容範囲内に収まるように、前記第1の合わせ湯と前記待機させた高炉溶銑との混合重量比率を調整して第2の合わせ湯を行い、該第2の合わせ湯を製鋼用鉄源として転炉へ装入するにあたり、
現在転炉で溶製中の溶鋼よりも目標Cu含有量の低い溶鋼の溶製が要求された際には、予め演算による操業シミュレーションにより高炉溶銑の残銑量及び第1の合わせ湯の残留量を予測して、前記第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑の量が不足するかどうかを予測し、その予測結果に応じて、前記スクラップ溶解炉の鉄源をそれまでよりもCu含有量の低い鋼スクラップを装入する及び/又は第1の合わせ湯での高炉溶銑とスクラップ溶銑との混合質量比率を調整して高炉溶銑の残銑量を増大する操作を行うことを特徴とする転炉製鋼法である。
この場合、前記転炉へ装入した第2の合わせ湯に、さらに鋼スクラップを添加して酸素吹錬しても良い。
本発明によれば、高炉とは別途溶製したCuを多量に含有する鋼スクラップを溶解した溶銑を多量に利用しても、Cu含有量が低い高炉溶銑との合わせ湯を2回にわたって行うと共に、必要に応じて、予じめ操業をシミュレーションして製鋼用鉄源中のCu含有量をモニターするようにしたので、Cu含有量が0.03質量%以下の溶鋼の転炉での溶製を、それまでに行っていたスクラップ溶解炉及び転炉の円滑な操業を乱すことなく、安定して継続できるようになる。
本発明に係る転炉製鋼法で使用する製鋼用鉄源としての第2の合わせ湯を説明する模式図である。 従来の転炉製鋼法で使用する製鋼用鉄源としての合わせ湯を説明する模式図である。 本発明で利用する操業シミュレーションの一例を示す図である。
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の最良の実施形態を説明する。
まず、発明者は、「Cu含有量が0.08質量%程度の通常の普通炭素溶鋼を複数チャージ溶製しているさなかに、溶製オーダの変更があり、Cu含有量がかなり低い(例えば、0.03質量%以下)溶鋼の溶製が複数チャージ必要になった場合、該低Cu含有溶鋼を溶製するために転炉へ装入する製鋼用鉄源の確保が質的にも量的にも安定した状態でできなくなる」という前記従来技術の問題点は、それらの技術が、図2に示すように、合わせ湯を2つの形式の異なる炉(図2では、高炉1及び縦型スクラップ溶解炉2)からの出銑時に1回しか行わないことにあると考えた。すなわち、転炉(図示せず)で溶製する溶鋼が許容されるCu含有量だけに着眼して高炉溶銑との1回限りの合わせ湯で製鋼用鉄源を準備しても、高炉1からの出銑量(出銑速度)に制限がある以上、Cu含有量の低い高炉溶銑(記号:BF1)が不足し、溶製オーダに充当する製鋼用鉄源が量的にあるいは質的に必ず確保できなくことが生じるからである。
そこで、発明者は、Cu含有量が0.08質量%程度の通常の普通炭素溶鋼を複数チャージ溶製しているさなかに、溶製オーダの変更があり、Cu含有量がかなり低い(例えば、0.03質量%以下)溶鋼の溶製が複数チャージ必要になった場合、予じめ待機させてある高炉溶銑を有効に利用すれば、溶製オーダに充当する製鋼用鉄源を確保できると考えた。
つまり、図1に示すように、前記高炉からの通常の溶銑(高炉溶銑と称す)を2つの溶銑保持容器へ分割して出銑し、その一つを待機させ、別の一つには、該高炉に併設したスクラップ溶解炉で鉄源にCuを含有する鋼スクラップを溶解して得た溶銑(スクラップ溶銑と称す)を出銑して第1の合わせ湯を行い、そのCu含有量を定量する。Cu含有量の定量は、第1の合わせ湯後の溶銑の分析によって行っても良いし、スクラップ溶解炉で得られた溶銑のCu含有量を分析しておき、第1の合わせ湯における高炉溶銑との配合比に基づいて計算で求めても良い。
なお、第1の合わせ湯を行うに際しては、スクラップ溶銑及び高炉溶銑のそれぞれのCu含有量に基づき、両者の混合質量比率を定めれば良い。そして、転炉(図示せず)での溶鋼の溶製に際しては、溶製する鋼種毎にその目標Cu含有量と前記待機させた第1の合わせ湯中のCu含有量とを比較し、転炉吹錬後の溶鋼が前記Cu含有量の許容範囲内になるように、さらに前記第1の合わせ湯と前述の別途待機させてある通常の高炉溶銑(記号:BF2で示す)とを混合する第2の合わせ湯をしてから、該第2の合わせ湯を製鋼用鉄源として転炉へ装入し、酸素吹錬するようにしたのである。
ここに、別途待機させる溶銑は、溶銑鍋や混銑車等の溶銑運搬容器内、あるいは混銑炉等の製鋼工場に付随する貯銑設備において待機させる。溶銑運搬容器内で待機させる場合は、製鋼工場の溶銑ヤード、製銑工場から製鋼工場に至る軌道上や待機線路、あるいは溶銑予備処理設備の待機線路などに待機させることができる。製鋼工場での溶銑段取りに迅速に対応するには、製鋼工場の溶銑ヤードに待機させるのが好ましい。また、待機させる溶銑は、高炉で出銑したままの状態でも構わないが、転炉での精錬負荷を考慮すると、溶銑予備処理を行って、予備脱硫や予備脱燐をしておくことも好ましいことである。
本発明で使用するスクラップ溶解炉は、低コストのエネルギー源でスクラップを溶解できるキュポラ等の縦型スクラップ溶解炉(シャフト炉ともいう)が好ましい。縦型スクラップ溶解炉では、コークスとスクラップを炉上より装入し、炉下部から吹き込まれる熱風でコークスを燃焼し、その燃焼熱でスクラップを溶解すると共に、コークス中の炭素が溶銑中に浸炭することによって、高炉溶銑に近い炭素含有量の溶銑を得ることができる。このため、高炉溶銑と合わせ湯した際に、その後の転炉精錬を、高炉溶銑のみを溶銑として使用する精錬とは操業条件を大きく変更せずに行うことができる。
なお、第1の合わせ湯中のCu含有量の分析が必要な場合には、それは、例えば溶銑ヤードでの待機中に行えば良い。また、溶鋼の溶製に使用する転炉は、上吹き、底吹き及び上底吹きのいずれの方式であっても良く、酸素吹錬自体も、従来から行われているあらゆる転炉製鋼方法に従ったものが利用できる。
次に、Cu含有量が例えば0.4質量%と比較的高い鋼スクラップを鉄源としたスクラップ溶銑を使用した第1の合わせ湯で、上記した本発明に従い第2の合わせ湯を行って、Cuの含有許容量が0.03質量%と低い普通炭素溶鋼を溶製すると、高炉溶銑の残銑量は確実に減少する。一般に、転炉で溶製する溶鋼中のCu含有量は、通常材用溶鋼が0.08質量%、厳格材用溶鋼が0.03質量%、最厳格材用溶鋼が0.01質量%である。それ故、最厳格材用溶鋼のCu含有量は0.01質量%と通常の高炉溶銑のCu含有量とほぼ等しいので、該溶鋼を溶製するには十分な量の高炉溶銑の残銑が必要になる。例えば、3チャージの最厳格材用溶鋼を収容能力290トンの転炉で溶製するには、少なくとも3×290トン=870トンの高炉溶銑を確保しなければならない。従って、それまでに繰り越されている残銑が十分な量確保されていない場合には、上記したように、それまでに行ってきた縦型スクラップ溶解炉や転炉の円滑な操業を乱して、操業の中止や停止を生じる可能性がある。
そこで、発明者は、上記した本発明だけではまだ本願の目的達成には不十分で、さらなる改良が必要と考え、引き続き検討を行った。その結果、溶製する溶鋼のCu含有量を仮定すると共に、前記した残銑量及び第1の合わせ湯の残湯量をそれぞれ定義する下記(1)、(2)式を利用した操業シミュレーションを演算で行えば、
高炉溶鋼の残銑量(t)=今回の溶鋼溶製までの繰越量+前回と今回との溶製間での生産量−今回の溶鋼溶製で第1及び第2の合わせ湯に消費される量 ・・(1)
第1の合わせ湯の残湯量=今回の溶鋼溶製までの繰越量+前回と今回との溶製間での発生量−今回の溶鋼溶製で第1の合わせ湯として消費される量 ・・(2)
転炉で溶鋼を溶製する際に使用できる高炉溶銑の残銑量を事前に知ることができ、それまでに行っているスクラップ溶解炉や転炉の円滑な操業を乱さずに転炉操業ができるようになると考えた。
つまり、発明者は、スクラップ溶解炉や転炉の円滑な操業が乱れる事態に至る前に上記高炉溶銑の残銑量を十分に確保する方法を考え、その方法を本発明としたのである。その方法とは、操業中に高炉溶銑の残銑量を、上記した操業シミュレーションを用いて、溶鋼の溶製開始時期より前にモニターするものである。
具体的には、上記した本発明に係る転炉製鋼法での操業中に、現在転炉で溶製中の溶鋼よりも目標Cu含有量の低い溶鋼の溶製が要求された際には、予め前記した演算による操業シミュレーションを行い、前記第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑の量が不足するかどうかを予測し、その予測に応じて前記スクラップ溶解炉の鉄源をそれまでよりもCu含有量の低い鋼スクラップを装入する及び/又は第1の合わせ湯での高炉溶銑とスクラップ溶銑との混合重量比率を調整するの操作を行って、高炉溶銑の残銑量の増量を図るものである。
ここで、「前記スクラップ溶解炉の鉄源をそれまでよりもCu含有量の低い鋼スクラップを装入する」とは、例えば、スクラップ溶解炉の鉄源にCu含有量が0.4質量%の鋼スクラップを使用して操業していた場合には、操業の途中からCu含有量を0.3質量%とそれ以下にした鋼スクラップに変更することを意味する。なお、鋼スクラップのCu含有量をどの程度にするかは、本発明では、特に限定するものではない。その時に確保してある残銑量とか、第1の合わせ湯中のCu含有量とかによって判断すれば良いからである。
また、「第1の合わせ湯での高炉溶銑とスクラップ溶銑との混合質量比率を調整する」とは、例えば、それまでに高炉溶銑が140t/hと、スクラップ溶銑を70t/hとで第1の合わせ湯を行っていたのを、操業の途中から高炉溶銑の使用量を35t/hに減少させることである。さらに、本発明では、上記した「縦型スクラップ溶解炉の鉄源にそれまでよりもCu含有量の低い鋼スクラップを装入する」及び「第1の合わせ湯での高炉溶銑とスクラップ溶銑との混合重量比率を調整する」の2つの操作を併用しても良い。
このような操作を行うと、いずれの操作でも、結果として高炉溶銑の残銑量が増加するようになり、Cu含有量の低い溶鋼の溶製に必要な第2の合わせ湯に回せる高炉溶銑が確保できるようになるからである。ちなみに、鋼スクラップのCu含有量を0.4質量%から0.3質量%に低下させた上記例では、1チャージの溶鋼溶製当たりで、高炉溶銑の残銑量が72トン増加するし、高炉溶銑の混合比率を変更した場合には、例えば上記例でも、高炉溶銑の残銑量が140−35=105t/hも増加する。
前記の操業シミュレーションは、それによって高炉溶銑の量が不足すると予測された場合には、スクラップ溶解炉に装入する鉄源をCu含有量の低いものに変更する及び/又は第1の合わせ湯における高炉溶銑とスクラップ溶銑の混合質量比率を調整するアクションにその結果を活用するために行うものである。したがって、そのようなアクションが、転炉において溶製しようとするチャージでのCu含有量の目標値を達成できるように、転炉装入時の溶銑のCu含有量の低減に間に合わなくてはならない。
したがって、溶銑の混合質量比率だけを調整する場合は第1の合わせ湯の所要時間、第1の合わせ湯完了から第2の合わせ湯場所までの溶銑の移送時間、第2の合わせ湯の所要時間、スクラップ溶解炉で装入する鉄源をCu含有量の低いものに変更する場合は、上記所要時間にさらに装入したスクラップが溶解して溶銑として出銑し、所望の量の溶銑が得られるまでの時間をこれに加えた時間を最低限の余裕時間として考慮し、少なくともこの余裕時間分だけ前もってシミュレーションを行う。
また、本発明では、転炉へ装入した第2の合わせ湯上に、さらに別途準備した鋼スクラップを添加して酸素吹錬しても良い。Cu含有量に許容値がない溶鋼を溶製する場合には、Cu含有量に余裕があるので、転炉での鋼スクラップの使用量を増加する手段として従来から行われていた該鋼スクラップの転炉内への投入、溶解を利用するのが省資源の上で有効だからである。
一貫製鉄所に設けたスクラップ溶解炉2の原材料ヤードに、Cu含有量を0.1質量%毎に層別した鋼スクラップを多種準備した。該スクラップ溶解炉2としては、塊状のコークスが充填され、下部に設けた羽口より熱風を吹き込み、コークスを燃焼して高温を発生させると共に、炉頂より前記鋼スクラップを装入して溶解し、炉下部に設けた排出口より間欠的に抜き出す操業を行う縦型スクラップ溶解炉を利用した。この炉の生産量は、70t/hであり、該炉より抜き出された溶解物は、炉内で浸炭されて鋼から銑と変化している。ちなみ、該スクラップ溶銑のCuの含有量は、ほぼ原料として装入した鋼スクラップの含有量に対応している。
本発明では、そのスクラップ溶銑は、併設の高炉で通常の操業を行って得られた高炉溶銑を70〜210トン程度受け入れた溶銑鍋に出銑し、該高炉溶銑との第1の合わせ湯を行う。なお、高炉溶銑のCuの含有量はほぼ0.01質量%程度である。従って、第1の合わせ湯のCu含有量は、多くの場合、高炉溶銑でかなら希釈されたものになる。また、第1の合わせ湯が含有することになる他の成分は、必然的にスクラップ溶銑と高炉溶銑の重量比率から定まる。
このような第1の合わせ湯が、その降に行われる転炉での製鋼用鉄源の主体となるが、本発明では、転炉で溶鋼が溶製される前に、溶製する溶鋼の許容されるCu含有量になるように、前記第1の合わせ湯に対してさらに高炉溶銑を加えて第2の合わせ湯を行うのである。つまり、第2の合わせ湯は、Cu含有量を変えた鋼スクラップを使用して第1の合わせ湯のCu含有量を変更したり、加える高炉溶銑の量を変更して、転炉で溶製される溶鋼のCu許容量に応じえる製鋼用鉄源となり、転炉へ装入して酸素吹錬されるようになる。
かかる本発明の具体例として、以下に、溶銑(Cu含有量:0.01質量%)の出銑速度が454トン/時間(以下、記号のt/hとする)の高炉、Cu含有量が0.4質量%と高い鋼スクラップを鉄源とし、コークスを熱風で燃焼した熱で該鋼スクラップを溶解、浸炭してスクラップ溶銑とする、出銑速度が70t/hの縦型スクラップ溶解炉、ヒートサイズ290トン(以下、記号:tとする)の転炉を備えた一貫製鉄所での操業を説明する。なお、この場合、高炉溶銑の出銑に際しては、2つの溶銑保持容器を準備し、その一つは、残銑として溶銑ヤードに待機させ、他の一つで第1の合わせ湯を行うのである。
まず、通常の高炉操業で得た高炉溶銑(記号:BF1)の140t/hと、縦型スクラップ溶解炉で0.4質量%の鋼スクラップを炭素の燃焼熱で溶解、浸炭して得たスクラップ溶銑(記号:SH)の70t/hとで第1の合わせ湯を行なう。その結果、第1の合わせ湯中のCu含有量は、0001×140+0.004×70=0.294 (t/h)となり、Cu濃度は、(0.294/210)×100=0.14質量%になる。
高炉溶銑の生産速度は454t/hで、第1の合わせ湯をした高炉溶銑の量は140t/hであるから454−140=314トンの高炉溶銑が残銑として残ると共に、その残銑のCu含有量は、314×0.0001=0.0314t/hである。
この場合、第1の合わせ湯及び残銑の全体平均でそれら湯のCu濃度は、(0.294+0.0314)/(210+314)×100=0.062質量%になる。つまり、この事実は、通常の普通炭素溶鋼のCu含有量が0.08質量%程度であるので、その溶製にCu含有量が0.4質量%の鋼スクラップを鉄源としたスクラップ溶銑を製鋼用鉄源に利用しても何ら問題が生じないことを示唆している。
そして、転炉でCuの含有許容量が0.08質量%の溶鋼を溶製する場合に行う第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑(BF2)及び第1の合わせ湯の量は、それぞれ下記2式を連立させて解けば求められる。
BF2のCu濃度×BF2の質量(x)+第1の合わせ湯のCu濃度×質量(y)
=溶鋼の質量×溶鋼のCu濃度 ・・(3)
BF2の質量(x)+第1の合わせ湯の重量(y)=溶鋼の重量 ・・(4)
ちなみに、この場合は、
0.0001x+0.0014y=290×0.0008 ・・(3)´
x+y=290 ・・(4)´
であり、第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑BF2の質量は133.8t/hで,使用する第1の合わせ湯の質量は156.2t/hとなる。つまり、転炉に装入される製鋼用鉄源の量としては、133.8+156.2=290トンで、第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑の質量t比率が46.1%、第1の合わせ湯の質量比率が53.9%となり、前記した高炉溶銑の生産速度454t/hから第1の合わせ湯に回す高炉溶銑140t/h及び第2の合わせ湯に用いる高炉溶銑133.8t/hの質量を差し引いても、180.2t/hと高炉溶銑が十分に残留することが明らかである。
このように、Cu含有量が0.4質量%と高い鋼スクラップを鉄源とした溶銑をかなりの量使用しても、本発明のように高炉溶銑との第2の合わせ湯を行うと、Cu含有許容量が0.08質量%と比較的高い普通炭素溶鋼を、それまでに行っている転炉や縦型スクラップ溶解炉の円滑な操業を何ら乱すことなく、溶製できることが明らかである。
なお、転炉操業は、タップ(出鋼)〜タップの平均時間が33分程度の場合、ほぼ1時間に1.8チャージの製鋼用鉄源が必要である。この例では、高炉溶銑及び縦型スクラップ溶銑の発生量が454+70=524t/hであるのに対して、製鋼用鉄源の必要量は、290(t/チャージ)×1.8チャージ=524t/hと一致しており、十分にCu含有量が0.4質量%と十分に高い鋼スクラップを使用し、転炉操業が円滑に可能である。
次に、以上のような0.08質量%のCu含有量の普通炭素溶鋼に代え、溶製の対象をCu含有量が0.03質量%と低い溶鋼とした場合の例を説明する。
この場合も上記と同様に、通常の高炉操業で得た高炉溶銑(記号:BF1)の140t/hと、縦型スクラップ溶解炉で0.4質量%の鋼スクラップを炭素の燃焼熱で溶解、浸炭して得たスクラップ溶銑(記号:SH)の70t/hとで第1の合わせ湯を行なう。従って、第1の合わせ湯中のCu濃度は、0.14質量%である。ただし、第1の合わせ湯及び残銑の全体平均でのCu濃度は0.062質量%であるので、この事実は、Cu含有量が0.03質量%の溶鋼を溶製した場合には、第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑の量が大幅に増加し、残銑量が減少することを示唆していた。
そこで確認のため、転炉でCu含有許容量が0.03質量%の溶鋼を溶製する場合に第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑(BF2)及び第1の合わせ湯の量を、上記と同様にそれぞれ下記式で求めた。
0.0001x+0.0014y=290×0.0003 ・・(3)´´
x+y=290 ・・(4)´´
その結果、第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑BF2の質量は244.4t/hと増加し,第1の合わせ湯の質量は44.6t/hに減った。つまり、転炉に装入される製鋼用鉄源としては、244.4+44.6=290(t/h)で、第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑の質量比率が85%、第1の合わせ湯の質量比率が15%となり、前記した高炉溶銑の生産速度454t/hから第1の合わせ湯に回す高炉溶銑140t/h及び第2の合わせ湯に用いる高炉溶銑244.4t/hの質量を差し引くと、高炉溶銑の残留量が69.9tとかなり少なくなる。
しかしながら、Cu含有量が0.4質量%の鋼スクラップを原料に使用したスクラップ溶銑の利用でも、本発明によれば、Cu含有量が0.03質量%の溶鋼を、それまで行っていた転炉や縦型スクラップ溶解炉の円滑な操業を乱すことなく行えることが確認できた。
なお、上記した本発明の具体例では、縦型スクラップ溶解炉へ鉄源として最初に装入する鋼スクラップとして、Cu含有量が0.4質量%のものを使用したが、本発明では、その含有量に限るものではなく、0.4質量%超えのものや以下のものであっても良い。鉄源である鋼スクラップ中のCu含有量を増減したり、第1の合わせ湯を行う際の高炉溶銑とスクラップ溶銑との混合比率や第2の合わせ湯を行う際の高炉溶銑と第1の合わせ湯量との混合比率の変更で対処が可能であれば、いかなるCu含有量であってもかまわないからである。
次に、本発明では、必要に応じて、高炉溶銑の残銑量や第1の合わせ湯の残留量を、操業シミュレーションを行ってモニターしながら操業する。それにより、溶製オーダの変更があっても、操業シミュレーションの結果で高炉溶銑の残銑量や第1の合わせ湯の残留量を予測し、第2の合わせ湯に必要な高炉溶銑の量を確保でき、それまでに行っていた縦型スクラップ溶解炉及び転炉の円滑な操業を乱すことなく、安定して継続できるようになるからである。
その操業シミュレーションをした結果の一例を図3(a)及び(b)に示す。この図3(a)は、転炉で溶製する溶鋼のCu濃度をチャージ毎に順次示したもので、横軸の経過時間、つまり,チャージが終了したタップ時点(出鋼時点)の値を仮想したものである。そこでは、Cu含有量が0.08質量%の通常材用溶鋼と0.03質量%の厳格材用溶鋼がほぼ交互に溶製され、たまに0.01質量%の最厳格材用溶鋼が溶製されている様子を示している。なお、実際の転炉操業においては、製鋼用鉄源の準備の都合上、最厳格材溶鋼を最大でも6チャージ以上集中的に溶製することはないので、5チャージに制限してある。
この仮想の転炉での溶鋼の溶製操業に対して、溶銑ヤード4に確保してある高炉溶銑の繰越し残銑量を3000トン(通常の操業では、ほぼ含有量が0.01質量%の最厳格材用溶鋼が10チャージ分だけ溶製できるに相当する量を確保しておく)ある時点から、前記(1)〜(4)式を利用してシミュレーションの演算を開始し、得られた結果が図3(b)である。なお、演算には、プロセス・コンピュータを利用した。
図3(a)及び(b)の操業期間の前半によれば、上記した本発明を実施すると、鋼スクラップのCu含有量が0.4質量%のスクラップ溶銑との合わせ湯を使用しても、Cu含有量が0.03質量%の溶鋼を問題なく溶製できることが明らかである。しかしながら、操業期間の後半に示すように、Cu含有量が0.01質量%以下の最厳格材用溶鋼の溶製が連続的に複数チャージ介在して行われると、ある時点で第2の合わせ湯に必要な高炉溶銑の残銑量が欠乏して(図3(b)では、120時間経過後に高炉残銑量(BF)がマイナスを示す)、転炉での溶製が継続できなくなることが明らかである。
そこで、発明者は、このような事態に至らないように、モニター結果に基づき、鉄源にCu含有量が0.4質量%の鋼スクラップを使用して操業していたのを、操業の途中から「Cu含有量が0.2質量%の鋼スクラップを使用して、スクラップ溶銑のCu含有量を低下」させて、第1の合わせ湯に必要な高炉溶銑の使用量を減らすと共に、それまでに高炉溶銑が140t/hと、スクラップ溶銑を70t/hとで第1の合わせ湯を行っていたのを、操業の途中から高炉溶銑の使用量を35t/hに減少させるという「第1の合わせ湯での高炉溶銑とスクラップ溶銑との混合質量比率を減少する」の2つの操作を行って高炉溶銑の残銑量を増やし、最厳格材用溶鋼の転炉溶製時には、その5チャージ分(ほぼ1500トンの高炉溶銑の残銑量に相当)の製鋼用鉄源を確保するようにした。その結果、溶製のあった5チャージのCu含有量が0.01質量%の溶鋼が溶製でき、その後に0.08質量%の普通炭素溶鋼の溶製に戻すことができた。
1 高炉
2 縦型スクラップ溶解炉
3 溶銑保持容器
4 溶銑ヤード

Claims (2)

  1. 高炉を備えた一貫製鉄所の転炉で複数鋼種の溶鋼を酸素吹錬により溶製する転炉製鋼法において、
    前記高炉からの通常の溶銑(高炉溶銑と称す)を2つの溶銑保持容器へ分割して出銑し、その一つを待機させ、別の一つには、前記一貫製鉄所に設置したスクラップ溶解炉で鉄源にCuを含有する鋼スクラップを溶解して得た溶銑(スクラップ溶銑と称す)を出銑して第1の合わせ湯を行い、そのCu含有量を定量すると共に、
    引き続いての転炉での溶鋼の溶製に際しては、溶製された溶鋼のCu含有量が許容範囲内に収まるように、前記第1の合わせ湯と前記待機させた高炉溶銑との混合重量比率を調整して第2の合わせ湯を行い、該第2の合わせ湯を製鋼用鉄源として転炉へ装入するにあたり、
    現在転炉で溶製中の溶鋼よりも目標Cu含有量の低い溶鋼の溶製が要求された際には、予め演算による操業シミュレーションにより高炉溶銑の残銑量及び第1の合わせ湯の残留量を予測して、前記第2の合わせ湯で必要な高炉溶銑の量が不足するかどうかを予測し、その予測結果に応じて、前記スクラップ溶解炉の鉄源をそれまでよりもCu含有量の低い鋼スクラップを装入する及び/又は第1の合わせ湯での高炉溶銑とスクラップ溶銑との混合質量比率を調整して高炉溶銑の残銑量を増大する操作を行うことを特徴とする転炉製鋼法。
  2. 前記転炉へ装入した第2の合わせ湯に、さらに鋼スクラップを添加して酸素吹錬することを特徴とする請求項1記載の転炉製鋼法。
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