JP5526564B2 - 転炉製鋼法 - Google Patents

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Description

本発明は、転炉製鋼法に係わり、詳しくは、転炉へ装入する製鋼用鉄源の主体に、高炉で得た通常の溶銑(以下、高炉溶銑と称す)と、竪型スクラップ溶解炉で鉄スクラップを主原料として得た溶銑(以下、スクラップ溶銑と称す)とを併用して、溶鋼を製造する技術に関する。
近年、鉄鋼製品の利用量が増えるに伴い、その用済みになった老廃棄物である所謂「鉄スクラップ」の発生量が増加している。この鉄スクラップ(実際には、炭素含有量が0.17質量%より低い鋼のスクラップであることが多いが、慣習として鉄スクラップと称する)の再利用方法としては、熱源に電力を用い、アーク式電気炉で溶解して溶鋼を得る際の鉄源に使用するのが一般的であった。また、高炉、転炉及び各種圧延機を備え、溶銑から鋼板等の製品までを連続して生産可能な所謂「一貫製鉄所」においても、高炉溶銑を転炉へ装入して酸素吹錬により溶鋼を溶製する際に、転炉内に前記鉄スクラップを投入・溶解し、製鋼用鉄源の一部として利用することも行われている。
一方、高炉溶銑の主原料たる鉄鉱石の産出国は、資源立国の見地より、最近、その価格を大幅に値上する傾向にあり、高炉溶銑の製造原価が著しく上昇している。また、世界中で地球温暖化対策の見地より、大気へのCO放出量の低減が強く叫ばれている。このような状況下にあっては、転炉に装入する製鋼用鉄源として、鉄スクラップを今までよりも一層多く使用することが期待される。鉄スクラップは、鉄鉱石に比べて鉄含有量が多いので、鉄源としての利用効率が良いばかりでなく、炭素(記号:C)の含有量が少ないので、製鋼工程での大気へのCOの放出量の低減を可能とするので、地球環境にとって好ましいからである。
ところが、転炉への鉄スクラップの投入には量的な制約がある。熱源を電気とする電気炉製鋼と異なり、転炉精錬では溶銑の顕熱及び溶銑が含有する炭素、珪素の酸化熱を熱源とするので、温度が常温と低く、且つ炭素、珪素の含有量が少ない鉄スクラップを投入すると、炉内での該鉄スクラップの溶解が遅くなったり、溶け残りが生じ、その操業に支障が生じるからである。ちなみに、転炉操業での鉄スクラップの使用量は、従来、高炉溶銑に対して15質量%程度が上限であったが、この上限は、溶銑予備処理の普及した最近では、高炉溶銑の炭素、珪素等の酸化熱を発生する元素が低減しているので、10質量%程度へと低下する傾向にある。
そこで、転炉製鋼における鉄スクラップの使用量増加という課題を達成するため、転炉内に鉄スクラップを直接投入して溶解するのではなく、従来は主として鋳物用溶銑の溶製に多用されていた竪型スクラップ溶解炉を利用し、熱源をコークスとして溶解、浸炭し、製鋼用鉄源としての溶銑とする技術が考えられる。その方が鉄スクラップの利用量増加が安定して行えるからである。ここで、スクラップ溶銑の組成は、高炉溶銑と異なり、使用する鉄源としての鉄スクラップの組成に依存して種々変化するので、一律的には定まらない。ただし、炭素(記号:C)含有量は、炉内での浸炭によってほぼ飽和溶解度に近い濃度となっており、溶鋼ではなく溶銑の範疇にある。
この竪型スクラップ溶解炉の代表的なものとしては、炉頂部から塊状の鉄源(一般に、主として鉄スクラップ)及びコークス等を同時若しくは交互に装入し、炉下部に設けられた複数の羽口から熱風を吹き込み、コークスの燃焼熱で鉄源を溶解し、鋳物用溶銑を製造する「キュポラ」と称する炉が利用できる(例えば、特許文献1参照)。図2に該キュポラの構造を模式的に示すが、それは、高炉の構造に類似して、炉頂から下方に原料装入部1、炉下部の周囲方向に適当な間隔で設けた複数の羽口2、該羽口2に熱風(600℃以上)を供給する熱風管3、排ガス6の出口4及び溶銑7の出口(出銑口5という)を備えている。このキュポラの大きさに本質的な制限はないが、実質的に操業上で有利なサイズとして、従来より羽口位置での炉内径が2〜4m程度、炉高が6〜10m程度で、出銑量が500〜2000トン/日程度のものが建設され、稼動している。
また、このような竪型スクラップ溶解炉を用い、製鋼用鉄源としての溶銑を溶製する技術も既に開示されている。例えば、鉄以外の元素の含有量が高いスクラップ、又はそのスクラップと鉱石から溶銑を製造し、その溶銑成分を分析する第1工程、鉄鉱石もしくは鉄以外の元素の含有量が低いスクラップと鉄鉱石から溶銑を製造し、その溶銑成分を分析する第2工程、製造予定の鋼種に応じて許容される溶銑の化学組成範囲におさまるように、上記2つの工程で得られた溶銑の混合比を決めて、それらを合せ湯する第3の工程とからなる銑鉄の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。さらに、鉄スクラップの大量使用だけでなく、製鉄所内の他の精錬工程で発生する高亜鉛含有ダストの処理をも可能にするため、竪型還元溶解炉を高炉と併設し、前記竪型還元溶解炉は鉄源として主にスクラップ(他に、高亜鉛含有ダストで製作した非焼成塊成鉱も配合)を使用しコークスと共に装入して溶銑を製造し、前記竪型溶解還元炉の溶銑中の不純物量を溶銑の単位量ごとに分析して製鋼工程で鋼種毎に要求される溶銑の不純物限界量と比較することにより、前記不純物限界量以下の溶銑になるよう前記竪型溶解還元炉の溶銑と高炉の溶銑とを混合して製鋼工程に供することを特徴とする銑鉄製造方法も開示されている(特許文献3参照)。
確かに、上記特許文献2及び3に記載の「銑鉄製造方法」を利用して溶銑を溶製すると、転炉に装入できる製鋼用鉄源としての鉄スクラップの使用量は増加する可能性が大きい。
特開2007−131929号公報 特開平5−9600号公報 特開平6−264120号公報
ところが、前記特許文献2及び3に記載した「銑鉄製造方法」では、転炉で溶鋼を溶製する際に、場合によっては、転炉へ装入する製鋼用鉄源の確保が質的にも量的にも安定した状態で行えないという問題が生じる。
その原因の一つは、既存の竪型スクラップ溶解炉のサイズが高炉と大きく差があるため、両者の溶銑生産速度(出銑速度)が大きく異なることにある。例えば、出銑速度が454トン(記号:t)/時間(記号:h)の高炉と、出銑速度が70t/hの竪型スクラップ溶解炉とを併用して操業し、溶銑を280t収納できる取鍋(転炉の1ヒートの操業を280tで行う)を利用して操業する場合、まず高炉から取鍋に1400℃で210tの高炉溶銑を受けてから、その取鍋を竪型スクラップ溶解炉の出銑口に移動し、該溶解炉の出銑を行なって70tのスクラップ溶銑を受けて合せ湯して転炉用鉄源にすると、高炉溶銑の受銑開始からスクラップ溶銑の出銑終了まで約1時間40分程度を要する。そのため、転炉へ装入する製鋼用鉄源の温度は低下して、その凝固点温度に近くなり、転炉での円滑な操業を行うことに支障が生じるのである。
また、出銑速度の小さいスクラップ溶銑を内容積が70t程度と小さい取鍋に受けて予じめ確保しておき、前記210tの高炉溶銑に注入して合せ湯することも考えられるが、この場合、小さい取鍋は比表面積が大きく、放熱が大きいので、スクラップ溶銑の温度降下が大きくなり過ぎ、その使用に支障が生じる。
さらに、竪型スクラップ溶解炉で溶製した溶銑の成分上の特徴として、スクラップ溶銑中の硫黄(記号:S)の含有量(濃度ともいう)が平均0.08質量%と、高炉溶銑の平均0.03質量%より高い。これは、竪型スクラップ溶解炉では、鉄源の違いで高炉に比べてスラグ比(溶銑1トンを溶製する際に形成されるスラグ量)が少ないことや、熱源として鋳物用コークスを使用するため、スクラップ溶銑と接する雰囲気の酸素分圧が高く、該スクラップ溶銑中の硫黄濃度が高くなるからである。そのため、高炉溶銑とスクラップ溶銑とを合せ湯する際には、前記した溶銑の温度降下に加えて、硫黄濃度についても配慮してそれぞれの量を決定しなければならない。勿論、両溶銑とも予備処理脱硫が施されるが、脱硫は高温で行うのが効率の上で好ましいので、そのためにも合せ湯を適切に行う必要がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、竪型スクラップ溶解炉及び高炉で溶銑をそれぞれ溶製し、製鋼用鉄源に従来よりも鉄スクラップを多量に使用しても、転炉操業を円滑に行うことの可能な転炉製鋼法を提供することを目的としている。
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
すなわち、本発明は、高炉を備えた一貫製鉄所の転炉で溶鋼を溶製する転炉製鋼法において、前記高炉から出銑した溶銑(高炉溶銑と称す)を受銑した2つ以上の溶銑保持容器のうち、受銑量が収容能力一杯の容器については、脱硫処理を行った後待機させ、受銑量が収容能力に満たない容器については、該高炉に併設したスクラップ溶解炉で鉄スクラップを溶解して得た溶銑(スクラップ溶銑と称す)を収容能力一杯まで追加受銑することで第1の合せ湯をしてから脱硫処理を行い、引き続いての転炉での溶鋼の溶製に際しては、前記第1の合せ湯と前記待機させた高炉溶銑との混合質量比率を、溶製する溶鋼の許容硫黄含有量範囲内に収まるように、それらの硫黄含有量に基づき調整して、第2の合せ湯を行い、該第2の合せ湯を主原料として転炉へ装入して吹錬することを特徴とする転炉製鋼法である。
この場合、前記受銑量が収容能力に満たない容器の高炉溶銑受銑量が、収容能力の1/4〜3/4であることが好ましい。さらに、前記スクラップ溶解炉が竪型スクラップ溶解炉であったり、前記高炉溶銑の脱硫処理及び第1の合せ湯の脱硫処理を、いずれも回転翼による機械攪拌方式で行うことが一層好ましい。
本発明によれば、スクラップ溶解炉及び高炉で溶銑を個別に溶製し、それぞれを合せ湯して転炉製鋼用鉄源にする際に、それらの混合質量比率を適切にして合せ湯を二度行うようにしたので、製鋼用鉄源に従来よりも鉄スクラップを多量に使用しても、転炉操業を円滑に行うことが可能になった。また、溶鋼中硫黄濃度のスペック外れが起きる頻度が著しく減少した。
本発明の内容を説明する模式図である。 典型的な竪型スクラップ溶解炉の構造を示す側面図である。
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の実施形態を説明する。
まず、発明者は、上記課題が生じる原因を追究した。そして、その原因は、以下のような事情にあると結論した。つまり、一貫製鉄所の高炉及び転炉は、一般に、それらの溶銑及び溶鋼の生産能力を予じめほぼある大きさに定めて運用されており、量的な自由度があまりない。従って、前記した特許文献2や3のような高炉溶銑とスクラップ溶銑との合せ湯を1回しか行わない技術では、得られた合せ湯が次回以降の転炉での溶製要求に充当できる製鋼用鉄源に質的及び量的に満足できるものになっているとは限らない。例えば、前記竪型スクラップ溶解炉で溶製されたものが、通常の高炉溶銑と既に合せ湯され、転炉で低減できない硫黄濃度の高いものになっている場合には、硫黄濃度のかなり低い溶鋼の溶製が要望されたとしても、その溶製にはすぐに応じられない。
そこで、発明者は、課題の解決には、高炉溶銑とスクラップ溶銑との合せ湯を1回に限らず、少なくとも2回は行う必要があるという考えに基づき、本発明を完成させたのである。
具体的には、図1に示すように、高炉の通常操業で得た溶銑(高炉溶銑9と称す)を複数の溶銑保持容器10に分割して出銑する。次いで、収容能力一杯の容器10、例えば容器の容量の80%以上の量の溶銑を受銑した方の容器の方に脱硫剤(図示せず)を投入して所謂予備処理脱硫を行ってから待機させる。ここに、待機させる高炉溶銑は、溶銑鍋や混銑車などの溶銑運搬容器内、あるいは混銑炉などの製鋼工場に付随する貯銑設備において待機させる。溶銑運搬容器内で待機させる場合は、製鋼工場の溶銑ヤード、製銑工場から製鋼工場に到る軌道上や待機線、あるいは溶銑予備処理設備の待機線などに待機させることができる。製鋼工場での溶銑段取りに迅速に対処するには、製鋼工場の溶銑ヤードに待機させるのが好ましい。以下、この高炉溶銑を待機高炉溶銑11という。また、他方の容器10には、収容能力に満たない量の高炉溶銑(好ましくは収容能力の1/4〜3/4)を受銑しておき、これへ高炉に併設したスクラップ溶解炉(図2参照)で鉄源8に鉄スクラップを溶解して得た溶銑(スクラップ溶銑12と称す)を追加で出銑して、該容器内に既存の高炉溶銑9との第1の合せ湯13を行ってから、こちらも脱硫剤を投入して予備処理脱硫を行う。
本発明で使用するスクラップ溶解炉は、低コストのエネルギー源で鉄スクラップを溶解できるキュポラ等の竪型スクラップ溶解炉(シャフト炉ともいう)が好ましい。竪型スクラップ溶解炉では、コークスと鉄スクラップを炉上より装入し、炉下部から吹き込まれる熱風でコークスを燃焼し、その燃焼熱でスクラップを溶解すると共に、コークス中の炭素が溶湯中に浸炭することによって、高炉溶銑に近い炭素含有量の溶銑を得ることができる。このため、高炉溶銑と合せ湯した際に、その後の転炉精錬を、高炉溶銑のみを溶銑として使用する精錬と操業条件を大きく変更することなく行うことができ、操業を阻害することなく有利である。
引き続き、本発明では、転炉14での溶鋼の溶製に際しては、予備処理脱硫が終了した前記第1の合せ湯13と別途待機させた高炉溶銑11とで2回目の合せ湯を行う。その合せ湯に際しては、脱硫が終了した前記第1の合せ湯13及び待機高炉溶銑11の質量を事前に決める必要がある。その質量の決め方は、転炉14で溶製される溶鋼の目標硫黄含有量及び目標出鋼温度が許容範囲内に収まるように、第1の合せ湯13と待機高炉溶銑11の硫黄含有量に基づき計算で推定する。
すなわち、本発明では、第2の合せ湯(製鋼用鉄源の主体)15とする予備脱硫後の第一の合せ湯と予備脱硫後の待機高炉溶銑の混合質量比率を、以下の手順に従って決めるのである。
(第1段階)・・使用する記号を下記の通り選定する。
第一の合せ湯の質量(トン)・・記号:x、S濃度・・記号:Sx
待機高炉溶銑の質量(トン)・・ 記号:y,S濃度・・記号:Sy
混合質量比率(%) xについて ・・Mx=x/(x+y)×100
yについて ・・My=y/(x+y)×100
第一の合せ湯温度(℃)・・記号:Tx
待機高炉溶銑の温度(℃)・・記号:Ty
転炉に装入する第2の合せ湯の温度(℃) ・・記号:T
(第2段階)・・転炉吹錬で溶製する溶鋼の目標S濃度(質量%)を決める。
(第3段階)・・転炉吹錬ではほとんど脱硫が期待できないので、転炉に装入する第2の合せ湯のS濃度(質量%)を上記溶鋼の目標S濃度とする。
(第4段階)・・上記目標S濃度になるように、下記式により上記x,yを計算する。
x+y=転炉へ装入する第2の合せ湯の質量(例えば、280トン)・・(1)
Sx×x+Sy×y=上記第2の合せ湯のS濃度×第2の合せ湯の質量・・(2)
(第5段階)・・x,yのそれぞれについて混合質量比率を計算する。そして、それぞれの混合質量比率に応じて第2の合せ湯を行い、該第2の合せ湯15を製鋼用鉄源の主体として転炉14へ装入する。
(第6段階)・・計算した混合質量比率x,yと,第一の合せ湯の温度Tx及び待機高炉溶銑温度Tyとを用い、それらを混合した第2の合せ湯の温度Tを,該混合において温度の加成性が成り立つと仮定して計算する。
(第7段階)・・計算した第2の合せ湯の温度Tで転炉吹錬が可能かどうかを判断する。そして、可ならば、装入した第2の合せ湯で、転炉吹錬を行う。否ならば、第2の合せ湯を転炉へ装入してから、温度調整手段を施し、吹錬を行う。転炉吹錬は、本発明では特に限定するものではなく、公知の方法で良い。
上記の転炉吹錬が可能かどうかの判断は、以下のように行う。
つまり、転炉で上記第2の合せ湯が吹錬可能かどうかは、その組成(主として、C,Si,Mn等の酸化して発熱する成分)、温度Tに、吸熱側の因子である造滓剤(CaO等)の顕熱、炉体放熱、製鋼用鉄源として別途添加する鉄スクラップの質量等を加味して公知の熱バランス計算を行う。そして、温度Tで吹錬が可能であれば良いが、温度が高過ぎる場合には、冷材(例えば、ミルスケール、鉄鉱石等)を、低すぎる場合には昇熱材(例えば、炭素含有物質等)の投入を考え、それらの添加量を決める。
なお、高炉の通常操業で得た溶銑(高炉溶銑9と称す)を2つの溶銑保持容器10へ出銑する際に、一方は収容能力一杯、他方は、好ましくは収容能力の1/4〜3/4杯に分割して出銑したが、1/4〜3/4杯としたのは、1/4杯未満ではスクラップ溶銑の使用量が少なく、3/4杯超えでは待機高炉溶銑の使用量が少なくなるので、両者の使用量のバランスを取るためである。
また、本発明では、前記溶銑ヤードで待機する高炉溶銑及び第1の合せ湯の脱硫を、いずれも回転翼による機械攪拌方式で行うのが好ましい。溶銑の予備処理手段としては、種々の技術があるが、溶銑保持容器を取鍋とし、脱硫剤を投入して回転翼で機械的に攪拌する方法が今までの実績から効率良く脱硫できるからである。
(実施例1)
高炉から出銑した通常の高炉溶銑を収容能力が280トンの2つの取鍋へ、一方を満杯に、他方へ1/4杯(70トン)受注した。それら高炉溶銑のS濃度及び温度はそれぞれ、0.03質量%及び1380℃である。そして、該一方の容器を、回転翼で機械攪拌する脱硫装置を備えた溶銑予備処理場へ搬送し、石灰系脱硫剤を投入して脱硫を行った。脱硫後の高炉溶銑のS濃度及び温度(Ty)は、それぞれ、0.002質量%及び1350℃であった。この高炉溶銑は、溶銑ヤードにそのまま送られ、待機高炉溶銑とし、温度1340℃を維持するようにした。
一方、他方の容器は、竪型スクラップ溶解炉(図2参照)の出銑口に移動し、そこで3/4杯分(210トン)のスクラップ溶銑を受け、第1の合せ湯を行った。該スクラップ溶銑のS濃度及び温度は、それぞれ0.08質量%及び1340℃であったが、第1の合せ湯では、0.06質量%及び1320℃となった。この第1の合せ湯を前記溶銑予備処理場へ搬送し、脱硫を行った。その結果、脱硫後の第1の合せ湯のS濃度は、0.004質量%及び温度(Tx)は1300℃になった。
次に、収容能力280トンの転炉で普通炭素鋼を溶製するため、第2の合せ湯を行った。その際、混合質量比率を以下のように計算した。
Sx:0.004質量%
Sy:0.002質量%
要求される第2の合せ湯のS濃度:0.003質量%(溶鋼の目標S濃度と同じ)、
転炉へ装入する第2の合せ湯の質量:280トン
とすると、
x+y=280 ・・(1)
0.00004x+0.00002y=0.00003×280 ・・(2)
(1)式及び(2)式を連立させて解くと、x=140トン,y=140トン
混合質量比率は、
Mx=x/(x+y)=50%
My=y/(x+y)=50%
つまり、脱硫後の第一の合せ湯50%と脱硫後の待機高炉溶銑50%で、第2の合せ湯(製鋼用鉄源の主体として)を行うことになる。
Txは1300℃、Tyは1350℃であったので、第2の合せ湯の温度Tは、混合によっても加成性が成立つと仮定すると、
T=MxTx+MyTy ・・(3)
従って、T=0.5×1300+0.5×1350=1325℃
そして、この温度で転炉吹錬が可能かどうか熱バランス計算を行ったところ、該第2の合せ湯で吹錬が可能と判断され、該第2の合せ湯を製鋼用鉄源として利用するため、上底吹き転炉へ装入し、公知の普通炭素鋼の操業条件で溶製を行った。
なお、第一の合せ湯のスクラップ溶銑と高炉溶銑の混合質量比率は、210/280×100=75%であったので、第2の合せ湯を加味した転炉吹錬する製鋼用鉄源のスクラップ溶銑の利用率は、0.75×0.50(Mx)×100=37.5%となる。
つまり、従来の操業では、スクラップを10%程度しか利用できなかったことに比較し、スクラップの多量使用で溶鋼が溶製できるようになった。
(実施例2)
実施例1と同様に、高炉から出銑した通常の高炉溶銑を収容能力が280トンの2つの取鍋へ、一方を満杯に、他方へ2/4杯(140トン)受注した。それら高炉溶銑のS濃度及び温度はそれぞれ、0.03質量%及び1380℃である。そして、該一方の容器を、回転翼で機械攪拌する脱硫装置を備えた溶銑予備処理場へ搬送し、石灰系脱硫剤を投入して脱硫を行った。脱硫後の高炉溶銑のS濃度及び温度(Ty)は、それぞれ、0.0016質量%及び1360℃であった。この高炉溶銑は、溶銑ヤードにそのまま送られ、待機高炉溶銑とし、温度1360℃を維持するようにした。
一方、他方の容器は、竪型スクラップ溶解炉(図2参照)の出銑口に移動し、そこで2/4杯分(140トン)のスクラップ溶銑を受け、第1の合せ湯を行った。該スクラップ溶銑のS濃度及び温度は、それぞれ0.08質量%及び1350℃であったが、第1の合せ湯では、0.055質量%及び1330℃となった。この第1の合せ湯を前記溶銑予備処理場へ搬送し、脱硫を行った。その結果、脱硫後の第1の合せ湯のS濃度は、0.0035質量%及び温度(Tx)は1310℃になった。
次に、収容能力280トンの転炉で普通炭素鋼を溶製するため、第2の合せ湯を行った。その際、混合質量比率を以下のように計算した。
Sx:0.0035質量%
Sy:0.0016質量%
要求される第2の合せ湯のS濃度:0.003質量%(溶鋼の目標S濃度と同じ)、
転炉へ装入する第2の合せ湯の質量:280トン
とすると、
x+y=280 ・・(1)
0.000035x+0.000016y=0.00003×280 ・・(2)
(1)式及び(2)式を連立させて解くと、x=280トン,y=74トン
混合質量比率は、
Mx=x/(x+y)=74%
My=y/(x+y)=26%
つまり、脱硫後の第一の合せ湯74%と脱硫後の待機高炉溶銑26%で、第2の合せ湯(製鋼用鉄源の主体として)を行うことになる。
Txは1310℃、Tyは1360℃であったので、第2の合せ湯の温度Tは、混合によっても加成性が成立つと仮定すると、
T=MxTx+MyTy ・・(3)
従って、T=0.74×1310+0.26×1360=1323℃
そして、この温度で転炉吹錬が可能かどうか熱バランス計算を行ったところ、該第2の合せ湯で吹錬が可能と判断され、該第2の合せ湯を製鋼用鉄源として利用するため、上底吹き転炉へ装入し、公知の普通炭素鋼の操業条件で溶製を行った。
なお、第一の合せ湯のスクラップ溶銑と高炉溶銑の混合質量比率は、140/280×100=50%であったので、第2の合せ湯を加味した転炉吹錬する製鋼用鉄源のスクラップ溶銑の利用率は、0.50×0.74(Mx)×100=37.5%となる。
つまり、従来の操業では、スクラップを10%程度しか利用できなかったことに比較し、スクラップの多量使用で溶鋼が溶製できるようになった。
1 原料装入部
2 羽口
3 熱風管
4 排ガスの出口
5 出銑口
6 排ガス
7 溶銑
8 鉄源
9 高炉溶銑
10 容器
11 待機高炉溶銑
12 スクラップ溶銑
13 第1の合せ湯
14 転炉
15 第2の合せ湯

Claims (3)

  1. 高炉を備えた一貫製鉄所の転炉で溶鋼を溶製する転炉製鋼法において、
    前記高炉から出銑した溶銑(高炉溶銑と称す)を受洗した2つ以上の溶銑保持容器のうち、受洗量が収容能力一杯の容器については、脱硫処理を行って溶銑の硫黄濃度を転炉で溶製される溶鋼の目標硫黄濃度よりも低下させた後待機させ、受銑量が収容能力に満たない容器については、該高炉に併設した竪型スクラップ溶解炉で鉄スクラップを溶解して得た溶銑(スクラップ溶銑と称す)を収容能力一杯まで追加受銑することで第1の合わせ湯をしてから脱硫処理を行い、溶銑の硫黄濃度が転炉で溶製される溶鋼の目標硫黄濃度よりも高い濃度で脱硫し、
    引き続いての転炉での溶鋼の溶製に際しては、前記第1の合わせ湯と前記待機させた高炉溶銑との混合質量比率を、溶製する溶鋼の許容硫黄含有量範囲内に収まるように、それらの硫黄含有量に基づき調整して、第2の合わせ湯を行い、該第2の合わせ湯を主原料として転炉へ装入して吹錬することを特徴とする転炉製鋼法。
  2. 前記受銑量が収容能力に満たない容器の高炉溶銑受銑量が、収容能力の1/4〜3/4であることを特徴とする請求項1記載の転炉製鋼法。
  3. 前記高炉溶銑の脱硫処理及び第1の合わせ湯の脱硫処理を、いずれも回転翼による機械撹拌方式で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の転炉製鋼法。
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