この発明の一実施例である敷設装置10は、たとえば、耕作地100に地下灌漑用部材を敷設するためのものであり、耕作地100に適用される地下灌漑システム200の遮水部材216と給水部材218とを敷設するために用いられる。
先ず、耕作地100に適用される地下灌漑システム200について、後述するこの発明
の理解に必要な範囲で、簡単に説明する。
図1に示すように、地下灌漑システム200は、地下から水を供給して土壌中の水分を植物の生育にとって適切な状態に保持することを主たる目的として、耕作地100に設けられるものであり、たとえば、水タンク202、給水管204、水位管理器210、遮水部材216および給水部材218を備えている。
なお、この実施例における「耕作地」とは、農作地のみならず、植物の栽培場や公園緑地などを含む概念である。
水タンク202は、地上に設置されて、耕作地100に供給するための水を貯留する。水タンク202は、たとえば、農業用水配管(図示せず)などと接続されて、農業用水配管から送られてくる水をその内部に貯留する。水タンク202に貯留される水量は、耕作地100の面積などによって適宜設定され、水タンク202内には、常に一定量以上の水が貯留される。たとえば、水タンク202内の水位が一定水位を下回ると、農業用水配管から自動的に水が補給されるようにしてもよいし、手動で栓を開け閉めすること等によって水を適宜補給するようにしてもよい。
給水管204は、水タンク202内の水を遮水部材216の内部まで送る管路であって、水タンク202と接続される本管206、および本管206から分岐する分岐管208を含む。また、分岐管208は、本管206と接続される第1分岐管208a、および第1分岐管208aからさらに分岐して、遮水部材216の内部において給水部材218と接続される第2分岐管208bを含む。給水管204は、塩化ビニル等の合成樹脂およびSUS等の金属などによって形成され、複数の直管、可撓管および継手などを適宜連結して形成される。
図2に示すように、給水管204には、水位管理器210が設けられる。水位管理器210は、貯水機能を有する縦管212、および縦管212の内部に収容される管理器本体214を含み、縦管212内の水位に応じて水の供給を調整するものである。具体的には、水位管理器210は、第1分岐管208aから第2分岐管208bへの水の供給を調整することによって、遮水部材216の内部に形成される重力水状態、すなわち重力水で満たされた状態の土壌部222の重力水の水位216を管理する。
ただし、栽培植物、土壌および気候条件に応じて、この水位、給水間隔と給水量などを制御する給水制御器を設けることもある。
縦管212は、塩化ビニルなどの合成樹脂によって、有底円筒状に形成される。縦管212の上端は開口しており、その上端開口部から第1分岐管208aが挿入されて、第1分岐管208aと管理器本体214とが接続される。また、縦管212の側壁下部には接続部が形成され、この接続部に第2分岐管208aが接続される。管理器本体214としては、本願出願人が先に出願した特願2007−83825号において提案したものを使用することができる。
図3に示すように、遮水部材216は、合成樹脂および金属などの遮水性を有する材質によって上側開口の容器状に形成され、その長手方向を水平方向として、地中に埋設される。詳細は後述するが、この実施例では、遮水部材216は、合成樹脂シート24を溝形状に変形させることによって、その上面に開口を有する横長の容器状に形成される。そして、耕作地100の両端付近まで延びる遮水部材216が、所定の間隔を隔てて並ぶように分散配置される(図1参照)。
遮水部材216の内部には、給水部材218が設けられる。ただし、上述のように、遮水部材216は、上側開口の容器状に形成されるため、この場合の遮水部材216の内部とは、遮水部材216の上側に含まれる概念となる。
給水部材218は、ポリエチレンなどの合成樹脂によって形成された有孔管であり、その管壁には、多数の細孔(図示せず)が形成されている。給水部材218は、遮水部材216の内側において第2分岐管208bと接続され、遮水部材216の底面に沿うように軸方向に延びて、遮水部材216の内部を通る水路220を形成する。そして、この水路220の水が給水部材218の細孔を介して遮水部材216内に供給される。ただし、給水部材218から単に水を供給するだけでなく、肥料や農薬を供給してもよい。また、たとえば雨などで土壌の水位が上昇した場合には、給水部材218を排水管として機能させて、重力水の水位を適切に保つこともできる。詳細は後述するが、この実施例では、給水部材218には、土圧で変形しないだけの厚さを保持しつつ可撓性を確保するために、コルゲート管34が用いられる。
このような地下灌漑システム200では、水タンク202内の水が、本管206および第1分岐管208aを介して、縦管212内に供給される。縦管212内に供給された水は、さらに第2分岐管208bおよび給水部材218を介して、遮水部材216の内部に供給される。遮水部材216の内部に供給された水は、その内部の土中に浸透していき、重力水となって遮水部材216の内部に留まる。これによって、遮水部材216の内部には、重力水で飽和した土壌部222が形成される。遮水部材216内の重力水、つまり土壌部222の水分は、その上側の土壌に毛細管現象によって吸い上げられて浸透していき、上側の土壌に毛管水が常に補充される土壌部224を形成する。この毛管水で満たされた土壌部224の水分量は、遮水部材216内の重力水の水位226の高低によって変動するため、重力水の水位226を適切な位置に保てば、毛管水で満たされた土壌部224の水分状態を栽培する植物にとって適切な量に保つことができる。
以上で、耕作地100に適用される地下灌漑システム200を説明した。
以下に、このような地下灌漑システム200を前提にして、必要に応じてそれらを援用しながら、本発明の実施例または実施形態について説明する。
図4に示すように、敷設装置10は、農業用トラクタ104などの走行機102に取り付けられるフレーム12を備え、当該走行機102の進行方向に沿って牽引されて、地下灌漑システム200の遮水部材216と給水部材218とを耕作地100に敷設する。
図4および図5に示すように、フレーム12は、一定以上の硬度を有する合成樹脂または金属などによって形成され、たとえば走行機102の後方に設けられている装置取り付け部107に連結される。
なお、この実施例における「前方」とは、走行機102の進行方向を意味し、「後方」とは、その反対方向を意味する。
フレーム12は、矩形の板状に形成される台座部14を含み、台座部14の略中央部には、後述する本体26と連通する開口16が形成される。
台座部14の側面には、カバー部18が設けられる。カバー部18は、台座部14の側面から上方に延びる板状体であり、当該台座部14の前方側の側面から上方に延びる前方側面カバー18aと、台座部14の側方側の側面のそれぞれから上方に延びる側方側面カバー18b,18bとによって形成される。
前方側面カバー18aは、矩形の板状に形成され、この前方側面カバー18aが走行機102の装置取り付け部107に連結される。また、側方側面カバー18b,18bは、下端でその前後方向の長さが大きく、上端でその前後方向の長さが小さい略台形状に形成され、この側方側面カバー18b,18bには、第1ロール部20が取り付けられる。
第1ロール部20は、軸部22と合成樹脂シート24とを含む。軸部22は、円柱棒状に形成され、一方の側方側面カバー18bともう一方の側方側面カバー18bとに亘って延び、それらよって周方向に回動可能に固定される。軸部22には、合成樹脂シート24がロール状に巻き取られており、軸部22を周方向に回転させることによって合成樹脂シート24を連続的に引き出すことができる。すなわち、第1ロール部20は、ロール状に巻き取った合成樹脂シート24を連続的に供給可能に保持する。合成樹脂シート24の面は、平板状に形成されており、その厚さは、たとえば0.3―0.5mmであり、その長さは、たとえば50mである。
フレーム12の下部には、本体26が設けられる。本体26は、合成樹脂シート24を溝形状に変形させるためのものであるとともに、その変形させた合成樹脂シート24の上側に有孔管34を配置するためのものであり、台座部14の開口16と連通するガイド体28を含む。
ただし、この実施例における「溝形状」とは、あくまで上面に開口を有する横長の容器形状を意味しており、合成樹脂シート24を略コ字状に屈曲変形したもののみならず、たとえば、合成樹脂シート24を略V字状に屈曲変形したもの、合成樹脂シート24を略U字状に湾曲変形したもの、および合成樹脂シート24を半割り管状に湾曲変形したものを含む概念である。
ガイド体28は、略四角筒状に形成され、その上側開口の内縁の全体が台座部14の開口16の周縁に密着しており、そこから下方かつ後方に向けて円弧状に湾曲して、その下側開口が水平方向に向けて開口する。
詳細は後述するが、このガイド体28の下側開口は、本体26の出口26aであり、変形させた合成樹脂シート24を溝106に嵌め込むことができるように、地下灌漑用部材の敷設時に溝106の底面と略等しい高さに配置される。
ガイド体28の内部には、仕切り体30が設けられる。仕切り体30は、たとえば断面略H形状に形成され、ガイド体28の後方面の内面に沿って設けられる。仕切り体30の開放端30a,30bの幅は、後述するコルゲート管34の外径とほぼ等しく設定される。
ガイド体28には、当該ガイド体28の前方面の外面に沿って推進補助部32が設けられる。推進補助部32は、敷設装置10が牽引された際に溝106内に残っている余分な土を左右に押し分けるためのものであり、ガイド体28の前方面からさらに前方に向けて傾斜突出する略三角柱状に形成される。
また、詳細は後述するが、本体26には、コルゲート管34が挿通される(図7参照)。コルゲート管34は、ポリエチレンなどの合成樹脂によって形成される有孔管であり、その管壁には、多数の細孔(図示せず)が形成されている。たとえば、コルゲート管34は、少なくともガイド体28内に挿通されている部分を除いて、リール等の巻付け具(図示せず)などに巻き取られており、この巻付け具がたとえば溝106の近傍の地上に配置される。
図6―図8を参照して、このような敷設装置10を用いて、耕作地100に遮水部材216と給水部材218とを敷設する方法を以下に示す。
先ず、遮水部材216の敷設区間の全長に亘って地面を掘削して、耕作地100に溝106を設ける。遮水部材216の底面から地表面までの距離は、たとえば100mm−500mmである。
ただし、遮水部材216の大きさ、配置個数、配置深さおよび配置間隔などは、この地下灌漑システム200を適用する耕作地100の面積、土壌特性、気候条件および栽培植物などに応じて、適宜設定される。
そして、敷設装置10のフレーム12を走行機102の装置取り付け部107に連結して、この敷設装置10の本体26の出口26aを溝106の一方側の端であってかつ溝106の底面と略等しい高さに配置する。
なお、装置取り付け部107とフレーム12との連結構造は、係止、係合、嵌合、ボルト締めなどの適宜な連結構造を採用することができる。
次に、合成樹脂シート24を本体26内に挿通させて、当該合成樹脂シート24をガイド体28と仕切り体30との間に挟み込む。
具体的には、図6(A)に示すように、第1ロール部20から引き出した合成樹脂シート24の先端部24aを台座部14の開口16からガイド体28内に挿入する。それから、図7および図8に示すように、合成樹脂シート24の幅方向の一方端部が仕切り体30の開放端30aとガイド体28の側面との間に、ならびに当該合成樹脂シート24の他方端部が仕切り体30の開放端30bとガイド体28の側面との間に位置するように、ガイド体28の内部に合成樹脂シート24を押し込む。すると、ガイド体28と仕切り体30の開放端30a,30bとの間に挟まれた合成樹脂シート24の両端部が屈曲して、当該合成樹脂シート24が底板とその両側端から立ち上がる側板とを有する溝形状に変形される。それから、少なくとも合成樹脂シート24の先端部24aが本体26の出口26aから出てくるまで、この合成樹脂シート24をガイド体28内に押し込む。
なお、図面の都合上、図7および図8では、合成樹脂シート24の側板が垂直上方向に向けて立ち上がっているが、実際には、合成樹脂シート24の側板は、垂直上方向のみならず、上方向かつやや外側や上方向かつやや内側に向けて立ち上がる場合があることに留意されたい。以下、同様である。
そして、これと同時に、コルゲート管34を本体26内に挿通させる。
具体的には、図6(B)に示すように、コルゲート管34の先端部34aを台座部14の開口16からガイド体28内に挿入し、仕切り体30の開放端30aと30bとの間であって、かつ仕切り体30の下側に挿通させる。すると、仕切り体30によって合成樹脂シート24に対するコルゲート管34の位置が保持されて、これにより変形された合成樹脂シート24の上側にコルゲート管34が配置された状態となる。それから、図7および図8に示すように、少なくともコルゲート管34の先端部34aが本体26の出口26aから出てくるまで、このコルゲート管34をガイド体28内に押し込む。
次に、本体26の出口26aから出ている合成樹脂シート24の先端部24aと、その合成樹脂シート24の上側に配置されているコルゲート管34の先端部34aとを溝10
6の一方側の端の底面に嵌め込み、それらを固定した状態で、走行機102を溝106の一方側の端から溝106に沿って前進させる。
すると、走行機102が前進することによって、第1ロール部20から合成樹脂シート24が連続的に引き出され、その引き出された合成樹脂シート24が本体26によって変形されて、そのまま溝106に嵌め込まれる。そして、これと同時に、合成樹脂シート24の上側にコルゲート管34が配置される。溝106に嵌め込まれた合成樹脂シート24は、その形状が溝106によって保持され、内部に重力水状態の土壌部222が形成される遮水部材216となる。また、合成樹脂シート24の上側に配置されたコルゲート管34は、たとえば遮水部材216の内部を通る水路220を形成する給水部材218となる。そして、そのまま走行機102を溝106の他方側の端まで前進させると、耕作地100の溝106の全長に亘って遮水部材216と給水部材218とが敷設された状態となる。
最後に、溝106の他方側の端で合成樹脂シート24およびコルゲート管34を切り離し、溝106を埋め戻して、作業を終了する(図3参照)。
このように、この実施例では、第1ロール部20から引き出した合成樹脂シート24を変形させて、そのまま溝106に嵌め込むことによって、耕作地100に遮水部材216を連続的に敷設することができる。また、引き出されたコルゲート管34を変形された合成樹脂シート24の上側に配置することによって、耕作地100に給水部材218を連続的に敷設することができる。このため、遮水部材216や給水部材218の接続作業に手間や時間がかかることがない。したがって、施工性に優れる。
また、ロール状に巻き取られた合成樹脂シート24を溝形状に変形させることによって遮水部材216が形成されるため、遮水部材216の現場への移動も容易である。
さらに、このような遮水部材216は汎用性が高いため、遮水部材216の種類および在庫量の削減、ならびに生産の効率化が図られ、経済性にも優れる。
さらにまた、この実施例では、合成樹脂シート24が本体26によって溝形状に変形されると同時に、この合成樹脂シート24の上側に有孔管34が配置される。そして、たとえば、この合成樹脂シート24の先端部24aと有孔管34の先端部34aとを固定した状態で走行機102を前進させることによって、耕作地100に遮水部材216および給水部材218とを実質的に同時かつ連続的に敷設することができる。したがって、地下灌漑用部材の敷設時の施工性を向上させることができる。
なお、上述の実施例では、溝形状に変形された合成樹脂シート24を溝106に嵌め込むことによって遮水部材216が形成された。しかしながら、遮水部材216はその長手方向の端部が開放された状態であるため、この端部から遮水部材216内に供給された水が漏れ出して、下方の土壌へと浸透してしまうことが考えられる。
そこで、図9に示すように、遮水部材216の長手方向の端部、すなわち溝形状に変形された合成樹脂シート24の長手方向の端部を封止具36によって塞ぐこともできる。
図10に示すように、封止具36は、矩形の板状に形成され、その幅方向の略中央部が下方に向けて突出する凸部38aを有する上部部材38、およびその凸部38aに対応した凹部40aを有する下部部材40を含み、この凸部38aと凹部40aとの間に合成樹脂シート24が挟み込まれる。上部部材38の凸部38aおよび下部部材40の凹部40aは、変形された合成樹脂シート24と略同形状に形成される。そして、上部部材38と
下部部材40とそれらの間に挟まれた合成樹脂シート24とがビス等によってまとめて固定される。
この場合には、遮水部材216の長手方向の端部が封止具36に塞がれて、この端部から下方の土壌への水の浸透が遮断される。さらに、変形された合成樹脂シート24の形状が封止具36によって保持されるため、合成樹脂シート24が周囲の土圧や自身の応力によって変形してしまうこともない。したがって、遮水部材216の内部に重力水状態の土壌部222を適切に形成することができる。
また、上述の実施例では、コルゲート管34がリール等の巻付け具(図示せず)に巻き取られ、この巻付け具が溝106の近傍の地上に配置されたが、これに限定される必要はない。
たとえば、図11に示すように、コルゲート管34を巻き取った第2ロール部44をフレーム12に取り付けて、この第2ロール部44によってコルゲート管34を連続的に引き出し可能に保持することもできる。
図12および図13に示すように、フレーム12のカバー部18の側方側面カバー18b,18bには、それぞれ後方側に突出する軸受部42が設けられ、この軸受部42に第2ロール部44が取り付けられる。第2ロール部44は、円柱棒状に形成される軸部46を含み、軸部46は、一方の軸受部42ともう一方の軸受部42とに亘って延び、それらよって周方向に回動可能に固定される。軸部46には、コルゲート管34が多列多段に巻き取られており、軸部46を周方向に回転させることによってコルゲート管34を引き出すことができる。すなわち、第2ロール部44は、巻き取ったコルゲート管34を連続的に供給可能に保持する。
この場合には、第2ロール部44からコルゲート管34を引き出して、そのまま合成樹脂シート24の上側に配置することができる。このため、給水部材218の敷設時の施工性をより向上させることができる。
さらにまた、上述の実施例では、第1ロール部20は、平板状に形成された合成樹脂シート24を引出可能に保持したが、これに限定される必要はない。
たとえば、図14および図15に示すように、合成樹脂シート24にコルゲート形状を付与することもできる。
図14に示すように、合成樹脂シート24には、2次加工によってコルゲート形状が付与されており、その面の長手方向に山部分と谷部分とが交互に連続して形成されている。たとえば、山部分と谷部分との間隔は、3−5mmである。
この場合には、溝形状に変形させた合成樹脂シート24に形成されている山部分と谷部分とを任意の位置で折り重ねることによって、図15に示すように、遮水部材216をその長手方向かつ横方向に湾曲させることができる。したがって、たとえ耕作地100に設けられた溝106がその長手方向に曲線部分を含んでいても、遮水部材216の強度を保持しつつ、溝106の形状に合わせて遮水部材216を敷設することができる。
なお、図示は省略するが、平板状に形成しておいた合成樹脂シート24を第1ロール部20から引き出した後、本体26に挿入するまでの間に、加熱したローラ等によってコルゲート形状を付与することもできる。
また、たとえば、図16および図17に示すように、合成樹脂シート24に折り重ね部48を形成することもできる。
図16に示すように、合成樹脂シート24には、2次加工によって折り重ね部48が形成される。折り重ね部48は、合成樹脂シート24の面の幅方向の両端部に連続して形成される折り目であり、この折り目に沿って合成樹脂シート24が折り重ねられる。折り重ね部48は、合成樹脂シート24の面の幅方向の端縁を底辺とする二等辺三角形状に形成されており、この底辺にたてた垂線が折り曲げるときの谷線48aとなり、底辺以外の2辺が折り曲げるときの山線48bとなる。たとえば、折り重ね部48における底辺の長さが78mmであり、その垂線の長さが210mmである。
この場合には、溝形状に変形させた合成樹脂シート24を折り重ね部48に沿って折り重ねることによって、図17に示すように、合成樹脂シート24をその面の上側に向けて円弧状に湾曲させることができる。したがって、本体26(ガイド体28)内にスムーズに合成樹脂シート24を挿通させることができる。
図18および図19に示すこの発明の他の一実施例である敷設装置10は、耕作地100に一時的に溝106を設けるための掘削部48をさらに備える。
図18および図19に示すように、ガイド体28には、当該ガイド体28の前方面の外面に沿って、突出部50が設けられる。突出部50は、ガイド体28から前方かつ下方に向かって突出し、その下端部(前方端部)が本体26の出口26aと略等しい高さに位置する。突出部50の下端部(前方端部)には、さらにそこから前方に向けて突出する掘削部52が一体的に形成される。掘削部52は、水平方向に拡がる板状体であり、前方に向けて傾斜突出する略五角形状に形成される。
このような敷設装置10では、掘削部48と推進補助部32とによって、耕作地100に一時的に溝106が設けられる。具体的には、耕作地100における遮水部材216の敷設区間の一方側端に立抗を掘り、敷設装置10を走行機102に連結して、当該敷設装置10の掘削部52を立抗の底面と略等しい高さに配置する。それから、走行機102を前進させて、掘削部52によって耕作地100を掘削するとともに、その掘削した土を推進補助部32によって左右に押し分けることによって、耕作地100に一時的に溝106を設けることができる。
ここで、溝106を設けた部分の土を掘り取っているわけではないので、あくまで一時的に設けられる溝106であるが、耕作地100に溝106を設ける作業と、耕作地100に遮水部材216と給水部材218とを敷設する作業とを、同時に行うことができるため、より施工性を向上させることができる。
さらに、この実施例によれば、たとえ耕作地100に設けられている溝106の底面の高さ(溝106の深さ)が揃っていなくても、敷設装置10を走行機102の進行方向に沿って牽引した際に、掘削部52が溝106の底面を部分的に掘削することによって、溝106の底面を水平に調整することができる。
図20に示すこの発明のさらに他の一実施例である敷設装置10は、合成樹脂シート24の上側に土を充填するための充填部54をさらに備える。
図20に示すように、フレーム12の台座部14の後方側には、充填部54が設けられる。充填部54は、合成樹脂シート24の上側に土を充填するためのものであり、ホッパー56と当該ホッパー56の下部に設けられる放出部58とを含む。
ただし、この実施例における「土」とは、耕作地100を構成している土壌と同様の成分によって構成される土のみならず、土壌部222,224を形成することのできる性質の土や砂であればよい。
ホッパー56は、たとえば上方に向けて拡開する略逆台形状を有しており、その上端部が当該ホッパー34内に土を充填するための入口として開口している。また、ホッパー56の下端部は、放出部58に土を一定量ずつ流し込むための出口として開口しており、この出口が放出部58の上方開口と連通している。
放出部58は、ホッパー56の下端部から下方に向けて延びる直管状に形成され、その上方開口がホッパー56の出口と連通して、その下方開口が本体26の出口26aと略同一の鉛直線上に載るように配置されている。
このような敷設装置10では、ホッパー56内に充填された土が、放出部58に一定量ずつ流れ込み、放出部58の下方開口から放出される。放出部58から放出された土は、本体26の出口26a付近に自然落下して、そのまま本体26によって変形された合成樹脂シート24の上側に充填され、この合成樹脂シート24の位置や形状を保持する。
この実施例によれば、変形された合成樹脂シート24の上側にすぐ土が充填されるため、変形された合成樹脂シート24の形状を保持することができる。すなわち、溝106に嵌め込んだ合成樹脂シート24が周囲からの土圧や自身の応力によって変形してしまうことがない。したがって、遮水部材216内に重力水状態の土壌部222,224を適切に形成することができる。
また、封止具36などを使用せずとも、合成樹脂シート24の形状を保持することができるため、施工コストをさらに削減できる。
さらに、たとえば放出部58の下方開口から放出される土の量を大きめに設定する場合には、その土を合成樹脂シート24の上側のみならず、耕作地100に設けられた溝106内の全体に充填して、溝106を埋め戻すこともできる。
ところで、上述の各実施例ではいずれも、走行機102として農業用トラクタ104が利用され、この農業用トラクタ104の後方に設置されている装置取り付け部107に敷設装置10が設けられたが、これに限定される必要はない。
図21に示すこの発明のさらに他の一実施例では、走行機102としてコンバイン108が利用され、このコンバイン108の中央部に設置される昇降機112に敷設装置10が設けられる。以下、図4の実施例における敷設装置10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
図21に示すように、この実施例のコンバイン108は、刈り取り部分や脱穀部分が取り除かれており、クローラ110を含む車体部分のみが走行機102として利用される。たとえば、コンバイン108は、クローラ110の接地面を油圧で上下させる車体水平装置(図示せず)を備えており、左右のクローラ110を独立して制御することで自動的に車体を水平に保つことができる。
コンバイン108の中央部には、たとえば油圧シリンダによって駆動される油圧式の昇降機112が設けられ、この昇降機112には、敷設装置10が固定される。換言すると、敷設装置10は、昇降可能にコンバイン108に固定されている。
敷設装置10は、本体26、第1ロール部20、および第2ロール部44を含み、コンバイン108の進行方向に沿って牽引されて、地下灌漑システム200の遮水部材216と給水部材218とを耕作地100に敷設する。
図22および図23に示すように、本体26は、合成樹脂シート24と略等しい幅を有する板状に形成され、その幅方向の両端部は、合成樹脂シート24の幅方向の両端部における表面と裏面とを保持することができるように、略コ字状に形成される。本体26は、下方かつ後方に向けて円弧状に湾曲するとともに、その面の幅方向の両端部が下方かつ後方に向かうにしたがって立ち上がる。
本体26の後方側には、充填部54が一体的に設けられる。充填部54は、ホッパー56と放出部58とを含み、ホッパー56の下端部が放出部58の上方開口と連通する。放出部58は、ホッパー56の下端部から下方に向けて延びる四角筒状に形成され、その下方開口が本体26の出口26aと略同一の鉛直線上に載るように配置される。このため、放出部58から放出された土は、本体26の出口26a付近に自然落下して、そのまま本体26によって変形された合成樹脂シート24の上側に充填される。
また、コンバイン108の後部には、連結部60が設けられ、この連結部60に第2ロール部44が設けられる。図24に示すように、連結部60は、その前方端がコンバイン108に取り付けられており、その前方端を中心として水平方向に回動可能である。そして、連結部60の後方端には、第2ロール部44が固定される。このため、第2ロール部44は、連結部60の前方端を中心としかつ連結部60の長手方向の長さを半径とする円周上を移動可能となる。第2ロール部44には、コルゲート管34が多列多段に巻き取られており、この第2ロール部44からコルゲート管34を引き出して本体26の内側に挿通させることによって、コルゲート管34を合成樹脂シート24の上側に配置することができる。
この実施例では、走行機102としてコンバイン108が利用される。このため、耕作地100に凹凸があったり、勾配を有する耕作地100であっても、車体を水平に保って敷設作業を適切に行うことができる。したがって、耕作地100に対する敷設装置10の汎用性を高めることができる。
また、この実施例では、コンバイン108に油圧式の昇降機112が設置され、この昇降機112に敷設装置10が昇降可能に連結される。このため、敷設装置10をコンバイン108に連結した状態のまま施工現場まで移動することができる。したがって、施工現場で走行機102に敷設装置10を連結する必要がなく、施工性が向上する。
なお、この実施例では、コンバイン108に油圧式の昇降機112が設けられ、この昇降機112に敷設装置10が昇降可能に設置されたが、これに限定される必要はない。たとえば、図25に示すように、コンバイン108の中央部にリンク機構114を設け、このリンク機構114を介して敷設装置10を昇降可能にコンバイン108に連結することもできる。
また、図26に示すように、敷設装置10を前後方向に回動可能にコンバイン108に連結することもできる。この場合には、たとえ急勾配を有する耕作地100であっても、その勾配に対応させた向きに本体26およびホッパー56を回動させることによって、耕作地100に適切に遮水部材216および給水部材218を敷設することができる。
さらに、図示は省略するが、敷設装置10を左右方向に回動可能にコンバイン108に
連結することもできる。この場合にも、耕作地100の勾配に対応させた向きに敷設装置10を回動させることによって、耕作地100に適切に遮水部材216および給水部材218を敷設することができる。
さらにまた、図27に示すように、合成樹脂シート24の引き込みをスムーズにするための補助ローラ62を本体26に設けることもできる。
なお、上述の各実施例ではいずれも、走行機102として農業用トラクタ104やコンバイン108などを例示し、この走行機102の進行方向に沿って敷設装置10が牽引されたが、これに限定される必要はない。走行機102には、任意の作業機などを採用することができる。また、敷設装置10は、走行機102の前方に連結されて、当該走行機102の進行方向に沿って押動されるものであってもよい。さらに、走行機102と敷設装置10とを専用機として一体的に形成してもよい。
また、上述の各実施例ではいずれも、第1ロール部20がロール状に巻き取った合成樹脂シート24を引き出し可能に保持したが、これに限定される必要はない。たとえば、図示は省略するが、コルゲート管を半割り管状に形成したものを軸部22に巻き取って、引き出し可能に保持することもできる。この場合には、第1ロール部20は、遮水部材216を連続的に供給可能に保持することとなる。また、たとえば、折り返して重ねた合成樹脂シート24を台座14上に設置することによって、この合成樹脂シート24を連続的に引き出し可能に保持することもできる。
さらに、上述の各実施例ではいずれも、給水部材218としてコルゲート管34が用いられたが、これに限定される必要はなく、給水部材218は、周囲からの土圧に耐えることができる、かつ柔軟で自由自在に曲げることができる有孔管であればよい。
さらにまた、たとえば耕作地100の範囲に比べて合成樹脂シート24の長さが短い場合には、第1ロール部20を新しいものに交換して、前の合成樹脂シート24の後端部と新しい合成樹脂シート24の先端部24aとを接合することもできる。合成樹脂シート24同士の接合構造は、熱融着、接着などの適宜な接合構造を採用することができる。
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、敷設装置10は、耕作地100に遮水部材216と給水部材218とを敷設したが、これに限定される必要はない。
たとえば、敷設装置10によって、耕作地100に遮水部材216のみを敷設することもできる。
また、たとえば、図28に示すように、敷設装置10によって、土壌に設けられた溝106に暗渠排水用の排水部材228と遮水部材216とを敷設することもできる。この場合には、合成樹脂シート24が溝106に嵌め込まれ、その合成樹脂シート24の上側にコルゲート管34が配置される。コルゲート管34は、暗渠排水用の排水部材228となり、その内部に排水路230を形成し、排水路230に入り込んだ土壌中の水を排水する。また、合成樹脂シート24は、その形状が溝106によって保持されて、排水部材228(コルゲート管34)の側方および下方を囲む遮水部材216となる。遮水部材216(合成樹脂シート24)は、コルゲート管の外部に流出した排水路230の水を、暗渠管228の周囲に保持する。
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。