JP3944270B2 - 有材心土材による心土改良作業方式およびその作業機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有材心土材による心土改良作業方式およびその作業機に関し、さらに詳しくは、保水性の悪い土壌を改良して保水性を向上させる、いわゆる透排水良好な土壌へと改良するに適した圃場土壌改良方式ならびにその作業を実施する上で便利な作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、圃場の断面的構造は、最も表面に作土層があり、その下層に耕盤層があって、さらにその下層に水分をまったく通さない心土層、概以上の三層により構成されている。作物の生育には、作土層が常に適度の水分を含んでいて、しかも十分な深さがあることが理想的である。
【0003】
例えば近年、米の生産調整により水田を畑圃場に転換することが行われているが、畑作物は水稲と異なり浸水すると大きな打撃を受けるため、転換された畑圃場は作土の表面水を確実に排除できるものでなければならない。ところで、水田とくに重粘土壌の水田にあっては、大型トラクタの使用による踏圧や、代かきによって心土層が固結し、通気性、透水性、保水性等の土壌物性が不良になり、また、毎年繰り返されるロータリ耕によって、作土層が浅くなり、その下層に難透水層である耕盤層が形成されている。
【0004】
耕盤層の下側に暗渠を設けたものであっても、多量の降雨があると地表の作土層には停滞水を生じて過湿状態になり、いわゆる泥濘状態になってしまい、また逆に、長期間降雨がないと耕盤層が作土層から下の下層部分の水分の吸い上げを阻害してしまい、作土層が乾燥状態になって干害を生じることがある。
【0005】
従って、上述のような水田を畑圃場に転換する場合には、透水性や保水性を不良にしている耕盤層を破壊すると共に、さらにその下の心土層を膨軟状態にすることによって土壌の通気性、透水性を改良し、作土深を畑作物に望ましい深さ、例えば、20〜30cmにすることが必要である。
【0006】
このような見地から、従来では水田を畑圃場に転換するには、心土破砕機で耕盤層を破壊すると共に、心土層を膨軟にし、その後プラウで作土を耕起反転する方法、あるいは心土耕プラウで作土層と耕盤層を一緒に耕起反転すると共に、心土層を膨軟にする方法が採用されている。
【0007】
また、作土層の表面水の排除を良好にするため、既設の暗渠と直交にトレンチャーで深さ50cm〜60cmの溝を掘り、これに人力で有材心土材としての籾殻をその溝に投入して、圃場の透水性を改良する方法が行われている。また、弾丸暗渠掘削機の上部に籾殻入れホッパを取り付け、トラクタのPTO駆動によるブローワとの組合わせによって、ホッパ内の籾殻を強制的に弾丸暗渠のり柱通過跡溝に吹き込んで充填する籾殻充填弾丸暗渠施工機も知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の技術において、心土破砕機で心土層を破砕する方法は、重粘土壌の場合、犂柱が心土層と作土層の二つの層を同時に破砕するために必要馬力が大きく、心土層が全体的に破砕される結果、多量の水を含むようになってトラクタ等の踏圧によって2〜3年で固結してしまい、その効果が無くなるという問題点があった。
【0009】
また心土耕プラウを用いる方法は、プラウで作土層と耕盤層とを一緒に耕起反転することにより耕盤を破壊できるが、心土破砕機の場合と同様に破砕された心土層の固結が早いという問題点があった。
【0010】
また、トレンチャーで溝を掘削し籾殻を人力で投入する方法は、費用と手間が大きく、トレンチャーの通過跡以外の耕盤層及び心土層を破砕できないので、別に耕盤層及び心土層を破砕することが必要になってしまう問題があった。
【0011】
さらにまた、籾殻充填弾丸暗渠施工機は籾殻暗渠の形成に対し、前記のトレンチャーに比べ費用と手間を節減できるが、犂柱の通過部以外の耕盤層及び心土層を破砕できないので、トレンチャーの場合と同様な問題点があった。
【0012】
また、有材心土材を心土層に形成した深い溝に充填すると言っても、有材心土材を重力落下させているだけであり、ブロアによる充填であっても有材心土材は前記溝内でおいては単に積み上げられた状態であるにすぎないのである。
何れにしても、従来の改良工法によれば、土壌の保水性を向上させるに、作土層をできるだけ厚くして保水可能部分をできるだけ多くすることが試みられてはるが、ロータリ耕運機による耕耘が主流であるわが国の農作業にあっては作土層を深くすることができないばかりか耕盤層の形成を助長してしまい、圃場環境の悪化を招いているのが実情である。
【0013】
もともと、ロータリ耕運は作土層の下に極めて透水性の悪い耕盤層を形成する傾向にあって、耕深を深くしてもおのずと限界があり、しかも作土層の下層に耕盤層を形成することには変わりはなく、耕盤層や、心土層に対して保水性を向上させるような改良には不十分である。
【0014】
しかし、心土層の保水性を増加するために幾つかの試みが実施されているが、例えば、北海道立上川農業試験場において開発された有材心土改良耕法が提案されている(特公平7−24485)が装置が大掛かりであり、トラクタの轍跡との関係で十分に保水性能が向上しきれていないのが実状である。これは、トラクタの轍が保水材を投入した後を通るので、その部分を踏み固めてしまい、せっかくの保水材が十分な機能を発揮するに至らない問題を抱えている。
【0015】
そこで、本発明は、上記のいくつかの問題点を解消し、水田圃場から畑作圃場に変換する場合だけではなく、さらには水田を稲作に適した好適な圃場に改良するために、施工が簡単で費用が安く、かつ改良効果の持続性を高めることができる土壌改良方式とその作業に適した作業機を提供することにより排水性に優れ、また、保水性にも優れ、降雨に対しても、さらには長期の日照りに対しても、圃場をベストなコンディションに保つことができるようにすることを目的としている。
【0016】
言い換えると、本発明は耕盤層を破壊するだけに止まらず、心土層に保水性に優れた有材心土材を充填し、しかもこれらを圧縮することにより密度の高い保水層を形成することができ圃場全体の保水性を向上させることができる。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上述のような目的を達成するために、本発明は、掘削溝の側壁を押圧する機能をもつサブソイラをもち、これにより有材心土材を投入する充填溝を形成し、この充填溝に移動しながら有材心土材を投入し、これを充填溝中を移動する圧縮輪によって上方から圧縮すると共に、掘削溝の側壁の復元土圧によっても圧縮して、心土層中に圧密状態の保水層を形成することで心土改良を行うことを特徴とするものであり、また、トラクタに装着することができる作業機フレーム上に搭載された有材心土材のホッパと、このホッパ中の有材心土材を送出する供給手段と、この有材心土材供給手段から供給される有材心土材を投入する充填溝を側方土圧に抵抗して形成する充填溝形成手段と、投入された有材心土材を上方から圧縮する圧縮輪と、この圧縮輪を強制的に駆動すると共に、前記充填溝形成手段の作業深を定めるゲージホイールを作業幅方向に配置して、投入有材心土材を圧縮輪により上方から、また、充填溝の復元土圧を利用して心土層中に圧密状態の籾殻層を形成して心土改良を行うのに適したものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の方式を実施する上で便利な作業機の構成の説明とともに、その方式を説明する。まず、添付図面の図1は、本発明による土壌改良作業機の側面図であり、符号10は溝堀作業機を示し、これを構成するフレーム11にはそのの前端部にアッパリンクを取り付けるマスト12、ロアリンクを取り付けるクロスシャフト13が設けられており、フレ−ム11上には有材心土材としての籾殻を蓄えるためのホッパ13が搭載されており、このホッパ13の底部13Aには側面視上ロ−ト状になっていて、その底部には作業幅方向に沿ってスクリュウコンベア14が配置されいる。このコンベア14は有材心土材として代表させた籾殻Moを作業幅方向中央部に集めるために中心部の左右が対称的,いわゆる送りが逆方向になっている。その中央部位置にはほぼ垂直方向に籾殻Moを強制的に落下させるための垂直コンベア15があって、このコンベア15はダクト16に収納されている。このダクト16は後述する掘削溝Zの内部に届くように後述する掘削部20の側板23、23で囲まれる空間X内に至っている。これらのコンベア14、15はトラクタの油圧取り出し部から供給をうけた圧油により油圧モ−タMを介して駆動されるようになっている。
【0019】
前記ダクト16の下端部はこれから説明する掘削部20を構成するビ−ム21の後方に延びていて、またこのビ−ム21にはサブソイラのビ−ムがそのまま用いられており、下端部にはチゼル22が固定されている。そして、ビ−ム21を挟む空間を形成するような状態で一端部がビ−ム21に固定された側板23がビ−ム21の後方に延びていて、この側板23の間に空間Xが形成されている。この空間X内に前記ダクト16の端部が開放されており、内部に位置する垂直コンベア15の送り出し作用により籾殻Moが前記空間X内に供給されるようになっており、供給された籾殻Moはガイド17により円滑にその空間Xの奥に供給、落下することができるようになっている。
【0020】
この掘削部20は心土層の土をビ−ム21が切り込み、続いてビ−ム21の後方に延びる側板23、23が土のもつ弾性に抗して左右両側に拡げ、ビ−ム21により広い掘削溝、言い換えると、籾殻の充填溝Zを形成するのである。
【0021】
そして、さらに、前記フレ−ム10には前記掘削部20より作業進行方向後方位置に籾殻充填部30としての圧縮輪31、ゲ−ジホィ−ル32がア−ム33を介して取り付けられており、これらは同心軸の支持軸34に固定されていて、支持軸34の両端部はア−ム33に対して回転自在になっているが、前記圧縮輪31、ゲ−ジホィ−ル32は支持軸34と一体的になっている。したがって、ゲ−ジホィ−ル32が回転すれば圧縮輪31が強制的に回転させられるのである。
【0022】
また、圧縮輪31の寸法Dは前記ゲ−ジホィ−ル32の直径dより大きく、その幅は前記掘削部20が土壌の中に形成する掘削溝、いわゆる籾殻の充填溝Zの幅寸法より狭い寸法になっている。したがって、籾殻が当初投入された状態では単に積層状態になっているにすぎないが、前記圧縮輪31が籾殻の表面を回転しながら移動することにより、籾殻Moが圧縮されて圧密状態となって、比較的硬い籾殻層を形成する。
【0023】
また、フレ−ム11の両側後端部には支持腕18が立設されており、この支持腕18により作業者が載るステップ19の両端部が支持されている。このステップ19の下側中央位置にはア−ム34が取り付けられており、その下端部には支持ア−ム35を介して計測輪36が回転自在に取り付けられている。この計測輪36は掘削溝Sに投入され、圧縮状態になっている充填された籾殻Moの表面を回転しながら移動し、充填された籾殻の量、言い換えると、籾殻の高さを計測輪36の上下動により検出し、その量をトラクタのオペレ−タの視界の範囲内において確認することができるようになっている。
【0024】
したがって、籾殻の供給量が不足して掘削溝S中に空間が形成されると、前記計測輪36が下方に落ち込むことで支持ア−ム35が上下方向に回転することになり、この回転をワイヤなどを介してトラクタのオペレ−タに伝達する。伝達の手段は光学的なものから、電気的にランプを点灯させる電気的なもの、ただ単純にワイヤの上下動を目印物の上下動として視覚に訴える形式など随意選択することができるものである。
【0025】
以上の説明では、有材心土材として籾殻を例に挙げたが、バ−ク堆肥や火山灰、さらには木材チップ材など保水性に富むものを有材心土材として使用することができるものである。この説明における有材心土材は広い意味合いをもち、疎水材としての機能をもち合わせる材料ならさらに良好な結果が得られる。例えば、粉砕された樹脂粒、砂(厳密な定義のものではなく、通常砂と云われる程度の粒度をもつもの、土木学会などで定義されている砂は径が2mmまでのもの)などが採用される。
【0026】
次に、実際の作業について説明する。まず、トラクタに作業機10が装着されること従来の作業方式と同様であり、この作業機10が接地状態から移動を開始するとトラクタの前進と共に、掘削部20のビ−ム21はサクションにより土壌内部に至り、作業進行により圃場の土壌中に籾殻を投入するための充填溝Zが形成される。この充填溝Zは土のもつ弾性に抗して幅Hに形成される。幅Hの充填溝Z内部に籾殻が充填されるのであって、充填された籾殻Moは充填溝Zの側圧、言い換えると、土の復元弾性圧による圧力を受けて圧密状態になる。
【0027】
さらに、充填溝Zの幅Hより狭い幅hの圧縮輪31が充填溝Z中の籾殻Moの表面を回転しながら移動し、ゲ−ジホィ−ル32(直径d)より直径Dが大きいために周速度が大きく、そのために籾殻を圧縮しながらゲ−ジホィ−ル32の回転周速度と等しくなるまで充填溝Zの中に潜り込むようになる。これにより籾殻Moは側面からも、上面から圧力を受けることになり充填溝の内部においては圧密状態におかれることになり、圃場の余剰水の吸収力が一段と向上する。言い換えると、保水力も増大することになる。このとき、籾殻層は高さ方向寸法が圧縮され圃場表面から低い位置になるが、籾殻のレベルから上の部分の土壌は後においてプラウによる反転耕される。
【0028】
本発明による作業方式によれば、作業機による作業を終了したところの圃場断面の状態は心土層中に有材心土材である籾殻Moによる壁が形成されることになり、言い換えると、保水性の悪い心土層内部に水分を吸収することができる部分が形成されることになる。
【0029】
なお、掘削部20の寸法を大きいものとすれば、大型のトラクタを必要とするが幅の大きい掘削溝を形成することでができて、充填溝としての機能のほか疎水材を充填する作業と同時に暗渠用のパイプの埋設作業を合せ行うことができる。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の作業方式ならびにその作業機によれば、圃場に形成した充填溝に疎水材などの有材心土材を単に投入するだけではなく、これを押し固めて密度の高い保水層を能率よく形成することができ、また、作業機においては、ゲ−ジホィ−ルを含む強制的に駆動させる手段によって駆動される圧縮輪により有材心土材を上から押さえつけ、さらには、掘削部が土の弾性に抗して形成した充填溝が復元土圧によ有材心土材を側面から押すので、さらに密度の高い保水層を形成することができて、湿田の改質、圃場の管理保持に優れた効果を期待することができる。
【0031】
また、雨量が多く、作土層の表面に水が溜るようなことがあっても、圃場における心土層の保水性能が向上しているので、流出以前に耕盤を通過した雨水は心土層にまで達して保水することができ、また作物の根を心土層にまで生育させることができ、保水材のもつ水分を吸水することで旱魃に強い作物にすることができ収量の増加を図ることができるなどの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施に適した作業機の側面図である。
【図2】 本発明の実施に適した作業機による作業状態の後方から見た一部破断説明図である。
【図3】 本発明の実施に適した作業機の作業状態を示す説明斜視図である。
【符号の説明】
10 作業機
11 フレ−ム
12 マスト
13 ホッパ
14 コンベア
15 垂直コンベア
29 掘削部
21 ビ−ム
22 チゼル
23 側板
30 充填部
31 ゲ−ジホィ−ル
32 圧縮輪
Z 充填溝
Mo 有材心土材
X 掘削部の空間

Claims (1)

  1. 牽引されるフレーム上部に有材心土材を供給するホッパと、
    前記フレーム下部に作溝作業するビームと、
    前記フレーム後部に牽引力によって地表面を回転し移動する支持軸に固定されたゲージホイルと、
    該ゲージホイルより大きな直径で、前記ゲージホイルと同一回転になるように前記支持軸で固定されて回転し、前記ビームが作溝した溝部を走行する圧縮輪を備え、
    前記ゲージホイルより大きな直径で周速度が増加した前記圧縮輪によって、溝中に落下させて供給した前記有材心土材を、溝中に潜り込ませるように圧縮し、前記ゲージホイルと前記圧縮輪の直径差による一定深さで前記有材心土材を圧密状態の層に形成することを特徴とする心土改良作業機。
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