次に、この発明の第1の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。図1は、SRモータ(モータ)Mに3相の相電流を供給する本実施形態のモータ制御装置1のブロック図である。SRモータMは、複数のステータ突極111にU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)が巻装されたステータSと、ステータSに対し回転自在に配置されたロータRとを備える。
モータ制御装置1は、SRモータMに供給される電流の電流値を検出し、電流値信号を出力する電流値測定手段としての電流センサ10と、ロータRの回転を検出し、回転信号を出力する回転検出手段としての回転センサ20と、バッテリBTからの電流を3相の相電流としてSRモータMに供給するインバータ回路30と、駆動指令信号としてのトルク指令信号を出力し、SRモータMの駆動トルクを指令する駆動指令手段としてのトルク指令手段40と、制御手段としてのコントローラ50とを備える。
コントローラ50は、通電相選択手段51、回転位置検出手段52、回転速度検出手段53、回転速度比較手段54、進角マップ55、通電角マップ56、転流信号生成手段57、電流指令手段としての電流マップ58、デューティ計算手段59および駆動信号生成手段60を備える。
通電相選択手段51は、図2に示すように、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号がトルク閾値値であるトルク指令値T1(第1の駆動指令値)未満のときは、U相、V相およびW相のうちから2つの相としてU相およびV相を通電相として選択する。そして、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号がトルク指令値T1(第1の駆動指令値)以上のときは、U相、V相およびW相の3相を通電相として選択する。
回転位置検出手段52は、回転センサ20から供給される回転信号に基づきロータRの回転位置を検出し、回転位置に対応する回転位置信号を出力する。回転速度検出手段53は、回転位置検出手段から供給される回転位置信号に基づきロータRの回転速度を検出し、回転速度に対応する回転速度信号を出力する。
回転速度比較手段54には、予め定められた回転速度閾値が記憶されており、回転速度比較手段54は、回転速度検出手段53から供給される回転速度信号と回転速度閾値を比較する。そして、回転速度比較手段54は、回転速度信号が回転速度閾値未満であると判断した場合には禁止信号を出力し、回転速度信号が回転速度閾値以上であると判断した場合には許可信号を出力する。
通電相選択手段51は、回転速度比較手段54から禁止信号が供給された場合には、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号の大きさによらず、常に、U相、V相およびW相の3相を通電相とし、通電相に対応する通電相信号を出力する。一方、通電相選択手段51は、回転速度比較手段54から許可信号が供給された場合には、上記のように、トルク指令信号がトルク指令値T1未満であるか、または、トルク指令信号がトルク指令値T1以上であるかにより通電相選択手段51で選択された通電相に対応する通電相信号を出力する。
進角マップ55には、回転速度に対する進角量が記憶されており、回転速度検出手段53から供給される回転速度信号に対応する進角量が進角信号として進角マップ55から出力される。また、通電角マップ56には、回転速度に対する通電角量が記憶されており、回転検出速度に対応する通電角量が通電角信号として通電角マップ55から出力される。
転流信号生成手段57は、通電信号選択手段51から供給される通電相信号および回転位置検出手段52から供給される回転位置信号基づきU相、V相およびW相の通電パターン信号を形成する。そして、形成された通電パターン信号は、進角マップ55から供給される進角信号および通電角マップ56から供給される通電角信号により、進角および通電角が調整される。
上記のように、通電相選択手段51から供給される通電相信号は、トルク指令手段40から供給されるトルク指令値の大小、および回転速度比較手段54から供給される禁止または許可信号により異なり、U相およびV相の2相が通電相として選択される場合と、U相、V相およびW相の3相が通電相として選択される場合がある。U相およびV相の2相が通電相として選択される場合には、通電パターン信号としてはU相およびV相の通電パターン信号が形成され、W相の通電パターン信号は形成されない。一方、U相、V相およびW相の3相が通電相として選択される場合には、U相、V相およびW相の通電パターン信号が形成される。
電流指令手段としての電流値マップ58には、トルク指令値に対する電流指令値が記憶されており、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号に基づき対応する電流指令値信号が出力される。電流値マップ58から出力される電流指令値信号は、図3に示すように、トルク指令値信号がトルク指令値T1未満のときは、トルク指令値信号の増大に対応して、予め定められた第1の電流指令値I1まで電流指令値信号は増大する。なお、同図において、実線は本実施形態における電流指令値を示し、破線は常に3相の相電流を通電する従来例における電流指令値を示す。
そして、トルク指令値信号がトルク指令値T1のときには、電流値マップ58から出力される電流指令値信号は、第1の電流指令値I1よりも小さい第2の電流指令値I2となり、トルク指令値信号がトルク指令値T1以上のときは、トルク指令値信号の増大に対応して、電流指令値信号は第2の電流指令値I2から増大する。
従来例では、トルク指令値T1において、電流指令値は第1の電流指令値I1よりも小さい第2の電流指令値I2であるのに対し、本実施形態では、トルク指令値T1において、電流指令値は第2の電流指令値I2よりも大きい第1の電流指令値I1に設定されており、トルク指令値が比較的小さいときにおいて、電流指令値が大きくなるように設定されている。
デューティ計算手段59は、電流センサ10から供給される電流値信号および電流値マップ58から供給される電流指令値信号に基づきパルス幅変調(以下「PWM」とする。)信号のデューティ比を計算し、計算されたデューティ比に対応するデューティ比信号を出力する。なお、デューティ計算手段59においてデューティ比は、電流指令値信号に対する電流値信号の偏差により計算される。
駆動信号生成手段60は、転流信号生成手段57から供給されるU相およびW相の2相の通電パターン信号またはU相、V相およびW相の3相の通電パターン信号、およびデューティ計算手段59から供給されるデューティ比信号に基づきPWM制御信号を生成し、インバータ回路30に供給する。生成されるPWM制御信号は、U相、V相またはW相の通電パターン信号に、デューティ計算手段59から供給されるデューティ比信号に基づくPWM信号を重畳させたものである。
本実施形態において、転流信号生成手段57からU相およびV相の2相の通電パターン信号が供給された場合には、PWM制御信号は、デューティ計算手段59から供給されるデューティ比信号に基づきPWMされるとともに、選択されたU相およびV相の通電相に対応し、U相およびV相の電気巻線(U、V)に相電流を供給することをインバータ回路30に指令する。そして、このPWM制御信号が供給されるインバータ回路30は、直流電源BTからの電流をU相およびV相の相電流とし、U相およびV相の相電流のいずれか一方をU相およびV相の電気巻線(U、V)に順次供給する。
転流信号生成手段57からU相、V相およびW相の3相の通電パターン信号が供給された場合には、PWM制御信号は、デューティ計算手段59から供給されるデューティ比信号に基づきPWMされるとともに、選択されたU相、V相およびW相の通電相に対応し、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V)に相電流を供給することをインバータ回路30に指令する。そして、このPWM制御信号が供給されるインバータ回路30は、直流電源BTからの電流をU相、V相およびW相の相電流とし、U相、V相およびW相の相電流のいずれか一つをU相、V相およびW相の電気巻線(U、V)に順次供給する。
本実施形態において、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号が比較的小さいトルク指令値T1未満であるときに、U相、V相およびW相の3相の通電相のうちからU相およびV相の2相の通電相を選択し、相電流が供給される電気巻線を減少させるとともに、電流指令値を比較的大きな値である第1の電流指令値I1に向けて変化させる設定とされている。そのため、トルク指令値が小さい範囲においても比較的大きな電流指令値とすることができ、SRモータに比較的大きな相電流を供給することが可能となる。その結果、本実施形態のモータ制御装置1は、幅広い駆動領域において、SRモータを高効率で駆動させることができることができる。
本実施形態においては、通電相選択手段51は、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号がトルク指令値T1(第1の駆動指令値)未満のときは、U相、V相およびW相のうちから2つの相としてU相およびV相を通電相として選択しているがこれに限定されないことは言うまでない。すなわち、通電相選択手段51は、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号がトルク指令値T1(第1の駆動指令値)未満のときに、V相およびW相、またはW相およびU相を通電相として選択してもよい。
さらに、図4および図5に示すように、トルク指令値T1a、T1bとなる2つのトルク閾値を設けてもよい。この場合、通電相選択手段51は、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号がトルク指令値T1a未満のときは、U相、V相およびW相のうちから1つの相として、例えば、U相を通電相として選択し、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号がトルク指令値T1a以上でありトルク指令値T1b未満のときは、例えば、U相およびV相の2相を通電相として選択する。そして、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号がトルク指令値T1b以上のときは、U相、V相およびW相の3相が通電相として選択される設定としてもよい。
同様に、通電相選択手段51で選択される通電相に対応し、電流値マップ58から出力される電流指令値信号は、トルク指令値信号がトルク指令値T1a未満のときは、トルク指令値信号の増大に対応して、予め定められた電流指令値I3まで電流指令値信号は増大し、トルク指令値信号がトルク指令値T1aのときには、電流値マップ58から出力される電流指令値信号は、電流指令値I3よりも小さい電流指令値I4とし、トルク指令値信号がトルク指令値T1a以上でありトルク指令値T1b未満のときは、トルク指令値信号の増大に対応して、電流指令値信号は電流指令値I4から電流指令値I5まで増大する。
そして、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号がトルク指令値T1b以上のときは、トルク指令値信号の増大に対応して、電流指令値I5よりも小さい電流指令値I6から増大する設定としてもよい。
次に、この発明の第2の実施形態の第1のバリエーションを図6から図8に基づいて説明する。図6は、SRモータMに3相の相電流を供給する本実施形態のモータ制御装置100のブロック図である。なお、本実施形態のモータ制御装置1000は、第1の実施形態のモータ制御装置1に比して制御手段としてのコントローラ100のみ異なり、その他の部分は同一である。従って、以下制コントローラ100についてのみ説明し、その他の部分について説明は省略する。
コントローラ100は、通電率マップ101、通電相マップ102、通電相選択手段103、回転位置検出手段104、回転速度検出手段105、回転速度比較手段106、進角マップ107、通電角マップ108、転流信号生成手段109、電流指令手段としての電流マップ110、デューティ計算手段111および駆動信号生成手段112を備える。
通電率マップ101は、図7に示すように、トルク指令値に対する通電率が記憶されており、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号(駆動指令信号)に基づき対応する通電率信号が出力される。通電率マップ101において、トルク指令値がトルク指令値T2a(第2の駆動指令値)未満であるときは、第1の通電率として「3/9(≒0.33)」に対応する通電信号が出力される。
通電率マップ101において、トルク指令値がトルク指令値T2a(第2のトルク指令値)以上でありトルク指令値T2f(第3のトルク指令値)未満であるときは、トルク指令信号(駆動指令信号)の増大に対応して、第2から第6の通電率として段階的に増加する「4/9(≒0.44)」、「5/9(≒0.56)」、「6/9(≒0.67)」、「7/9(≒0.78)」、「8/9(≒0.89)」に対応する通電率信号が出力される。そして、トルク指令値がトルク指令値T2f(第3のトルク指令値)以上であるときは、第7の通電率として「9/9(=1)」に対応する通電率信号が出力される。
通電相マップ102には、図8に示すように、7行×9列の通電相情報が記憶されており、通電率マップ101から供給される通電率信号に対応し選択される「行」の通電相信号が出力される。なお、各行には、順に「U相」「V相」「W相」「U相」「V相」「W相」「U相」「V相」「W相」に割り当てられた9つの通電信号が記憶されている。
通電率マップ101から第1の通電率(「3/9」)に対応する通電率信号が通電相マップ102に供給されると、第1の通電率に対応し、第1行の通電相信号が通電相マップ102から出力される。同様に、通電率マップ101から第2から第7の通電率に対応する通電率信号が通電相マップ102に供給されると、第2から第7の通電率に対応し、第2行から第7行の通電相信号が通電相マップ102から出力される。なお、図8に示す7行×9列の通電相情報において、「1」はU相、V相またはW相が「オン」され、「0」はU相、V相またはW相が「オフ」される状態を示す。
次に、通電相マップ102に記憶されている7行×9列の通電相情報における「1」と「0」の配列について説明する。通電相情報において、9つの「1」または「0」が配置されている各行の通電信号に対し、「1」が配置される割合は、対応する通電率と等しくなるように設定されている。そして、「1」が配置される順番は、各行の全体の通電信号に対して均等に分散されるように設定されている。以下、本実施形態の通電相マップ102の通電相情報における「1」と「0」の配列方法について説明する。
本実施形態においては、全ての行において第1列には「1」が配置される。そして、第2列に「0」を配置した場合に、第1列と第2列の2列のうち「1」が配置される割合が対応する通電率より小さいときは「1」を配置し、2列のうち「1」が配置される割合が対応する通電率以上となるときは「0」を配置する。同様に、第2列に引き続き第3列に「0」を配置した場合に、第1列から第3列までの3列のうち「1」が配置される割合が対応する通電率より小さいときは「1」が配置され、「1」の割合が対応する通電率以上のときは「0」が配置される。これらの配置を引き続き第3列から第9列まで実施することにより各列の通電相信号が生成される。
例えば、以下に第1の通電率である「3/9(≒0.33)」に対応する第1行の通電相信号について説明する。上記ように第1列には「1」が配置され、次に、第2列に「0」を配置すると、第1列と第2列の2列のうち「1」が配置される割合は「1/2(=0.5)」となり、第1の通電率以上となる。そのため、第2列には「0」が配置される。同様に、第3列に「0」を配置すると、第1列から第3列までの3列のうち「1」が配置される割合は「1/3(≒0.33)」となり、第1の通電率以上となる。そのため、第3列には「0」が配置される。
第3列に引き続き第4列に「0」を配置すると、第1列から第4列までの4列のうち「1」が配置される割合は「1/4(=0.25)」となり第1の通電率以下となる。従って、第4列には「1」が配置される。以下、同様に、「1」または「0」が選択的に配置され、第5列から第9列には、順に「0」「0」「1」「0」「0」が配置される。
回転位置検出手段104は、回転センサ20から供給される回転信号に基づきロータ120の回転位置を検出し、回転位置に対応する回転位置信号を出力する。回転速度検出手段105は、回転位置検出手段から供給される回転位置信号に基づきロータ120の回転速度を検出し、回転速度に対応する回転速度信号を出力する。
回転速度比較手段106には、予め定められた回転速度閾値が記憶されており、回転速度比較手段106は、回転速度検出手段105から供給される回転速度信号と回転速度閾値を比較する。そして、回転速度比較手段106は、回転速度信号が回転速度閾値未満であると判断した場合には禁止信号を出力し、回転速度信号が回転速度閾値以上であると判断した場合には許可信号を出力する。
通電相選択手段103は、回転速度比較手段106から禁止信号が供給された場合には、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号の大きさによらず、常に、U相、V相およびW相の3相を通電相とし、通電相に対応する通電相信号を出力する。一方、通電相選択手段103は、回転速度比較手段106から許可信号が供給された場合には、通電相マップ102から供給される通電相信号を出力する。
進角マップ107には、回転速度に対する進角量が記憶されており、回転速度検出手段105から供給される回転速度信号に対応する進角量が進角信号として進角マップ107から出力される。また、通電角マップ108には、回転速度に対する通電角量が記憶されており、回転検出速度に対応する通電角量が通電角信号として通電角マップ55から出力される。
転流信号生成手段109は、通電信号選択手段103から供給される通電相信号および回転位置検出手段104から供給される回転位置信号に基づきU相、V相およびW相の通電パターン信号を形成する。そして、形成された通電パターン信号は、進角マップ107から供給される進角信号および通電角マップ108から供給される通電角信号により、進角および通電角が調整される。
回転速度比較手段106から通電相選択手段103に禁止信号が供給されている場合には、通電相選択手段103からは、常に、U相、V相およびW相の3相を通電相とする通電相信号が転流信号生成手段109に供給される。そのため、転流信号生成手段109では、U相、V相およびW相の通電パターン信号が形成される。
回転速度比較手段106から通電相選択手段103に許可信号が供給されている場合には、通電相選択手段103からは通電相マップ102から供給される通電相信号が出力される。そのため、転流信号生成手段109では、通電相マップ102から供給される通電相信号に対応する通電相信号が出力される。
通電相選択手段103から転流信号生成手段109に、図8に示す第1行から第7行の通電相信号が供給されたときには、転流信号生成手段108では、通電相信号において「1」となる相を順次オンとする通電パターン信号が形成され出力される。例えば、通電相選択手段103から転流信号生成手段109に、第1行の通電相信号が供給されたときには、転流信号生成手段108では、U相のみを順次オンとする通電パターン信号が出力される。
電流指令手段としての電流値マップ110には、トルク指令値に対する電流指令値が記憶されており、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号に基づき対応する電流指令値信号が出力される。電流値マップ110から出力される電流指令値信号は、図9に示すように、トルク指令値信号がトルク指令値T2a(第2の駆動指令値)未満のときは、トルク指令値信号の増大に対応して、予め定められた電流指令値I7(第3の電流指令値)まで電流指令値信号は増大する。なお、同図において、実線は本実施形態における電流指令値を示し、破線は常に3相の相電流を通電する従来例における電流指令値を示す。
トルク指令値信号がトルク指令値T2a(第2の駆動指令値)以上でありトルク指令値T2f(第3の駆動指令値)未満のときには、電流値マップ110から出力される電流指令値信号は、電流指令値I7(第3の電流指令値)で一定となる。すなわち、図7に示すように通電率が段階的に変化するトルク指令値T2a(第2の駆動指令値)以上でありトルク指令値T2f(第3の駆動指令値)未満のときには、電流指令値は一定となる。
そして、トルク指令値信号がトルク指令値T2f(第3の駆動指令値)以上のときは、トルク指令値信号の増大に対応して、電流指令値信号は電流指令値I7からトルク指令値の増大に対応して増大する。すなわち、図7に示すように通電率が変化しないトルク指令値T2f(第3の駆動指令値)以上のときは、電流指令値はトルク指令値信号の増大に対応して、電流指令値信号は増大する。
従来例では、トルク指令値T2aにおいて、電流指令値は電流指令値I7よりも小さい電流指令値I8であるのに対し、本実施形態では、トルク指令値T2fにおいて、電流指令値は電流指令値I8よりも大きい電流指令値I7に設定されており、トルク指令値が比較的小さいときにおいて、電流指令値が大きくなるように設定されている。
デューティ計算手段111は、電流センサ10から供給される電流値信号および電流値マップ110から供給される電流指令値信号に基づきパルス幅変調(以下「PWM」とする。)信号のデューティ比を計算し、計算されたデューティ比に対応するデューティ比信号を出力する。なお、デューティ計算手段111においてデューティ比は、電流指令値信号に対する電流値信号の偏差により計算される。
駆動信号生成手段112は、転流信号生成手段109から供給される通電パターン信号、およびデューティ計算手段111から供給されるデューティ比信号に基づきPWM制御信号を生成し、インバータ回路30に供給する。生成されるPWM制御信号は、U相、V相またはW相の通電パターン信号に、デューティ計算手段111から供給されるデューティ比信号に基づくPWM信号を重畳させたものである。
本実施形態において、駆動信号生成手段112にて生成されたPWM制御信号は、上記のようにデューティ計算手段111から供給されるデューティ比信号に基づきPWMされるとともに、選択されたU相、V相およびW相の通電相に対応し、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に相電流を供給することをインバータ回路30に指令する。そして、このPWM制御信号が供給されるインバータ回路30は、直流電源BTからの電流をU相、V相およびW相から選択された相電流とし、選択された相電流はU相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)から選択される電気巻線に順次供給する。
本実施形態の第1のバリエーションにおいて、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号が比較的小さいトルク指令値T2a(第2の駆動指令値)未満であるときに、通電率を「3/9」とし、相電流が供給される電気巻線を減少させるとともに、電流指令値を比較的大きな値である電流指令値(第3の電流指令値)I7に向けて変化させる設定とされている。そのため、トルク指令値が小さい範囲においても比較的大きな電流指令値とすることができ、SRモータに比較的大きな相電流を供給することが可能となる。その結果、本実施形態のモータ制御装置1は、幅広い駆動領域において、SRモータを高効率で駆動させることができることができる。
さらに、トルク指令信号がトルク指令値T2a(第2の駆動指令値)以上でありトルク指令値T2f(第3の駆動指令値)未満までは、電流指令値を電流指令値I7で一定とするとともに、通電率を段階的に徐々に増加させることにより、SRモータMのロータRの回転を円滑に可変させることができる。
次に、第2の実施形態の第2のバリエーションについて説明する。第2のバリエーションのモータ制御装置1000のコントローラ100は、第1のバリエーションに対し通電率マップ101に記憶されている通電率信号および通電相マップ102に記憶されている通電相信号のみ異なる。以下、図10から図76に基づき、通電率マップ101に記憶されている通電率信号および通電相マップ102に記憶されている通電相信号のみについて説明し、その他の部分については省略する。
通電率マップ101は、図10および図11に示すように、トルク指令値に対する通電率が記憶されており、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号(駆動指令信号)に基づき対応する通電率信号が出力される。通電率マップ101において、トルク指令値がトルク指令値T3a(第2の駆動指令値)未満であるときは、第1の通電率として「32/96(≒0.33)」に対応する通電信号が出力される。
通電率マップ101において、トルク指令値がトルク指令値T3a(第2のトルク指令値)以上でありトルク指令値T3b(第3のトルク指令値)未満であるときは、トルク指令信号(駆動指令信号)の増大に対応して、第2から第64の通電率として、「33/96(≒0.34)」から「95/96(≒0.99)」まで、63段階に徐々に増加する通電率信号が出力される。そして、トルク指令値がトルク指令値T3b(第3のトルク指令値)以上であるときは、第65の通電率として「96/96(=1)」に対応する通電率信号が出力される。
通電相マップ102には、図12から図76に示すように、65行×96列の通電相情報が記憶されており、通電率マップ101から供給される通電率信号に対応し選択される「行」の通電相信号が出力される。なお、65行×96列の通電相情報を一つの図面で明瞭に示すことができない。そのため、65行×96列の通信相情報は、1行から65行までの65行の各通電相信号に分けられ、分けられたそれぞれの各通電相信号が図12から図75に示される。そして、各行には、順に「U相」「V相」「W相」「U相」「V相」「W相」「U相」「V相」「W相」・・・「V相」「V相」「W相」に割り当てられた96の通電信号が記憶されている。
通電率マップ101から第1の通電率(「32/96」)に対応する通電率信号が通電相マップ102に供給されると、第1の通電率に対応し、図12に示される第1行の通電相信号が通電相マップ102から出力される。同様に、通電率マップ101から第2から第65の通電率に対応する通電率信号が通電相マップ102に供給されると、第2から第65の通電率に対応し、図13から図76に示される第2行から第65行の通電相信号が通電相マップ102から出力される。なお、図12から図76に示される65行×96列の通電相情報において、「1」はU相、V相またはW相が「オン」され、「0」はU相、V相またはW相が「オフ」される状態を示す。
通電相マップ102に記憶されている65行×96列の通電相情報における「1」と「0」の配列の順番は、第1のバリエーションの配列の順番と同様である。すなわち、96の「1」または「0」が配置されている各行の通電信号に対し、「1」が配置される割合は、対応する通電率と等しくなるように設定されている。そして、「1」が配置される順番は、各行の全体の通電信号に対して均等に分散されるように設定されている。
本実施形態の第2のバリエーションにおいても第1のバリエーションと同様に、トルク指令値が小さい範囲においても比較的大きな電流指令値とすることができ、SRモータに比較的大きな相電流を供給することが可能となり、モータ制御装置1000は、幅広い駆動領域において、SRモータを高効率で駆動させることができることができる。
さらに、第2のバリエーションにおいては、トルク指令信号がトルク指令値T3a(第2の駆動指令値)以上でありトルク指令値T3b(第3の駆動指令値)未満までは、通電率を93段階に分け、通電率を多段階的に徐々に増加させることにより、SRモータ100のロータ120の回転を極めて円滑に可変させることができる。
次に、図77に基づき第3の実施形態のモータ制御装置2000について説明する。第3の実施形態のモータ制御装置2000は、第2の実施形態の第1のバリエーションのモータ制御装置1000に比し、モータ制御装置2000に備えられている制御手段200において、1周期メモリ120、周期比較手段121、および保持手段122が付加されていることのみが異なり、その他の部分については同一である。従って、以下、制御手段200に備えられている1周期メモリ120、周期比較手段121および保持手段122について説明し、その他の部分については説明を省略する。
1周期メモリ120には、本実施形態のSRモータMの1周期(「U」「V」「W」「U」「V」「W」「U」「V」「W」:9つの通電タイミング)にロータRが回転する角度に対応する角度閾値が記録されている。なお、本実施形態においては、1周期の間にロータRが回転する角度は機械角270度であり、角度閾値として機械角270度が記憶されている。
周期比較手段121は、回転位置検出手段104から供給される回転位置信号に対応する角度と角度閾値とを比較し、回転位置信号に対応する角度と角度閾値とが一致したときに、一致信号を出力する。
保持手段122は、周期比較手段121から一致信号が供給されるまでは、トルク指令手段40から供給されるトルク指令信号が変化しても変更前のトルク指令信号を出力する。一方、保持手段122は、周期比較手段121から一致信号が供給されると、トルク指令手段40から供給される変更後のトルク指令信号を出力する。
上記のように、相数比較手段122から一致信号が保持手段123に供給されるまでは変更前のトルク指令信号を出力することにより、トルク指令信号が1周期内で急速に変化したときも、設定された通電率でSRモータを駆動させることができる。
次に、図78および図79に基づき第4の実施形態のモータ制御装置3000について説明する。第4の実施形態は、第2の実施形態の第1のバリエーションのモータ制御装置1000に比し、モータ制御装置3000に備えられている制御手段300において、連続通電相数マップ130、連続通電相数カウンタ131および連続相数比較手段132が付加されていることのみが異なり、その他の部分については同一である。従って、以下、制御手段300に備えられている連続通電相数マップ130、連続通電相数カウンタ131および連続相数比較手段132についてのみ説明し、その他の部分については説明を省略する。
本実施形態においては、第2および第3の実施形態と同様に図8に示される通電相マップ102が用いられており、連続通電相数マップ130には、図8に示される通電相マップ102に対応する連続通電相数が記憶されている。そして、記憶されている連続通電相数に対応する連続通電相数信号を出力する。例えば、第1の通電率のとき、U相のみが1周期において断続的にオン(「1」)となるため連続通電相数は「1」である。
連続通電相数カウンタ131は、転流信号生成手段109から供給される通電パターン信号に基づき連続通電相数をカウントし、カウントされたカウント連続通電相数信号を出力する。相数比較手段132は、連続通電相数カウンタ131から供給されるカウント連続通電相数信号と、連続通電相数マップ130から供給される連続通電相数信号を比較し、カウント連続通電相数信号における連続通電相数が、連続通電相数信号における連続通電相数の数以上であると判断されたときは、通知信号を出力する。
通電相選択手段103は、相数比較手段132から通知信号が供給されたときは、通電相マップ102から供給される通電相信号に拘わらず、次に、最初に通電相選択手段103から出力される通電相信号は、「オフ(0)」となる信号を出力する。
上記のように、相数比較手段132から通知信号が通電相選択手段103に供給されたときは、通電相マップ102から供給される通電相信号に拘わらず、次に、最初に通電相選択手段103から出力される通電相信号は、「オフ(0)」となる信号を出力することで、通電率を目的とする通電率に一致させることができる。
例えば、第4の通電率に対応し、2回連続して「オン(1)」「オン(1)」となる作動を制御装置300がした直後に、トルク指令値の変更により、連続相数が「4」である第5の通電率で動作した場合、相数比較手段132が設けられていないときには、制御装置300は以下に示される動作を行う。すなわち、第4の通電率に対応し、2回連続した「オン(1)」となる動作に引き続き、4回連続する「オン(1)」となる動作を制御装置300は実効する。そのため、制御装置300は、6回連続した「オン(1)」となる動作を行ってしまい予め定められている連続相数である「4」を超えてしまう。
それに対し、本実施形態では相数比較手段132が設けられ、所定の場合に通知信号が通電相選択手段103に供給され、通知信号が通知されると通電相選択手段103からは、最初に「オフ(0)」となる信号を出力されるよう通電相選択手段103は設定されている。
そのため、上記のように、第4の通電率に対応し、2回連続する「オン(1)」動作を制御装置300が実効した直後に、トルク指令値の変更により、第5の通電率に対応する動作を制御装置300が開始した場合、制御装置300は以下の動作を行う。すなわち、2回連続した「オン(1)」となる動作に引き続き、さらに2回連続する「オン(1)」となる動作を制御装置300は実効したときは、カウント連続相数信号は「4」となり、予め定められている連続相数である「4」以上となる。その場合には、通電相選択手段103からは、最初に「オフ(0)」となる信号が出力されるため、カウント連続相数は予め定められている連続相数を超えることはなく、トルク指令値に対応した通電率で制御装置300は動作される。
さらに、上記のようにカウント連続相数を監視するとともにカウント連続相数に対応し、瞬時に通電相選択手段103から出力される通電相信号を制御することにより、トルク指令値に対応した通電率で制御装置300が動作する応答性の向上が図られる。
なお、本発明は上述の第1から第3の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)に相電流を順次切り換えて通電するときに、U相、V相およびW相の電気巻線(U、V、W)のうちいづれか2つの電気巻線に同時に相電流が通電される状態があってもよい。