JP5521976B2 - 負極材料の製造方法、当該製造方法により製造される負極材料、及び当該負極材料を含む金属二次電池 - Google Patents
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Description
充電時:MgH2+2Li++2e−→Mg+2LiH 式(1)
放電時:Mg+2LiH→MgH2+2Li++2e− 式(2)
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、電池に用いられることにより当該電池の充放電容量を増やし、反応抵抗を減らす負極材料の製造方法、当該製造方法により製造される負極材料、及び当該負極材料を含む金属二次電池を提供することを目的とする。
本発明の負極材料の製造方法は、金属二次電池に用いられる負極材料の製造方法であって、MgH2と導電化材とを接触させる第1の接触工程、及び、前記第1の接触工程により得られる前記MgH2及び前記導電化材を含有する組成物と、コンバージョン反応の可逆性を向上させる金属触媒とを接触させる第2の接触工程を有することを特徴とする。
上記の説明においては、金属触媒は発生した水素ガスを解離吸着するものと仮定しているが、金属触媒は、LiHから脱離した水素ガスになる前の水素原子を吸着するということも考えられる。また、金属触媒は、LiHの解離反応自体を促進するとも考えられる。
発明者らは、負極材料の調製工程において、MgH2と導電化材を予め接触させた後に、金属触媒をさらに接触させる2段階処理を採用することにより、これらの原料を一度に混合する調製方法と比較して、金属二次電池に当該負極材料を使用した場合における当該電池の充放電容量の増加、及び反応抵抗の低減の効果が得られることを見出した。また、発明者らは、このような2段階の接触処理を採用することにより、金属触媒がMgH2の表面に露出する結果、上記式(1)の反応が促進されることを初めて見出し、本発明を完成させた。
これらの原料を接触させる方法としては、例えば、原料同士を混合する混合処理や、一方の原料に、他方の原料を担持させる担持処理等を挙げることができる。
第1の接触工程において、遊星型ボールミルを行う際の台盤回転数としては、例えば100rpm〜1000rpmの範囲内、中でも200rpm〜600rpmの範囲内であることが好ましい。また、遊星型ボールミルを行う際の処理時間は、例えば1時間〜100時間の範囲内、中でも2時間〜10時間の範囲内であることが好ましい。
一方、第2の接触工程においては、後述するように、第1の接触工程よりもより穏やかな条件下でメカニカルミリングを行うことが好ましい。したがって、第2の接触工程において、遊星型ボールミルを行う際の台盤回転数としては、上記第1の接触工程における回転数よりも少ない回転数であって、例えば50rpm〜500rpmの範囲内、中でも100rpm〜300rpmの範囲内であることが好ましい。また、遊星型ボールミルを行う際の処理時間は、上記第1の接触工程における処理時間よりも短い処理時間であって、例えば1分〜10時間の範囲内、中でも5分〜3時間の範囲内であることが好ましい。
本発明においては、原料混合物に含まれる各材料が、所定の平均粒径となるようにメカニカルミリングを行うことが好ましい。
本発明に使用されるMgH2は、通常、活物質として機能するものである。MgH2は、例えばLiイオンと反応することにより、LiH及びMgを生じさせる。また、Liイオンとの反応で生じたMg(0価)は、さらにLiイオンと合金化反応を起こし、Li3Mg7となるまでLiを吸蔵する。このように、MgH2を用いることによって極めて大きなLi吸蔵容量が得られるものの、その逆反応である上記式(2)の反応が起こりにくいため、金属二次電池に用いた場合に充放電効率が低くなるという問題がある。本発明においては、この問題を、後述する金属触媒を用いることにより解決する。
本発明に使用される導電化材は、活物質であるMgH2が導電性に乏しいため、活物質に導電性を付与する役割を果たす材料である。したがって、本発明に使用される導電化材は、MgH2と接触していることが好ましく、MgH2が担持されていることがより好ましい。電子伝導パスを確保しやすいからである。
本発明に使用される導電化材は、特に限定されるものではないが、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、カーボンブラック、コークス、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長炭素繊維(VGCF)等の炭素繊維、黒鉛等の炭素材料を挙げることができる。
本発明に使用される金属触媒は、MgH2に接触し、コンバージョン反応の可逆性を向上させるものである。当該金属触媒がコンバージョン反応の可逆性を向上させることは、後述する実施例に記載された評価用電池を作製し、充放電効率を測定することで確認できる。
本発明に使用される金属触媒は、MgH2に接触していれば良いが、MgH2に担持されたものであることが好ましい。また、上述したように、本発明に使用される金属触媒は、MH(Mは例えばLiである)からの水素脱離反応及びMgへの水素付加反応の少なくとも一方に作用するものであることが好ましい。水素脱離反応及び水素付加反応の少なくとも一方が、上記式(2)の反応の律速段階と推定されるからである。
MgH2の導電性を高める役割を有する導電化材は、その接触過程において、MgH2の表面を被覆すると考えられる。MgH2、導電化材及び金属触媒を一度に混合した場合には、導電化材は、MgH2の表面のみならず、金属触媒の表面も被覆することが考えられ、その結果、金属触媒は、十分な触媒能を発揮することができない。一方、本発明のように2段階に分けて原料を接触させる場合には、金属触媒を接触させる前に、既に導電化材はMgH2の表面のみを覆っていることから、その後に金属触媒を接触させても、金属触媒が導電化材中に埋もれるおそれは少ない。
なお、金属触媒表面を可能な限り露出させることが好ましいという観点から、第2の接触工程においては、第1の接触工程よりもより穏やかな条件下で接触させることが好ましい。特にメカニカルミリングを行う場合には、第2の接触工程において、第1の接触工程よりもより少ない回転数、及びより短い処理時間でメカニカルミリングを行うことが好ましい。
本発明の負極材料は、上記製造方法により得られることを特徴とする。
本発明の負極材料は、通常、金属二次電池(金属イオン二次電池)に用いられるものである。上記式(1)及び(2)は、いずれもリチウム二次電池における電極反応であるが、コンバージョン反応におけるMgH2が果たす役割は、リチウム以外の金属でも同様であると考えられる。そのため、本発明の負極材料は、リチウム二次電池以外の金属二次電池に対しても用いることができる。本発明の負極材料が使用できる金属二次電池としては、例えば、リチウム二次電池、ナトリウム二次電池、カリウム二次電池、マグネシウム二次電池、カルシウム二次電池等を挙げることができ、中でも、リチウム二次電池、ナトリウム二次電池、カリウム二次電池が好ましく、特に、リチウム二次電池が好ましい。
本発明の金属二次電池は、正極活物質層と、負極活物質層と、当該正極活物質層及び当該負極活物質層の間に挟持された電解質層と、を備える金属二次電池であって、前記負極活物質層が、上記負極材料を含有することを特徴とする。
以下、本発明の金属二次電池に使用される、負極活物質層、正極活物質層、電解質層及びその他の構成について、詳細に説明する。
本発明における負極活物質層は、少なくとも、上述した負極材料を含有する層であり、必要に応じて、導電化材及び結着剤の少なくとも一方をさらに含有していても良い。負極活物質層における負極材料の含有割合は、特に限定されるものではないが、例えば20質量%以上であることが好ましく、40質量%〜80質量%の範囲内であることがより好ましい。また、上述したように、負極材料自体が導電化材を含有している場合があるが、負極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。負極材料に含まれる導電化材と、新たに添加する導電化材とは、同一の材料であっても良く、異なる材料であっても良い。なお、導電化材の具体例については、上述した通りである。また、結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素含有結着剤等を挙げることができる。負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、導電化材及び結着剤の少なくとも一方をさらに含有していても良い。正極活物質の種類は、金属二次電池の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム二次電池に用いられる正極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiVO2、LiCrO2等の層状正極活物質、LiMn2O4、Li(Ni0.25Mn0.75)2O4、LiCoMnO4、Li2NiMn3O8等のスピネル型正極活物質、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFePO4等のオリビン型正極活物質等を挙げることができる。正極活物質層における正極活物質の含有割合は、特に限定されるものではないが、例えば40質量%〜99質量%の範囲内であることが好ましい。
本発明における電解質層は、上記正極活物質層及び上記負極活物質層の間に形成される層である。電解質層に含まれる電解質を介して、正極活物質と負極活物質との間の金属イオン伝導を行う。電解質層の形態は、特に限定されるものではなく、液体電解質層、ゲル電解質層、固体電解質層等を挙げることができる。
本発明の金属二次電池は、さらに、正極活物質層の集電を行う正極集電体、及び負極活物質層の集電を行う負極集電体を有していても良い。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン及びカーボン等を挙げることができ、中でもアルミニウムが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケル及びカーボン等を挙げることができ、中でも銅が好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な金属二次電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。
[実施例1]
図3は、実施例1の工程を説明するフローチャートである。
まず、MgH2粉末(平均粒径30μm)、導電化材としてカーボン粉末(MCMB、平均粒径1μm)、及び金属触媒としてNi粉末(平均粒径100nm)を用意した。なお、カーボン粉末は、市販のMCMB(平均粒径20μm)に対して、遊星型ボールミル処理(400rpm×5時間)を行うことにより、得られたものである。Ni粉末の添加量はMgH2に対して1at%とした。また、MgH2粉末及びNi粉末の合計の質量と、カーボン粉末の質量の比が、(MgH2+Ni):MCMB=90質量%:10質量%となるように、含有割合を調整した。
次に、MgH2及び上記所定量のカーボン粉末を混合し組成物を得た。続いて、Ar雰囲気下、当該組成物と、破砕用ジルコニアボール(φ=10mm)とを、組成物:破砕用ジルコニアボール=1質量%:40質量%となるように、遊星型ボールミル用の容器に入れ、密閉した。その後、容器を遊星型ボールミル装置に取り付け、台盤回転数400rpm、処理時間5時間の条件で、微細化を行った。
続いて、微細化後の当該組成物に、Ar雰囲気下、上記所定量のNi粉末を添加し、原料混合物:破砕用ジルコニアボール=1質量%:40質量%となるように、遊星型ボールミル用の容器に入れ、密閉した。その後、容器を遊星型ボールミル装置に取り付け、台盤回転数200rpm、処理時間1時間の条件で微細化を行い、実施例1の負極材料を調製した。
まず、実施例1で使用したMgH2粉末、カーボン粉末及びNi粉末を用意した。各材料の混合比は、実施例1と同様とした。
次に、MgH2粉末、カーボン粉末及びNi粉末を混合した。続いて、Ar雰囲気下、当該原料混合物と、破砕用ジルコニアボール(φ=10mm)とを、原料混合物:破砕用ジルコニアボール=1質量%:40質量%となるように、遊星型ボールミル用の容器に入れ、密閉した。その後、容器を遊星型ボールミル装置に取り付け、台盤回転数400rpm、処理時間5時間の条件で、微細化を行い、比較例1の負極材料を調製した。
実施例1及び比較例1で得られた負極材料について、水素放出温度及び水素吸蔵温度を測定し、水素吸蔵放出特性の評価を行った。水素放出温度は、示差走査熱量測定(DSC測定、室温〜450℃、5℃/分)により測定し、水素吸蔵温度は、PCT測定(Pressure−Compostion isotherm測定、450℃の熱処理にて完全脱水、0.9MPa水素加圧、室温〜450℃、5℃/分)により測定した。その結果を下記表1及び図4に示す。図4(a)は、実施例1及び比較例1の負極材料のDSC曲線であり、図4(b)は、実施例1及び比較例1の負極材料のPCT曲線である。図4(a)及び図4(b)のいずれにおいても、太線で示した曲線が実施例1の結果を表し、細線で示した曲線が比較例1の結果を表す。
実施例1及び比較例1で得られた負極材料を用いて、実施例1及び比較例1の評価用電池をそれぞれ作製した。
まず、試験電極を作製した。上記負極材料と、導電化材(アセチレンブラック60質量%+VGCF40質量%)と、結着剤(ポリフッ化ビニリデン、PVDF)とを、負極材料:導電化材:結着剤=45:40:15の質量比で混合し、混練することにより、ペーストを得た。次に、得られたペーストを、銅箔上にドクターブレードにて塗工し、乾燥し、プレスすることにより、厚さ10μmの試験電極を得た。
また、図5に示されるように、実施例1の充放電曲線中のプラトー領域は、比較例1の充放電曲線中のプラトー領域よりも増加していることが分かる。この結果から、実施例1の評価用電池は、比較例1の評価用電池よりも、反応抵抗が小さいと推測できる。
実施例1及び比較例1の負極材料について、SEM(Scanning Electron Microscopy)観察を行った。
SEM観察条件は以下の通りである。すなわち、走査型電子顕微鏡(Zeiss社製、型番:ULTRA55)を用いて、加速電圧2.0kVにて、倍率5万倍でSEM観察を行った。
図6中に白い点として見える部分は、Ni粒子の存在を示す。図6(a)(実施例1)と図6(b)(比較例1)とを比較すると分かるように、実施例1と比較例1のNi粉末の添加割合は同じであるにもかかわらず、実施例1の負極材料中には、比較例1の負極材料中よりもより多くのNi粒子が材料表面に露出していることが分かる。
上記水素吸蔵放出特性の評価、及び充放電特性の評価において、実施例1の負極材料及び当該材料を用いた評価用電池が、比較例1の負極材料及び当該材料を用いた評価用電池よりも優れている理由は、このように、負極活物質の表面に露出しているNi粒子の量がより多く、Ni粒子がより効率よく触媒能を発揮できることによるものと考えられる。
以上のように、MgH2を用いたコンバージョン反応によりLiを挿入脱離させる金属二次電池用負極材料の製造方法においては、原料の接触工程を2段階に分けることによって、全ての原料を一度に混合する場合と比較して、特に水素吸蔵放出特性及び充放電特性の観点から、得られる負極材料の特性が飛躍的に向上することが分かる。特性向上の理由は、上記式(2)の反応を促進する金属触媒が、負極活物質であるMgH2の表面に多く露出することによるものであることが分かる。
2 負極活物質層
3 電解質層
4 正極集電体
5 負極集電体
6 電池ケース
10 金属二次電池
Claims (8)
- 金属二次電池に用いられる負極材料の製造方法であって、
MgH2と導電化材とを接触させる第1の接触工程、及び、
前記第1の接触工程により得られる前記MgH2及び前記導電化材を含有する組成物と、コンバージョン反応の可逆性を向上させる金属触媒とを接触させる第2の接触工程を有することを特徴とする、負極材料の製造方法。 - 前記第1の接触工程は、前記MgH2及び前記導電化材を混合処理する工程である、請求項1に記載の負極材料の製造方法。
- 前記第2の接触工程は、前記組成物及び前記金属触媒を混合処理する工程である、請求項1又は2に記載の負極材料の製造方法。
- 前記混合処理が、メカニカルミリングによる微細化混合処理である、請求項2又は3に記載の負極材料の製造方法。
- 前記メカニカルミリングがボールミルである、請求項4に記載の負極材料の製造方法。
- 前記金属触媒が、Ni、Ti、Nb、La、Pd、Ag及びPt、並びにこれらの金属元素を1種又は2種以上含む合金からなる群から選ばれる金属触媒である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の負極材料の製造方法。
- 前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の負極材料の製造方法により得られることを特徴とする、負極材料。
- 正極活物質層と、負極活物質層と、当該正極活物質層及び当該負極活物質層の間に挟持された電解質層と、を備える金属二次電池であって、
前記負極活物質層が、前記請求項7に記載の負極材料を含有することを特徴とする、金属二次電池。
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