通電している電線(架空線)に関する活線作業は、絶縁手袋を着用して直接手作業で行う直接活線作業や、直接、電線の通電部分に触れず、活線近接範囲外から作業を行う間接活線作業がある。従来、間接的に活線の各種作業を行う間接活線作業においては、間接活線作業用器具を用いて、作業がなされている。
間接活線作業用器具は、活線の作業用途に応じて、選択されるもので、例えば接地短絡のための接地短絡器具がある。この種の接地短絡器具は、絶縁性の操作棒に接続して使用される。以下に、接地短絡器具を操作棒に接続して使用する例として、停電した高圧配電線の接地短絡作業について詳説する。
接地短絡作業においては、間接活線作業用器具のうち、接地短絡器具と共用操作棒とが用いられ、共用操作棒に接続した接地短絡器具を操作して所定の作業をすることが一般的である。
図9は、一般的な接地短絡器具であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は接地短絡器具と共に用いられる接地極の正面図である。図9に示すように、接地短絡器具100は、活線の接地をとるための作業用器具であり、電線を保持可能な三つの地絡金具101、101、101と、三つある地絡金具101、101、101のうち、一つの地絡金具101に他の二つの地絡金具101、101を取付可能な仮支持用棒102と、3本の電線であって、一端を各地絡金具101の端子にそれぞれ接続し、他の一端同士を接続する地絡線103、103、103と、接地極104に接続可能な接地金具105と、1本の電線であって、3本の地絡線103、103、103を一端に接続した端子にさらに接続し、他の一端に接地金具105を接続した接地線106とを備えている(例えば、特許文献1)。
また、地絡金具101は、略コの字形を有する固定部110と、共用操作棒の軸方向に進退可能に移動する可動部120と、後述の共用操作棒における先端部の装着部を挿入可能な上面をふさがれた円筒状の接続金具107と、地絡線103を接続する接続端子108とを備えている。前記固定部110は、先端側に鉤爪状の鉤爪部を有する爪部111と、略コの字形の基端部のほぼ中央が貫通され、内周面にネジ溝を切った貫通口を有する接続部112とを備えている。一方、前記可動部120は、前記接続部112の貫通口内周面のネジ溝に噛み合わさるようにネジ山を切った棒状のネジ軸部121と、前記固定部110と協働して電線を保持(把持)可能な可動体122とを備えている。前記可動体122は、固定部110と対向する面に凹部を有し、前記固定部110の鉤爪部から基端側に延びる直線部分に該凹部が嵌まり込んだ状態でネジ軸部121の先端に取り付けられており、ネジ軸部121に対して回転自在になっている。さらに、接続金具107の周面には、共用操作棒における先端部の装着部の周面に備えた係止用突起と係合可能な係合切れ込み109が形成されており、切れ込みの形状は、鉤爪状もしくはΤ型となっている。
図10は、一般的な共用操作棒の正面図である。図10に示すように、共用操作棒200は、把手ともなる棒状部201と、その一端側に設けられた先端部202と、他端側に設けられた後端部203とからなり、絶縁性の素材で形成される(例えば、特許文献2、特許文献3)。さらに、間接活線作業において、感電事故を防止するために、共用操作棒200のほぼ中間に、安全限界つば204を備えている。これは、作業者が握っても感電しない部分と、それ以外の部分であって、握ると感電する可能性がある部分との境界を明確にするために備えられたものである。さらに、共用操作棒200は、降雨時対策として、共用操作棒200の先端側から安全限界つば204とのほぼ中間に水切りつば205を備えている。
先端部202は、円柱形をしており、上面がふさがれている装着部206と、装着部206の周面に係止用突起207とを備えている。また、係止用突起207は、一対の円柱状の突起で構成されており、装着部206の周面に互いに反対側の位置の径方向外側に向かって備えられている。さらに、先端部202の上面には、ほぼ中央に孔を設けており、装着部206の内部に形成された空間から凸部を孔から突出させる凸形部材208と、該空間の内側からスプリングなどで凸形部材208を押し上げる弾性体とを備えている。さらに、先端部202は、装着部206及び棒状部201とを接続し、外周に軸方向に沿ったネジ部を有するネジ軸部と、該ネジ軸部に螺合し、装着部に装着した作業用器具をロックする位置とロック解除する位置とに移動自在なロックナット209とを有する。
後端部203は、別の共用操作棒や全長延長用の足し棒と接続するためのもので、装着部を有し、該装着部は、孔部と、孔部の軸方向に沿って延びる部分と径方向に沿って延びる部分からなるT字状のスリット部210とから構成される。孔部には、例えば、別の共用操作棒の先端部における装着部が挿入され、スリット部210の周縁で形成された空間内には、装着部の側面の係止用突起が突出されることによって、別の共用操作棒と装着される。
上記のような構成からなる接地短絡器具100、共用操作棒200の使用方法について説明する。まず、仮支持用棒102の取り付けられた地絡金具101に、他の二つの地絡金具101、101を接続する。そして、他の二つの地絡金具101、101を接続した中央の地絡金具101の接続金具107に、共用操作棒200の装着部206を、係合切れ込み109に沿って係止用突起207を挿入することで装着する。なお、先端部202の凸形部材208は、鉤爪状の係合切れ込み109の端まで係止用突起207が達すると、弾性体により、引き戻す方向に押し戻され、係止用突起207が係合切れ込み109の鉤爪状の端に引っ掛かって固定される。つぎに、地面などに打ち込まれた接地極104に接地金具105を接続する。
そして、共用操作棒200を保持して、地絡金具101を電線に近づけ、固定部110の鉤爪部の先端と可動部120の可動体122との隙間に、電線を通し、鉤爪部に引っ掛ける。なお、これに先立っては、固定部110の鉤爪部と可動体122との開き具合を最大にして固定部110の接続部112と可動体122とを当接させることにより、固定部110をネジ軸部121に対して回転不能なロック状態にしておくことが好ましい。これは、そのようにしておかなければ、地絡金具101が共用操作棒200の軸回りに自由に回転できて不安定な状態であるため、共用操作棒200を操作して固定部110の鉤爪部の先端と可動体122との隙間に電線を通そうとしても、地絡金具101を思い通りの向きに操作することができないからである。この状態で共用操作棒200を回転させると、固定部110は、鉤爪部の先端と鉤爪部の基端部分を接点に電線を捻るように力が加わり、回り止めされる。そして、共用操作棒200をさらに回転させると、固定部110が回り止めされているため、可動体122が回転し、接続部112の貫通口にネジ込められたネジ軸部121に回転力が加わる。しかし、可動体122は、固定部110の鉤爪部から基端側に延びる直線部分に凹部を嵌まり込んでいるため、回り止めされている。よって、共用操作棒200を左回転させると、固定部110が電線により回り止めされ、可動体122が固定部110により回り止めされているが、ネジ軸部121は回転自在であるため、可動体122は、ネジにより、固定部110の鉤爪部に向かって前進し、鉤爪部と可動体122との隙間が狭くなる。すなわち、電線を締め付けることができる。
同様に、仮支持用棒102に取り付けられている他の二つの地絡金具101、101についても、順に共用操作棒200を装着して、仮支持用棒102から取り外して、それぞれの電線に保持することで、各電線の接地をとることができる。なお、これらの一連の作業では、一つの共用操作棒200が使用されるため、三つの地絡金具101、101、101の電線への取付にあたり、一つの地絡金具101を電線に取り付ける作業の度に、共用操作棒200を地絡金具101に装着して、取り外すという作業を伴う。具体的には、三つの地絡金具101、101、101を電線に締め付けるに当たり、一つ目の地絡金具101に共用操作棒200を装着し、一つ目の地絡金具101を電線に締め付けた後、一つ目の地絡金具101に装着していた共用操作棒200を取り外す。次に、二つ目の地絡金具101に共用操作棒200を装着し、二つ目の地絡金具101を電線に締め付けた後、二つ目の地絡金具101に装着していた共用操作棒200を取り外す。最後に、三つ目の地絡金具101に共用操作棒200を装着し、三つ目の地絡金具101を電線に締め付けた後、三つ目の地絡金具101に装着していた共用操作棒200を取り外す。このように、各地絡金具101の作業毎に、共用操作棒200から着脱するという作業を要するため、作業中に共用操作棒200のロックナット209で地絡金具101が締結(ロック)されて、地絡金具101から共用操作棒200が取り外すことが出来なくなることを防止するように、各地絡金具101に共用操作棒200を装着して作業する前には、共用操作棒200のロックナット209を右回転させて、ネジ軸部を介して、装着部206側から棒状部201側に向けて移動(ロック解除)させておく事前準備がなされる。
ここで、ロックナット209による締結(ロック)とは、地絡金具などの作業用器具を共用操作棒の装着部に装着した際に、作業用器具とロックナット209が強く密接するまでロックナット209を左回転させた状態のことであり、この状態下においては、作業用器具の直下にロックナット209が強く密接しており、作業用器具を押し下げることができないため、装着部206に装着した作業用器具を取り外すことはできない。具体的には、装着部206の頂部にある凸形部材208を押し上げる弾性体の弾性力に抗して、作業用器具を介し凸形部材208を押し下げ、係合切れ込み109の鉤爪状の端に引っ掛かって固定されていた係止用突起207を係合切れ込み109に沿って取り外すことはできない。また、ロック解除とは、作業用器具とロックナット209が接することがないように、ロックナット209を右回転させて下方にロックナット209を下げた状態(入念には、ロックナットを右回転させて、最下方まで下げた状態)のことである。この状態下においては、作業用器具を押し下げて、装着部206に装着した作業用器具を取り外すことができる。
以下、本発明に係る共用操作棒におけるロックナットの係止構造の一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
図1は、共用操作棒におけるロックナットの係止構造であって、(a)は共用操作棒を含んだ全体図、(b)は矢印A方向からの側面図である。本実施形態に係る共用操作棒1は、図1に示すように、棒状部2と、棒状部2の一端に作業用器具を装着可能な先端部3と、棒状部2の他端に別の工具(例えば、別の共用操作棒や全長延長用の足し棒)と装着可能な後端部4と、係止機構5とから構成される。
図1(a)に示すように、棒状部2は、軸方向に伸びた棒状の形状をなし、作業者が把持できるように構成される。具体的には、棒状部2は、軸方向に伸びる円柱状をなし、絶縁性の素材からなり、棒状部2の軸方向に沿って、傘状の二つのつばが設けられる。一つ目のつばとして、感電事故を防止するために、安全限界つば6が、棒状部2の軸方向(長手方向)の略中間に位置するように設けられている。これは、作業者が握っても感電しない部分と、それ以外の部分であって、握ると感電する可能性がある部分との境界を明確にするために備えられたものである。換言すれば、棒状部2の略中間に設けられる安全限界つば6よりも下方側(後述の後端側)を作業者は、把持して作業することが要請される。また、二つ目のつばとして、降雨時の対策のために、水切りつば7が、棒状部2の略中間に設けられた上記の安全限界つば6よりも、軸方向上方側(後述の先端部3側)で、安全限界つば6と先端部3の略中間の位置に備えられる。さらに、棒状部2は、その一端側に先端部3と、他端側に後端部4とを備える。
先端部3は、作業用器具(例えば、接地短絡器具100)と装着するためのもので、全体として、円筒形をしており、上面がふさがれている装着部8と、装着部8の周面に係止用突起9とを備えている。また、係止用突起9は、一対の円柱状の突起で構成されており、装着部8の周面に互いに反対側の位置の径方向外側に向かって備えられている。さらに、先端部3の上面には、ほぼ中央に孔を設けており、装着部8の内部に形成された空間から凸部を孔から突出させる凸形部材10と、該空間の内側からスプリングなどで凸形部材10を押し上げる弾性体とを備えている。さらに、先端部3は、内周面にネジ溝を切った貫通口を有するロックナット11と、装着部8の下端から棒状部2の上端にかけて、ロックナット11の貫通口内周面のネジ溝に噛み合わさるようにネジ山を切った棒状のネジ軸部12とを有する。
ネジ軸部12は、装着部8と棒状部2を繋ぐ部分であり、ネジ山を切った棒状の形状をなし、後述のロックナット11と螺合するように構成される。また、ネジ軸部12の径は、装着部8の径よりも大きく構成され、このネジ軸部12を介して、ロックナット11は、回転自在となる。
ロックナット11は、中空の円柱状の形状をなし、ネジ軸部12を介して、回転自在に構成される。具体的には、ロックナット11は、装着部8と棒状部2の間でネジ軸部12と螺合して、軸回りに回転して、装着部8と棒状部2の間を上下に移動する。例えば、ロックナット11を、左回転させれば、上方(装着部8の凸形部材10の位置する方向)に移動し、右回転させれば、下方(後端部4の位置する方向)に移動する。また、ロックナット11の径は、ネジ軸部12の径よりも大きく構成され、さらに、ロックナット11の下方端縁の一部には、後述の係止機構5の一部として、切欠部13が設けられる。
係止機構5は、共用操作棒1の先端部3に装着した作業用器具がロックナット11によって締結(ロック)されることを防止するように構成され、ロックナット11に設けた切欠部13と、切欠部13に嵌入する嵌入部14とからなる。嵌入部14は、円柱状の形状をなし、側面に取っ手用突起15を有する。具体的には、ロックナット11の回転を規制できるように、嵌入部14は、先端部3の下方、かつ、棒状部2の側面であって、水切りつば7よりも上方に備えられ、棒状部2の軸方向(長手方向)に沿って、往復運動が可能であり、かつ、ロックナット11に設けた切欠部13に嵌入するように構成される。また、本実施形態において、嵌入部14は、棒状部2の側面に位置する保持部16を介して、支持される。保持部16は、中空の筒状の体をなし、内部に嵌入部14を保持し、また、保持部16の側面には、嵌入部14の取っ手用突起15が係合して突出する、切れ込み17が設けられている。図2(a)は、嵌入部14の取っ手用突起15が切れ込み17の上方の鉤爪状の端に位置する概況図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印B方向からの側面図である。より具体的に、切れ込み17は、棒状部2に沿う直線部と、直線部の長手方向の上端と下端における鉤爪状の鉤爪状部とからなり、切れ込み17の下方の鉤爪状部の端に嵌入部14の取っ手用突起15が達すると、図1(a)、(b)に示すように、保持部16内に嵌入部14が完全に収納され、切れ込み17の上方の鉤爪状部の端に嵌入部14の取っ手用突起15が達すると、図2(a)、(b)に示すように、保持部16の上端から嵌入部14が突出した状態を保持するように構成される。また、保持部16は、棒状部2の側面に取り付けられた連結部材18を介して、先端部3の下方の所定位置(ロックナット11を下方に最大限移動させた際に、ロックナット11と保持部16が接触しない程度の位置)に固定される。なお、連結部材18は、保持部16と一体型、別体型のいずれでも良い。
後端部4は、別の工具(例えば、別の共用操作棒や全長延長用の足し棒)と装着できるように構成される。具体的には、後端部4は、装着部からなり、該装着部は、孔部と、孔部の軸方向に沿って延びる部分と径方向に沿って延びる部分からなるT字状のスリット部19とから構成される。孔部には、例えば、別の共用操作棒の先端部における装着部が挿入され、スリット部19の周縁で形成された空間内には、装着部の側面の係止用突起が突出されることによって、別の共用操作棒と装着される。
上記の構成からなる共用操作棒1の操作説明に際し、接地短絡作業で用いられる接地短絡器具100に共用操作棒1を装着して使用する状況を用いて説明する。
接地短絡器具100は、図9(a)、(b)、(c)に示す従来のものであって、活線の接地をとるための作業用器具であり、電線を保持可能な三つの地絡金具101、101、101と、三つある地絡金具101、101、101のうち、一つの地絡金具101に他の二つの地絡金具101、101を取付可能な仮支持用棒102と、3本の電線であって、一端を各地絡金具101の端子にそれぞれ接続し、他の一端同士を接続する地絡線103、103、103と、接地極104に接続可能な接地金具105と、1本の電線であって、3本の地絡線103、103、103を一端に接続した端子にさらに接続し、他の一端に接地金具105を接続した接地線106とを備えている。
また、地絡金具101は、略コの字形を有する固定部110と、共用操作棒1の軸方向に進退可能に移動する可動部120と、先端部3の装着部8を挿入可能な上面をふさがれた円筒状の接続金具107と、地絡線103を接続する接続端子108とを備えている。前記固定部110は、先端側に鉤爪状の鉤爪部を有する爪部111と、略コの字形の基端部のほぼ中央が貫通され、内周面にネジ溝を切った貫通口を有する接続部112とを備えている。一方、前記可動部120は、前記接続部112の貫通口内周面のネジ溝に噛み合わさるようにネジ山を切った棒状のネジ軸部121と、前記固定部110と協働して電線を保持(把持)可能な可動体122とを備えている。前記可動体122は、固定部110と対向する面に凹部を有し、前記固定部110の鉤爪部から基端側に延びる直線部分に該凹部が嵌まり込んだ状態でネジ軸部121の先端に取り付けられており、ネジ軸部121に対して回転自在になっている。さらに、接続金具107の周面には、装着部8の周面に備えた係止用突起9と係合可能な係合切れ込み109が形成されており、切れ込みの形状は、鉤爪状もしくはΤ型となっている。
接地短絡作業にあっては、まず、上記の構成からなる接地短絡器具100と共用操作棒1の装着がなされる。図3は、接地短絡器具100と共用操作棒1が装着された概況図である。図3に示すように、接地短絡器具100の地絡金具101における接続金具107に、共用操作棒1の装着部8が挿入されることによって、一の地絡金具101と共用操作棒1は装着される。具体的には、図9(a)に示す中央の地絡金具101の接続金具107に、共用操作棒1の装着部8を、係合切れ込み109に沿って係止用突起9を挿入することで装着する。なお、先端部3の凸形部材10は、鉤爪状の係合切れ込み109の端まで係止用突起9が達すると、弾性体により、引き戻す方向に押し戻され、係止用突起9が係合切れ込み109の鉤爪状の端に引っ掛かって固定される。
次に、電線の締め付け作業に先立ち、該作業中に、共用操作棒1のロックナット11を介して、共用操作棒1と地絡金具101が締結(ロック)されないように、ロックナット11を係止機構5によって係止させる。具体的には、ロックナット11を右回転させて、ネジ軸部12の下方であって、ロックナット11の切欠部13の位置が嵌入部14と対向する位置まで移動させる。そして、係止機構5の嵌入部14の取っ手用突起15を指で摘んで、保持部16の切れ込み17の上方の鉤爪状部の端に移動させることによって、嵌入部14が保持部16から突出してロックナット11の切欠部13に嵌入した状態を保持する。従って、ロックナット11の切欠部13と係止機構5の嵌入部14とが互いに係合して、ロックナット11は係止されて回転が規制される。その結果、作業者の意図に反して、共用操作棒1の左回転操作などの作業中の行為に起因してロックナット11が左回転されて、ロックナット11が地絡金具101を締結(ロック)することはない。
その後、地絡金具101に装着した共用操作棒1を用いて、電線に地絡金具101を締め付ける作業がなされる。地絡金具101を電線に締め付ける作業は、まず、地絡金具101を電線に近づけ、固定部110の鉤爪部の先端と可動部120の可動体122との隙間に、電線を通し、鉤爪部に引っ掛ける。この状態で共用操作棒1を左回転させることによって、固定部110の鉤爪部と可動体122とで電線を挟んで締め付ける。
一つ目の地絡金具101を電線に締め付ける作業が終了した後、共用操作棒1を一つ目の地絡金具101から取り外し、残りの二つの地絡金具101、101に対して、一つ目の地絡金具101における上記作業と同様な作業を実施する。以上が、接地短絡作業である。
ここで、接地短絡作業を終えた後、仮に、他の作業用器具、例えば、事故点を調べるための作業用器具である事故点探査用アタッチメントを用いた作業の必要があるとすると、共用操作棒1に事故点探査用アタッチメントを装着して事故点の点検作業がなされる。この場合には、当該作業中に、共用操作棒1の複数回の脱着を要しないため、共用操作棒1に装着した事故点探査用アタッチメントを、共用操作棒1に固定して用いる。具体的には、まず、事故点探査用アタッチメントの接続金具(上記の地絡金具101の接続金具107と同様な構成)に、共用操作棒1の装着部8を挿入して、共用操作棒1と事故点探査用アタッチメントを装着する。続いて、係止機構5の嵌入部14の取っ手用突起15を指で摘んで、図1(a)のように、保持部16の切れ込み17の下方の鉤爪状部の端に移動させることによって、嵌入部14を保持部16内に保持させる。そして、ロックナット11を左回転させて、ネジ軸部12の上方に位置する事故点探査用アタッチメントの下端と密着するまで、ロックナット11を移動させ、事故点探査用アタッチメントを共用操作棒1に締結(ロック)する。その上で、この共用操作棒1に装着固定した事故点探査用アタッチメントを用いて、事故点の点検作業がなされることになる。
以上のように、共用操作棒1のロックナット11の係止構造によれば、係止機構5として、嵌入部14とロックナット11の切欠部13を有するため、嵌入部14をロックナット11の切欠部13に嵌入することによって、ロックナット11の回転を規制し、作業者の意図しない、間接活線作業中の作業行為に起因するロックナット11の回転(左回転)による、共用操作棒1とそれに装着した作業用器具の締結(ロック)を防止することができる。従って、作業者の意図に反して、地絡金具101が共用操作棒1にロックされると、ロックナット11のロック解除という作業をする必要があったが、作業者の意図に反して、地絡金具101が共用操作棒1にロックされることを防止するため、作業効率の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係る共用操作棒1のロックナット11の係止構造は、嵌入部14の側面に取っ手用突起15、及び、取っ手用突起15が係合可能な、直線部と鉤爪状部とからなる切れ込み17のある保持部16を有しているため、取っ手用突起15を指で摘んで、取っ手用突起15を保持部16の切れ込み17に沿って、切れ込み17の二つの鉤爪状部の端から端まで容易に移動させることができ、嵌入部14の移動を迅速かつ確実に行える。従って、ロックナット11の回転規制を迅速かつ確実に行うことができ、作業効率の低下抑制に資する。
尚、本発明に係る共用操作棒1のロックナット11の係止構造は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、係止構造は、完全な手動によって操作されるが、この他に、自動化の度合いを高めた係止機構も可能である。
例えば、半自動の係止構造が可能である。図4は、共用操作棒におけるロックナットの係止構造であって、半自動の係止構造がロックナットの回転を規制した概況図である。図4に示す係止機構5aは、円柱状の嵌入部14aがロックナット11aの切欠部13aに嵌入して作用する構成であり、嵌入部14aは、筒状の保持部16aの下端に設けた孔を貫通するピストンロッド20aに連接され、ピストンロッド20aの他端には取っ手21aが設けられる。また、嵌入部14aには、保持部16aの下端に設けられたバネ22aが取り付けられ、バネ22aの張力によって、嵌入部14aは保持部16aの上端の孔(嵌入部14aの径とほぼ同径)から突出して、所定の位置(ロックナット11aを最も下げた際に、ロックナット11aの切欠部13aに嵌入部14aが十分に嵌入できる位置)に位置するように、保持部16aは、棒状部2に取り付けられた連結部材18aを介して固定される。通常(ロックナット11aを下方に下げている場合)は、図4に示すように、バネ22aの張力によって、ロックナット11aの切欠部13aに嵌入部14aが嵌入した状態を保持するようにし、ロックナット11aを作業用器具に締結する際には、嵌入部14aにピストンロッド20aを介して連接する取っ手21aを下方に引いておくことで、嵌入部14aは、保持部16a内に収納され、この間にロックナット11aを嵌入部14aと接触しない位置まで回転移動させた上で、取っ手21aから手を離す。そして、ロックナット11aが作業用器具に密着するまで、回転移動させて、作業用器具を締結(ロック)する。また、ロックナット11aの締結(ロック)を解除する際には、ロックナット11aを右回転させて、下方に下ろす間、取っ手21aを引いて嵌入部14aを保持部16a内に収納し、嵌入部14aがロックナット11aに十分に接触する位置であって、嵌入部14aにロックナット11aの切欠部13aが対向する位置までロックナット11aを下げたところで、取っ手21aを放し、バネ22aの張力によって、嵌入部14aをロックナット11aの切欠部13aに嵌入させる。
また、他にも例えば、完全自動な係止構造が可能である。図5は、共用操作棒におけるロックナットの係止構造であって、自動の係止構造がロックナットの回転を規制した概況図である。図5に示す係止機構5bは、円柱状で、その先端がR形状である嵌入部14bがロックナット11bの切欠部13bに嵌入して作用する構成であり、嵌入部14bは、筒状の保持部16bの下端に設けたバネ22bと連接され、該バネ22bの張力によって、嵌入部14bは保持部16bの上端の孔(嵌入部14bの径とほぼ同径)から突出して、所定の位置(ロックナット11bを最も下げた際に、ロックナット11bの切欠部13bに嵌入部14bが十分に嵌入できる位置)に位置するように、保持部16bは、棒状部2に取り付けられた連結部材18bを介して固定される。通常(ロックナット11bを下方に下げている場合)は、図5に示すように、バネ22bの張力によって、ロックナット11bの台形状の切欠部13bの上端に嵌入部14bが嵌入した状態を保持するようにし、ロックナット11bを作業用器具に締結する際には、ロックナット11bを左回転させる。このとき、嵌入部14bのR形状の先端は摩擦力が小さいため、嵌入部14bは、切欠部13bとの接触面を横滑りするように移動して、切欠部13bから自動的に外れ、さらにロックナット11bを左回転させて上方に移動させると、作業用器具に密着して作業用器具を締結(ロック)する。また、ロックナット11bの締結(ロック)を解除する際には、ロックナット11bを右回転させて、下方に下ろせば、嵌入部14bが自動的にロックナット11bの切欠部13bに嵌入する。
さらに、上記全実施形態における係止構造では、ロックナット11、11a、11bに対して嵌入部13、13a、13bを軸方向に嵌入して、ロックナット11、11a、11bの回転を規制する構成であるが、この他に、ロックナットに対して嵌入部を径方向に嵌入して、ロックナットの回転を規制する構成も可能である。
図6乃至7は、ロックナットに対して嵌入部を径方向に嵌入して、ロックナットの回転を規制する構成を有する、共用操作棒におけるロックナットの係止構造であって、図6は、(a)はロックナットを径方向から手動で間接的に係止する概況図、(b)はC-C線断面図であり、図7は、(a)はロックナットを径方向から半自動で間接的に係止する概況図、(b)はD-D線断面図であり、図8は、(a)はロックナットを径方向から自動で間接的に係止する概況図、(b)はE-E線断面図である。
例えば、手動型の係止構造は、図6(a)に示すように、嵌入部14cをロックナット11cの径方向に手動で嵌入するように構成される。具体的には、係止機構5cは、円柱状の嵌入部14cがロックナット11cの側面に設けた切欠部(嵌入部14cと同径の孔)とネジ軸部12cの側面に設けた切欠部13c(嵌入部14cと同径の孔)に径方向から嵌入して作用する構成であり、嵌入部14cは、側面に取っ手用突起15cを有し、ロックナット11cの切欠部を囲うようにロックナット11cに取り付けられる筒状の保持部16c(ロックナット11cと一体型、別体型のどちらでも可能)によって、保持される。保持部16cは、取っ手用突起15cに係合する切れ込みを側面に有し、該切れ込みは、ロックナット11cの径方向に沿う直線部とその両端に鉤爪状の鉤爪状部を有する。また、ロックナット11cの切欠部とネジ軸部12cの切欠部13cは、ロックナット11cを最も下まで下げたときに、互いに対向し、ネジ軸部12cの切欠部13cは、装着部8の側面に対称な位置に設けられる係止用突起9に対して略中間の軸線上となる位置にある。ロックナット11cの回転を規制する場合は、ロックナット11cを最も下まで下げて、ロックナット11cの切欠部とネジ軸部12cの切欠部13cを一致させた上で、保持部16cの切れ込みに沿って、嵌入部14cの取っ手用突起15cを手で摘んで、径方向の共用操作棒1c側の鉤爪状部の端まで移動させる。その結果、図6(b)に示すように、嵌入部14cは、径方向の共用操作棒1cのある方向に保持部16cから突出し、ロックナット11cに設けた切欠部とネジ軸部12に設けた切欠部13cに嵌入することで、ロックナット11cの回転は間接的に規制される。また、ロックナット11cを回転自在にする場合(ロックナット11cを作業用器具に締結(ロック)する場合)は、保持部16cの切れ込みに沿って、嵌入部14cの取っ手用突起15cを手で摘んで、径方向の共用操作棒1cから離れる側の鉤爪状部の端まで移動させる。嵌入部14cを径方向の共用操作棒1cから離れる方向に保持部16cから突出し、嵌入部14cがネジ軸部12cの切欠部13cに嵌入しないため、ロックナット11cは回転自在になる。
半自動型の係止構造は、図7(a)に示すように、嵌入部14dをロックナット11dの径方向に半手動で嵌入するように構成される。具体的には、係止機構5dは、円柱状の嵌入部14dがロックナット11dの切欠部(嵌入部14dと同径の孔)とネジ軸部12dの側面に設けた切欠部13d(嵌入部14dと同径の孔)に径方向から嵌入して作用する構成であり、嵌入部14dは、筒状の保持部16dの一端(ロックナット11dの径方向の共用操作棒1dから離れる方向の端)に設けた孔を貫通するピストンロッド20dに連接され、ピストンロッド20dの他端には取っ手21dが設けられる。また、嵌入部14dには、保持部16dの一端に設けられたバネ22dが取り付けられ、バネ22dの張力によって、嵌入部14dは保持部16dの他端(ロックナット11dの切欠部周囲と接する端)の孔(嵌入部14dの径とほぼ同径)から突出して、所定の位置(ネジ軸部12dの切欠部13dに嵌入部14dが十分に嵌入できる位置)に位置できる。なお、ロックナット11dの切欠部とネジ軸部12dの切欠部13dは、ロックナット11dを最も下まで下げたときに、互いに対向し、ネジ軸部12dの切欠部13dは、装着部8の側面に対称な位置に設けられる係止用突起9に対して略中間の軸線上となる位置にある。通常(ロックナット11dを下方に最も下げている場合)は、図7(b)に示すように、バネ22dの張力によって、ロックナット11dの切欠部とネジ軸部12dの切欠部13dに嵌入部14dが嵌入した状態を保持するようにし、ロックナット11dを作業用器具に締結する際には、嵌入部14dにピストンロッド20dを介して連接する取っ手21dを径方向の共用操作棒1dから離れる方向に手で引いておくことで、嵌入部14dは、保持部16d内に収納され、この間にロックナット11dの切欠部とネジ軸部12dの切欠部13dが対向しなくなる位置まで、ロックナット11dを回転移動させた上で、取っ手21dから手を離す。そして、ロックナット11dが作業用器具に密着するまで、回転移動させて、作業用器具を締結(ロック)する。また、ロックナット11dの締結(ロック)を解除する際には、ロックナット11dを右回転させて、ロックナット11dの切欠部とネジ軸部12dの切欠部13dが対向する位置まで下方に下ろせば、バネ22dの張力によって、自動的に嵌入部14dはネジ軸部12dの切欠部13dに嵌入される。
完全な自動型の係止構造は、図8(a)に示すように、嵌入部14eをロックナット11eの径方向に自動で嵌入するように構成される。具体的には、係止機構5eは、円柱状で、その先端がR形状である嵌入部14eがロックナット11eの切欠部(嵌入部14eと同径の孔)とネジ軸部12eの側面に設けた切欠部13e(台形状の四角柱の孔)に径方向から嵌入して作用する構成であり、嵌入部14eは、筒状の保持部16eの一端(ロックナット11eの径方向の共用操作棒1eから離れる方向の端)に設けたバネ22eと連接され、該バネ22eの張力によって、嵌入部14eは保持部16eの他端(ロックナット11eの切欠部周囲と接する端)の孔(嵌入部14eの径とほぼ同径)から突出して、所定の位置(ネジ軸部12eの切欠部13eに嵌入部14eが十分に嵌入できる位置)に位置できる。なお、ロックナット11eの切欠部とネジ軸部12eの切欠部13eは、ロックナット11eを最も下まで下げたときに、互いに対向し、ネジ軸部12eの切欠部13eは、装着部8の側面に対称な位置に設けられる係止用突起9に対して略中間の軸線上となる位置にある。通常(ロックナット11eを下方に最も下げている場合)は、図8(b)に示すように、バネ22eの張力によって、ロックナット11eの切欠部とネジ軸部12eの切欠部13eに嵌入部14eが嵌入した状態を保持するようにし、ロックナット11eを作業用器具に締結する際には、ロックナット11eを左回転させる。このとき、嵌入部14eのR形状の先端は摩擦力が小さいため、嵌入部14eは、ネジ軸部12eの切欠部13eとの接触面を横滑りするように移動して、ネジ軸部12eの切欠部13eから自動的に外れ、さらにロックナット11eを左回転させて上方に移動させると、作業用器具に密着して締結(ロック)する。また、ロックナット11eの締結(ロック)を解除する際には、ロックナット11eを右回転させて、ロックナット11eの切欠部とネジ軸部12eの切欠部13eが対向する位置まで下方に下ろせば、バネ22eの張力によって、自動的に嵌入部14eはネジ軸部12eの切欠部13eに嵌入される。
尚、上記実施形態において、自動化の度合いが高い係止構造ほど、例えば、嵌入部をロックナットあるいはネジ軸部の切欠部に嵌入することなどを失念することがなく、作業効率の低下を抑制できる。