JP5517785B2 - 蒸気タービンおよび蒸気タービンのスラスト調整方法 - Google Patents
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Description
図13に示した蒸気タービン1は、回転軸10を囲んで車室(不図示)が形成され、該車室には高圧主蒸気22、再熱蒸気24および低圧主蒸気26それぞれの導入部(不図示)を備えている。
前記再熱ボイラで加熱された中圧の再熱蒸気24は、中圧翼列4を通って回転軸10に回転力を与えながら、次第に温度・圧力を低下させていく。また、低圧主蒸気26は、低圧翼列6を通って回転軸10に回転力を与えながら、次第に温度・圧力を低下させていく。
まず、図13に示した蒸気タービン1において、トラブルや運転調整等により高圧主蒸気22を停止した場合について考える。図14は、従来のスラスト調整用ダミー部を設けた蒸気タービンの高圧主蒸気停止状態を示す概略図である。
図14において、高圧主蒸気22を停止すると、高圧翼列2に導入される蒸気がなくなり、高圧翼列2における差圧が0となる。そのため、図14に示したように○付き数字3で示したスラスト力も0となる。また高圧ダミー部12における差圧も非常に小さくなり○付き数字4で示したスラスト力も0に近い値となる。そのため、図14に示したように、高圧主蒸気22の停止状態においても、蒸気タービン1全体としてはスラストバランスがとれている。
図15において、再熱蒸気24及び低圧蒸気26を停止すると、中圧翼列4及び低圧翼列6に導入される蒸気がなくなり、中圧翼列4及び低圧翼列6の前後の圧力は何れもほぼ真空となる。そして、中圧翼列4の後半部とスラストバランス管30によって連通されている中圧ダミー部14と低圧ダミー部16との間の圧力もほぼ真空となる。
ここで、IP系によって増大するスラスト力は、HP系によって増大するスラスト力よりも大きいため、蒸気タービン1全体としては図15における左側方向のスラスト力が増大し、スラスト力のバランスが取れなくなる。
そこで、図13〜図15において、中圧ダミー部14を小さくするとともに、低圧ダミー部16を大きくすることで、通常時運転時、高圧主蒸気停止時及び再熱蒸気停止時の何れにおいてもスラスト力のバランスを取ることができる。
これにより、中圧室への上記の流入が停止した場合に中圧ダミー部が発生するスラスト力をなくすことができるから、従来では中圧ダミー部が発生するスラスト力をバランスさせるために必要であった低圧ダミー部の径の拡大が不要となるため、低圧ダミー部の径を小さくすることができ、しかも複雑な電気制御を用いることなく、蒸気タービンの運転範囲全域において、タービンの回転軸に作用するスラスト力のバランスを取ることができる。
これにより、簡単な機構でタービンの回転軸に作用するスラスト力のバランスを取ることができる。
これにより、前記第1弁の故障時においても、スラスト力のバランスを取ることができ、蒸気タービンの信頼性が向上する。
前記第2管路は、従来の蒸気タービンにも設けられている場合が多い。そのため、既設の従来の蒸気タービンを改造する際に配管を新設することなく、既設の前記第2管路に前記第2弁と取り付けるだけで減圧手段を設けることができ、改造が簡単である。
これにより、スラストバランスの簡単に適切に保つことができる。
図1は、本発明のスラスト調整用ダミー部を設けた単車室再熱蒸気タービンの構成を示す構成図である。図1に示した蒸気タービン1は、回転軸10を囲んで低圧車室32及び高中圧車室34が形成されている。高中圧車室34には高圧蒸気22を導入する高圧蒸気導入部23と、再熱蒸気24を導入する再熱蒸気導入部25とを備えている。また、低圧車室32には低圧蒸気26を導入する低圧蒸気導入部27を備えている。
また、中圧ダミー部14の入口側と出口側を連通する管路42と、管路42上に弁43が設けられている。また、弁43よりも中圧ダミー部14の出口側で管路42に接続され、中圧室翼列4の出口側とを連通する管路44と、管路44上に弁45が設けられている。また、スラストバランス管30上には弁41が設けられている。
なお、図2において単位kで示す数値は、当該部における例示的な圧力であって、単位はkgf/cm2であり、図3〜図10及び図13〜図15についても同様である。
図3において、高圧主蒸気22を停止すると、高圧翼列2に導入される蒸気がなくなり、高圧翼列2における差圧が0となる。そのため、図14に示したように○付き数字3で示したスラスト力も0となる。また高圧ダミー部12における差圧も非常に小さくなり○付き数字4で示したスラスト力も0に近い値となる。そのため、図3に示したように、高圧主蒸気22の停止状態においても、蒸気タービン1全体としてはスラストバランスがとれている。
図4において、再熱蒸気24及び低圧蒸気26を停止すると、中圧室翼列4及び低圧室翼列6に導入される蒸気がなくなり、中圧室翼列4及び低圧室翼列6の前後の圧力は何れもほぼ真空となる。HP系(高圧部分)については高圧翼列2で発生するスラスト力(○付き数字3)は通常運転時と略同じであるものの、高圧ダミー部12で発生するスラスト力(○付き数字2)は高圧ダミー部12出口部の圧力がほぼ真空となる分だけ増加するため、高圧ダミー部方向(図4における右側方向)へかかるスラスト力が増大する。
そして、前記HP系で増大するスラスト力分に略相当する分だけ低圧ダミー部16で低圧ダミー部側方向(図4における左側方向)のスラスト力が生じるように設計した径の低圧ダミー部16で生じるスラスト力によって蒸気タービン1全体としてスラスト力はバランスする。
なお、予め再熱蒸気及び低圧主蒸気停止状態において、弁41、43を開とした場合にスラスト力がバランスするような径に低圧ダミー部16の径を設計しておき、通常運転時及び高圧主蒸気停止状態時のスラスト力のバランスが合うように中圧ダミー部14の径を設計しておく。この場合、上記のとおり再熱蒸気及び低圧主蒸気停止状態において中圧ダミー部14のスラスト力発生を止めることができるから、蒸気タービン全体がアンバランスになることを防止するために従来のように低圧ダミー部16の径を大きくする必要がない。よって、低圧ダミー部16の径を小さくすることでグランドへの蒸気の漏出を減少させることができ、蒸気タービンの性能を向上させることができる。
まず、弁43の異常時について説明する。
図5は、本発明のスラスト調整用ダミー部を設けた蒸気タービンの通常運転状態において、弁43が異常動作した場合の状態を示す概略図である。
図5において、弁43が故障等の原因により異常動作をして開となると、中圧ダミー部14の前後は連通されて中圧ダミー部14出口側の圧力が上昇し、中圧ダミー部14の前後差圧は略0となり、中圧ダミー部14によって生じるスラスト力が略0となってスラスト力のバランスが取れなくなる。
この場合、スラストバランス管30に設けた圧力計56の検知値が上昇する。該検知値が規定以上に上昇すると制御装置52(図5には不図示)により弁43又は弁41が異常動作をしていると判断する。
図6は、本発明のスラスト調整用ダミー部を設けた蒸気タービンの通常運転状態において、弁43が異常動作し対処を実施した後の状態を示す概略図である。
制御装置52により弁45を開とすると、管路44によって中圧ダミー部14の出口側と中圧室翼列4の出口側が連通され、中圧ダミー部14の出口側の蒸気の一部が中圧室翼列4の出口側に流れて中圧ダミー部14の出口側が減圧され、再び中圧ダミー部14の前後差圧ができてスラスト力も発生し、蒸気タービン1全体のスラスト力のバランスがとれるようになる。なお、管路44及び弁45は、弁43の異常開時に、弁45を開けることで弁43を通過する蒸気量と略同量の蒸気が管路44を流れるように予め設計しておく必要がある。
以上のとおり、弁43に異常が発生してもスラスト力のバランスを保ち続けることができ、簡易な設備で蒸気タービンの信頼性を高めることができる。
図7は、本発明のスラスト調整用ダミー部を設けた蒸気タービンの通常運転状態において、弁41が異常動作した場合の状態を示す概略図である。
図7において、弁41が故障等の原因により異常動作をして閉となると、中圧ダミー部14出口側の蒸気がスラストバランス管30を介して中圧翼列4に移動することができなくなる。一方で、中圧ダミー部14の前後の差圧によって、中圧ダミー部14外周部に設けられているラビリンスシールから蒸気が中圧ダミー部14出口側へと漏出してくるため、中圧ダミー部14の前後差圧は略0となり、中圧ダミー部14によって生じるスラスト力が略0となってスラスト力のバランスが取れなくなる。
この場合、スラストバランス管30に設けた圧力計56の検知値が上昇する。該検知値が規定以上に上昇すると制御装置52(図5には不図示)により弁43又は弁41が異常動作をしたと判断する。
図8は、本発明のスラスト調整用ダミー部を設けた蒸気タービンの通常運転状態において、弁41が異常動作し対処を実施した後の状態を示す概略図である。
制御装置52により弁45を開とすると、管路44によって中圧ダミー部14の出口側と中圧室翼列4の出口側が連通され、中圧ダミー部14の出口側の蒸気の一部が中圧翼列4の出口側に流れて中圧ダミー部14の出口側が減圧され、再び中圧ダミー部14の前後差圧ができてスラスト力も発生し、蒸気タービン1全体のスラスト力のバランスがとれるようになる。
以上のとおり、弁41に異常が発生してもスラスト力のバランスを保ち続けることができ、簡易な設備で蒸気タービンの信頼性を高めることができる。
図9は、本発明のスラスト調整用ダミー部を設けた蒸気タービンの再熱蒸気及び低圧主蒸気停止状態において、弁43が異常動作した場合の状態を示す概略図である。
図3を用いて説明したように、蒸気タービンの再熱蒸気及び低圧主蒸気停止状態では弁43を開ける必要があるが、弁43が作動せず閉まった状態の場合を図9では示している。
図9において、弁43が閉まっていると中圧ダミー部14の前後が連通されなくなるため、中圧ダミー部14の前後に差圧が生じ、スラスト力が発生する。該スラスト力により蒸気タービン1全体のスラスト力にアンバランスが生じる。しかも、該アンバランスは、本発明においては中圧ダミー部径が大きい分だけ従来よりも大きなものとなる。
この場合、スラストバランス管30に設けた圧力計56の検知値が降下する。該検知値が規定以下に加工すると制御装置52(図9には不図示)により弁43が正常に作動していないと判断する。
図10は、本発明のスラスト調整用ダミー部を設けた蒸気タービンの再熱蒸気及び低圧主蒸気停止状態において、弁43が正常に作動せず対処を実施した後の状態を示す概略図である。
弁41を閉じることで、中圧ダミー部14リークによって、中圧ダミー部14前後の差圧が略0となり、中圧ダミー部14でのスラスト力が略0となる。
これにより、図4に示したように弁43に異常が発生していない場合と同様の圧力バランスとなり、スラスト力のバランスも取れるようになる。
つまり、弁43に異常が発生してもスラスト力のバランスを保ち続けることができる。
本発明の技術は、高中圧タービンにも同様に適用することができる。
図11は、実施形態2における調整用ダミー部を設けた高中圧蒸気タービンを示す概略図である。
図11に示した高中圧蒸気タービン101は、回転軸(不図示)を囲んで車室(不図示)が形成され、該車室には高圧蒸気、中圧蒸気それぞれの導入部(不図示)を備えている。
また、前記回転軸には、高圧蒸気が供給される高圧室翼列102、中圧蒸気が供給される中圧室翼列104がそれぞれ蒸気の入口が対向するように設けられている。また、高圧室翼列2の蒸気入口側と中圧室翼列104の蒸気入口側との間には、第1のダミー部111及び第2のダミー部112が設けられており、高圧室翼列2の蒸気出口側には、第3のダミー部113が設けられている。また、第1のダミー部111と第2のダミー部112の間、第3のダミー部113の前後のそれぞれを連通するバランス管121と、第3のダミー部113の出口と中圧室翼列の出口を連通するバランス管122が設けられている。バランス管121は第3のダミー部の前後間に弁141、バランス管122には弁142が設けられている。
図7に示したように、通常運転時、HP閉時においてはスラスト力の概ねバランスをとることができる。一方でIP閉には主に第3のダミー部113に発生するスラスト力によって全体として右向きのアンバランスが発生するが、ここで弁41(CV1)を開けることで第3のダミー部113の前後差圧を減少させることで蒸気タービン全体のスラスト力のバランスを取ることができる。なお、IP閉時において弁141を開けることに替えて、弁142を適度に閉じることによっても、第3のダミー部113のリークによって第3のダミー部113の差圧を減少させることができ、同様にスラスト力のバランスをとることができる。
図12は、実施形態3における調整用ダミー部を設けた高中圧蒸気タービンを示す概略図である。
図12において図11と同一符号は同一物を表し、その説明は省略する。
図12においては図11に示した第2のダミー部112を第1のダミー部111と同径とし一体化した第1のダミー部111’を設けている。またバランス管121を設けていない。さらに、バランス管122には、弁42をバイパスするバイパス配管123を設け、該バイパス配管123にオリフィス124を設けている。
この場合において、弁142の開度を微開にする必要があるなど、弁開度の調整が難しい場合には弁42を閉じてオリフィスを使用するとよい。この場合、オリフィス123のサイズを弁42が全閉となったときに第3のダミー部113裏側圧が適切となるように決定しておく。
即ち、IP閉の場合には弁142が閉じ、オリフィス124を通って蒸気が流れることで第3ダミー部の裏側圧が適切に保たれ、全体のスラストのバランスが取れることとなる。
2 高圧翼列
4 中圧翼列
6 低圧翼列
12 高圧ダミー部
14 中圧ダミー部
16 低圧ダミー部
30 スラストバランス管
41、43、45 弁
42、44 管路
52 制御装置
54、56 圧力計
Claims (11)
- 少なくとも高圧翼列、中圧翼列および複数のダミー部が共通の回転軸に取り付けられた蒸気タービンであって、
中圧室への蒸気の流入の有無を検知する検知手段と、
前記中圧室への蒸気の流入が停止したとき、前記複数のダミー部のうち、片側が前記中圧室の一部に連通した調圧対象ダミー部の両側の圧力差を減少させる減圧手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて前記減圧手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする蒸気タービン。 - 前記減圧手段は、前記調圧対象ダミー部の両側を連結する第1管路と、該第1管路に配設され前記調圧対象ダミー部の両側の圧力差を調節する第1弁とを含むことを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン。
- 前記減圧手段の前記片側および前記中圧室の出口とを連結する第3管路と、
前記第3管路に配設された第3弁とをさらに備え、
前記制御手段は、前記中圧室への蒸気の流入が停止していないにもかかわらず前記第1弁が開いた場合、前記調圧対象ダミー部の両側に圧力差が生じるように前記第3弁を開くことを特徴とする請求項2に記載の蒸気タービン。 - 前記減圧手段は、前記中圧室の前記一部および前記調圧対象ダミー部の前記片側を連結する第2管路と、該第2管路に配設され前記調圧対象ダミー部の両側の圧力差を調節する第2弁とを含み、前記中圧室への蒸気の流入が停止したとき、前記第2弁が閉じられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蒸気タービン。
- 前記第2弁をバイパスするバイパス管路を配設するとともに、該バイパス管路にオリフィスを設けたことを特徴とする請求項4に記載の蒸気タービン。
- 前記減圧手段の前記片側および前記中圧室の出口とを連結する第3管路と、
前記第3管路に配設された第3弁とをさらに備え、
前記制御手段は、前記中圧室への蒸気の流入が停止していないにもかかわらず前記第2弁が閉じた場合、前記調圧対象ダミー部の両側に圧力差が生じるように前記第3弁を開くことを特徴とする請求項4に記載の蒸気タービン。 - 少なくとも高圧翼列、中圧翼列および複数のダミー部が共通の回転軸に取り付けられた蒸気タービンのスラスト調整方法であって、
中圧室への蒸気の流入が停止したとき、前記複数のダミー部のうち片側が前記中圧室の一部に連通した調圧対象ダミー部の両側の圧力差を減少させることを特徴とする蒸気タービンのスラスト調整方法。 - 前記調圧対象ダミー部の両側の圧力差は、前記調圧対象ダミー部の両側を連結する第1管路に配設された第1弁により減圧可能であることを特徴とする請求項7に記載の蒸気タービンのスラスト調整方法。
- 前記中圧室への蒸気の流入が停止していないにもかかわらず前記第1弁が開いた場合、前記片側および前記中圧室の出口とを連結する第3管路に配設された第3弁を、前記調圧対象ダミー部の両側に圧力差が生じるように開くことを特徴とする請求項8に記載の蒸気タービンのスラスト調整方法。
- 前記調圧対象ダミー部の両側の圧力差は、前記中圧室の前記一部および前記調圧対象ダミー部の前記片側を連結する第2管路に配設された第2弁により減圧可能であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の蒸気タービンのスラスト調整方法。
- 前記中圧室への蒸気の流入が停止していないにもかかわらず前記第2弁が閉じた場合、前記片側および前記中圧室の出口とを連結する第3管路に配設された第3弁を、前記調圧対象ダミー部の両側に圧力差が生じるように開くことを特徴とする請求項10に記載の蒸気タービンのスラスト調整方法。
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