JP5517588B2 - 金属部材の接合方法及び金属部材の接合装置並びにこれらを用いた金属接合部材の製造方法 - Google Patents
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Description
更に詳細には、本発明は、ミリ波とその照射によって誘電損失熱を生じる誘電体微粒子とを組み合わせて利用する金属部材の接合方法及び金属部材の接合装置並びにこれらを用いた金属接合部材の製造方法に関する。
本実施形態の金属部材の接合方法は、複数の金属部材を固相状態で接合する金属部材の接合方法であって、下記の工程(1)及び工程(2)を含む方法である。
工程(1):金属部材の接合面に誘電体微粒子を配置する。
工程(2):工程(1)の後に、誘電体微粒子が接合面に配置された金属部材と他の金属部材とを、誘電体微粒子を挟むように配置し、これらの金属部材に塑性変形が生じない程度の圧力を付与する条件下、誘電体微粒子にミリ波を照射して、これらの金属部材の接合面を加熱する。
また、適用可能な金属部材の形状が丸物に限定される摩擦接合に比べて、本実施形態の金属部材の接合方法は、金属部材の形状の自由度が高いという利点もある。
なお、周波数が300MHz以上300GHz以下である電磁波、いわゆるマイクロ波による単位体積当たりの発熱量Pは、マイクロ波の周波数をf、真空の誘電率をε0、非加熱物の比誘電率、誘電損失角をそれぞれεr、δ、マイクロ波の電解の強さをEとすると、下記の式(1)で表される。また、式(1)中のε0εrtanδは材料の誘電損率と呼ばれ、温度と周波数に比例して増加する。また、発熱量Pはマイクロ波の周波数に大きく依存する。
工程(1)における金属部材としては、例えばアルミニウム、炭素鋼(例えば、S45Cなどの低炭素鋼)、チタンなどを挙げることができる。しかしながら、これらに限定されるものではなく、例えば、アルミニウム合金やチタン合金、マグネシウム合金などの金属部材を適用することもできる。
ここで、「金属部材」とは、いわゆる金属材料のみからなる金属部材のみを意味するものではない。すなわち、例えばセラミックや金属、プラスチックなどの材料から構成されたモジュール(例えば、車両においては、電装品や内装品、外装品を挙げることができる。)に付属した継ぎ手用の金属部材をも意味する。
また、上記微粒子は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、本発明における「金属酸化物の微粒子」とは、金属酸化物のみからなる微粒子だけを意味するものではない。すなわち、金属酸化物のみからなる微粒子と同様の効果を示す限り、金属微粒子の表面が酸化されたもの、つまり酸化被膜を有する金属微粒子をも含むという意味に解釈しなければならない。
酸化被膜を有する金属微粒子の具体例としては、酸化被膜を有するアルミニウム微粒子や鉄微粒子などを挙げることができる。なお、酸化被膜を有する金属微粒子は、酸化物と非酸化物の体積比の関係から、金属酸化物のみからなる微粒子に比較して発熱量が小さいが、金属酸化物のみからなる微粒子に比較して不要な酸化物の混入を抑制することができる。
ここで、「同種の組合せ」とは、例えば金属部材がアルミニウムである場合に誘電体微粒子としてアルミナ、窒化アルミニウムなどのアルミニウムを含むものを用いる組合せや、金属部材が炭素鋼である場合に誘電体微粒子として酸化鉄のように鉄を含むものを用いる組合せのことをいう。一方、「異種の組合せ」とは、例えば金属部材がアルミニウムである場合に誘電体微粒子として酸化鉄や炭素などのアルミニウムを含まないものを用いる組合せのことをいう。
なお、金属部材と後述する他の金属部材とについて、異種材料の金属部材を適用する場合には、上記理由と同様で、誘電体微粒子と金属部材のいずれか一方とが同種の組合せであることが望ましいが、これに限定されるものではなく、更に異種の組合せとすることもできる。
一方、誘電体微粒子の平均粒子径は200nm以上であることが好ましく、250nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることが更に好ましい。誘電体微粒子の平均粒子径が200nm以上であると、誘電体微粒子の凝集がより起こりにくくなり、一体品の機械的強度と同程度の機械的強度とすることがより容易になる。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
なお、誘電体微粒子としては、金属酸化物や金属窒化物自体などを用いることが望ましい。このような場合、有機化合物である樹脂や、金属酸化物や金属窒化物に樹脂を混合したスラリーを用いるよりも、不要な成分の混入を抑制することができる。
工程(2)における他の金属部材としては、上記金属部材と同様に、例えばアルミニウム、炭素鋼(例えば、S45Cなどの低炭素鋼)、チタンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。すなわち、例えば、アルミニウム合金やチタン合金、マグネシウム合金などについても適用することができる。
また、他の金属部材についても、上記金属部材と同様に、いわゆる金属材料のみからなる金属部材だけでなく、モジュールに付属した継ぎ手用の金属部材をも含む意味に解釈しなければならない。
更に、上記金属部材と他の金属部材とは、同種材料及び異種材料のいずれであってもよい。更にまた、他の金属部材の接合面にも誘電体微粒子を配置するようにしてもよい。
ここで、「金属部材自体に塑性変形が生じない程度の圧力」とは、適用する金属部材の材質や温度に応じて適宜設定するものであるが、異種材料の金属部材を適用する場合には、塑性変形がより生じやすい金属部材を基準にして圧力を設定することは言うまでもない。
誘電体微粒子にミリ波を照射するに当たっては、金属部材の接合面を誘電体微粒子が発生する誘電損失熱により加熱して、金属部材を接合することができれば、特に限定されるものではない。
しかしながら、利用可能なミリ波の周波数帯や接合における効率の観点から、ミリ波の出力は接合部の単位面積当たりの出力で100W/mm2以上であることが好ましい。
ここで、「誘電体微粒子及び金属部材の接合面を囲うように配置する」とは、誘電損失熱を発生する誘電体微粒子からの放熱が可能な限り金属部材の接合面の加熱に利用されるように、金属部材の接合面からの放熱が可能な限り抑制されるように配置することをいう。
また、断熱材としては、例えばアルミナ及びジルコニアの少なくとも一方を用いたものを挙げることができる。更に、その形態については、特に限定されるものではなく、バルク体、繊維集合体など種々の形態のものを用いることができるが、断熱性能の観点からは、アルミナやジルコニアなどの繊維を用いた繊維集合体を用いることが望ましい。
その結果、金属接合部材における歪量や熱影響部がより小さくなり、接合状態がより良好な金属接合部材を得ることができる。
ここで「誘電体微粒子及び金属部材の接合面を加熱するように配置する」とは、誘電体微粒子からの放熱を補うように、金属部材の接合面の誘電体微粒子による加熱を補助するように配置することをいう。サセプターによって補助的な加熱を行うに当たり、接合面を局所的ないし選択的に加熱するためには、サセプターが金属部材を囲う領域を可能な限り少なくすることが望ましい。また、接合面を局所的ないし選択的に加熱するためには、サセプターを接合面に可能な限り近づけることが望ましい。
また、サセプターとしては、例えばアルミナを用いたものを挙げることができる。更に、その形態については、特に限定されるものではなく、バルク体、繊維集合体など種々の形態のものを用いることができるが、サセプター性能の観点からは、アルミナのバルク体を用いることが望ましい。
その結果、金属接合部材における歪量や熱影響部がより小さくなり、接合状態がより良好な金属接合部材を得ることができる。
その結果、金属接合部材における歪量や熱影響部がより小さくなり、接合状態がより良好な金属接合部材を得ることができる。
条件A:金属部材と他の金属部材とを、誘電体微粒子を挟むように配置し、これらの金属部材自体に塑性変形が生じない程度の圧力を付与する。
条件B:誘電体微粒子及び金属部材の接合面を囲うように配置した断熱材によって断熱する。
条件C’:断熱材に囲われた領域内に誘電体微粒子及び金属部材の接合面を加熱するように配置した他の加熱源としてのサセプターによって加熱する。
ここで、「非酸化性雰囲気」とは、通常の大気組成と同じ大気雰囲気よりも各種金属部材が酸化されにくい雰囲気を意味する。
作業領域全体の雰囲気を制御する場合に比較して、作業領域のうち誘電体微粒子及び金属部材の接合面を囲う領域を含む一部の雰囲気を制御する場合の方が接合における効率が高く望ましい。
なお、「作業領域」とは、金属部材や誘電体微粒子、更には詳しくは後述する製造装置における誘電体微粒子配置手段、加圧手段、断熱手段、他の加熱源としてのサセプターなどが配置されるないしは作動する空間をいう。
図1は、本発明の一実施形態に係る金属部材の接合方法の一例を示す説明図である。
本例の金属部材の接合方法は、同図(a)に示すような2つの金属部材2を固相状態で接合する金属部材の接合方法、つまり金属接合部材の製造方法である。
そして、同図(b)に示すように、後述する誘電体微粒子配置手段10の一例である噴射ノズルによって誘電体微粒子4を金属部材2の接合面2aに配置する。
次いで、同図(c)に示すように、誘電体微粒子4が接合面2aに配置された金属部材2と他の金属部材2とを、誘電体微粒子4を挟むように配置する。また、これらの金属部材2自体に塑性変形が生じない程度の圧力を矢印Aで示すように付与する。更に、誘電体微粒子4及び金属部材2の接合面2aを加熱するように他の加熱源としてのサセプター50を配置する。更にまた、誘電体微粒子4及び金属部材2の接合面2aを囲う領域50aを非酸化性雰囲気制御手段60の一例であるアルゴンガス供給機によってアルゴンガス流れ雰囲気とする。このような条件下、誘電体微粒子4にミリ波を照射すると、誘電体微粒子が誘電損失熱を発生し、局所加熱される。場合によっては誘電体微粒子が局所溶融する。このようにして、金属部材2の接合面2aが加熱される。なお、配置した他の加熱源としてのサセプター50は金属部材2などからの放熱や輻射若しくはミリ波照射手段(図示せず。)からのミリ波を利用して金属部材2の接合面2aを加熱する。
その結果、同図(d)に示すような2つの金属部材2を固相状態で接合して成る金属接合部材1が得られる。
同図に示すように、誘電体微粒子4が接合面2aに配置された金属部材2と他の金属部材2とが、誘電体微粒子4を挟むように配置されている。
なお、金属部材2には、金属部材2自体に塑性変形が生じない程度の圧力が矢印Aで示すように付与されている。また、誘電体微粒子4には、矢印Bで示すようにミリ波が照射されており、誘電体微粒子4が発生する誘電損失熱によって金属部材2の接合面2aが加熱されている。更に、誘電体微粒子4及び金属部材2の接合面2aを囲う領域50aは、非酸化性雰囲気制御手段60の一例であるアルゴンガス供給機によって矢印Cで示すようにアルゴンガスが供給され、アルゴンガス流れ雰囲気となっている。更にまた、誘電体微粒子4及び金属部材2の接合面2aは、金属部材2などからの放熱や輻射若しくはミリ波照射手段(図示せず。)からのミリ波を利用して加熱するように配置した他の加熱源としてのサセプター50によって加熱されている。
本実施形態の金属部材の接合装置は、複数の金属部材を固相状態で接合する金属部材の接合装置であって、誘電体微粒子配置手段と、加圧手段と、ミリ波照射手段とを備えている。
そして、誘電体微粒子配置手段は、金属部材の接合面に誘電体微粒子を配置するものである。
また、加圧手段は、誘電体微粒子が接合面に配置された金属部材と他の金属部材とに、これらの金属部材自体に塑性変形が生じない程度の圧力を付与するものである。
更に、ミリ波照射手段は、誘電体微粒子にミリ波を照射するものである。
なお、このような誘電体微粒子配置手段は、例えば金属部材の接合面に誘電体微粒子を所定のタイミングで配置することが可能である可動機構を備えたものであることが望ましい。このような構成とすることにより、より効率的な接合が可能となる。
ここで、「金属部材自体に塑性変形が生じない程度の圧力」とは、適用する金属部材の材質や温度に応じて適宜設定するものであるが、異種材料の金属部材を適用する場合には、塑性変形がより生じやすい金属部材を基準にして圧力を設定することは言うまでもない。
なお、このようなミリ波照射手段は、例えば金属部材の接合面に配置された誘電体微粒子に所定のタイミングでミリ波を照射することが可能である可動機構を備えたものであることが、接合における効率の観点から望ましい。
一方、ミリ波照射手段自体が金属部材の接合装置において、固定化されたものであることは、接合装置自体の構造を簡略的なものにできるという観点から望ましい。
また、断熱材としては、例えばアルミナ及びジルコニアの少なくとも一方を用いたものを挙げることができる。更に、その形態については、特に限定されるものではなく、バルク体、繊維集合体など種々の形態のものを用いることができるが、断熱性能の観点からは、アルミナやジルコニアなどの繊維を用いた繊維集合体を用いることが望ましい。
なお、このような断熱手段は、例えば所定の位置への断熱材の配置を所定のタイミングで行うことが可能である可動機構を備えたものであることが望ましい。このような構成とすることにより、より効率的な接合が可能となる。
なお、このようなサセプターは、例えば所定の位置への配置を所定のタイミングで行うことが可能である可動機構を備えたものであることが望ましい。このような構成とすることにより、より効率的な接合が可能となる。
このような金属部材の接合装置の具体例としては、誘電体微粒子及び金属部材の接合面を囲うように配置される断熱材を有する断熱手段と、断熱材に囲われた領域内に誘電体微粒子及び金属部材の接合面を加熱するように配置される他の加熱源としてのサセプターとを更に備えているものを挙げることができる。このような構成とすることにより、より効率的な接合が可能となる。
ここで、「非酸化性雰囲気」とは、上述したように通常の大気組成と同じ大気雰囲気よりも各種金属部材が酸化されにくい雰囲気を意味する。
非酸化性雰囲気制御手段の具体例としては、加熱炉内を真空雰囲気とする真空ポンプや、例えば加熱炉内をアルゴンガス(又は窒素ガス)雰囲気とするアルゴンガス(又は窒素ガス)置換機などを挙げることができる。なお、アルゴンガス(又は窒素ガス)置換機は、例えば真空ポンプ及びアルゴンガス(又は窒素ガス)供給機によって構成させることができる。このような構成を有する接合装置は、接合装置自体の構造を簡略的なものにできるという観点から望ましい。このような非酸化性雰囲気制御手段を用いると金属部材の酸化を抑制することができる。
つまり、このようなアルゴンガス等を供給するものは、供給ガスの流し方や温度を適宜調整することにより、更に効率的な接合を可能とする。具体的には、金属部材の接合面から離れた低温側からアルゴンガス等を供給することにより、金属部材の接合面の局所的ないし選択的な加熱を調整し易くなり、更に接合面における加熱を均一なものとすることができ、熱暴走を抑制することができる。もちろん、このような非酸化性雰囲気制御手段を用いても金属部材の酸化を抑制することができる。
ここで、「金属部材」とは、いわゆる金属材料のみからなる金属部材のみを意味するものではない。すなわち、例えばセラミックや金属、プラスチックなどの材料から構成されたモジュール(例えば、車両においては、電装品や内装品、外装品を挙げることができる。)に付属した継ぎ手用の金属部材をも意味する。
また、他の金属部材についても、上記金属部材と同様に、いわゆる金属材料のみからなる金属部材だけでなく、モジュールに付属した継ぎ手用の金属部材をも含む意味に解釈しなければならない。
更に、上記金属部材と他の金属部材とは、同種材料及び異種材料のいずれであってもよい。更にまた、他の金属部材の接合面にも誘電体微粒子を配置するようにしてもよい。
なお、本発明における「金属酸化物の微粒子」とは、金属酸化物のみからなる微粒子だけを意味するものではない。すなわち、金属酸化物のみからなる微粒子と同様の効果を示す限り、金属微粒子の表面が酸化されたもの、つまり酸化被膜を有する金属微粒子をも含むという意味に解釈しなければならない。酸化被膜を有する金属微粒子の具体例としては、酸化被膜を有するアルミニウム微粒子や鉄微粒子などを挙げることができる。
一方、誘電体微粒子の平均粒子径は200nm以上であることが好ましく、250nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることが更に好ましい。誘電体微粒子の平均粒子径が200nm以上であると、誘電体微粒子の凝集がより起こりにくくなり、一体品の機械的強度と同程度の機械的強度とすることがより容易になる。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
図3は、本発明の一実施形態に係る金属部材の接合装置の一例を示す概略構成図である。なお、同図はミリ波照射時の様子を表している。
同図に示すように、本例の金属部材の接合装置は、誘電体微粒子配置手段10の一例である噴射ノズルと、加圧手段20の一例である押し具と、ミリ波照射手段30と、断熱手段40と、サセプター50と、非酸化性雰囲気制御手段60の一例であるアルゴンガス供給機とを備えている。
ここで、ミリ波照射手段30は、ミリ波発振機32と導波管34とミリ波を反射し得る内壁を有する加熱炉36とを有する。
また、断熱手段40は、断熱材としてアルミナ及びジルコニアを用いたものである。更に、サセプター50は、アルミナを用いたものである。
なお、双方にアルミナを用いた場合でも、誘電体微粒子のより近くに配置されたアルミナの方がサセプターとして機能し易い。
このような条件下、ミリ波発振機でミリ波を発生させると、導波管34を通ったミリ波が加熱炉36内に導入される。加熱炉36内のミリ波は、加熱炉36の内壁で反射するなどして、誘電体微粒子に到達する。そして、誘電体微粒子4は誘電損失熱を発生させ、金属部材2の接合面が局所的ないし選択的に加熱される。また、このとき、サセプター50は、金属部材2、誘電体微粒子4などからの放熱や輻射若しくはミリ波発振機32からのミリ波によって加熱をすることができるようになる。
図4に示すように、本例の金属部材の接合装置は、加熱炉36が金属部材2の全体を囲んでいない点、誘電体微粒子4にミリ波を直接照射できる位置に導波管34が配置されている点において相違点を有している。
本例の金属部材の接合装置においては、誘電体微粒子4へのミリ波の照射を可能な限り直接的なものとして、接合における効率を向上させている。また、加熱炉36を小型化することによって、雰囲気や温度、ミリ波を制御する領域が小さくなり、その制御が容易になる。また、小型化した加熱炉36は、サセプター50や断熱手段40などと同様に、所定の位置への加熱炉構成部材の配置を所定のタイミングで行うことが可能である可動機構を備えたものであることが望ましい。このような構成とすることにより、より効率的な接合が可能となる。
具体的には、少なくとも一方の金属部材が、セラミックや金属、プラスチックなどの他の材料から構成されたモジュール(例えば、車両においては、電装品や内装品、外装品を挙げることができる。)に付属した継ぎ手用の金属部材である場合には、接合の際のミリ波や熱がモジュールに到達することを防ぎながら、金属部材同士を接合装置に供することができるため、効率的な接合が可能となる。
なお、上記図3で示した例と比較して、誘電体微粒子配置手段10や非酸化性雰囲気制御手段60の一例であるアルゴンガス供給機の位置が若干異なるが、これらの仕様は適宜変更できる。
また、図示していないが、本例の金属部材の接合装置においては、加熱炉外の金属部材を断熱材などにより断熱することが望ましい。
金属部材として純アルミニウム(純度:99.99%)の丸棒試験片(直径5mm×長さ15mm)及び丸棒試験片(直径10mm×長さ25mm)を用い、導電体微粒子として金属酸化物の一例であるアルミナ微粒子(平均粒子径:3μm)を用いた。
更に、これらを図2に示すように配置して、図3に示すような金属部材の接合装置に配置して、5MPaの圧力を付与し、アルゴンガスを供給しながら、ミリ波(出力:2.5kW、周波数24GHz)を30分間照射して、金属接合部材を得た。
本例の仕様や条件の一部を表1に示す。
表1に示すように、仕様や条件を代えたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、金属接合部材を得た。
表1に示すように、誘電体微粒子を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、金属接合部材を得た。
表1に示すように、ミリ波でなくマイクロ波(出力:1kW、周波数2.45GHz)を照射したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返した。なお、本例においては、金属接合部材が得られなかった。
上記各例で得られた金属接合部材を、下記の3つの評価試験によって評価した。得られた結果を表1に併記する。
接合の可否を目視により評価した。表1中の「接合可否評価」において、「○」は接合したものを示し、「×」は接合しなかったものを示す。
金属接合部材の全長をノギスで計測し、初期長さ(接合前の複数の金属部材における、金属接合部材の全長に対応する部位の長さの総和)との差から歪量を算出することにより評価した。表1中の「歪評価」において、「○」は歪量が1%未満であったものを示し、「×」は歪量が1%以上であったものを示す。なお、比較例2は接合できなかったため、歪評価試験をしていない。
金属接合部材の結合界面に対してほぼ垂直に切断して得られた断面をエッチングした後、光学顕微鏡で観察して、その組織変化の程度を評価した。表1中の「熱影響部評価」において、「○」は結晶粒の粗大化が認められる熱影響部と結晶粒の粗大化が認められない非熱影響部との界面が結合界面から200μm未満であった(結合界面から200μm離れた領域では結晶粒の粗大化が認められなかった)ものを示し、「×」は前記熱影響部と前記非熱影響部との界面が結合界面から200μm以上であった(結合界面から200μm離れた領域で結晶粒の粗大化が認められた)ものを示す。
なお、比較例2は接合できなかったため、熱影響部評価試験をしていない。
これは、表1の結果からも分かる。すなわち、実施例1〜7において得られた金属接合部材は、比較例1において得られた金属接合部材と比較して、歪量が低く、熱影響部が小さいものとなっている。
また、比較例1のように金属部材表面の酸化物の発熱のみを利用している場合は、ミリ波の出力が2.5kWのように比較的高いと、局所的ないし選択的な加熱が十分にできないことも分かる。なお、特に示してはないが、比較例1と同様に、金属部材表面の酸化物の発熱のみを利用した場合は、ミリ波の出力を1kWのように比較的低くした場合には、接合に必要な十分な加熱ができなかった。
更に、比較例2のようにアーク放電が生じないようにマイクロ波の出力を1kWに設定した場合は、誘電体微粒子を用いても接合面の局所的ないし選択的な加熱が実現できなかった。
また、誘電体微粒子が、誘電体のバルク体や箔などと比較して、ミリ波が内部まで到達し易く、活性状態となり易いため、誘電損失熱が発生し易いということも考えられる。
更に、誘電体微粒子自体から発生する誘電損失熱によって、誘電体微粒子間にネッキングの形成がされ、ネックに電界が集中し、更に誘電損失熱の発生が促進されて、金属部材同士が接合するというメカニズムも考えられる。もちろん、これらが複合的に進行していることも考えられる。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
また、実施例2において用いた酸化鉄については、非酸化性雰囲気下、ミリ波を照射すると還元されて鉄になることが確認されており、これは酸化鉄自体から発生する誘電損失熱によって、酸化鉄を構成する酸素が雰囲気中に消失していったためと推測される。
2 金属部材
2a 接合面
4 誘電体微粒子
10 誘電体微粒子配置手段
20 加圧手段
22 設置台
30 ミリ波照射手段
32 ミリ波発振機
34 導波管
36 加熱炉
40 断熱手段
50 サセプター
60 非酸化性雰囲気制御手段
Claims (17)
- 複数の金属部材を固相状態で接合する金属部材の接合方法であって、
金属部材の接合面に誘電体微粒子を配置する工程(1)と、
上記工程(1)の後に実施され、上記誘電体微粒子が接合面に配置された上記金属部材と他の金属部材とを、該誘電体微粒子を挟むように配置し、これらの金属部材自体に塑性変形が生じない程度の圧力を付与する条件下、該誘電体微粒子にミリ波を照射して、これらの金属部材の接合面を加熱する工程(2)と、を含み、
上記工程(2)において、上記誘電体微粒子にミリ波を照射して、これらの金属部材の接合面を加熱する際に、更に上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を加熱するように配置した他の加熱源としてのサセプターによって加熱する条件下とし、
上記サセプターとしてアルミナを用いる
ことを特徴とする金属部材の接合方法。 - 上記誘電体微粒子が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硼化物及び炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の金属部材の接合方法。
- 上記工程(2)において、上記誘電体微粒子にミリ波を照射して、これらの金属部材の接合面を加熱する際に、更に上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲うように配置した断熱材によって断熱する条件下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属部材の接合方法。
- 上記工程(2)において、上記誘電体微粒子にミリ波を照射して、これらの金属部材の接合面を加熱する際に、更に上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲うように配置した断熱材によって断熱し、上記断熱材に囲われた領域内に上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を加熱するように配置した他の加熱源としてのサセプターによって加熱する条件下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属部材の接合方法。
- 上記断熱材が、アルミナ及びジルコニアの少なくとも一方を用いたものであることを特徴とする請求項3又は4に記載の金属部材の接合方法。
- 上記工程(2)において、上記誘電体微粒子にミリ波を照射して、これらの金属部材の接合面を加熱する際に、更に上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲う領域を非酸化性雰囲気とする条件下とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の金属部材の接合方法。
- 上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲う領域を非酸化性雰囲気とする際に、作業領域全体を真空雰囲気、アルゴンガス雰囲気若しくは窒素ガス雰囲気とする、又は作業領域のうち上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲う領域を含む一部をアルゴンガス流れ雰囲気若しくは窒素ガス流れ雰囲気とすることを特徴とする請求項6に記載の金属部材の接合方法。
- 上記ミリ波が、周波数帯が20GHz〜300GHzのミリ波であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の金属部材の接合方法。
- 複数の金属部材を固相状態で接合する金属部材の接合装置であって、
金属部材の接合面に誘電体微粒子を配置する誘電体微粒子配置手段と、
上記誘電体微粒子が接合面に配置された上記金属部材と他の金属部材とに、これらの金属部材自体に塑性変形が生じない程度の圧力を付与する加圧手段と、
上記誘電体微粒子にミリ波を照射するミリ波照射手段と、
上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を加熱するように配置される他の加熱源としてのサセプターと、を備え、
上記サセプターとしてアルミナを用いた
ことを特徴とする金属部材の接合装置。 - 上記誘電体微粒子が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硼化物及び炭素からなる群より選ばれる少なくとも1種の微粒子であることを特徴とする請求項9に記載の金属部材の接合装置。
- 上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲うように配置される断熱材を有する断熱手段を更に備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載の金属部材の接合装置。
- 上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲うように配置される断熱材を有する断熱手段と、上記断熱材に囲われた領域内に上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を加熱するように配置される他の加熱源としてのサセプターとを更に備えたことを特徴とする請求項9又は10に記載の金属部材の接合装置。
- 上記断熱材が、アルミナ及びジルコニアの少なくとも一方を用いたものであることを特徴とする請求項11又は12に記載の金属部材の接合装置。
- 上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲う領域を非酸化性雰囲気とする非酸化性雰囲気制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項9〜13のいずれか1つの項に記載の金属部材の接合装置。
- 上記非酸化性雰囲気制御手段が、作業領域全体を真空雰囲気、アルゴンガス雰囲気若しくは窒素ガス雰囲気とするものである、又は作業領域のうち上記誘電体微粒子及び上記金属部材の接合面を囲う領域を含む一部にアルゴンガス若しくは窒素ガスを供給するものであることを特徴とする請求項14に記載の金属部材の接合装置。
- 上記ミリ波が、周波数帯が20GHz〜300GHzのミリ波であることを特徴とする請求項9〜15のいずれか1つの項に記載の金属部材の接合装置。
- 請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の金属部材の接合方法又は請求項9〜16のいずれか1つの項に記載の金属部材の接合装置を用いたことを特徴とする金属接合部材の製造方法。
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