まず、本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化システムを適用した作業車両であるトラクタ1の全体構成から説明する。尚、本実施形態においては、作業車両をトラクタとしているが、これは特に限定するものではなく、例えば、農用作業車両である田植機やコンバイン、建設用作業車両であるパワーショベルやホイルローダとすることも可能である。
図1に示すように、トラクタ1においては、機体フレーム2がその長手方向を前後方向として配置されている。機体フレーム2の前部には、エンジン50が設けられている。エンジン50は、ボンネット17によって覆われている。機体フレーム2の後部には、変速装置11が設けられている。
機体フレームの前部には、左右一対の前輪3・3がフロントアクスルケースを介して支持されている。変速装置11には、左右一対の後輪4・4がリアアクスルケースを介して支持されている。これらの前輪3・3及び後輪4・4は、動力がエンジン50から主クラッチや変速装置11を介して伝達されることによって回転駆動可能とされる。
機体フレーム2の前後中途部、及び変速装置11の上方には、運転操作部12が配置されている。運転操作部には、運転座席15、操向ハンドル14、変速レバー及び作業操作レバー等が設けられている。これらの操向ハンドル14、運転座席15、変速レバー及び作業操作レバーなどは、キャビン13によって覆われている。
運転座席15は、作業者が着座可能に構成されている。操向ハンドル14は、運転座席15の前方に配置されて、作業者によりハンドル軸回りに回転操作可能に構成されている。変速レバーは、運転座席15の左右一側方に配置されて、作業者により前後方向へ回動操作可能に構成されている。
そして、トラクタ1は、前輪3・3及び後輪4・4の回転駆動に走行し、変速レバーの操作量に応じて変速装置11の変速比を変更し、走行速度を調整することができるようになっている。また、トラクタ1は、操向ハンドル14の操作量に応じて左右一対の前輪3・3を操舵し、走行方向を調整することができるようになっている。
また、本実施形態においては、フロントローダ5がトラクタ1の前部に装着されている。フロントローダ5は、機体フレーム2の前部から立設される支柱フレーム6と、該支柱フレーム6に基部側が支持されるリフトアーム7と、該リフトアーム7の先端部に支持されるバケット8と、リフトアーム7と支柱フレーム6の間に介装されてリフトアーム7を回動可能とする油圧シリンダ9と、リフトアーム7とバケット8との間に介装されてバケット8を回動可能とするバケットシリンダ10等を備えている。
次に、トラクタ1の排気ガス浄化システム100の全体的な構成について説明する。
トラクタ1の排気ガス浄化システム100は、排気ガス浄化装置20と、制御装置30と、を備える。さらに、排気ガス浄化システム100は、着座状態検出手段としてのシートスイッチ16を備えている。
図2に示すように、排気ガス浄化装置20は、エンジン50の排気通路55に設けられている。エンジン50においては、吸気マニホールド51がシリンダヘッド52の一側に設けられて、燃焼室と吸気弁を介して連通可能とされている。吸気マニホールド51には吸気通路53が連通されている。この吸気通路53には、吸気スロットル41が設けられている。
吸気スロットル41は、吸気マニホールド51への吸気量を調整するものである。吸気スロットル41は、弁体と、該弁体を回動するモータ等で構成されるアクチュエータとを備えている。吸気スロットル41は、弁体をアクチュエータにより回動させることで開閉して、吸気通路53の通路面積を変化させ、その通路面積に応じて吸気マニホールド51への吸気量を決定することができるように構成されている。
また、エンジン50において、排気マニホールド54がシリンダヘッド52の他側に設けられて、燃焼室と排気弁を介して連通可能とされる。排気マニホールド54には排気通路55が連通されている。排気通路55には排気スロットル42が設けられている。
排気スロットル42は、エンジン50の排気マニホールド54からの排気量を調整するものである。排気スロットル42は、弁体と、該弁体を回動するモータ等で構成されるアクチュエータとを備えている。排気スロットル42は、弁体をアクチュエータにより回動させることで開閉して、排気通路55の通路面積を変化させ、その通路面積に応じて排気マニホールド54からの排気量を決定することができるように構成されている。
また、吸気通路53の吸気スロットル41よりも吸気の流れの下流側と、排気通路55の排気スロットル42よりも排気ガスの流れの上流側との間には、EGR装置60が設けられる。
EGR装置60は、エンジン50の排気マニホールド54から排気される排気ガスの一部をEGRガスとして吸気に還流させるものである。EGR装置60は、EGR通路61と、EGRバルブ62と、EGRクーラ63とを備える。
EGR通路61は、EGRガスが流れる通路である。EGR通路61は、その一端部で排気通路55又は排気マニホールド54に接続され、その他端部で吸気通路53に接続されている。
EGRバルブ62は、EGRガスの流量を調整するバルブである。EGRバルブ62は、EGR通路61の中途部に設けられている。EGRバルブ62は、弁体と、該弁体を回動するモータ等で構成されるアクチュエータとを備えている。EGRバルブ62は、弁体をアクチュエータにより回動させることで開閉して、EGR通路61の通路面積を変化させ、その通路面積に応じてEGRガスの還流量を決定することができるように構成されている。
EGRクーラ63は、高温のEGRガスを冷却するものである。EGRクーラ63は、EGR通路61の中途部であって、EGR通路61のEGRバルブ62よりもEGRガスの流れの上流側に設けられている。
排気ガス浄化装置20は、エンジン50から排気される排気ガス中に含まれる粒子状物質を除去する装置である。排気ガス浄化装置20は、酸化触媒21と、DPF(Diesel PARTICULATE FILTER:ディーゼル・パティキュレート・フィルター)22と、導通管23とを備えている。
酸化触媒21は、排気ガス浄化装置20内において排気ガスの流れの上流側に設けられ、排気ガスの流れ方向(矢印90)に格子状(ハニカム状)の通路が形成される図示せぬモノリス担体を有するものである。当該モノリス担体上には、白金やロジウムやパラジウム等の触媒金属が担持される。
DPF22は、排気ガス浄化装置20内において、排気ガスの流れの下流側に設けられる略円筒形のハニカムフィルタである。DPF22は、コージェライトのようなセラミックスからなる多孔質の隔壁で仕切られた多角形断面を有する。DPF22は、当該隔壁により多数の互いに平行に形成された貫通孔の、相隣接する入口部と出口部を交互に実質的に封止することにより構成される。DPF22は、DPF22の入口側から導入されたエンジン50の排気ガスを隔壁による貫通孔を通過させることで、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する。尚、隔壁に白金等の触媒金属をコーティングして、酸化触媒とDPF(フィルタ)を一体的に構成することも可能である。
導通管23は、その一端部を酸化触媒21よりも排気ガスの流れの上流側に形成された、排気ガス浄化装置20の入口側に接続し、その他端部をDPF22よりも排気ガスの流れの下流側に形成された、排気ガス浄化装置20の出口側に接続して、排気ガス浄化装置20内における入口側と出口側とを連通させる。導通管23の長手方向中途部には、後述する差圧センサ31が設けられている。
制御装置30は、エンジンコントロールユニット(ECU)を含み、トラクタ1に備えられる各装置の制御に加えて、エンジン50の制御を行う。制御装置30は、排気ガス浄化システム100においては、排気ガス浄化装置20のDPF22の再生制御を行う。制御装置30は、CPU等の演算装置や、ROMやRAM等の記憶装置、インターフェイス、バスを備える。記憶装置には、制御プログラムが記憶されている。
制御装置30には、差圧センサ31と、エンジン回転数センサ32と、シートスイッチ16とが接続されている。制御装置30には、排気ガス浄化装置20の再生運転を開始させる図示しない再生スイッチがさらに接続されている。
差圧センサ31は、排気ガス浄化装置20内の入口側と出口側との圧力差(差圧)を検出するセンサである。差圧センサ31により検出される当該差圧は、検出信号として制御装置30に入力される。制御装置30は、差圧センサ31から入力された検出信号に基づいて、DPF22における粒子状物質の捕集量を算出する。そして、制御装置30は、算出したDPF22における粒子状物質の捕集量と、予め設定した第一設定値とを比較して、排気ガス浄化装置20の再生運転を行うか否かを判断する。ここでいう「第一設定値」とは、DPF22に粒子状物質が捕集されることにより、DPF22において排気ガスが流通しにくい状態となり、DPF22の再生が必要となる場合のDPF22における粒子状物質の捕集量であり、予め設定される。尚、上記差圧センサ31の構成は、排気ガス浄化装置20内の入口側と出口側とにそれぞれ圧力センサを配置して制御装置30と接続し、両圧力センサから検出される圧力から差圧を演算する構成とすることも可能である。
エンジン回転数センサ32は、エンジン50の回転数を検出するセンサである。エンジン回転数センサ32により検出されるエンジン50の回転数は、検出信号として制御装置30に入力される。制御装置30は、当該検出信号に基づいて、燃料噴射を制御したり、エンジン50の負荷を演算したりし、適正にエンジン50を運転できるようにする。
シートスイッチ16は、運転座席15における、作業者の着座状態を検出する着座状態検出手段である。即ち、シートスイッチ16は、作業者が運転座席15に着座しているかどうかを検出する検出手段である。シートスイッチ16は、運転座席15の下面側に設けられている。
シートスイッチ16は、作業者が運転座席15に着座すると、作業者の体重により「入(ON)」となり、作業者が運転座席15に着座していないと「切(OFF)」となる。具体的には、作業者が運転座席15に着座すると、作業者の体重によって運転座席15が下降し、これによりシートスイッチ16の接点が閉となってシートスイッチ16が「入(ON)」の状態となる。一方、作業者が運転座席15から離座すると、運転座席15内の弾性体の付勢力により運転座席15が元の位置に戻り、これによりシートスイッチ16の接点が開となってシートスイッチ16が「切(OFF)」の状態となる。
尚、本実施形態においては、着座状態検出手段をシートスイッチ16としているが、これに限定されるものではなく、近接センサや距離センサ等とすることも可能である。また、運転座席15における作業者の着座状態を検出する代わりに、運転座席15に着座している作業者、又は、運転操作部12に存在する作業者を、赤外線センサ等の人体検知手段で直接検出する構成としても構わない。
また、制御装置30には、吸気スロットル41と、排気スロットル42と、EGRバルブ62と、表示手段33と、報知手段34と、切替手段35と、タイマ36と、が接続されている。吸気スロットル41、排気スロットル42及びEGRバルブ62は、制御装置30により制御されて、前述のように開閉する。
表示手段33は、制御装置30により制御されて、排気ガス浄化装置20の再生運転の状態等を表示する手段である。表示手段33は運転操作部12に配置されている。表示手段33としては、例えば、図示せぬ表示パネルに設けられる表示ランプや液晶等が挙げられる。表示手段33は、排気ガス浄化装置20の再生運転が必要な場合には、「再生運転必要」の旨を表示する。また、表示手段33は、排気ガス浄化装置20が再生運転中の場合には、「再生運転中」の旨を表示する。さらに、表示手段33は、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されている場合には、「再生運転保留」の旨を表示するとともに、再生運転の「保留回数」を表示する。
報知手段34は、制御装置30により制御されて、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数が設定回数を越えた場合に、その旨を作業者に報知する手段である。報知手段34は運転操作部12に配置されている。報知手段34としては、例えば、スピーカやブザー等により構成されるものが挙げられる。報知手段34は、保留回数が設定回数を越えると、スピーカで音声により報知したり、ブザーを鳴動させたりする。
切替手段35は、制御装置30により制御されて、排気ガス浄化装置20の再生運転のモードを切り替える手段である。切替手段35は運転操作部12に配置される。切替手段35としては、例えば、スイッチやダイヤル等で構成されるものが挙げられる。切替手段35により切り替えられる排気ガス浄化装置20の再生運転のモードには、「手動強制再生モード」と、「着座再生モード」と、「離座再生モード」とがある。
「手動強制再生モード」は、手動で強制的に排気ガス浄化装置20の再生運転を行うことが可能なモードのことである。制御装置30が排気ガス浄化装置20の再生運転が必要であると判断して、その旨を表示手段33に表示させた場合、作業者は、排気ガス浄化装置20の再生運転のモードを切替手段35により「手動強制再生モード」に切り替え、運転操作部12で前記再生スイッチを操作して、手動で強制的に排気ガス浄化装置20の再生運転を行うことができる。
「着座再生モード」は、作業者が運転座席15に着座している場合のみ、排気ガス浄化装置20の再生運転を行うことが可能なモードである。制御装置30が排気ガス浄化装置20の再生運転が必要であると判断した場合であっても、排気ガス浄化装置20の再生運転モードを「着座再生モード」に切り替えている時には、作業者が運転座席15に着座していない状態では、自動的に排気ガス浄化装置20の再生運転が保留され、作業者が運転座席15に着座している状態では、自動的に排気ガス浄化装置20の再生運転が行われる。
「離座再生モード」は、作業者が運転座席15に着座していない場合のみ排気ガス浄化装置20の再生運転を行うことが可能なモードである。制御装置30が排気ガス浄化装置20の再生運転が必要であると判断した場合、排気ガス浄化装置20の再生運転モードを「離座再生モード」に切り替えている時には、作業時等で作業者が運転座席15に着座している状態では、自動的に排気ガス浄化装置20の再生運転が保留され、作業者が運転座席15に着座していない状態では、自動的に排気ガス浄化装置20の再生運転が行われる。尚、「離座再生モード」の詳細については後述する。
タイマ36は、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留時間をカウントするものである。
次に、排気ガス浄化システム100において、排気ガス浄化装置20の再生運転が実行又は停止される際の流れについて説明する。
排気ガス浄化システム100において、排気ガス浄化装置20の再生運転のモードは、切替手段35が作業者に手動操作されることによって、所望のモードに切り替えられる。
まず、排気ガス浄化装置20の再生運転のモードが「手動強制再生モード」の場合について説明する。
制御装置30は、切替手段35から排気ガス浄化装置20の再生運転のモードを取得する。図3に示すように、切替手段35が「手動強制再生モード」に切り替えられたとき、制御装置30は、その時点の各種信号を読み込む(S1)。具体的には、差圧センサ31から出力される検出信号(排気ガス浄化装置20の入口側と出口側との差圧についての検出信号)と、エンジン回転数センサ32から出力される検出信号(エンジン50の回転数についての検出信号)と、を読み込む。
ステップS2において、制御装置30は、差圧センサ31から入力される検出信号に基づいて、DPF22における粒子状物質の捕集量を算出する(S2)。
ステップS3において、差圧センサ31からの検出信号により算出したDPF22における粒子状物質の捕集量と、第一設定値とを比較し、DPF22における粒子状物質の捕集量が第一設定値を超えているか否かを判断する(S3)。
ステップS3において、制御装置30は、DPF22における粒子状物質の捕集量が第一設定値を超えていると判断すると、ステップS4において、制御装置30は、「再生運転必要」である旨を表示手段33に表示させる(S4)。具体的には、例えば、制御装置30は、ランプを点灯させて、排気ガス浄化装置20の再生運転が必要であることを作業者に認識させる。
表示手段33により、排気ガス浄化装置20の再生運転が必要であることを認識した作業者が前記再生スイッチを押すことにより、制御装置30が排気ガス浄化装置20の再生運転を開始させる。即ち、ステップS5において、作業者の手動操作により強制的に排気ガス浄化装置20の再生運転を開始する(S5)。
ステップS5において、排気ガス浄化装置20の再生運転が開始されることにより、ステップS6において、表示手段33の「再生運転必要」の旨の表示(ランプ)が消灯し(S6)、ステップS7において、表示手段33の「再生運転中」の旨の表示(ランプ)が点灯する(S7)。
そして、ステップS8において、制御装置30は、エンジン50の回転数を排気ガス浄化装置20の再生運転に適した回転数まで上昇させる(S8)。ここで、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転として、吸気スロットル41を閉じ側として燃料を不完全燃焼させ、排気スロットル42を閉じ側として負荷を大きくし、エンジン50の回転数を所定値上昇させて、排気温度を酸化触媒の活性温度まで上昇させ、燃料噴射時期を調整して、または、後噴射させて、未燃燃料を酸化触媒で酸化させ、捕集した粒子状物質を焼却させることを行う。但し、排気ガス浄化装置20の再生運転は上記方法に限定するものではない。
ステップS9において、制御装置30は、差圧センサ31の検出信号を読み込む(S9)。ステップS10において、制御装置30は、差圧センサ31から入力される検出信号に基づいて、DPF22における粒子状物質の捕集量を算出する(S10)。
ステップS11において、差圧センサ31からの検出信号により算出したDPF22における粒子状物質の捕集量と、第二設定値とを比較し、DPF22における粒子状物質の捕集量が第二設定値を超えているか否かを判断する(S11)。ここでいう「第二設定値」とは、DPF22に堆積されたPMが殆ど燃焼され、DPF22への排気ガスの流通が容易となる場合のDPF22における粒子状物質の捕集量である。「第二設定値」は、排気ガス浄化装置20の入口側と出口側との差圧から予め算出される値である。
ステップS11において、制御装置30は、差圧センサ31からの検出信号より算出されるDPF22における粒子状物質の捕集量が第二設定値を超えていると判断した場合(S11−No)、引き続き、排気ガス浄化装置20の再生運転を行う。
一方、ステップS11において、制御装置30は、差圧センサ31からの検出信号より算出されるDPF22における粒子状物質の捕集量が第二設定値以下であると判断した場合(S11−No)、排気ガス浄化装置20の再生運転が終了したとして表示手段33の「再生運転中」の旨の表示(ランプ)を消灯させる(S12)。そして、吸気スロットル41及び排気スロットル42が元の状態(再生運転前の状態)まで開き、エンジン50の回転数を元の回転数(再生運転前の回転数)まで戻す。こうして、排気ガス浄化装置20の再生運転が停止する(S13)。
尚、排気ガス浄化装置20の再生運転が必要かどうかの判断は、本実施形態では、排気ガス浄化装置20の入口側と出口側との差圧から算出されるDPF22における粒子状物質の捕集量と、予め設定された第一設定値とを比較して判断しているが、これに限定するものではなく、マップ等を用いて、エンジン50の回転数と排気圧等で判断することも可能である。
次に、排気ガス浄化装置20の再生運転のモードが「着座再生モード」の場合について説明する。図4に示すように、切替手段35が「着座再生モード」に切り替えられたとき、ステップS21において、制御装置30は、その時点の各種信号を読み込む(S21)。具体的には、制御装置30は、差圧センサ31の検出信号と、シートスイッチ16の検出信号(運転座席15における作業者の着座状態についての検出信号)と、を読み込む。
ステップS22において、制御装置30は、差圧センサ31の検出信号に基づいて、DPF22における粒子状物質の捕集量を算出する(S22)。ステップS33において、算出したDPF22における粒子状物質の捕集量が、第一設定値を超えているか否かを判断する(S23)。
ステップS23において、DPF22における粒子状物質の捕集量が第一設定値を超えていないと判断した場合(S23−No)、ステップS24において、制御装置30は、保留回数nを0(n=0)として(S24)、引き続き、各種信号を読み込む(S21)。
一方、ステップS23において、DPF22における粒子状物質の捕集量が第一設定値を超えていると判断した場合(S23−Yes)、ステップS25において、制御装置30は、シートスイッチ16が「入(ON)」の状態か否かを判断する(S25)。即ち、運転座席15における作業者の着座状態を判断する。
ステップS25において、シートスイッチ16が「切(OFF)」の状態である、即ち、作業者が運転座席15に着座していないと判断した場合(S25−No)、ステップS26において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数nが設定回数n0を超えているか否かを判断する(S26)。
ステップS26において、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数nが設定回数n0を超えていないと判断した場合(S26−No)、ステップS27において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転を保留し、再生運転を行わない(S27)。
そして、ステップS28において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されている旨を表示手段33に表示させる(S28)。このように、表示手段33に表示させることで、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されている旨を、作業者が視認することができる。
さらに、ステップS29において、制御装置30は、保留回数nに1を加える(S29)。尚、この時に保留回数を表示手段33に表示してもよい。
ステップS30において、制御装置30はタイマ36を作動させて、タイマ36のカウントを開始する(S30)。そして、ステップS31において、制御装置30は、タイマ36がカウントする時間Tが、設定時間T0を経過したかを判断する(S31)。つまり、排気ガス浄化装置20の再生運転が、設定時間T0保留される。
ステップS31において、時間Tが設定時間T0を経過したと判断すると(S31−Yes)、ステップS25において、制御装置30は、再度、シートスイッチ16が「入(ON)」の状態か否かを判断する(S25)。つまり、制御装置30は、作業者が運転座席15に着座したか否かを判断する。
一方、ステップS26において、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数nが設定回数n0を超えていると判断した場合(S26−Yes)、ステップS32において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数が設定回数n0を越えている旨の警告を作業者に報知手段34により報知し(S32)、ステップS27に進む。このように、当該警告を作業者に報知手段34により報知することで、排気ガス浄化装置20の再生運転が必要な旨を、作業者が的確に把握することができる。したがって、排気ガス浄化装置20がその再生運転が必要な状態で長時間放置されることを阻止することができる。
尚、ステップS25からステップS32までのステップは、ステップS25においてシートスイッチ16が「切(OFF)」の状態(S25−No)である限り、繰り返し行われる。
また、ステップS25において、シートスイッチ16が「入(ON)」の状態である、即ち、作業者が運転座席15に着座していると判断した場合(S25−Yes)、ステップS33において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されているか否かを判断する(S33)。
ステップS33において、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されていないと判断した場合(S33−No)、ステップS34において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転を行う(S34)。
一方、ステップS33において、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されていると判断した場合(S33−Yes)、ステップS35において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留を解除し(S35)、ステップS34において、排気ガス浄化装置20の再生運転を行う(S34)。
尚、排気ガス浄化装置20の再生運転の開始から停止まで(ステップS34、及びステップS36からステップS38まで)については、「手動強制再生モード」の場合(ステップS5からステップS13まで)と同様のため、説明を省略する。
このように、シートスイッチ16が「切(OFF)」の状態にある場合、即ち、作業者が運転座席15に着座していない場合には、排気ガス浄化装置20の再生運転が必要な場合であっても保留される。したがって、作業者がトラクタ1(車両本体)から離れているときに、排気ガス浄化装置20が再生運転状態となってエンジン50の回転数が上昇することがない。そのため、排気ガス浄化装置の再生運転に起因するエンジン音の変化がなく、トラクタ1の周囲に所在する作業者等にトラクタ1の故障である等の誤解を招くことがない。
また、作業者が運転座席15に着座していない場合に、トラクタ1が作業状態ではなく、また、エンジン50の回転数が低くなっているとき(アイドリング回転や低負荷運転状態のとき)、排気ガス浄化装置20の再生運転が自動的に行われて、エンジン50の回転数が上昇し、燃料が無駄に消費されることがなくなり、燃費の悪化を防止することができる。
さらに、作業者が運転座席15に着座することによって、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留が解除され、自動的に排気ガス浄化装置20の再生運転が実行されることから、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留を解除するための操作が不要であるとともに、保留解除後の再生運転の実行についても操作が不要である。
尚、排気ガス浄化装置20の再生運転のモードが「着座再生モード」の場合であっても、別途保留スイッチ及び保留解除スイッチを設けることで、排気ガス浄化装置20の再生運転を強制的に保留したり、当該保留を解除したりすることができる。具体的には、「着座再生モード」の場合、エンジン50が低負荷の状態で作業を行っているとき、作業者が運転座席15に着座している状態では、排気ガス浄化装置20の再生運転が行われる。このような場合、エンジン50の回転数を排気ガス浄化装置20の再生運転に適した回転数まで増加させたくないことがある。そのため、手動で保留スイッチを操作することで排気ガス浄化装置20の再生運転を保留し、作業が終了したときに保留解除スイッチを操作することで保留を解除し、排気ガス浄化装置20の再生運転を行う。
次に、排気ガス浄化装置20の再生運転のモードが「離座再生モード」の場合について説明する。
「離座再生モード」は、エンジン50の回転数が低回転となる作業、又は、排気ガス浄化装置20の再生運転に適したエンジン50の回転数まで上昇することが少ない作業を行う場合等に、その作業が終了した時やその作業を中断した時等に、排気ガス浄化装置20の再生運転を行うモードである。
エンジン50が主に高負荷状態又は高回転状態となる作業がトラクタ1において行われる場合、エンジン50から排気される排気ガスによって排気ガス浄化装置20の温度も高くなって、作業中に粒子状物質が燃焼されるため、排気ガス浄化装置20の再生運転を行う必要はない。
しかし、ローダ作業時や牽引作業時のように、エンジン50が高負荷の状態となる時間が短い作業がトラクタ1において行われる場合、エンジン50から排気される排気ガスの温度は比較的低温となる。そのため、エンジン50の回転数が上昇しないと、排気ガス浄化装置20の酸化触媒21の温度も上昇しないため粒子状物質を十分に燃焼させることができず、別途排気ガス浄化装置20の再生運転が必要となる。
また、エンジン50が低負荷の状態で作業を行っている場合に、自動的に排気ガス浄化装置20の再生運転が開始されると、エンジン50の回転数が急に上昇するために、トラクタ1の作業速度が急に速くなったり、走行速度が急に速くなったりして、実作業に支障をきたすことになる。
そこで、低負荷作業時や負荷パターンが均一でない作業の途中等では、排気ガス浄化装置20の再生運転がされないように切替手段35を「離座再生モード」に切り替えておき、上記作業が終了し、又は中断して、作業者が運転座席15を離れた非作業時に、排気ガス浄化装置20の再生運転が自動的に行われるようにしている。
図5に示すように、切替手段35が「離座再生モード」に切り替えられたとき、ステップS41において、制御装置30は、その時点の各種信号を読み込む(S41)。具体的には、差圧センサ31から出力される検出信号と、シートスイッチ16から出力される検出信号と、エンジン回転数センサ32から出力される検出信号とを読み込む。
ステップS42において、制御装置30は、差圧センサ31の検出信号に基づいて、DPF22における粒子状物質の捕集量を算出する(S42)。ステップS43において、算出したDPF22における粒子状物質の捕集量が第一設定値を超えているか否かを判断する(S43)。
ステップS43において、DPF22における粒子状物質の捕集量が第一設定値を超えていないと判断した場合(S43−No)、ステップS44において、制御装置30は、保留回数nを0(n=0)として(S44)、引き続き、各種信号を読み込む(S41)。
一方、ステップS23において、DPF22における粒子状物質の捕集量が第一設定値を超えていると判断した場合(S43−Yes)、ステップS45において、制御装置30は、シートスイッチ16が「入(ON)」の状態か否かを判断する(S45)即ち、運転座席15における作業者の着座状態を判断する。
ステップS45において、シートスイッチ16が「入(ON)」の状態である、即ち、作業者が運転座席15に着座している、と制御装置30が判断した場合(S45−Yes)、ステップS46において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数nが設定回数n0を超えているか否かを判断する(S46)。
ステップS46において、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数nが所定回数n0を超えていないと判断した場合(S46−No)、ステップS47において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転を保留し、再生運転を行わない(S47)。
そして、ステップS48において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されている旨を表示手段33表示に表示させる(S48)。さらに、ステップS49において、制御装置30は、保留回数nに1を加える(S49)。尚、この時、保留回数を表示手段33に表示してもよい。
ステップS50において、制御装置30はタイマ36を作動させて、タイマ36のカウントを開始する(S50)。そして、ステップS51において、制御装置30は、タイマ36がカウントする時間Tが設定時間T0を経過したかを判断する(S51)。つまり、排気ガス浄化装置20の再生運転が設定時間T0保留される。
ステップS51において、時間Tが設定時間T0を経過したと判断すると(S51−Yes)、ステップS45において、制御装置30は、再度、シートスイッチ16が「入(ON)」の状態か否かを判断する(S45)。つまり、作業者が運転座席15に着座したか否かを判断する。
一方、ステップS46において、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数nが設定回数n0を超えていると判断した場合(S46−Yes)、ステップS52において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留回数が設定回数n0を越えている旨の警告を作業者に報知手段34により報知し(S52)、ステップS47に進む。
尚、ステップS45からステップS52までのステップは、ステップS45においてシートスイッチ16が「入(ON)」の状態(S45−Yes)である限り、繰り返し行われる。
また、ステップS45において、シートスイッチ16が「切(OFF)」の状態である、即ち、作業者が運転座席15に着座していないと判断した場合(S45−No)、ステップS53において、制御装置30は、トラクタ1を使用不能とするとともに、走行も不能とする(S53)。具体的には、前記主クラッチをOFFの状態に保持したり、前記作業操作レバー及び前記変速レバーをニュートラル位置にロックしたり、前記作業操作レバーを操作しても対応する装置が作動しないようにしたりする。また、前記変速レバーを操作しても変速装置11がニュートラル位置に保持され変速できないようにしたりする。
そして、ステップS54において、制御装置30は排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されているか否かを判断する(S54)。
ステップS54において、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されていないと判断した場合(S54−No)、ステップS55において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転を行う(S55)。
一方、ステップS54において、排気ガス浄化装置20の再生運転が保留されていると判断した場合(S54−Yes)、ステップS56において、制御装置30は、排気ガス浄化装置20の再生運転の保留を解除し(S56)、ステップS55において、排気ガス浄化装置20の再生運転を行う(S55)。
尚、排気ガス浄化装置20の再生運転の開始から停止まで(ステップS55、及びステップS57からステップS59まで)については、「手動強制再生モード」の場合(ステップS5からステップS13まで)と同様のため、説明を省略する。
このように、離座再生モードにおいては、制御装置30は、ステップS45において、運転座席15における作業者の着座状態を判断する。そして、制御装置30は、作業者が運転座席15に着座していないと判断した場合には、さらに、ステップS53において、トラクタ1(車両本体)を使用不能及び走行不能としてから、排気ガス浄化装置20の再生運転を行う。そのため、トラクタ1(車両本体)の作業中に、突然、排気ガス浄化装置20の再生運転が行われることがない。したがって、実作業によってエンジン50の負荷パターンが不均一な時に排気ガス浄化装置20の再生運転を行うことを防止でき、トラクタ1における作業効率を向上させることができる。
以上の構成において、切替手段35は、トラクタ1における作業の種類によって切り替えるように構成することもできる。具体的には、「離座再生モード」の代わりに、トラクタ1における作業の種類によるモードを設定して、各モードに切り替えるように構成することもできる。例えば、ローダ作業や牽引作業等では、作業時にエンジン50の負荷の変化が大きいため、作業終了後や中断時に排気ガス浄化装置20の再生運転を行う「離座再生モード」の代わりに「ローダモード」とし、「離座再生モード」と同様の排気ガス浄化装置20の再生運転の制御を行う。