JP5515917B2 - アクチュエータ及び電子機器 - Google Patents
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Description
上記の温度調節方法では、推奨温度の低い電子機器に合わせてラック内部の全体を冷却したり、最も高い温度となった電子機器を設定温度まで冷却するためにラック内部の全体を冷却する等の手法を採る。そのため、冷却する必要のない電子機器も冷却しており、冷却効率が悪く、冷却用の消費電力量が必要以上に大きくなる。場合によっては、冷却能力のより高い冷却設備をマシン室に導入することが必要となる等、運転コストの増大を招くという問題がある。
上記した電子機器の態様によれば、このアクチュエータを適用することにより、例えばラックに収納された電子機器について、電子機器ごとに発熱量に応じてきめ細かな冷却調節をし、各電子機器を動作推奨温度範囲に保つことを可能として、消費電力量を抑えた運転コストの低い温度調節が実現する。
本実施形態では、温度に応じて伸縮するアクチュエータを開示する。
図1は、第1の実施形態によるアクチュエータの概略構成を示す模式図である。図2は、伸縮構造の高分子樹脂の伸縮メカニズムを説明するための模式図である。図3は、第1の実施形態によるアクチュエータを用いてシャッタ機構の開閉を調節する様子を示す模式図である。
発熱源10からヒートパイプ3により伝達された温度(伝達温度)が、伸縮構造1の高分子樹脂が伸張を開始する閾値である所定温度より低温では、アクチュエータは停止している。このとき、高分子樹脂は、図2(a)に示すように収縮した状態であり、疎水性を示す。そのため、高分子樹脂は作動液である液体Lを吸い込まない。発熱源10の温度が上昇して伝達温度が所定温度以上となると、アクチュエータは動作を開始する。伸縮構造1の高分子樹脂が貯留槽2の液体Lを吸い込み、伸縮構造1は伝達温度の上昇に敏感に応答して伸張してゆく。このとき、高分子樹脂には相転移が生じている。即ち、図2(b)に示すように、高分子樹脂は親水性となって液体Lを吸い込み、伝達温度の上昇に応答して高分子樹脂は徐々に膨張してゆく。発熱源10の温度が下降すると、伸縮構造1の高分子樹脂が液体Lを放出(脱液)し始め、伸縮構造1はその伝達温度の下降に敏感に応答して収縮してゆく。そして、伝達温度が所定温度を下回ると、高分子樹脂には相転移が生じ、高分子樹脂が図2(a)の状態となってアクチュエータは動作を停止する。
一般に、温度応答性高分子には以下のものがある。
(1)所定温度以上で疎水性相互作用によって凝集して、水溶液中から析出してくる性質を持つLCST(下限臨界共融温度)の高分子の架橋体
(2)所定温度以下で疎水性相互作用によって凝集して、水溶液中から析出してくる性質を持つUCST(上限臨界共融温度)の高分子の架橋体
(3)互いに水素結合する2成分の高分子のIPN(Interpenetrating Polymer Network:相互侵入網目構造体)であり、水素結合力の変化を利用して吸脱液体を吸収・放出して体積変化する高分子
(4)結晶性等の凝集性の側鎖を持つ高分子
スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基等を含むポリビニルスルホン酸、ポリリン酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸等の酸性高分子、アミノ基を有するポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ−L−リシン、ポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウムクロライド)、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)、アミド基を有するポリ(メタ)アクリルアミドやポリアクリロイルグリシンアミド及びその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、これらを含む共重合体等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体の架橋体とポリ(メタ)アクリル酸の架橋体とからなるIPN体及びその部分中和物(アクリル酸単位を部分的に塩としたもの)、(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体を含む共重合体の架橋体と(メタ)アクリル酸の架橋体からなるIPN体及びその部分中和物、ポリ(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体の架橋体とポリマレイン酸などの架橋体とからなるIPN体及びその部分中和物(アクリル酸単位を部分的に塩としたもの)、ポリ(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体を含む共重合体の架橋体とポリマレイン酸の架橋体とからなるIPN体及びその部分中和物(アクリル酸単位を部分的に塩としたもの)、ポリ(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体の架橋体とポリフマル酸等の架橋体とからなるIPN体及びその部分中和物(アクリル酸単位を部分的に塩としたもの)、ポリ(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体を含む共重合体の架橋体とポリフマル酸等の架橋体とからなるIPN体及びその部分中和物(アクリル酸単位を部分的に塩としたもの)等が挙げられる。
少なくともポリ(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体とポリ(メタ)アクリル酸を含む共重合体とからなる架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体とポリマレイン酸を含む共重合体とからなる架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド或いはその誘導体とポリフマル酸を含む共重合体とからなる架橋体等が挙げられる。
また、熱応答性高分子ゲルの体積変化量を増大させる目的で、イオン性官能基を高分子ゲル中に含有させることも好ましい。イオン性官能基としては、カルボン酸、スルホン酸、アンモニウム基、リン酸基等が挙げられる。耐候性、耐久の観点から、中でも、カルボン酸、スルホン酸が好ましく、特にカルボン酸が好ましい。イオン性官能基を高分子ゲル中に含有させる好ましい方法としては、以下のものがある。高分子ゲルを調製する際にこれら官能基を持つモノマーを共重合する方法、合成後の高分子ゲルにモノマーを含浸させて重合しIPN(相互侵入網目構造体)体とする方法、高分子ゲル中の官能基を部分的に加水分解又は酸化反応等の化学反応によって変換する方法等である。製造性の観点から、中でも、共重合する方法又はIPN体とする方法が好ましく、特に共重合する方法が好ましい。
温度応答性高分子には、ポリアクリル酸とポリアクリルアミドからなるIPNを使用した。なお、このIPNの相転移温度は30〜40℃の温度範囲にあり、相転移温度よりも高い温度では、ポリアクリル酸とポリアクリルアミド間の水素結合が切れてコンプレックスが解離し、吸水して高分子鎖が膨張する。一方、相転移温度よりも低い温度では、ポリマー間のコンプレックス形成により脱水するために収縮する。
基材としては、例えば、金属材料、炭素材料、半導体材料及びその複合材料、無機材料、及び有機材料が挙げられる。金属材料としては、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステン、銅、及びこれらの化合物等が挙げられる。炭素材料としては、グラファイト、カ−ボンファイバー等が挙げられる。半導体材料及びその複合材料としては、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)等が挙げられる。無機材料としては、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラス等が挙げられる。有機材料としては高分子材料等が挙げられる。
温度応答性高分子を基材に結合させる方法としては、高分子の合成分野において公知の方法を適宜用いることができる。温度応答性高分子は、基材にグラフト結合させることが好ましい。グラフト結合とは、幹となる基材、好ましくは高分子基材に、温度応答性高分子を枝状に結合させることを言う。温度応答性高分子を基材にグラフト結合させる方法としては、例えば、基材に放射線、電子線、プラズマ等を照射して表面近傍に活性種を発生させ、これを開始点としてモノマーを重合させる方法が挙げられる。基材表面に化学的処理を施して反応性基を発生させ、その反応性基と反応することができる官能基を有する温度応答性高分子と結合させる方法が挙げられる。更に、反応性基を持つ高分子で基材を構成し、その反応性基と反応することができる官能基を有する温度応答性高分子と結合させる方法等が挙げられる。反応性基としては、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基、イミノ基、スルホン酸基、エポキシ基、イソシアネート基、酸クロリド基、ヒドロキシ基、チオール基、ジスルフィド基等の官能基が挙げられる。
基材には、ポリプロピレン製の不織布(PP不織布)を用いる。先ず、平均孔径10μmのPP不織布(ミリポア社製)に、アルゴン雰囲気下でプラズマを照射する。その後、これを脱気した3%アクリルアミド水溶液/メチレンビスアクリルアミド(架橋剤)中に浸漬し、60℃の水浴中で重合反応(グラフト重合)を行う。次に、アルゴン雰囲気下でプラズマを照射した後、これを脱気した5%アクリル酸水溶液/メチレンビスアクリルアミド(架橋剤)中に浸漬し60℃の水溶液中でグラフト重合する。
系内に大気を導入した後、反応容器からグラフト済PP不織布を取り出し、水−メタノール(1:1)混合溶媒で洗浄する。その後、グラフト済PP不織布を真空乾燥させ、IPN型の高分子を作製する。
図3の各図に示すように、シャッタ機構4は、各々対応する部位に複数(ここでは18個)の開口11a,12aが形成された開口板11,12から構成される。開口板12は不図示の壁面等に固定され、伸縮構造1の上端部に開口板11が接続されている。伸縮構造1の伸縮により、開口板11が、固定された開口板12に対して上下方向に自在にスライドする。
本実施形態では、第1の実施形態によるアクチュエータを適用した電子機器であるコンピュータを開示する。
図4は、第2の実施形態によるコンピュータを複数重ねて収納する電子機器用ラックを示す模式図であり、(a)が正面図、(b)が側面図である。図5は、第2の実施形態によるコンピュータの内部構成の概略を示す模式図である。
コンピュータ21の筐体31の前面には、冷却風の流入機構33が配されており、流入機構33には冷却風の流入口33aが形成されている。
伸縮構造1は、中空とされた蛇腹状の金属バネ内に温度応答性の高分子樹脂が充填されている。伸縮構造1は、下端部が作動液である液体Lを貯蔵する貯留槽2に浸漬し、上端部がシャッタ機構4の開口板11と接続されている。
シャッタ機構4の開口板12は、コンピュータ21の筐体31の前面に設置固定されており、シャッタ機構4により冷却風の流出が調節される。
2 貯留槽
3 ヒートパイプ
4 シャッタ機構
10 発熱源
11,12 開口板
11a,12a 開口
20 ラック
20a 床板
20b,33a 流入口
20d 流出口
21 コンピュータ
22 吸入ファン
31,20c 筐体
32 HDD
33 流入機構
Claims (6)
- 筐体内に、発熱源となる電子部品と、アクチュエータとを備えており、
前記アクチュエータは、
温度応答性の高分子樹脂を有し、所定温度以上となると液体を吸い込んで伸張し、前記所定温度を下回ると吸い込んだ前記液体を脱液して収縮する伸縮構造と、
一端部が前記電子部品と、他端部が前記伸縮構造及び前記液体とそれぞれ熱的に接続されたヒートパイプと、
前記筐体の壁面に設けられ、前記筐体内を外気と通ずる開口を有し、前記開口の開度が調節自在とされたシャッタ機構と
を含み、
前記伸縮構造の伸縮により前記シャッタ機構の前記開口の開度を調節することを特徴とする電子機器。 - 前記伸縮構造は、少なくとも一部が中空の弾性部材を有し、前記弾性部材中に前記高分子樹脂が配されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
- 前記アクチュエータは、前記液体を貯留し、前記伸縮構造の一端部が前記液体に浸漬するように設置された貯留槽を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
- 温度応答性の高分子樹脂を有する伸縮構造を備え、
前記伸縮構造は、所定温度以上となると液体を吸い込んで伸張し、前記所定温度を下回ると吸い込んだ前記液体を脱液して収縮するものであり、
一端部が発熱源と、他端部が前記伸縮構造及び前記液体とそれぞれ熱的に接続されたヒートパイプを更に備えることを特徴とするアクチュエータ。 - 前記伸縮構造は、少なくとも一部が中空の弾性部材を有し、前記弾性部材中に前記高分子樹脂が配されることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
- 開口を有し、前記開口の開度が調節自在とされたシャッタ機構を更に含み、
前記伸縮構造の伸縮により前記シャッタ機構の前記開口の開度を調節することを特徴とする請求項4又は5に記載のアクチュエータ。
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