JP5515629B2 - 高強度薄鋼板の溶接方法 - Google Patents

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本発明は、高強度薄鋼板(特に引張強さ980MPa以上,板厚1.2〜6.0mmかつPcm値0.250〜0.305の高強度薄鋼板)を溶接するにあたって、溶接部の低温割れを抑制し、健全な溶接構造物を得る溶接方法に関するものである。
なお、ここでは溶接金属と溶接熱影響部を総称して溶接部と記す。
近年、様々な分野で環境の保護や安全性の向上に関する技術が注目されている。たとえば自動車の分野では、地球温暖化の防止を目的として、CO2の排出量を削減する取組みが進められている。また、衝突時の乗員や歩行者の安全を確保するという社会的要望が高まっている。
自動車の走行によるCO2の排出量を削減するためには、車体の軽量化が多大な効果を発揮する。たとえば車体を100kg軽量化すると、ガソリン1literあたりの走行距離(いわゆる燃費)を約1km/liter向上できる。一方で自動車の安全基準は年々厳しくなっており、車体の強度の向上のみならず強度の最適な配分を達成することによって、乗員および歩行者の安全を確保する技術が求められている。
多量の薄鋼板を使用して頑丈な車体を製作することで、車体の強度を高めることは可能であるが、軽量化を達成できない。そこで、引張強さを向上した薄鋼板(以下、高強度薄鋼板という)が開発されており、その高強度薄鋼板を用いて車体を製作すれば、車体の強度向上と軽量化を両立させることは可能である。ところが薄鋼板の引張強さが向上すると、薄鋼板を加工してさらに溶接する車体の製作過程で、溶接部の低温割れが発生し易くなるという問題がある。したがって、高強度薄鋼板を用いて製作した車体を実用化するためには、高強度薄鋼板を接合する際の低温割れを抑制する技術を開発する必要がある。
高強度薄鋼板を得るためには、溶製工程で高強度化元素(たとえばC,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,V,B等)を添加して圧延工程で圧下量や温度を制御する技術(たとえば特許文献1参照)が知られている。そのような技術を適用して得られる引張強さ780MPa以下の薄鋼板は、溶接による低温割れは生じないので、既に実用化されている。
そして、さらなる圧延技術の進歩によって、980MPa以上の引張強さを有する高強度薄鋼板の製造が可能となってきた。そのような高強度薄鋼板は、溶接による低温割れが発生し易い。特に開先加工を施すことなく、そのまま用いられる板厚6.0mm以下の高強度薄鋼板の1パス溶接では、その傾向が顕著に現われる。溶接した後で熱処理を施すことによって低温割れを抑制することは可能であるが、熱処理によって部材の変形が生じる。しかも極めて大規模な熱処理炉を稼働させる必要があるので、省エネルギーの観点から問題がある。
したがって、引張強さ980MPa以上かつ板厚6.0mm以下の高強度薄鋼板を溶接するにあたって、溶接部の低温割れを抑制する溶接方法を開発する必要がある。
特開平10-158735号公報
本発明は、引張強さ980MPa以上,板厚6.0mm以下,Pcm値0.250〜0.305の高強度薄鋼板を溶接するにあたって、溶接部の低温割れを抑制する溶接方法を提供することを目的とする。
発明者らは、引張強さ980MPa以上,板厚6.0mm以下かつ下記の(1)式で算出されるPcm値が0.250〜0.305の範囲内を満足する高強度薄鋼板の溶接によって低温割れが発生する原因について調査した。高強度薄鋼板を加工して製造したテスト部材を溶接して溶接熱影響部のビッカース硬さを測定したところ、360〜450と著しく高くなっており、硬く脆い状態であった。つまり、高強度薄鋼板を加工して複雑な形状の車体用部材を製造することによって加工硬化が生じ、高強度薄鋼板の硬さが大幅に増加した後で溶接を行なうことが低温割れの原因であることが分かった。
そこで発明者らは、高強度薄鋼板の溶接による低温割れを抑制する技術について検討した。その結果、高強度薄鋼板を溶接する際に、
(A)溶込み深さを板厚の40%以上とする、
(B)溶接金属のビッカース硬さを350以下とする
ことによって、低温割れを抑制できることが判明した。
なお、ここでは一例として自動車の車体について説明したが、本発明は、その他の溶接構造物を製作するための高強度薄鋼板の溶接にも適用できる。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、引張強さ980MPa以上,板厚1.2〜6.0mmかつ下記の(1)式で算出されるPcm値が0.250〜0.305の範囲内を満足する高強度薄鋼板の溶接方法において、逆極性でガスシールドアーク溶接を行ない、溶込み深さを板厚の40%以上とし、溶接金属のビッカース硬さを350以下とする高強度薄鋼板の溶接方法である。
Pcm=[%C]+[%Si]/30+[%Mn]/20+[%Cu]/20+[%Ni]/60+[%Cr]/20
+[%Mo]/15+[%V]/10+5[%B] ・・・(1)
[%C]:高強度薄鋼板のC含有量(質量%)
[%Si]:高強度薄鋼板のSi含有量(質量%)
[%Mn]:高強度薄鋼板のMn含有量(質量%)
[%Cu]:高強度薄鋼板のCu含有量(質量%)
[%Ni]:高強度薄鋼板のNi含有量(質量%)
[%Cr]:高強度薄鋼板のCr含有量(質量%)
[%Mo]:高強度薄鋼板のMo含有量(質量%)
[%V]:高強度薄鋼板のV含有量(質量%)
[%B]:高強度薄鋼板のB含有量(質量%)
本発明の高強度薄鋼板の溶接方法においては、溶接電流をI,アーク電圧をE,溶接速度をSとし、高強度薄鋼板の板厚をtとして、下記の(2)式で算出されるQ値を100以上とすることが好ましい。
Q=(I×E)/(S×t2) ・・・(2)
I:溶接電流(A)
E:アーク電圧(V)
S:溶接速度(mm/秒)
t:高強度薄鋼板の板厚(mm)
本発明によれば、引張強さ980MPa以上,板厚1.2〜6.0mmかつPcm値が0.250〜0.305の高強度薄鋼板を溶接するにあたって、溶接部の低温割れを抑制し、健全な溶接構造物を得ることができる。
隅肉溶接の溶接試験における高強度薄鋼板と拘束板との配置を模式的に示す平面図である。
本発明は、引張強さ980MPa以上,板厚6.0mm以下かつPcm値が0.250〜0.305の高強度薄鋼板に適用される溶接方法である。
一般に高強度薄鋼板は、C,Si,Mn,Mo,Ni等を添加して固溶強化を生じさせ、さらにTi,Nb,V,B等を添加して析出強化を生じさせるとともに、圧下量や温度を制御しつつ圧延を行なうことによって、引張強さの向上を図っている。このような高強度薄鋼板のうち、引張強さ980MPa以上、特に1180MPa以上、の高強度薄鋼板は、これらの元素の添加量を増加して固溶強化や析出強化を促進する、あるいは過酷な条件で圧延して加工硬化を促進する必要があるので、割れ感受性が増大するのは避けられない。そのため溶接構造物を製作するにあたって、溶接の条件を厳格に管理しなければならない。
ところが本発明の溶接方法を採用すれば、引張強さ980MPa以上の高強度薄鋼板の溶接であっても、容易に低温割れを防止することが可能であり、健全な溶接構造物を安定して製作できる。ただし、高強度薄鋼板の引張強さが1530MPaを超えると、本発明を適用しても溶接による低温割れが発生する惧れがある。したがって、高強度薄鋼板の引張強さは980〜1530MPaの範囲内であることが好ましい。より好ましくは1180〜1380MPaである。
また、一般に板厚6.0mm以下の高強度薄鋼板では小入熱で断続的な短い溶接が1層1パスで行なわれるので、溶接部(すなわち溶接金属,溶接熱影響部)の冷却速度が大きくなり、焼入れ効果が発現される。そのため、溶接部が著しく硬化して、低温割れが発生し易くなる。
ところが本発明の溶接方法を採用すれば、板厚6.0mm以下の高強度薄鋼板の溶接であっても、容易に低温割れを防止することが可能であり、健全な溶接構造物を安定して製作できる。ただし、高強度薄鋼板の板厚が1.2mm未満では、溶接によって高張力薄鋼板が溶落ちあるいは変形する惧れがある。したがって、高強度薄鋼板の板厚は1.2〜6.0mmの範囲内とする
本発明を適用して高強度薄鋼板の溶接を行なうにあたって、溶込み深さが板厚の40%未満では、形成される溶接金属が少量であるから、溶接部(すなわち溶接金属,溶接熱影響部)の冷却速度が大きくなり、焼入れ効果が生じる。そのため、溶接部が著しく硬化して、低温割れが発生し易くなる。したがって、溶込み深さは板厚の40%以上とする必要がある。好ましくは50%以上である。溶接金属が高強度薄鋼板を貫通して裏波が発生しても問題にならない溶接構造物では、溶込み深さを板厚の100%としても良い。
本発明では溶接金属の硬さを低く抑えて、溶接構造物の溶接部を高強度薄鋼板よりも軟質にすることによって、溶接部に作用する応力負荷を軽減して、低温割れを抑制する。溶接金属のビッカース硬さが350を超えると、溶接部の硬さが高強度薄鋼板と同等、あるいはそれ以上になるので、溶接部に作用する応力負荷を軽減する効果が得られない。したがって、溶接金属のビッカース硬さは350以下とする。好ましくは270以下である。
また本発明では、高強度薄鋼板の成分に基づいて下記の(1)式で算出されるPcm値が0.250未満では、所定の引張強さ(すなわち980MPa以上)が得ることが困難になる。一方、0.305を超えると、溶接部の低温割れが発生し易くなる。したがって、Pcm値は0.250〜0.305の範囲内とする。なお、(1)式中の[%C]はC含有量(質量%),[%Si]はSi含有量(質量%),[%Mn]はMn含有量(質量%),[%Cu]はCu含有量(質量%),[%Ni]はNi含有量(質量%),[%Cr]はCr含有量(質量%),[%Mo]はMo含有量(質量%),[%V]はV含有量(質量%),[%B]はB含有量(質量%)を指す。
Pcm=[%C]+[%Si]/30+[%Mn]/20+[%Cu]/20+[%Ni]/60+[%Cr]/20
+[%Mo]/15+[%V]/10+5[%B] ・・・(1)
本発明を適用して高強度薄鋼板を溶接するにあたって使用する溶接用ワイヤは、Cを0.10質量%以下,Siを0.95質量%以下,Mnを1.60質量%以下含有し、残部はFeおよび不可避的不純物であることが好ましい。
Cは、溶接金属の強度を確保するために重要な固溶強化元素である。本発明では溶接金属のビッカース硬さを350以下に抑えて、溶接構造物の溶接部を高強度薄鋼板よりも軟質にすることによって低温割れを抑制する。ところが溶接用ワイヤのC含有量が0.10質量%を超えると、溶接金属のビッカース硬さを350以下に抑えることが困難になる。したがって、溶接用ワイヤのC含有量は0.10質量%以下が好ましい。ただし、C含有量が0.03質量%未満では、溶接金属の強度が不足するので、高強度薄鋼板を採用した溶接構造物として十分な剛性が得られない。したがって、C含有量は0.03〜0.10質量%の範囲内がより好ましい。
Siは、脱酸作用を有する元素であり、溶接金属の脱酸を促進するために不可欠な元素であり、かつ溶接金属の強度を確保するために重要な固溶強化元素である。本発明では溶接金属のビッカース硬さを350以下に抑えて、溶接構造物の溶接部を高強度薄鋼板よりも軟質にすることによって低温割れを抑制する。ところが溶接用ワイヤのSi含有量が0.95質量%を超えると、溶接金属のビッカース硬さを350以下に抑えることが困難になる。したがって、溶接用ワイヤのSi含有量は0.95質量%以下が好ましい。ただし、Si含有量が0.30質量%未満では、溶接金属の脱酸が十分に進行せず、酸化物が溶接金属に混入して種々の欠陥を引き起こす。しかも溶接金属の強度が不足するので、高強度薄鋼板を採用した溶接構造物として十分な剛性が得られない。したがって、Si含有量は0.30〜0.95質量%の範囲内がより好ましい。
Mnは、Siと同様に、脱酸作用を有する元素であり、溶接金属の脱酸を促進するために不可欠な元素であり、かつ溶接金属の強度を確保するために重要な固溶強化元素である。本発明では溶接金属のビッカース硬さを350以下に抑えて、溶接構造物の溶接部を高強度薄鋼板よりも軟質にすることによって低温割れを抑制する。ところが溶接用ワイヤのMn含有量が1.60質量%を超えると、溶接金属のビッカース硬さを350以下に抑えることが困難になる。したがって、溶接用ワイヤのMn含有量は1.60質量%以下が好ましい。ただし、Mn含有量が0.80質量%未満では、溶接金属の脱酸が十分に進行せず、酸化物が溶接金属に混入して種々の欠陥を引き起こす。しかも溶接金属の強度が不足するので、高強度薄鋼板を採用した溶接構造物として十分な剛性が得られない。したがって、Mn含有量は0.80〜1.60質量%の範囲内がより好ましい。
上記のC,Si,Mnに加えて、溶接金属の耐食性向上,靭性向上,疲労強度向上および溶接中のアーク安定性とスパッタ低減を目的として、P,S,Ca,Ti,Zr,Al,K,Mo,B,Cr,Ni,Cu,Nb,V,希土類元素(以下、REMという),Se,Te,Biを適宜加えても良い。
P:0.050質量%以下
Pは、鋼の融点を低下させるとともに電気抵抗率を向上させ、溶融効率を向上させ、正極性の溶接においてアークを安定化する作用を有する元素である。しかし0.050質量%を超えて添加すると、正極性の溶接においては、溶融メタルの粘性を低下させ、アークが不安定となり、小粒のスパッタが増加する。また、溶接金属に高温割れを生じる危険性が高まる。このため、Pは0.050質量%以下が好ましい。
S:0.050質量%以下
Sは、溶融メタルの粘性を低下させ、溶接用ワイヤ先端に懸垂した溶滴の離脱を助け、正極性の溶接において低電流でのアークを安定化する働きがある。また、Sは、溶融メタルの粘性を低下させて、ビードを平坦にし、上板の溶落ちを抑制する働きも有するが、0.050質量%を超えて含有すると、小粒のスパッタが増すとともに、溶接金属の靭性が低下する。このため、Sは0.050質量%以下が好ましい。
Ca:0.0030質量%以下
Caは、製鋼および鋳造時の不純物として、あるいは伸線加工時の不純物として溶接用ワイヤに混入する。正極性の炭酸ガスシールドアーク溶接においては、アーク安定性を劣化させる作用を有する。Caが0.0030質量%を超えると、アークの安定性が阻害される。このため、Caは0.0030質量%以下が好ましい。
Ti,Zr,Alの中から選ばれる1種または2種以上:合計0.05〜0.20質量%
Ti,ZrおよびAlは、強脱酸剤として作用し、さらに溶接金属の強度を高める元素である。これらの元素の1種または2種以上の含有量が合計0.05質量%以下では、溶接金属の脱酸による粘性向上によるビード形状の確保(溶接線方向の凹凸抑制)と溶接金属の強度確保の効果が得られない。一方、0.20質量%を超えて含有すると、溶接金属の靭性が著しく低下する。このため、Ti,Zr,Alの中から選ばれる1種または2種以上を合計0.05〜0.20質量%含有することが好ましい。
K:0.0001〜0.0150質量%
Kは、正極性炭酸ガスアーク溶接でアークを広げ、溶滴のスプレー移行の低電流化を促進し、溶滴そのものを微細化する作用を有する。この効果は0.0001質量%以上の含有で認められる。一方、0.0150質量%以上の含有は、アーク長が長くなり、溶接用ワイヤ先端に懸垂した溶滴が不安定になり、スパッタの発生が増加する。このため、Kは0.0001〜0.0150質量%が好ましい。なお、より好ましくは0.0003〜0.0030質量%である。
また、Kは沸点が760℃と低く、溶製段階での歩留りが著しく低いので、Kは溶製段階で添加するより、溶接用ワイヤ製造中に、溶接用ワイヤ表面にカリウム塩溶液を塗布して焼鈍を行なうことにより、溶接用ワイヤ内部にKを安定して含有させることが好ましい。
Mo:0.05〜1.5質量%,B:0.0010〜0.020質量%
Mo,Bは、いずれも溶接金属の強度を増加させる元素であり、必要に応じて選択的に含有できる。しかし、過剰な含有は、靭性の低下を招く。このため、Mo,Bを含有する場合は、Mo:0.05〜1.5質量%,B:0.0010〜0.020質量%が好ましい。
Cr:3.0質量%以下,Ni:3.0質量%以下,Cu:3.0質量以下%
Cr,Ni,Cuは、いずれも溶接金属の強度を増加させ、かつ耐候性を向上させる元素であり、必要に応じて選択的に含有できる。しかし、過剰な含有は、靭性の低下を招く。このため、Cr,Ni,Cuを含有する場合は、Cr:3.0質量%以下,Ni:3.0質量%以下,Cu:3.0質量以下%が好ましい。
Cr:3.0質量%以下,Ni:3.0質量%以下,Cu:3.0質量以下%
Cr,Ni,Cuは、いずれも溶接金属の強度を増加させ、かつ耐候性を向上させる元素であり、必要に応じて選択的に含有できる。しかし、過剰な含有は、靭性の低下を招く。このため、Cr,Ni,Cuを含有する場合は、Cr:3.0質量%以下,Ni:3.0質量%以下,Cu:3.0質量以下%が好ましい。
Nb:0.05質量%以下,V:0.05質量%以下
Nb,Vは、いずれも溶接金属の強度,靭性およびアークの安定性を向上させる元素である。しかし、過剰な添加は靭性の低下を招く。このため、Nb,Vを含有する場合は、Nb:0.05質量%以下,V:0.05質量%以下が好ましい。
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、O:0.030質量%以下,N:0.020質量%以下が許容できる。Oは、溶製中、あるいは溶接用ワイヤ製造中に不可避的に混入する元素であるが、溶滴の移行形態を微細化するのに効果があり、0.0030質量%以上,0.020質量%以下が好ましく、より好ましくは0.0080質量%未満である。
本発明では、上記の成分を有する溶接用ワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を行なうことが好ましい。その理由は、溶接用ワイヤに含有されるC,Si,Mnの酸化や窒化がシールドガスによって防止され、各元素がその効果を発揮するからである。さらに、ガスシールドアーク溶接を逆極性(すなわち溶接用ワイヤをプラス極)で行なう。その理由は、Si−Mn系溶接用ワイヤと通常の装置を用いた低電流の溶接において、アークが安定し、深い溶込みが得られるからである。
ガスシールドアーク溶接を行なう際に、その設定条件に基づいて下記の(2)式で算出されるQ値が100を超えると、溶接部の低温割れが発生し易くなる。したがって、Q値は100以下とすることが好ましい。なお、(2)式中のIはガスシールドアーク溶接の溶接電流(A),Eはアーク電圧(V),Sは溶接速度(mm/秒)を指し、tは高強度薄鋼板の板厚(mm)を指す。
Q=(I×E)/(S×t2) ・・・(2)
板厚1.6mmの高強度薄鋼板とワイヤ径1.2mmの溶接用ワイヤを用いてガスシールドアーク溶接法による隅肉溶接の溶接試験を行なった。その溶接試験の手順と結果を以下に説明する。
使用した高強度薄鋼板の成分および引張強さは表1に示す通りである。溶接用ワイヤの成分は表2に示す通りである。なお、溶接用ワイヤの表面には厚さ0.5μmのCuめっきを施し、さらに潤滑油を塗布した。潤滑油は鉱物油を使用し、その塗布量は溶接用ワイヤ10kg当たり1gとした。
Figure 0005515629
Figure 0005515629
高強度薄鋼板(板厚1.6mm)から幅45mm,長さ90mmの溶接試験片を切り出した。さらに図1に示すように、2枚の溶接試験片1a,1bを重ね代20mmで重ね合わせて、拘束板2の中央部に全周溶接で固定して試験体を作成した。拘束板2は、板厚25mm,幅150mm,長さ250mmの厚鋼板を使用した。各試験体ごとに隅肉溶接を2回ずつ(溶接長さ20mm/回)行なった。その際、各試験体の第1回の隅肉溶接を行ない、その後6時間空冷して、その隅肉溶接部3aが室温まで冷却された後に第2回の隅肉溶接を行なった。このようにして第1回の隅肉溶接部3aの残熱が第2回の隅肉溶接部3bの特性に影響を及ぼすのを防止した。
試験体に供した溶接試験片(鋼板記号P1〜P5)と隅肉溶接で使用した溶接用ワイヤ(ワイヤ記号W1〜W5)の組合せは、表3に示す通りである。各組合せ(溶接番号1〜13)ごとに5個ずつ試験体を作成して合計10回の隅肉溶接を行なった。隅肉溶接は逆極性のガスシールドアーク溶接法で行ない、その溶接電流,アーク電圧,溶接速度,入熱は表3に示す通りである。なお、シールドガスはAr−20%CO2ガスを使用し、突き出し長さ15mm,トーチ角45°とした。
Figure 0005515629
隅肉溶接が終了した後、隅肉溶接部3a,3bを室温まで空冷し、得られた溶接ビードの中央部の断面をマクロ観察して、溶込み深さを測定し、さらに溶接金属や溶接熱影響部における低温割れの有無を調査した。また、溶接金属のビッカース硬さを測定した。その結果を表3に併せて示す。なお、表3に示す溶込み深さ(%)は、溶接試験片1a,1b(すなわち高強度薄鋼板)の板厚(mm)に対する溶接金属の最大深さ(mm)の比率である。また低温割れについては、10個の溶接ビードのいずれにも低温割れが認められなかったものを優(○),1〜2個の溶接ビードにて低温割れが認められたものを良(△),3個以上の溶接ビードにて低温割れが認められたものを不可(×)として評価した。
表3に示す発明例(すなわち溶接番号1〜11)は、溶接金属のビッカース硬さと溶込み深さが本発明の範囲を満足する例である。比較例のうち、溶接番号12は溶接金属のビッカース硬さが本発明の範囲を外れる例,溶接番号13は溶込み深さが本発明の範囲を外れる例である。
表3から明らかなように、発明例(すなわち溶接番号1〜11)では低温割れが大幅に低減された。
引張強さ980MPa以上の高張力薄鋼板を溶接するにあたって、溶接部の低温割れを抑制し、健全な溶接構造物を得ることができるので、産業上格段の効果を奏する。
1a 溶接試験片
1b 溶接試験片
2 拘束板
3a 隅肉溶接部
3b 隅肉溶接部

Claims (2)

  1. 引張強さ980MPa以上、板厚1.2〜6.0mm、かつ下記の(1)式で算出されるPcm値が0.250〜0.305の範囲内を満足する高強度薄鋼板の溶接方法において、逆極性でガスシールドアーク溶接を行ない、溶込み深さを板厚の40%以上とし、溶接金属のビッカース硬さを350以下とすることを特徴とする高強度薄鋼板の溶接方法。
    Pcm=[%C]+[%Si]/30+[%Mn]/20+[%Cu]/20+[%Ni]/60+[%Cr]/20
    +[%Mo]/15+[%V]/10+5[%B] ・・・(1)
    [%C]:高強度薄鋼板のC含有量(質量%)
    [%Si]:高強度薄鋼板のSi含有量(質量%)
    [%Mn]:高強度薄鋼板のMn含有量(質量%)
    [%Cu]:高強度薄鋼板のCu含有量(質量%)
    [%Ni]:高強度薄鋼板のNi含有量(質量%)
    [%Cr]:高強度薄鋼板のCr含有量(質量%)
    [%Mo]:高強度薄鋼板のMo含有量(質量%)
    [%V]:高強度薄鋼板のV含有量(質量%)
    [%B]:高強度薄鋼板のB含有量(質量%)
  2. 前記高強度薄鋼板の溶接を行なうにあたって、溶接電流をI、アーク電圧をE、溶接速度をSとし、前記高強度薄鋼板の板厚をtとして、下記の(2)式で算出されるQ値を100以上とすることを特徴とする請求項1に記載の高強度薄鋼板の溶接方法。
    Q=(I×E)/(S×t2) ・・・(2)
    I:溶接電流(A)
    E:アーク電圧(V)
    S:溶接速度(mm/秒)
    t:高強度薄鋼板の板厚(mm)
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