JP5515118B2 - 植物育成用施設 - Google Patents
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Description
例えば、温室等の内部に張り巡らせたエアダクトから二酸化炭素を供給し、温室等の内部全体の空気中の二酸化炭素濃度を高める方法や、温室等の内部にカーテン等によって仕切られた複数の空間を形成し、各空間を最適な二酸化炭素濃度に調整する方法(特許文献1)、炭酸水を植物体に散布して二酸化炭素施用する方法(特許文献2)などが開発されている。
このため、植物工場内の気温をある程度の範囲に維持するために、天窓や側窓を開けて、外気との空気の交換、すなわち換気が行われる。かかる換気を行えば、植物工場内の高温の空気と低温の外気を入れ替えることによって、植物工場内の熱を外部に排出することができる(以下、これを熱交換とよぶ)。
特許文献1の技術でも、カーテン等によって複数の空間に仕切られてはいるものの、各空間における熱交換は、温室の換気窓を通じて行われるため、換気を行っている場合、各空間に施用した二酸化炭素は換気窓を通じて温室外へ排出されてしまう。このため、換気を行う場合には、従来の温室と同様に、各空間内、つまり、植物の周囲の環境を高二酸化炭素濃度の状態に維持することは困難である。
第2発明の植物育成用施設は、第1発明において、前記換気部は、該育成室の換気回数が、前記温室の換気回数よりも少なくなるように形成されていることを特徴とする。
第3発明の植物育成用施設は、第1または第2発明において、前記被覆部を形成する光透過性部材は、該被覆部に照射された光を散乱し得る構造を有していることを特徴とする。
第4発明の植物育成用施設は、第1、第2または第3発明において、前記温室内には、前記被覆部の外面に対して水滴を噴霧する水噴霧手段が設けられていることを特徴とする。
第2発明によれば、被覆部の換気回数が温室の換気回数よりも少ないので、被覆部内の空気の二酸化炭素濃度の低下を抑えることができ、温室の空気に対して、直接、二酸化炭素ガスを供給する場合と比較して、少量の二酸化炭素施用で、高二酸化炭素濃度条件を維持することができる。
第3発明によれば、育成室の被覆部に照射された光は被覆部において散乱するので、被覆部内の植物体全体に対してまんべんなく光を当てることができる。しかも、被覆部の側面の位置に照射される光等、被覆部が無ければ植物に入射しない光も、被覆部に当たって散乱光化させることによって植物に供給できるから、植物に効率よく光合成をさせることができる。
第4発明によれば、被覆部の外面に噴霧された水滴が蒸発することによって被覆部の気温を低下させることができる。
本発明の植物育成用施設は、太陽光を利用しかつ二酸化炭素の施用を行いながら植物を育成する施設であり、施設内に太陽光によって供給される熱量が多い時期であっても、施設内の温度を植物の育成が可能な気温に維持しつつ、施設内を高二酸化炭素濃度の条件に維持できるようにしたことに特徴を有している。
図1に示すように、本実施形態の植物育成用施設1は、屋外に設けられた温室2と、この温室2内に設けられた育成室10とを備えている。
まず、図3に示すように、温室2は、植物の栽培に使用される一般的な温室であり、例えば、ガラスやビニールなどによって壁や屋根が形成された建物である。この温室2には、天窓2aや窓等が設けられており、これらを開閉することによって、温室2内部の空気と外気の換気をすることができるようになっている。
なお、温室2の換気回数は、温室2自体の大きさや天窓2aの大きさ、天窓2aの開度、温室内外の気温、風速や風向等にもよるが、最大で1時間あたり約50〜100回程度である。
図1に示すように、温室2内には、複数の育成室10が設けられている。この育成室10は、植物Pを栽培するための空間10hを内部に有する被覆部11と、この被覆部11内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段とを備えている。
この被覆部11は、空気は通さないが光は透過する部材(例えば、農業用ポリ塩化ビニルフィルムや農業用ポリオレフィン系フィルムなど、以下、単に光透過性部材という)を素材とするシート状の部材によって形成されている。
この被覆部11には、被覆部11に囲まれた空間10hの空気を温室2の空気と置換する、いわゆる換気を行うための換気部が設けられている。
つまり、被覆部11は、内部の空間10hを外部(つまり、温室2内の空間)からある程度気密に隔離された状態に保ちつつ、換気部を介して空間10hと温室2内の空間との間でガス交換ができるように構成されているのである。
なお、換気部は、空間10hの空気を温室2の空気と置換することができる構成であれば、とくに限定されず、例えば、被覆部11を構成するシートの継ぎ目に形成された隙間や、シートに設けられた貫通孔などによって構成することができる。
なお、育成室10内の空間10h内には、栽培ベッド14に対して、肥料(例えば、液体肥料)や水などを植物Pに供給するための配管が設けられており、肥料や水を適宜植物Pに供給できるようになっている。
しかも、育成室10の被覆部11に囲まれた空間10h内に二酸化炭素供給配管15が配設されており、この二酸化炭素供給配管15に設けられている二酸化炭素排出部15aから空間10h内に二酸化炭素を供給することができる。このため、空間10h内の二酸化炭素濃度、つまり、植物P近傍における空気の二酸化炭素濃度を高濃度の状態とすることができる。具体的には、植物P近傍の二酸化炭素濃度を、大気や育成室10外の温室2内の空間における二酸化炭素濃度よりも高濃度の状態とすることができる。
すると、本実施形態の植物育成用施設1では、育成室10の被覆部11に囲まれた空間10h内において、二酸化炭素濃度の高い状態で植物Pに光合成をさせることができるので、植物Pの光合成を活発な状態に維持することができる。
また、二酸化炭素の濃度が高い状況において、植物Pを継続的に育成すれば、一般的な環境において栽培した植物にスポット的に二酸化炭素を施用する場合に比べて、二酸化炭素を施用とした際の光合成能力を高くすることができる。
よって、本実施形態の植物育成用施設1において植物Pを継続的に栽培すれば、二酸化炭素を施用した場合における植物Pの光合成能力を高くすることができるから、二酸化炭素を施用しながら栽培することによって、植物Pの成長をより一層促進させることができる。
とくに、空間10h内に、二酸化炭素濃度計や、光強度を測定する光強度計、湿度計、温度計等を設けておき、これらの測定値に基づいて空間10h内に二酸化炭素を供給する量を調整すれば、効率よく二酸化炭素を施用することができ、効率よく植物Pを育成させることができる。
例えば、上記の計測器を設け、かつ、二酸化炭素供給手段や栽培ベッド14に肥料や水を自動的に供給する手段を設けておき、計測器の測定値に基づいて二酸化炭素供給手段等の作動をコントロールする制御装置を設けておく。そして、制御装置に、事前に計測された生体情報に基づいて推定される栽培される植物Pの光合成能力と、その能力を発揮させる適切な環境情報との関係を示すデータ等を記録させておく。すると、制御装置が二酸化炭素供給手段等を作動させることによって、リアルタイムに計測される環境情報(光強度,気温,湿度等)に対応して適正な量の二酸化炭素を空間10h内に供給することができる。つまり、空間10h内に、Speaking Plant Approach(SPA)コンセプトに基づいた二酸化炭素施用を行うことができるので、より一層効率よく植物Pを育成させることができる。とくに、空間10hの容積が小さい場合(例えば、従来の温室全体の約40%程度)、二酸化炭素の濃度を供給してから設定した二酸化炭素濃度に達するまでの時定数が小さくなる。すると、時々刻々と変化する太陽光強度に追従した二酸化炭素濃度制御も可能となる。具体的には、雲などで一時的に光が弱くなった場合などに、二酸化炭素投入量を一時的に少なくすることもできる。
なお、上述した二酸化炭素排出部15aには、例えば、ノズルや二酸化炭素供給配管15に設けられた孔などを利用することができるが、二酸化炭素供給配管15内から育成室10内の空間10hに二酸化炭素を排出できる機構を有するものであれば、とくに限定されない。
また、二酸化炭素供給配管15に二酸化炭素を供給する方法もとくに限定されない。例えば、二酸化炭素が充填されたボンベと二酸化炭素供給配管15とを制御弁や流量計等によって連結した構造とすれば、制御弁や流量計等を操作することによって、二酸化炭素の供給停止や二酸化炭素の供給量を手動または自動で調整することができる。
さらに、栽培ベッド14に肥料や水を自動的に供給する手段も、とくに限定されない。例えば、栽培ベッド14に設けられた配管と水道管とを制御弁や流量計等によって連結した構造とすれば、制御弁や流量計等を操作することによって、肥料や水の供給停止や供給量を手動または自動で調整することができる。もちろん手動で制御弁等を操作して、栽培ベッド14に供給する肥料や水の量や、肥料や水を供給するタイミング等を調整してもよいのは、いうまでもない。
また、被覆部11のシートの材料は、光透過性部材であればとくに限定されないが、シートの材料として、その表面に照射された光を透過するとともに散乱し得る構造を有しているものが好ましい。
かかるシートによって被覆部11を形成すると、被覆部11に照射された光がシートを透過するとともに散乱するので、被覆部11内の植物のどの部分にもほぼ均一な強度の光を当てることができる。例えば、一枚の葉において、照射される光の強度の場所による差を少なくすることができる。
しかも、被覆部11の側面の位置に照射される光等は、被覆部11が無かった場合には植物Pに照射されることがなく温室2の床面に到達してしまう光であるが、被覆部11があることによって、かかる光も被覆部11で散乱光化させることによって植物Pに入射させることができる。
また、シート材料に入射した光を散乱させることによって、本来植物Pに照射されなかった光を利用する上では、被覆部11の側面、つまり、被覆部11において植物Pの側方に位置する部分の面積が大きい方が好ましい。なぜなら、植物Pの側方を通過する光は植物に照射される可能性が低いからである。
そして、植物Pが一般的に上方に伸びることが多いことを考慮すれば、被覆部11は上下方向に長い形状を有していれば、被覆部11で散乱する光の利用効率を高くすることができると考える。
ところで、温室2では、その内部と外部との間の空気の流れが制限されており、温室2内の空気はある程度の期間は温室2内に保持される。このため、温室2に照射される太陽光の熱エネルギーによって、温室2の気温は外気の気温よりも高くなるから、温室2内の気温が、植物Pの栽培に適さない温度まで上昇する可能性がある。このため、一般的な温室2では、温室2の気温が上がりすぎないように、天窓2aを開閉して換気を行って気温を調節している。例えば、温室2は、換気を行うことで、その内部の気温が外気の気温と同程度(例えば、外気の気温の±5度程度)となるように調節している。
この場合、被覆部11を大きく開放して、空間10hの換気回数を大きくすれば、温室2の気温と同等程度に空間10hの気温を低下させることができると考えられるが、空間10hに供給された二酸化炭素も温室2内に逃げてしまい、空間10hの二酸化炭素の濃度を高く維持することが困難になる。
その理由は、以下の通りである。
すると、空間10hの空気の湿度が温室2の空気の湿度よりも高くなっていれば、両者の気温が同じである場合、流入空気によって空間10hに持ち込まれる流入熱量よりも、排出空気によって空間10hから持ち去られる排出熱量の方が大きくなる。
また、植物Pからの蒸散やその他の水の蒸発も生じているため、水が気化する際にも空間10hの熱エネルギーが消費される。なお、植物Pからの蒸散やその他の水の蒸発は、空間10hの空気の湿度の上昇にも寄与する。
しかも、空間10hの空気の換気回数が少なく維持されているので、空間10hの気温を植物Pの育成に適した温度に維持しつつ、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を高く維持することができるのである。
上述したように、通常は、空間10hで栽培されている植物Pからの蒸散やその他の水の蒸発だけでも、空間10hの空気の湿度は温室2内の空気の湿度よりも高く維持することができる。
しかし、植物Pが栽培開始直後などの小個体であり、そこからの蒸散量が、空間10hの空気の湿度を高くするには不十分な場合などには、植物Pからの蒸散などだけでは、空間10hの空気の湿度を温室2の空気の湿度よりも高く維持できない場合がある。
よって、かかる場合でも、空間10hの空気の湿度を温室2の空気の湿度よりも高く維持するのであれば、空間10h内に、空間10hの空気の湿度を調整する湿度調整手段を設けておくことが好ましい。
とくに、空間10hの換気回数等が把握できていれば、温室2の気温と空間10hの気温、および、空間10hに入射する日射量を測定することによって、最適な熱交換が達成されるように、湿度調整手段によって空間10hの湿度を調整することも可能となる。
なお、上記原理に基づく温度維持だけでは、空間10hの気温を植物Pが生育可能な温度まで低下させることが難しい条件が想定される場合には、温室2内に、被覆部11の外面に対して水滴を噴霧する水噴霧手段を設けることが好ましい。具体的には、温室2内の天井や壁面等に、水滴を被覆部11の外面に対して吹きつけることができる、例えば、ノズル等を設けておくことが好ましい。
かかる水噴霧手段を設ければ、被覆部11表面に付着した水の気化熱などによって、被覆部11自体を冷却するとともに、被覆部11を介して、被覆部11内の内側に接する空間10hの空気の熱を直接奪って空間10hの気温を下げることができる。
ただし、この水噴霧により温室2内の空気の湿度が上昇してしまっては、空間10hの換気による排熱の効率が低下するため、温室2自体の換気回数も考慮して、噴霧する水量は調節される。
とくに、被覆部11は、空間10hの換気回数が、温室2の換気回数の約1/10〜1/5程度の換気回数、つまり、1時間あたり5回〜20回程度となるような構造を有するものが好ましい。
空間10hの換気回数が、1時間あたり5回よりも少ない場合には、太陽光によって供給される熱量が大きい条件において、空間10hの気温を十分に低下させることができなくなる。このような場合、空間10hの空気を、電気エネルギー等を用いて冷却する設備が必要となる。
一方、換気回数が1時間あたり20回よりも多い場合には、空間10hへの二酸化炭素の供給量を多くしても、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を高く維持することが困難になる。
よって、空間10hの空気の二酸化炭素濃度を高く維持しつつ、換気による空間10hの気温を調節する機能も発揮させる上では、空間10hの換気回数が1時間あたり5〜20回であることが好ましい。
以下、上部被覆部13と下部被覆部12とを有する被覆部11について説明する。
上部被覆部13は、上部シート13aと一対の端部シート13b,13bとから構成されている。
なお、一対の端部シート13b,13bを設けずに、上部シート13aにおける育成室10の軸方向の両端部を垂らしたり、端縁を連結したりするなどの方法によって、上部シート13aの端部を塞いでも、空間13hを形成することができる。
下部被覆部12は、一対の側方シート12a,12aの下端部を連結して、断面視略U字状に形成されたものである。
なお、下部被覆部12は、一対の側方シート12a,12aの両端部を互いに連結しているが、一対の側方シート12a,12aの端部同士を連結する端部シートを設けてもよく、一対の側方シート12a,12aの両端部に大きな開口部が形成されないようになっていればよい。
以上のごとく、被覆部11は、その下部被覆部12および上部被覆部13が上記のごとき形状かつ、上記のごとき配置となるように形成されているので、空間10hを、温室2内の空間から隔離された空間とすることができる一方、空間10hの空気の換気も行うことができる。
よって、空間10hの換気回数を温室2の換気回数よりも少なく、好ましくは、空間10hの換気回数を1時間あたり5〜20回程度とすることができるのである。
また、下部被覆部12や上部被覆部13には、上部隙間や下部隙間以外にも隙間があり、その隙間を通した換気も行われている。かかる上部隙間や下部隙間以外の隙間は、空間10hの換気回数を上記のごとき範囲に維持することができるのであれば、その隙間が形成される位置やその大きさはとくに限定されないし、被覆部11が、上部隙間や下部隙間以外の隙間が全く有し無いように形成されていてもよい。
そして、このように一対の側方シート12a,12aを設けた場合には、各側方シート12aをその下端から巻き上げることができるような構造とすることが好ましい。つまり、各側方シート12aがロールカーテンのような構造としてもよい。すると、一対の側方シート12a,12aを巻き上げれば、各側方シート12aを巻き上げた開口から被覆部11内の植物Pに接近することができるから、栽培する作物の手入れなどが行い易くなるという、利点が得られる。
同様に、上部被覆部13の幅方向の両端部も巻き上げることができるようになっていてもよい。この場合には、両端部も巻き上げ量を調整すれば、上述した上部隙間を通した空気の流入排出を調整することができるという利点が得られる。つまり、巻き上げ量を少なくすれば(言い換えれば、側方シート12aと重なる長さを長くすれば)、上部隙間を通した空気の流入排出が行いにくくなり、換気回数を少なくできる。逆に、巻き上げ量を大きくすれば(言い換えれば、側方シート12aと重なる長さを短くすれば)、上部隙間を通した空気の流入排出が行いやすくなり、換気回数を多くできる。
育成室は、上述した上部被覆部および下部被覆部を有する被覆部によって植物を栽培するための空間が形成されたものであり、幅1.2m(下部被覆部の幅)、高さ3m、奥行き5.3m(容積約19m3)である。被覆部は、梨地の農業用ポリオレフィン系フィルム(シーアイ化成株式会社)によって形成した。
なお、温室内には、上記育成室を1列並べて配置している。
また、気温および相対湿度は、自作した2本の銅−コンスタンタン熱電対(T型熱電対)を用いて乾球温度および湿球温度を測定し、これらの値から算出した。
同様に、育成室内の二酸化炭素濃度、光強度、気温、相対湿度も、それぞれ上述の温室内の測定と同様の装置と方法を用いて測定した。
なお、配管への二酸化炭素ガスの供給は、二酸化炭素ボンベを用いた。この二酸化炭素ボンベによる二酸化炭素ガス供給能力は最大で200kg CO2/ha/h であり、上述した育成室に対しては、最大で約1.5L/min.で供給した。
まず、育成室内の換気特性は、CO2トレーサガス法によって確認した。つまり、育成室内に二酸化炭素ガスを多量に供給し、育成室内の二酸化炭素ガス濃度が3000ppmから1500ppmとなるまでの時間を確認した。なお、換気回数測定のための二酸化炭素濃度を3000ppmから1500ppmとしたのは、育成室内の植物の呼吸や光合成の影響を小さくするためである。
図4に示すように、2回の測定を行ったところ、1回目で約230秒、2回目では約220秒の時間がかかっており、この結果から、育成室の1時間当たりの換気回数を算出すると、1時間当たり約11回程度となった。
以上の結果から、本発明の植物育成用施設では、育成室の換気回数を、温室の換気回数よりも少なくできていることが確認できた。
つぎに、育成室の二酸化炭素濃度維持機能を確認した。
実験では、温室の換気窓を全開にした状態で、育成室内に二酸化炭素を1.5L/min.の流量で供給し、温室内と育成室内の空気の二酸化炭素濃度の経時変化を計測した。
図5(d)、図6(h)に示すように、育成室内は、二酸化炭素の供給を開始した直後から二酸化炭素濃度が上昇し、二酸化炭素の供給を停止するまで、二酸化炭素濃度は約1000ppm以上に維持されている。
一方、温室の空気では、育成室内に二酸化炭素の供給を開始している間でも、二酸化炭素濃度は変化せず、測定期間中ほぼ一定である。
以上の結果より、本発明の植物育成用施設では、温室の状況(換気など)に関わらず、二酸化炭素の供給量が少なくても、育成室内の二酸化炭素濃度を高く維持できることが確認できた。
つぎに、育成室の気温維持機能を確認した。
実験では、夏場の晴天の日における育成室の気温と、温室の気温とを比較した。
日射によって温室に供給される熱量は3MJ/m2/hであり、育成室に入射する日射量は1.5 MJ/m2/hであった。なお、この日の屋外の気温は30℃、湿度は45%であった。
また、育成室の空気の湿度が90%であることを考えると、植物からの水の蒸散量が0.45kg/hであり、その気化熱が1.1MJ/m2/hである。
すると、育成室から換気によって排出される熱量と気化熱の合計(約4.9MJ/m2/h)は、育成室に供給される熱量とほぼ一致する。
つぎに、高二酸化炭素濃度条件で植物を育成した場合の葉の光合成性質の変化を確認した。
実験では、2週間、二酸化炭素施用を行ったトマト(CO2区)と、二酸化炭素施用をしなかったトマト(対照区)の個葉を対象として、携帯型光合成蒸散測定装置(LI-COR製、装置型番:LI-6400)を用いて光合成能力(光−光合成曲線)を測定した。
なお、CO2区のトマトは、本発明の植物育成用施設において栽培、および、二酸化炭素施用を行った。使用したトマトの品種は、富丸ムーチョである。
また、光−光合成曲線測定時の二酸化炭素濃度は400ppmと1500ppmとした。
以上の結果より、二酸化炭素施用を行い、高二酸化炭素濃度条件で植物を継続して育成することによって、高い二酸化炭素濃度条件下においてより高い光合成能力を発揮することのできる葉が形成されることが確認できた。
2 温室
10 育成室
10h 空間
11 被覆部
Claims (4)
- 太陽光を利用する温室と、
該温室内に設けられた、植物を収容した状態で該植物を育成する育成室と、を備えており、
該育成室は、
前記植物を囲むように設けられた、光透過性部材からなる被覆部と、
該被覆部内に配置された、該被覆部内に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段と、を備えており、
該被覆部には、
該被覆部内の空気と温室の空気とを換気するための換気部が設けられており、
該被覆部は、
該被覆部内の空気の湿度が、前記温室の空気の湿度よりも高く維持されている
ことを特徴とする植物育成用施設。 - 前記換気部は、
該育成室の換気回数が、前記温室の換気回数よりも少なくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の植物育成用施設。 - 前記被覆部を形成する光透過性部材は、該被覆部に照射された光を散乱し得る構造を有している
ことを特徴とする請求項1または2記載の植物育成用施設。 - 前記温室内には、前記被覆部の外面に対して水滴を噴霧する水噴霧手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の植物育成用施設。
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