JP5514945B1 - 水力発電システム - Google Patents

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Abstract

【課題】簡素な構成で安価に実現でき、無数に在る小規模河川の水力エネルギーを使用することにより、逼迫が予想される電力需給をまかなうことのできる水力発電システムが求められている。
【解決手段】水力発電システム1は、河川水Wを貯留する貯水ダム3と、傾斜面2上を別個独立に走行する1対のタンク車4a,4bと、河川水Wを各タンク車4a,4bに給水する給水設備5a,5bと、各タンク車4a,4bの河川水Wを排水する排水設備6a,6bと、傾斜面2に回転自在に支持された滑車7と、タンク車4aおよびタンク車4bに接続された状態で滑車7に巻き回されたツルベ用索条9と、各タンク車4a,4bを往復移動させるように案内する案内手段11,11と、タンク車4a,4bに伴なって移動するツルベ用索条9の移動動作により発電する発電機24と、を備えている。
【選択図】図2

Description

本発明は、小規模河川の河川水を利用する水力発電システムに関するものである。
従来一般の水力発電システムでは、下記の特許文献1に記載されているように、大型の貯水ダムを河川に設けて貯水し、放流により発電機を直に回転させることで発電している。しかしながら、毎秒何十トンもの大量の河川水を放水するために巨大な貯水量のダムを必要とすることから、発電所の設置場所は限られており、日本国内では新たな設置場所がほとんど無くなっている。一方で、水力を利用する小水力発電場所として、河川、農業水路などを利用する計画も挙げられている。しかしながら、年間を通してコンスタントな発電量が得られず、水力を利用可能な他の方法が必要と考えられる。また、他方では余剰な夜間電力を用い河川水を汲み上げて上流側のダムに貯水し、昼間の電力ピーク時に放流して発電させる揚水発電装置も知られている。しかしながら、この装置も電力を使用するので、結果として発電効率は芳しくない。
因みに、2010年度の発電種別の発電量比率は、水力発電10%、火力発電60%、原子力発電30%程度であった。ところが、2012年度は原子力発電を停止させたことにより、火力発電による発電量が90%に達し、1年で約3兆円分の石油が消費された。そして、日本国内において原子力発電は国民の反対によりなかなか稼動させることができず、世界的にも原子力発電の廃止、新設の取り止めなどが図られている。更に、火力発電では地球温暖化対策によりCO2排出量の減量化が叫ばれている。太陽光発電では雨、雷、曇り空の天候時に稼動させることができず、風力発電は風が吹かねば稼動させることができない。その他、日本では他国にない潮流発電や波動発電などの研究開発を行われているが、各国にはそれぞれ自国の地形、気候、環境などに適した条件がある。
特開2000−27166号公報
ところで、日本は水資源が豊富で国土の2/3以上が山間部であるが、水力発電に使用される大規模な貯水ダムを構築できる河川は限られており、新たに構築できる場所は極めて少ない。また、大規模貯水ダムの構築には、長期間にわたる事前調査、莫大な工事費用および工事期間がかかることから、施工計画から竣工まで多大な時間と費用を費やさなければならない。それに対し、極めて小規模な貯水ダム、止水堰、池などを造成できる小規模の河川は国内に無数にある。しかしながら、これら無数の小河川を流れる河川水の水力エネルギーは十分に利用されていると言い難い。一方で、原子力発電に代わる自然エネルギー利用の開発を必要とする社会的ニーズも高まってきている。
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、簡素な構成で安価に実現でき、無数に在る小規模河川の水力エネルギーを使用することにより、逼迫が予想される電力需給をまかなうことのできる水力発電システムの提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る水力発電システムは、山間の傾斜面に設けられて河川水を貯留する貯水ダムと、貯水ダムからの河川水を収容して傾斜面上を別個独立に走行する1対のタンク車と、貯水ダム近傍の傾斜面に設けられて貯水ダムの河川水を各タンク車にそれぞれ給水するための給水設備と、給水設備から離間した下方位置の傾斜面に設けられて各タンク車の河川水を排水するための排水設備と、貯水ダムと給水設備との間に配置されるとともに傾斜面に回転自在に支持された滑車と、一端が一方のタンク車に接続され他端が他方のタンク車に接続された状態で滑車に巻き回されたツルベ用索条と、各タンク車を給水設備と排水設備との間で往復移動させるように案内する案内手段と、タンク車に収容された河川水の重量により当該タンク車とともに移動するツルベ用索条の移動動作により発電する第1発電機と、を備えて成り、前記案内手段が、排水設備によるタンク車の排水位置近傍の上流側に配置されるとともに傾斜面に回転自在に支持されたガイド用滑車と、一端が一方のタンク車の下流側壁面に接続され他端が他方のタンク車の下流側壁面に接続された状態でガイド用滑車に巻き回されたガイド用索条と、から構成されているものである
また、前記した構成において、タンク車とともに移動するガイド用索条の移動動作により発電する第2発電機を備えているものである。
そして、前記した各構成において、タンク車が給水設備による給水位置に在るときに、その給水位置にタンク車を保持する保持手段を備えているものである。
更に、本発明に係る水力発電システムは、山間の傾斜面に設けられて河川水を貯留する貯水ダムと、貯水ダムからの河川水を収容して傾斜面上を別個独立に走行する1対のタンク車と、貯水ダム近傍の傾斜面に設けられて貯水ダムの河川水を各タンク車にそれぞれ給水するための給水設備と、給水設備から離間した下方位置の傾斜面に設けられて各タンク車の河川水を排水するための排水設備と、貯水ダムと給水設備との間に配置されるとともに傾斜面に回転自在に支持された滑車と、一端が一方のタンク車に接続され他端が他方のタンク車に接続された状態で滑車に巻き回されたツルベ用索条と、各タンク車を給水設備と排水設備との間で往復移動させるように案内する案内手段と、タンク車に収容された河川水の重量により当該タンク車とともに移動するツルベ用索条の移動動作により発電する第1発電機と、を備えて成り、タンク車が給水設備による給水位置に在るときに、その給水位置にタンク車を保持する保持手段を備えているものである。
本発明に係る水力発電システムによれば、貯水ダムと、1対のタンク車と、給水設備と、排水設備と、滑車と、ツルベ用索条と、案内手段と、発電機とを備えているので、小規模で簡素な構成により安価なシステムを実現でき、取扱いおよびメンテナンスも簡単である。また、極めて小規模の貯水ダムを用い得るので、日本国内のみならず世界中で、大規模な貯水ダムを構築できないような小さな河川であっても、本発明の貯水ダムを構築することが可能で発電ができるうえ、河川水以外の駆動エネルギーが要らずランニングコストが不要である。従って、原子力発電の将来的な増大化を期待できない世相に鑑みると、原子力発電の代替策となる本発明の水力発電システムは、世界的な逼迫が予想される電力需給をまかなえるものとして大いに貢献できるものと考える。そして、案内手段が、ガイド用滑車と、ガイド用索条とから構成されているので、タンク車を給水位置と排水位置に確実に導くことができる。
また、タンク車とともに移動するガイド用索条の移動動作により発電する第2発電機を備えているものでは、第1発電機および第2発電機という2台の発電機で発電するので、発電機1台で発電するよりも多量の電力を得ることができる。
更に、本発明に係る水力発電システムは、タンク車が給水位置に在るときにその給水位置にタンク車を保持する保持手段を備えているので、給水により全体重量が増加していくタンク車を確実に保持することができる。従って、貯留ダムからの河川水を洩らすことなく収容でき、ひいては無駄なく発電させることができる。
本発明の一実施形態に係る水力発電システムの概略構成を示す側面構成図である。 前記水力発電システムの概略構成を示す平面構成図である。 前記水力発電システムのタンク車を示す拡大側断面図である。 前記水力発電システムにおける各タンク車がそれぞれの給水設備および排水設備から離れて移動途中の状態を示す状態説明図である。 前記水力発電システムにおける各タンク車がそれぞれの給水設備および排水設備に到着してそれぞれ給水と排水を行なう状態を示す状態説明図である。 本発明の別の実施形態に係る水力発電システムの概略構成を示す平面構成図である。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。図1は本発明の一実施形態に係る水力発電システムの概略構成を示す側面構成図、図2は前記水力発電システムの概略構成を示す平面構成図である。
各図において、この実施形態に係る水力発電システム1は、山間の傾斜面2に構築されて河川水Wを貯留する小型の貯水ダム3と、傾斜面2上を別個独立で上下に交互走行する1対のタンク車4a,4bと、貯水ダム3近傍の傾斜面2上に設けられた給水設備5a,5bと、給水設備5a,5bから離間した下方位置の傾斜面2に設けられた排水設備6a,6bと、貯水ダム3と給水設備5a,5bとの間の傾斜面2に回転自在に支持された滑車7と、滑車7に巻き回されたツルベ用索条9と、各タンク車4a,4bを給水設備5a,5bと排水設備6a,6bとの間で往復移動させるように案内する2つの案内手段11,11と、ツルベ用索条9の移動動作により発電する発電機24(第1発電機)と、を備えている。ツルベ用索条9は、その一端が一方のタンク車4aの上流側壁面に接続され他端が他方のタンク車4bの上流側壁面に接続されている。滑車7は傾斜面2の地盤Lに埋設された軸受体69に回転自由に枢支されている枢軸22に取り付けられている。
更に、この水力発電システム1は、排水設備6a,6bよりも下方位置の傾斜面2に回転自在に支持されたガイド用滑車13と、一端が一方のタンク車4aの下流側壁面に接続され他端が他方のタンク車4bの下流側壁面に接続された状態でガイド用滑車13に巻き回されたガイド用索条12と、ガイド用索条12の移動動作により発電する発電機28(第2発電機)と、発電機24,28で発電された電力を受電し送電線72を介して遠隔地へ送電する中継器70とを備えている。中継器70は、受電した電力を規定の電圧に調整する変圧器(図示省略)や電力の一部をいったん蓄電しておく蓄電池71も備えている。
滑車7の下方位置には、タンク車4a,4bの上昇を停止させるためのプラットホーム30が築設されている。ガイド用滑車13の上方位置には、タンク車4a,4bの下降を停止させるためのプラットホーム31が築設されている。そして、プラットホーム30,31間には、2組の軌道10a,10a,10b,10bが敷設されている。タンク車4a,4bは、それぞれ、軌道10a,10a上と、軌道10b,10b上を走行するようになっている。すなわち、これら2組の軌道10a,10a,10b,10bが、一つ目の案内手段11となる。また、ガイド用滑車13は傾斜面2の地盤Lに埋設された軸受体68に回転自由に枢支されている枢軸67に取り付けられている。すなわち、ガイド用索条12、ガイド用滑車13、枢軸67、および軸受体68から成る構成が、二つ目の案内手段11となる。
貯水ダム3の壁面下部には、ダム内外を貫通する出水管8が設けられている。この出水管8の先端は、左右の分岐管17a,17bに分岐している。これらの分岐管17a,17bにはそれぞれ電磁開閉弁18a,18bが取り付けられ、更に電磁開閉弁18a,18bにそれぞれ給水管19a,19bが接続されている。給水管19a,19bの下端位置は、プラットホーム30を跨いだ下流側位置で、タンク車4a,4bのそれぞれの給水位置に達している。尚、タンク車4bの給水位置とは図2に示したタンク車4bの位置であり、給水管19bの下流側端部に接続される位置である。タンク車4aの給水位置とは、図2に示したタンク車4bの真横(図2の紙面に向かって右側)の位置である。一方、プラットホーム31を上下に跨いだ配置で、排水設備(排水管)6a,6bが傾斜面2に固設されている。そして、タンク車4aの排水位置とは図2に示したタンク車4aの位置であり、排水設備6aの上流側端部に接続される位置である。タンク車4bの給水位置とは、図2に示したタンク車4aの真横(図2の紙面に向かって左側)の位置であり、排水設備6bの上流側端部に接続される位置である。そして、貯水ダム3の壁面の側方上部には、貯水ダム3内で増水した河川水Wを下流側へ放流するための溢流管15が設けられている。溢流管15から溢れ出た河川水Wは、傾斜面2に形成された導水溝16を経て下流河川20に放流されるようになっている。
滑車7の上面には同軸心の滑車21が一体的に固設されている。これら滑車7,21の側方位置には発電機24が配備され、発電機24の発電駆動軸25に滑車26が取り付けられている。滑車26は周回索条23を介して回転力伝達可能に滑車21と連結されている。発電機24は、滑車26の回転を増速して発電ロータに伝達する増速機構(図示省略)を内蔵している。一方、下流側のガイド用滑車13の上面には同軸心の滑車14が一体的に固設されている。これらガイド用滑車13,14の側方位置には発電機28が配備され、発電機28の発電駆動軸29に滑車30が取り付けられている。滑車30は周回索条27を介して回転力伝達可能に滑車14と連結されている。発電機28は、滑車30の回転を増速して発電ロータに伝達する増速機構(図示省略)を内蔵している。そして、発電機24により発電された電力のほとんどは送電線74を介して中継器70に送電され、一部が送電線75を介して制御装置38に送電され消費される。一方、発電機28により発電された電力のほとんどは送電線73を介して中継器70に送電され、一部が送電線76を介して転送装置41に送電され消費される。
タンク車4a,4bは、図3に示すように、水受け容器であるタンク本体43と、タンク本体43底面の前後左右4ヶ所に垂設されたシャーシ60,60,60,60と、左右のシャーシ60,60間に架け渡された2つの車軸62,62と、各車軸62,62に回転自由に取り付けられて軌道10a,10b上を転動する車輪61,61,61,61と、を備えて構成されている。タンク本体43の底には、降下慣性力を高めるためのコンクリート錘59が設置されている。タンク本体43の上流側の側壁には接続部材44が固設されている。接続部材44にはツルベ用索条9を通すための挿通穴45が形成されている。挿通穴45の途中に、固定用ネジ46と螺合する雌ネジ部が連通している。尚、ツルベ用索条9は、滑車7に掛け回された状態で、その一端がタンク車4aの接続部材44の挿通穴45に通されて固定用ネジ46で固定される。ツルベ用索条9の他端はタンク車4bの接続部材44の挿通穴45に通されて固定用ネジ46で固定される。タンク本体43の下流側の側壁には接続部材47が固設されている。接続部材47にはガイド用索条12を通すための挿通穴48が形成されている。挿通穴48の途中には、固定用ネジ46と螺合する雌ネジ部が連通している。尚、ガイド用索条12は、ガイド用滑車13に巻き回された状態で、その一端がタンク車4aの接続部材47の挿通穴48に通されて固定用ネジ46で固定される。ガイド用索条12の他端はタンク車4bの接続部材47の挿通穴48に通されて固定用ネジ46で固定される。
そして、タンク本体43の上流側の側壁には、接続管49が貫通して設けられている。接続管49のタンク外の管端には、リング状の口ゴム部材50が水漏れ防止用として装着されている。接続管49のタンク内の管端外には枢軸51が設けられている。この枢軸51に、蓋体52が管端口を開閉するように揺動自在に支持されている。この管端口には、ゴム製のリングパッキング53が水漏れ防止用として装着されている。蓋体52は、枢軸51に装着されたコイルバネ(図示省略)により接続管49の管端口を閉じる方向(図3中の矢印R方向)に常に弾性付勢されている。一方、タンク本体43の下流側の側壁には、接続管54が貫通して設けられている。接続管54のタンク外の管端には、リング状の口ゴム部材55が水漏れ防止用として装着されている。接続管54のタンク内の管端には枢軸56が設けられている。この枢軸56に、蓋体57が管端口を開閉するように揺動自在に支持されている。この管端口には、ゴム製のリングパッキング58が水漏れ防止用として装着されている。蓋体57は、枢軸56に装着されたコイルバネ(図示省略)により接続管54の管端口を閉じる方向(図3中の矢印S方向)に常に弾性付勢されている。
そして、タンク本体43内の最上部には、収容された河川水Wの満水時の水位を検知する水位センサ64a,64bが設置されている。タンク本体43内の下部で接続管54の近傍位置には、河川水Wがほぼ無くなった渇水時の水位を検知する水位センサ63a,63bが設置されている。これら水位センサ63a,63b,64a,64bからの検知信号は、タンク本体43の外壁に取り付けられた制御部65a,65bに取り込まれるようになっている。制御部65a,65bに取り込まれた満水検知信号と渇水検知信号は、アンテナ66を介して、離間位置にある制御装置38(後で詳述)に無線送信される。尚、制御部65a,65bを作動させる電源は、予め搭載されている蓄電池(図示省略)であり、制御部65a,65bの制御基板を半年〜1年間程度作動させ得る電力を蓄えている。
そうして、それぞれの給水位置の近傍には電磁駆動機32a,32bが設置されている。各電磁駆動機32a,32bは、内蔵する電磁コイル(図示せず)への通電・切電により出没自在に出し入れされるプランジャ33a,33bを有している。例えば、図2ではタンク車4bがその給水位置に在るので、電磁駆動機32bの電磁コイルが作動してプランジャ33bを押し出し、押し出されたプランジャ33bがタンク車4bの下流側の側壁を支持してタンク車4bを保持している例(保持手段77)を示している。
それぞれの給水位置に在るタンク車4a,4bの側方位置には、それぞれタンク車4a,4bの存在を検知する、対物センサ34a,34bと、対物センサ35a,35bが配備されている。対物センサ34a,34bは、プラットホーム30の近傍位置に配置されている。対物センサ35a,35bは、対物センサ34a,34bよりも下流側の位置で、且つ、タンク車4a,4bがそれぞれの給水位置に在るときはそれぞれの存在を検知しないような位置に配置されている。
一方、それぞれの排水位置に在るタンク車4a,4bの側方位置には、それぞれタンク車4a,4bの存在を検知する、対物センサ36a,36bと、対物センサ37a,37bが配備されている。対物センサ37a,37bは、プラットホーム31の近傍位置に配置されている。対物センサ36a,36bは、対物センサ37a,37bよりも上流側の位置で、且つ、タンク車4a,4bがそれぞれの排水位置に在るときはそれぞれの存在を検知しないような位置に配置されている。排水位置の近傍には転送装置41が設置されている。この転送装置41は、対物センサ36a,36b,37a,37bからの検知信号を受信し、アンテナ42を介して制御装置38へ無線送信するようになっており、発電機28から送電線76を介して送られた電力により作動する。
そして、この水力発電システム1は、システム全体の制御を司るマイクロコンピュータ39を有する制御装置38を備えている。前記のマイクロコンピュータ39は、中央演算器CPU、メモリ、データバス、入力部、出力部などを備えて成る汎用品である。そして、制御装置38は、タンク車4a,4bのアンテナ66からの検知信号や、転送装置41のアンテナ42からの検知信号を受信するアンテナ40を備えている。
上記のように構成された水力発電システム1の作用を次に説明する。まず、図1および図2に示した状態から説明する。この場合、排水設備6aにより排水可能な排水位置(図2中に示したタンク車4aの位置)にタンク車4aが到着してプラットホーム31で止められ、排水設備6aの上流側端部が接続管54の口ゴム部材55を貫通し更に蓋体57を押し開けている。これにより、タンク車4a内の河川水Wが排水設備6aを経て下流河川20に放流される。このように、タンク車4aが前記排水位置に到着したことは、対物センサ36aがタンク車4aの通過(OFF→ON→OFF)を検知した後に、対物センサ37aがタンク車4aの存在を検知したことにより判定される。すなわち、対物センサ36a,37aの検知信号は転送装置41に送られ、更に制御装置38に送信されマイクロコンピュータ39によって判定される。同様に、タンク車4bがその排水位置に到着したときは対物センサ36b,37bからの検知信号に基づいてマイクロコンピュータ39によって判定される。
ほぼ同時に、給水設備5bにより給水可能な排水位置(図2中に示したタンク車4bの位置)にタンク車4bが到着してプラットホーム30で止められ、給水設備5bの給水管19bの下流側端部が接続管49の口ゴム部材50を貫通し更に蓋体52を押し開けている。このように、タンク車4bが前記給水位置に到着したことは、対物センサ35bがタンク車4bの通過(OFF→ON→OFF)を検知した後に、対物センサ34bがタンク車4bの存在を検知したことにより判定される。すなわち、対物センサ34b,35bの検知信号は制御装置38に送信されマイクロコンピュータ39によって判定される。同様に、タンク車4aがその給水位置に到着したときは対物センサ34a,35aからの検知信号に基づいてマイクロコンピュータ39によって判定される。
制御装置38はタンク車4bの到着を判定すると、電磁駆動機32b(保持手段77)に指令信号を出力しプランジャ33bを突出させタンク車4bの下流側外壁を受け止めてその位置で保持する。続いて、制御装置38は電磁開閉弁18bに指令信号を出力して開弁させる。これにより、給水設備5bの給水管19bと分岐管17bが連通し、貯水ダム3の河川水Wがタンク車4bのタンク本体43内に流れ込む。そうして、タンク本体43内が満水になると、水位センサ64bが満水を検知し、この検知信号は制御部65bに送られ更に制御装置38に送信されてマイクロコンピュータ39によって満水と判定される。一方、タンク車4aにおいてタンク本体43内の河川水Wがほとんど排出されると、水位センサ63aが渇水信号を検知し制御装置38に送信し渇水と判定される。
これら給渇水の判定の後に、制御装置38のマイクロコンピュータ39は、電磁駆動機32bのプランジャ33bを格納させてタンク車4bの保持状態を解除する。これにより、図4に示すように、河川水Wを積み込んだタンク車4bと、河川水Wを放出したタンク車4aとの重量差により、タンク車4bが下降して行き(矢印D)、タンク車4aが上昇して行く(矢印U)。それに同伴して、ツルベ用索条9およびガイド用索条12が移動することにより、滑車7,13が回転し(矢印R)、更に滑車26,30が回転して2つの発電機24,28に発電をさせる。発電された電力はそのほとんどが中継器70に送られ、蓄電池71に蓄電されるか、あるいは送電線72を経て遠隔の利用地に送電される。
そうするうちに、タンク車4bがその排水位置に到着し、ほぼ同時にタンク車4aがその給水位置に到着する。すると、図5に示すように、タンク車4a,4bが給水位置と排水位置に到着したことが、対物センサ34a,35a,36b,37bの検知信号に基づいてマイクロコンピュータ39により判定される。このとき、タンク車4bの接続管54に排水設備6bが接続され、タンク車4aの接続管49に給水設備5aの給水管19aが接続される。そして、電磁駆動機32a(保持手段77)のプランジャ33aが突出駆動され、電磁開閉弁18aが開弁されてタンク車4aのタンク本体43内に貯水ダム3の河川水Wが収容される。一方、タンク車4b内の河川水Wは排水設備6bを経て下流河川20に放流される。このようにして、タンク車4a,4bがそれぞれの給水位置と排水位置との間を往復するという上昇・下降動作が、河川水W以外のエネルギー供給無しで自動的に繰り返されるのである。
以上、述べたように、この水力発電システム1は、貯水ダム3と、1対のタンク車4a,4bと、給水設備5a,5bと、排水設備6a,6bと、滑車7と、ツルベ用索条7と、案内手段11,11と、発電機24,28とを備えているので、小規模で簡素な構成により安価なシステムを実現することができ、取扱いおよびメンテナンスも簡単である。加えて、あたかも登山鉄道ケーブルカーのようにタンク車4a,4bが交互昇降するので、河川水W以外の駆動エネルギーが要らずランニングコストが不要である。また、従来のように河川水Wを大量に垂れ流しにするダイレクト発電ではなく、間接的に河川水Wを利用するので、大型の貯水ダムを必要としない。そのような垂れ流しがないので節水効果は高い。
ところで、日本の降雨の再利用率は13%と低いのに対し、地形の違いはあるがヨーロッパでは運河などによる物流が発達しているために70〜80%という高い再利用率となっている。しかしながら、水資源が豊富で国土面積の70%が山間地帯である日本の地形であるので、谷間部の一部を堰き止るだけで、この水力発電システム1の小型の貯水ダム3を構築することができ、そのような構築場所は国内に何千箇所と存在する。すなわち、水力発電システム1は世界中どこにでも設置できて発電できるが、特に日本にとっては好適となる。貯水ダムとしては、例えば小さな池でもプールでも構わず、通常の大型貯水ダムの貯水量の1/1000〜1/10000程度の規模であっても運用可能である。因みに、水力発電システム1はタンク車1往復5時間の行程とすると、5時間に1回10t程度の河川水の消費で済む。
そして、水力発電システム1で発電させるための動力源は河川水Wであり、河川水Wの給排水時間を除いて年中稼動させることができるので、水力発電システム1の発電効率は90%に達する。すなわち、発電効率が30%前後の風力発電や太陽光発電よりも効率が高い。因みに、この水力発電システム1は2000〜5000kWの発電ができ、大型の風力発電(4000〜5000kW)並みも可能である。このような水力発電システム1を日本国内の多数箇所に設けることにより、国内所要総発電量の30%程度は賄えられると考える。
他方で、水力発電システム1は、簡素な軌道10a,10bから構成された案内手段11と、ガイド用滑車13およびガイド用索条12から構成された案内手段11とを併用しているので、タンク車4a,4bをより正確に給水位置と排水位置に導くことができる。従って、タンク車4a,4bの接続管49,54と、給水設備5a,5bまたは排水設備6a,6bとの接続が不十分になって、河川水Wを無駄に洩らしてしまうという不具合を回避することができる。
また、タンク車4a,4bがその給水位置に在るときにタンク車4a,4bをその給水位置に保持する電磁駆動機32a,32bを、保持手段77として備えているので、給水により全体重量が増加していくタンク車4a,4bをその給水位置で確実に保持することができる。従って、貯留ダム3からの河川水Wを洩らすことなく収容でき、ひいては無駄なく発電に供することができる。加えて、上下2台の滑車7、13の回転力を利用して2台の発電機24,28で発電するので、発電機1台で発電するよりも多量の電力を得ることができる。
尚、上記の実施形態では、2つの案内手段11を有するものを例示したが、本発明はそれに限定されるものでない。例えば、図6に示す水力発電システム1Aも本発明に含まれる。この水力発電システム1Aは、先の実施形態の水力発電システム1と同様の基本構成を有しているが、水力発電システム1と構成が異なるところは、ガイド用索条12,ガイド用滑車13,滑車14,接続部材47,滑車30,索条27,発電機28,送電線73,送電線76などを備えていないことである。但し、一つの発電機24と、一つの案内手段11(軌道10a,10a,10b,10b)は備えている。
従って、このような水力発電システム1Aであっても、小型の貯水ダム3からの河川水Wを利用して、小規模ながら無駄なく発電することができる。また、軌道10a,10a,10b,10bにより、各タンク車4a,4bはそれぞれの給水位置と排水位置とに確実に案内されるので、接続管の接続ミスから無為に漏水を引き起こすといった不具合を回避することができる。
あるいは、ガイド用索条12,ガイド用滑車13などから成る案内手段11を備えており、軌道10a,10a,10b,10bから成る案内手段11を省略した水力発電システムも、本発明に含まれる。このような構成であっても、各タンク車4a,4bをそれぞれの給水位置と排水位置とに案内することができる。
他方で、各タンク車4a,4bの車輪61の回転力を利用した発電機(図示省略)を各タンク車4a,4bに搭載しておくと、更に多くの発電量を稼ぐことができる。
1,1A 水力発電システム
2 傾斜面
3 貯水ダム
4a,4b,4Aa,4Ab タンク車
5a,5b 給水設備
6a,6b 排水設備
7 滑車
9 ツルベ用索条
10a,10b 軌道
11 案内手段
12 ガイド用索条
13 ガイド用滑車
17a,17b 分岐管
18a,18b 電磁開閉弁
19a,19b 給水管
20 下流河川
発電機(第1発電機)
28 発電機(第2発電機)
32a,32b 電磁駆動機
33a,33b プランジャ
38 制御装置
43 タンク本体
44,47 接続部材
49,54 接続管
77 保持手段
D,U 矢印
W 河川水

Claims (4)

  1. 山間の傾斜面に設けられて河川水を貯留する貯水ダムと、
    貯水ダムからの河川水を収容して傾斜面上を別個独立に走行する1対のタンク車と、
    貯水ダム近傍の傾斜面に設けられて貯水ダムの河川水を各タンク車にそれぞれ給水するための給水設備と、
    給水設備から離間した下方位置の傾斜面に設けられて各タンク車の河川水を排水するための排水設備と、
    貯水ダムと給水設備との間に配置されるとともに傾斜面に回転自在に支持された滑車と、
    一端が一方のタンク車に接続され他端が他方のタンク車に接続された状態で滑車に巻き回されたツルベ用索条と、
    各タンク車を給水設備と排水設備との間で往復移動させるように案内する案内手段と、
    タンク車に収容された河川水の重量により当該タンク車とともに移動するツルベ用索条の移動動作により発電する第1発電機と、
    を備えて成り、
    前記案内手段が、排水設備によるタンク車の排水位置近傍の上流側に配置されるとともに傾斜面に回転自在に支持されたガイド用滑車と、一端が一方のタンク車の下流側壁面に接続され他端が他方のタンク車の下流側壁面に接続された状態でガイド用滑車に巻き回されたガイド用索条と、から構成されていることを特徴とする水力発電システム。
  2. タンク車とともに移動するガイド用索条の移動動作により発電する第2発電機を備えていることを特徴とする請求項1に記載の水力発電システム。
  3. タンク車が給水設備による給水位置に在るときに、その給水位置にタンク車を保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水力発電システム。
  4. 山間の傾斜面に設けられて河川水を貯留する貯水ダムと、
    貯水ダムからの河川水を収容して傾斜面上を別個独立に走行する1対のタンク車と、
    貯水ダム近傍の傾斜面に設けられて貯水ダムの河川水を各タンク車にそれぞれ給水するための給水設備と、
    給水設備から離間した下方位置の傾斜面に設けられて各タンク車の河川水を排水するための排水設備と、
    貯水ダムと給水設備との間に配置されるとともに傾斜面に回転自在に支持された滑車と、
    一端が一方のタンク車に接続され他端が他方のタンク車に接続された状態で滑車に巻き回されたツルベ用索条と、
    各タンク車を給水設備と排水設備との間で往復移動させるように案内する案内手段と、
    タンク車に収容された河川水の重量により当該タンク車とともに移動するツルベ用索条の移動動作により発電する第1発電機と、
    を備えて成り、
    タンク車が給水設備による給水位置に在るときに、その給水位置にタンク車を保持する保持手段を備えていることを特徴とする水力発電システム。
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