JP5514455B2 - 3次元の空隙形状を有する構造体上にリン酸カルシウム化合物を被覆する処理方法と該構造体の製造方法 - Google Patents

3次元の空隙形状を有する構造体上にリン酸カルシウム化合物を被覆する処理方法と該構造体の製造方法 Download PDF

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本発明は、カラムクロマト充填材や触媒担持材の工業製品や再生医療用細胞担体材(スキャフォールド)や細胞培養材、骨補填材、骨再建材、薬剤スクリーニング基材に代表される医療材料に用いられる3次元の空隙形状を有する構造体へのリン酸カルシウム化合物の製膜技術に関する。
該化合物の製膜行程における加熱や酸化処理による構造体の強度の低下、変形、脆化を抑制し、該化合物で被覆した構造体の製造方法に関するものである。
カラムクロマト充填材、触媒担持材に代表される工業材料や、生体成分分析や診断および薬剤の開発に有用な再生医療用細胞担体材(スキャフォールド)、細胞培養材、骨補填材、骨再建材、薬剤スクリーニング基材に代表される医療材料に用いられる3次元の空隙形状を有する構造体の材質は、使用時の腐食と力学的破壊による悪影響がないように、高い耐食性とある程度の機械的強度が求められる。このため、チタン、チタン系合金、コバルト系合金、ステンレスに代表される金属やアルミナ、シリカ、ジルコニア、部分安定化ジルコニアに代表されるセラミックスが多く用いられている。しかし、これらの材料は、生体に直接的な悪影響を与えないものの生体親和性や細胞密着性に乏しい。また吸着材としては、吸着力が一般に小さい。このため、高い生体親和性や吸着性能をもつリン酸カルシウム化合物を表面に被覆して性能を向上させる処理が必要な場合がある。金属やセラミックスの表面に該化合物を被覆する技術は、工学、医学、歯学の分野で盛んに研究されており、様々な方法が試みられている。
ドライプロセスでは、PVD法、CVD法がある。特許文献1に代表的されるスパッタ法は、高真空中で高エネルギーを与えたカルシウムとリン酸のイオンを基板上に堆積させるため平面や比較的単純な形状の表面には厚さが均一な膜を作成できる。この方法は、種類の異なる原子(カルシウムとリン)を一定の組成に保って製膜するには、経験的な技術が必要である。また、得られる膜はアモルファスまたは結晶性の低いリン酸カルシウム化合物のため、マッフル炉や赤外線加熱炉に代表される加熱装置を用いる結晶化行程が必要な場合もある。このように、製膜工程の他に熱処理工程が必要になる場合も少なくない。また、3次元の空隙形状を有する構造体の被覆には、カルシウムやリン酸のイオンが構造内部や裏面に到達できないために適用困難であることと、減圧や雰囲気調整が可能な複雑かつ高エネルギーを要する専用の製膜装置が必要なため高コスト化は不可避な問題である。
本技術において適用可能なウェットプロセスとしては、代表的な方法であるゾル−ゲル法(非特許文献1、2)、分子プレカーサー法(特許文献2)を挙げられるが、これらに限定されない。これらは溶液組成物を基板上に塗布後、熱処理により製膜可能で、大がかりな製膜装置を必要としないため低コストで製膜できる特徴がある。また、塗布液が浸潤すれば、3次元の空隙形状を有する構造体の内部まで塗布できる優れた特徴があり、この特徴は後述のように特に分子プレカーサー法が優れている。
非特許文献1、2のゾル−ゲル法は、加水分解を製膜の原理としている。カルシウムとリン酸の組成を一定に保って製膜するには、加水分解速度を調整する添加剤の選定や、液調製に経験的な技術が必要である。また、液のポットライフは短く原料のアルコキシドは一般に高価なものが多い。このため、生産時に高コストになる傾向がある。また、塗布溶液組成物が高分子量であるために、3次元の空隙形状を有する構造体の内部まで均一に塗布することは一般に困難である。
特許文献2の分子プレカーサー法は、アルキルアミンとエチレンジアミンN,N,N’,N’四酢酸(EDTA)のカルシウム塩をアルコール中で反応させて得られた均一溶液中に、リン酸やリン酸化合物を任意の化学量論比で添加して合成した溶液組成物を用いて、基材上に塗布、熱処理することによりリン酸カルシウム化合物の薄膜を形成できる方法である。この塗布溶液は、カルシウムとリン酸が溶液中に安定な状態で存在しているので、ポットライフは長期的な高い安定性を持っている。また、原料にアルコキシドを使用しないので入手し易く比較的安価な原料で合成できるので、技術的にもコスト的にもゾル−ゲル法にない優れた特徴を持った方法である。
しかし、空気雰囲気中で製膜すると、熱処理で生成したリン酸カルシウム化合物層が優れた吸着剤として作用して、溶液組成物に由来する炭素成分を吸着し、該化合物中に黒色物質が残存することがある。このような黒色物質は、チタン製シリンダー(チタン製の円柱)のように単純な形状物の場合には、生体に悪影響を及ぼさないことは判明している(非特許文献3)。ところが、1〜200μmの線径を持つチタン繊維で構成される3次元の空隙構造を有する不織布(チタンウェブ)上に同様な製膜処理を施すと、チタン繊維が脆化するだけでなく、この黒色成分が膜中に残ることにより膜の強度が低下して、表面から黒色物質や黒色物質を含んだリン酸カルシウム化合物が脱落する場合がある。このため、黒色物質を燃焼させるために熱処理時間を延長しても、該化合物の持つ優れた吸着性能のために全て燃焼させるのは容易でない。
また、特許文献3に有機カルシウム及び有機リン化合物を溶解した溶液組成物を金属材料表面に塗布後に熱処理して、リン酸カルシウム化合物被覆層を形成する方法がある。この方法は、熱処理後に炭素成分による黒色物質が残存する時は火炎を用いて燃焼している。被コーティング材が板状や円柱状など比較的簡単な形状や比表面積が小さい形状、被覆層に対して金属部の割合が大きいものは有効な方法であるが、前記のチタンウェブのような1〜200μmの線径を持つ不織布状の繊維集合体に代表される比表面積の大きな構造体の場合、残存している炭素成分を燃焼する時に、構造体の端部や火炎と接触している箇所は、火炎の温度に近い高温に曝されるだけでなく、火炎中の外炎(酸化炎)と内炎(還元炎)により酸化環境、還元環境が繰り返されて構造体が脆化するだけでなく、リン酸カルシウム化合物被覆層も脆化もしくは脱落する可能性がある。また、構造体が厚みのある場合や立体形状に加工されている場合、内部まで均一に火炎で熱処理することは一般に困難である。
こうした方法で作成したスキャフォールドを使用した場合、長期的な使用中に脱離した微粉末が生体組織へ拡散する可能性がある。既に、動物実験から周辺組織の着色や変色が起こることを確認している。このため、材料自身の耐久性が低下する可能性だけでなく、現在未知な影響についても懸念される。
以上の理由より、チタンウェブのような繊維で構成される3次元の空隙構造を有する構造体上へのリン酸カルシウム化合物の被覆は従来の方法をそのまま適用することは困難である。
特開平10−72666号公報 特開2004−33589号公報 特公平3−60502号公報
J Sol-Gel Sci Technol 13, 261-265 (1998) Surf Coat Technol 185 (2004) 268-274 Int J Oral Maxillofac Implants 2006 21(6) 851-858
本発明は、前記問題点を一挙に解決するために為されたもので、3次元の空隙形状を有する構造体上に、分子プレカーサー法に代表されるウェットプロセスでリン酸カルシウム化合物を被覆するものである。
該化合物を形成できる溶液組成物を塗布した後、熱処理して該化合物を形成する際に、(A)酸化性雰囲気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(B)酸化剤を添加した溶液組成物を塗布した構造体を、酸化性雰囲気中または大気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(C)前記いずれかの加熱酸化処理後に酸化剤に浸漬もしくは浸漬後に100〜800℃で熱処理する酸化処理、から選ばれる1つ以上の酸化処理工程により構造体の強度の低下、変形、脆化を抑制し、該化合物を全面または部分的に被覆する処理方法と該構造体の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題は、下記の構成(1)〜(6)により解決される。
(1)カラムクロマト充填材、触媒担持材、再生医療用細胞担体材(スキャフォールド)、細胞培養材、骨補填材、骨再建材、薬剤スクリーニング基材に用いられる3次元の空隙形状を有する構造体に分子プレカーサー法によりリン酸カルシウム化合物を形成できる溶液組成物を塗布した後、熱処理して該化合物を形成する際に、(A)酸化性雰囲気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(B)酸化剤を0.1wt%〜50wt%添加した溶液組成物を塗布した構造体を、酸化性雰囲気中または大気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(C)前記いずれかの加熱酸化処理後に酸化剤に浸漬もしくは浸漬後に100〜800℃で熱処理する酸化処理、から選ばれる1つ以上の酸化処理工程により、構造体の強度の低下、変形、脆化を抑制し、該化合物を全面または部分的に被覆処理することを特徴とする構造体の製造方法。
(2)構造体の形状は、繊維集合(不織布)構造、メッシュ状構造、スポンジ状構造、ビーズ構造、カラム構造のいずれか1つを含むことを特徴とする前記(1)に記載の構造体の製造方法。
(3)構造体が金属、セラミックス、ガラスのいずれか1つを含むことを特徴とする前記(1)に記載の構造体の製造方法。
(4)被覆するリン酸カルシウム化合物が、アモルファスまたは結晶性で、組成が単一か、またはそれらの混合物からなることを特徴とする前記(1)に記載の構造体の製造方法。
(5)酸化剤は、過酸化水素(水)、オゾン(水)から選ばれる1種以上の酸化剤であることを特徴とする前記(1)に記載の構造体の製造方法。
(6)熱処理時の酸化性雰囲気は、酸素、オゾンから選ばれる1種以上の酸化性の気体を30〜100%含む雰囲気であることを特徴とする前記(1)に記載の構造体の製造方法。
本発明は、前記の分子プレカーサー法に代表されるウェットプロセスでリン酸カルシウム化合物形成用の溶液組成物を、繊維集合(不織布)構造、メッシュ状構造、スポンジ状構造、ビーズ構造、カラム構造の構造体の表面にディップ法、スプレーコート法、流し塗り、カーテンコート法、エアレススプレーコート法、減圧含浸、加圧含浸、刷毛塗りに代表される方法で塗布した後、熱処理して該化合物を形成して被覆する際に、(A)酸化性雰囲気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(B)酸化剤を0.1wt%〜50wt%添加した溶液組成物を塗布した構造体を、酸化性雰囲気中または大気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(C)前記いずれかの加熱酸化処理後に酸化剤に浸漬もしくは浸漬後に100〜800℃で熱処理する酸化処理、から選ばれる1つ以上の極めて簡単な酸化処理工程により構造体の強度の低下、変形、脆化を抑制し、該化合物を全面または部分的に被覆できるので、大掛かりな設備を必要としない。従って低コストで3次元の空隙を持つ構造体に該化合物を被覆できるので、カラムクロマト充填材や触媒担持材の工業製品や再生医療用細胞担体材(スキャフォールド)や細胞培養材、骨補填材、骨再建材、薬剤スクリーニング基材に代表される医療分野の製品における用途の拡大が見込まれる。
被覆前のチタンウェブの表面状態を示す図である。 被覆後のチタンウェブの表面状態を示す図である。 チタン基板上にコートしたヒドロキシアパタイト薄膜のXRD測定結果を示す図である。
本発明者らは、リン酸カルシウム化合物で被覆した3次元の空隙を持つ構造体の製造方法について研究を進めてきたところ、複雑な形状にも均一に塗布できるウェットプロセスである分子プレカーサー法のリン酸カルシウム化合物形成用の溶液組成物を塗布後、熱処理して該化合物を形成する際に、(A)酸化性雰囲気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(B)酸化剤を0.1wt%〜50wt%添加した溶液組成物を塗布した構造体を、酸化性雰囲気中または大気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(C)前記いずれかの加熱酸化処理後に酸化剤に浸漬もしくは浸漬後に100〜800℃で熱処理する酸化処理、から選ばれる1つ以上の簡単な酸化処理をすることで、構造体の全面または部分的に該化合物で被覆できることを発見した。
構造体の材質は金属、セラミックス、ガラス類が挙げられる。より具体的には、チタン、チタン系合金、ステンレス類、コバルト系合金、チタニア、アルミナ、ジルコニア、部分安定化ジルコニア、シリカ、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、石英ガラス、高ケイ酸ガラス(バイコール)、硬質ガラス(パイレックス(登録商標))、並ガラス(ソーダ石灰ガラス)、生体活性ガラス、透明結晶化ガラス、乳色結晶化ガラスなどが挙げられるがこれらに限定されない。
構造体が金属製の場合、熱処理時に酸化剤や酸化雰囲気の作用により金属表面に緻密な酸化膜が形成され、内部へのさらなる酸化反応が防止されるため強度の低下、脆化を抑制できる。また、酸化剤や酸化雰囲気が溶液組成物中の有機成分の燃焼を促進するため純度の高い該化合物で被覆できる。構造体がセラミックやガラスの場合、前記と同様に酸化剤や酸化雰囲気が溶液組成物中の有機成分の燃焼を促進するため純度の高い該化合物で被覆できる。
本発明におけるリン酸カルシウム化合物で被膜する溶液組成物の合成方法は、特許文献2の合成方法を参考にした。酢酸カルシウム二水和物とEDTAを反応させて得たEDTA−カルシウム塩二水和物とジブチルアミンをエタノール中で反応させ溶解した溶液に、リン酸のジブチルアミン塩を所定の比率で添加して合成した。アパタイトを形成する場合、カルシウム:リン=1.67:1の物質量比になるように添加した溶液組成物を用いて構造体の塗布に用いた。
この溶液組成物の濃度は、カルシウム濃度として0.01〜10mmol/gが適当である。より好ましくは、0.05〜5mmol/gである。これより濃度が低いと、1回に形成される該化合物の被膜の厚さが薄くなり、重ね塗りが必要になるため高コスト化につながる。これより濃度が高いと溶液の粘度が高くなり均一に塗布することが困難になる。また、熱処理時に該化合物中に黒色物質が多量に残存する場合もある。
酸化処理工程において、分子プレカーサー法の溶液組成物に加える酸化剤の量は30%過酸化水素水の場合、0.1〜50wt%が適当である。より好ましくは、1〜30wt%である。これより少ない場合は、強度の低下や脆化が起こるだけでなく、溶液組成物に含まれる有機成分を酸化させるために十分でない。これより多い場合は、該化合物形成用の溶液組成物の割合が小さくなるばかりか、溶液組成物の安定性が低下したりする場合がある。
熱処理時の雰囲気は、酸素、オゾンから選ばれる1種以上の酸化性の気体を30〜100%含む雰囲気が適当である。より好ましくは、50〜100%である。これより小さい場合は空気雰囲気中とあまり差がない。
酸素およびオゾンの雰囲気中とは、熱処理時に炉の中に別途気体が導入されることを意味する。一例を挙げると、雰囲気を変更できる管状炉(容積4L)の中でφ13mm×1.5mmの気孔率87%のチタンウェブ3〜5個を熱処理する場合、0.01〜10L/分が適当である、より好ましくは0.05〜5L/分の流量で前記の酸化性気体を導入するのが望ましい。炉の容積や、構造体の量により流量は適宜調整する。加熱処理前に前記雰囲気でパージしても良い。
塗布方法としては、ディップ法、スプレーコート法、流し塗り、カーテンコート法、エアレススプレーコート法、減圧含浸、加圧含浸、刷毛塗りが挙げられるがこれらに限定されない。これらの方法によって材料表面に塗布し、室温〜300℃の温度で乾燥する。
塗布した構造体の熱処理温度は、溶液組成物中の有機物の燃焼する温度以上、該化合物の融点以下、構造体の耐熱温度以下の範囲が望ましい。具体的には300〜1100℃の範囲で、より好ましくは400〜1000℃の範囲が望ましい。構造体の材質がチタン材の場合、およそ880℃以上の温度でα型からβ型への相転移により、脆化につながる結晶粒の粗大化が起こり、強度が低下する。このため金属製の構造体の場合、相転移による強度劣化が起きにくい400〜800℃が望ましい。構造体の材質がセラミックスやガラスの場合、高温側の温度上限は物性劣化が起きない温度以下であれば特に限定されない。この温度範囲より低温で熱処理すると、熱処理が不十分であり、場合により剥離することがある。
熱処理方法は、塗布、乾燥した構造体を室温から徐々に、または急激に所定温度まで高めても良い。熱処理時間は当業者が構造体の材質の種類や塗布方法により適宜選択して設定することができる。例えば、10秒〜10時間が適当である、より好ましくは1分〜5時間で行うことができる。前記の熱処理は必要により繰り返しても良い。
溶液組成物の高濃度化によっても、または同一溶液を用いた塗布、熱処理の操作を繰り返して積層して、厚膜化も可能である。当業者が溶液組成物の濃度、塗布方法、塗布条件を選択することにより、任意の膜厚の該化合物で被覆された構造体を得られる。前記の塗布、乾燥、熱処理条件は例示であり、これらに限定されない。
前記の加熱処理後に、被覆した膜が薄灰色〜黒色を呈す場合は、必要に応じて酸化処理を行う。例えば、過酸化水素水やオゾン水の中に10秒〜10時間、より好ましくは1分〜5時間浸漬して酸化処理を行う。必要により煮沸状態の中に浸漬しても良い。また、浸漬後に100〜800℃、より好ましくは300〜700℃の温度で、10秒〜5時間、好ましくは1分〜3時間熱処理を行っても良い。これらの乾燥処理は繰り返しても良い。前記の加熱処理後の酸化処理条件は例示であり、これらに限定されない。
本発明により得た該化合物で被覆された構造体は、そのまま使用しても良いし、更にコラーゲンや細胞などの有機質の膜や粒子を付与して再生医療用の材料として使用することや、銀やチタンなどの無機物の膜や粒子を付与して、吸着材や触媒材として使用することも可能である。この場合の膜の種類、工法は問わない。また、前記使用方法については例示であり、これらに限定されない。本発明は前記の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例1は溶液組成物の合成に関するものである。
リン酸カルシウム化合物を作成する分子プレカーサー法の溶液組成物は、カルシア形成用の溶液組成物にリン酸のジブチルアミン塩を添加して合成した。
カルシア形成用の溶液組成物は、特許文献2の合成方法を参考にした。1000mLのビーカーに900mLのイオン交換水をホットスターラで加熱撹拌しながら、エチレンジアミンN,N,N’,N’四酢酸20.5gを加えて懸濁溶液を得た。これに酢酸カルシウム一水和物12.4gを添加して完全に溶解した後、約60分間加熱撹拌した。その後、冷却して析出した結晶をろ過して、水洗、エタノール洗浄、エーテル洗浄し、17.3gの白色結晶を得た。得られた結晶は元素分析、IR、NMRによってエチレンジアミンN,N,N’,N’四酢酸カルシウム塩の二水和物であることが確認できた。このエチレンジアミンN,N,N’,N’四酢酸カルシウム二水和物10.1gとジブチルアミン8.1gとエタノール90.6gを300mLの三角フラスコの中で8時間加熱還流を行いカルシウムイオン濃度0.254mmol/gの無色透明のカルシア形成用の溶液組成物を得た。
リン酸のジブチルアミン塩は以下の方法で合成した。100mL三角フラスコに、約10gのエタノールで希釈した85%リン酸3.5gを入れ、撹拌しながら、約10gのエタノールで希釈したジブチルアミン11.6gを滴下した。得られた溶液は、約5分間加熱還流を行った後、室温まで放冷して無色透明の溶液を得た。この溶液を減圧濃縮して析出した結晶を回収したところ5.1gの白色結晶を得た。得られた白色結晶は、元素分析、IR、NMRより二リン酸ジブチルアミン塩の二水和物であることが確認できた。
先ほど合成したカルシア形成用の溶液組成物に、カルシウムイオンとリン酸イオンの物質量比(Ca2+/PO 3−)が1.67になるように二リン酸ジブチルアミン塩3.76gを添加した。この溶液を約10分間加熱還流行った後、室温まで放冷してリン酸カルシウム化合物形成用の溶液組成物を得た。以下の実施例はこの溶液組成物を使用した。
直径12mm、厚さ3mm、気孔率87%、線経60μmのチタン繊維の集合体からなるチタンウェブを実施例1で合成した溶液組成物中に浸漬してディップコートした。容積4Lの管状炉の中に塗布したチタンウェブを置き、酸素(工業用酸素:純度99%以上)でパージした後、100mL/minの流量で室温から600℃まで昇温してから2時間熱処理して膜を形成した。熱処理後の外観は酸素雰囲気により有機成分の燃焼が促進されて白色を帯びていた。また、脱落する粉体は観察されず、脆化も起きなかった。被覆前のチタンウェブの表面状態を図1、被覆後のチタンウェブの表面状態を図2に示す。低倍率では明瞭な差異は観察されないが、高倍率ではチタン繊維全面が被覆されていること観察でき、明らかな差異を確認できた。
製膜した構造体をエポキシ樹脂に包埋して直径方向に割断した。割断面をEDX測定にて断面観察したところ、チタンウェブの端部、中心部ともに繊維周囲にはカルシウムとリンの元素の存在が確認でき、全て被覆されていることが分かった。
同じ材質の板に実施例1の溶液組成物を塗布して、マッフル炉中で600℃2時間熱処理した後、前記管状炉にて酸素雰囲気中600℃1時間熱処理した膜のXRD測定を行った。図3に逆三角印で示されるピークからヒドロキシアパタイト(HA)の結晶構造であることが分かった。また、IR測定から炭酸基が観察されたことから、形成した膜は炭酸含有アパタイト(Carbonate Apatite(CA))膜であることが分かった。
実施例1の液に30%過酸化水素水を30wt%添加した溶液組成物を調製して、実施例2と同様の方法でチタンウェブに塗布した後、600℃に予熱したマッフル炉の中に入れて、2時間空気雰囲気中で熱処理を行った。熱処理後の外観は実施例2と同じく、過酸化水素により有機成分の燃焼が促進されて白色を帯びていた。また、脱落する粉体は観察されず、脆化も起こらなかった。同様の分析を行ったところ、ヒドロキシアパタイトが生成したことが分かった。割断面の分析から、チタンウェブの端部、中心部とも全て被覆されていることが分かった。
直径5mm、厚さ2mm、気候率80%の三リン酸カルシウム多孔体に実施例2と同様の方法で溶液組成物を塗布した後、酸素雰囲気中600℃で4時間熱処理を行った。熱処理後の外観は、溶液組成物に由来する炭素成分が吸着して灰色を呈していた。この多孔体を30%過酸化水素水の中で30分間煮沸した後、600℃に予熱したマッフル炉の中に30分間空気雰囲気中で熱処理することにより、灰色の成分は燃焼して白色の構造体を得た。
以上から、3次元の空隙形状を有する構造体上にリン酸カルシウム化合物を全面または部分的に被覆する処理方法と強度の低下、変形、脆化を抑制した該構造体の製造方法を発見した。したがって、本発明の方法により、高い吸着性、高い生体親和性を持つ該化合物で被覆したカラムクロマト充填材、触媒担持材、再生医療用細胞担体材(スキャフォールド)、細胞培養材、骨補填材、骨再建材、薬剤スクリーニング基材を製造できる。
本発明は、分子プレカーサー法に代表されるウェットプロセスにて3次元の空隙形状を有する構造体上へのリン酸カルシウム化合物の製膜技術に関する。
大掛かりな設備を必要とせず、構造体の強度の低下、変形、脆化を抑制し、全面または部分的に該化合物を被覆可能なため、カラムクロマト充填材や触媒担持材に代表される工業分野の製品、再生医療用細胞担体材(スキャフォールド)、細胞培養材、骨補填材、骨再建材、薬剤スクリーニング基材に代表される医療分野の製品における用途の拡大が見込まれる。

Claims (6)

  1. カラムクロマト充填材、触媒担持材、再生医療用細胞担体材(スキャフォールド)、細胞培養材、骨補填材、骨再建材、薬剤スクリーニング基材に用いられる3次元の空隙形状を有する構造体に分子プレカーサー法によりリン酸カルシウム化合物を形成できる溶液組成物を塗布した後、熱処理して該化合物を形成する際に、(A)酸化性雰囲気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(B)酸化剤を0.1wt%〜50wt%添加した溶液組成物を塗布した構造体を、酸化性雰囲気中または大気中300〜1100℃で加熱する酸化処理、(C)前記いずれかの加熱酸化処理後に酸化剤に浸漬もしくは浸漬後に100〜800℃で熱処理する酸化処理、から選ばれる1つ以上の酸化処理工程により、構造体の強度の低下、変形、脆化を抑制し、該化合物を全面または部分的に被覆処理することを特徴とする構造体の製造方法。
  2. 構造体の形状は、繊維集合(不織布)構造、メッシュ状構造、スポンジ状構造、ビーズ構造、カラム構造のいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
  3. 構造体が金属、セラミックス、ガラスのいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
  4. 被覆するリン酸カルシウム化合物が、アモルファスまたは結晶性で、組成が単一か、または、それらの混合物からなることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
  5. 酸化剤は、過酸化水素(水)、オゾン(水)から選ばれる1種以上の酸化剤であることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
  6. 熱処理時の酸化性雰囲気は、酸素、オゾンから選ばれる1種以上の酸化性の気体を30〜100%含む雰囲気であることを特徴とする請求項1に記載の構造体の製造方法。
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