以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
本実施形態における熱物性測定装置Dは、測定対象の試料における所定の熱物性の値(熱物性値)を測定する装置である。この熱物性測定装置Dは、前記試料を加熱するために、互いに照射径の異なる複数の加熱光のそれぞれを複数の加熱用照射部によって前記試料に照射するとともに、前記試料に所定の検出光を検出光照射部によって照射する。そして、この熱物性測定装置Dは、前記試料で反射された前記検出光の反射光を反射光検出部によって検出し、熱物性演算部によって、前記反射光検出部で検出された、前記複数の加熱光のそれぞれに対応する複数の検出結果に基づいて前記試料の熱物性値を求めるものである。このように本実施形態の熱物性測定装置Dおよびこれに実装された熱物性測定方法は、照射径ごとに専用の複数の加熱用照射部を備えるので、測定時間をより短縮することができ、そして、調節誤差が生じないので、より高精度な測定が可能となる。このような熱物性測定装置Dおよびこれに実装された熱物性測定方法の実施の一形態を以下により詳細に説明する。
まず、実施形態における熱物性測定装置の構成について説明する。図1は、実施形態における熱物性測定装置の構成を示すブロック図である。本実施形態における熱物性測定装置Dは、例えば、図1に示すように、検出用光源部1と、ダイクロイックミラー2と、ハーフミラー3と、光学系4と、反射鏡5と、ステージ部6と、バンドパスフィルタ7と、複数の変調部8と、駆動部9と、受光部10と、複数の加熱用光源部11と、変調信号生成部12と、検出部13と、出力部14と、入力部15と、演算制御部16と、記憶部17とを備えて構成される。
複数の加熱用光源部11は、それぞれ、演算制御部16の制御に従って、測定対象の試料SMを加熱するための光である加熱光を試料SMに照射する装置である。複数の加熱用光源部11は、それぞれ、例えばランプを備えた光源装置等であってもよいが、本実施形態では、試料SMを加熱する加熱用であることから、比較的大きな出力が得られる、例えばレーザ光を連続光(CW光)で発光するYAGレーザ光源装置やアルゴンレーザ光源装置等を備えて構成される。本実施形態では、複数の加熱用光源部11は、それぞれ、例えば、波長532nmのYAGレーザ光をCW光で放射するYAGレーザ光源装置を備えて構成される。複数の加熱用光源部11のそれぞれから射出された各加熱光は、それぞれ、複数の変調部8に入射される。本実施形態では、互いに異なる2個の照射径で試料SMを加熱するために、複数の加熱用光源部11は、2個の第1および第2加熱用光源部11−1、11−2を備えている。
試料SMは、加熱光によって加熱され、後述の検出光を反射可能な物質であれば、任意の物質であってよい。本実施形態の熱物性測定装置Dは、スポット的に加熱する熱反射法を用いているので、微小領域の熱物性を測定することに好適である。このため、試料SMとして例えば金属や合金や半導体の薄膜等が好適である。なお、試料SMには、熱浸透率bの比較対象材となる膜が測定表面上に形成されてもよい。本実施形態では、例えば、このような膜としてモリブデン膜が試料SMの測定表面上に形成される。このモリブデン膜は、後述の検出光を効率的に反射するようにも機能する。試料SMは、試料SMを載置するための装置であるステージ部6上に配置される。
複数の変調部8は、それぞれ、駆動部9を介して変調信号生成部12からの変調信号に従って、光源部11から入射された加熱光の強度を周期的に変調するための装置である。複数の変調部8は、それぞれ、例えば、入射光の光強度を変調する種々の光変調器を備えて構成される。例えば、このような光変調器は、音響光学効果を利用した音響光学変調器、磁気光学効果を利用した磁気光学変調器、フランツ・ケルディッシュ効果(Franz-Keldysh effect)や量子閉込めシュタルク効果(quantum-confined Stark effect )を利用した電界吸収型光変調器および電気光学効果を利用した電気光学変調器等が挙げられる。複数の変調部8は、複数の加熱用光源部11の個数に対応した個数であり、本実施形態では、複数の加熱用光源部11が2個であることに応じ、第1および第2変調部8−1、8−2を備えている。第1加熱用光源部11−1から射出された第1加熱光は、第1変調部8−1に入射され、第2加熱用光源部11−2から射出された第2加熱光は、第2変調部8−2に入射される。そして、本実施形態では、第1変調部8−1から射出された変調された第1加熱光(第1強度変調加熱光)は、ダイクロイックミラー2に入射され、第2変調部8−2から射出された変調された第2加熱光(第2強度変調加熱光)は、反射鏡5に入射される。
変調信号生成部12は、所定の周波数(例えば、1kHz〜数MHz程度)の変調信号を生成するための装置であり、例えば、発振器等を備えて構成される。変調信号生成部12は、この生成した変調信号を駆動部9および検出部13へそれぞれ出力する。
駆動部9は、複数の変調部8のそれぞれを駆動するためのドライバ回路であり、変調信号生成部12から入力された変調信号の交流を加熱光の変調に必要なパワーに処理して複数の変調部8のそれぞれに出力する。したがって、複数の変調部8のそれぞれでは、複数の光源部11から射出された各加熱光は、それぞれ、この変調信号に同期するように強度変調される。
検出用光源部1は、演算制御部16の制御に従って、試料SMに所定の検出光を照射する装置である。検出光(プローブ光)は、加熱光の照射によって生じる試料SMの温度変化を反射率変化として観測するための光であることから、この検出光によって与えられる試料SMの温度変化が測定結果に与える影響を無視することができる光であることが好ましい。このため、検出用光源部1は、比較的小出力の例えばレーザ光を発光する半導体レーザ等を備えて構成される。本実施形態では、検出用光源部1は、例えば、波長635nmのレーザ光を放射する半導体レーザを備えて構成される。なお、加熱光の波長と、検出光の波長とは、例えば後述のバンドパスフィルタ7によって、分離可能とするために、上記のように異なる波長であることが好ましい。検出用光源部1から射出された検出光は、本実施形態では、ダイクロイックミラー2に入射される。
ダイクロイックミラー2は、特定波長の光を反射するとともに、その特定波長を除く他の波長の光を透過する光学素子であり、反射鏡5は、入射光を反射する光学素子である。これらダイクロイックミラー2および反射鏡5は、各加熱光および検出光を試料SMに照射するために、それらの光路を調整する照射光学系である。したがって、このような照射光学系には、試料SMに対する検出用光源部1および複数の変調部8の各配置位置に応じて適宜な配置で適宜な光学素子が用いられる。本実施形態では、図1に示すように、水平な載置台を備えるステージ部6の法線方向にその光軸が一致するように検出用光源部1が配置され、このステージ部6の法線方向に直交する水平方向に各光軸が一致するとともに各光軸が互いに平行となるような空間的に異なる各位置で複数の変調部8(第1および第2変調部8−1、8−2)が配置されている。このため、検出光を試料SMに導くとともに第1加熱光を試料SMに導くために、ダイクロイックミラー2は、検出用光源部1の光軸に対し45°の傾きであって第1変調部8−1の光軸に対し45°の傾きとなるように配置されており、前記特定波長が検出用光源部1から放射された検出光の波長に設定される。したがって、ダイクロイックミラー2は、第1変調部8−1から射出された第1強度変調加熱光を反射することによって、前記第1強度変調加熱光を試料SMへ向けてその光路を約90度曲げるとともに、検出用光源部1から射出された検出光をそのまま透過させて試料SMへ向けて進行させる。このようにダイクロイックミラー2によって検出光と第1強度変調加熱光とは、同一の光路を進行して試料SMに照射されるので、検出光の中心位置と第1強度変調加熱光の中心位置とが略一致するように、検出光と第1強度変調加熱光とは、試料SMに照射される。そして、反射鏡5は、第2変調部8−2から射出された第2強度変調加熱光を反射することによって、第2強度変調加熱光を試料SMへ向けてその光路を曲げる。ここで、反射鏡5は、試料SMにおけるこれら検出光の中心位置と第1強度変調加熱光の中心位置とに第2強度変調加熱光の中心位置が略一致して、第2変調部8−2から射出された第2強度変調加熱光が試料SMに照射されるように、配置される。
このような複数の光源部11、複数の変調部8、照射光学系(図1に示す例ではダイクロイックミラー2および反射鏡5)および演算制御部16を備えることによって、熱物性測定装置Dは、測定対象の試料SMを加熱するために、複数の加熱光を前記試料SMにそれぞれ照射することができる。そして、本実施形態では、これら複数の加熱光を互いに異なる照射径φで照射することができるようにさらに入射光の径を固定的に変えて射出する照射径変換光学系を備えている。この照射径変換光学系として、本実施形態では、ダイクロイックミラー2とステージ部6(試料SM)との間に、光軸を一致させてレンズ4が設けられている。このレンズ4は、入射光を集光する集光レンズである。レンズ4とステージ部6との間の距離は、第1加熱光(本実施形態では前記第1強度変調加熱光)の照射径φ1が所望の径となる長さである。レンズ4とステージ部6との間の前記距離がレンズ4の焦点深度の範囲でレンズ4の略焦点距離である場合には、第1加熱光の照射径φ1は、レンズ4の光学性能に応じた最も小さい径(最小径)となり、レンズ4とステージ部6との間の前記距離がレンズ4の略焦点距離から乖離するに従って、第1加熱光の照射径φ1は、前記最小径から大きくなる。第1加熱光の第1照射径φ1が前記所望の径となる長さの前記距離でレンズ4は、ステージ部6(試料SM)に対して固定的に配置されている。このように複数の加熱光は、照射径変換光学系によって互いに異なる照射径φとされている。本実施形態では、第1および第2加熱光は、レンズ4によって互いに異なる照射径φとされる。
より具体的には、第1加熱用光源部11−1から放射された所定波長の第1加熱光は、第1変調部8−1に入射され、駆動部9を介して変調信号生成部12で生成された変調信号に同期した変調周波数fで強度変調され、この強度変調が施された変調周波数fのパルス状の第1加熱光(第1強度変調加熱光)は、ダイクロイックミラー2によってその光路が約90度曲げられ、後述のハーフミラー3を通過し、レンズ4で所定の照射径(第1照射径)φ1となって、試料SMへ照射される。一方、第2加熱用光源部11−2から放射された所定波長の第2加熱光は、第2変調部8−2に入射され、駆動部9を介して変調信号生成部12で生成された変調信号に同期した変調周波数fで強度変調され、この強度変調が施された変調周波数fのパルス状の第2加熱光(第2強度変調加熱光)は、反射鏡5によってその光路が所定角度曲げられ、第1照射径φ1と異なる所定の照射径(第2照射径)φ2で試料SMへ照射される。本実施形態では、第1加熱光(第1強度変調加熱光)の第1照射径φ1は、第2加熱光(第2強度変調加熱光)の第2照射径φ2よりも小さく設定されている。また、検出用光源部1から放射された所定波長の検出光は、ダイクロイックミラー2およびハーフミラー3を通過し、レンズ4で所定の照射径となって、試料SMへ照射される。そして、検出光は、試料SMに照射されると、第1加熱光または第2加熱光による試料SMの温度に応じた反射率で反射される。
このように複数の光源部11、複数の変調部8、照射光学系(図1に示す例ではダイクロイックミラー2および反射鏡5)、照射径変換光学系(図1に示す例ではレンズ4)および演算制御部16は、測定対象の試料SMを加熱するために、互いに照射径φの異なる複数の加熱光を前記試料SMにそれぞれ照射する複数の加熱用照射部の一例に相当する。図1に示す例では、第1光源部11−1、第1変調部8−1、ダイクロイックミラー2、レンズ4および演算制御部16は、測定対象の試料SMを加熱するために、所定の第1照射径φ1で第1加熱光を前記試料SMに照射する第1加熱用照射部の一例であり、第2光源部11−2、第2変調部8−2、反射鏡5および演算制御部16は、測定対象の試料SMを加熱するために、前記第1照射径φ1とは異なる第2照射径φ2(>φ1)で第2加熱光を前記試料SMに照射する第2加熱用照射部の一例である。そして、検出用光源部1は、前記測定対象の試料SMに所定の検出光を照射する検出光照射部の一例である。
なお、上述では、互いに照射径φの異なる2個の加熱光で試料SMを照射するために、2個の第1および第2加熱用光源部11−1、11−2が用いられたが、1個の加熱用光源部11とこの加熱用光源部から射出された加熱光を第1および第2変調部8−1、8−2のいずれか一方へ切り換えて射出する光スイッチが用いられてもよい。あるいは、2個の第1および第2加熱用光源部11−1、11−2と2個の第1および第2変調部8−1、8−2が用いられたが、1個の加熱用光源部11および変調部と、変調部から射出された加熱光(強度変調加熱光)をダイクロイックミラー2および反射鏡5のいずれか一方へ切り換えて射出する光スイッチが用いられてもよい。また、上述では、レンズ4によって照射径φが所望の径に変換され、第1および第2加熱光の各照射径φ1、φ2が異なるように設定されたが、第1変調部8−1の射出径と第2変調部8−2の射出径が異なるように構成され、第1および第2加熱光の各照射径φ1、φ2が異なるように設定されてもよい。
バンドパスフィルタ7は、所定の波長範囲の光を透過するとともに前記所定の波長範囲を除く波長の光を遮断する光学素子である。バンドパスフィルタ7の前記所定の波長範囲は、検出光の反射光の波長を含むように設定され、好ましくは、その中心波長が検出光の反射光の波長に一致するように設定される。
受光部10は、入射光の光強度に応じた大きさの電気信号(検出信号)を出力する光電変換素子であり、例えば、シリコンホトダイオードを備えて構成される。
ハーフミラー3は、入射光の一部を反射するとともに残余の入射光をそのまま透過する光学素子である。検出用光源部1から放射されて検出光は、上述したようにステージ部6の法線方向から入射するために、このステージ部6の載置台上に配置された試料SMで反射した検出光の反射光は、その大部分がその正反射方向である前記法線方向に進む。すなわち、検出光の反射光の大部分は、入射光路を逆に辿って進む。ハーフミラー3は、このような入射光路を逆に辿って進む反射光を、バンドパスフィルタ7を介して受光部10へ導くために、その光路を調整する受光光学系である。したがって、このような受光光学系は、前記検出光の反射光における光路および受光部10の配置位置に応じて適宜な配置で適宜な光学素子が用いられる。本実施形態では、図1に示すように、前記法線方向に直交する水平方向にその光軸が一致するように受光部10が配置されている。このため、前記検出光の反射光をバンドパスフィルタ7を介して受光部10に導くために、ハーフミラー3は、ダイクロイックミラー2とレンズ4との間であって検出用光源部1の光軸(前記法線方向)に対し45°の傾きとなるように配置されている。このようなハーフミラー3は、前記検出光の反射光の一部をそのまま透過させると共に、前記検出光の反射光の残余を反射することによって、前記残余の反射光を受光部10(バンドパスフィルタ7)へ向けてその光路を約90度曲げる。このハーフミラー3で光路が曲げられた検出光の反射光は、バンドパスフィルタ7に入射し、バンドパスフィルタ7によってノイズ光が除去されて受光部10に入射し、光電変換によって検出光の反射光の強度に応じた信号レベルの電気信号に変換され、前記電気信号は、受光部10から検出部13へ出力される。なお、ダイクロイックミラー2を介した第1加熱光および検出光は、このハーフミラー3に入射され、ハーフミラー3でその一部がそのまま透過してレンズ4を介して試料SMに照射され、前記一部を除く残余が反射される。
検出部13は、演算制御部16に接続され、前記検出光の反射光における光強度に応じた電気信号(検出信号)から前記変調信号に同期した信号成分を検出し、前記変調信号に対する前記反射光の位相遅れδを検出する装置である。検出部13は、例えば、本実施形態では、ロックインアンプを備えて構成される。このロックインアンプには、変調信号生成部12で生成された前記変調信号が入力され、この変調信号を参照信号として、受光部10によって検出された前記反射波の検出信号(電気信号)から、前記変調信号に同期した信号成分の振幅が検出され、前記変調信号に対する位相遅れδが検出される。この検出結果は、検出部13から演算制御部16に入力される。なお、検出部13は、必要に応じて検出結果の信号を増幅する増幅器を備えてもよい。
このようなハーフミラー3、バンドパスフィルタ7、受光部10、検出部13、変調信号生成部12および演算制御部16を備えることによって、熱物性測定装置Dは、前記測定対象の試料SMで反射された前記検出光の反射光を検出することができ、ハーフミラー3、バンドパスフィルタ7、受光部10、検出部13、変調信号生成部12および演算制御部16は、反射光検出部の一例である。
入力部15は、演算制御部16に接続され、外部から当該熱物性測定装置Dにコマンド(命令)やデータ等を入力するための装置であり、例えばタッチパネルやキーボード等である。出力部14は、演算制御部16に接続され、入力部15から入力されたコマンドやデータおよび演算制御部16の演算結果(例えば熱物性値等)等を出力するための装置であり、例えばCRTディスプレイやLCD(液晶ディスプレイ)や有機ELディスプレイ等のディスプレイおよびプリンタ等の印刷装置等である。
記憶部17は、熱物性測定装置Dの各部を当該機能に応じて制御するための制御プログラムや熱物性値を検出部13の検出結果に基づいて求める熱物性値演算プログラム等の各種の所定のプログラム、および、前記所定のプログラムの実行に必要なデータ等の各種の所定のデータ等を記憶する、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、および、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる後述のCPUのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)、ならびに、これらの周辺回路を備えて構成される。記憶部17は、機能的に、基礎データ記憶部171を備えている。
基礎データ記憶部171は、前記反射光の位相遅れδと熱浸透率bとの対応関係を予め記憶するものである。この前記反射光の位相遅れδと熱浸透率bとの対応関係は、例えば、複数のサンプルを予め実測することによって予め求められ、基礎データ記憶部171に予め記憶される。
なお、基礎データ記憶部171には、例えば、予め求めた前記対応関係のうち、複数のサンプリング点について、前記反射光の位相遅れδと熱浸透率bとの組がそれぞれ求められ、これら求められた複数の組が前記対応関係として記憶されてもよく、また例えば、前記対応関係を表す曲線の式があるいは前記対応関係を表す曲線を近似した近似式が前記対応関係として記憶されてもよい。
演算制御部16は、熱物性測定装置Dの各部を当該機能に応じて制御する回路であり、そして、測定対象の試料SMにおける所定の熱物性値を検出部13の検出結果に基づいて求めるものである。演算制御部16は、例えば、記憶部17に記憶されている所定のプログラムを読み出して実行することによって所定の制御処理や所定の演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)およびこの周辺回路を備えて構成される。演算制御部16は、機能的に、検出用光源制御部161と、加熱用光源制御部162と、熱浸透率演算部163と、熱伝導率演算部164とを備えている。
検出用光源制御部161は、検出用光源部1の動作を制御するものであり、加熱用光源制御部162は、複数の加熱用光源部11における各動作をそれぞれ制御するものである。熱浸透率演算部163は、検出部13で検出された前記反射光の位相遅れδに基づいて、基礎データ記憶部171に予め記憶されている前記反射光の位相遅れδと熱浸透率bとの対応関係を参照することで、熱浸透率bを求めるものである。熱伝導率演算部164は、検出部13で検出された検出結果であって前記熱浸透率演算部143で熱浸透率bを求める場合に用いた検出結果と異なる検出結果および前記熱浸透率演算部143で求めた前記熱浸透率bに基づいて熱伝導率kおよび体積熱容量Cvのうちの少なくとも一方を求めるものである。例えば、所定の第2照射径φ2が第1照射径φ1より大きい場合(φ2>φ1)に、第2照射径φ2の第2加熱光を試料SMに照射した場合において、検出光を前記試料SMにさらに照射することによって得られた反射光を検出部13で検出した検出結果(第2位相遅れδ2)に基づいて、熱浸透率演算部163は、熱浸透率b2を求める。そして、前記第2照射径φ2と異なる第1照射径φ1の第1加熱光を試料SMに照射した場合において、検出光を前記試料SMにさらに照射することによって得られた反射光を検出部13で検出した検出結果(第1位相遅れδ1)および前記熱浸透率演算部143によって求められた熱浸透率b2に基づいて、熱伝導率演算部164は、熱伝導率kおよび体積熱容量Cvのうちの少なくとも一方を求める。
この熱伝導率kの導出について以下により詳細に説明する。図2は、第1例として、加熱光の照射径と位相差との関係を示す図である。図3は、第1例として、加熱光の照射径と位相差との関係のシミュレーション結果および測定結果を示す図である。図4は、第2例として、加熱光の照射径と位相差との関係のシミュレーション結果を示す図である。図5は、第2例として、加熱光の照射径と位相差との関係のシミュレーション結果を示す図である。図2ないし図5の横軸は、μm単位で表す加熱光の照射径φであり、それら縦軸は、度(°)単位で表す位相差δ(前記変調信号に対する反射光の位相遅れδ)である。また、図3における◆は、測定値であり、■は、熱伝導率kが367である場合のシミュレーション結果であり、●は、熱伝導率kが404である場合のシミュレーション結果であり、そして、▲は、熱伝導率kが437である場合のシミュレーション結果である。なお、図3は、横軸を対比すると理解されるが、図2の一部拡大図でもある。また、図5は、横軸を対比すると理解されるが、図4の一部拡大図でもある。
試料SMに加熱光が照射されると、前記加熱光によって試料SMの温度が上昇する。そして、前記加熱光の照射が停止されると、放熱によって試料SMの温度が降下する。反射率は、一般に、試料SMの温度上昇に伴って増大し、その温度降下に伴って減少する。したがって、試料SMに加熱光が照射されると、前記加熱光によって試料SMの反射率が増大し、前記検出光の反射光における強度も上昇する(増大する)。そして、前記加熱光の照射が停止されると、放熱によって試料SMの反射率が減少し、前記検出光の反射光における強度も降下する(減少する)。このような加熱の有無による試料SMの温度変化とこれに起因する反射率変化との間には、試料SMの熱の伝わる程度に応じたタイムラグが生じる。すなわち、熱の伝わる程度が大きければ(熱が伝わり易ければ)、前記タイムラグは、相対的に、小さくなり、熱の伝わる程度が小さければ(熱が伝わり難ければ)、前記タイムラグは、相対的に、大きくなる。本実施形態の熱物性測定装置Dは、前記熱の伝わる程度を上記式1で定義される熱浸透率bとし、前記タイムラグを位相遅れ(位相差)δとして観測している。したがって、熱浸透率bと位相遅れδとの間には、熱浸透率bが大きければ位相遅れδは、小さく、逆に熱浸透率bが小さければ位相遅れδは、大きくなるという関係がある。本実施形態の熱物性測定装置Dでは、このような熱浸透率bと位相遅れδとの間の対応関係が、上述したように、複数のサンプルを予め実測することによって予め求められ、基礎データ記憶部171に記憶され、そして、熱浸透率演算部163は、検出部13で検出された前記反射光の位相遅れδに基づいて、基礎データ記憶部171に予め記憶されている前記反射光の位相遅れδと熱浸透率bとの間の前記対応関係を参照することで、熱浸透率bを求めている。
一方、熱浸透率bは、上記式1で定義されるので、熱伝導率kや体積熱容量Cvの各値が異なっても同一値となるケースが生じる。すなわち、熱浸透率bと熱伝導率kおよび体積熱容量Cvの組みとは、一対多対応であり、熱浸透率bの値が同一であっても熱伝導率kの値および体積熱容量Cvの値の組み合わせは、無数に存在する。したがって、熱浸透率bだけでは、上述したように、これら熱伝導率kおよび体積熱容量Cvを区別することができない。
ここで、図2ないし図5を参照すると、位相遅れ(位相差)δは、加熱光の照射径φに依存していることが理解される。すなわち、熱浸透率bは、加熱光の照射径φに依存していることが理解される。位相遅れδは、加熱光の照射径φの増大に従って大きくなり、やがて加熱光の照射径φが増大しても変わらないで所定の一定値となる。これは、加熱光の照射径φが相対的に大きい場合、すなわち、加熱光の照射径φが検出光の照射径に較べて充分に大きい場合には、相対的に広い面積で加熱光が試料SMに照射されるため、試料SMの体積熱容量Cvが支配的に位相遅れδに影響を与える一方、加熱光の照射径φが相対的に小さい場合、すなわち、加熱光の照射径φが検出光の照射径に較べて大差ない場合には、加熱光と検出光とが大差ない面積で加熱光が試料SMに照射されるため、試料SMの熱伝導率kが支配的に位相遅れδに影響を与えるためであると、考えられる。このため、照射径φが相対的に大きい場合において、同一の照射径φに対し、位相遅れδは、体積熱容量Cvに依存し、前記所定の一定値は、体積熱容量Cvに依存することが分かる。そして、照射径φが相対的に小さい場合において、同一の照射径φに対し、位相遅れδは、熱伝導率kに依存することが分かる。したがって、試料SMにおける前記反射光の位相遅れδと前記加熱光の照射径φとの間の前記対応関係で、位相遅れδ(熱浸透率b)が加熱光の照射径φの増大に従って変化する範囲に対応する照射径(変化範囲照射径)φrと、位相遅れδ(熱浸透率b)が加熱光の照射径φの増大に従って変化しないで所定の一定値となる範囲に対応する照射径(一定範囲照射径)φcとで、位相遅れδを測定することによって、これら熱伝導率kおよび体積熱容量Cvを区別することができる。図4および図5には、熱伝導率kが比較的小さいガラス基板の表面にモリブデン膜を形成した試料SMをシミュレーションしたシミュレーション結果が示されている。この図4および図5を参照すると分かるように、一定範囲照射径φcは、約40μm以上であればよい。また、同様なシミュレーションにより、一定範囲照射径φcは、例えば、熱伝導率kの比較的大きな銅(Cu)の場合に約100μm以上であればよい。したがって、熱伝導率kが比較的大きな試料SMから比較的小さな試料SMまで測定可能とする観点から、好ましくは、一定範囲照射径φcは、約100μm以上であって(φc≧100μm)、変化範囲照射径φrは、約40μm以下である(φr≦40μm)。また、変化範囲照射径φrは、より高精度な測定結果を得る観点から、小さいほどよい。本実施形態の熱物性測定装置Dでは、熱伝導率演算部164は、検出部13で検出された検出結果であって前記熱浸透率演算部143で熱浸透率bを求める場合に用いた検出結果(例えば第2照射径φ2での第2位相遅れδ2)と異なる検出結果(この例では第1照射径φ1での第1位相遅れδ1)および前記熱浸透率演算部143で求めた前記熱浸透率b(この例では第2照射径φ2での熱浸透率b2)に基づいて熱伝導率kおよび体積熱容量Cvのうちの少なくとも一方を求めている。そして、第2照射径φ2は、一定範囲照射径φcに設定され、第1照射径φ1は、変化範囲照射径φrに設定されている。
より具体的には、熱伝導率演算部164は、前記熱浸透率演算部143で求めた前記熱浸透率b(この例では第2照射径φ2での熱浸透率b2)および所定の測定条件を設定するとともに熱伝導率kおよび体積熱容量Cvを様々な値に振った下記式2を用いた有限要素法による熱伝導シミュレーションを行い、検出部13で検出された検出結果であって前記熱浸透率演算部143で熱浸透率bを求める場合に用いた検出結果(例えば第2照射径φ2での第2位相遅れδ2)と異なる検出結果(この例では第1照射径φ1での第1位相遅れδ1)に、所定の許容誤差範囲で一致する前記熱伝導シミュレーションの結果を探索することで、熱伝導率kおよび体積熱容量Cvのうちの少なくとも一方を求めている。
ここで、Cvは、体積熱容量であり、Tは、温度であり、tは、時間であり、kは、熱伝導率であり、Qは、熱量である。なお、熱量Qは、例えば、レーザ光照射による周期加熱の場合には、円筒座標系による下記式3のように仮定される。
ここで、rは、中心からの距離であり、zは、深さ方向の位置であり、Q0は、加熱量振幅であり、dは、レーザ光の光浸透長(光浸透深さ)であり、φは、レーザ光の照射径であってφ1もしくはφ2あり、そして、fは、変調周波数である。
なお、前記所定の測定条件は、試料SMの例えば厚さ等のサイズ、加熱光の変調周波数f、加熱光の加熱量振幅Q0、加熱光の光浸透長d、加熱光の照射径、検出光の照射径である。ここで、加熱光の照射径は、φ1もしくはφ2ある。
次に、本実施形態の動作について説明する。図6は、実施形態の熱物性測定装置における熱物性値を求める場合の動作を示すフローチャートである。
まず、測定したい試料SMが測定対象としてステージ部6上に配置される。そして、図6において、まず、ステップS1において、第1照射径φ1での前記変調信号に対する前記反射光の位相遅れδ1が測定される。より具体的には、演算制御部16における加熱用光源制御部162の制御に従って第1加熱用光源部11−1は、連続光(CW光)の第1加熱光を射出し、この射出された第1加熱光は、第1変調部8−1に入射される。第1変調部8−1には、変調信号生成部12で生成され駆動部9で処理された変調信号が入力されており、この変調信号によって第1変調部8−1では、第1光源部11−1からの第1加熱光が、変調信号に同期して変調周波数fで強度変調され、例えば変調周波数fの矩形パルス状の第1加熱光(第1強度変調加熱光)となる。この強度変調された第1強度変調加熱光は、ダイクロイックミラー2で光路が屈曲され、ハーフミラー3をその一部が通過し、レンズ4に入射される。レンズ4では、第1強度変調加熱光は、その径が所定の第1照射径φ1となるように変換され、測定対象の試料SMにおける第1加熱光照射領域を照射するべく、レンズ4から前記第1加熱光照射領域に向けて射出される。なお、変調信号生成部12で生成された前記変調信号は、変調信号生成部12から検出部13にも出力される。そして、このような第1強度変調加熱光が前記第1加熱光照射領域に向けて射出されるタイミングに同期して検出光も検出光照射領域に照射される。すなわち、演算制御部16における検出用光源制御部161の制御に従って検出用光源部1は、連続光(CW光)の検出光を射出し、この射出された検出光は、ダイクロイックミラー2を通過し、ハーフミラー3をその一部が通過し、そして、レンズ4に入射される。レンズ4では、検出光は、その径が変換され、測定対象の試料SMにおける検出光照射領域を照射するべく、レンズ4から前記検出光照射領域に向けて射出される。ここで、前記第1加熱光照射領域の中心位置と前記検出光照射領域の中心位置とは、略一致する。試料SMでは、第1強度変調加熱光によって加熱され、その温度が変化する。この温度変化に応じて反射率も変化し、この反射率の変化に応じた強度で試料SMに照射された検出光が反射する。この検出光の反射光は、レンズ4を介してハーフミラー3に入射され、ハーフミラー3で光路が屈曲され、その一部がバンドパスフィルタ7を介して受光部10に入射される。受光部10では、この受光された前記検出光の反射光は、光電変換によってその強度に応じた信号レベルの電気信号(検出信号)に変換され、前記検出信号は、受光部10から検出部13へ出力される。検出部13では、前記検出信号から前記変調信号に同期した信号成分が検出され、前記変調信号に対する前記反射光の位相遅れδ1が検出され、この前記反射光の位相遅れδ1が演算制御部16へ出力される。
例えば、試料SMが銅(Cu)であり、変調周波数f=1MHzであり、検出光の照射径が1μmである場合において、前記第1照射径φ1は、10μmに設定され、この場合では、位相遅れδ1は、39.5°と測定された。この第1照射径φ1(=10μm)は、変化範囲照射径φrである。
続いて、ステップS2において、第2照射径φ2での前記変調信号に対する前記反射光の位相遅れδ2が測定される。より具体的には、演算制御部16における加熱用光源制御部162の制御に従って第2加熱用光源部11−2は、連続光(CW光)の第2加熱光を射出し、この射出された第2加熱光は、第2変調部8−2に入射される。第2変調部8−2には、変調信号生成部12で生成され駆動部9で処理された変調信号が入力されており、この変調信号によって第2変調部8−2では、第2光源部11−2からの第2加熱光が、変調信号に同期して変調周波数fで強度変調され、例えば変調周波数fの矩形パルス状の第2加熱光(第2強度変調加熱光)となる。この強度変調された第2強度変調加熱光は、前記第1照射径φ1と異なる第2照射径φ2で測定対象の試料SMにおける第2加熱光照射領域を照射するべく、反射鏡5で光路が屈曲され、前記第2加熱光照射領域に向けて射出される。なお、変調信号生成部12で生成された前記変調信号は、変調信号生成部12から検出部13にも出力される。そして、このような第2強度変調加熱光が前記第2加熱光照射領域に向けて射出されるタイミングに同期して検出光も、上述と同様に、検出光照射領域に照射される。ここで、前記第2加熱光照射領域の中心位置と前記検出光照射領域の中心位置とは、略一致するとともに、前記第2加熱光照射領域の中心位置と前記第1加熱光照射領域の中心位置とは、略一致する。試料SMでは、第2強度変調加熱光によって加熱され、その温度が変化する。この温度変化に応じて反射率も変化し、この反射率の変化に応じた強度で試料SMに照射された検出光が反射する。この検出光の反射光は、上述と同様に、受光部10で受光され、検出部13では、受光部10からの検出信号から前記変調信号に同期した信号成分が検出され、前記変調信号に対する前記反射光の位相遅れδ2が検出され、この前記反射光の位相遅れδ2が演算制御部16へ出力される。
例えば、上述の例では、前記第2照射径φ2は、前記第1照射径φ1より充分に大きい、1mmに設定され、この場合では、位相遅れδ2は、37.3°と測定された。この第2照射径φ2(=1mm)は、一定範囲照射径φcである。
続いて、ステップ3では、演算制御部16の熱浸透率演算部163によって、検出部13で検出された前記反射光の位相遅れδ2に基づいて、基礎データ記憶部171に予め記憶されている前記反射光の位相遅れδと熱浸透率bとの間の前記対応関係を参照することで、前記反射波の位相遅れδ2に対応する熱浸透率b2が求められる。
そして、ステップ4では、演算制御部16の熱伝導率演算部164によって、前記熱浸透率演算部143で求められた前記熱浸透率b2および所定の測定条件を設定するとともに熱伝導率kおよび体積熱容量Cvを様々な値に振った前記式2を用いた有限要素法による熱伝導シミュレーションが行われ、検出部13で検出された検出結果であって前記熱浸透率演算部143で熱浸透率b2を求める場合に用いた位相遅れδ2と異なる位相遅れδ1に、所定の許容誤差範囲で一致する前記熱伝導シミュレーションの結果を探索することで、熱伝導率kが求められる。そして、この求められた熱伝導率kが出力部14に出力される。なお、前記熱伝導率kに代え、または前記熱伝導率kと合わせて、体積熱容量Cvが求められてもよい。
例えば、上述の例では、図3に示すように、検出結果の位相遅れδ1は、熱伝導率kが404である場合に略一致し、試料SMの熱伝導率kは、404と測定される。
以上説明したように、本実施形態における熱物性測定装置Dおよびこれに実装された熱物性測定方法では、いわゆる熱反射法によって測定対象の試料SMにおける熱物性値を求める場合に、試料SMを加熱するために、互いに照射径φnの異なる複数の加熱光を試料SMにそれぞれ照射する複数の加熱用照射部が用いられる。すなわち、照射径φnごとに専用の加熱用照射部が用意されている。例えば、図1に示す例では、熱物性測定装置Dは、第1照射径φ1の第1加熱光を試料SMに照射するために、第1加熱用光源部11−1、第1変調部8−1、ダイクロイックミラー2、レンズ4および演算制御部16を備え、そして、第1照射径φ1より大きい第2照射径φ2の第2加熱光を試料SMに照射するために、第2加熱用光源部11−2、第2変調部8−2、反射鏡5および演算制御部16を備えている。このため、熱物性値を求めるために、互いに照射径φnの異なる各加熱光の照射による各反射光をそれぞれ検出する場合に、1つの加熱光のビーム径を所望の照射径φに調節する必要がなく、所望の照射径φに応じたそれ専用の加熱用照射部に切り換えるだけでよい。したがって、本実施形態における熱物性測定装置Dおよび熱物性測定方法では、測定時間をより短縮することができ、そして、調節誤差が生じないので、より高精度な測定が可能となる。
また、その測定原理から加熱光の照射径φの差が大きいほど測定精度が向上するが、本実施形態における熱物性測定装置Dおよびこれに実装された熱物性測定方法では、複数の加熱用照射部は、上述したように、互いに異なる光路で複数の加熱光を試料SMにそれぞれ照射するので、個々の加熱用照射部を任意の照射径φで設計することができるから、本実施形態における熱物性測定装置Dおよびこれに実装された熱物性測定方法では、所望の照射径φの加熱用照射部を用いることが可能となる。したがって、本実施形態における熱物性測定装置Dおよびこれに実装された熱物性測定方法は、測定精度の向上が可能となる。
なお、上述の実施形態では、測定対象の試料SMを加熱するために、互いに照射径φnの異なる複数の加熱光は、2個の第1および第2加熱光であったが、3個以上の任意の個数でよい。複数の加熱光の個数を増加させることによって検出結果の個数が増加し、この結果、前記熱伝導シミュレーションによって検出結果に一致する熱物性を探索する場合に、より適確な熱物性値の探索が可能となり、このような構成の熱物性測定装置Dおよび熱物性測定方法は、より高精度な測定が可能となる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。