JP5510312B2 - 発光装置の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、発光素子と蛍光体とを用いた発光装置の製造方法に関する。
近年、窒化ガリウム(GaN)系の青色LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)チップの近傍にYAG蛍光体などの蛍光体を配置し、青色LEDチップから出射される青色光と、蛍光体がこの青色光を受けて出射する黄色光とを混色することにより白色光を発する技術が広く用いられている。
このように混色によって白色光を放射する発光装置では、発光効率の安定性や、色度の均一性が求められる。従って、LEDチップから出射される青色光に対してムラなく適切な光量の黄色光を出射するように、所定量の蛍光体を均一に分散配置する必要がある。
蛍光体を青色LEDチップ近傍に配置する技術としては、透明セラミック材料及び有機溶媒中に蛍光体を分散させた溶液をLEDチップに対してスプレー装置を用いて噴射、塗布する技術が知られている。従来、このスプレー装置では、スプレーノズルをLEDチップの直上に配置してLEDチップの上面に吹き付ける形態が用いられている。しかしながら、この配置では、LEDチップの側面に対して平行に蛍光体を噴射することになり、塗布される蛍光体の量がLEDチップの上面と側面との間で異なって色むらが生じるという問題があった。
そこで、例えば、特許文献1には、ノズルの側面にガスの噴出孔を複数配置し、ガスを噴出させながらノズルを回転させることで気流を発生させ、霧状に噴出させた蛍光体をLEDチップの側面にも到達させる技術が開示されている。
特開2004−88013号公報
しかしながら、これまでの塗布方法では、LEDチップの全面に効率よく適量の蛍光体を均一に塗布しづらいという課題があった。
この発明の目的は、発光素子の近傍に適量の蛍光体を効率よく均一に配置することのできる発光装置の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明によれば、
所定の波長の光を出射する発光素子と、前記発光素子からの出射光により励起され、当該出射光の波長とは異なる波長の蛍光を出射する蛍光体を含有する波長変換部と、を備える発光装置の製造方法であって、
水平に配置された前記発光素子に対して1又は複数の噴射部から前記蛍光体を含有する蛍光体塗布液を噴射することで前記発光素子に前記波長変換部の形成材料を塗布する塗布工程を有し、
当該塗布工程では、
前記発光素子の中心を含む所定の垂直面内に前記噴射部を配置する複数の噴射位置を設定し、当該噴射位置からそれぞれ前記中心位置へ向けた噴射方向と水平面とのなす角度を15度以上75度以下に設定することを特徴とする発光装置の製造方法が提供される。
本発明の発光装置の製造方法によれば、発光素子の近傍に適量の蛍光体を配置する発光装置を効率よく均一に配置して製造することができる。
本発明の実施形態の発光装置の製造方法を用いて製造される発光装置の断面形状を示す模式図である。 第1実施形態の発光装置の製造方法に係る製造装置の構成を説明する図である。 蛍光体塗布液の噴出口の位置及び噴射方向について説明する図である。 蛍光体塗布液の噴出口の位置及び噴射方向について説明する図である。 第2実施形態の発光装置の製造方法に係る製造装置の構成を説明する図である。 第3実施形態の発光装置の製造方法に係る製造装置の構成を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態の製造方法によって製造される発光装置の構造を示す模式図である。
[第1実施形態]
図1に示すように、発光装置100は、断面凹状のLED基板1を有している。LED基板1の凹部(底部)にはメタル部2が設けられ、メタル部2上に直方体状のLED素子3が配置されている。LED素子3は、所定波長の光を出射する発光素子の一例である。LED素子3のメタル部2に対向する面には突起電極4が設けられており、メタル部2とLED素子3とが突起電極4を介して接続されている(フリップチップ型)。なお、ここでは、一つのLED基板1に対して一つのLED素子3が設けられる構成を図示しているが、一つのLED基板1の凹部に複数のLED素子3が設けられてもよい。また、LED素子の形状は、完全な直方体形状には限られず、角や辺を落としたり丸めたりした形状でもよいし、必要に応じた凹凸が存在してもよい。或いは、上面が水平でなくてもよい。
本実施形態の発光装置100では、LED素子3として青色LED素子が用いられている。青色LED素子は、例えば、サファイア基板上にn−GaN系クラッド層、InGaN発光層、p−GaN系クラッド層、及び透明電極を積層してなる。
LED基板1の凹部には、LED素子3の周囲を封止するように波長変換部6が形成されている。波長変換部6は、LED素子3から出射される所定波長の光を透過させると共に、入射された同波長の光の一部を受けて異なる波長の光を出射する蛍光層であり、LED素子3の上面及び側面に同一の厚さで形成される。この波長変換部6は、透光性を有するセラミック層中に蛍光体が添加されて構成される。この蛍光体は、LED素子3からの励起波長の光により励起されてこの励起波長と異なる波長の蛍光を出射する。セラミック層の厚さ及びセラミック層中の蛍光体の分量は、LED素子3から出射されてセラミック層を透過する青色光と、蛍光体から出射される黄色光との混色が発光装置に要求される誤差範囲内で均等な白色となる範囲に設定される。
次に、波長変換部6の構成などについて詳述する。
波長変換部6は、セラミック前駆体としての有機金属化合物を有機溶媒に混合したゾル状の混合液(以後、セラミック前駆体液と記す)を加熱によりゲル状態とし、さらに焼成する、いわゆるゾル・ゲル法により形成された透明セラミック層(ガラス体)であって、この透明セラミック層中に蛍光体、層状ケイ酸塩鉱物、及び、無機微粒子を含有するものである。
(有機金属化合物)
有機金属化合物は、蛍光体、層状ケイ酸塩鉱物、及び、無機微粒子を封止するバインダとしての役割を果たすものである。本発明に用いられる有機金属化合物としては、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート等が挙げられるが、加水分解と重合反応とによりゲル化し易い金属アルコキシドが好ましい。
金属アルコキシドは、テトラエトキシシランのような単分子のものでも良いし、有機シロキサン化合物が鎖状または環状に連なったポリシロキサンでも良いが、ポリシロキサンを使用したセラミック前駆体液を層状ケイ酸塩鉱物などと混合した際にこの混合液の粘性がより増加することから、ポリシロキサンが好ましい。なお、透光性のガラス体を形成可能であれば金属(半金属を含む)の種類に制限はないが、形成されるガラス体の安定性や製造の容易性の観点から、ケイ素を含有していることが好ましい。また、複数種の金属を含有していても良い。
セラミック層中の有機金属化合物の含有量が2重量%未満になると、セラミック前駆体の含有量が足りず、形成されるセラミック層の強度が不足する。一方、有機金属化合物の含有量が50重量%を超えると、層状ケイ酸塩鉱物及び無機微粒子の含有量が相対的に低下することにより、後述するように、蛍光体が適度にセラミック層中に分散しなくなり、また、セラミック層の強度が低下する。従って、セラミック層中の有機金属化合物の含有量は、2重量%以上50重量%以下が好ましく、2.5重量%以上30重量%以下がより好ましい。
或いは、有機金属化合物としてポリシラザンを使用することもできる。
本発明で用いられるポリシラザンは、下記の一般式(1)で表される。
(R1R2SiNR3) … (1)
式(1)において、R1、R2およびR3は、それぞれ水素原子またはアルキル基、アリール基、ビニル基、シクロアルキル基を表し、nは、1〜60の整数を表す。R1、R2、R3のうち少なくとも1つは水素原子であり、好ましくはすべてが水素原子である。
ポリシラザンの分子形状はいかなる形状であってもよく、例えば、直鎖状または環状であってもよい。
有機金属化合物としてポリシラザンを用いる場合には、必要に応じて反応促進剤を併用することができる。ポリシラザンと反応促進剤とを適切な溶媒に溶かし、セラミック膜を形成する場所に塗布した後、加熱処理、エキシマ光処理やUV光処理を行って硬化させることで、耐熱性、耐光性に優れたセラミック膜を作成することができる。特に、170〜230nmの範囲の波長成分を含むVUV放射光(例えば、エキシマ光)を照射して硬化させた後に加熱硬化処理を行うと、水分の浸透防止効果を向上させることができる。
反応促進剤としては、酸、塩基などを用いることが好ましい。反応促進剤の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、塩酸、シュウ酸、フマル酸、スルホン酸、酢酸やニッケル、鉄、パラジウム、イリジウム、白金、チタン、アルミニウムを含む金属カルボン酸塩などが挙げられるが、これらのものに限られない。また、反応促進剤を用いないこととしてもよい。
反応促進剤を用いる場合に特に好ましいのは、金属カルボン酸塩であり、添加量は、ポリシラザンを基準にして0.01〜5mol%が好ましい。
溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン炭化水素、エーテル類、エステル類を使用することができる。好ましくは、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルフルオライド、クロロホルム、四塩化炭素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルブチルエーテルである。
また、セラミック前駆体液におけるポリシラザン濃度は、高い方が好ましいが、一方で、濃度の上昇は、ポリシラザンの保存期間の短縮に繋がる。従って、ポリシラザンは、溶媒中に5重量%以上50重量%以下で溶解していることが好ましい。
また、セラミック前駆体液としてのポリシラザン溶液を焼成する際には、基板として用いられるガラス材料等の劣化を抑制する観点から加熱温度を150℃〜500℃とすることが好ましく、150℃〜350℃とすることがより好ましい。
(蛍光体)
蛍光体は、LED素子3から出射される特定の波長(励起波長)の光により励起されて、励起波長とは異なる波長の蛍光を出射するものである。本実施形態では、青色LED素子から出射される青色光(波長420nm〜485nm)により励起されて、黄色光(波長550nm〜650nm)を出射するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体を使用している。
このような蛍光体を得るには、先ず、Y、Gd、Ce、Sm、Al、La、Gaの酸化物、または高温で容易に酸化物となる化合物を使用し、これらを化学量論比で十分に混合して混合原料を得る。或いは、Y、Gd、Ce、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶液からシュウ酸により共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。そして、得られた混合原料にフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して加圧し、成形体を得る。得られた成形体を坩堝に詰め、空気中1350〜1450℃の温度範囲で2〜5時間焼成し、蛍光体の発光特性を持つ焼結体を得る。
なお、本実施形態ではYAG蛍光体を使用しているが、蛍光体の種類はこれに限定されるものではなく、例えば、Ceを含まない非ガーネット系蛍光体等の他の蛍光体を使用することもできる。また、蛍光体の粒径が大きいほど発光効率(波長変換効率)が高くなる反面、有機金属化合物との界面に生じる隙間が大きくなって形成されたセラミック層の膜強度が低下する。従って、発光効率、及び、有機金属化合物との界面に生じる隙間の大きさを考慮し、平均粒径が1μm以上50μm以下のものを用いることが好ましい。蛍光体の平均粒径を測定するには、例えば、コールターカウンター法を用いることができる。
(層状ケイ酸塩鉱物)
層状ケイ酸塩鉱物は、セラミック前駆体液及び蛍光体と混合された混合液の粘性を増加させて蛍光体の沈降を妨げるのに用いられる。使用する層状ケイ酸塩鉱物としては、雲母構造、カオリナイト構造、スメクタイト構造等の構造を有する膨潤性粘土鉱物が好ましく、膨潤性に富むスメクタイト構造を有するものが特に好ましい。これは、後述するように混合液中に水を添加することで、スメクタイト構造の層間に水が進入して膨潤したカードハウス構造をとるため、少量で混合液の粘性を大幅に増加させる効果があるためである。
ここで、セラミック層中における層状ケイ酸塩鉱物の含有量が0.5重量%未満になると混合液の粘性を増加させる効果が十分に得られない。一方、層状ケイ酸塩鉱物の含有量が20重量%を超えると加熱後のセラミック層の強度が低下する。従って、層状ケイ酸塩鉱物の含有量を0.5重量%以上20重量%以下とすることが好ましく、0.5重量%以上10重量%以下がより好ましい。
なお、有機溶媒との相溶性を考慮して、層状ケイ酸塩鉱物の表面をアンモニウム塩等で修飾(表面処理)したものを適宜用いることもできる。
(無機微粒子)
無機微粒子は、有機金属化合物と、蛍光体及び層状ケイ酸塩鉱物との界面に生じる隙間を埋める充填効果、加熱前の混合液の粘性を増加させる増粘効果、及び加熱後のセラミック層の膜強度を向上させる膜強化効果を有する。本発明に用いられる無機微粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物微粒子、フッ化マグネシウム等のフッ化物微粒子等が挙げられる。特に、有機金属化合物としてポリシロキサン等の含ケイ素有機化合物を用いる場合には、形成されるセラミック層の安定性を保つという観点から酸化ケイ素の微粒子を用いることが好ましい。
ここで、セラミック層中における無機微粒子の含有量が0.5重量%未満では、上述したそれぞれの効果が十分に得られない。一方、無機微粒子の含有量が50重量%を超えると、加熱により形成されるセラミック層の強度が低下する。従って、セラミック層中における無機微粒子の含有量が0.5重量%以上50重量%以下であることが好ましく、1重量%以上40重量%以下がより好ましい。また、上述したそれぞれの効果を考慮して、無機微粒子の平均粒径が0.001μm以上50μm以下のものを用いることが好ましい。無機微粒子の平均粒径を測定するには、例えば、コールターカウンター法を用いることができる。
なお、有機金属化合物や有機溶媒との相溶性を考慮して、無機微粒子の表面をシランカップリング剤やチタンカップリング剤で処理したものを適宜用いることもできる。
(蛍光体塗布液)
上記のように、有機金属化合物を有機溶媒に混合したセラミック前駆体液に蛍光体、層状ケイ酸塩鉱物、及び、無機微粒子を混合した蛍光体塗布液を波長変換部6を形成する場所に塗布して加熱することで、透光性と蛍光性とを有する波長変換部6が形成される。さらに、この蛍光体塗布液に水を添加することにより、層状ケイ酸塩鉱物の層間に水が入り込んで蛍光体塗布液の粘性が増加するため、蛍光体の沈降を抑制することができる。なお、水に不純物が含まれていると重合反応を阻害するおそれがあるので、不純物を含まない純水を添加する必要がある。
有機溶媒としては、添加される水との相溶性に優れたメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類が好ましい。また、有機溶媒に対する有機金属化合物の混合量が5重量%未満になると蛍光体塗布液の粘性を増加させることが困難となり、有機金属化合物の混合量が50重量%を超えると重合反応が必要以上に速く進んでしまう。従って、有機溶媒に対する有機金属化合物の混合量が5重量%以上50重量%以下であることが好ましく、8重量%以上40重量%以下がより好ましい。
蛍光体塗布液の調製手順としては、例えば、表面処理された親油性の層状ケイ酸塩鉱物を用いる場合は、先ず、セラミック前駆体液に層状ケイ酸塩鉱物を予備混合し、その後に蛍光体、無機微粒子、及び水を混合する。また、表面処理されていない親水性の層状ケイ酸塩鉱物を用いる場合は、先ず層状ケイ酸塩鉱物と水とを予備混合し、その後に蛍光体、無機微粒子、及びセラミック前駆体液を混合する。これにより、層状ケイ酸塩鉱物を均一に混合して増粘効果をより高めることができる。蛍光体塗布液の好ましい粘度は25〜800cPであり、最も好ましい粘度は30〜500cPである。
ここで、有機溶媒に水を加えた総溶媒量に対する水の割合が5重量%未満になると上記の増粘効果を十分に得ることができず、水の割合が60重量%を超えると増粘効果よりも水の混合過多による粘度低下効果の方が大きくなる。従って、総溶媒量に対する水の割合を5重量%以上60重量%以下とすることが好ましく、7重量%以上55重量%以下がより好ましい。
蛍光体塗布液の最も好ましい組成は、有機金属化合物としてポリシロキサンを用いたものであり、蛍光体塗布液中に含まれる上記各成分の最も好ましい組成範囲は、ポリシロキサン分散液(セラミック前駆体液)が4〜30重量%、層状ケイ酸塩鉱物が1〜10重量%、無機微粒子が1〜40重量%、水が10〜50重量%である。
続いて、発光装置100(波長変換部6)の製造方法について説明する。
図2は、本発明に係る第1実施形態の製造方法を用いて発光装置を製造する製造装置の構成を説明する図である。
製造装置10は、水平に設置されて上下、左右、前後に移動可能な移動台20と、上記で説明した蛍光体塗布液(40)を噴射可能なスプレー装置30と、波長変換部6の色度や輝度などを検査可能な検査装置50と、を備えている。
スプレー装置30は、移動台20の上方に配置され、エアーが送り込まれる2本のノズル32、33(噴射部)を備えている。ノズル32、33の先端部に設けられた噴出口の孔径は、20μm〜2mmであり、好ましくは0.1〜0.3mmである。ノズル32、33は、移動台20と同様に上下、左右、前後に移動可能となっている。また、ノズル32、33からの蛍光体塗布液の噴射方向が調整可能な構成となっており、本実施形態のノズル32、33は、移動台20に対して傾斜、回転させることができるようになっている。ノズル32、33には温度調整機構が内蔵されており、噴射物の温度を調整することができる。
ノズル32、33には、連結管34を介してタンク36が接続されている。タンク36には、蛍光体塗布液40が貯留されている。このタンク36には撹拌子が入っており、蛍光体塗布液40を連続的に撹拌することで比重の大きい蛍光体の沈降を抑止している。この撹拌動作によって蛍光体が蛍光体塗布液40中で分散した状態を保持することができる。
なお、スプレー装置30では、ノズル32、33にエアーを送り込む代わりにモータなどを駆動源として利用し、タンク36の蛍光体塗布液40に直接圧力を加えてノズル32、33から蛍光体塗布液40を噴射させるか、または押し出すような機構を用いることとしてもよい。蛍光体塗布液40を押し出すような機構とする場合には、蛍光体塗布液40に対する圧力のバラツキを10%以内とする。
検査装置50は、LED素子52と色彩輝度計54とを有している。LED素子52は、LED素子3と同様の光を発光する素子である。色彩輝度計54は、受光した光の色度や輝度を計測する計測器である。
実際に発光装置100の波長変換部6を製造する場合には、先ず、色度・輝度調整用(試験用)のガラスプレート60にノズル32、33から蛍光体塗布液40を噴射・塗布し、白色光の色度や輝度を計測する(予備噴射・塗布工程)。
詳しくは、ガラスプレート60を移動台20に設置し、移動台20とスプレー装置30のノズル32、33とを制御してガラスプレート60に対するノズル32、33の噴出口の位置(噴射位置)及び噴射方向が予め設定された状態になるように相対移動させる。ノズル32、33からガラスプレート60に蛍光体塗布液40を噴射・塗布した後、蛍光体塗布液40が塗布されたガラスプレート60を検査装置50の近傍に移送し、LED素子52を発光させる。そして白色光の色度や輝度を色彩輝度計54で計測し、白色光の色度や輝度が所望の値(範囲内)になっているかどうかを確認する。
この予備噴射・塗布工程の処理は、白色光の色度や輝度が安定するまで繰り返す。予備噴射・塗布工程において、白色光の色度や輝度が所望の値からずれている場合には、スプレーの噴射圧や蛍光体塗布液40内の蛍光体の濃度等を調整することで、白色光の色度や輝度を所望の値と一致させる。この調整は、色彩輝度計54によって得られる計測値に応じて自動で行われることが好ましいが、計測値に応じて手動で調整してもよい。
また、ガラスプレート60には、LED素子3と同様の形状の凸部を設けることとしてもよい。
次に、ガラスプレート60に代えて、LED素子3をあらかじめ実装した複数のLED基板1を移動台20に設置し、LED基板1に対するノズル32、33の噴出口の位置及び噴射方向が予め設定された状態になるように相対移動させる(位置調整工程)。噴出口の位置及び噴射方向の設定に関しては、後に詳述する。
続いて、LED基板1とノズル32、33とを互いに相対移動させながら、ノズル32、33の噴出口から蛍光体塗布液40を噴射してLED基板1に蛍光体塗布液40を塗布する(噴射・塗布工程)。
詳しくは、移動台20とノズル32、33とを何れも移動させてLED基板1上のLED素子3とノズル32、33との位置関係を変化させる。或いは、移動台20とノズル32、33とのうちいずれか一方の位置を固定し、他方を前後左右に移動させてもよい。また、移動台20の移動方向と直交する方向にLED素子3を複数配置し、ノズル32、33を移動台20の移動方向と直交する方向に移動させながら塗布する方法も好ましく用いられる。そして、ノズル32、33にエアーを送り込み、蛍光体塗布液40をノズル32、33の噴出口(噴射位置)からLED素子3に向けて噴射する。
ノズル32、33からの蛍光体塗布液40の噴射は、以下の条件で行う。
(1)蛍光体塗布液40の噴射量を一定に保ち、LED素子3に塗布される単位面積当たりの蛍光体量を一定とする。蛍光体塗布液40の噴射量の経時的なバラツキは10%以内とし、好ましくは1%以内とする。
(2)ノズル32、33の温度を調整し、蛍光体塗布液40の噴射時の粘度を調整する。好ましくは蛍光体塗布液40の温度を40℃以下に調整するか、または蛍光体塗布液40の粘度にあわせて調整する。
この場合、LED基板1を室温環境下においてもよいし、温度調整機構を移動台20に設けてLED基板1の温度をコントロールしてもよい。LED基板1の温度を30〜100℃で高く設定すれば、LED素子3に噴射された蛍光体塗布液40中の有機溶媒を早く揮発させることができ、蛍光体塗布液40がLED素子3の側面から液だれするのを防止することができる。逆に、LED基板1の温度を5〜20℃と低く設定すれば、溶媒をゆっくり揮発させることができ、蛍光体塗布液40をLED素子3の外壁に沿って均一に塗布することができ、ひいては波長変換部6の膜密度や膜強度などを増大させることができ、緻密な膜を形成することができる。
(3)製造装置10の環境雰囲気(温度・湿度)を一定とすることで、蛍光体塗布液40の噴射を安定させる。特に、有機金属化合物として吸湿性の高いポリシラザンを使用する場合には、蛍光体塗布液40が固化しやすいので、好ましくは、蛍光体塗布液40を噴射するときの湿度を低くする。
(4)スプレー装置30とLED基板1との間にLED素子3の形状に応じたマスクを配置し、当該マスクを介して蛍光体塗布液40を噴射する。マスクとしては、蛍光体塗布液40を構成する有機溶媒に溶解しない材質のものを使用する必要があるが、マスクに付着した蛍光体等の材料の回収の観点から好ましくは可燃性のものを使用する。
1つのLED基板1上のLED素子3への蛍光体塗布液40の噴射・塗布が終了したら、その次のLED基板1に対し上記と同様の操作を繰り返し、複数のLED基板1のLED素子3上に蛍光体塗布液40を順次噴射・塗布する。
このとき、LED基板1の切り替えとは無関係に蛍光体塗布液40を連続的に噴射し続けてもよいし、LED基板1を切り替えるごとに蛍光体塗布液40の噴射を一時的に休止しながら断続的に噴射してもよい。蛍光体塗布液40を連続的に噴射し続けることで、各LED素子3に対する蛍光体塗布液40の噴射量を安定させることができる。一方、蛍光体塗布液40を断続的に噴射することで、蛍光体塗布液40の使用量を節約することができる。
なお、噴射・塗布工程中にノズル32、33のクリーニングを行ってもよい。スプレー装置30の近傍に洗浄液を貯留したクリーニングタンクを設置し、ノズル32、33の先端部をクリーニングタンク中に浸漬させることで、クリーニングが行われる。洗浄液としては、蛍光体塗布液40を溶解可能な液体が用いられる。また、噴射・塗布工程の休止中や開始時には、同様にノズル32、33の先端部をクリーニングタンク中に浸漬させることで、蛍光体塗布液40が硬化してノズル32、33の噴出口が詰まるのを防止するのが好ましい。
また、好ましくは、製造装置10の全体をハウジングなどで被覆してフィルタ越しに集塵・排気しながら噴射・塗布工程や検査工程の処理を実行する。噴射・塗布工程においてミスト状に噴射された蛍光体塗布液40中の有機溶媒が揮発すると、蛍光体や無機微粒子などの粉体が飛散することもあるので、蛍光体をフィルタで捕集することにより高価な蛍光体を再利用することができる。
噴射・塗布工程において、一定数のLED基板1に対する蛍光体塗布液40の噴射・塗布が終了するごとに白色光の色度や輝度を検査し、検査結果を蛍光体塗布液40の噴射量や噴射圧、噴射温度(ノズル32、33の温度)の調整にフィードバックしてもよい(検査工程)。
詳しくは、この検査工程では、蛍光体塗布液40の噴射・塗布が終了したLED基板1のうちの1枚を検査装置50の近傍に移送し、LED素子3を発光させる。そして蛍光体塗布液40による白色光の色度や輝度を色彩輝度計54で計測し、この計測結果に基づき、蛍光体塗布液40の噴射量や噴射圧、噴射温度(ノズル32の温度)などを変更する。
また、蛍光体塗布液40の噴射・塗布が終了したLED基板1を使用して検査を行う代わりにガラスプレート60に蛍光体塗布液40を噴射・塗布し、これを白色光の色度や輝度の検査対象としてもよい。ガラスプレート60を使用する場合には、LED素子52を発光させ、白色光の色度や輝度を計測すればよい。
その後、蛍光体塗布液40が塗布されたLED基板1を焼結炉に移送し、蛍光体塗布液40を焼成する(焼成工程)。
焼成工程では、処理温度(焼結温度)を、LED素子3が破損しない程度に設定する。この焼結温度は、100〜300℃、好ましくは130〜170℃とし、より好ましくは140〜160℃とし、もっとも好ましくは150℃前後とする。その結果、蛍光体塗布液40が焼結して波長変換部6が製造(形成)される。
なお、蛍光体塗布液40を焼結させた後にディスペンサを用いて波長変換部6上をシリコーン樹脂で封止してもよい。この場合、波長変換部6の経時的な劣化を抑制することができ、波長変換部6のLED基板1やLED素子3への接着性を向上させることができる。
次に、予備噴射・塗布工程及び噴射・塗布工程におけるノズル32、33の噴出口の位置のガラスプレート60及びLED基板1に対する相対位置と、噴射方向との設定について説明する。
図3、及び、図4は、蛍光体塗布液の噴出口の位置及び噴射方向について説明する図である。
図3に示すように、ノズル32、33は、水平の移動台20上に載置された直方体形状のLED基板1上に載置されたLED素子3の中心位置Oを含む垂直面P内であって、中心位置Oから等距離且つ水平面からの高さが等しい位置S1、S2にそれぞれ噴出口が置かれるように配置されている。蛍光体塗布液40は、位置S1、S2から中心位置Oに向けて、同一の下向き角度及び180度反対の方位角度で表される方向に噴射される。位置S1、S2とLED素子3の中心位置Oとの間の距離dは、蛍光体塗布液40が適切な速度で到達可能な範囲に設定され、好ましくは、50mm以上300mm以下である。
図4(a)は、ノズル位置とLED素子との位置関係を側方から見た図である。ノズル32、33は、LED素子3に対してそれぞれ斜め上方に配置されている。蛍光体塗布液40は、ノズル32、33の噴出口の位置からLED素子3の中心位置O(本実施形態では、LED基板1の中心位置と同一に配置されている)に向けた噴射方向と水平面(即ち、LED素子3の上面)とのなす角度θが15度以上75度以下になるように設定され、より好ましくは、角度θが30度以上60度以下に設定され、更に好ましくは、角度θが45度に設定される。このような角度θの設定により、LED素子3の上面及び側面の各法線方向に対してそれぞれ75度以下の角度で蛍光体塗布液40が噴射される。即ち、蛍光体塗布液40の噴射方向は、LED素子3の上面及び側面がなす角を2等分する線(角度θが45度の線)に対して30度以下となるように設定されている。また、特に、角度θを45度に設定することによって、LED基板1の上面及び側面の法線方向に対して等しく45度の角度で蛍光体塗布液40が噴射されることになり、従って、均一に蛍光体塗布液40が塗布される。
図4(b)は、ノズル位置とLED素子の位置との関係を上側から見た平面図である。この平面図において、ノズル32、33は、LED素子3の中心位置Oに対して対称な位置に配置される。ノズル32、33の噴出口の位置S1、S2を結び、LED素子3の中心位置Oを通る直線がLED素子3の上面を表す長方形の頂点を2等分する直線方向Zに対してなす角度φは、±30度以下となるように設定される。即ち、ノズル32から噴射された蛍光体塗布液40は、塗布される2つの側面(図4(b)のLED素子3において左下側及び左上側の2辺で表される2側面)の各法線方向に対して何れも75度以下の角度で噴射されることになる。同様に、ノズル33から噴射された蛍光体塗布液40は、塗布される2つの側面(図4(b)のLED素子3において右下側及び右上側の2辺で表される2側面)の法線方向に対して何れも75度以下の角度で噴射されることになる。従って、各側面に確実に蛍光体塗布液40が塗布することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態の発光装置の製造方法について説明する。
第2の実施形態は、主に下記の点で第1実施形態と異なっており、それ以外の点では、第1実施形態と同様となっているので、同一部分については同一の符号を付して説明を省略する。
図5は、本発明に係る第2実施形態の製造方法を用いて発光装置を製造する製造装置の構成を説明する図である。
この第2実施形態の製造装置10は、ノズル32を一本のみ備えている。
実際に発光装置100の波長変換部6を製造する場合には、予備噴射・塗布工程及び噴射・塗布工程において、2つのノズル32、33から同時に噴射を行わない代わりに、ノズル32を用いて図3における噴出口の位置S1から蛍光体塗布液40を噴射した後に移動台20を180度回転させ、図3における噴出口の位置S2からノズル32により蛍光体塗布液40の噴射を行う。
なお、移動台20を回転させる代わりに、ノズル32をLED基板1の中心位置Oに対して回転させることとしてもよいし、移動台20とノズル32とを何れも移動させることとしてもよい。
このような第2実施形態の発光装置の製造方法を用いることで、スプレー装置を構成する要素の数を増加させることなく容易にLED基板に対して蛍光体を均一に塗布することが可能となる。
[第3実施形態]
次に、本発明に係る第3実施形態の発光装置の製造方法について説明する。
第3の実施形態は、主に下記の点で第1の実施形態と異なっており、それ以外の点では、第1実施形態と同様となっているので、同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
図6は、本発明の第3実施形態における製造方法を用いて発光装置を製造する製造装置を説明する図である。
この第3実施形態の製造装置70は、スプレー装置30に加えて第2のスプレー装置80を有している。スプレー装置80は、スプレー装置30と同様の構成を有しており、ノズル82、83が連結管84を介してタンク86に接続されている。
スプレー装置30のタンク36には、上記で説明したセラミック前駆体液(42)が貯留されている。他方、スプレー装置80のタンク86には、上記で説明した蛍光体,層状ケイ酸塩鉱物,無機微粒子を溶媒に分散させた溶液(以下、蛍光体液44と記す)が貯留されている。第3実施形態では、第1の実施形態にかかる蛍光体塗布液40を成分単位で2つに分け、波長変換部6を構成する成分をスプレー装置30、80からそれぞれ別々に噴射するようになっている。ノズル32及びノズル82は、ノズル32及びノズル82から噴射されてLED基板1に塗布された蛍光体液44とセラミック前駆体液42との均一性(色むら)が誤差範囲内で同一となるように略同一の方位角度φ、下向き角度θ、及び、LED素子3の中心位置Oからの距離dを持つように配置される。また、ノズル33及びノズル83は、ノズル33及びノズル83から噴射されてLED基板1に塗布された蛍光体液44とセラミック前駆体液42との均一性(色むら)が誤差範囲内で同一となるように略同一の方位角度φ、下向き角度θ、及び、LED素子3の中心位置Oからの距離dを持つように配置される。
なお、蛍光体液44中の層状ケイ酸塩鉱物や無機微粒子は、セラミック前駆体液42にも含有されていてもよい。
実際に波長変換部6を製造する場合には、噴射・塗布工程において、先ず、ノズル82、83を同時に使用してLED基板1に蛍光体液44を塗布する。塗布された蛍光体液44を乾燥させて蛍光体層を形成した後に、ノズル32、33を同時に使用して蛍光体層の上部にセラミック前駆体液42を塗布する。そして、セラミック前駆体液42を乾燥させて波長変換部6を形成する。このように蛍光体層から溶媒を揮発させた後にセラミック前駆体液42を噴射することで、波長変換部6の膜強度を向上させることができる。或いは、セラミック前駆体液42を蛍光体液44の噴射直後に噴射することとしてもよい。
また、ノズル82、83を一のLED基板1に対して使用するタイミングで、ノズル32、33を他のLED基板1に対して同時に使用可能とすることもできる。
噴射・塗布工程では、ノズル32、33とノズル82、83とを別個に温度調整し、セラミック前駆体液42と蛍光体液44とがそれぞれ最適な粘度となるように調整する。また、噴射・塗布工程では、セラミック前駆体液42及び蛍光体液44に対してそれぞれ専用のマスクを使用してもよい。このようにマスクを使い分けることで、蛍光体液44中の高価な蛍光体を回収して再利用することができる。
以下では、実施例及び比較例を用いて本発明に係る発光装置の製造方法の実施形態をより具体的に説明する。
(1)サンプルの作製
(1.1)実施例1〜16、比較例1、2
実施例1〜16及び比較例1、2における白色LED(発光装置)の製造方法では、先ず、表面処理がなされていない親水性スメクタイト5gと、純水40gとを混合して分散させ、この混合液に蛍光体40g、ポリシロキサン20g、及び、イソプロピルアルコール80gを混合して蛍光体塗布液40を調製した。蛍光体塗布液40は、LED基板1上に配置された0.3mm×0.6mm×0.23mmの青色LED素子3にスプレー装置を用いて塗布され、続いて、130℃で20分間焼成された。以上の手順により、波長変換部6の蛍光体膜を形成した。
実施例1〜15、及び、比較例1、2における発光装置の製造方法では、LED素子3に蛍光体塗布液40を2本のノズルによりスプレーした。このとき、実施例及び比較例ごとにノズルの位置を角度θが10〜80°、角度φが0、25、35°、距離dが40〜320mmの範囲でそれぞれ変更した。
実施例16における発光装置の製造方法では、第2実施形態の製造装置を用いて、LED素子3に1本のノズルにより蛍光体塗布液40をスプレーした。このとき、一方向から蛍光体塗布液40をスプレーした後に、移動台20及びLED素子3を180度回転させて2方向からのスプレー塗布を行うこととした点を除いて、実施例4において設定されたパラメータ条件と同一の条件で発光装置100が製造された。
(1.2)実施例17、18
一方、実施例17、18における白色LED(発光装置)の製造方法では、表面処理がなされていない親水性スメクタイト5gと純水40gとを混合して分散させ、この混合液に蛍光体40g及びイソプロピルアルコール60gを混合して蛍光体液44を調製した。また、蛍光体液とは別途にポリシロキサン10gとイソプロピルアルコール80gとを混合してセラミック前駆体液42を作製した。そして、先ず、スプレー装置を用いて0.3mm×0.6mm×0.23mmのLED素子3に膜厚35μmとなるようにスプレー塗布された蛍光体液44を130℃で20分間乾燥させた。続いて、セラミック前駆体液42をスプレー塗布して130℃で20分間乾燥させて、波長変換部6の蛍光体膜を形成した。
実施例17における発光装置の製造方法では、第3実施形態の製造装置を用い、蛍光体液44及びセラミック前駆体液42についてそれぞれ2本ずつのノズルを用意して、何れも実施例4と同様の配置によりLED素子3に対して順番にスプレー塗布した。
実施例18における発光装置の製造方法では、蛍光体液44には2本のノズルを用意し、実施例4と同様の配置によりLED素子3の塗布面へ順番にスプレー塗布を行う一方、セラミック前駆体液42には1本のノズルのみを用意し、角度θが90度となるように配置して、LED素子3の中心直上から真下へ向けてスプレー塗布を行った。
(2)サンプルの評価
製造された各発光装置における色むらを表す色度ばらつき指標は、次のようにして測定される。先ず、発光装置100の青色LED素子3を発光させて、発光装置から50cm離れた位置で二次元色彩輝度計54(コニカミノルタセンシング社製CA2000)により測定した色度をCIE−xyY表色系を用いて表す。このCIE−xyY表色系では、0≦x、0≦y、0≦x+y≦1であり、白色は、(x、y)=(0.33、0.33)で表される。そして、チップ中心から半径10cmの円内の各点で取得された色度データ(x、y)のうち、色度xの最大値から最小値を減算した色度幅Δxにより以下の通り、色度ばらつきを分類する。
◎◎:Δx≦0.01(非常に優れた発光特性を有する)
◎:0.01<Δx≦0.02(優れた発光特性を有する)
○:0.02<Δx≦0.05(良好な発光特性を有する)
△:0.05<Δx≦0.07(実用上許容できる発光特性を有する)
×:0.07<Δx(実用上許容できない発光特性)
各実施例及び比較例の製造方法におけるスプレー装置の構成及び配置、及び、製造された発光装置を発光させた際の色むらに関する評価を表1に示す。
Figure 0005510312
(3)まとめ
表1に示すように、先ず、比較例1、2及び実施例1〜7において、発光装置の中心位置Oと噴出口の位置S1、S2との距離dを100mmに固定し、また、噴射方向の方位角度φを0度に固定して、下向き角度θを10度から80度まで変化させた。そして、それぞれの角度θごとに色度ばらつきを測定したところ、角度θが15度以上75度以下の範囲では、実用上許容範囲内の色度ばらつきが得られた。この色度ばらつきは、角度θが45度に近づくにつれて改善され、角度θが30度以上60度以下(35度、45度、55度)の場合には、色度ばらつきの小さい非常に優れた発光特性が示された。
次に、実施例8、9では、発光装置の中心位置Oと噴出口の位置S1、S2との距離dを100mmに固定し、また、噴射方向の角度θを45度に固定して、方位角度φを25度及び35度に変化させた。そして、色度ばらつきを測定したところ、角度φが0度の場合(実施例4)では非常に優れた発光特性が得られたのに対し、角度φを25度とした場合(実施例8)では、優れた発光特性が示されているものの実施例4よりも発光特性が劣化した。また、角度φを35度とした場合(実施例9)では、実用上許容範囲内ながら、更に発光特性が劣化するという結果が得られた。
実施例10〜15では、噴射方向の角度θを45度、角度φを0度にそれぞれ固定し、発光装置の中心位置Oと噴出口の位置S1、S2との間の距離dを40mmから320mmまで変化させた。そして、色度ばらつきを測定したところ、実施例4における距離dが100mmの場合と比較して、距離dが短くなる場合と、距離dが長くなる場合との何れの場合であっても徐々に発光特性が劣化していくことが示された。
実施例16では、実施例4と同様に噴射方向の角度θを45度、角度φを0度、発光装置の中心位置Oと噴出口の位置S1との間の距離dを100mmに設定した。そして、一本のノズルに対して移動台20及びLED素子3を180度回転させて蛍光体塗布液40をLED素子3に順次塗布した。この場合には、実施例4と同様に非常に優れた発光特性が得られることが示された。
実施例17では、蛍光体液44とセラミック前駆体液42とを別々に用意し、2本ずつのノズルを用いて各噴射方向を実施例4と同様に角度θを45度、角度φを0度、発光装置の中心位置Oと噴出口の位置との間の距離dを100mmに設定した。そして、蛍光体液44とセラミック前駆体液42とを順番にLED素子3にスプレー塗布して積層した。この場合にも、実施例4において1液の蛍光体塗布液40を用いた場合と同様に、非常に優れた発光特性を得られることが示された。
実施例18では、蛍光体液44とセラミック前駆体液42とを別々に用意し、先ず、2本のノズルからの噴射角度を実施例4と同様に角度θを45度、角度φを0度、LED素子3の中心位置Oと噴出口の位置との間の距離dを100mmに設定して蛍光体液44をLED素子3にスプレー塗布した。次いで、LED素子3の中心位置Oの直上に1本のノズルを距離dが100mm、角度θが90度となるように配置し、セラミック前駆体液42を噴射して透光性セラミック層を形成した。この場合も、実施例4において一液の蛍光体塗布液40を用いた場合と同様に、非常に優れた発光特性を得られることが示された。
以上のように、本実施形態の発光装置の製造方法によれば、水平面上に載置されたLED素子3に対して蛍光体を含有する蛍光体塗布液40を噴射することでLED素子3に波長変換部6の形成材料を塗布する噴射・塗布工程において、LED素子3の中心位置Oを含む所定の垂直面P内に2箇所の噴出口の位置S1、S2を設定し、これらの位置S1、S2からそれぞれ中心位置Oへ向けた噴射方向と水平面とのなす角度θを15度以上75度以下に設定するので、蛍光体塗布液40の噴射方向がLED基板1の上面及び側面がなす角を2等分する線(角度θが45度の線)に対して30度以下となるように設定することで、LED素子3の上面及び側面の何れに対しても蛍光体塗布液40をむらなく塗布することができる。
また、1本のノズル32により、所定の垂直面P内に設定された噴出口の位置S1から中心位置Oへ向けて蛍光体塗布液40を噴射した後に、移動台20及び/またはノズル32を移動させて、噴出口の位置S2から中心位置Oへ向けて再び蛍光体塗布液40を噴射することによって蛍光体塗布液40を塗布し、噴出口の位置S1から中心位置Oへの噴射方向と水平面とのなす角度θ、及び、噴出口の位置S2から中心位置Oへの噴射方向と水平面とのなす角度θを何れも15度以上75度以下とすることによって、従来の1ノズルによる構成の製造装置を大きく変更せずに蛍光体塗布液40をLED素子3の上面及び側面に対してむらなく塗布することが出来る。
また、特に、噴射方向が水平面に対してなす角度が、30度以上60度以下になるように設定することで、LED素子3の上面及び側面に波長変換部6がむらなく形成され、発光装置100は、非常に優れた発光特性を得ることができる。
また、蛍光体塗布液が塗布されるLED素子3の上面及び側面の法線方向と、これら上面及び側面への蛍光体塗布液40の噴射方向とのなす角度を何れも75度以下に設定することで、LED素子3の側面同士においてもむらなく蛍光体塗布液40を塗布することが出来る。従って、色むらを更に低減することができる。
また、特に、直方体形状のLED素子3を用いた場合に、蛍光体塗布液40の噴射方向の水平成分と、LED素子3の上面における一の頂点を二等分する45度の線の方向との角度差を30度以内に設定することで、LED素子3の側面同士においてもむらなく蛍光体塗布液40を塗布することが出来る。従って、色むらを更に低減することができる。
また、中心位置Oと噴出口の位置S1、S2との間の距離を50mm以上300mm以下に設定することで、ノズル32、33から噴射された蛍光体塗布液40が重力の影響を必要以上に受けずに適切な噴射強度及び噴射範囲内でLED素子3に塗布することが出来るので、LED素子3に形成される波長変換部6の強度に悪影響を与えたり、特に、側面への蛍光体塗布液40の均一な塗布に悪影響を与えたりするのを防ぐことが出来る。
また、2箇所の噴射位置にそれぞれ噴出口を設けることで、1のLED素子3に対して反対側から同時に蛍光体塗布液40が噴射可能となるので、噴射・塗布工程の時間短縮を図ることが出来ると共に、2箇所の噴射位置を相対的に固定して蛍光体塗布液40の塗布を行うことが出来るので、色むらを更に低減することができる。
また、蛍光体塗布液40に透光性セラミック前駆体を含有されて一液塗布を行うことで、容易に均等に蛍光体が分散された透光性セラミック層を形成することが出来る。
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、青色LED3と黄色光の蛍光を発するYAG蛍光体とを用いて白色光を出射したが、この組み合わせに限られない。例えば、紫外光を発光するLEDと、RGBの3色の蛍光を発する各種の蛍光体を混合したものとを用いて白色光を出射させることとしてもよい。
また、上記実施の形態では、LED素子3の上面における1の頂点の2等分線に対して対向する2箇所から蛍光体塗布液40のスプレー塗布を行ったが、例えば、隣接する2の頂点のそれぞれの2等分線に対して4箇所から蛍光体塗布液40のスプレー塗布を行わせることも可能である。
また、上記実施の形態では、LED基板1の配置された水平面に対して斜め上方から蛍光体塗布液40を噴射することで波長変換部6を形成したが、例えば、LED基板1を上下反対にして底面を保持し、水平面に対して斜め下方から蛍光体塗布液40を吹き上げるように噴射することで波長変換部6を形成することも可能である。
また、上記実施の形態では、LED基板1の上面における1の頂点の2等分線を基準として噴射位置及び噴射方向の設定を行ったが、実際の製造装置10では、上述した角度範囲内に収まる限りにおいて、例えば、LED基板1の上面の対角線方向を基準として噴射方向の設定を行ってもよい。
また、上記実施の形態では、2箇所の噴出口の位置S1、S2から中心位置Oへの距離d及び下向き角度θを同一とし、また、方位角度φの差が180度となるように配置したが、ノズル32、33の配置及び噴射速度を個別に制御することで、ノズル32、33それぞれの状態やLED素子3の形状等に合わせて異なる距離d、下向き角度θ、及び、方位角度φに設定可能としてもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、形状、配置、成分、数値などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
1 LED基板
2 メタル部
3、52 LED素子
4 突起電極
6 波長変換部
10、70 製造装置
20 移動台
30、80 スプレー装置
32、33、82、83 ノズル
34、84 連結管
36 タンク
40 蛍光体塗布液
42 セラミック前駆体液
44 蛍光体液
50 検査装置
54 色彩輝度計
60 ガラスプレート
86 タンク
100 発光装置

Claims (7)

  1. 所定の波長の光を出射する発光素子と、前記発光素子からの出射光により励起され、当該出射光の波長とは異なる波長の蛍光を出射する蛍光体を含有する波長変換部と、を備える発光装置の製造方法であって、
    水平に配置された前記発光素子に対して1又は複数の噴射部から前記蛍光体を含有する蛍光体塗布液を噴射することで前記発光素子に前記波長変換部の形成材料を塗布する塗布工程を有し、
    当該塗布工程では、
    前記発光素子の中心を含む所定の垂直面内に前記噴射部を配置する複数の噴射位置を設定し、当該噴射位置からそれぞれ前記中心位置へ向けた噴射方向と水平面とのなす角度を15度以上75度以下に設定することを特徴とする発光装置の製造方法。
  2. 前記噴射方向と水平面とのなす角度を30度以上60度以下に設定することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
  3. 所定の波長の光を出射する発光素子と、前記発光素子からの出射光により励起され、当該出射光の波長とは異なる波長の蛍光を出射する蛍光体を含有する波長変換部と、を備える発光装置の製造方法であって、
    水平に配置された前記発光素子に対して1又は複数の噴射部から前記蛍光体を含有する蛍光体塗布液を噴射することで前記発光素子に前記波長変換部の形成材料を塗布する塗布工程を有し、
    当該塗布工程では、
    前記噴射部を配置する複数の噴射位置を設定し、前記蛍光体塗布液が塗布される前記発光素子の各面の法線方向と、当該各面に対して前記蛍光体塗布液を噴射する前記噴射位置から前記発光素子の中心位置へ向けた噴射方向とのなす角度を、何れも75度以下に設定することを特徴とする発光装置の製造方法。
  4. 前記発光素子は、直方体状の形状を呈しており、
    前記塗布工程では、
    前記噴射方向の水平成分と、前記発光素子の上面における一の頂点を二等分する線の方向との角度差を30度以内に設定することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
  5. 前記中心位置と前記噴射位置との間の距離を50mm以上300mm以下に設定することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
  6. 設定された前記噴射位置には、それぞれ1個ずつ前記蛍光体塗布液を噴射する噴射口が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
  7. 前記蛍光体塗布液には、透光性セラミック前駆体が含有されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
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