JP5509271B2 - エアバッグ用インフレータ - Google Patents

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本発明は、安全装置として自動車に設置されるエアバッグに供給するガスを発生するインフレータに関するものである。
エアバッグ装置は、インフレータで発生したガスによりエアバッグを展開させることで、衝突の際の衝撃から乗員を保護するものである。
図7はシングルステージタイプのインフレータ1の構造の一例を説明する断面図で、例えば以下のように構成されている。2はディフューザ2aとアダプター2bとベース2cからなる圧力容器で、衝突検知信号によって作動する点火器3と、点火器3の着火エネルギーを瞬時に増幅する着火薬4と、瞬時に大量のガスを発生するガス発生剤5を内装している。
衝突時は、点火器3により着火薬4を介してガス発生剤5が着火され、発生したガスがディフューザ2aの側壁に設けられたガス噴出孔2aaから噴出してエアバッグを展開させる。その際、圧力容器2の側壁部内周側に沿って配置されたフィルター6によって、ガスに含まれる固形残渣の収集と、ガスの冷却を行っている(特許文献1)。
なお、図7中の7は、ディフューザ2aをベース2cに接合する時に、ガス発生剤4のこぼれを阻止し、インフレータ1の作動時にフィルター6の上端からガスが漏れるのを防ぐ中蓋である。
特開平10−29493号公報
前記インフレータ1を構成する圧力容器2の内部は、ガスの発生時には高圧になるので、この高圧に耐えることができる強度を有する材料や、形状が求められる。
ところで、前記圧力容器2を構成するディフューザ2aとベース2cは摩擦圧接により、アダプター2bとベース2cは電気抵抗溶接により接合されている。図10は、アダプター2bとベース2cの電気抵抗溶接部分(以下、接合部という。)Y2の周辺の拡大図を示す。アダプター2bとベース2cとで囲まれた断面略四角の空間部2dは、前記の電気抵抗溶接時に溶けた材料の一部が逃げてこの空間部2d内に留まるようにする為に設けられている。この空間部2dは、溶けた材料がインフレータ内部に飛散し、異物としてインフレータ内部に入り込むことを防ぐ等の為に必要である。
この圧力容器2は、ガスの発生によって内圧が上昇すると、図8(a)に示すガス発生前の形状から、図8(b)に示すようにディフューザ2aとベース2cが膨張する。従来タイプより高い圧力のインフレータガスを発生させるものになると、場合によっては破裂するおそれがあることが分かった。
圧力容器2が破断する場合の破断箇所Sは、発明者らの調査の結果、ディフューザ2aとベース2cの接合部Y1やアダプター2bとベース2cの接合部Y2ではなく、アダプター2bとベース2cの接合部Y2の外周部近傍であることが判明した(図9参照)。
つまり、従来の圧力容器2の場合、圧力容器2の内部から従来よりも高いガスの膨張圧力が加わると、アダプター2bとベース2cの接合部Y2の外周部近傍の接触部Cが支点となって、図10に2点鎖線で示すようにベース2cが変形する。この変形部に応力が集中して破断するものと推測される。
圧力容器が破断すると、破断箇所からガスが流出してインフレータのガス噴出孔から噴出するガス量が減少し、エアバッグが必要とする性能を十分に発揮できなくなる。
本発明が解決しようとする問題点は、従来のインフレータの場合、ガスの発生時に内圧が上昇すると、アダプターとベースとの接合部の外周部近傍の接触部が支点となってベースが変形し、この変形部に応力が集中して破断する場合があるという点である。
本発明のエアバッグ用インフレータは、
ガスの発生時に内圧が上昇しても、圧力容器が破断しないようにするために、
ベースにアダプター及びディフューザを接合して一体化する圧力容器内に、少なくとも前記アダプターに支持される点火器と、ガス発生剤と、前記圧力容器の側壁部内周側に沿って配置されるフィルターを内装するエアバッグ用インフレータであって、
前記アダプターと前記ベースとは溶接接合されており、
前記アダプターは、前記ベースとの接合部の近傍に鍔部を備え、
前記鍔部の外周端部の内周側に前記アダプターと前記ベースとで囲まれた空間部を備え、
前記空間部に、前記溶接接合時に溶けた材料の一部が逃げて留まるようにしながら、前記ベースの変形を許容し、前記圧力容器の破断を防止できるように、
前記鍔部の前記外周端部の前記ベースとの接触部における反接合部側に面取り形状又はR形状を形成し、当該面取り形状又はR形状を除く鍔部の外周端部とベースとが当接するようにしていることを最も主要な特徴としている。
すなわち、本発明のインフレータは、アダプターの、ベースとの接合部近傍に設けた鍔部の外周端部に面取り形状又はR形状を形成し、当該面取り形状又はR形状を除く鍔部外周端部をベースに当接させるのである。
このような構成を採用することにより、従来構造と比較して、図1に示すように、ベース2cの変形量(2点鎖線で示される部分)を大きくでき、変形時の応力集中を抑制できるようになって、圧力容器2の破断を防止することができる。
本発明では、アダプターの、ベースとの接合部近傍に設けた鍔部の外周端部に面取り形状又はR形状を形成し、当該面取り形状又はR形状を除く鍔部外周端部をベースに当接させる。
従って、内圧が上昇して圧力容器が変形する時にベースの変形量が大きくなって、ベースに発生する応力集中を抑制でき、圧力容器の破断を防止することができる。
本発明のベースとアダプターの接合部近傍断面を拡大して示した図である。 本発明のインフレータの構成要素であるベースとアダプターの接合部近傍断面を拡大して示した図で、(a)は前記接合部近傍に設けた鍔部の外周端部を面取り形状に形成した場合、(b)は前記接合部近傍に設けた鍔部の外周端部とベースとの間に隙間を設けた場合、(c)は前記接合部近傍に設けた鍔部の外周端部をR形状に形成した場合である。 図9、図10に示した従来のアダプターを使用したシミュレーションの結果を示した図で、(a)はガス発生前、(b)はガス発生後を示した図である。 図1に示した本発明のアダプターを使用したシミュレーションの結果を示した図で、(a)はガス発生前、(b)はガス発生後を示した図である。 図2(a)に示した本発明のアダプターを使用したシミュレーションの結果を示した図で、(a)はガス発生前、(b)はガス発生後を示した図である。 図9、図10に示した従来のアダプターと、図1(隙間形状)、図2(a)(面取り形状)に示した本発明のアダプターを使用して、それぞれ3個ずつ破壊試験を実施した結果を示した図である。 シングルステージタイプのインフレータの構造を説明する断面図である。 (a)はインフレータの内圧上昇前の圧力容器を示した図、(b)はインフレータの内圧上昇後の圧力容器を示した図である。 従来品の圧力容器において、より高い発生ガス圧による内圧上昇で破断した場合の破断箇所Sを説明する図である。 従来の圧力容器において、より高い発生ガス圧により内圧が上昇した場合に、アダプターとベースの接合部の外周部近傍の接触部が支点となってベースが変形した状態(2点鎖線で示す状態)を示した図である。
本発明では、ガス発生時の内圧上昇による圧力容器の破断防止という目的を、アダプターの、ベースとの接合部近傍に設けた鍔部の外周端部に面取り形状又はR形状を形成し、当該面取り形状又はR形状を除く鍔部外周端部をベースに当接させることで実現した。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図6を用いて説明する。
発明者らは、ガスが発生した際の内圧上昇時における圧力容器の破損を防止するためには、ベースの変形を許容できるようにすることが重要であると考えた。
そこで、発明者らは、ベースとアダプターの接合部における外周部近傍の接触部に着目し、図9、図10に示した従来形状と、図1及び図2(a)〜(c)に示した形状のアダプター2bについて耐圧強度のシミュレーションを行った。その結果を図3〜図5に示す。
図3は、ベース2cとの接触部Cにおけるアダプター2bの鍔部の外周側端部、すなわちアダプター2bの反接合部側に面取り形状やR形状を設けていない、図9及び10に示す従来のアダプターを使用したシミュレーションの結果を示したものである。
図3(a)の図中、中央部略右よりに白い実線で表される部分が、アダプター2bとベース2cの接触部C付近を示す。白い実線は、縦方向に2本略平行に左側が上下方向に長く、右側が上下方向に短く設けられ、その2本の平行線の下端部に接するようにほぼ直交して横方向に設けられる。この白い実線の右側が、空間部2dとアダプター2bの主要部分を示す。白い実線の下部にベース2cがある。
この図9及び図10に示す従来形状のアダプター2bを使用した場合、図3(a)(b)に示すようなシミュレーション結果になり、ベースが破断した時のインフレータの内部圧力は8640psiであった。
これに対して、図4は、ベース2cとアダプター2bの鍔部の外周端部とが接触しないように2mmの間隔を設けた、図1に示す本発明のアダプターを使用したシミュレーションの結果を示したものである。図4(a)の略中央部、白い円で囲まれた部分に、アダプター2bの鍔部の外周端部と2mmの間隔が示されている。
この図1に示す形状の本発明のアダプター2bを使用した場合、図4(a)(b)に示すようなシミュレーション結果になり、ベースが破断した時のインフレータの内部圧力は10560psiであった。
また、図5は、ベース2cとアダプター2bの鍔部の外周端部との接触部Cにおける反接合部側に2mmの面取り形状を設けた、図2(a)に示す本発明の別のアダプターを使用したシミュレーションの結果を示したものである。なお、図2(a)中の2baは面取り形状部を示し、図5(a)の略中央部、白い円で囲まれた部分にそれが示されている。
この図2(a)に示す形状の本発明のアダプター2bを使用した場合、図5(a)(b)に示すようなシミュレーション結果になり、ベースが破断した時のインフレータの内部圧力は9480psiであった。
次に、図9、図10に示した従来形状と、図1、図2(a)に示した本発明形状のアダプター2bを3個ずつ作成して破壊試験を実施した。その結果を図6に示す。
図6より明らかなように、図9、図10に示す従来形状のインフレータは、およそ8600〜8700psiで破断した。
これに対して、ベース2cとアダプター2bの鍔部の外周端部とが接触しないように2mmの隙間を設けた、図1に示すアダプター2bを使用した場合、図6に示すように、約9500psiで破断した。
また、ベース2cとアダプター2bの鍔部の外周端部との接触部Cにおける反接合部側に2mmの面取りを設けた、図2(a)に示すアダプター2bを使用した場合、図6に示すように、約9100〜9500psiで破断した。
このように、上記シミュレーションと、試験サンプルとの結果は、良く相関がとれていることが分かる。特に図1で示すアダプター2bの場合、破壊試験の結果のばらつきが非常に小さいものとなっており、信頼性のより高いインフレータとしてより好ましいものであることが分かる。
本発明は、上記のシミュレーション結果、及び破壊試験の結果に基づいてなされたもので、ベース2cとアダプター2bが接触する当該接触部Y2におけるアダプター2bの反接合部側を面取り形状に形成する。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇に含まれるものであれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
例えば、ベース2cとアダプター2bが接触する場合、当該接触部Y2におけるアダプター2bの反接合部側に、図2(c)で示すようなR形状2bb形成しても良い。このことは、面取りで良好な結果を受けて考察すれば、当然に予測可能であろう。
すなわち以上で述べたエアバッグ用インフレータは、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
例えば、ダブルステージタイプのインフレータ1にも適用できる。
1 インフレータ
2 圧力容器
2a ディフューザ
2b アダプター
2ba 面取り形状部
2bb R形状部
2c ベース
3 点火器
5 ガス発生剤
6 フィルター
Y2 アダプターとベースの接合部
C アダプターとベースの接触部

Claims (1)

  1. ベースにアダプター及びディフューザを接合して一体化する圧力容器内に、少なくとも前記アダプターに支持される点火器と、ガス発生剤と、前記圧力容器の側壁部内周側に沿って配置されるフィルターを内装するエアバッグ用インフレータであって、
    前記アダプターと前記ベースとは溶接接合されており、
    前記アダプターは、前記ベースとの接合部の近傍に鍔部を備え、
    前記鍔部の外周端部の内周側に前記アダプターと前記ベースとで囲まれた空間部を備え、
    前記空間部に、前記溶接接合時に溶けた材料の一部が逃げて留まるようにしながら、前記ベースの変形を許容し、前記圧力容器の破断を防止できるように、
    前記鍔部の前記外周端部の前記ベースとの接触部における反接合部側に面取り形状又はR形状を形成し、当該面取り形状又はR形状を除く鍔部の外周端部とベースとが当接するようにしていることを特徴とするエアバッグ用インフレータ。
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