JP5506746B2 - ラマン散乱による結晶内部応力または表面応力の測定法 - Google Patents

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本発明は、ラマン散乱による結晶内部応力または表面応力の測定法、測定装置及びプログラムに関する。
半導体基板に導入された歪によって、半導体中の電子や正孔移動度が変化することが知られている。近年、Siトランジスタのチャネル領域に歪を導入する技術(歪シリコン技術)により、トランジスタの性能向上が図られている。
トランジスタの特性は、歪によって基板にかかる応力の方向、大きさ、および分布に大きく依存する。今後、歪を導入したトランジスタを使った次世代集積回路の高性能化および歪シリコン技術の成熟のためには、トランジスタの製造条件の最適化、特性のばらつきの抑制などのために、半導体基板にかかっている応力を高精度に測定する手段が求められている。
ラマン分光法は、結晶内部応力または表面応力を非破壊、高速、高精度で測定できる利点があり、これまで半導体基板に導入された歪の評価に広く用いられてきた手段の一つである。
ラマン分光法は、基板に励起光を入射し、結晶のフォノンの励起によってエネルギーが変化する様子を、基板から散乱されてくる散乱光の波数シフトで計測する。結晶内に応力が加わっていると、励起されるフォノンのエネルギーが異なることから、散乱光の波数シフトにより応力成分が測定できる。
半導体(111)結晶基板、半導体(1−10)結晶基板については、散乱光に含まれる複数の波数成分を分析することにより、平面内の応力の測定方法が提供されている。(特許文献1、非特許文献1参照)。
Si(001)結晶基板については、結晶フォノンの中でも結晶基板水平方向に振動したフォノンモード(TOフォノンモード)を励起することにより、結晶基板中の平面内の2軸応力の測定方法が提供されている。(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4参照)
特開2009−145148号公報

J.Appl.Phys.82,2595(1997) J.Appl.Phys.86,6164(1999) J.Appl.Phys.103,093525(2008) Appl.Phys.Lett.96,212106(2010)
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、Siデバイスの製造で多く用いられるSi(001)基板の内部や表面近傍にかかる応力の測定方法としては、応力の立体成分の測定ができないという点で改善の余地を有していた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、結晶基板に導入された応力の立体成分についても測定可能な技術を提供することを目的とする。
本発明によれば、結晶基板の応力測定方法であって、前記結晶基板に、その結晶基板に垂直な方向の偏光を含むレーザー光を照射するステップと、前記レーザー光を照射した前記結晶基板から出射する散乱光を分光してその散乱光に含まれるラマン散乱光の波数シフトΔ(デルタ、以下同様)ωとΔωとΔωとのうち二つ以上を計測するステップと、計測した波数シフトΔωとΔωとΔωとのうち二つ以上と、前記結晶基板の種類によって定まる係数a及びbとから、前記結晶基板の応力の立体成分σxx、σyy、σzzのうち二つ以上を下記(数式1)から算出するステップと、を含む応力測定方法が提供される。

ここで、ΔωとΔωとはTOフォノンモードの励起による波数シフト、ΔωはLOフォノンモードの励起による波数シフトである。
この方法によれば、励起光に結晶基板に垂直方向の偏光を持たせることができるため、基板垂直方向に振動したフォノンモード(LOフォノンモード)だけでなく、基板水平方向に振動したフォノンモード(TOフォノンモード)をも励起する作用となり、散乱光に含まれるラマン散乱光の波数シフトを計測して(数式1)により解析することにより、結晶基板に導入された応力の定量測定が、応力の立体成分についても可能になる。
なお、上記の方法は本発明の一態様であり、また、本発明の装置、プログラムなども、同様の構成を有する。
本発明によれば、結晶基板に導入された応力の定量測定が、応力の立体成分についても可能になる。
第1の実施形態に係るラマン分光装置の全体構成の概略図。 第2の実施形態に係るラマン分光装置の全体構成の概略図。 第3の実施形態に係るラマン分光装置の全体構成の概略図。 第4の実施形態に係るラマン分光装置の全体構成の概略図。 第5の実施形態に係るラマン分光装置の全体構成の概略図。 レーザー光線の光路と電界方向の関係性を示す図。 対物レンズを通過したレーザー光の屈折現象を示す図。 本実施形態におけるラマン分光法による応力算出ステップのフローチャート。 Si結晶基板からのラマン散乱光の、入射光の偏光角に対する依存性。 第6の実施形態におけるラマン分光法による応力算出ステップのフローチャート。 Si(001)結晶基板のラマン散乱光の強度スペクトル。 Si(001)結晶基板のラマン散乱光の強度スペクトル。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。

<第1の実施形態>
図1aは、第1の実施形態におけるラマン分光装置の全体構成の概略図である。このラマン分光装置は、レーザー光源1、対物レンズ7、ビームスプリッタ2、結晶基板3、サンプルホルダ4、分光装置5、コンピュータ6からなる。
レーザー光源1は、Si結晶の光吸収係数の波長依存性を考慮し、好適なものを選定する。表1は、各種励起光源のSi結晶基板に対する実効的な侵入長をまとめたものである。
結晶基板表面から数nmまでの浅い領域の応力を測定する場合はアルゴンイオンレーザー(波長364nm)など紫外光レーザーが好適である。この波長付近では、共鳴ラマン散乱によるラマン散乱強度の増大を利用することにより、測定時間を大幅に短縮できる点でも好適である。また、結晶基板表面から450nm程度までの領域の応力を測定する場合はダイオード励起固体レーザー(波長532nm)など可視光レーザーが好適である。
レーザー光源1から出たレーザー光線を、ビームスプリッタ2及び対物レンズ7を通じて、サンプルホルダ4上の結晶基板3に照射する。対物レンズ7を通すことにより、このレーザー光線に、結晶基板3に垂直な方向の偏光(Z偏光成分)が含まれる。
Z偏光成分を含むレーザー光線を用いることにより、例えば(001)結晶基板において、Z偏光成分を含まないレーザー光線では励起ができないTOフォノンモードの励起が可能になる。
図2aは、レーザー光線の光路(実線)と電界方向21(一点鎖線)の関係性を示す図である。レーザー光を平面波に近似して考えると、Z偏光成分が含まれないことがわかる。
図2bは、対物レンズ7を通過したレーザー光の屈折現象を示す図である。対物レンズ7を出射した光が媒質23を通過してSi結晶基板3に入射する際の光路(実線)と電界方向21(一点鎖線)を示している。対物レンズで絞られた光のもっとも外側の光路を通る光は、結晶基板に垂直な方向からθ°傾いてSi結晶基板3に到達し、媒質23とSiの界面で屈折して、Si結晶基板3の法線からθ°傾いてSi結晶基板3に入射することになる。このため、電界方向のZ成分22(Z偏光成分)が生まれる。
この時の屈折角は、スネルの法則(数式3a)から定まる。ここで、n及びnはそれぞれ、対物レンズ7と結晶基板3間の媒質の屈折率、及びSi結晶基板の屈折率であり、θとθはそれぞれ、界面法線と入射光線(媒質内)との最大角度、及び界面法線と入射光線(結晶基板内)との最大角度である。

θは、下記(数式4)より、レンズの開口数(NA)とnとから定まる。
試料によって散乱された散乱光を、ビームスプリッタ2を通じて分光装置5に入射し、散乱光の強度スペクトルを測定する。分光装置は入射スリット、回折格子、検出器及びそれらの制御系を含む。入射スリットから入った光を、回折格子によって分離し、検出器で計測する。
コンピュータ6によって分光装置5を制御し、分光装置5で測定された散乱光の強度スペクトルをコンピュータ6の記録部に記録する。
なお、サンプルホルダ4に、結晶基板3上におけるレーザー光線のビーム径程度のステップで移動させる機構を付加し、応力の情報と、結晶基板3の面内位置情報とを対応させて計測することにより、結晶基板の応力の面内分布が得られる。
図3は、本実施形態におけるラマン分光法による応力算出ステップのフローチャートである。前記装置構成のラマン分光装置により、下記ステップで応力を求める。
レーザー照射ステップ(S31)で、結晶基板3にレーザーを照射する。
分光測定ステップ(S32)で、結晶基板3からの散乱光の強度スペクトルを計測し、コンピュータ6の記録部に記録する。
波数シフト同定ステップ(S33)で、コンピュータ6に記録された散乱光の強度スペクトルを、例えばコンピュータ6にインストールされたプログラムによってローレンツ関数に分解し、ラマン散乱光に含まれるスペクトルの波数シフト(基準波数からのシフト量)ΔωとΔωとΔωとを同定する。
これらの波数シフトは、結晶基板に応力がかかることによって縮退していたフォノンモードが分裂することにより複数観測されるものであり、結晶基板垂直方向から光を照射し、結晶基板垂直方向に散乱された光を集光する後方散乱配置の場合、基板垂直方向に振動したフォノンモード(LOフォノンモード)と、基板水平方向に振動したフォノンモード(TOフォノンモード)とに起因している。ΔωとΔωとはTOフォノンモードの励起による波数シフト、ΔωはLOフォノンモードの励起による波数シフトである。
応力成分算出ステップ(S34)で、ΔωとΔωとΔωとを(数式1)に代入し、結晶基板の応力の立体成分σxx、σyy、σzzを算出する。
なお、ΔωとΔωとΔωとのうち二つ以上と、前記結晶基板の種類によって定まる係数a及びbとから、前記結晶基板の応力の立体成分σxx、σyy、σzzのうち二つ以上を算出することもできる。
ここで、結晶基板3がSi結晶基板の場合、係数a(cm−1/GPa)は−1.12以上−0.42以下の範囲が好ましい。また係数a(cm−1/GPa)は、−1.12、−0.92、−0.77、−0.75、−0.42、に含まれる任意の2つの数値の範囲内であってもよい。既知の応力がかかったSi結晶基板のラマン散乱による測定で、ラマン散乱光の波数シフトから結晶基板の応力を精度良く算出できることが実験的にわかっているからである。
係数b(cm−1/GPa)は−2.30以上−1.66以下の範囲が好ましい。また係数b(cm−1/GPa)は、−2.30、−2.00、−1.93、−1.67、−1.66、に含まれる任意の2つの数値の範囲内であってもよい。既知の応力がかかったSi結晶基板のラマン散乱による測定で、ラマン散乱光の波数シフトから結晶基板の応力を精度良く算出できることが実験的にわかっているからである。


<第2の実施形態>
図1bは、第2の実施形態におけるラマン分光装置の全体構成の概略図である。その他の構成、作用、及び効果は第1の実施形態と同様であるが、レーザー光の光路上に偏光板10を設置する構成を含む点で、第1の実施形態と相違する。
第1の実施形態で説明した装置構成での計測では、Si結晶基板に入射する光はZ偏光成分のみならず、結晶基板に対して水平方向の偏光成分も含まれるため、TOフォノンモードとLOフォノンモードの励起が同時に起こる。この場合、TOフォノンモードの励起によるラマン散乱と、LOフォノンモードの励起によるラマン散乱が混在し、光の強度スペクトルのS/N比が低くなる場合がある。
前記波数シフトの測定は、Z偏光成分を含むレーザー光を入射して、TOフォノンモードとLOフォノンモードを同時に励起して行うだけでなく、レーザー光に含まれるZ偏光成分の割合を変化させることにより、TOフォノンモードを主に励起する条件と、LOフォノンモードを主に励起する条件とで別々に実験を行って測定することもできる。
例えば図1bのように、偏光フィルタを通じてレーザー光を入射させることで、光学フォノンモードに起因したラマンスペクトルを制御することができる。
図4は、Si(001)結晶基板からのラマン散乱光の、入射光の偏光角に対する依存性を示したものである。Z偏光成分によって励起されるTOフォノンモードに起因する成分は、偏光板の回転によっては影響を受けないため、一定であるが、結晶基板に対して水平方向の偏光成分によって励起されるLOフォノンモードに起因する成分は、Si結晶の対称性を反映して周期的に変動する。図4で、偏光角が0°(360°)と180°のところは、LOフォノンモードに起因する成分の相対的な強度がピークとなっており、偏光角が90°と270°のところは、LOフォノンモードに起因する成分がほぼゼロになっていることから、TOフォノンモードに起因する成分の相対的な強度がピークとなっている。
したがってこの実施形態によれば、LOフォノンモードに起因する成分の相対的な強度が高い条件で実験を行い、次にTOフォノンモードに起因する成分の相対的な強度が高い条件で実験を行うことで、高いS/N比で計測を行うことができるため、結果としてLOフォノンモードとTOフォノンモードを同時に励起して実験を行うよりも、高い精度で応力を算出することが可能である。
なお、TOフォノンモードに起因する成分の相対的な強度がピークとなる条件は、前記偏光板10に特殊な偏光板を用いて結晶基板3の表面付近でZ偏光成分を作り出すことによっても実現可能である。


<第3の実施形態>
図1cは、第3の実施形態におけるラマン分光装置の全体構成の概略図である。その他の構成、作用、及び効果は第1又は2の実施形態と同様であるが、対物レンズ7と結晶基板3の間に、屈折率が空気よりも高い液体8を挿入して、前記レーザー光を、対物レンズ7と、屈折率が空気よりも高い液体8と、を通じて結晶基板3に照射する構成を含む点で、第1又は2の実施形態と相違する。
図2bからもわかるように、Si結晶基板に入射する光のZ偏光成分を多くとるには、結晶基板の法線に対して、入射光の光軸の傾き(θ)を大きくとればよいことがわかる。
表2は、対物レンズ7と結晶基板3間の媒質の屈折率(n)、対物レンズの開口数(NA)及びSi結晶基板の法線に対する光軸の傾き(θ)の関係を、波長532 nmのレーザー光線について計算したものである。
表2より、例えば、媒質23が屈折率1.0の空気である場合のθが9.78°であるのに比べ、媒質23が屈折率1.8の油である場合のθは24.5°となり、Z偏光成分を多くとることができる。
したがってこの実施形態によれば、TOフォノンモードの励起を促進し、TOフォノンモードを励起することによって生じるラマン散乱ピークの波数シフトを高いS/N比で計測することが可能になる。


<第4の実施形態>
図1dは、第4の実施形態におけるラマン分光装置の全体構成の概略図である。その他の構成、作用、及び効果は第1乃至3の実施形態と同様であるが、対物レンズと結晶基板の間に近軸光線を遮蔽する遮蔽版9を設置して、前記結晶基板3に照射する構成を含む点で、第1乃至3の実施形態と相違する。なお、対物レンズと結晶基板の間に近軸光線を遮蔽する遮蔽版9を設置したこの構成の他に、レーザー光源と対物レンズの間、又はレーザー光源と対物レンズの間及び対物レンズと結晶基板の間に、近軸光線を遮蔽する遮蔽版9を設置して、照射するレーザー光の周辺光線を選択的に前記結晶基板3に照射する構成を含む構成としてもよい。
図2bからもわかるように、Z偏光成分は、対物レンズを通過する光のうちでも周辺光線に多く含まれる。この近軸光線を遮蔽して周辺光線を選択的に照射することで、照射するレーザー光のZ偏光成分の割合を高められる。
したがってこの実施形態によれば、TOフォノンモードの励起を促進し、TOフォノンモードを励起することによって生じるラマン散乱ピークの波数シフトを高いS/N比で計測することが可能になる。


<第5の実施形態>
図1eは、第5の実施形態におけるラマン分光装置の全体構成の概略図である。その他の構成、作用、及び効果は第1乃至4の実施形態と同様であるが、照射するレーザー光を、結晶基板の法線から傾けて照射する構成を含む点で、第1乃至4の実施形態と相違する。
図2bからもわかるように、Si結晶基板に入射する光のZ偏光成分を多くとるには、結晶基板の法線に対して、入射光の光軸の傾き(θ)を大きくとればよいことがわかる。結晶基板の法線から傾けて入射させる構成を含むことで、入射光の光軸の傾き(θ)を大きくとることが可能になり、照射するレーザー光のZ偏光成分の割合を高められる。
したがってこの実施形態によれば、TOフォノンモードの励起を促進し、TOフォノンモードを励起することによって生じるラマン散乱ピークの波数シフトを高いS/N比で計測することが可能になる。


<第6の実施形態>
図5は、第6の実施形態におけるラマン分光法による応力算出ステップのフローチャートである。前記第1乃至5の実施形態では、応力の3軸成分を測定する方法を示したが、第6の実施形態は、これに加えて、せん断応力を測定する方法を示す。
入射光の偏光を制御してラマン散乱光の波数シフトにおける偏光角度依存性を測定することにより、立体成分σxx、σyy、σzzに加えてせん断成分τxy、τxz、τyzが得られる。これらの算出方法は、ラマン波数シフトにおける偏光角依存性の実験結果と計算結果をフィッティングして求める。本手法は、全ての面方位の結晶基板に適用できる。
応力テンソル入力ステップ(S51)では、応力テンソルσを予め設定する。歪テンソル計算ステップ(S52)では、(数式2c)を用いて歪テンソルεを計算する。この歪テンソルを用いて永年方程式(数式2b)の固有値を求め、ラマンシフト計算ステップ(S53)では、(数式2a)を用いて各フォノンモードのラマンシフトΔωを計算する。次に、ラマンテンソル計算ステップ(S54)では、(数式2g)を用いてせん断応力が入った場合のラマンテンソルを計算する。ラマンスペクトル計算ステップ(S55)では、(数式2d)、(数式2e)、(数式2f)及び(数式2g)を用いて各フォノンモードのラマン散乱強度Iを計算する。実効ラマンシフト計算ステップ(S56)では、(数式2)を用いて実効ラマンシフトを計算する。ラマンシフトの偏光角依存性計算ステップ(S57)では、以上の計算を(数式2e)の偏光角θを変化させながら行うことで、実効ラマンシフトの偏光角依存性が得られる。実験結果とのフィッティングステップ(S58)で、この計算結果と実験結果のフィッティングを行い、尤度が最小の場合(S59:Y)、応力テンソルを出力する(S60)。尤度判定ステップ(S59)で、尤度が最小にならない場合(S59:N)、応力テンソル入力ステップ(S51)に戻り、応力テンソルを再設定する。
図1bの構成で、偏光板10又はサンプルホルダ4を回転させて、照射するレーザー光の偏光角を変化させなら、又は偏光板10を検出器の前に設置して散乱されてきたレーザー光の偏光角を制限させながら、取得した散乱光の波数シフトの偏光角依存性に関する実験結果に対して、図5のフローチャートで示したステップで応力のテンソルを変化させながら計算した下記(数式2)に基づく実効ラマンシフトの偏光角依存性を使ってパラメータフィッティングを行い、尤度が最小になる点を見つけることで、前記結晶基板3にかかる応力の立体成分やせん断応力成分τxy、τxz、τyzを算出する。
なお、前記実施形態において、尤度は最小になる必要は必ずしもなく、求める応力成分の測定精度に応じて最小に近くなればよい。
ここで、Iは各フォノモードのラマン散乱強度、Iは各フォノンモードのラマン散乱強度の総和(I+I+I)である。Δωeffは各ラマンモードの波数を強度で加重平均して求めた実効波数である。Δωは各フォノンモードのラマンシフトである。
Δωは下記(数式2a)で求めることが可能である。



ここで、λは、下記永年方程式(数式2b)の固有値、ωは無歪Siのラマン散乱の波数シフト(約520cm−1)である。



なお、この永年方程式の中で、歪テンソルεは、下記フックの法則(数式2c)により求められる。



ここで、SijはSiの弾性コンプライアンス定数、σは応力テンソルである。
また、数式2のI(各フォノモードのラマン散乱強度)は、下記(数式2d)により求められる。


ここで、einは入射光の電場、eは散乱光の電場、R'はせん断応力が入った場合のラマンテンソルである。それぞれ、下記(数式2e)(数式2f)(数式2g)で定まる。


ここで、θは偏光板の角度、αはeのz成分、e'は永年方程式(数式2b)の固有ベクトルである。e、e、eはそれぞれ、x方向、y方向、z方向の単位ベクトルである。また、R、R、Rは無歪時のラマンテンソルである。
なお、散乱光の波数シフトの偏光角依存性は、上記のように実効ラマンシフトの偏光角依存性によって求める方法以外に、(数式3b)に基づく6元連立方程式を解くことによっても可能である。
ここで、Δω、Δω30、Δω60、Δω90、Δω120、Δω160は、それぞれ偏光フィルタの角度が0°、30°、60°、90°、120°、160°の時のラマン散乱の波数シフト(cm−1)であり、τxy、τxz、τyzはせん断応力成分である。A11〜A66は、結晶基板の材料によって定まる係数である。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。結晶基板の材料には、Si、Ge、SiC、SiGe、GeSbなどが想定されるが、この限りではない、
例えば、上記の装置は一実施形態であり、同様の構成の方法、プログラムなども同様の構成を有する。また、プログラムの場合は、一時的でない記憶媒体(CD、DVD、ハードディスク、フラッシュメモリなど)に記録されたものを含む。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
前記第3の実施形態(図1c)において行った実験の実施例を、以下に図面を用いて詳述する。
図1cにおいて、屈折率が空気よりも高い液体8は、屈折率1.8のオイルを用いた。
この際の対物レンズ7の開口数(NA)は1.7である。また、ビームスプリッタとレーザー光源の間に偏光板10を設置し、TOフォノンモードの励起が最も促進される偏光角を選択してレーザー光を入射させた。
レーザー光源1としては波長532 nmの固体レーザー(diode−pumped solid−state laser: DPSS)を用いた。ラマン分光装置5の焦点距離は2,000 mm、回折格子の溝数は 1,800 /mm、スリット幅は 30 μmであり、波数分解能は約0.3 cm−1となる。1,000回測定して得られたラマンスペクトルをカーブフィッティングした結果、測定繰り返し精度0.02 cm−1を得た。
図6aと図6bは、上記構成で測定したSi(001)結晶基板のラマン散乱光の強度スペクトルである。この結晶基板は、表面から70 nmの厚さから、215 nmの厚さまで埋込酸化膜層を形成し、表面から70 nmを歪Si層としたものである。
実線61が、実験で測定された散乱スペクトルであり、破線62と一点鎖線63が、それぞれ、歪Si結晶基板からのLOフォノンモード励起によるラマン散乱光の波数シフトとTOフォノンモード励起によるラマン散乱光の波数シフトであり、点線64は無歪のSi結晶基板からのラマン散乱光の波数シフトである。
図6aの散乱スペクトルをローレンツ関数に分解して、各スペクトルの波数シフトを同定すると、歪Si結晶基板からのラマン散乱光のTOフォノンモード励起による波数シフトΔωは−3.31cm−1であり、LOフォノンモード励起による波数シフトΔωは−4.53 cm−1であった。
図6bの散乱スペクトルをローレンツ関数に分解して、各スペクトルの波数シフトを同定すると、歪Si結晶基板からのラマン散乱光のTOフォノンモード励起による波数シフトΔωは−3.31 cm−1であり、LOフォノンモード励起による波数シフトΔωは−4.53 cm−1であった。
このため、(数式1)を用いて、a=−1.12、b=−2.30として計算すると、x = [100], y = [010], z = [001]と座標をとった場合に、x方向、y方向、z方向の応力はそれぞれ、 0.99 GPa、0.9 GPa、−0.0 GPaとなり、Si結晶基板面内で等方的な応力がかかっていて、面外方向はほぼ無応力であることがわかった。
今回は、シリコン結晶よりも格子定数の大きいSiGe結晶上にエピタキシャル成長して得られた歪Si層を持つ歪Si結晶基板を測定対象としたため、予想通り、z方向の応力はほぼゼロであることがわかった。また、x方向とy方向の応力が等方的であることもわかった。
ここに結晶基板の法線方向に大きな格子定数の物質を埋め込んだような結晶基板の応力を測定する場合は、σzzの値も大きく見積もられると予想される。近年、半導体デバイスの高集積化に伴い、チャネル領域を結晶基板の法線方向に作りこむ縦型トランジスタの製造が始まりつつある。このようなトランジスタのチャネル領域を結晶基板に対して後方散乱配置で応力を測定しなければならない場合、応力の立体成分、特にσzzの測定は重要になる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
1 レーザー光源
2 ビームスプリッタ
3 結晶基板
4 サンプルホルダ
5 分光装置
6 コンピュータ
7 対物レンズ
8 屈折率が空気よりも高い液体
9 遮蔽版
10 偏光板
21 電界方向
22 電界方向のZ成分(Z偏光成分)
23 媒質
61 実験で測定された散乱スペクトル
62 LOフォノンモード励起によるラマン散乱光の波数シフト
63 TOフォノンモード励起によるラマン散乱光の波数シフト
64 無歪のSi結晶基板からのラマン散乱光の波数シフト
S31 レーザー照射ステップ
S32 分光測定ステップ
S33 波数シフト同定ステップ
S34 応力成分算出ステップ
S51 応力テンソル入力ステップ
S52 歪テンソル計算ステップ
S53 ラマンシフト計算ステップ
S54 ラマンテンソル計算ステップ
S55 ラマンスペクトル計算ステップ
S56 実効ラマンシフト計算ステップ
S57 ラマンシフトの偏光角依存性計算ステップ
S58 実験結果とのフィッティングステップ
S59 尤度判定ステップ
S60 応力テンソル出力ステップ

Claims (10)

  1. 結晶基板の応力測定方法であって、
    (1)前記結晶基板に、その結晶基板に垂直な方向の偏光を含むレーザー光を照射するステップと、
    (2)ステップ(1)で前記レーザー光を照射した前記結晶基板から出射する散乱光を分光して、その散乱光に含まれるラマン散乱光の波数シフトΔωとΔωとΔωとのうち二つ以上を計測するステップと、
    (3)ステップ(2)で計測した波数シフトΔωとΔωとΔωとのうち二つ以上と、前記結晶基板の種類によって定まる係数a及びbとから、前記結晶基板の応力の立体成分σxx、σyy、σzzのうち二つ以上を下記(数式1)から算出するステップと、を含む応力測定方法。

    ここで、ΔωとΔωとはTOフォノンモードの励起による波数シフト、ΔωはLOフォノンモードの励起による波数シフトである。
  2. 前記結晶基板がSi(001)基板である場合であって、前記係数aは−1.12(cm−1/GPa)から−0.42(cm−1/GPa)の範囲、前記係数bは−2.30(cm−1/GPa)から−1.66(cm−1/GPa)の範囲である請求項1に記載の応力測定方法。
  3. ステップ(1)で照射するレーザー光の偏光角を変化させるステップと、ステップ(2)で計測するラマン散乱光の波数シフトと前記偏角の関係性に関する実験結果にパラメータフィッティングを行って前記結晶基板のせん断応力成分τxy、τxz、τyzを算出するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の応力測定方法。
  4. ステップ(1)が、前記レーザー光を、集光部を通じて前記結晶基板に照射するステップを含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の応力測定方法。
  5. ステップ(1)が、前記レーザー光を、偏光板を通じて前記結晶基板に照射するステップを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の応力測定方法。
  6. ステップ(1)が、前記レーザー光を、前記集光部と、屈折率が空気よりも高い液体と、を通じて前記結晶基板に照射するステップを含む請求項に記載の応力測定方法。
  7. ステップ(1)が、前記レーザー光を、近軸光線を遮蔽する遮蔽板を設置して、周辺光線を選択的に前記結晶基板に照射するステップを含む請求項4または6に記載の応力測定方法。
  8. ステップ(1)が、前記レーザー光を、前記結晶基板の法線から傾けて照射するステップを含む請求項1乃至3および5のいずれか1項に記載の応力測定方法。
  9. 結晶基板の応力測定装置であって、
    (1)前記結晶基板に、その結晶基板に垂直な方向の偏光を含むレーザー光を照射する照射部と、
    (2)ステップ(1)で前記レーザー光を照射した前記結晶基板から出射する散乱光を分光して、その散乱光に含まれるラマン散乱光の波数シフトΔωとΔωとΔωとのうち二つ以上を計測する計測部と、
    (3)ステップ(2)で計測した波数シフトΔωとΔωとΔωとのうち二つ以上と、前記結晶基板の種類によって定まる係数a及びbとから、前記結晶基板の応力の立体成分σxx、σyy、σzzのうち二つ以上を下記(数式1)から算出する算出部と、を含む応力測定装置。

    ここで、ΔωとΔωとはTOフォノンモードの励起による波数シフト、ΔωはLOフォノンモードの励起による波数シフトである。
  10. 結晶基板の応力測定装置を制御するためのプログラムであって、
    (1)前記結晶基板に、その結晶基板に垂直な方向の偏光を含むレーザー光を照射するステップと、
    (2)ステップ(1)で前記レーザー光を照射した前記結晶基板から出射する散乱光を分光して、その散乱光に含まれるラマン散乱光の波数シフトΔωとΔωとΔωとのうち二つ以上を計測するステップと、
    (3)ステップ(2)で計測した波数シフトΔωとΔωとΔωとのうち二つ以上と、前記結晶基板の種類によって定まる係数a及びbとから、前記結晶基板の応力の立体成分σxx、σyy、σzzのうち二つ以上を下記(数式1)から算出するステップと、を結晶基板の応力測定装置に実行させるためのプログラム。

    ここで、ΔωとΔωとはTOフォノンモードの励起による波数シフト、ΔωはLOフォノンモードの励起による波数シフトである。
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