JP2009145148A - ラマン散乱による内部応力測定方法及びラマン分光測定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラマン散乱測定において、測定スペクトルを無応力下にある同一材料単結晶のラマンスペクトルの幅以下の幅をもつ複数の成分に分解する段階、分解したそれぞれの成分についてピーク波数のシフト量を導出する段階、導出された複数の成分についてのシフト量の比の値を算出する段階及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する段階を含むラマン散乱による内部応力測定方法である。
【選択図】図1
Description
例えば520cm−1に現れるSiのラマンピークは、引っ張り応力がかかると低波数側にシフトし、圧縮応力がかかると高波数側にシフトする。従って、ラマンのピーク波数シフトの空間分布を測定することにより、原理的には、応力分布を測定できる可能性がある。
(1)ラマン散乱測定において、複数の信号成分を抽出する段階、それぞれの信号成分についてピーク波数のシフト量を導出する段階、複数の信号成分についてのシフト量の比の値を算出する段階及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する段階を含むラマン散乱による内部応力測定方法。
(2)上記複数の信号成分を抽出する段階は、励起光と検出光の偏光方向の配置を変えることにより、各々の信号成分を区別して測定することよりなることを特徴とする(1)に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
(3)上記結晶が、立方晶系の結晶であることを特徴とする(1)に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
(4)上記複数の信号成分は、[110]方向の偏光を持つ光を(1−10)面に入射し、[110]方向の偏光を持つ光のラマン信号及び[001]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出することを特徴とする(3)に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
(5)上記結晶がSi、Ge、SiGe、GaAsであることを特徴とする(3)又は(4)に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
(6)上記複数の信号成分は次の、[100]方向の偏光を持つ光で励起して[010]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[100]方向の偏光を持つ光で励起し[001]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[010]方向の偏光を持つ光で励起し[001]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[110]方向の偏光を持つ光で励起し[110]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[001]方向の偏光を持つ光で励起し[110]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[−110]方向の偏光を持つ光で励起し[−110]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[−110]方向の偏光を持つ光で励起し[001]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、の内、少なくとも2種類以上の光学配置で測定することを特徴とする(3)に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
(7)ラマン散乱測定において、測定スペクトルを無応力下にある同一材料単結晶のラマンスペクトルの幅以下の幅をもつ複数の成分に分解する段階、分解したそれぞれの成分についてピーク波数のシフト量を導出する段階、導出された複数の成分についてのシフト量の比の値を算出する段階及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する段階を含むラマン散乱による内部応力測定方法。
(8)上記分解された複数の成分のそれぞれが、ローレンツ関数で記述されることを特徴とする(7)に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
(9)上記結晶はSi結晶であり、半値幅が3cm−1以下の複数のローレンツ関数で記述される成分に分解することを特徴とする(7)に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
(10)ラマン散乱測定において、複数の信号成分を抽出する手段、それぞれの信号成分についてピーク波数のシフト量を導出する手段、複数の信号成分のシフト量の比の値を算出する手段及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する手段を備えたラマン分光測定装置。
(11)(6)に記載のラマン散乱による内部応力測定方法を実施するためのラマン分光測定装置。
(12)ラマン散乱測定において、測定スペクトルを無応力下にある同一材料単結晶のラマンスペクトルの幅以下の幅をもつ複数の成分に分解する手段、分解したそれぞれの成分についてピーク波数のシフト量を導出する手段、導出された複数の成分についてのシフト量の比の値を算出する手段及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する手段を備えたラマン分光測定装置。
例えば、[001]方向に1軸性の圧縮応力を加えると図1(a)に示すように、縮退のない1重項と2重に縮退した2重項に分裂する。一方、[110]方向の1軸性応力を印加した場合は、図1(b)に示すように、縮退は完全に解け、3つの1重項に分裂する。このように、試料におけるそれぞれのラマン信号の成分が、どのように分裂するかを調べることにより、応力の方向を知ることができる。
従って、応力印加により分裂したラマンスペクトル各成分のピーク波数におけるシフト量の比を測定することによって応力の方向、種類を決めることが出来る。ちなみに、I3は、[001]偏光励起、[1−10]偏光成分を検出する配置、I2は、[110]偏光励起、[110]偏光成分を検出する配置、I1は、[110]偏光励起、[001]偏光成分を検出する配置で測定することができる。
[1−10]方向に伸びた幅250nmのSiストライプが、深さ300nmのSiO2のトレンチでアイソレートされた基板で、(1−10)断面のラマン散乱による内部応力測定を行った。図2において、a方向を[110]、b方向を[001]とする。トレンチ底中央部(図2に中のA点)におけるラマンスペクトルを図3に示す。
Siにおいて、[001]方向の1軸性圧縮応力の場合、1重項は1GPaの圧縮応力に対して1.11cm−1シフトし、2重項に対しては2.27cm−1シフトするので、A点には約310MPaの[001]方向の1軸性圧縮応力がかかっていることがわかった。また、A点から下1μmの位置B点で同様の測定と解析を行ったところ、90MPaの[001]方向の1軸性圧縮応力がかかっていることが分かった。
図4(a)にaa偏光配置、(b)にab偏光配置で測定した時のラマンスペクトルを示す。このスペクトルは、半値幅が、A点、B点におけるラマンスペクトルの半値幅3cm−1よりも広い。これは、A、B点で得られたスペクトルと異なり、複数の成分からなっているためである。
前述したように、aa偏光配置では、I2成分が、ab偏光配置ではI3成分がラマン選択則により許容されているが、測定されたラマン信号が複数の成分に分解されるのは、Siストライプのエッジ部分と中央部分では受ける応力が異なり、エッジ部分の信号と中央部分の信号を両方とも拾っているためである。図中に複数のローレンツ曲線に分解した結果をピーク波数とともに破線で示す。
それぞれの成分の、無応力時のピーク位置からのシフト量の比を計算すると1.26となる。これは、前述したように[110]方向の1軸性応力を印加した場合に分裂する3つの成分のうち、I3とI2のシフト量の比、Δω3/Δω2=1.25と良く一致する。したがって、C点には、[110]方向の1軸性圧縮応力がかかっていることがわかる。また、I3、I2に対しては、1GPaの圧縮応力に対して、それぞれ2.30cm−1、2.88cm−1であるから、C点には830MPaの圧縮応力がかかっていることが分かった。
シフト量の比は、測定位置がSiストライプの内部にあるときは、上述のC点とほぼ同様な値で、ストライプには、[110]方向の1軸性圧縮応力が加わっていることを示す。測定位置がストライプ底部からさらに基板内部に至るに従い、上記の比の値は、[110]方向の1軸性応力の理論値1.25より大きくなり、表面から100nm程度の位置で、上述のA点あるいはB点と同様に、2程度の値を示した。
この解析により、Siストライプ下でも、基板表面から1000nm程度以上の深さでは、[001]方向の1軸性圧縮応力が加わっていること、さらに、1000nm以下の深さの領域には、[110]方向と[001]方向が重畳した応力、即ち、2軸性の圧縮応力が加わっていることが、分かった。
Claims (12)
- ラマン散乱測定において、複数の信号成分を抽出する段階、それぞれの信号成分についてピーク波数のシフト量を導出する段階、複数の信号成分についてのシフト量の比の値を算出する段階及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する段階を含むラマン散乱による内部応力測定方法。
- 上記複数の信号成分を抽出する段階は、励起光と検出光の偏光方向の配置を変えることにより、各々の信号成分を区別して測定することよりなることを特徴とする請求項1に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
- 上記結晶が、立方晶系の結晶であることを特徴とする請求項1に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
- 上記複数の信号成分は、[110]方向の偏光を持つ光を(1−10)面に入射し、[110]方向の偏光を持つ光のラマン信号及び[001]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出することを特徴とする請求項3に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
- 上記結晶がSi、Ge、SiGe、GaAsであることを特徴とする請求項3又は4に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
- 上記複数の信号成分は次の、[100]方向の偏光を持つ光で励起して[010]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[100]方向の偏光を持つ光で励起し[001]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[010]方向の偏光を持つ光で励起し[001]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[110]方向の偏光を持つ光で励起し[110]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[001]方向の偏光を持つ光で励起し[110]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[−110]方向の偏光を持つ光で励起し[−110]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、[−110]方向の偏光を持つ光で励起し[001]方向の偏光を持つ光のラマン信号を検出する、の内、少なくとも2種類以上の光学配置で測定することを特徴とする請求項3に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
- ラマン散乱測定において、測定スペクトルを無応力下にある同一材料単結晶のラマンスペクトルの幅以下の幅をもつ複数の成分に分解する段階、分解したそれぞれの成分についてピーク波数のシフト量を導出する段階、導出された複数の成分についてのシフト量の比の値を算出する段階及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する段階を含むラマン散乱による内部応力測定方法。
- 上記分解された複数の成分のそれぞれが、ローレンツ関数で記述されることを特徴とする請求項7に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
- 上記結晶はSi結晶であり、半値幅が3cm−1以下の複数のローレンツ関数で記述される成分に分解することを特徴とする請求項7に記載のラマン散乱による内部応力測定方法。
- ラマン散乱測定において、複数の信号成分を抽出する手段、それぞれの信号成分についてピーク波数のシフト量を導出する手段、複数の信号成分のシフト量の比の値を算出する手段及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する手段を備えたラマン分光測定装置。
- 請求項6に記載のラマン散乱による内部応力測定方法を実施するためのラマン分光測定装置。
- ラマン散乱測定において、測定スペクトルを無応力下にある同一材料単結晶のラマンスペクトルの幅以下の幅をもつ複数の成分に分解する手段、分解したそれぞれの成分についてピーク波数のシフト量を導出する手段、導出された複数の成分についてのシフト量の比の値を算出する手段及び算出された該シフト量の比の値に基づいて結晶の内部応力の方向と種類を決定する手段を備えたラマン分光測定装置。
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