JP5506139B2 - 化学装置に対する腐食を低減する方法 - Google Patents

化学装置に対する腐食を低減する方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5506139B2
JP5506139B2 JP2007009273A JP2007009273A JP5506139B2 JP 5506139 B2 JP5506139 B2 JP 5506139B2 JP 2007009273 A JP2007009273 A JP 2007009273A JP 2007009273 A JP2007009273 A JP 2007009273A JP 5506139 B2 JP5506139 B2 JP 5506139B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
corrosion
fraction
gas condensate
steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007009273A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008174635A (ja
Inventor
均 岡崎
憲明 安田
正敏 斎藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Eneos Corp
Original Assignee
JXTG Nippon Oil and Energy Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JXTG Nippon Oil and Energy Corp filed Critical JXTG Nippon Oil and Energy Corp
Priority to JP2007009273A priority Critical patent/JP5506139B2/ja
Publication of JP2008174635A publication Critical patent/JP2008174635A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5506139B2 publication Critical patent/JP5506139B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、ガスコンデンセート及び/又はその留分を取り扱う化学装置を備えた処理システムに関する。また、本発明は該ガスコンデンセート及び/又はその留分による化学装置に対する腐食を低減するための方法に関する。
油田やガス田から産出されるガスコンデンセートは、主にナフサ留分から灯軽油留分程度の留分からなり、常圧残油分を殆ど含まない、硫黄分や水泥分などを殆ど含まないという特徴を有している。このため、ナフサ等の代替として石油化学工業において、例えばエチレン分解工程の原料として、エチレンやプロピレンといったオレフィン類、ベンゼンやトルエンなどの芳香族化合物などの基礎化学製品の生産に使用される。また、石油精製分野においては、そのまま或いは常圧蒸留されて、ガソリン留分、灯軽油留分などの揮発油留分として利用される。
ガスコンデンセートには、産地等によりその含有量は種々異なるが、例えば、水銀、砒素、鉛などの重金属が含まれている。ガスコンデンセート及びその留分を石油化学原料として用いた場合や石油精製設備での2次処理を行う場合に、これら重金属に起因する装置の腐食や触媒の被毒が問題となるため、従来これらの重金属の除去に関心が持たれており、水銀や砒素などの除去方法が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2など)。
近年、大気汚染の防止や環境保全の観点から石油製品の低硫黄化の要求が強まっているなどの状況から、ナフサ等の代替原料としてガスコンデンセートが改めて見直されている。しかしながら、ガスコンデンセートに含まれる重金属の除去については種々の検討がなされているものの、石油精製分野や石油化学分野において蒸留装置などの化学装置で取り扱う際のガスコンデンセートの腐食性は必ずしも明確になっておらず、ガスコンデンセートによる化学装置に対する腐食対策も確立されていない。通常、蒸留塔の塔底部など高温部分の防食方法としては、例えば酸化チタンなどの金属溶射、或いはセラミックの溶射が行われている(例えば、特許文献3)。
特開平6−33071号公報 特開平11−28305号公報 特開平5−65618号公報
しかしながら、金属やセラミックの溶射は手間とコストがかかる上、部位によっては溶射が困難な場合もある。また、使用する環境などにより、溶射被膜が劣化する場合もあり、その場合は新たに溶射被膜を再施工する必要もある。
そこで、本発明は、従来とは異なる手段により、ガスコンデンセートによる化学装置に対する腐食を低減するための方法を提供することを課題とする。また、そのような方法を実現するためのガスコンデンセートの処理システムを提供することを別の課題とする。
本発明者は上記課題を解決すべくガスコンデンセートを取り扱う化学装置の防食手段について鋭意検討した結果、ガスコンデンセート及び/又はその留分を含有する蒸気及び/又は液の少なくとも一部を、化学装置内での予定処理温度以上の温度に加熱した後、前記化学装置へ供給することにより、当該ガスコンデンセートの腐食作用を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。ここで、「予定処理温度」とは、化学装置内でガスコンデンセートを処理するために本来到達することが予定されているガスコンデンセートの温度のうちで最高温度のことを言い、本発明の予加熱処理の有無に関わらず化学装置内で到達される温度である。例えば、化学装置が蒸留装置であるならば、予定処理温度は塔底温度である。
即ち、本発明は以下の発明を包含するものである。
[1] 硫黄分0.5質量%以下、全酸化0.1mgKOH/g以下且つ塩素10質量ppm以下のガスコンデンセートを該化学装置内へ導入する前に、該化学装置内における該ガスコンデンセートの予定処理温度以上の温度に該ガスコンデンセートの少なくとも一部を予加熱することを含む、化学装置に対する腐食を低減する方法。
[2] ガスコンデンセートは、前記化学装置内における前記ガスコンデンセートの予定処理温度よりも5℃〜40℃高い温度まで、予め加熱される前記[1]に記載の方法。
[3] 化学装置内における前記ガスコンデンセートの予定処理温度は、200〜350℃である前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] ガスコンデンセートが200℃〜350℃の温度範囲において接触する箇所の金属材料に、9Cr鋼以上の耐食材料を用いることを含む[1]〜[3]の何れかに記載の方法。
[5] 化学装置が蒸留装置、脱硫装置、反応装置、吸収装置、抽出装置又は混合撹拌装置である[1]〜[4]の何れかに記載の方法。
本発明によれば、ガスコンデンセート及び/又はその留分を含有する蒸気及び/又は液はその腐食性が低減された状態で化学装置内に導入されるため、化学装置内で前記蒸気及び/又は液が接触する部材に対する腐食が低減され、長期間にわたって安定的に化学装置を運転することが可能となる。
本発明に係る処理システム又は方法で取り扱うことのできるガスコンデンセートには特に制限はない。しかしながら、本発明者がガスコンデンセートの腐食性について検討したところ、ある種のガスコンデンセートは硫黄分含有量、塩素分、全酸価が低く(例えば硫黄分が0.5重量%以下、全酸価が0.1mgKOH/g且つ塩素10重量ppm以下)、それらの値からは腐食性が低いと推定されるにもかかわらず、例えば蒸留塔の塔底部などの高温となる環境において、炭素鋼に対する腐食性が通常の原油に比べて遙かに大きいケースがあることが判明した。該ガスコンデンセートは、代表的な中東系原油であるアラビアン・ヘビー、あるいはアラビアン・ミーディアム等、硫黄濃度が数パーセントである原油に比し、硫黄濃度は0.5重量%以下にも拘わらず、同一腐食試験条件において、炭素鋼における腐食速度がこれらの原油よりも2倍以上大きい。このような物性を示すガスコンデンセートは例えばサウスパースコンデンセート、ノースフィールド・コンデンセート等であり、本発明は斯かるガスコンデンセートに対して特に効果的である。該腐食性ガスコンデンセート中に如何なる腐食性成分が含有されているかについて詳細は分かっていないが、該ガスコンデンセートは典型的には以下の条件で行う腐食試験において0.5〜10mm/Yの腐食性を示す。
[腐食試験]
腐食試験は次のようにして行う。窒素導入管、冷却器、及び油温測定用の温度計を備えた500mLの耐熱ガラス製のフラスコに、サンプル油20gを仕込み、試験金属片(約10mm×25mm×3mm)を浸漬する。窒素気流下(100mL/min)に1次保持温度まで300℃/hの昇温速度で昇温し、その温度で1時間保持して油温並びにサンプル油の状態を安定させる。1次保持温度としては、腐食試験温度が325℃以上の場合は300℃、腐食試験温度が325℃未満の場合は腐食試験温度より50℃低い温度とする。その後、腐食試験温度まで25℃/hの昇温速度で昇温した後、同温度で1.5時間保持する。その後、加熱を終了し、約1時間で室温まで冷却する。試験終了後、試験金属片を取り出して腐食により発生した腐食生成物を除去した後、腐食試験前後の重量変化を測定し、腐食試験温度での保持時間(1.5h)から、腐食試験温度における腐食速度(mm/Y)を算出する。
本発明が対象とする前記ガスコンデンセートの留分としては、例えばガソリン留分、ナフサ留分、灯油留分、軽油留分、重質軽油留分及び重油留分又はこれらの混合留分が挙げられるが、前記ガスコンデンセートの留分である限り特に制限はない。
前記ガスコンデンセートを取り扱う化学装置としては、ガスコンデンセート及び/又はその留分を化学的に処理する装置であれば特に制限はないが、典型的にはガスコンデンセートによる腐食性が大きくなる高温処理(200〜350℃)を伴う化学装置、具体的には蒸留装置、脱硫装置、反応装置、吸収装置、抽出装置、混合撹拌装置等が挙げられる。200℃未満の温度では、前記ガスコンデンセートの腐食性は、一般的な原油と比べて同等レベル程度であるので、装置腐食がそれほど大きな問題となることは少ない。しかしながら、典型的には200〜350℃、より典型的には250〜350℃の温度では、前記ガスコンデンセートは、理由は明らかでないが、上で述べたように、一般的な原油に比べて遙かに大きな腐食性を示すようになる。一方、350℃を越える温度では、一般的な原油においても高温硫化物腐食に伴う装置腐食の問題が発生することが知られており、通常は例えば金属溶射などの腐食対策が施されることが多い。このため、本発明は、一般的な原油等では腐食が殆ど問題とはならない温度である200〜350℃の温度範囲において、前記ガスコンデンセートの蒸気及び/又は液が接触する化学装置において、特に有用である。
従って、本発明の一実施形態においては、化学装置内でのガスコンデンセート及び/又はその留分の予定処理温度は200〜350℃であり、より典型的には250〜350℃である。本発明では、前記ガスコンデンセート及び/又はその留分を含有する蒸気及び/又は液の少なくとも一部、好ましくは全部を、化学装置内での予定処理温度以上の温度に予め加熱した後に前記化学装置へ供給することにより、当該蒸気及び/又は液に起因する腐食作用を低減することができる。この理由は明らかではないが、化学装置内の処理温度において強い腐食作用を示す物質が、事前に化学装置内における予定処理温度以上の温度に加熱されることで分解或いは変質するために、腐食作用が低減するものと考えられる。
前記蒸気及び/又は液が予め加熱される温度は、予定処理温度よりもなるべく高い方が腐食低減効果が大きくなる傾向にあるが、高くし過ぎてもエネルギが無駄になることや有用成分まで分解されてしまう虞があることから、前記化学装置内における前記ガスコンデンセートの予定処理温度よりも5〜40℃高い温度とするのが好ましく、5〜30℃高い温度とするのがより好ましい。
加熱手段としては公知の加熱手段を制限なく使用することができ、通常、箱形水平燃焼式加熱炉、箱形垂直燃焼式水平管式加熱炉、箱形垂直燃焼垂直管式加熱炉、直立円筒型加熱炉などの管式加熱炉や二管式熱交換器、多管式熱交換器、単管式熱交換器などの熱交換器を使用することができる。
ガスコンデンセート及び/又はその留分を含有する蒸気及び/又は液の少なくとも一部、好ましくは全部が、予加熱装置において化学装置内の予定処理温度以上の温度に加熱され腐食性を低減された後、化学装置に導入される。予加熱装置において、前記蒸気及び/又は液の少なくとも一部が、該化学装置内の処理予定温度以上の温度にいったん加熱されていれば良く、化学装置に導入される前記蒸気及び/又は液の温度が予加熱温度と必ずしも同じでなくとも良く、予加熱温度より低くても良く、予定処理温度まで低下していても良く、予定処理温度未満にまで低下しても良い。
従って、本発明の一実施形態においては、化学装置に供給される前に予め加熱されたガスコンデンセート及び/又はその留分は、いったん所望の温度まで冷却された後に化学装置に供給され、別の一実施形態においては、冷却されずに予加熱温度で化学装置に供給される。また、化学装置の入口におけるガスコンデンセート及び/又はその留分の温度は、本発明の一実施形態において、化学装置内での予定処理温度よりも低い温度であり、別の一実施形態において、前記化学装置内におけるガスコンデンセート及び/又はその留分の予定処理温度又はそれより高い温度である。本発明の典型的な一実施形態においては、ガスコンデンセート及び/又はその留分は冷却操作を受けることなく予定処理温度よりも高い温度のままで化学装置に導入される。
また、ガスコンデンセート及び/又はその留分を予加熱した後、冷却して一旦タンク等へ受け入れ、その後該タンク内のガスコンデンセート及び/又はその留分を化学装置に供給してもよい。但し、エネルギ効率や化学装置内の腐食防止の観点からは予定処理温度−20℃〜予定処理温度+40℃、より好ましくは予定処理温度−10℃〜予定処理温度+30℃の範囲の温度で化学装置に供給されるのが好ましい。
具体的には、化学装置内でのガスコンデンセート及び/又はその留分の予定処理温度が290℃の場合、前記ガスコンデンセート及び/又はその留分を含有する蒸気及び/又は液の少なくとも一部、好ましくは全部を、290℃または290℃より高い温度、好ましくは295℃以上、更に好ましくは300℃以上の温度に予め加熱した後に、冷却して又は冷却せずに、該化学装置内に該蒸気及び/又は液を導入する。先述したように、前記蒸気及び/又は液の少なくとも一部が予め加熱される温度を高くし過ぎると弊害が生じる虞があるので、330℃以下とするのが好ましく、320℃以下とするのがより好ましい。
腐食性軽減の効果を高めるためには化学装置内の予定処理温度以上の温度に加熱する時間を一定程度の時間にわたり確保するのが好ましいが、あまり長くても効果が飽和することやコスト高となるので、通常は0.01〜4時間であり、好ましくは0.05〜2時間である。予加熱処理における温度と時間とは互いに関連する条件であることは言うまでもない。例えば、予加熱処理において加熱温度がより高くなれば加熱時間もその分短くても良い。予加熱処理において化学装置内の予定処理温度と同じ温度に加熱する場合は、例えば10分〜1時間程度であり、化学装置内の予定処理温度+10℃の温度に加熱する場合は、例えば2分〜30分である。
以上のようにして、予加熱装置において該化学装置の予定処理温度以上の温度に加熱されたガスコンデンセート及び/又はその留分の蒸気及び/又は液は化学装置に対する腐食性が低減されているが、本発明の好ましい一実施形態においては、更に前記蒸気及び/又は液が200℃〜350℃の温度範囲において接触する部分(予加熱装置及び化学装置等)の金属材料に、9Cr鋼以上の耐食鋼材を用いる。そのような部分としては、例えば蒸留塔、加熱炉チューブ、熱交換器、ベッセル又はポンプの内部、接続配管が挙げられる。特に、予加熱装置に入るガスコンデンセート及び/又はその留分の蒸気及び/又は液は腐食性が低減される前の状態であるため、このような耐食鋼材を用いるのが好ましい。
9Cr鋼以上の耐食鋼材とは、鋼材中のクロム(Cr)金属を9重量%以上(典型的には11〜30重量%)含む金属材料を意味し、例えば9Cr鋼、13Cr鋼、9Cr−1Mo鋼、SUS301鋼、SUS302鋼、SUS304鋼、SUS305鋼、SUS308鋼、SUS309鋼、SUS310鋼、SUS316鋼、SUS316L鋼、SUS317鋼、SUS321鋼等のオーステナイト系ステンレス鋼、SUS405鋼、SUS430鋼等のフェライト系ステンレス鋼、SUS403鋼、SUS410鋼等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS329J1鋼等の2相系(オーステナイト・フェライト系)ステンレス鋼などが挙げられる。
防食性の観点からは、クロムを13重量%以上含有する耐食鋼材が好ましく、16重量%以上含有する耐食鋼材がより好ましい。但し、Crの含有量が多すぎると、溶接時に材料の脆化等の弊害が生じることから、Crの含有量は好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
[実施形態]
本発明の実施形態の一例を、図1を用いて説明する。この実施形態は、中東産のガスコンデンセートAを、第1の蒸留装置でガソリン留分Bを分離した後、第2の蒸留装置により灯油留分C、軽油留分D及び重質軽油留分Eを得る装置である。第1蒸留塔10及び第2蒸留塔20には、それぞれトレー11及びトレー21が適当な間隔で配置されている(一部は図示を省略している)。なお、ガスコンデンセートAからは、予めLPG留分が取り除かれている。
原料であるガスコンデンセートAは、フィードライン1に具えられた熱交換器(図示せず)により、例えば220℃に加熱されて第1蒸留塔10の中段に導入される。第1蒸留塔10のボトム部分の運転温度は例えば290℃となるように設定される。ボトム部分より抜き出された留分の一部はポンプ15によりリボイラ16に送られて、例えば310℃に加熱され第1蒸留塔10のボトム近傍に戻される。一方、ガソリン留分は、塔頂より抜き出され熱交換機12で冷却されベッセル13を経てガソリン留分Bとして回収されるとともに、一部はポンプ14を経てライン3によりリフラクスとして蒸留塔10の塔頂部に戻される。
第1蒸留塔のボトム部分から抜き出された留分は、次いで、フィードライン9を経て、加熱炉22に送られ、例えば300℃に加熱されて第2蒸留塔20のボトム付近に導入され、蒸留されて蒸留塔20の塔頂部並びに中段よりそれぞれ留分が抜き出され、灯油留分C及び軽油留分Dとして回収される。蒸留塔20のボトム部分は、例えば290℃程度の温度に設定され、ボトム油はポンプ27を経てライン39から重質軽油留分Eとして回収されるとともに、一部はライン38により加熱炉22の前に戻される。
本実施形態において、第2蒸留塔における予定処理温度は、ボトム部分の290℃である。この温度に対して、第1蒸留装置においては、第1蒸留塔10のボトム油の一部はリボイラ16で加熱され、第2蒸留塔の予定処理温度以上の温度である310℃の温度に加熱され、これにより第1蒸留塔のボトム留分は腐食性が低減される。このようにして、腐食性が低減された留分が第2の蒸留装置へ導入され、処理される。しがたって、本実施形態において、第1の蒸留装置並びに加熱炉22が予加熱装置に相当する。
さらに、図示の一実施形態において、例えば、第1蒸留塔10及び第2蒸留塔20において温度が200℃以上となる領域の金属材料にはSUS316L鋼を用い、温度が200℃以上となるボトム配管(例えば、ライン6、7、9及びライン36〜39)には9Cr鋼を用い、ボトムポンプ15及びボトムポンプ27における接液部分は13Cr鋼を、温度が最も高くなる加熱炉16及び加熱炉22のチューブ、ライン8、ライン31には9Cr鋼をそれぞれ用いる。また、相対的に腐食環境がマイルドな温度が200℃未満の領域においては例えばSB410鋼を用いる。以上の材料構成とすることにより、耐食性が向上することができるので、一層、腐食による装置トラブルが低減でき、長期間かつ安定的に装置を運転することが可能となる。
なお、それぞれの部位に使用する耐食材料は、上記の一実施形態に示した組み合わせに限定されるものではなく、温度要件や各装置のライフサイクルなどを勘案して、9Cr鋼よりも耐食性の高い鋼材を適宜選定して用いれば良い。
中東産のガスコンデンセートであるサウスパースコンデンセートの一般性状を分析した結果を、表1に示す。参考として、中東産原油であるアラビアン・ヘビー及びマーバンの一般性状もあわせて示す。
なお、分析はそれぞれ次の方法により行った。
比重:JIS K2249 「原油及び石油製品の比重試験法」
水分:JIS K2275 「原油及び石油製品水分試験法」
硫黄分:JIS K2541 「原油及び石油製品硫黄分試験法」
窒素分:JIS K2609 「原油及び石油製品窒素分試験法」
塩素:石油学会法 JPI−5S−64−2002 「石油製品中―塩素分試験方法―微量電量滴定法」
全酸価:JIS K2501 「石油製品中和価試験法」(電位差滴定法)
Figure 0005506139
[腐食性状]
腐食試験を次のようにして行った。窒素導入管、冷却器、及び油温測定用の温度計を備えた500mLの耐熱ガラス製のフラスコに、サンプル油20gを仕込み、試験金属片(約10mm×25mm×3mm)を浸漬する。窒素気流下(100mL/min)に1次保持温度まで300℃/hの昇温速度で昇温し、その温度で1時間保持して油温並びにサンプル油の状態を安定させた。1次保持温度としては、腐食試験温度が325℃以上の場合は300℃、腐食試験温度が325℃未満の場合は腐食試験温度より50℃低い温度とした。その後、腐食試験温度まで25℃/hの昇温速度で昇温した後、同温度で1.5時間保持した。その後、加熱を終了し、約1時間で室温まで冷却した。試験終了後、試験金属片を取り出して腐食により発生した腐食生成物を除去した後、腐食試験前後の重量変化を測定し、保持時間(1.5h)から、腐食試験温度における腐食速度(mm/Y)を算出した。
サンプル油として、蒸留塔のボトム環境を想定し、軽質留分をカットした留分を用いて行った。試験結果を表2に示す。
Figure 0005506139
一般的に、硫黄分が1〜3重量%程度、全酸価が0.1mgKOH/g以下、且つ塩素が10重量ppm以下であるような原油の場合、例えば常圧蒸留塔のボトム部分や加熱炉チューブなどに対応する300℃程度以上の温度条件においても、炭素鋼に対する腐食性は実機レベルで0.5mm/Y程度でありそれほど問題にならないレベルである。しかしながら、上記腐食試験の結果によれば、サウスパースコンデンセートは硫黄分が0.3重量%で、全酸価が0.05mgKOH/g程度以下であり、それらの値からは腐食速度は問題にならない程度であると推定されるにもかかわらず、腐食試験において、例えば炭素鋼(SB410鋼)に対する290℃における腐食速度が装置運転上、装置寿命上問題となる1mm/Y以上の値を示し、例えばアラビアン・ヘビーなどの原油に比べても数倍以上の腐食速度を示すことが分かる。
また、腐食試験後の腐食生成物を分析したところ硫化鉄が認められたことから、サウスパースコンデンセートの腐食は、ある種の高温硫化物腐食であると推定された。
なお、本腐食試験結果は、発明者が考案した上述の試験装置における腐食速度であり、容器の大きさや、試験時間、あるいは油と試験片との接触状況によっても変化するものであり、腐食速度の絶対値自体は重要ではない。すなわち、本腐食試験結果は、サウスパースコンデンセートはアラビアン・ヘビーの約2倍の腐食速度を示す等、相互の比較において意味を持つものである。
また、一般的な原油であるアラビアン・ヘビー等に対しては、NACE(米国腐食技術者協会)などでも腐食速度のデータが公開されており(NACE Publication34103)、それを元に腐食速度を推定すると、試験4の条件ではアラビアン・ヘビーの腐食速度は実機換算で約1mm/Yの腐食速度であり、発明者の机上試験は数倍の加速試験となっていることがわかっている。
[各種材料の耐食性試験]
サウスパースコンデンセートの留分に対する各種材料の耐食性試験を行った。
まず、蒸留塔のボトム条件を想定して、サウスパースコンデンセート及びアラビアン・ヘビーについてそれぞれ温度250℃でカットしたボトム留分を用い、290℃における各種材料の耐食性試験を上記の腐食試験と同様の操作にて行った。結果を、図2に示す。図2から、アラビアン・ヘビーのボトム留分に対してはSB410(炭素鋼)でも実用的な耐食性を有することが分かる。一方、サウスパースコンデンセートの該ボトム留分に対してはSB410や5Cr鋼では耐食性が不十分であり、9Cr鋼以上の耐食鋼材、特にSUS304やSUS316のようにCr含有量(16〜20wt%)の多い耐食鋼材が有効であることが分かる。
同様にして、加熱炉チューブの条件を想定して、サウスパースコンデンセート及びアラビアン・ヘビーについてそれぞれ温度300℃でカットしたボトム留分を用いて、335℃における腐食試験を行った(SB410鋼に対しては350℃)。結果を、図3に示す。上述のタワーボトムの条件と同様、9Cr鋼以上の材料を用いれば、実用上問題ないことがわかった。
[予加熱処理の効果]
サウスパースコンデンセートの次の3種類の留分を用いて、SB410鋼に対する腐食性に及ぼす熱処理温度の影響を調べた。留分−1は、サウスパースコンデンセートを温度250℃でカットしたボトム留分、留分−2は、サウスパースコンデンセートを温度250℃でカットしたボトム留分を、更に285℃の温度で1.5時間熱処理を行った留分、留分−3はサウスパースコンデンセートを300℃でカットしたボトム留分である。
結果を、図4に示す。腐食試験温度270℃における各留分の腐食速度を比較すると、留分−1に比較して、285℃で熱処理を行った留分−2、更に温度300℃での蒸留操作を受けている留分−3は、その熱処理温度が高くなるにつれ、何れも腐食速度が低下している。留分−2の280℃の結果並びに留分−3の290℃の測定点からも同様の傾向が伺える。また、留分−3の310℃の腐食試験結果では、この留分はあらかじめ300℃までの熱処理しか受けていないので、それより10℃高い温度では、極めて高い腐食速度を示す。これは、あらかじめ熱処理されていないので、コンデンセートの腐食性がほとんど減じていないからと考えられる。言い換えると、当該温度よりも高い温度であらかじめ熱処理を行うことにより、腐食速度が低減されることが分かる。
本発明の化学装置の実施形態の一例を示す図である。 サウスパースコンデンセートの留分に対する各種材料の耐食性の試験結果を示すグラフである。 サウスパースコンデンセートの留分に対する各種材料の耐食性の別の試験結果を示すグラフである。 サウスパースコンデンセートの留分の腐食性低減に対する予加熱処理の影響を示すグラフである。
符号の説明
1 第1蒸留塔フィードライン
9 第2蒸留塔フィードライン
10 第1蒸留塔
11 トレー
12 熱交換器
13 ベッセル
14 ポンプ
15 ボトムポンプ
16 リボイラ
20 第2蒸留塔
21 トレー
22 加熱炉
27 ボトムポンプ
31 ライン
38 ライン
39 ライン

Claims (5)

  1. 硫黄分0.5質量%以下、全酸価0.1mgKOH/g以下且つ塩素10質量ppm以下のガスコンデンセートを該化学装置内へ導入する前に、該化学装置内における該ガスコンデンセートの予定処理温度以上の温度に該ガスコンデンセートの少なくとも一部を予加熱することを含む、化学装置に対する腐食を低減する方法。
  2. 前記ガスコンデンセートは、前記化学装置内における前記ガスコンデンセートの予定処理温度よりも5℃〜40℃高い温度まで、予め加熱される請求項1に記載の方法。
  3. 前記化学装置内における前記ガスコンデンセートの予定処理温度は、200〜350℃である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ガスコンデンセートが200℃〜350℃の温度範囲において接触する箇所の金属材料に、9Cr鋼以上の耐食材料を用いることを含む請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
  5. 前記化学装置が蒸留装置、脱硫装置、反応装置、吸収装置、抽出装置又は混合撹拌装置である請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
JP2007009273A 2007-01-18 2007-01-18 化学装置に対する腐食を低減する方法 Active JP5506139B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007009273A JP5506139B2 (ja) 2007-01-18 2007-01-18 化学装置に対する腐食を低減する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007009273A JP5506139B2 (ja) 2007-01-18 2007-01-18 化学装置に対する腐食を低減する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008174635A JP2008174635A (ja) 2008-07-31
JP5506139B2 true JP5506139B2 (ja) 2014-05-28

Family

ID=39701893

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007009273A Active JP5506139B2 (ja) 2007-01-18 2007-01-18 化学装置に対する腐食を低減する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5506139B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5421794B2 (ja) * 2010-01-12 2014-02-19 日揮株式会社 原油処理システム
RU2531185C9 (ru) * 2013-05-06 2015-01-20 Государственное унитарное предприятие "Институт нефтехимпереработки Республики Башкортостан" (ГУП ИНХП РБ) Способ переработки газового конденсата
JP6403409B2 (ja) * 2014-03-28 2018-10-10 鹿島石油株式会社 C重油の製造方法
CN105716052B (zh) * 2014-12-02 2018-04-06 上海优华系统集成技术有限公司 一种高温烟气热联合优化系统
RU2600338C1 (ru) * 2015-08-21 2016-10-20 Андрей Владиславович Курочкин Способ стабилизации газового конденсата
RU2600339C1 (ru) * 2015-08-21 2016-10-20 Андрей Владиславович Курочкин Способ стабилизации газового конденсата
RU2603367C1 (ru) * 2015-08-31 2016-11-27 Андрей Владиславович Курочкин Способ стабилизации газового конденсата
RU2594217C1 (ru) * 2015-08-31 2016-08-10 Андрей Владиславович Курочкин Способ стабилизации газового конденсата
RU2607394C1 (ru) * 2015-09-14 2017-01-10 Андрей Владиславович Курочкин Способ стабилизации газового конденсата

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA1137434A (en) * 1978-07-11 1982-12-14 Mohammed Akbar Process for the continuous thermal cracking of hydrocarbon oils
JPS59179588A (ja) * 1983-03-30 1984-10-12 Taniguchi Sekiyu Seisei Kk アルカリ蒸留によるナフテン系潤滑油の精製法及び釜残油の処理法
CN1125868C (zh) * 1995-02-17 2003-10-29 埃克森研究工程公司 环烷酸的热分解
US5891325A (en) * 1998-08-11 1999-04-06 Exxon Research And Engineering Co. Process for reducing total acid number of crude oil
JP3692449B2 (ja) * 2002-11-12 2005-09-07 栗田工業株式会社 原油常圧蒸留装置における塩化水素発生防止剤および塩化水素発生防止方法
BRPI0405581A (pt) * 2003-12-19 2005-09-20 Shell Int Research Produto de petróleo bruto e método de produzir combustìvel de transporte, combustìvel de aquecimento, lubrificantes ou substâncias quìmicas
FR2866030B1 (fr) * 2004-02-06 2006-05-26 Arkema Procede de lutte contre la corrosion des unites de raffinage par les bruts acides

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008174635A (ja) 2008-07-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5506139B2 (ja) 化学装置に対する腐食を低減する方法
Speight Oil and gas corrosion prevention: From surface facilities to refineries
EP2132281B1 (en) High temperature naphthenic acid corrosion inhibition using organophosphorous sulphur compounds and combinations thereof
Speight High acid crudes
Bahadori Corrosion and materials selection: a guide for the chemical and petroleum industries
US9777230B2 (en) Effective novel non-polymeric and non-fouling additive for inhibiting high-temperature naphthenic acid corrosion and method of using the same
CN102112583A (zh) 使用高tan和高sbn原油的渣油馏分以减少结垢的方法和设备
Subramanian Corrosion prevention of crude and vacuum distillation column overheads in a petroleum refinery: A field monitoring study
JP5792905B2 (ja) 炭化水素流を処理する方法及び装置
Bhowmik et al. Corrosion and its control in crude oil refining process
JP2012511617A (ja) 全原油ファウリングを低減するための原油への高分子量ナフテンテトラ酸の添加
Kane Corrosion in petroleum refining and petrochemical operations
US8425761B2 (en) Non-high solvency dispersive power (non-HSDP) crude oil with increased fouling mitigation and on-line cleaning effects
Ropital et al. Corrosion and degradation of metallic materials: understanding of the phenomena and applications in petroleum and process industries
Bagdasarian et al. Crude unit corrosion and corrosion control
KR102382225B1 (ko) 방향족 탄화수소의 제조 방법
Jauseau et al. A study of the flow effect on naphthenic acid corrosion of mild steel
Mahajanam et al. Cracking of Duplex Stainless Steel in Refining Operations
WO2013119980A1 (en) Equipment for use in corrosive environments and methods for forming thereof
Höwing et al. Experiences with Sandvik grades in oil refinery applications
Groysman Corrosion problems and their solutions in the oil refining industry
Yin et al. Chloride-induced stress corrosion cracking of furnace burner tubes
Shargay et al. Survey of materials in Hydrotreater units processing high TAN feeds
Oliva-Chatelain et al. Low H2S High Temperature Sulfur Attack in Refining Hydrotreating Processes
JP2007520611A (ja) 酸性粗生成物による精製ユニットの腐食抑制のための方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091113

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20100827

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120928

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121009

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121207

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20131001

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20131225

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20140108

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140218

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140318

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5506139

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250