JP5504037B2 - コハク酸イミド化合物を含有する摩擦調整剤、潤滑油添加剤及び潤滑油組成物 - Google Patents

コハク酸イミド化合物を含有する摩擦調整剤、潤滑油添加剤及び潤滑油組成物 Download PDF

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本発明は、新規なコハク酸イミド化合物、並びに該化合物を含有した潤滑油添加剤及び潤滑油組成物に関する。
コハク酸イミド化合物は、ガソリンエンジン油やディーゼルエンジン油などの内燃機関用潤滑油の分野において、生成する不溶解分を油中に分散させる無灰分散剤として用いられている。一方、コハク酸イミド化合物は、自動変速機などの駆動系潤滑油の分野において、摩擦力を高める摩擦調整剤として使用されている。
従来のコハク酸イミド化合物としては、高分子量のアルケニルもしくはアルキル基で置換されたこはく酸無水物と、ポリアルキレンポリアミンとの反応により得られるコハク酸イミド化合物などが知られている(下記特許文献1〜3を参照。)
特開2005−146148号公報 特開平10−265793号公報 特開平10−219269号公報
本発明は、内燃機関用潤滑油における無灰分散剤、駆動系潤滑油における摩擦調整剤などの用途に有用な新規なコハク酸イミド化合物、並びに該化合物を含有した潤滑油添加剤及び潤滑油組成物を提供することを目的とする。
そこで本発明は、下記式(1)で表されるコハク酸イミド化合物を含有する摩擦調整剤を提供する。

[式(1)中、Rは数平均分子量500以上5000未満のアルキル基又はアルケニル基を示す。]
本発明のコハク酸イミド化合物は、従来のコハク酸イミド化合物と比較して、非常に優れた特性を有するため、内燃機関用潤滑油における無灰分散剤、駆動装置用潤滑油における摩擦調整剤などの用途に有用である。
例えば、近時、駆動系潤滑油では、燃費効率向上の観点から自動変速機内部での摩擦力を効率よく駆動力に転換するために、従来以上の高い摩擦係数が求められている。しかし、上記の特許文献1〜3に記載されているような従来のコハク酸イミド化合物を用いた場合には、十分な摩擦特性向上効果を得ることができなかった。なお、この原因としては、従来のコハク酸イミド化合物の場合、コハク酸イミド化合物自体の摩擦特性向上効果が不十分であることに加えて、コハク酸イミドの量を増やすと金属表面への吸着性が変化してその他の添加剤のバランスを崩してしまい、結果として摩擦特性を悪化させてしまうことが考えられる。
それに対して、本発明のコハク酸イミド化合物は、従来のコハク酸イミド化合物と比較して、摩擦特性向上効果に優れるため、自動変速機内部での摩擦力を効率よく駆動力に転換するための高い摩擦係数を達成することができ、燃費効率を向上させることができる。
本発明の摩擦調整剤において、式(1)中のRは、数平均分子量500以上5000未満のポリイソブテンから誘導される基であることが好ましい。
また、本発明は、上記本発明の摩擦調整剤を含有する潤滑油添加剤を提供する。
また、本発明は、潤滑油基油と、上記本発明の摩擦調整剤と、を含有する潤滑油組成物を提供する。
本発明の潤滑油組成物は、リン化合物をさらに含有することが好ましい。
本発明によれば、内燃機関用潤滑油における無灰分散剤、駆動系潤滑油における摩擦調整剤などの用途に有用な新規なコハク酸イミド化合物、並びに該化合物を含有した潤滑油添加剤及び潤滑油組成物を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[コハク酸イミド化合物]
本実施形態に係るコハク酸イミド化合物は、下記式(1)で表される構造を有する。

[式(1)中、Rは数平均分子量500以上5000未満のアルキル基又はアルケニル基を示す。]
式(1)中、Rで示されるアルキル基又はアルケニル基としては、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基が好ましい。また、Rで示されるアルキル基又はアルケニル基の数平均分子量は、500以上5000未満であり、好ましくは700〜4000、より好ましくは800〜3500である。
式(1)で表されるコハク酸イミド化合物は、数平均分子量500以上5000未満のアルキル基又はアルケニル基を有するマレイン化アルキル又はマレイン化アルケニルと、メチオニン(2−アミノ−4−(メチルスルファニル)プロピオン酸)とを反応させて得ることができる。また、原料として用いられる上記のマレイン化アルキル又はマレイン化アルケニルは、例えば数平均分子量500以上5000未満のポリアルケン(ポリブテン、ポリイソブテン等)と無水マレイン酸とを反応させて得ることができる。
マレイン化アルキル又はマレイン化アルケニルと、メチオニンとを反応させるに際し、マレイン化アルキル又はマレイン化アルケニル/メチオニンの仕込み比は、モル比で、好ましくは1/1〜1/2、より好ましくは1/1〜1/1.8、さらに好ましくは1/1.1〜1/1.6、特に好ましくは1/1.2〜1/1.5とすることができる。上記範囲の割合で反応を行うことにより、目的のコハク酸イミド化合物をより確実に得ることができる。
なお、上記の反応においては、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物の他に、下記式(2)で表されるコハク酸イミド化合物が副生し得る。この場合、反応生成物から式(2)で表されるコハク酸イミド化合物を分離除去し、式(1)コハク酸イミド化合物のみを潤滑油添加剤としてもよく、あるいは、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物と式(2)で表されるコハク酸イミド化合物との混合物を潤滑油添加剤として用いてもよい。
式(2)中、Rは数平均分子量500以上5000未満のアルキル基又はアルケニル基を示す。nは1以上の整数を示す。なお、nは通常1又は2であるが、合成の際に原料中のマレイン化アルキル又はマレイン化アルケニルに対するメチオニンの割合が大きいと、nが増加する傾向にある。
また、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物は、ホウ素化せずにそのまま(すなわち非ホウ素化コハク酸イミド化合物として)用いてもよく、あるいはホウ素化コハク酸イミド化合物として用いてもよい。さらに、ホウ素化コハク酸イミド化合物と非ホウ素化コハク酸イミド化合物とを組み合わせて用いてもよい。
ホウ素化コハク酸イミド化合物は、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物に対し、ホウ素含有化合物を、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度で反応させることにより得ることができる。ホウ素含有化合物としては、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸無水物およびホウ酸エステルなどが挙げられる。これらのホウ素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[潤滑油添加剤]
本実施形態に係る潤滑油添加剤は、上記式(1)で表されるコハク酸イミド化合物を含有する。当該潤滑油添加剤は、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物のみからなるものであってもよく、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物と他の添加剤との混合物であってもよい。また、当該潤滑油添加剤は、添加剤を溶解するための希釈剤をさらに含有してもよい。
なお、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物は潤滑油分野に用いられる各種添加剤との適合性に優れているため、本実施形態に係る潤滑油添加剤が式(1)で表されるコハク酸イミド化合物と他の添加剤との混合物である場合、併用される他の添加剤は特に制限されない。したがって、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物と併用される他の添加剤の種類並びに両者の配合量は、潤滑油添加剤の用途・目的に応じて適宜選定することができる。併用される他の添加剤の具体例は後述する。
本実施形態に係る潤滑油組成物は、潤滑油基油と、上記式(1)で表されるコハク酸イミド化合物とを含有する。なお、当該潤滑油組成物には、潤滑油基油と、上記実施形態に係る潤滑油添加剤とを含有する態様が包含される。
潤滑油基油としては特に制限されず、鉱油および合成油のいずれも使用することができる。鉱油としては、従来公知の種々のものが使用可能であり、例えば、パラフィン基系鉱油、中間基系鉱油、ナフテン基系鉱油などが挙げられる。具体的には、溶剤精製または水素精製による軽質ニュートラル油、中間ニュートラル油、重質ニュートラル油またはブライトストックなどを挙げることができる。また、ワックスを異性化したGTL基油などを用いてもよく、精製度が上がるほどその効果は高くなる。
また、合成油としては、同様に従来公知の種々のものが使用可能である。例えば、ポリα―オレフィン(α―オレフィン共重合体を含む)、ポリブテン、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、シリコーンオイル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、さらにはヒンダードエステルなどを用いることができる。
これらの潤滑油基油は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、鉱油と合成油とを組み合わせて使用してもよい。
潤滑油基油の動粘度は、潤滑油組成物の用途・目的に応じて適宜選定することができる。例えば、本実施形態に係る潤滑油組成物を駆動系潤滑油として用いる場合、潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは1〜30mm/s、より好ましくは2〜20mm/s、さらに好ましくは3〜10mm/sである。100℃における動粘度が上記範囲にあると、自動変速機のギア軸受けやクラッチなどの摺動部における摩擦を十分に低減し得ると共に低温特性も良好となる。一方、100℃における動粘度が30mm/sを超えると、燃費が悪化し、また低温粘度が高くなりすぎる傾向にある。また、100℃における動粘度が1mm/s未満であると、自動変速機のギア軸受けやクラッチ等の摺動部において摩耗量が増加するなど潤滑性能が低下したり、蒸発性が高くなり潤滑油消費量が多くなるおそれがある。
また、潤滑油基油の%Cは、低温特性の点から、20以下であるものが好ましく、特に10以下であることがより好ましい。
本実施形態に係る潤滑油組成物において、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物の含有量は、その添加効果を有効に発揮し得る点から、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
本実施形態に係る潤滑油組成物は、その性能をさらに向上させる目的で、必要に応じて、式(1)で表されるコハク酸イミド化合物以外の無灰分散剤及び/又は摩擦調整剤、金属系清浄剤、粘度指数向上剤、極圧添加剤、酸化防止剤、腐食防止剤、消泡剤、着色剤等に代表される各種添加剤をさらに含有することができる。これらの添加剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
式(1)で表されるコハク酸イミド化合物以外の摩擦調整剤としては、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、または、リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステルなどのリン化合物、MoDTP、MoDTCなどの有機モリブデン化合物、ZnDTPなどの有機亜鉛化合物、アルキルメルカプチルボレートなどの有機ホウ素化合物、グラファイト、二硫化モリブデン、硫化アンチモン、ホウ素化合物、ポリテトラフルオロエチレンなどの固体潤滑剤系摩擦調製剤などが挙げられ、これら中でも、リン化合物が好ましい。摩擦調整剤の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、通常0.1〜10質量%である。
酸化防止剤としては、例えばアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化−α−ナフチルアミンなどのアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、通常0.05〜5質量%である。
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウムスルホネート、マグネシウムスルホネート、バリウムスルホネート、カルシウムサリチレート、マグネシウムサリチレート、カルシウムフェネート、バリウムフェネートなどが挙げられ、金属系清浄剤の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、通常0.1〜10質量%である。
粘度指数向上剤としては、例えばポリメタクリレート系、ポリイソブテン系、エチレン−プロピレン共重合体系、スチレン−ブタジエン水添共重合体系のものなどが挙げられる。粘度指数向上剤の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、通常0.5〜35質量%である。
本実施形態に係る潤滑油組成物の用途は特に制限されず、内燃機関用潤滑油、駆動系潤滑油等の幅広い分野で使用することができる。例えば、本実施形態に係る潤滑油組成物は、潤滑式(1)で表されるコハク酸イミド化合物を含有するため、従来のコハク酸イミド化合物と比較して、高い静摩擦係数(高い湿式摩擦材トルク容量)を達成することができ、自動変速機油や無段変速機油として好適である。また湿式クラッチ、湿式ブレーキを有する変速機を備えた建設機械や農機、手動変速機、二輪車ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン、ショックアブソーバー油等の潤滑油として用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1;コハク酸イミド化合物Iの合成]
2000mLのオートクレーブに、ポリイソブテン(数平均分子量1000)1.0molと、無水マレイン酸1.0molとを入れ、1.5時間かけて220℃まで昇温させ、220℃に達してから4時間反応させた。反応終了後、得られた生成物にn−ヘキサンを加え攪拌し、その液をろ過して不溶解分を取り除いた。ろ液を常圧蒸留でn−ヘキサンを除去後、減圧下220℃で無水マレイン酸を除去し、マレイン化ポリイソブテンを得た。
一方、メチオニン0.008molを乳鉢でつぶし、100mL四口フラスコに入れ、キシレンを加えた。次に、キシレンに溶解させた得られたマレイン化ポリイソブテン0.004molを滴下させながら、165℃で24時間反応させた。反応終了後、ろ過で残留アミノ酸を除去し、減圧蒸留で溶媒を除去し、コハク酸イミド化合物Iを得た。得られたコハク酸イミド化合物Iについて赤外吸収スペクトルおよび元素分析を行い、式(1)で表される構造を有することを確認した。含有窒素は1.11(理論値1.14)%であった。
[実施例2;コハク酸イミド化合物IIの合成]
2000mLのオートクレーブに、ポリイソブテン(数平均分子量2300)1.0molと、無水マレイン酸1.0molとを入れ、1.5時間かけて220℃まで昇温させ、220℃に達してから4時間反応させた。反応終了後、得られた生成物にn−ヘキサンを加え攪拌し、その液をろ過して不溶解分を取り除いた。ろ液を常圧蒸留でn−ヘキサンを除去後、減圧下220℃で無水マレイン酸を除去し、マレイン化ポリイソブテンを得た。
一方、メチオニン0.008molを乳鉢でつぶし、100mL四口フラスコに入れ、キシレンを加えた。次に、キシレンに溶解させた得られたマレイン化ポリイソブテン0.004molを滴下させながら、165℃で24時間反応させた。反応終了後、ろ過で残留アミノ酸を除去し、減圧蒸留で溶媒を除去し、コハク酸イミド化合物IIを得た。得られたコハク酸イミド化合物IIについて赤外吸収スペクトルおよび元素分析を行い、式(1)で表される構造を有することを確認した。含有窒素は0.54(理論値0.55)%であった。
[比較例1;コハク酸イミド化合物IIIの合成]
2000mLのオートクレーブに、ポリイソブテン(数平均分子量1000)1.0molと、無水マレイン酸1.0molとを入れ、1.5時間かけて220℃まで昇温させ、220℃に達してから4時間反応させた。反応終了後、得られた生成物にn−ヘキサンを加え攪拌し、その液をろ過してスラッジを取り除いた。ろ液を常圧蒸留でn−ヘキサンを除去後、減圧下220℃で無水マレイン酸を除去し、マレイン化ポリイソブテンを得た。
2Lセパラブルフラスコに、ジエチレントリアミン1.7mol、キシレンを入れた。次に、キシレンに溶解させた得られたマレイン化ポリブテン0.17molを滴下させながら、145〜155℃で11時間反応させた。反応終了後、常圧蒸留で溶媒を除去し、減圧蒸留で残留ジエチレントリアミンを除去し、コハク酸イミド化合物IIIを得た。
[実施例3〜8、比較例2〜4;潤滑油組成物の調製及び評価試験]
実施例3〜8及び比較例2〜4においては、それぞれ、潤滑油基油としてのSAE10留分(100℃動粘度4.1mm/s)の鉱油、コハク酸イミド化合物I、II又はIII、並びに表1、2に示す添加剤を用いて、潤滑油組成物を調製した。各潤滑油組成物の組成を表1、2に示す。
次に、実施例3〜8及び比較例2〜4の潤滑油組成物について、LFW−1試験機を用いて金属間摩擦係数を評価した。試験条件は面圧0.8GPa、すべり速度0.2m/s、試験温度80℃で、試験時間1時間とし、時間内の摩擦係数を平均化した平均摩擦係数で評価した。得られた結果を表1、2に示す。
本発明のコハク酸イミド化合物、潤滑油添加剤及び潤滑油組成物は、幅広い潤滑油分野で使用可能であり、特に、高い静摩擦係数が必要とされる自動変速機油や無断変速機油として好適である。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表されるコハク酸イミド化合物を含有する摩擦調整剤

    [式(1)中、Rは数平均分子量500以上5000未満のアルキル基又はアルケニル基を示す。]
  2. 前記式(1)中のRが、数平均分子量500以上5000未満のポリイソブテンから誘導される基である、請求項1に記載の摩擦調整剤
  3. 請求項1又は2に記載の摩擦調整剤を含有する潤滑油添加剤。
  4. 潤滑油基油と、請求項1又は2に記載の摩擦調整剤と、を含有する潤滑油組成物。
  5. リン化合物をさらに含有する、請求項4に記載の潤滑油組成物。
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