[実施例1](1)画像形成装置の全体構成:図1は本発明に係る画像形成装置の一例の横断面模式図である。この画像形成装置は電子写真方式のカラープリンタである。本実施例1に示す画像形成装置は、画像形成装置の内部に並設されている第1、第2、第3、第4の画像形成部Py,Pm,Pc,Pbによって色の異なる4色のトナー像を帯電、露光、現像、転写の各プロセスを経て形成できるようになっている。本実施例1の画像形成装置は、ホストコンピュータなどの外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて所定の画像形成シーケンスに従い画像形成動作を開始する。すなわち、各画像形成部Py,Pm,Pc,Pbが順次駆動され、像担持体としての感光ドラム1が矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転される。各画像形成部Py,Pm,Pc,Pbの感光ドラム1に跨るように駆動ローラ6aと従動ローラ6bとテンションローラ6cに掛け渡されている中間転写ベルト7は、駆動ローラ6aによって矢印方向へ各感光ドラム1の回転周速度と対応した周速度で回転される。まず1色目のイエローの画像形成部Pyにおいて、感光ドラム1の表面は帯電器2によって所定の極性・電位に一様に帯電される。次に露光装置3が外部装置からの画像情報に応じたレーザ光を感光ドラム1表面の帯電面に走査露光する。これにより感光ドラム1表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そしてその潜像が現像装置4によってイエローのトナー(現像剤)を用いて現像され、感光ドラム1表面上にイエローのトナー画像(現像像)が形成される。つまり、感光ドラム1は、感光ドラム1表面にトナー画像を担持する。同様の帯電、露光、現像の各工程が、2色目のマゼンタの画像形成部Pm、3色目のシアンの画像形成部Pc、4色目のブラックの画像形成部Pbにおいても行われる。各画像形成部Py,Pm,Pc,Pbにおいて感光ドラム1表面に形成された各色のトナー画像は、中間転写ベルト7を挟んで各感光ドラム1と対向配置されている一次転写ローラ8によって中間転写ベルト7の外周面(表面)上に順番に重ねて転写される。一方、給送カセット10から記録材Pが送り出しローラ11によりレジストローラ12に送られる。次いで記録材Pはレジストローラ12によって中間転写ベルト7と二次転写ローラ(転写部材)13間の二次転写ニップ部に搬送される。その記録材Pは二次転写ニップ部で中間転写ベルト7と二次転写ローラ13とにより挟持搬送され、その搬送過程において二次転写ローラ13により中間転写ベルト7表面上のフルカラーのトナー像が記録材Pの面上に転写される。これにより記録材Pには記録材Pの面上に未定着のフルカラーのトナー画像(トナー像)が担持される。そしてその記録材Pは第一定着器14と第二定着器15と第三定着器16とを用いて構成されている後述の四つの光沢モードと対応する四つの搬送経路のうち所定の一つの搬送経路に導入される。そしてその搬送通路を記録材Pが通過することによって未定着のトナー画像は記録材P上に加熱定着される。そしてその記録材Pは画像形成装置外の所定の排出トレイ17,18に排出される。なお、図1においてRは搬送ローラである。トナー像転写後の感光ドラム1は、感光ドラム1表面に残留している転写残トナーがドラムクリーナ5によって除去され、次の画像形成に供される。フルカラーのトナー像転写後の中間転写ベルト7は、中間転写ベルト7表面に残留している転写残トナーがベルトクリーナ9によって除去され、次の画像形成に供される。
(2)定着装置:以下の説明において、定着装置及びこの定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。長さとは長手方向の寸法をいう。幅とは短手方向の寸法をいう。
(2−1)第一定着器:図2の(a)は第一定着器と第一振分部材の説明図である。本実施例1に示す第一定着器14は、熱ローラ方式の定着器であって、定着ローラ(熱ローラ)51と、定着ローラ51の下方において定着ローラ51と並列に配設されている加圧ローラ52などを有している。定着ローラ51は、長手方向に細長い円筒状芯金51aの外周面上に離型性層51bを設けた構成となっている。そして離型性層51bの外周面すなわち定着ローラ51の外周面(表面)には、記録材Pが担持する未定着のフルカラーのトナー画像tの表面に光沢を付与するために、所定の平滑化加工が施されている。定着ローラ51の芯金51aの内部には、定着ローラ51を芯金51a内部から加熱するハロゲンヒータ53が設けられている。定着ローラ51の他の例として、芯金51aの外周面上に離型性層51bに代えてシリコーンオイルを含浸させたシリコーンゴム層を用いてもよい。加圧ローラ52は、長手方向に細長い棒状芯金52aの外周面上に耐熱性ゴム層52bを設け、耐熱性ゴム層52bの外周面上に離型性層52cを設けた構成となっている。定着ローラ51と加圧ローラ52は、それぞれ、芯金51a,52aの長手方向両端部が定着器のフレーム(不図示)に軸受(不図示)を介して回転自在に支持されている。そしてそれらの軸受を加圧バネなどの加圧部材(不図示)により定着ローラ51と加圧ローラ52を互いに加圧する方向に付勢している。そしてその加圧バネの付勢力により加圧ローラ52の耐熱性ゴム層52bを弾性変形させることによって、定着ローラ51の外周面(表面)と加圧ローラ52の外周面(表面)との間に所定幅の定着ニップ部(ニップ部)Nを形成している。定着ローラ51内のハロゲンヒータ53は、ハロゲンヒータ53の長手方向両端部の口金部(不図示)がフレームに支持されている。本実施例1の第一定着器14は、加圧ローラ52が定着モータなどの駆動源(不図示)により所定の歯車列を通じて矢印方向へ回転されると、加圧ローラ52の回転が定着ニップ部Nを通じて定着ローラ51に伝達される。これによって定着ローラ51は加圧ローラ52の回転に追従して矢印方向へ回転する。ハロゲンヒータ53には所定の給電制御回路(不図示)から電力が供給され、これによってハロゲンヒータ53は発熱する。ハロゲンヒータ53の発熱により定着ローラ51は芯金51a、離型性層51bがその順に加熱される。この定着ローラ51の表面温度は定着ローラ51周囲の所定の位置に設けられているサーミスタなどの温度検知部材(不図示)により検知され、その温度検知部材の出力信号をCPUとROMやRAMなどのメモリとからなる制御回路(不図示)が取り込む。制御回路は温度検知部材の出力信号に基づいて、定着ローラ51の表面温度が所定の定着温度(目標温度)になるように給電制御回路を制御する。これにより定着ローラ51の表面温度は所定の定着温度に維持される。この状態において定着ニップ部Nに未定着のトナー画像tを担持した記録材Pが導入される。そしてその記録材Pは定着ニップ部Nで定着ローラ51表面と加圧ローラ52表面とにより挟持され搬送される。その搬送過程においてトナー画像tは定着ローラ51の熱により加熱されるとともにニップ圧により加圧される。これによりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の多重トナー画像が溶融混色するとともにその溶融混色したトナー画像に定着ローラ51表面の光沢が転写されフルカラー画像として記録材Pの面上に定着される。そしてトナー画像tが定着された記録材Pは定着ニップ部Nから排出される。
(2−2)第二定着器:図2の(b)は第二定着器と第二振分部材の説明図である。本実施例1に示す第二定着器15は、上述の第一定着器14と同じ構成としてある。従って、第一定着器14と同じ部材・部分には同一の符号を付して再度の説明を省略する。本実施例1の第二定着器15の定着ニップ部Nには、加圧ローラ52と定着ローラ51が回転し、かつ定着ローラ51の表面温度が所定の定着温度に維持されている状態において第一定着器14により加熱定着された記録材Pが導入される。そしてその記録材Pは定着ニップ部Nで定着ローラ51表面と加圧ローラ52表面とにより挟持され搬送される。その搬送過程においてトナー画像tは定着ローラ51の熱により加熱され軟化するとともにニップ圧により加圧される。そしてその軟化したトナー画像tには定着ローラ51表面の光沢が転写され、そのトナー画像tは記録材Pの面上に定着される。そしてトナー画像tが定着された記録材Pは定着ニップ部Nから排出される。
(2−3)第三定着器:図2の(c)は第三定着器の説明図である。本実施例1に示す第三定着器17は、冷却剥離式の定着器であって、定着ローラ(熱ローラ)71と、テンションローラ(回転ローラ)72と、エンドレス状の定着ベルト(光沢ベルト)73と、加圧ローラ75と、冷却器76などを有している。定着ローラ71は、長手方向に細長い円筒状芯金71aの外周面上に離型性層71bを設けた構成となっている。定着ローラ71の芯金71aの内部には、定着ローラ71を芯金71a内部から加熱するハロゲンヒータ74が設けられている。テンションローラ72は、定着ローラ71の記録材搬送方向下流側に設けられている。そしてこのテンションローラ72と定着ローラ71に定着ベルト73を巻き掛けている。加圧ローラ75は、定着ベルト73の下方において定着ローラ71と並列に配設されている。この加圧ローラ75は、長手方向に細長い棒状芯金75aの外周面上に耐熱性ゴム層75bを設け、耐熱性ゴム層75bの外周面上に離型性層75cを設けた構成となっている。定着ベルト73は、耐熱性を有するエンドレス状のベース層(不図示)の外周面上に離型性層(不図示)を設けた構成となっている。ベース層は、ニッケル、アルミニウム、ステンレス製の金属シートやPET、PBT、ポリイミド、ポリアミドイミド等の耐熱樹脂から構成される。離型性層は、シリコンゴム、フッ素ゴム、フッ素樹脂等から構成され、トナーや記録材との剥離容易性を確保している。定着ベルト73の外周面には、記録材Pが担持するトナー画像tの表面に光沢を付与するために、所定の平滑化加工が施されている。定着ローラ71と加圧ローラ75は、それぞれ、芯金71a,75aの長手方向両端部が定着器のフレームに軸受(不図示)を介して回転自在に支持されている。そしてそれらの軸受を加圧バネなどの加圧部材(不図示)により定着ローラ71と加圧ローラ75を定着ベルト73を挟み互いに加圧する方向に付勢している。そしてその加圧バネの付勢力により加圧ローラ75の耐熱性ゴム層75bを弾性変形させることによって、定着ベルト73の外周面(表面)と加圧ローラ75の外周面(表面)との間に所定幅の定着ニップ部(ニップ部)Nを形成している。定着ローラ71内のハロゲンヒータ74は、ハロゲンヒータ74の長手方向両端部の口金部(不図示)がフレームに支持されている。冷却器76は、定着ベルト73の内側において定着ローラ71とテンションローラ72との間に設けられている。この冷却器76は、送風モータと送風モータの出力軸に連結されたファンと送風モータを支持する支持フレーム(何れも不図示)などから構成され、支持フレームの長手方向両端部がフレームに支持されている。本実施例1の第三定着器16は、加圧ローラ75が上記の駆動源により所定の歯車列を通じて矢印方向へ回転されると、加圧ローラ75の回転が定着ニップ部Nを通じて定着ベルト73に伝達される。これによって定着ベルト73は加圧ローラ75の回転に追従して矢印方向へ回転する。ハロゲンヒータ74には所定の給電制御回路(不図示)から電力が供給され、これによってハロゲンヒータ74は発熱する。ハロゲンランプ74の発熱により定着ローラ71は芯金71a、離型性層71bがその順に加熱される。この定着ローラ71の熱により回転中の定着ベルト73は加熱される。定着ベルト73の表面温度は定着ベルト73周囲の所定の位置に設けられているサーミスタなどの温度検知部材(不図示)により検知され、その温度検知部材の出力信号を上記の制御回路が取り込む。制御回路は温度検知部材の出力信号に基づいて、定着ベルト73の表面温度が所定の定着温度(目標温度)になるように給電制御回路を制御する。これにより定着ベルト73の表面温度は所定の定着温度に維持される。また制御回路は冷却器76の送風モータを駆動する。これにより冷却器76のファンが回転し冷却用のエアーAを定着ベルト73の内周面(内面)に吹き付ける。この状態において第一定着器14又は第二定着器15で加熱定着された記録材Pが定着ニップ部Nに導入される。そしてその記録材Pは定着ニップ部Nで定着ベルト73表面と加圧ローラ75表面とにより挟持され搬送される。その搬送過程において記録材P面上のトナー画像tが定着ベルト73の熱により加熱され軟化するとともにニップ圧により加圧される。そして軟化したトナー画像tには定着ベルト73表面の光沢が転写され、そのトナー画像tは記録材Pの面上に定着される。そしてその記録材Pはそのトナー画像tを介して定着ベルト73表面に密着する。その後、記録材Pは定着ベルト73表面に密着した状態で定着ベルト73の回転と共に移動し定着ニップ部Nとテンションローラ72との間にある冷却領域(冷却部)Cを搬送される。この冷却領域Cでは定着ベルト73は冷却器76からのエアーAを受けることによって記録材Pを強制的に効率良く冷却する。このように定着ベルト73表面に密着状態の記録材Pは冷却領域Cで十分に冷却され、テンションローラ72の位置へ至り、テンションローラ72により定着ベルト73の曲率が変化する領域で定着ベルト73の表面から分離する。
(3)光沢モードの説明:図3は画像形成装置における四つの光沢モード(グロスモード)と個々に対応する四つの搬送経路の説明図である。制御回路には、四つの光沢モードが記憶されている。この四つの各光沢モードを実行することにより記録材Pが担持するトナー画像tの光沢をコントロールすることができる。第一の光沢モードは、第一定着器14のみを使用する低光沢モードである。低光沢モードでは、未定着のトナー画像tを担持する記録材Pを第一定着器14の定着ニップ部Nに導入することによりトナー画像tの表面光沢を低光沢とする。第二の光沢モードは、第一定着器14と第二定着器15を使用する中光沢モードである。中光沢モードでは、未定着のトナー画像tを担持する記録材Pを第一定着器14と第二定着器15の定着ニップ部Nに導入することによりトナー画像tの表面光沢を中光沢とする。第三の光沢モードは、第一定着器14と第三定着器16を使用する第一高光沢モードである。第一高光沢モードでは、未定着のトナー画像tを担持する記録材Pを第一定着器14と第三定着器16の定着ニップ部Nに導入することによりトナー画像tの表面光沢を高光沢とする。第四の光沢モードは、第一定着器14と第二定着器15と第三定着器16を使用する第二高光沢モードである。第二高光沢モードでは、未定着のトナー画像tを担持する記録材Pを第一定着器14と第二定着器15と第三定着器16の定着ニップ部Nに導入することによりトナー画像tの表面光沢を高光沢とする。また制御回路は、第一定着器14の記録材搬送方向下流側に設けられている搬送路19a内に配した第一振分け部材21(図2参照)と、第二定着器15の記録材搬送方向下流側に設けられている第二振分け部材22(図3参照)を動作させている。第一振分け部材21は、第一定着器14と第二定着器15との間の搬送路19a内で軸21aを支点として回動可能に設けられ、軸21aに連結されている電磁ソレノイドなどの駆動源(不図示)が制御回路によりオン・オフされることによって所定角度回転される。第二振分け部材22は、第二定着器15と第三定着器16との間の搬送路19b内で軸22aを支点として回動可能に設けられ、軸22aに連結されている電磁ソレノイドなどの駆動源(不図示)が制御回路によりオン・オフされることによって所定角度回転される。
以下に、制御回路が四つの各光沢モードを実行した場合の記録材Pの搬送経路を説明する。低光沢モードでは、記録材Pを第一定着器14の定着ニップ部Nに導入するとともに、第一振分け部材21と第二振分け部材22をそれぞれ軸21a,22aを支点として実線にて示す位置に回転させる。実線にて示す位置に回転された第一振分け部材21は第一定着器14の定着ニップ部Nを出た記録材Pを第二定着器15の下方に設けられている搬送路19c(図1参照)に案内し、この搬送路19cは記録材Pを第二振分け部材22に案内する。実線にて示す位置に回転された第二振分け部材22は搬送路19cから案内されてきた記録材Pを第三定着器16の上方に設けられている搬送路19dに案内し、搬送路19dは記録材Pを排出トレイ17に案内する。これにより図3においてR1にて示す低光沢モード用の搬送経路が形成される。中光沢モードでは、記録材Pを第一定着器14の定着ニップ部Nに導入するとともに、第一振分け部材21を軸21aを支点として一点鎖線にて示す位置に回転させる。そしてその第一振分け部材21により記録材Pを第二定着器15の定着ニップ部Nに導入するとともに、第二振分け部材22を軸22aを支点として実線にて示す位置に回転させる。一点鎖線にて示す位置に回転された第一振分け部材21は第一定着器14の定着ニップ部Nを出た記録材Pを第二定着器15の定着ニップ部Nに案内する。実線にて示す位置に回転された第二振分け部材22は第二定着器15の定着ニップ部Nを出た記録材Pを搬送路19dに案内し、搬送路19dは記録材Pを排出トレイ17に排出する。これにより図3においてR2にて示す中光沢モード用の搬送経路が形成される。第一高光沢モードでは、記録材Pを第一定着器14の定着ニップ部Nに導入し、第一振分け部材21を軸21aを支点として実線にて示す位置に回転させるとともに、第二振分け部材22を軸22aを支点として一点鎖線にて示す位置に回転させる。そしてその第二振分け部材22により記録材Pを第三定着器16の定着ニップ部Nに導入する。実線にて示す位置に回転された第一振分け部材21は第一定着器14の定着ニップ部Nを出た記録材Pを搬送路19cに案内し、この搬送路19cは記録材Pを第二振分け部材22に案内する。一点鎖線にて示す位置に回転された第二振分け部材22は搬送路19cから案内されてきた記録材Pを第三定着器16の定着ニップ部Nに案内し、第三定着器16は記録材Pを加熱定着後に排出トレイ18に排出する。これにより図3においてR3にて示す第一高光沢モード用の搬送経路が形成される。第二高光沢モードでは、記録材Pを第一定着器14の定着ニップ部Nに導入し、第一振分け部材21を軸21aを支点として一点鎖線にて示す位置に回転させるとともに、第二振分け部材22を軸22aを支点として一点鎖線にて示す位置に回転させる。そしてその第二振分け部材22により記録材Pを第三定着器16の定着ニップ部Nに導入する。一点鎖線にて示す位置に回転された第一振分け部材21は第一定着器14の定着ニップ部Nを出た記録材Pを第二定着器15の定着ニップ部Nに案内する。一点鎖線にて示す位置に回転された第二振分け部材22は第二定着器15の定着ニップ部Nを出た記録材Pを第三定着器16の定着ニップ部Nに案内し、第三定着器16は記録材Pを加熱定着後に排出トレイ18に排出する。これにより図3においてR4にて示す第二高光沢モード用の搬送経路が形成される。
以下に、本発明者が本実施例1の画像形成装置を用いてグロスコントロールを行うための定着条件について検討を行った内容について説明する。第一定着器14及び第二定着器15は同じ定着器を用い、定着ニップ幅が10mm、定着温度はT1=180℃、T2=200℃の2水準で試験を行った。第三定着器16は定着ニップ幅10mm、定着温度は180℃、定着ベルト73と記録材Pの分離時の温度はトナーのガラス転移点Tg以下とした。定着時の周速度は200mm/sec、記録材は王子製紙製SA金藤209.3gsmを用いた。トナー印字デューティはシアン100%、マゼンタ100%の計200%で、ベタ画像とし、定着後のトナー画像表面の光沢度を60°光沢度計にて測定した。また定着後のトナー画像について気泡状の画像欠陥の発生状況も調べた。上記条件にて試験を行った結果を表1に示す。
テスト1は、定着温度T1で第一定着器14のみを使用した場合(第一の定着モードに対応)である。テスト1では、トナー画像の光沢度は10であり、そのトナー画像に気泡状の画像欠陥は発生しなかった。以後、気泡状画像欠陥は第三定着器16を使用しないテスト2〜テスト4の場合は発生しなかった。テスト2は、定着温度T1で第一定着器14および第二定着器15を使用した場合(第二の定着モードに対応)である。テスト1では、トナー画像の光沢度は35であり、テスト1に比べて光沢度が上昇している。テスト3は、定着温度T2で第一定着器14のみを使用した場合(第一の定着モードに対応)である。テスト3では、トナー画像の光沢度は15であり、テスト1に比べて光沢度が上昇している。テスト4は、定着温度T2で第一定着器14および第二定着器15を使用した場合(第二の定着モードに対応)である。テスト4では、トナー画像の光沢度は45であり、テスト1〜3に比べて光沢度が上昇している。テスト5は、定着温度T1で第一定着器14、第二定着器15および第三定着器16を使用した場合(第四の定着モードに対応)である。テスト5では、トナー画像の光沢度は90であり、テスト1〜4に比べて光沢度が大きく上昇している。しかし、軽微な気泡状の画像欠陥が発生した。テスト6は、定着温度T1で第一定着器14および第三定着器16を使用した場合(第3の定着モードに対応)である。テスト6では、トナー画像の光沢度は100であり、テスト5より光沢度は少し上昇したが、気泡状の画像欠陥は発生しなかった。テスト7は、定着温度T2で第一定着器14、第二定着器15および第三定着器16を使用した場合(第4の定着モードに対応)である。テスト7では、トナー画像の光沢度は90であり、テスト5と同じ光沢度となった。気泡状の画像欠陥のレベルはテスト5より悪かった。テスト8は、定着温度T2で第一定着器14および第三定着器16を使用した場合(第3の定着モードに対応)である。テスト8では、トナー画像の光沢度は98であり、光沢度はテスト6とほぼ同じ結果となった。気泡状の画像欠陥は発生しなかった。上記のテスト結果から、第一定着器14のみ使用した場合より、第一定着器14と第二定着器15を併用した場合の方が光沢度を高くすることができることがわかる。また定着温度が高い方が光沢度が高い傾向があるが、第一定着器14と第二定着器15を併用した場合の方がより高い光沢度まで得ることができることがわかる。第三定着器16を併用すると光沢度が100程度まで出すことができることがわかる。第一定着器14、第二定着器15および第三定着器16を使用した場合は気泡状の画像欠陥が発生し、第一定着器14および第三定着器16を使用した場合は気泡状の画像欠陥が発生しないことがわかる。また、その場合、第一定着器14の定着温度が低い方が気泡状画像欠陥のレベルが良いことが分かる。つまり、本発明者の検討によると、第三定着器16の前の定着状態が弱めの方が気泡状画像欠陥のレベルが良い傾向があることがわかった。この現象について、図4に基づいて説明する。
図4の(a)〜(d)は記録材P上にトナー画像tが加熱定着された後の記録材P及びトナー画像tの断面図であり、トナー画像t内に空隙VOID(気泡)があることを表している。図4の(a)は第一定着器14のみで記録材Pにトナー画像tの加熱定着を行った後の断面図であり、図4の(c)は第一定着器14および第二定着器15で記録材Pにトナー画像tの加熱定着を行った後の断面図である。図4の(a)のトナー画像tの表面(以下、トナー層表面という)は凹凸が大きく、図4の(c)のほうが凹凸が小さくなっており、両者ともにトナー層内に空隙が残っている。図4の(b)は第一定着器14および第三定着器16で記録材Pにトナー画像tの加熱定着を行った後の断面図であり、トナー層表面は平滑になっており、空隙は無くなっている。これは本発明者の検討により、第三定着器16でトナー画像tの加熱定着を行う前のトナー画像tの定着性が弱めの方がトナー層内の空隙にある空気が第三定着器16による加熱定着時にトナー表層側から抜けやすいからであることがわかった。図4の(d)は第一定着器14、第二定着器15および第三定着器16で記録材Pにトナー画像tの加熱定着を行った後の断面図であり、トナー層表面は平滑になっており、空隙は残っている。これは第三定着器16でトナー画像tの加熱定着を行う前のトナー画像tの定着性が強く、トナー層内の空隙にある空気が第三定着器16による加熱定着時にトナー表層側から抜けにくいからである。このような原理により、第三定着器16を用いてトナー画像tの加熱定着を行う前の定着状態を弱めにすることで気泡状画像欠陥のレベルが改善されることがわかった。また、図4の(a)、図4の(c)の状態でも空隙はあるが、トナー層表面が低・中光沢であり、鏡面光沢となっていないため問題無いレベルである。あくまで、トナー層表面が光沢度100程度の鏡面光沢となったときに気泡状画像欠陥が認識できる。さらに、本実施例1では通常印画紙写真で使用される程度の坪量の200gsm前後の記録材で評価した。坪量の大きな300gsm以上の記録材では、熱容量が大きいため、第一定着器14および第二定着器15を用いても定着性が弱めになり、第一定着器14、第二定着器15および第3定着器16を用いた方がよい場合もある。上記の低光沢モード、中光沢モード、第一高光沢モード又は第二高光沢モードを選択する構成として、画像形成装置に設けられている操作案内表示部(不図示)にモード選択画面を表示し、そのモード選択画面からユーザーが所定のモードを選択できるようにする。或いは、画像形成装置に設けられている操作案内表示部(不図示)にモード選択画面を表示し、そのモード選択画面からユーザーが使用する記録材の光沢等に応じて選択できるようにしてもよい。或いは、画像形成装置に設けられている所定の光沢検知装置(不図示)により記録材の光沢を検知し、その光沢検知装置の出力信号に基づいて対応する所定のモードを自動的に選択できるようにしてもよい。本実施例1の画像形成装置は、低光沢モードと、中光沢モードと、第一高光沢モードと、第二高光沢モードと、を有している。つまり、第一定着器を使用する低光沢モードと、第一定着器と第二定着器とを使用する中光沢モードと、第三定着器の使用に応じて第一定着器の使用と第一定着器と第二定着器との使用を変更する高光沢モードと、を有している。これにより、トナー像の気泡状画像欠陥の発生を低減でき、トナー像に低光沢から高光沢までの幅広い光沢を付与することができる。
[他の実施例]
第一定着器14、第二定着器15は、それぞれローラを用いたローラ定着器に限らずベルトを用いたベルト定着器であっても良い。また第一定着器14と第二定着器15で定着温度、定着ニップ圧などの加熱定着条件が異なっても同様の効果が得られる。記録材Pの搬送路14a〜14dは、図1に示されるものに限らず第一定着器14〜第三定着器15の使用個数を切り替えることができればどのようなものであってもよい。