JP5502844B2 - バルブ式筆記具 - Google Patents

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本発明はバルブ式筆記具、より詳細には、バルブ機構を備えた直液式のマーカー等の筆記具であって、芯をペン軸内部へ押し込むことによりバルブが開いてインクがインク貯留部に供出され、インク貯留部においてインクが芯に染み込んで筆記可能となるバルブ式筆記具に関するものである。
マーカー等の筆記具は、軸内にインクを含浸させた中綿を装填する中綿式タイプと、軸内に直接インクを注入する直液式(生インク式)タイプとに大別される。従来のマーカーとしては中綿式のものが多かったが、中綿式の場合は、一端芯先が乾くと、再び筆記可能状態にまでインクが染み込むのに時間がかかり、また、素早く筆記した場合は、インクの染み込みが追い付かないために筆記した文字が掠れるという欠点がある。これに対して直液式の場合は、芯がインクタンク軸内に貯留されたインクに直接触れていてインクの染み込みが迅速なため、芯先の乾きがなく、素早く筆記した場合においてもインクの染み込みがこれに追従するため、筆記文字が掠れることもないところから、最近では、直液式のものが主流となってきている。
ところで、直液式の場合は、芯に過剰にインクが染み出て、所謂インクのぼた落ち現象が起こるおそれがあるため、芯を押し込むことによって開放されるバルブ機構を介して芯にインクを染み込ませるバルブ式のものが多い。しかし、その場合においても、筆記時にインクタンク軸を握持するために軸内の空気が熱膨張し、あるいは、握持圧や気圧の関係で軸内の圧力が上昇することにより、芯に過剰にインクが染み出てインクのぼた落ちが起こるおそれがある。そこで、従来は、芯の内端部に発泡樹脂製の吸収環を嵌め付け、その吸収環で過剰インクを吸収することによってインクのぼた落ちを回避する方法が採用されている。
しかるに、この従来のバルブ式で吸収環を用いる機構の場合は、芯のインクに接する部分が内端部のみと少ないために芯が乾きやすく、筆記掠れも生じやすい。そのため、芯を押し込んでのバルブ開放操作を頻繁に行わなければならない煩わしさがある。また、芯の押し込み操作を頻繁に行うために芯の先端が傷みやすく、インクが多量に残存していたとしても、使用できなくなることが少なくないという問題があった。
特開2008−6668号公報 特開2008−87422号公報 特開2008−155484号公報 実用新案登録第2594306号公報
上述したように、従来のバルブ式で吸収環を用いる機構の場合は、芯を押し込んでのバルブ開放操作を頻繁に行わなければならない煩わしさがあり、また、芯の押し込み操作を頻繁に行うために芯の先端が傷みやすく、多量のインクが残存しているにも関わらず、使用できなくなることが少なくないという問題があった。
そこで本発明は、このような問題のない、即ち、芯の多くの部分が常時インクに接する状態にされることで芯の乾きが防止されるために、芯の押し込みによるバルブの開放操作を頻繁に行う必要がなく、その操作を頻繁に行うことに起因する芯先の早期損傷もなく、また、芯に対するインクの染み込みが迅速なため、高速筆記の場合においても筆記文字の掠れが生じない、バルブ式筆記具を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、インクタンク軸と、前記インクタンク軸の先端開口部に嵌装されるバルブ収装筒と、前記バルブ収装筒に摺動可能に保持される芯とから成り、
前記バルブ収装筒内には、その先端側から順に、前記芯の後半部が摺動可能に挿入される芯挿入筒と前記芯挿入筒の外周面にその全長に亘って狭間隔置きに配設される環状板とから成っていて、前記芯挿入筒内に導入されたインクが前記各環状板間に流出可能に構成されるインク貯留部材と、インクの供給を制御するバルブ機構を内蔵していて、上面が前記インク貯留部材の底面に当接し、底面開口が、前記インクタンク軸内のインクを常時通流させるインク通流孔を有する蓋部材によって閉塞されるバルブユニットケースとが装填され、
前記バルブ機構は、前記芯が押し込まれることにより開いて前記インク通流孔を通して前記バルブユニットケース内に導入されているインクを前記インク貯留部材内に供出させ、前記インク貯留部材内に供出されたインクは、前記芯挿入筒から前記各環状板間に流出して前記各環状板間と前記バルブ収装筒の内周面との間のインク貯留空間を満たしてそこに貯留され、随時、後半部が前記芯挿入筒内に進入している前記芯に染み込み可能にしたことを特徴とするバルブ式筆記具である。
一実施形態においては、前記芯挿入筒に縦溝を形成して前記縦溝が前記各環状板間に開口するようにすることにより、前記芯挿入内に導入されたインクが前記開口から前記インク貯留空間に流出するようにされる。
一実施形態においては、前記インク貯留部材の環状板群が、後端に向かって縮まる緩いテーパ形状にされ、別の実施形態においては、前記バルブ収装筒の内周面が、先端に向かって縮まる緩いテーパ形状にされる。
一実施形態においては、前記バルブユニットケース内に組み込まれる前記バルブ機構は、前記バルブユニットケース上面のインク供出口を開閉する弁体と、前記弁体を常時前記インク供出口を閉じるように付勢するリターンスプリングとで構成される。
本発明に係るバルブ式筆記具によれば、芯の後半部が、囲周部(環状板間)においてインクを貯留する芯挿入筒内に収まっていて常時インクに接しているために芯の乾きが防止され、以て、芯の押し込みによるバルブの開放操作を頻繁に行う必要がなくなり、その操作を頻繁に行うことに起因する芯先の早期損傷が防止され、また、高速筆記に際してのインク染み込みも迅速となるために、筆記文字の掠れが生じないという効果がある。
更に、インクタンク軸内に内圧変化が生じても、バルブ機構が機能してインクのインク貯留筒内への流入が阻止されるため、インクタンク軸内の内圧変化に起因するインクのぼた落ちが防止される効果がある。
本発明に係るバルブ式筆記具の一実施形態の正面図である。 本発明に係るバルブ式筆記具の一実施形態の要部拡大断面図(芯非押し込み時)である。 本発明に係るバルブ式筆記具の一実施形態の要部拡大断面図(芯押し込み時)である。 本発明に係るバルブ式筆記具の一実施形態の分解斜視図である。 本発明に係るバルブ式筆記具におけるバルブ収装筒の構成を示す正面図及び縦断面図である。 本発明に係るバルブ式筆記具におけるインク貯留部材の構成例を示す正面図、側面図及び縦断面図である。 本発明に係るバルブ式筆記具におけるインク貯留部材の他の構成例を示す正面図、側面図及び縦断面図である。 本発明に係るバルブ式筆記具におけるバルブユニットケースの構成を示す正面図及び縦断面図である。 本発明に係るバルブ式筆記具における蓋部材の構成を示す正面図及び縦断面図である。
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係るバルブ式筆記具の一実施形態の正面図、図2、3はその縦断面図、図4はその分解斜視図であり、それらに示されるように、本発明に係るバルブ式筆記具は、インクタンク軸1と、インクタンク軸1の先端部に嵌め付けられるバルブ収装筒2と、先端部が、バルブ収装筒2の先端縮径部3に摺動自在に支持されて該先端縮径部3から突出するようにバルブ収装筒2に保持される芯4と、図示せぬキャップとから成る。なお、以下の説明は、各部品の筆記具先端側(図において左側)を上面とし、各部品の筆記具後端側を下面(又は底面)としたものである。
バルブ収装筒2内には、その先端側から順に、インク貯留部材5とバルブユニットケース6とが装填される。インク貯留部材5は、基板7の中央に延設されて芯4の後半部が摺動可能に挿入される芯挿入筒8と、芯挿入筒8の外周面にその全長に亘って狭間隔置きに配設される円形の環状板9とから成っていて(図6、7参照)、後述するようにしてインク貯留部材5に導入されたインクが、各環状板9間の隙間とバルブ収装筒2の内周面とに囲まれるインク貯留空間11を満たすように構成される。
インクが上記インク貯留空間11を満たすようにするため、一実施形態においては、芯挿入筒8に、1又は複数の縦溝10が形成され、該縦溝10形成部が各環状板9間に開口するようにされる(図6(D)、図7(C)参照)。この構成の場合は、バルブユニットケース6の上面に開設されるインク供出口12から出たインクが縦溝10内に入り込み、縦溝10内を上昇しつつ各環状板9間の開口から出てインク貯留空間11を充填する。その場合、縦溝10内に導入されたインクの一部は、後半部が芯挿入筒8内に収装されている芯4に染み込んでいく。
図7は、インク貯留部材5の他の実施形態を示すものであり、その実施形態においては、芯挿入筒8の後半部、即ち、後述する開閉ピース12が収まる部分の内径が前半部の内径よりも大径に形成されている。
芯挿入筒8の各環状板9の径は、バルブ収装筒2の内径に対応して形成され、その基板7がバルブ収装筒2の内周面に密着するようにされる。そして、一実施形態においては、環状板9は後端に向かって縮径化する緩いテーパ形状に形成される(図6参照)。そのようにすることにより、後端に向かう程、バルブ収装筒2の内周面との間隙が拡がってインク貯留空間11が拡がり、逆に、先端側は、バルブ収装筒2の内周面に近接してインクが漏れにくくなる。また、図7に示す実施形態におけるように、各環状板9の径は均一にし、バルブ収装筒2の内周面を緩いテーパ形状に形成することによっても、同じ作用効果が得られる。
インク貯留部材5は上記構成であるため、バルブユニットケース6から供出されたインクは、芯挿入筒8の縦溝10内に流入して芯4に染み込み、余剰のインクは縦溝10の開口から各環状板9間の狭い間隙内に流出してインク貯留空間11を充填し、そこに貯留される。そして、インク貯留空間11内に貯留されたインクは、後半部が芯挿入筒8内に収まっている芯4に、随時染み込んでいくことになる。
バルブユニットケース6内には、その上面に開設されるインク供出口12を開閉する弁体13と、弁体13を常時インク供出口12を閉じるように付勢するリターンスプリング15とが組み込まれる(図2、3参照)。弁体13は、底部にテーパ形状の弁座当接部を有する開閉ピース14と、開閉ピース14を受ける支持部14aとから成り、組み立て時において、開閉ピース14の上部がインク供出口12から突出し、上記芯挿入筒8の後半部内に摺動可能状態にて進入する(図2、3参照)。また、支持部14aには、側方に張り出す鍔部14bが形成されると共に、該鍔部14bにストッパー14cが連設される。このストッパー14cは、後述するように、芯4の押し込み端を規制する役目を果たす。
弁体13は、無負荷時にはリターンスプリング15よって常時押し上げられて、その開閉ピース14の弁座当接部がインク供出口12内縁の弁座に当接してインク供出口12を閉じ(図2参照)、リターンスプリング15の押上力に抗して芯4が押し込まれると、芯4の内端面によって開閉ピース14が押されてその弁座当接部がインク供出口12内縁の弁座から離れ、インク供出口12を開放する(図3参照)。このようにしてインク供出口12が開放されることにより、バルブユニットケース6内に貯まっていたインクが、インク供出口12を通って芯挿入筒8の縦溝10内に流入する。
全面が開口されるバルブユニットケース6の底面は、インクタンク軸1内のインクを常時バルブユニットケース6内へ通流させるインク通流孔17を有する蓋部材16によって閉塞される(図2、3、8参照)。通例、インク通流孔17は、蓋部材16の中心部に形成される支持孔18を囲むように複数穿設される。リターンスプリング15は、その上面が弁体13の開閉ピース14の裾広がり部の裏面に当接して支持され、下面は蓋部材16に当接して支持される。また、弁体13の支持部14aの下部は、蓋部材16の中心部に形成される支持孔18内に摺動可能に挿入される。上記ストッパー14cは、芯4が押し込まれた際に、この支持孔18の上縁部に当たることにより芯4の押し込み端を規制する(図3参照)。
バルブユニットケース6の底面は外方に延出されてフランジ19が形成され、バルブユニットケース6は、そのフランジ19がバルブ収装筒2の下端に当接するまでバルブ収装筒2内に挿入される。その位置においてその上面がインク貯留部材5の底面に当接すると共に、そのインク供出口12が芯挿入孔8に連通状態となる(図2、3参照)。
上記構成において、インクタンク軸1内のインクは、芯4を下向きにすることにより、自重で蓋部材16のインク通流孔17を自由に通り抜けてバルブユニットケース6内に流入し、そこを満たす。このバルブユニットケース6内に入り込んだインクは、芯4がバルブ収装筒2内に押し込まれてインク供出口12が開放されるまで、そこに留まる。そして、芯4がバルブ収装筒2内に押し込まれてインク供出口12が開放されると同時にインク貯留部材5内に流入し(図3)、流入したインクは、上述したように、環状板9間の狭い間隙とバルブ収装筒2の内周面との間のインク貯留空間11を充填すると共に、随時芯4に染み込んでいく。
このように、本発明に係る筆記具においては、常時芯4の後半部が、インクを貯留するインク貯留空間11に囲まれた芯挿入筒8内に収まっていて、随時インクを吸収し得る状況にあるために芯4の乾きが防止される。そのため、芯の押し込みによるバルブの開放操作を頻繁に行う必要がなくなり、その操作を頻繁に行うことに起因する芯先の早期損傷が防止される。また、高速筆記しても、インクの染み込みが迅速なために、筆記文字の掠れも生じにくくなる。
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白である。従って、この発明は、請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
1 インクタンク軸
バルブ収装筒
3 縮径部
4 芯
5 インク貯留部材
6 バルブユニットケース
7 基板
8 芯挿入筒
9 環状板
10 縦溝
11 インク貯留空間
12 インク供出口
13 弁体
14 開閉ピース
14a 支持部
14b 鍔部
14c ストッパー
15 リターンスプリング
16 蓋部材
17 インク通流孔
18 芯挿入孔
19 フランジ

Claims (5)

  1. インクタンク軸と、前記インクタンク軸の先端開口部に嵌装されるバルブ収装筒と、前記バルブ収装筒に摺動可能に保持される芯とから成り、
    前記バルブ収装筒内には、その先端側から順に、前記芯の後半部が摺動可能に挿入される芯挿入筒と前記芯挿入筒の外周面にその全長に亘って狭間隔置きに配設される環状板とから成っていて、前記芯挿入筒内に導入されたインクが前記各環状板間に流出可能に構成されるインク貯留部材と、インクの供給を制御するバルブ機構を内蔵していて、上面が前記インク貯留部材の底面に当接し、底面開口が、前記インクタンク軸内のインクを常時通流させるインク通流孔を有する蓋部材によって閉塞されるバルブユニットケースとが装填され、
    前記バルブ機構は、前記芯が押し込まれることにより開いて前記インク通流孔を通して前記バルブユニットケース内に導入されているインクを前記インク貯留部材内に供出させ、前記インク貯留部材内に供出されたインクは、前記芯挿入筒から前記各環状板間に流出して前記各環状板間と前記バルブ収装筒の内周面との間のインク貯留空間を満たしてそこに貯留され、随時、後半部が前記芯挿入筒内に進入している前記芯に染み込み可能にしたことを特徴とするバルブ式筆記具。
  2. 前記芯挿入筒に縦溝を形成して前記縦溝が前記各環状板間に開口するようにすることにより、前記芯挿入内に導入されたインクが前記開口から前記インク貯留空間に流出可能にした、請求項1に記載のバルブ式筆記具。
  3. 前記インク貯留部材の環状板群を、後端に向かって縮まる緩いテーパ形状にした、請求項1又は2に記載のバルブ式筆記具。
  4. 前記バルブ収装筒の内周面を、先端に向かって縮まる緩いテーパ形状にした、請求項1又は2に記載のバルブ式筆記具。
  5. 前記バルブユニットケース内に組み込まれる前記バルブ機構は、前記バルブユニットケース上面のインク供出口を開閉する弁体と、前記弁体を常時前記インク供出口を閉じるように付勢するリターンスプリングとから成る、請求項1乃至のいずれかに記載のバルブ式筆記具。
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