JP5502634B2 - 吸着体、マグネットキャッチおよびこれらの生産方法 - Google Patents

吸着体、マグネットキャッチおよびこれらの生産方法 Download PDF

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本発明は、磁力により被吸着物を吸着する吸着体、磁力により被吸着物を被固定物に接近した状態で保持するマグネットキャッチ、およびこれらの生産方法に関する。
従来、被固定物に固定され、磁力により被吸着物を被固定物に接近した状態で保持するマグネットキャッチが知られている。
上記マグネットキャッチの一例としては、永久磁石からなるマグネットブロックおよび当該マグネットブロックが発生する磁力により磁化する材料からなる一対のヨークを備える吸着体と、吸着体を収容するとともに被固定物に固定されるケースと、を具備する。例えば、特許文献1に記載の如くである。
近年、マグネットキャッチの吸着力の向上およびマグネットキャッチの製造コストの削減を更に高い次元で両立することが要求されている。
従来、マグネットキャッチの吸着力の向上を図る一般的な方法としては、(a)マグネットキャッチを構成するマグネットブロックのサイズを大きくする方法、(b)フェライト磁石よりも強力な磁力を発生させることが可能な永久磁石(例えば、ネオジム磁石等)でマグネットブロックを構成する方法等が知られている。
しかし、上記(a)および(b)の方法の場合、いずれもマグネットブロックを構成する永久磁石の材料コストが増大するため、結局はマグネットブロックの製造コストが増大する。
このように、従来のマグネットキャッチの吸着力の向上を図る一般的な方法によれば、マグネットキャッチの吸着力の向上およびマグネットキャッチの製造コストの削減を両立することは困難である。
また、従来のマグネットキャッチは、その吸着力にバラツキが発生し易いという問題を有する。
より詳細には、マグネットキャッチの吸着力のバラツキの問題には、(A)同種のマグネットキャッチにおける個体間の吸着力のバラツキの問題、および(B)同一のマグネットキャッチにおける吸着力の経時的なバラツキ、の二種類の問題が含まれる。
従来、マグネットキャッチの吸着力のバラツキの問題を解消する一つの方法としては、マグネットキャッチを構成するマグネットブロックのサイズを予め十分に大きいサイズに設定することにより、「マグネットキャッチの吸着力のバラツキの下限値」を「マグネットキャッチに要求される吸着力」よりも大きくする方法が挙げられる。
しかし、上記方法は、マグネットキャッチに要求される品質(仕様)を担保することが可能であるが、マグネットキャッチの吸着力のバラツキを本質的に解消するものではない。
また、上記方法はその性質上、マグネットブロックの大型化を伴うので、マグネットブロックを構成する永久磁石の材料コスト、ひいてはマグネットブロックの製造コストの増大を招来する。従って、上記方法はマグネットキャッチの製造コストを削減する観点からは好ましくない。
特開昭57−85468号公報
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、予め定められた磁石部材およびヨーク部材の形状を保持する限りにおいて強い吸着力を発生させることが可能であり、かつ吸着力のバラツキを抑えることが可能な吸着体、マグネットキャッチ、およびこれらの生産方法を提供すること、である。
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、
永久磁石からなる磁石部材と、
前記磁石部材が発生させる磁場により磁化する材料からなり、被吸着物が吸着される吸着面および前記磁石部材が当接する当接面を有するヨーク部材と、
を具備する吸着体の生産方法であって、
コンピュータが、予め形状が定められた前記磁石部材、並びに、予め前記吸着面の形状および前記当接面の形状を含む形状が定められた前記ヨーク部材について、前記吸着面に対して垂直な方向である吸着方向における前記吸着面から前記ヨーク部材の当接面に当接した磁石部材までの距離であるヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係を算出し、
前記ヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係に基づいて、前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力の最大値である最大吸着力を算出し、
前記ヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係および前記最大吸着力に基づいて、前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力が前記最大吸着力の90%以上となる前記ヨーク突出量の範囲である有効ヨーク突出範囲を算出し、
前記磁石部材が前記当接面に当接し、かつ前記ヨーク突出量が前記有効ヨーク突出範囲内で保持されるように前記磁石部材を前記ヨーク部材に固定するものである。
請求項2においては、
永久磁石からなる磁石部材と、
前記磁石部材が発生させる磁場により磁化する材料からなり、被吸着物が吸着される吸着面および前記磁石部材が当接する当接面を有するヨーク部材と、
前記磁石部材および前記ヨーク部材を収容するケース部材と、
を具備するマグネットキャッチの生産方法であって、
コンピュータが、予め形状が定められた前記磁石部材、並びに、予め前記吸着面の形状および前記当接面の形状を含む形状が定められた前記ヨーク部材について、前記吸着面に対して垂直な方向である吸着方向における前記吸着面から前記ヨーク部材の当接面に当接した磁石部材までの距離であるヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係を算出し、
前記ヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係に基づいて、前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力の最大値である最大吸着力を算出し、
前記ヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係および前記最大吸着力に基づいて、前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力が前記最大吸着力の90%以上となる前記ヨーク突出量の範囲である有効ヨーク突出範囲を算出し、
前記磁石部材が前記当接面に当接し、かつ前記ヨーク突出量が前記有効ヨーク突出範囲内で保持されるように前記磁石部材を前記ヨーク部材に固定し、前記磁石部材および前記ヨーク部材を前記ケース部材に収容するものである。
本発明に係る吸着体およびマグネットキャッチは、予め定められた磁石部材およびヨーク部材の形状を保持する限りにおいて強い吸着力を発生させることが可能であり、かつ吸着力のバラツキを抑えることが可能である、という効果を奏する。
本発明に係る吸着体の生産方法は、予め定められた磁石部材およびヨーク部材の形状を保持する限りにおいて強い吸着力を発生させることが可能であり、かつ吸着力のバラツキを抑えた吸着体を多大な試行錯誤を伴わずに生産することが可能である、という作用効果を奏する。
本発明に係るマグネットキャッチの生産方法は、予め定められた磁石部材およびヨーク部材の形状を保持する限りにおいて強い吸着力を発生させることが可能であり、かつ吸着力のバラツキを抑えたマグネットキャッチを多大な試行錯誤を伴わずに生産することが可能である、という作用効果を奏する。
本発明に係るマグネットキャッチの実施の一形態を示す斜視図。 同じく本発明に係るマグネットキャッチの実施の一形態を示す斜視図。 本発明に係るマグネットキャッチの実施の一形態を示す正面図。 本発明に係るマグネットキャッチの実施の一形態を示す平面図。 図4におけるA−A矢視正面断面図。 図4におけるB−B矢視左側面断面図。 本発明に係る吸着体の実施の一形態を示す斜視図。 本発明に係る吸着体の実施の一形態を示す左側面図。 ケース本体を示す斜視図。 カバーを示す斜視図。 本発明に係るマグネットキャッチの実施の一形態の組み立て手順を示すフロー図。 本発明に係るマグネットキャッチの実施の一形態を示す分解斜視図。 本発明に係るマグネットキャッチの実施の一形態の設計手順を示すフロー図。 仮想空間に配置された吸着体および吸着プレートを示す斜視図。 (a)仮想空間に配置された吸着体および吸着プレートを示す左側面図、(b)仮想空間に配置された吸着体および吸着プレートを示す平面図。 ヨークの吸着面における磁束密度の吸着方向成分の分布を示す図。 本発明に係る吸着体の実施の一形態におけるヨーク突出量と吸着力との関係を示す図。 マグネットブロックのB−H曲線(磁気ヒステリシス曲線)を示す図。
以下では図1から図17を用いて本発明に係るマグネットキャッチの実施の一形態であるマグネットキャッチ100、および本発明に係る吸着体の実施の一形態である吸着体10について説明する。
以下では便宜上、図1および図2に示すマグネットキャッチ100および吸着体10の形状を基準として「上下方向」、「前後方向」および「左右方向」を定義し、定義された方向を用いてマグネットキャッチ100および吸着体10の各部を説明する。
なお、ここで定義された方向はマグネットキャッチ100および吸着体10が使用される時の姿勢を限定するものではない。
図3に示す如く、マグネットキャッチ100は吸着プレート2を磁力で吸着することにより吸着プレート2が固定プレート1に接近した状態を保持する。
固定プレート1は本発明に係る被固定物の実施の一形態であり、吸着プレート2は本発明に係る被吸着物の実施の一形態である。
本発明に係るマグネットキャッチにおける「被固定物」は、マグネットキャッチの磁力により相互に接近した状態で保持される二つの対象物のうち、マグネットキャッチが固定される方の対象物を指す。
本発明に係るマグネットキャッチにおける「被吸着物」は、マグネットキャッチの磁力により相互に接近した状態で保持される二つの対象物のうち、マグネットキャッチに吸着される方の対象物を指す。
本発明に係る吸着体における「被吸着物」は、吸着体に吸着される対象物を指す。
「マグネットキャッチが被吸着物を磁力で吸着することにより被吸着物が被固定物に接近した状態を保持する」とは、マグネットキャッチが発生させる磁力を上回る外力が被吸着物に作用して被吸着物がマグネットキャッチから引き離されない限り、被固定物に固定されたマグネットキャッチに被吸着物が吸着された状態が保持されること、を指す。
図3に示す固定プレート1はフェライト系ステンレス鋼からなり、上下一対の板面を有する板状の部材である。固定プレート1には嵌装孔1aが形成される。嵌装孔1aは固定プレート1の上下一対の板面を貫通する。嵌装孔1aの平面視形状は概ね前後方向に比べて左右方向にやや長い長方形状である。
固定プレート1は、例えば家具の本体(不図示)にネジ止めにより固定される。
なお、家具の本体には当該本体の表面に開口した窪み(凹部)が形成され、固定プレート1が家具の本体に固定されたときには当該凹部の開口部分と嵌装孔1aとが重なる。当該凹部の開口部分の平面視形状は前後方向および左右方向において嵌装孔1aよりもやや大きい長方形状であり、当該凹部の深さはマグネットキャッチ100の上下方向の高さよりもやや大きい。
本実施形態の固定プレート1はフェライト系ステンレス鋼からなるが、本発明に係る被固定物を構成する材料はこれに限定されず、他の材料(例えば、種々の金属材料、種々の樹脂材料、種々の木材、種々のセラミックス等)でも良い。
図3に示す吸着プレート2はフェライト系ステンレス鋼からなり、上下一対の板面を有する板状の部材である。吸着プレート2の平面視形状は前後方向に比べて左右方向にやや長い長方形である。
吸着プレート2は、例えば家具の本体に回動可能に連結される扉(不図示)にネジ止めにより固定される。
本実施形態の吸着プレート2はフェライト系ステンレス鋼からなるが、本発明に係る被吸着物を構成する材料はこれに限定されず、マグネットキャッチおよび吸着体に吸着される材料であれば良い。
本発明に係る被吸着物を構成する材料の例としては、常磁性体(外部から磁場が作用しないときには磁化せず、外部から磁場が作用したときには磁化する材料)が挙げられる。
図1および図2に示す如く、マグネットキャッチ100は吸着体10およびケース20を具備する。
図7および図8に示す如く、吸着体10はマグネットブロック11および一対のヨーク12・13を具備する。
図5、図6、図7および図8に示すマグネットブロック11は本発明に係る磁石部材の実施の一形態である。
マグネットブロック11は吸着体10(マグネットキャッチ100)を構成する部材のうち、磁力を発生させる部材である。
本実施形態のマグネットブロック11は永久磁石からなる。
「永久磁石」は、自発的に(外部から磁場あるいは電流が供給されない状態で)磁化し、周囲に磁場を発生させる(ひいては、磁力を発生させる)性質を有する物体であり、通常は強磁性体からなる。
永久磁石の具体例としては、アルニコ磁石、KS鋼、MK鋼、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等、既知の種々の磁石が挙げられる。
本実施形態のマグネットブロック11の形状は前後一対の板面、上下一対の端面および左右一対の端面を有する直方体であり、マグネットブロック11の前後方向の厚みは上下方向の高さおよび左右方向の幅よりも小さく、マグネットブロック11の上下方向の高さは左右方向の幅よりも小さい。
図6、図7および図8に示す一対のヨーク12・13は本発明に係るヨーク部材の実施の一形態である。
一対のヨーク12・13は吸着体10(マグネットキャッチ100)を構成する部材のうち、吸着体10(マグネットキャッチ100)が吸着プレート2を吸着したときに実際に吸着プレート2に当接する部材である。
一対のヨーク12・13はいずれもフェライト系ステンレス鋼からなる。
本実施形態の一対のヨーク12・13は同じ形状であり、概ね薄い直方体である。
一対のヨーク12・13はいずれも前後一対の板面、上下一対の端面および左右一対の端面を有する。
ヨーク12には溝12bが形成される。溝12bはヨーク12の上下一対の端面のうち上側の端面の左右略中央部に開口し、かつヨーク12の前後一対の板面を貫通する。溝12bの正面視形状は左右方向にやや長い長方形である。
本実施形態では、ヨーク12の前後一対の板面のうち後側の板面が当接面12aを成し、ヨーク12の上下一対の端面のうち上側の端面(溝12bにより左右に二分割されている端面)が吸着面12c・12cを成す。言い換えれば、ヨーク12は当接面12aおよび吸着面12c・12cを有する。
当接面12aは本発明に係る当接面の実施の一形態である。当接面12aはヨーク12においてマグネットブロック11に当接する面である。
吸着面12c・12cは本発明に係る吸着面の実施の一形態である。吸着面12c・12cは吸着プレート2が吸着される(マグネットブロック11が発生する磁力により吸引された吸着プレート2が当接した状態で保持される)面である。
ヨーク13には溝13bが形成される。溝13bはヨーク13の上下一対の端面のうち上側の端面の左右略中央部に開口し、かつヨーク13の前後一対の板面を貫通する。溝13bの正面視形状は左右方向にやや長い長方形である。
本実施形態では、ヨーク13の前後一対の板面のうち前側の板面が当接面13aを成し、ヨーク13の上下一対の端面のうち上側の端面(溝13bにより左右に二分割されている端面)が吸着面13c・13cを成す。言い換えれば、ヨーク13は当接面13aおよび吸着面13c・13cを有する。
当接面13aは本発明に係る当接面の実施の一形態である。当接面13aはヨーク13においてマグネットブロック11に当接する面である。
吸着面13c・13cは本発明に係る吸着面の実施の一形態である。吸着面13c・13cは吸着プレート2が吸着される(マグネットブロック11が発生する磁力により吸引された吸着プレート2が当接した状態で保持される)面である。
本実施形態の一対のヨーク12・13はフェライト系ステンレス鋼からなるが、本発明はこれに限定されない。
本発明に係るヨーク部材を構成する材料は本発明に係る磁石部材が発生させる磁場により磁化する材料(常磁性体)であれば良い。
図1および図2に示すケース20は本発明に係るケース部材の実施の一形態である。
ケース20は吸着体10、すなわちマグネットブロック11および一対のヨーク12・13を合わせたものを収容する。
図3および図5に示す如く、ケース20はケース本体21およびカバー26を具備する。
本実施形態のケース本体21およびカバー26はポリプロピレン(polypropylene;PP)からなり、それぞれ射出成形により成形される。
図9に示すケース本体21はケース20の主たる構造体を成す部材である。
ケース本体21は筒部22および延出部23を具備する。
筒部22はケース本体21の胴体を成す部分であり、その形状は概ね角筒状である。
より詳細には、本実施形態の筒部22の外形は概ね上下方向および前後方向に比べて左右方向に長い直方体形状であり、筒部22の内部には収容室22aが形成される。
図5、図6および図9の(b)に示す如く、収容室22aは筒部22の下端部に開口する空間(穴)であり、吸着体10は収容室22aに収容される。収容室22aの底面視形状は前後方向に比べて左右方向に長い長方形状である。
以下では、説明の便宜上、筒部22の上端部から下端部を結ぶ方向(すなわち、本実施形態における上下方向に対して平行な方向)を「筒部22の軸線方向」と定義する。
図5、図6および図9の(a)に示す如く、筒部22には貫通孔22b・22c・22d・22eが形成される。
貫通孔22b・22c・22d・22eはいずれも一端部が筒部22の上面に開口し、他端部が収容室22aの頂面(本実施形態の場合、収容室22aの内周面のうち収容室22aの天井を成す面)に開口する孔である。
図4に示す如く、貫通孔22b・22c・22d・22eの平面視形状はいずれも前後方向よりも左右方向に長い長方形である。
貫通孔22bは筒部22の上面の左前部に配置され、貫通孔22cは筒部22の上面の右前部に配置され、貫通孔22dは筒部22の上面の左後部に配置され、貫通孔22eは筒部22の上面の右後部に配置される。
図5および図9に示す如く、筒部22には貫通孔22f・22gが形成される。
貫通孔22fは一端部が筒部22の左側面の上半部に開口し、他端部が収容室22aの左側壁面(本実施形態の場合、収容室22aの内周面のうち収容室22aの左側の壁面を成す面)に開口する孔である。
貫通孔22gは一端部が筒部22の右側面の上半部に開口し、他端部が収容室22aの右側壁面(本実施形態の場合、収容室22aの内周面のうち収容室22aの右側の壁面を成す面)に開口する孔である。
図9に示す如く、貫通孔22f・22gの側面視形状はいずれも上下方向よりも前後方向に長い長方形である。
図5、図6および図9に示す延出部23は筒部22の上端部から筒部22の半径方向外側(筒部22の軸線方向に対して垂直、かつ収容室22aの中心部から離間する方向)に延びた部分である。
図5および図10に示すカバー26は、ケース本体21の筒部22の下端部における収容室22aの開口部分を閉塞する機能、収容室22aに収容された吸着体10をケース本体21から突出する方向(本実施形態では、上方)に付勢する機能、および延出部23とともにマグネットキャッチ100を固定プレート1に固定する機能を兼ねる部材である。
図5に示す如く、カバー26は胴体部27およびアーム部28・29を具備する。
胴体部27は左右方向に延び、かつ左右方向における略中央部が上方に突出するように湾曲した板状の部分である。
アーム部28は上下方向に延びた板状の部分であり、アーム部28の下端部は胴体部27の左端部に繋がっている。アーム部28には突起28aが形成される。突起28aはアーム部28の上半部から左側方に突出する。
アーム部29は上下方向に延びた板状の部分であり、アーム部28の下端部は胴体部27の右端部に繋がっている。アーム部29には突起29aが形成される。突起29aはアーム部29の上半部から右側方に突出する。
以下では図11および図12を用いてマグネットキャッチ100を組み立てる手順について説明する。
図11に示す如く、マグネットキャッチ100は吸着体組み立て工程S1100、吸着体収容工程S1200およびカバー取り付け工程S1300を経て組み立てられる。
吸着体組み立て工程S1100はマグネットブロック11に一対のヨーク12・13を固定することにより、吸着体10を組み立てる(吸着体10を製造する)工程である。
図12中の(i)に示す如く、吸着体組み立て工程S1100において、作業者はマグネットブロック11の前側の板面に接着剤を塗布し、マグネットブロック11の前側の板面とヨーク12の当接面12aとを互いに当接させて接着する、という一連の作業を行う(図7参照)。
同様に、作業者はマグネットブロック11の後側の板面に接着剤を塗布し、マグネットブロック11の後側の板面とヨーク13の当接面13aとを互いに当接させて接着する、という一連の作業を行う(図7参照)。
本実施形態では、吸着体組み立て工程S1100において、マグネットブロック11は一対のヨーク12・13に対して「所定の位置」に固定される。当該「所定の位置関係」の詳細は後述する。
吸着体収容工程S1200は吸着体10をケース本体21に収容する工程である。
図12中の(ii)に示す如く、吸着体収容工程S1200において作業者は吸着体10をケース本体21の筒部22の下端部に開口する収容室22aに挿入する。
図1、図3、図5および図6に示す如く、吸着体10がケース本体21に収容されたとき、ヨーク12の上端部のうち溝12bよりも左側となる部分は貫通孔22bを貫通してケース本体21の上面よりも上方に突出し、ヨーク12の上端部のうち溝12bよりも右側となる部分は貫通孔22cを貫通してケース本体21の上面よりも上方に突出する。
同様に、ヨーク13の上端部のうち溝13bよりも左側となる部分は貫通孔22dを貫通してケース本体21の上面よりも上方に突出し、ヨーク13の上端部のうち溝13bよりも右側となる部分は貫通孔22eを貫通してケース本体21の上面よりも上方に突出する。
その結果、ヨーク12の吸着面12c・12cおよびヨーク13の吸着面13c・13cはケース本体21の上面よりも上方に配置される。
図5および図6に示す如く、吸着体10の左右方向の幅は収容室22aの内周面における左側の内壁面から右側の内壁面までの距離よりも小さく、かつ吸着体10の前後方向の厚さは収容室22aの内周面における前側の内壁面から後側の内壁面までの距離よりも小さい。
従って、ケース本体21に収容された吸着体10はケース本体21に対して筒部22の軸線方向(本実施形態では、上下方向)に移動可能である。
カバー取り付け工程S1300はカバー26をケース本体21に取り付ける工程である。
図12中の(iii)に示す如く、カバー取り付け工程S1300において、作業者は吸着体10をケース本体21の筒部22の下端部に開口する収容室22aに挿入する。
吸着体10が筒部22の下端部における収容室22aの開口部分を通過するとき、アーム部28はアーム部28の上端部が右側方に傾斜するように弾性変形し、アーム部29はアーム部29の上端部が左側方に傾斜するように弾性変形する。
そして、アーム部28・29の上端部が収容室22aの頂面に当接する位置までカバー26が収容室22aに挿入されたとき、アーム部28・29は変形して元の形状に戻る。
その結果、図5に示す如く、突起28aは貫通孔22fを貫通して筒部22の左側面よりも左側方に突出し(ケース本体21から左側方に突出し)、突起29aは貫通孔22gを貫通して筒部22の右側面よりも右側方に突出する(ケース本体21から右側方に突出する)。
このように、突起28a・29aがそれぞれ貫通孔22f・22gを貫通してケース本体21の外部に突出することにより、カバー26はケース本体21に脱落不能に係止され、筒部22の下端部における収容室22aの開口部分はカバー26(胴体部27)により閉塞される。
図5および図6に示す如く、本実施形態では、カバー26がケース本体21に係止され、かつカバー26が弾性変形していないとき、マグネットブロック11の上端面11a、ヨーク12の溝12bの底面およびヨーク13の溝13bの底面は収容室22aの頂面に当接し、吸着体10の下端面(マグネットブロック11、ヨーク12およびヨーク13の下端面)はカバー26の胴体部27左右方向における略中央部に当接し、かつヨーク12・13の上端部は貫通孔22b・22c・22d・22eを貫通してケース本体21の上面よりも上方に突出する。
すなわち、カバー26がケース本体21に係止され、かつカバー26が弾性変形していないとき、ケース本体21に対する吸着体10の上下方向の位置(筒部22の軸線方向の位置)、ひいてはケース本体21に対するヨーク12の吸着面12c・12cおよびヨーク13の吸着面13c・13cの突出量は一定に保持される。
吸着体10がケース本体21に対して下方に押し下げられたとき、吸着体10の下端面に当接している胴体部27は下方に湾曲するように弾性変形する。
従って、吸着体10をケース本体21に対して下方に押し下げる外力が作用しなくなったとき、弾性変形していた胴体部27は変形して元の形状に戻り、吸着体10は上方に押し上げられる。
このように、カバー26は吸着体10をケース本体21から突出する方向(本実施形態では、上方)に付勢する。
図3に示す如く、マグネットキャッチ100は固定プレート1に固定される。
より詳細には、マグネットキャッチ100は固定プレート1に形成された嵌装孔1aに上方から下方に差し込まれる。
マグネットキャッチ100が嵌装孔1aに差し込まれるとき、突起28aおよび突起29aは固定プレート1の上面と嵌装孔1aの内周面とのエッジに当接し、カバー26が弾性変形することにより突起28aおよび突起29aが収容孔22aに押し込まれる。
延出部23が固定プレート1の上側の板面において嵌装孔1aの周縁となる部分に当接したとき、弾性変形していたカバー26が変形して元の形状に戻り、突起28aおよび突起29aが筒部22から突出する。
その結果、固定プレート1は延出部23および突起28a・29aにより上下に挟持され、マグネットキャッチ100は固定プレート1に固定される(嵌装孔1aから脱落しない)。
吸着体10のヨーク12・13はマグネットブロック11により磁化している。
従って、図3に示す如く、吸着プレート2はヨーク12の吸着面12c・12cおよびヨーク13の吸着面13c・13cに当接し、吸着される。
以下では図13、図14、図15、図16および図17を用いてマグネットキャッチ100を設計する手順について説明する。
図13に示す如く、マグネットキャッチ100は、被吸着物設計工程S2100、磁石部材設計工程S2200、ヨーク部材設計工程S2300、磁石部材固定位置決定工程S2400およびケース部材設計工程S2500を経て設計される。
被吸着物設計工程S2100は吸着プレート2の形状を定める工程である。
被吸着物設計工程S2100において、作業者は吸着プレート2に要求される品質(例えば、外形寸法の制約、防錆性、耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、機械強度、製造コスト等)に基づき、吸着プレート2を構成する材料を選択し、吸着プレート2の形状(三次元形状)を決定する。
また、作業者は、コンピュータ(本実施形態では、市販のパーソナルコンピュータ)にインストールされた既存のCADソフトウェア(本実施形態では、Solidworks社の「Solidwork Simulation」)を用いて、決定された三次元形状の吸着プレート2のCADデータを作成する。
磁石部材設計工程S2200はマグネットブロック11の形状を定める工程である。
磁石部材設計工程S2200において、作業者はマグネットキャッチ100に要求される品質(例えば、吸着力、外形寸法の制約、防錆性、耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、機械強度、製造コスト等)に基づき、マグネットブロック11を構成する材料を選択し、マグネットブロック11の形状(三次元形状)を決定する。
また、作業者は、コンピュータにインストールされた既存のCADソフトウェアを用いて、決定された三次元形状のマグネットブロック11のCADデータを作成する。
ヨーク部材設計工程S2300はヨーク12・13の形状を定める工程である。
ヨーク部材設計工程S2300において、作業者はマグネットキャッチ100に要求される品質(例えば、吸着力、外形寸法の制約、防錆性、耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、機械強度、製造コスト等)に基づき、ヨーク12・13を構成する材料を選択し、ヨーク12・13の形状(三次元形状)を決定する。
ヨーク12の形状には、当接面12aおよび吸着面12c・12cの形状が含まれる。
ヨーク13の形状には、当接面13aおよび吸着面13c・13cの形状が含まれる。
また、作業者は、コンピュータにインストールされた既存のCADソフトウェアを用いて、決定された三次元形状のヨーク12・13のCADデータを作成する。
磁石部材固定位置決定工程S2400はマグネットブロック11をヨーク12・13に固定する位置を決定する工程である。
本実施形態では、磁石部材固定位置決定工程S2400は吸着力算出工程S2410、最大吸着力算出工程S2420、有効ヨーク突出範囲算出工程S2430および最終磁石部材固定位置決定工程S2440の四つの工程に分かれている。
吸着力算出工程S2410は、被吸着物設計工程S2100において予め形状が定められた吸着プレート2、磁石部材設計工程S2200において予め形状が定められたマグネットブロック11、並びに、ヨーク部材設計工程S2300において予め形状が定められたヨーク12・13について、「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」を算出する工程である。
「ヨーク突出量」は、吸着方向におけるヨーク部材の吸着面からヨーク部材の当接面に当接した磁石部材までの距離を指す。
「吸着方向」は、ヨーク部材の吸着面に対して垂直な方向を指す。
本実施形態の場合、図8および図15の(a)に示す吸着面12c・12c・13c・13cからマグネットブロック11の上端面11aまでの上下方向における距離Lが「ヨーク突出量」に相当する。
本実施形態では「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」の算出は、まず、以下の(1)から(3)までの作業を下準備として行い、次いで、以下の(4)から(6)までの作業からなる一つのサイクルをm回(m;正の整数)繰り返し、続いて(7)の作業を行う、という一連の手順に従って行われる。
なお、以下において説明される手順に用いられるコンピュータには、予め既存の電磁界解析ソフトウェア(本実施形態の場合、JSOL社の「JMAG」)がインストールされている。
(1)作業者は、コンピュータ上で既存の電磁界解析ソフトウェアを立ち上げ、先に作成した吸着プレート2、マグネットブロック11およびヨーク12・13のCADデータ(三次元形状に係るデータ)を取り込む。
既存の電磁界解析ソフトウェアに取り込まれた吸着プレート2、マグネットブロック11およびヨーク12・13(の三次元形状)は、既存の電磁界解析ソフトウェア上の仮想空間(電磁界解析を行うための仮想空間)に配置することが可能である。
(2)作業者は、当該既存の電磁界解析ソフトウェア上の仮想空間に配置される吸着プレート2、マグネットブロック11、ヨーク12・13、および仮想空間においてこれらの部材の周囲を取り巻く空気の各種物性値を設定する。
より詳細には、作業者は、以下の(2−a)から(2−d)の作業を行う。
(2−a)作業者は、被吸着物設計工程S2100において決定した「吸着プレート2を構成する材料」に基づいて、当該既存の電磁界解析ソフトウェア上で吸着プレート2の比透磁率を設定する(吸着プレート2の比透磁率をコンピュータに入力する)。
(2−b)作業者は、磁石部材設計工程S2200において決定した「マグネットブロック11を構成する材料」に基づいて、当該既存の電磁界解析ソフトウェア上でマグネットブロック11の磁化特性、極数(N極およびS極の組の数)、着磁方向等を設定する(マグネットブロック11の磁化特性、極数、着磁方向等をコンピュータに入力する)。
なお、本実施形態では、マグネットブロック11の磁化特性として、図18に示す如きマグネットブロック11の磁気ヒステリシス曲線(B−H曲線)」を設定する。
また、本実施形態では、マグネットブロック11の極数は「1」であり、マグネットブロック11の着磁方向は「前方(マグネットブロック11の後側の板面から前側の板面に向かう方向)」である。
(2−c)作業者は、ヨーク部材設計工程S2300において決定した「ヨーク12・13を構成する材料」に基づいて、当該既存の電磁界解析ソフトウェア上でヨーク12・13の比透磁率を設定する(ヨーク12・13の比透磁率をコンピュータに入力する)。
(2−d)作業者は、当該既存の電磁界解析ソフトウェア上で「仮想空間において吸着プレート2、マグネットブロック11およびヨーク12・13の周囲を取り巻く空気」の比透磁率を設定する(空気の比透磁率をコンピュータに入力する)。
(3)作業者は、図14および図15に示す如く、既存の電磁界解析ソフトウェアに取り込んだ吸着プレート2、マグネットブロック11およびヨーク12・13(の三次元形状)を、以下の(3−a)から(3−d)の要件を満たすように仮想空間に配置する(仮想空間における吸着プレート2、マグネットブロック11およびヨーク12・13の相対的な位置をコンピュータに入力する)。
(3−a)マグネットブロック11の前側の板面はヨーク12の当接面12aに当接し、マグネットブロック11の後側の板面はヨーク13の当接面13aに当接する(図15の(a)参照)。
(3−b)ヨーク12の吸着面12c・12cおよびヨーク13の吸着面13c・13cは吸着プレート2の下面に当接する(図15の(a)、(b)参照)。
(3−c)マグネットブロック11およびヨーク12・13は左右対称に配置される(図15の(b)参照)。
(3−d)吸着プレート2および吸着体10は左右対称かつ前後対称に配置される(図15の(b)参照)。
以上の作業を行うことにより、「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」の算出を行うための下準備が完了する。
続いて、(4)から(6)までの作業(サイクル)について説明する。
(4)作業者は、既存の電磁界解析ソフトウェア上で吸着面12c・12c・13c・13cからマグネットブロック11の上端面11aまでの上下方向における距離Lを「Ln」に設定する。
ここで、Lnは正の値の係数「k(k>0)」と、整数「(n−1)」と、の積で表される(Ln=k×(n−1))。また、整数「(n−1)」中の「n」は(4)から(6)までの作業(サイクル)の繰り返し回数(1≦n≦m)である。
作業者は、上記(3−a)から(3−d)の要件を満たし、かつ吸着面12c・12c・13c・13cからマグネットブロック11の上端面11aまでの上下方向における距離Lが「Ln」となるように、ヨーク12・13に対するマグネットブロック11の相対的な位置をコンピュータに入力する。
(5)作業者は、コンピュータに「ヨーク突出量がLnであるときの吸着力F」の算出を開始する旨の指示を出す(コンピュータのキーボードに予め設定された「算出開始ボタン」を押す)。
(6)作業者から算出開始の指示を受けたコンピュータは、(1)から(4)までの作業においてコンピュータに入力された種々の数値(パラメータ)に基づいて、以下の(6−a)から(6−d)までの作業(計算)を行うことにより、「ヨーク突出量がLnであるときの吸着力F」を算出する。
(6−a)コンピュータは、有限要素法(Finite Element Method;FEM)に基づき、既存の電磁界解析ソフトウェアに従って、吸着プレート2、マグネットブロック11、ヨーク12・13およびこれらの部材の周囲を取り巻く空気を複数の小さい領域に分割することにより得られる「各要素」における磁束密度を算出する。
(6−b)コンピュータは、(6−a)において算出された磁束密度に基づき、既存の電磁界解析ソフトウェアに従って、ヨーク12の吸着面12c・12cに接し、かつ左右方向に対して平行となる直線5(図7の(a)および図14中の太い直線参照)上の点における磁束密度の上下方向(吸着方向)の成分を算出する。
直線5上の点における磁束密度の上下方向成分(絶対値)の算出結果は図16に示す如くである。
(6−c)コンピュータは、(6−b)において算出された直線5上の点における磁束密度の上下方向成分(絶対値)に基づき、既存の電磁界解析ソフトウェアに従って、直線5のうち、吸着面12c・12c上にある部分(本実施形態の場合、P1からP2までの部分、およびP3からP4までの部分)における磁束密度の上下方向成分(絶対値)の平均値Bavgを算出する(図14および図16参照)。
本実施形態では、マグネットブロック11からヨーク12、吸着プレート2、ヨーク13を経て再びマグネットブロック11に戻る磁束の経路(磁気回路)が形成される。
また、本実施形態では上記(3−a)から(3−d)に示す如く、仮想空間に配置されるマグネットブロック11、ヨーク12・13、および吸着プレート2が幾何学的に高い対称性を保持している。
従って、吸着面12c・12cを通過する磁束の上下方向成分は吸着面12c・12cの面内において比較的均一であり、かつ、吸着面12c・12cを通過する磁束の上下方向成分と吸着面13c・13cを通過する磁束の上下方向成分とは互いに逆向きかつ(ほぼ)同じ絶対値を有する。
よって、本実施形態では、コンピュータは、以下の計算において、算出されたBavgを「吸着面12c・12c・13c・13cにおける磁束密度の上下方向成分」として扱う。
本実施形態では、(6−b)および(6−c)において直線5上の点における磁束密度の上下方向成分(絶対値)を算出し、これに基づいてBavgを算出したが、本発明はこれに限定されない。例えば、(6−a)において算出された「各要素」における磁束密度に基づいて「吸着面12c・12c・13c・13c上に位置する要素」における磁束密度の上下方向成分(絶対値)の平均値を算出し、当該平均値をBavgとして以下の作業を行っても良い。
(6−d)コンピュータは、(6−c)において算出されたBavgに基づいて、「ヨーク突出量がLnであるときの吸着力F」を算出する。
本実施形態の場合、コンピュータは「ヨーク突出量がLnであるときの吸着力F」を以下に示す数1に基づいて算出する。
Figure 0005502634
上記数1において、「S」は吸着面12c・12c・13c・13cの面積の和であり、「μ0」は真空の透磁率であり、μaは「吸着プレート2、マグネットブロック11、ヨーク12・13の周囲を取り巻く空気」の比透磁率(上記(2−d)における空気の比透磁率の設定値)である。
コンピュータは上記(4)から(6)までの作業(サイクル)をn=1からn=mまで計m回繰り返すことにより、計m個の算出結果を得る。
(7)コンピュータは、得られた計m個の算出結果を「横軸をヨーク突出量Lとするとともに縦軸を吸着力Fとする平面」上にプロットし、プロットされた点を滑らかな曲線で結ぶ(例えば、三次式等で近似する)ことにより、図17に示すグラフ、すなわち、「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」を作成する。
最大吸着力算出工程S2420は、吸着力算出工程S2410において算出された「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」に基づいて、マグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fの最大値である最大吸着力Fmaxを算出する工程である。
最大吸着力算出工程S2420において、コンピュータは、図17に示すグラフに基づき、最大吸着力Fmaxを算出する。
図17に示す如く、「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」は、概ね上に凸の関係(ヨーク突出量がある値をとるときに吸着力が最大値となる関係)となる。
「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」が図17に示す如き傾向を示すことは、発明者が行った計算により初めて明らかになった。
また、発明者は、自身が実験用に作製した吸着体10および吸着プレート2を用いて吸着力Fを測定する実験を行い、上記計算と当該実験結果とが良く一致することを確認している。
「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」が図17に示す如き傾向を示す理由を以下に示す。
本実施形態では、マグネットブロック11から出た磁束は、概ね以下の(i)および(iii)の二つの経路のいずれかを通ってマグネットブロック11に戻る。
(i)マグネットブロック11からヨーク12、吸着プレート2、ヨーク13を経てマグネットブロック11に戻る経路。
(ii)マグネットブロック11からヨーク12、周囲の空気、ヨーク13を経てマグネットブロック11に戻る経路。
上記(i)および(ii)の経路のうち、吸着面12c・12c・13c・13cを通過する経路は(i)の経路である。
従って、(i)の経路を通る磁束の本数を多くすることは、吸着面12c・12c・13c・13cの磁束密度の平均値Bavg、ひいては吸着力Fを大きくすることに等しい。
以下では、ヨーク突出量Lの変化に伴って吸着面12c・12c・13c・13cの磁束密度(の吸着方向成分)、ひいては吸着力Fが変化する「第一のメカニズム」について説明する。
本実施形態では、ヨーク突出量Lがゼロであるとき、ヨーク12・13の下端部はマグネットブロック11の下端面よりも下方に突出している。
そのため、(ii)の経路、特にマグネットブロック11からヨーク12の下端部、ヨーク12・13の下端部で挟まれる部分に存在する空気、ヨーク13の下端部を経てマグネットブロック11に戻る経路を通る磁束の本数が比較的大きくなる。
ヨーク突出量Lがゼロから増加するとき、ヨーク12・13の下端部のうちマグネットブロック11の下端面よりも下方に突出している部分が小さくなる。
そのため、ヨーク突出量Lがゼロのときよりも(ii)の経路を通る磁束の本数が相対的に少なくなり、その分だけ(i)の経路を通過する磁束の本数が多くなる。
その結果、ヨーク突出量Lがゼロから増加するとき、吸着面12c・12c・13c・13cの磁束密度(の吸着方向成分)、ひいては吸着力Fが増加する。
以下では、ヨーク突出量Lの変化に伴って吸着面12c・12c・13c・13cの磁束密度(の吸着方向成分)、ひいては吸着力Fが変化する「第二のメカニズム」について説明する。
ヨーク突出量Lが増加するとき、ヨーク12・13の上端部のうちマグネットブロック11の上端面11aよりも上方に突出している部分が大きくなる。
そのため、(i)の経路からなる磁気回路の全長が長くなり、ヨーク12・13および吸着プレート2中の磁束密度が均一かつ不変であると仮定した場合に当該磁気回路に蓄えられる磁界のエネルギーが相対的に増加する。
その結果、(ii)の経路を通過する磁束、すなわち漏れ磁束が相対的に増加し、(i)の経路を通過する磁束の本数は減少する。
その結果、ヨーク突出量Lが増加するとき、吸着面12c・12c・13c・13cの磁束密度(の吸着方向成分)、ひいては吸着力Fが減少する。
このように、ヨーク突出量Lが増加するとき、「第一のメカニズム」によれば吸着力Fが増加し、「第二のメカニズム」によれば吸着力Fが減少する。
そして、本実施形態では、0≦L<Lmaxのときには「第一のメカニズム」が吸着力Fに及ぼす影響は「第二のメカニズム」が吸着力Fに及ぼす影響よりも大きくなり、L=Lmaxのときには「第一のメカニズム」が吸着力Fに及ぼす影響は「第二のメカニズム」が吸着力Fに及ぼす影響と同程度となり、Lmax<Lのときには「第二のメカニズム」が吸着力Fに及ぼす影響は「第一のメカニズム」が吸着力Fに及ぼす影響よりも大きくなる。
従って、図17に示す如く、0≦L≦Lmaxのときにはヨーク突出量Lの増加に伴って吸着力Fが増加し、Lmax≦Lのときにはヨーク突出量Lの増加に伴って吸着力Fが減少するので、ヨーク突出量LがLmaxのときに吸着力Fが最大値Fmaxとなる。
有効ヨーク突出範囲算出工程S2430は、吸着力算出工程S2410において算出された、「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」および最大吸着力算出工程S2420において算出された最大吸着力Fmaxに基づいて、マグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力FがFmaxの90%以上となるヨーク突出量Lの範囲である有効ヨーク突出範囲Leを算出する工程である。
ここで、「有効ヨーク突出範囲Leを算出する」とは、実質的には有効ヨーク突出範囲Leの下限値および上限値を算出することに相当する。
有効ヨーク突出範囲算出工程S2430において、コンピュータは図17に示す「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」に基づいて、F=0.9×Fmaxを満たすヨーク突出量の二つの解であるLeminおよびLemaxを算出する。
図17に示す如く、「ヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係」は上に凸の関係を示すことから、算出されたLeminおよびLemaxはそれぞれ有効ヨーク突出範囲Leの下限値および上限値を成す(Lemin≦Le≦Lemax)。
最終磁石部材固定位置決定工程S2440は、有効ヨーク突出範囲算出工程S2430において算出された有効ヨーク突出範囲Leに基づいて、最終ヨーク突出量Ls(本実施形態の場合、図11に示す吸着体組み立て工程S1100において吸着体10を組み立てるときのヨーク突出量L)、ひいては一対のヨーク12・13に対するマグネットブロック11が固定される「所定の位置」を決定する工程である。
最終磁石部材固定位置決定工程S2440において、作業者は、有効ヨーク突出範囲Leの範囲内の所定の値を最終ヨーク突出量Lsとして決定する。
本実施形態の場合、一対のヨーク12・13の下端面とマグネットブロック11の下端面とが面一となる(一対のヨーク12・13の下端面およびマグネットブロック11の下端面が一続きの平面を成す)ときのヨーク突出量L(図8参照)が有効ヨーク突出範囲Leの範囲内に含まれている。
従って、作業者は、組み立てやすさを考慮し、一対のヨーク12・13の下端面とマグネットブロック11の下端面とが面一となるときのヨーク突出量Lを最終ヨーク突出量Lsとして決定する。
本実施形態では、最終磁石部材固定位置決定工程S2440において、作業者がマグネットブロック11をヨーク12・13に固定する方法も併せて決定する。
本実施形態では、マグネットブロック11を接着剤で当接面12a・12bに接着することによりマグネットブロック11をヨーク12・13に固定するが、ヨーク突出量を有効ヨーク突出範囲内に保持することが可能であれば他の方法で磁石部材をヨーク部材に固定しても良い。
磁石部材をヨーク部材に固定する他の方法としては、(a)磁石部材を両面テープでヨーク部材の当接面に貼り付ける方法、(b)ヨーク部材の当接面に突起を形成し、磁石部材を当該突起に係止する方法、(c)ヨーク部材の当接面に突起を形成し、磁石部材においてヨーク部材の当接面に当接する面に凹部を形成し、突起が凹部に嵌合することにより磁石部材を前記突起に係止する方法、等が挙げられる。
ケース部材設計工程S2500はケース20の形状を定める工程である。
ケース部材設計工程S2500において、作業者は、ケース20に要求される品質(例えば、外形寸法の制約、防錆性、耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、機械強度、製造コスト等)、被吸着物設計工程S2100において定められた吸着プレート2の形状、磁石部材設計工程S2200において定められたマグネットブロック11の形状、ヨーク部材設計工程S2300において定められたヨーク12・13の形状、および磁石部材固定位置決定工程S2400において決定された「マグネットブロック11をヨーク12・13に固定する位置(言い換えれば、最終ヨーク突出量Ls)」に基づき、ケース20を構成する材料を選択し、ケース20の形状(三次元形状)を決定する。
また、作業者は、コンピュータにインストールされた既存のCADソフトウェアを用いて、決定された三次元形状のケース20のCADデータを作成する。
以上の如くマグネットキャッチ100が設計され、マグネットキャッチ100を構成する各部材が生産され、先に説明したマグネットキャッチ100の組み立て手順(図11参照)に従ってマグネットキャッチ100が組み立てられる。
なお、吸着体組み立て工程S1100において、マグネットブロック11は一対のヨーク12・13に対して「所定の位置」、すなわちヨーク突出量Lが最終ヨーク突出量Lsとなる位置に(マグネットブロック11がヨーク12の当接面12aおよびヨーク13の当接面13aに当接し、かつヨーク突出量Lが有効ヨーク突出範囲Le内で保持されるように)固定される。
以上の如く、マグネットキャッチ100は、
永久磁石からなるマグネットブロック11と、
マグネットブロック11が発生させる磁場により磁化する材料からなり、吸着プレート2が吸着される吸着面12c・12cおよびマグネットブロック11が当接する当接面12aを有するヨーク12と、
マグネットブロック11が発生させる磁場により磁化する材料からなり、吸着プレート2が吸着される吸着面13c・13cおよびマグネットブロック11が当接する当接面13aを有するヨーク13と、
固定プレート1に固定され、マグネットブロック11、ヨーク12、およびヨーク13を収容するケース20と、
を具備する。
そして、マグネットキャッチ100は、
吸着力算出工程S2410において、コンピュータが、予め(本実施形態の場合、磁石部材設計工程S2200において)形状が定められたマグネットブロック11、予め(本実施形態の場合、ヨーク部材設計工程S2300において)吸着面12c・12cの形状および当接面12aの形状を含む形状が定められたヨーク12、並びに、予め(本実施形態の場合、ヨーク部材設計工程S2300において)吸着面13c・13cの形状および当接面13aの形状を含む形状が定められたヨーク13について、吸着面12c・12c・13c・13cに対して垂直な方向である吸着方向(本実施形態の場合、上下方向)における吸着面12c・12c・13c・13cから当接面12a・13aに当接したマグネットブロック11までの距離であるヨーク突出量Lとマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力Fとの関係(図17参照)を算出し、
最大吸着力算出工程S2420において、コンピュータが、「ヨーク突出量Lと吸着力Fとの関係」に基づいて、吸着力Fの最大値である最大吸着力Fmaxを算出し、
有効ヨーク突出範囲算出工程S2430において、コンピュータが、「ヨーク突出量Lと吸着力Fとの関係」および最大吸着力Fmaxに基づいて、吸着力Fが最大吸着力Fmaxの90%以上となるヨーク突出量Lの範囲である有効ヨーク突出範囲Leを算出する、
という一連の手順によって算出された有効ヨーク突出範囲Leに基づいて、
吸着体組み立て工程S1100において、マグネットブロック11が当接面12a・13aに当接し、かつヨーク突出量Lが有効ヨーク突出範囲Le内で保持されるように(本実施形態の場合、最終ヨーク突出量Lsに保持するように)マグネットブロック11をヨーク12・13に固定することにより生産される。
このように構成することにより、マグネットキャッチ100は以下の効果を奏する。
従来のマグネットキャッチ(吸着体)の場合、ヨーク突出量が吸着力に及ぼす影響について生産者が把握していない状況下で設計され、生産されていた。
そのため、生産者が最大吸着力に近い吸着力を発生可能なヨーク突出量を偶然に選択した場合を除いて、従来のマグネットキャッチ(吸着体)は磁石部材およびヨーク部材の形状が決まった段階で定まる最大吸着力に比べてかなり小さい吸着力しか発生することが出来なかった。
これに対して、マグネットキャッチ100は、予め形状が定められたマグネットブロック11、ヨーク12、およびヨーク13について「ヨーク突出量Lと吸着力Fとの関係」を算出し、マグネットブロック11、ヨーク12、およびヨーク13の組み合わせで発生し得る最大の吸着力である最大吸着力Fmaxの90%以上となる有効ヨーク突出範囲Leを算出するという一連の手順により予め有効ヨーク突出範囲Leを把握しておき、ヨーク突出量Lが有効ヨーク突出範囲Le内で保持されるようにマグネットブロック11をヨーク12・13に固定する作業を経て生産される。
従って、このような過程を経て生産された複数のマグネットキャッチ100・100・・・は、いずれも最大吸着力Fmaxに近い(最大吸着力Fmaxの90%以上の)吸着力を発生することが可能である。
また、生産された複数のマグネットキャッチ100・100・・・の個体間の吸着力のバラツキを小さくすることが可能である。
より詳細には、従来のマグネットキャッチの場合には個体間の吸着力のバラツキは数十%程度であったが、マグネットキャッチ100の場合には個体間の吸着力のバラツキが最大でも10%以下に抑えられる。
さらに、マグネットキャッチ100の場合、ヨーク突出量Lが変化しないようにマグネットブロック11をヨーク12・13に固定するので、マグネットキャッチ100を使用する過程でマグネットブロック11がヨーク12・13に対して吸着方向に移動してヨーク突出量Lが変化することにより吸着力が変動するという事態が発生することはない(同一のマグネットキャッチ100における吸着力の経時的なバラツキが発生しない)。
このように、マグネットキャッチ100は、予め定められたマグネットブロック11、ヨーク12およびヨーク13の形状を保持する限りにおいて強い吸着力を発生させることが可能であり、かつ吸着力のバラツキを抑えることが可能である。
また、上記のマグネットキャッチ100の生産方法によれば、多大な試行錯誤(例えば、吸着プレート2、およびヨーク突出量がそれぞれ異なる複数の吸着体10・10・・・を試作し、次いで吸着プレート2を吸着体10に実際に吸着させて吸着プレート2および吸着体10の間に作用する吸着力を測定する実験を複数の吸着体10・10・・・のそれぞれについて行うこと)を伴わずに強い吸着力を発生させるマグネットキャッチ100を生産することが可能である。
算出されたヨーク突出量および吸着力の関係に影響を及ぼさない(ヨーク突出量および吸着力の関係を変化させない)観点から、本発明に係るケース部材を構成する材料は磁石部材に吸着しない材料(より厳密には、ヨーク部材および被吸着物よりも比透磁率が小さい材料)であることが望ましい。
本発明に係るケース部材を構成する材料の例としては樹脂材料、非磁性の金属材料、木材、セラミックス等が挙げられる。
本発明に係るケース部材を構成する樹脂材料の具体例としては、本実施形態におけるポリプロピレンの他、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene;POM)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride;PVC)、ポリアミド(polyamide;PA)、ポリカーボネート(polycarbonate;PC)、ABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene共重合合成樹脂)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene;PTFE)等が挙げられる。
なお、本実施形態のカバー26の如く、ケース部材の一部が弾性変形することにより吸着体(磁石部材およびヨーク部材を合わせたもの)を付勢する場合には、少なくとも当該一部を弾性変形可能な材料で構成する必要がある。
本発明に係る「吸着力」は「狭義の吸着力」および「吸引力」を含む。
本発明に係る「吸着する」は「(狭義の)吸着する」および「吸引する」を含む。
ここで、「狭義の吸着力」は被吸着物がヨーク部材の吸着面に当接しているときに磁石部材および被吸着物の間に作用する力を指し、「(狭義の)吸着する」とはヨーク部材の吸着面に当接している被吸着物を保持することを指す。
また、「吸引力」は被吸着物がヨーク部材の吸着面に当接していない(被吸着物がヨーク部材の吸着面から離間している)ときに磁石部材および被吸着物の間に作用する力を指し、「吸引する」とは「ヨーク部材の吸着面に当接していない被吸着物をヨーク部材に引き寄せること」を指す。
図15の(a)に示す如く、本実施形態では吸着力算出工程S2410の(3)においてヨーク12の吸着面12c・12cおよびヨーク13の吸着面13c・13cが吸着プレート2の下面に当接するように吸着プレート2およびヨーク12・13を仮想空間に配置したが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、被吸着物がヨーク部材の吸着面に当接しない(ヨーク部材の吸着面から離間する)ように被吸着物およびヨーク部材を仮想空間に配置して吸着力(この場合、厳密には「吸引力」)を算出しても良い。
これは、被吸着物がヨーク部材の吸着面に当接しない(被吸着物がヨーク部材の吸着面から所定の距離だけ離間した)状態で保持される用途も想定され得るからである。
被吸着物がヨーク部材の吸着面に当接しない状態で保持される用途の例としては、本発明に係る吸着体あるいはマグネットキャッチをクリーンルーム内で使用する用途が挙げられる。
本発明に係る吸着体あるいはマグネットキャッチをクリーンルーム内で使用する場合、ヨーク部材および被吸着物の間に樹脂材料からなるスペーサを挟み、磁石部材および被吸着物の間に作用する力(吸引力)により被吸着物をスペーサに当接した状態で保持することにより、被吸着物がヨーク部材の吸着面に当接することにより摩耗して粉塵等が発生することを防止する。
被吸着物がヨーク部材の吸着面に当接しないように被吸着物およびヨーク部材を仮想空間に配置して吸着力(吸引力)を算出する場合も、ヨーク部材の吸着面における磁束密度に基づいて吸着力(吸引力)を算出すれば良い。
これは、被吸着物がヨーク部材の吸着面に当接しないように被吸着物およびヨーク部材を仮想空間に配置した場合、ヨーク部材の吸着面および被吸着物により挟まれる空間のうちヨーク部材の吸着面のごく近傍の領域において磁束密度が最も小さくなるため、当該領域における磁束密度により吸着力(吸引力)の大きさが定まることによる。
本実施形態の吸着体10(マグネットキャッチ100)は一つのマグネットブロック11および二つのヨーク12・13を具備するが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る吸着体(マグネットキャッチ)は少なくとも一つの磁石部材、および少なくとも一つのヨーク部材を具備していれば良い。
本実施形態では有限要素法を用いてマグネットブロック11および吸着プレート2の間に作用する吸着力を算出したが、本発明はこれに限定されず、他の解析手法を用いて磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力を算出しても良い。
磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力を算出する他の解析手法としては、境界要素法、漸化式を用いた差分法等が挙げられる。
1 固定プレート(被固定物)
2 吸着プレート(被吸着物)
10 吸着体
11 マグネットブロック(磁石部材)
12 ヨーク(ヨーク部材)
12a 当接面
12c・12c 吸着面
13 ヨーク(ヨーク部材)
13a 当接面
13c・13c 吸着面
20 ケース(ケース部材)
100 マグネットキャッチ

Claims (2)

  1. 永久磁石からなる磁石部材と、
    前記磁石部材が発生させる磁場により磁化する材料からなり、被吸着物が吸着される吸着面および前記磁石部材が当接する当接面を有するヨーク部材と、
    を具備する吸着体の生産方法であって、
    コンピュータが、予め形状が定められた前記磁石部材、並びに、予め前記吸着面の形状および前記当接面の形状を含む形状が定められた前記ヨーク部材について、前記吸着面に対して垂直な方向である吸着方向における前記吸着面から前記ヨーク部材の当接面に当接した磁石部材までの距離であるヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係を算出し、
    前記ヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係に基づいて、前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力の最大値である最大吸着力を算出し、
    前記ヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係および前記最大吸着力に基づいて、前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力が前記最大吸着力の90%以上となる前記ヨーク突出量の範囲である有効ヨーク突出範囲を算出し、
    前記磁石部材が前記当接面に当接し、かつ前記ヨーク突出量が前記有効ヨーク突出範囲内で保持されるように前記磁石部材を前記ヨーク部材に固定する、
    吸着体の生産方法。
  2. 永久磁石からなる磁石部材と、
    前記磁石部材が発生させる磁場により磁化する材料からなり、被吸着物が吸着される吸着面および前記磁石部材が当接する当接面を有するヨーク部材と、
    前記磁石部材および前記ヨーク部材を収容するケース部材と、
    を具備するマグネットキャッチの生産方法であって、
    コンピュータが、予め形状が定められた前記磁石部材、並びに、予め前記吸着面の形状および前記当接面の形状を含む形状が定められた前記ヨーク部材について、前記吸着面に対して垂直な方向である吸着方向における前記吸着面から前記ヨーク部材の当接面に当接した磁石部材までの距離であるヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係を算出し、
    前記ヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係に基づいて、前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力の最大値である最大吸着力を算出し、
    前記ヨーク突出量と前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力との関係および前記最大吸着力に基づいて、前記磁石部材および被吸着物の間に作用する吸着力が前記最大吸着力の90%以上となる前記ヨーク突出量の範囲である有効ヨーク突出範囲を算出し、
    前記磁石部材が前記当接面に当接し、かつ前記ヨーク突出量が前記有効ヨーク突出範囲内で保持されるように前記磁石部材を前記ヨーク部材に固定し、
    前記磁石部材および前記ヨーク部材を前記ケース部材に収容する、
    マグネットキャッチの生産方法。
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