JP5501827B2 - 永久磁石及び永久磁石の製造方法 - Google Patents

永久磁石及び永久磁石の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、永久磁石及び永久磁石の製造方法に関する。
近年、ハイブリッドカーやハードディスクドライブ等に使用される永久磁石モータでは、小型軽量化、高出力化、高効率化が要求されている。そして、上記永久磁石モータにおいて小型軽量化、高出力化、高効率化を実現するに当たって、永久磁石モータに埋設される永久磁石について、更なる磁気特性の向上が求められている。尚、永久磁石としてはフェライト磁石、Sm−Co系磁石、Nd−Fe−B系磁石、SmFe17系磁石等があるが、特に残留磁束密度の高いNd−Fe−B系磁石が永久磁石モータ用の永久磁石として用いられる。
ここで、永久磁石の製造方法としては、一般的に粉末焼結法が用いられる。ここで、粉末焼結法は、先ず原材料を粗粉砕し、ジェットミル(乾式粉砕)により微粉砕した磁石粉末を製造する。その後、その磁石粉末を型に入れて、外部から磁場を印加しながら所望の形状にプレス成形する。そして、所望形状に成形された固形状の磁石粉末を所定温度(例えばNd−Fe−B系磁石では800℃〜1150℃)で焼結することにより製造する。
特許第3298219号公報(第4頁、第5頁)
また、永久磁石は化学量論組成(例えばNd−Fe−B系磁石ではNdFe14B)に近づけることによって、磁石特性が向上することが知られている。従って、永久磁石を製造する際の磁石原料の各元素の含有量は、化学量論組成に基づく含有量(例えばNd:26.7wt%、Fe(電解鉄):72.3wt%、B:1.0wt%)とすることが行われていた。
ここで、Nd−Fe−B系磁石の製造において生じる問題として、焼結された合金中にα−Feが生成することが挙げられる。原因としては、化学量論組成に基づく含有量からなる磁石原料合金を用いて永久磁石を製造した場合に、製造過程で希土類元素が酸素と結び付き、化学量論組成に対して希土類元素が不足する状態となることが挙げられる。さらに、α−Feが、焼結後も磁石中に残存すれば、磁石の磁気特性の低下をもたらす。
そこで、磁石原料に含まれる希土類元素の含有量を、予め化学量論組成に基づく含有量よりも多くすることが考えられる。しかし、その方法では磁石原料を粉砕した後に磁石組成が大きく変動することとなり、粉砕後に磁石組成を変更する必要が生じていた。
また、永久磁石の磁気特性は、磁石の磁気特性が単磁区微粒子理論により導かれるために、焼結体の結晶粒径を微小にすれば磁気性能が基本的に向上することが知られている。しかし、前記特許文献1のように先ず原材料を粗粉砕し、粗粉砕した粉末をジェットミル(乾式粉砕)により微粉砕する方式では、結晶を微小な粒径範囲(例えば0.1μm〜5.0μm)まで粉砕できる粒子は、粉砕対象とした磁石粉末の量に対して僅かな量にすぎなかった。即ち、歩留りが非常に悪かった。
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、従来のジェットミル粉砕では実現が難しかった微小範囲の粒径の磁石粉末を、高い歩留りで得ることを可能とし、一方で、製造過程で希土類元素が酸素と結び付いたとしても、化学量論組成に対して希土類元素が不足することなく、焼結後の永久磁石中にα−Feが生成されることを抑制することが可能となるとともに、粉砕前後で磁石組成が大きく変動しないので粉砕後に磁石組成を変更する必要なく、磁気性能を向上させることが可能な永久磁石及び永久磁石の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る永久磁石は、希土類元素を含み、化学量論組成に基づく含有量からなる磁石原料合金を粗粉砕して粗粉砕磁石粉末を得る工程と、ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路でヘリウムガス気流を循環させた状態で、前記粗粉砕磁石粉末を前記ヘリウムガス気流により前記ジェットミルへと搬送し、ヘリウムガス雰囲気中でジェットミル粉砕を行なうことにより微粉砕して微粉砕磁石粉末を得る工程と、前記微粉砕磁石粉末の内、所定範囲の粒径の前記微粉砕磁石粉末を前記粉砕物回収装置により回収する工程と、前記粉砕物回収装置を経た前記ヘリウムガス気流中において前記粉砕物回収装置により回収されずに残存する前記微粉砕磁石粉末を残存磁石粉末として捕集する工程と、前記残存磁石粉末を前記ヘリウムガス気流により再度ジェットミルへと搬送する工程と、前記粉砕物回収装置により回収された前記微粉砕磁石粉末に以下の構造式M−(OR)x(式中、Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で表わされる有機金属化合物を添加することにより、前記微粉砕磁石粉末の粒子表面に前記有機金属化合物を付着させる工程と、前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記微粉砕磁石粉末を成形することにより成形体を形成する工程と、前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記微粉砕磁石粉末を成形前又は成形後であって焼結前に水素雰囲気で仮焼する工程と、前記成形体を焼結する工程と、により製造されることを特徴とする。
また、請求項2に係る永久磁石は、請求項1に記載の永久磁石において、前記有機金属化合物の添加量は、前記永久磁石中に含まれる希土類元素の含有量が前記化学量論組成に基づく含有量に対して0.1w%〜10.0w%多くなる量であることを特徴とする。
また、請求項3に係る永久磁石は、請求項1又は請求項2に記載の永久磁石において、前記ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路の酸素濃度が30ppm以下であることを特徴とする。
また、請求項4に係る永久磁石は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の永久磁石において、前記ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路で循環されるヘリウムガス気流の圧力が0.4MPa〜1.8MPaであることを特徴とする。
また、請求項5に係る永久磁石は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の永久磁石において、前記微粉砕磁石粉末を前記粉砕物回収装置により回収する工程は、0.1μm〜5.0μmの粒径を有する前記微粉砕磁石粉末を回収することを特徴とする。
更に、請求項6に係る永久磁石の製造方法は、希土類元素を含み、化学量論組成に基づく含有量からなる磁石原料合金を粗粉砕して粗粉砕磁石粉末を得る工程と、ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路でヘリウムガス気流を循環させた状態で、前記粗粉砕磁石粉末を前記ヘリウムガス気流により前記ジェットミルへと搬送し、ヘリウムガス雰囲気中でジェットミル粉砕を行なうことにより微粉砕して微粉砕磁石粉末を得る工程と、前記微粉砕磁石粉末の内、所定範囲の粒径の前記微粉砕磁石粉末を前記粉砕物回収装置により回収する工程と、前記粉砕物回収装置を経た前記ヘリウムガス気流中において前記粉砕物回収装置により回収されずに残存する前記微粉砕磁石粉末を残存磁石粉末として捕集する工程と、前記残存磁石粉末を前記ヘリウムガス気流により再度ジェットミルへと搬送する工程と、前記粉砕物回収装置により回収された前記微粉砕磁石粉末に以下の構造式M−(OR)x(式中、Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で表わされる有機金属化合物を添加することにより、前記微粉砕磁石粉末の粒子表面に前記有機金属化合物を付着させる工程と、前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記微粉砕磁石粉末を成形することにより成形体を形成する工程と、前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記微粉砕磁石粉末を成形前又は成形後であって焼結前に水素雰囲気で仮焼する工程と、前記成形体を焼結する工程と、を有することを特徴とする。
また、請求項7に係る永久磁石の製造方法は、請求項6に記載の永久磁石の製造方法において、前記有機金属化合物の添加量は、前記永久磁石中に含まれる希土類元素の含有量が前記化学量論組成に基づく含有量に対して0.1w%〜10.0w%多くなる量であることを特徴とする。
また、請求項8に係る永久磁石の製造方法は、請求項6又は請求項7に記載の永久磁石の製造方法において、前記ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路の酸素濃度が30ppm以下であることを特徴とする。
また、請求項9に係る永久磁石の製造方法は、請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の永久磁石の製造方法において、前記ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路で循環されるヘリウムガス気流の圧力が0.4MPa〜1.8MPaであることを特徴とする。
更に、請求項10に係る永久磁石の製造方法は、請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の永久磁石の製造方法において、前記微粉砕磁石粉末を前記粉砕物回収装置により回収する工程は、0.1μm〜5.0μmの粒子を有する前記微粉砕磁石粉末を回収することを特徴とする。
前記構成を有する請求項1に記載の永久磁石によれば、製造過程で希土類元素が酸素と結び付いたとしても、化学量論組成に対して希土類元素が不足することなく、焼結後の永久磁石中にα−Feが生成されることを抑制することが可能となる。また、粉砕前後で磁石組成が大きく変動しないので粉砕後に磁石組成を変更する必要なく、製造工程を簡略化することができる。また、ヘリウム雰囲気下でジェットミル粉砕を行うとともに、ジェットミルと粉砕物回収装置との間で磁石粒子を循環させて繰り返し粉砕を行うので、永久磁石を構成する結晶粒を微小な粒径範囲とすることが可能となる。その結果、永久磁石の磁気性能を向上させることが可能となる。
また、請求項2に記載の永久磁石によれば、Mリッチ相を均一に分散することが可能となるとともに、α−Feの生成を十分に抑制でき、また、残留磁束密度が低下することについても防止できる。
また、請求項3に記載の永久磁石によれば、成形元となる磁石粒子の酸化量を低く抑えることが可能となる。その結果、永久磁石の磁気性能を向上させることが可能となる。
また、請求項4に記載の永久磁石によれば、永久磁石を構成する結晶粒をより微小な粒径範囲とすることが可能となる。その結果、永久磁石の磁気性能を向上させることが可能となる。
また、請求項5に記載の永久磁石によれば、永久磁石を構成する結晶粒の粒径を0.1μm〜5.0μmとすることができる。その結果、永久磁石の磁気性能を向上させることが可能となる。
また、請求項6に記載の永久磁石の製造方法によれば、製造過程で希土類元素が酸素と結び付いたとしても、化学量論組成に対して希土類元素が不足することなく、焼結後の永久磁石中にα−Feが生成されることを抑制することが可能となる。また、粉砕前後で磁石組成が大きく変動しないので粉砕後に磁石組成を変更する必要なく、製造工程を簡略化することができる。また、ヘリウム雰囲気下でジェットミル粉砕を行うとともに、ジェットミルと粉砕物回収装置との間で磁石粒子を循環させて繰り返し粉砕を行うので、従来のジェットミル粉砕では実現が難しかった微小範囲の粒径の磁石粉末を、高い歩留りで得ることが可能となる。その結果、磁気性能を向上させた永久磁石を高い工業生産性をもって製造することが可能となる。
また、請求項7に記載の永久磁石の製造方法によれば、焼結後の永久磁石中にMリッチ相を均一に分散することが可能となるとともに、α−Feの生成を十分に抑制でき、また、残留磁束密度が低下することについても防止できる。
また、請求項8に記載の永久磁石の製造方法によれば、ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路の酸素濃度を30ppm以下とするので、磁石原料を粉砕する際において、粉砕後の磁石粒子の酸化量を低く抑えることが可能となる。その結果、磁気性能を向上させた永久磁石を製造することが可能となる。
また、請求項9に記載の永久磁石の製造方法によれば、ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路で循環されるヘリウムガス気流の圧力を0.4MPa〜1.8MPaとするので、より微小範囲の粒径の磁石粉末を、高い歩留りで得ることが可能となる。その結果、磁気性能を向上させた永久磁石を製造することが可能となる。
更に、請求項10に記載の永久磁石の製造方法によれば、粒径が0.1μm〜5.0μmの磁石粉末を、高い歩留りで得ることが可能となる。その結果、磁気性能を大きく向上させた永久磁石を製造することが可能となる。
本発明に係る永久磁石を示した全体図である。 本発明に係る永久磁石の粒界付近を拡大して示した模式図である。 本発明に係る永久磁石の第1の製造方法における製造工程を示した説明図である。 本発明に係るジェットミル粉砕分級システムの概略構成を示した図である。 本発明に係る永久磁石の第2の製造方法における製造工程を示した説明図である。 水素中仮焼処理を行った場合と行わなかった場合の酸素量の変化を示した図である。 実施例と比較例の製造方法でそれぞれ粉砕した微粉砕磁石粉末の粒径を示した図である。 実施例の製造方法で粉砕した微粉砕磁石粉末の粒径分布を示した図である。
以下、本発明に係る永久磁石及び永久磁石の製造方法について具体化した実施形態について以下に図面を参照しつつ詳細に説明する。
[永久磁石の構成]
先ず、本発明に係る永久磁石1の構成について説明する。図1は本発明に係る永久磁石1を示した全体図である。尚、図1に示す永久磁石1は円柱形状を備えるが、永久磁石1の形状は成形に用いるキャビティの形状によって変化する。
本発明に係る永久磁石1としては例えばNd−Fe−B系磁石を用いる。また、図2に示すように、永久磁石1は磁化作用に寄与する磁性相である主相11と、非磁性で希土類元素の濃縮した低融点のMリッチ相12(Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。)とが共存する合金である。図2は永久磁石1を構成するNd磁石粒子を拡大して示した図である。
ここで、主相11は化学量論組成であるNdFe14B金属間化合物相(Feは部分的にCoで置換しても良い)が高い体積割合を占めた状態となる。一方、Mリッチ相12は同じく化学量論組成であるMFe14B(Feは部分的にCoで置換しても良い)よりMの組成比率が多い金属間化合物相(例えば、M2.0〜3.0Fe14B金属間化合物相)からなる。また、Mリッチ相12には磁気特性向上の為、Co、Cu、Al、Si等の他元素を少量含んでも良い。
そして、永久磁石1において、Mリッチ相12は、以下のような役割を担っている。
(1)融点が低く(約600℃)、焼結時に液相となり、磁石の高密度化、即ち磁化の向上に寄与する。(2)粒界の凹凸を無くし、逆磁区のニュークリエーションサイトを減少させ保磁力を高める。(3)主相を磁気的に絶縁し保磁力を増加する。
従って、焼結後の永久磁石1中におけるMリッチ相12の分散状態が悪いと、局部的な焼結不良、磁性の低下をまねくため、焼結後の永久磁石1中にはMリッチ相12が均一に分散していることが重要となる。
また、Nd−Fe−B系磁石の製造において生じる問題として、焼結された合金中にα−Feが生成することが挙げられる。原因としては、化学量論組成に基づく含有量からなる磁石原料合金を用いて永久磁石を製造した場合に、製造過程で希土類元素が酸素と結び付き、化学量論組成に対して希土類元素が不足する状態となることが挙げられる。さらに、α−Feが、焼結後も磁石中に残存すれば、磁石の磁気特性の低下をもたらす。
そして、上述した永久磁石1におけるNdやMを含む全希土類元素の含有量は、上記化学量論組成に基づく含有量(26.7wt%)よりも0.1wt%〜10.0wt%、より好ましくは0.1wt%〜5.0wt%多い範囲内であることが望ましい。具体的には、各成分の含有量はNd:25〜37wt%、M:0.1〜10.0wt%、B:1〜2wt%、Fe(電解鉄):60〜75wt%とする。永久磁石1中の希土類元素の含有量を上記範囲とすることによって、焼結後の永久磁石1中にMリッチ相12を均一に分散することが可能となる。また、製造過程で希土類元素が酸素と結び付いたとしても、化学量論組成に対して希土類元素が不足することなく、焼結後の永久磁石1中にα−Feが生成されることを抑制することが可能となる。
尚、永久磁石1中の希土類元素の含有量が上記範囲よりも少ない場合には、Mリッチ相12が形成され難くなる。また、α−Feの生成を十分に抑制することができない。一方、永久磁石1中の希土類元素の組成が上記範囲より多い場合には、保磁力の増加が鈍化し、かつ残留磁束密度が低下してしまい、実用的ではない。
また、本発明では、粉砕時の磁石粉末中におけるNdやMを含む全希土類元素の含有量は、上記化学量論組成に基づく含有量(26.7wt%)である。そして、後述のようにM−(OR)(式中、Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で表わされるMを含む有機金属化合物(例えば、ネオジウムエトキシド、ジスプロシウムプロポキシド、テルビウムプロポキシドなど)を有機溶媒に添加し、湿式状態で粉砕後の磁石粉末に添加する。その結果、有機金属化合物添加後の磁石粉末に含まれる希土類元素の含有量は、上記化学量論組成に基づく含有量(26.7wt%)よりも0.1wt%〜10.0wt%、より好ましくは0.1wt%〜5.0wt%多い範囲内となる。また、有機溶媒を用いて添加することによって、Mを含む有機金属化合物を有機溶媒中で分散させ、Nd磁石粒子の粒子表面にMを含む有機金属化合物を均一付着することが可能となり、焼結後の永久磁石1においてMリッチ相12を均一に分散することが可能となる。
ここで、上記M−(OR)(式中、Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)の構造式を満たす有機金属化合物として金属アルコキシドがある。金属アルコキシドとは、一般式M(OR)(M:金属元素、R:有機基、n:金属又は半金属の価数)で表される。また、金属アルコキシドを形成する金属又は半金属としては、Nd、Pr、Dy、Tb、W、Mo、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Ir、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Ge、Sb、Y、lanthanideなどが挙げられる。但し、本発明では特に、希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbを用いる。
また、アルコキシドの種類は特に限定されることなく、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、炭素数4以上のアルコキシド等が挙げられる。但し、本発明では後述のように低温分解で残炭を抑制する目的から、低分子量のものを用いる。また、炭素数1のメトキシドについては分解し易く、取扱いが困難であるので、特に炭素数が2〜6のアルコキシドであるエトキシド、メトキシド、イソプロポキシド、プロポキシド、ブトキシドなどを用いることが好ましい。
以上のように本発明では、有機金属化合物を粉砕後の磁石粉末に対して添加することによって希土類元素の含有量を増加させる。この方法では、粉砕前に磁石原料に含まれる希土類元素の含有量を予め化学量論組成に基づく含有量よりも多くする方法と比較して、粉砕前後で磁石組成が大きく変動しない利点がある。従って、粉砕後に磁石組成を変更する必要がない。
また、圧粉成形により成形された成形体を適切な焼成条件で焼成すれば、Mが主相11内へと拡散浸透(固溶化)することを防止できる。それにより、本発明では、Mを添加したとしてもMによる置換領域を外殻部分のみとすることができる。その結果、結晶粒全体としては(すなわち、焼結磁石全体としては)、コアのNdFe14B金属間化合物相が高い体積割合を占めた状態となる。それにより、その磁石の残留磁束密度(外部磁場の強さを0にしたときの磁束密度)の低下を抑制することができる。
また、主相11の結晶粒径は0.1μm〜5.0μmとすることが望ましい。尚、主相11とMリッチ相12の構成は、例えばSEMやTEMや3次元アトムプローブ法により確認することができる。
また、MとしてDy又はTbを用いれば、磁石粒子の粒界にDy又はTbを偏在化することが可能となる。そして、粒界に偏在されたDyやTbが粒界の逆磁区の生成を抑制することで、保磁力の向上が可能となる。また、DyやTbの添加量が従来に比べて少なくすることができ、残留磁束密度の低下を抑制することができる。
[永久磁石の製造方法1]
次に、本発明に係る永久磁石1の第1の製造方法について図3を用いて説明する。図3は本発明に係る永久磁石1の第1の製造方法における製造工程を示した説明図である。
先ず、化学量論組成に基づく分率のNd−Fe−B(Nd:26.7wt%、Fe(電解鉄):72.3wt%、B:1.0wt%)からなる、インゴットを製造する。その後、インゴットをスタンプミルやクラッシャー等によって200μm程度の大きさに粗粉砕する。若しくは、インゴットを溶解し、ストリップキャスト法でフレークを作製し、水素解砕法で粗粉化する。それによって、粗粉砕磁石粉末31を得る。
次いで、粗粉砕磁石粉末31を、リターン方式を採用したジェットミル粉砕分級システム32により微粉砕し、所定範囲の粒径(例えば0.1μm〜5.0μm)の微粉砕磁石粉末33のみを分級して回収する。
以下に、図4を用いてジェットミル粉砕分級システム32について説明する。図4は本発明に係るジェットミル粉砕分級システム32の概略構成を示した図である。
図4に示すようにジェットミル粉砕分級システム32は、ジェットミル34と、サイクロン分級機35と、フィルタ36と、コンプレッサ37と、ヘリウムガス気流を循環させる配管38とから構成される。
ジェットミル34は、乾式の粉砕装置であって、配管38を介してサイクロン分級機35、フィルタ36、コンプレッサ37との間で閉回路を構成する。また、その閉回路では、0.4MPa〜1.8MPa、より好ましくは1.5MPa程度の圧力でヘリウムガス気流を循環させる。そして、ヘリウムガス気流により搬送された粗粉砕磁石粉末31を、衝突板に衝突させることや粒子同士を衝突させることにより粉砕する。粉砕された粉砕物は、同じくヘリウムガス気流によりサイクロン分級機35へと搬送される。
サイクロン分級機35は、ジェットミル34で粉砕された粉砕物のうち、所定の範囲(例えば0.1μm〜5.0μm)の粒径のものを分級する。そして、分級された所定の範囲の粒径の粉砕物を微粉砕磁石粉末33としてフィルタ36により回収する。即ち、サイクロン分級機35及びフィルタ36により粉砕物回収装置を構成する。また、本発明では、サイクロン分級機35で回収されなかった粉砕物を補集してヘリウムガス気流により再度ジェットミル34へと搬送する補集装置を備える。従って、ジェットミル34による粉砕後に所定の範囲(例えば0.1μm〜5.0μm)の粒径とならなかった粉砕物は、再度ジェットミル34により粉砕が行われることとなる(リターン方式)。
一方、コンプレッサ37は、フィルタ36を通過したヘリウムガスを吸入して所定圧力で吐出する装置である。それによって、閉回路内で、0.4MPa〜1.8MPa、より好ましくは1.5MPa程度の圧力でヘリウムガス気流を循環させる。
また、ジェットミル粉砕分級システム32は、閉回路内の酸素濃度を1000ppm以下、より好ましくは30ppm以下として稼働を行うのが好ましい。それによって、磁石原料を粉砕する際において、粉砕後の磁石粒子の酸化量を低く抑えることが可能となる。その結果、磁気性能を向上させた永久磁石1を製造することが可能となる。
そして、上記ジェットミル粉砕分級システム32を用いることにより、従来のジェットミルやサイクロン分級機を用いた場合と比較して、微小な粒径範囲(例えば0.1μm〜5.0μm)の磁石粉末を高い歩留りで得ることが可能となる。
図3に戻り、本発明に係る永久磁石1の第1の製造方法について説明する。
磁石粉末の粉砕、分級を行う一方で、ジェットミル粉砕分級システム32で微粉砕された微粉砕磁石粉末33に添加する有機金属化合物溶液を作製する。ここで、有機金属化合物溶液には予め希土類元素を含む有機金属化合物を添加し、溶解させる。尚、溶解させる有機金属化合物としては、M−(OR)(式中、Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)に該当する有機金属化合物(例えば、ネオジウムエトキシド、ジスプロシウムプロポキシド、テルビウムプロポキシドなど)を用いる。また、溶解させる希土類元素を含む有機金属化合物の量は特に制限されないが、前記したように永久磁石に含まれる希土類元素の含有量が化学量論組成に基づく含有量(26.7wt%)よりも0.1wt%〜10.0wt%、より好ましくは0.1wt%〜5.0wt%多くなる範囲とするのが好ましい。
続いて、ジェットミル粉砕分級システム32にて分級された微粉砕磁石粉末33に対して上記有機金属化合物溶液を添加する。それによって、磁石原料の微粉砕磁石粉末33と有機金属化合物溶液とが混合されたスラリー42を生成する。尚、有機金属化合物溶液の添加は、窒素ガス、Arガス、Heガスなど不活性ガスからなる雰囲気で行う。
その後、生成したスラリー42を成形前に真空乾燥などで事前に乾燥させ、乾燥した磁石粉末43を取り出す。その後、乾燥した磁石粉末を成形装置50により所定形状に圧粉成形する。尚、圧粉成形には、上記の乾燥した微粉末をキャビティに充填する乾式法と、溶媒などでスラリー状にしてからキャビティに充填する湿式法があるが、本発明では乾式法を用いる場合を例示する。また、有機金属化合物溶液は成形後の焼成段階で揮発させることも可能である。
図3に示すように、成形装置50は、円筒状のモールド51と、モールド51に対して上下方向に摺動する下パンチ52と、同じくモールド51に対して上下方向に摺動する上パンチ53とを有し、これらに囲まれた空間がキャビティ54を構成する。
また、成形装置50には一対の磁界発生コイル55、56がキャビティ54の上下位置に配置されており、磁力線をキャビティ54に充填された磁石粉末43に印加する。印加させる磁場は例えば1MA/mとする。
そして、圧粉成形を行う際には、先ず乾燥した磁石粉末43をキャビティ54に充填する。その後、下パンチ52及び上パンチ53を駆動し、キャビティ54に充填された磁石粉末43に対して矢印61方向に圧力を加え、成形する。また、加圧と同時にキャビティ54に充填された磁石粉末43に対して、加圧方向と平行な矢印62方向に磁界発生コイル55、56によってパルス磁場を印加する。それによって、所望の方向に磁場を配向させる。尚、磁場を配向させる方向は、磁石粉末43から成形される永久磁石1に求められる磁場方向を考慮して決定する必要がある。
また、湿式法を用いる場合には、キャビティ54に磁場を印加しながらスラリーを注入し、注入途中又は注入終了後に、当初の磁場より強い磁場を印加して湿式成形しても良い。また、加圧方向に対して印加方向が垂直となるように磁界発生コイル55、56を配置しても良い。
次に、圧粉成形により成形された成形体71を水素雰囲気において200℃〜900℃、より好ましくは400℃〜900℃(例えば600℃)で数時間(例えば5時間)保持することにより水素中仮焼処理を行う。仮焼中の水素の供給量は5L/minとする。この水素中仮焼処理では、有機金属化合物を熱分解させて、仮焼体中の炭素量を低減させる所謂脱カーボンが行われる。また、水素中仮焼処理は、仮焼体中の炭素量が1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下とする条件で行うこととする。それによって、その後の焼結処理で永久磁石1全体を緻密に焼結させることが可能となり、残留磁束密度や保磁力を低下させることが無い。
ここで、上述した水素中仮焼処理によって仮焼された成形体71には、NdHやNdHが存在し、酸素と結び付きやすくなる問題があるが、第1の製造方法では、成形体71は水素仮焼後に外気と触れさせることなく、後述の真空焼成に移るため脱水素工程は不要となる。焼成中に成形体中の水素は抜けることとなる。
続いて、水素中仮焼処理によって仮焼された成形体71を焼結する焼結処理を行う。焼結処理では、所定の昇温速度で800℃〜1180℃程度まで昇温し、2時間程度保持する。この間は真空焼成となるが真空度としては10−4Torr以下とすることが好ましい。その後冷却し、再び600℃で2時間熱処理を行う。そして、焼結の結果、永久磁石1が製造される。
[永久磁石の製造方法2]
次に、本発明に係る永久磁石1の他の製造方法である第2の製造方法について図5を用いて説明する。図5は本発明に係る永久磁石1の第2の製造方法における製造工程を示した説明図である。
尚、スラリー42を生成するまでの工程は、図3を用いて既に説明した第1の製造方法における製造工程と同様であるので説明は省略する。
先ず、生成したスラリー42を成形前に真空乾燥などで事前に乾燥させ、乾燥した磁石粉末43を取り出す。その後、乾燥した磁石粉末43を水素雰囲気において200℃〜900℃、より好ましくは400℃〜900℃(例えば600℃)で数時間(例えば5時間)保持することにより水素中仮焼処理を行う。仮焼中の水素の供給量は5L/minとする。この水素中仮焼処理では、有機金属化合物を熱分解させて、仮焼体中の炭素量を低減させる所謂脱カーボンが行われる。また、水素中仮焼処理は、仮焼体中の炭素量が1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下とする条件で行うこととする。それによって、その後の焼結処理で永久磁石1全体を緻密に焼結させることが可能となり、残留磁束密度や保磁力を低下させることが無い。
次に、水素中仮焼処理によって仮焼された粉末状の仮焼体82を真空雰囲気で200℃〜600℃、より好ましくは400℃〜600℃で1〜3時間保持することにより脱水素処理を行う。尚、真空度としては0.1Torr以下とすることが好ましい。
ここで、上述した水素中仮焼処理によって仮焼された仮焼体82には、NdHやNdHが存在し、酸素と結び付きやすくなる問題がある。
図6は水素中仮焼処理をしたNd磁石粉末と水素中仮焼処理をしていないNd磁石粉末とを、酸素濃度7ppm及び酸素濃度66ppmの雰囲気にそれぞれ暴露した際に、暴露時間に対する磁石粉末内の酸素量を示した図である。図6に示すように水素中仮焼処理した磁石粉末は、高酸素濃度66ppm雰囲気におかれると、約1000secで磁石粉末内の酸素量が0.4%から0.8%まで上昇する。また、低酸素濃度7ppm雰囲気におかれても、約5000secで磁石粉末内の酸素量が0.4%から同じく0.8%まで上昇する。そして、Nd磁石粒子が酸素と結び付くと、残留磁束密度や保磁力の低下の原因となる。
そこで、上記脱水素処理では、水素中仮焼処理によって生成された仮焼体82中のNdH(活性度大)やNdH(活性度中)を、NdH(活性度大)→NdH(活性度中)→Nd(活性度小)へと段階的に変化させることによって、水素仮焼中処理により活性化された仮焼体82の活性度を低下させる。それによって、水素中仮焼処理によって仮焼された仮焼体82をその後に大気中へと移動させた場合であっても、Nd磁石粒子が酸素と結び付くことを防止し、残留磁束密度や保磁力を低下させることが無い。
その後、脱水素処理が行われた粉末状の仮焼体82を成形装置50により所定形状に圧粉成形する。成形装置50の詳細については図3を用いて既に説明した第1の製造方法における製造工程と同様であるので説明は省略する。
その後、成形された仮焼体82を焼結する焼結処理を行う。焼結処理では、所定の昇温速度で800℃〜1180℃程度まで昇温し、2時間程度保持する。この間は真空焼成となるが真空度としては10−4Torr以下とすることが好ましい。その後冷却し、再び600℃で2時間熱処理を行う。そして、焼結の結果、永久磁石1が製造される。
尚、上述した第2の製造方法では、粉末状の磁石粒子に対して水素中仮焼処理を行うので、成形後の磁石粒子に対して水素中仮焼処理を行う前記第1の製造方法と比較して、有機金属化合物の熱分解を磁石粒子全体に対してより容易に行うことができる利点がある。即ち、前記第1の製造方法と比較して仮焼体中の炭素量をより確実に低減させることが可能となる。
一方、第1の製造方法では、成形体71は水素仮焼後に外気と触れさせることなく、後述の真空焼成に移るため脱水素工程は不要となる。従って、前記第2の製造方法と比較して製造工程を簡略化することが可能となる。但し、前記第2の製造方法においても、水素仮焼後に外気と触れさせることがなく焼成を行う場合には、脱水素工程は不要となる。
以下に、本発明の実施例に係る永久磁石1の製造方法について、比較例1〜3と比較しつつ説明する。
(実施例1)
上述したジェットミル粉砕分級システム32を用いて粗粉砕磁石粉末31を粉砕、分級した。ジェットミル粉砕分級システム32内で循環させるガスをヘリウムガスとし、循環させるヘリウムガスの圧力は0.6MPaとした。
(実施例2)
ジェットミル粉砕分級システム32内で循環させるガスをヘリウムガスとし、循環させるヘリウムガスの圧力は1.5MPaとした。
(比較例1)
リターン方式を用いない従来のクローズ式のジェットミル粉砕分級システムを用いて粗粉砕磁石粉末31を粉砕、分級した。循環させるガスをヘリウムガスとし、循環させるヘリウムガスの圧力は0.6MPaとした。他の条件は実施例1と同様である。
(比較例2)
ジェットミル粉砕分級システムで循環させるガスを窒素ガスとし、循環させる窒素ガスの圧力は0.6MPaとした。他の条件は比較例1と同様である。
(比較例3)
ジェットミル粉砕分級システムで循環させるガスを窒素ガスとし、循環させる窒素ガスの圧力は1.5MPaとした。他の条件は比較例1と同様である。
(粉砕後の磁石粒子の平均粒径に基づく実施例と比較例との比較検討)
図7は、サイクロン分級機35に回収した磁石粉末の粒度分布を測定するための粒度分布測定装置を設け、実施例1と比較例1〜3のそれぞれについて回収された磁石粉末の平均粒径[μm]を示した図である。
図7に示すように、実施例1、2と比較例1〜3とを比較すると、サイクロン分級機35で回収されなかった粉砕物を補集して再度ジェットミル34へと搬送するリターン方式を採用することによって、平均粒径のより小さい磁石粉末を回収することが可能となる。また、比較例1と比較例2を比較すると、循環させるガスをヘリウムガスとすることによって、平均粒径のより小さい磁石粉末を回収することが可能となる。また、実施例1と実施例2或いは比較例2と比較例3を比較すると、循環させるガスの圧力を0.4MPa〜1.8MPa、より好ましくは1.5MPaとすることによって、平均粒径のより小さい磁石粉末を回収することが可能となる。
更に、実施例2では、循環させるガスをヘリウムガスとし、循環させるガスの圧力を0.4MPa〜1.8MPaとすることによって、同じく平均粒径を0.57μmと非常に小さい値とすることが可能となる。そして、実施例1では、循環させるガスをヘリウムガスとし、循環させるガスの圧力を1.5MPaとすることによって、平均粒径を0.44μmと更に小さい値とすることが可能となる。従って、循環させるガスをヘリウムガスとし、且つ循環させるガスの圧力を0.4MPa〜1.8MPa、より好ましくは1.5MPaとすることによって、微小な粒径範囲(例えば0.1μm〜5.0μm)の磁石粉末を高い歩留りで得ることが可能であることが分かる。
(実施例の永久磁石の製造方法における粉砕後の磁石粉末の粒径分布結果検討)
図8は、サイクロン分級機35に回収した磁石粉末の粒度分布を測定するための粒度分布測定装置を設け、実施例2で回収された磁石粉末の粒径分布を示した図である。
図8に示すように、実施例2では回収された磁石粉末は、微小な粒径範囲である0.2μm〜0.8μmに分布が偏っている。従って、微小な粒径範囲(例えば0.1μm〜5.0μm)の磁石粉末を高い歩留りで得ることが可能であることが分かる。
以上説明したように、本実施形態に係る永久磁石1及び永久磁石1の製造方法では、粗粉砕された磁石粉末をジェットミル粉砕分級システム32へと搬送し、ヘリウム雰囲気下でジェットミル粉砕を行うとともに、ジェットミル34とサイクロン分級機35との間で磁石粒子を循環させて繰り返し粉砕を行い、所定の範囲(例えば0.1μm〜5.0μm)の粒径のものを分級して回収するので、従来のジェットミル粉砕では実現が難しかった微小範囲の粒径の磁石粉末を、高い歩留りで得ることを可能となる。その結果、磁気性能を向上させた永久磁石を高い工業生産性をもって製造することが可能となる。
また、ジェットミル粉砕分級システム32における閉回路の酸素濃度が30ppm以下とするので、磁石原料を粉砕する際において、粉砕後の磁石粒子の酸化量を低く抑えることが可能となる。その結果、磁気性能を向上させた永久磁石を製造することが可能となる。
また、ジェットミル粉砕分級システム32における閉回路で循環されるヘリウムガス気流の圧力を0.4MPa〜1.8MPaとするので、より微小範囲の粒径の磁石粉末を、高い歩留りで得ることが可能となる。その結果、磁気性能を向上させた永久磁石を製造することが可能となる。
また、ジェットミル粉砕分級システム32では、特に0.1μm〜5.0μmの粒径のものを分級して回収することとすれば、微小な粒径の磁石粉末を、高い歩留りで得ることが可能となる。その結果、磁気性能を大きく向上させた永久磁石を製造することが可能となる。
また、ジェットミル粉砕分級システム32により回収された磁石粉末に対して、M−(OR)x(式中、Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)で示される有機金属化合物が添加された有機金属化合物溶液を加え、磁石の粒子表面に対して均一に有機金属化合物を付着させた後に、成形及び焼結を行うので、製造過程で希土類元素が酸素と結び付いたとしても、化学量論組成に対して希土類元素が不足することなく、焼結後の永久磁石中にα−Feが生成されることを抑制することが可能となる。また、粉砕前後で磁石組成が大きく変動しないので粉砕後に磁石組成を変更する必要なく、製造工程を簡略化することができる。
特に、有機金属化合物添加後の希土類元素の含有量を、化学量論組成に基づく含有量(26.7wt%)よりも0.1wt%〜10.0wt%、より好ましくは0.1wt%〜5.0wt%多い範囲内とすることによって、Mリッチ相を均一に分散することが可能となるとともに、α−Feの生成を十分に抑制でき、また、残留磁束密度が低下することについても防止できる。
尚、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
また、磁石粉末の粉砕条件、混練条件、焼結条件などは上記実施例に記載した条件に限られるものではない。
また、水素中仮焼処理や脱水素工程については省略しても良い。
1 永久磁石
11 主相
12 Mリッチ相
32 ジェットミル粉砕分級システム
34 ジェットミル
35 サイクロン分級機

Claims (10)

  1. 希土類元素を含み、化学量論組成に基づく含有量からなる磁石原料合金を粗粉砕して粗粉砕磁石粉末を得る工程と、
    ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路でヘリウムガス気流を循環させた状態で、前記粗粉砕磁石粉末を前記ヘリウムガス気流により前記ジェットミルへと搬送し、ヘリウムガス雰囲気中でジェットミル粉砕を行なうことにより微粉砕して微粉砕磁石粉末を得る工程と、
    前記微粉砕磁石粉末の内、所定範囲の粒径の前記微粉砕磁石粉末を前記粉砕物回収装置により回収する工程と、
    前記粉砕物回収装置を経た前記ヘリウムガス気流中において前記粉砕物回収装置により回収されずに残存する前記微粉砕磁石粉末を残存磁石粉末として捕集する工程と、
    前記残存磁石粉末を前記ヘリウムガス気流により再度ジェットミルへと搬送する工程と、
    前記粉砕物回収装置により回収された前記微粉砕磁石粉末に以下の構造式
    M−(OR)
    (式中、Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)
    で表わされる有機金属化合物を添加することにより、前記微粉砕磁石粉末の粒子表面に前記有機金属化合物を付着させる工程と、
    前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記微粉砕磁石粉末を成形することにより成形体を形成する工程と、
    前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記微粉砕磁石粉末を成形前又は成形後であって焼結前に水素雰囲気で仮焼する工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、により製造されることを特徴とする永久磁石。
  2. 前記有機金属化合物の添加量は、前記永久磁石中に含まれる希土類元素の含有量が前記化学量論組成に基づく含有量に対して0.1w%〜10.0w%多くなる量であることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石。
  3. 前記ジェットミル及び前記粉砕物回収装置を含む閉回路の酸素濃度が30ppm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の永久磁石。
  4. 前記ジェットミル及び前記粉砕物回収装置を含む閉回路で循環されるヘリウムガス気流の圧力が0.4MPa〜1.8MPaであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の永久磁石。
  5. 前記微粉砕磁石粉末を前記粉砕物回収装置により回収する工程は、0.1μm〜5.0μmの粒径を有する前記微粉砕磁石粉末を回収することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の永久磁石。
  6. 希土類元素を含み、化学量論組成に基づく含有量からなる磁石原料合金を粗粉砕して粗粉砕磁石粉末を得る工程と、
    ジェットミル及び粉砕物回収装置を含む閉回路でヘリウムガス気流を循環させた状態で、前記粗粉砕磁石粉末を前記ヘリウムガス気流により前記ジェットミルへと搬送し、ヘリウムガス雰囲気中でジェットミル粉砕を行なうことにより微粉砕して微粉砕磁石粉末を得る工程と、
    前記微粉砕磁石粉末の内、所定範囲の粒径の前記微粉砕磁石粉末を前記粉砕物回収装置により回収する工程と、
    前記粉砕物回収装置を経た前記ヘリウムガス気流中において前記粉砕物回収装置により回収されずに残存する前記微粉砕磁石粉末を残存磁石粉末として捕集する工程と、
    前記残存磁石粉末を前記ヘリウムガス気流により再度ジェットミルへと搬送する工程と、
    前記粉砕物回収装置により回収された前記微粉砕磁石粉末に以下の構造式
    M−(OR)
    (式中、Mは希土類元素であるNd、Pr、Dy、Tbの内、少なくとも一種を含む。Rは炭素数2〜6のアルキル基のいずれかであり、直鎖でも分枝でも良い。xは任意の整数である。)
    で表わされる有機金属化合物を添加することにより、前記微粉砕磁石粉末の粒子表面に前記有機金属化合物を付着させる工程と、
    前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記微粉砕磁石粉末を成形することにより成形体を形成する工程と、
    前記有機金属化合物が粒子表面に付着された前記微粉砕磁石粉末を成形前又は成形後であって焼結前に水素雰囲気で仮焼する工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、を有することを特徴とする永久磁石の製造方法。
  7. 前記有機金属化合物の添加量は、前記永久磁石中に含まれる希土類元素の含有量が前記化学量論組成に基づく含有量に対して0.1w%〜10.0w%多くなる量であることを特徴とする請求項6に記載の永久磁石の製造方法。
  8. 前記ジェットミル及び前記粉砕物回収装置を含む閉回路では、酸素量30ppm以下のヘリウムガス気流を循環させることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の永久磁石の製造方法。
  9. 前記ジェットミル及び前記粉砕物回収装置を含む閉回路で循環されるヘリウムガス気流の圧力が0.4MPa〜1.8MPaであることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
  10. 前記微粉砕磁石粉末を前記粉砕物回収装置により回収する工程は、0.1μm〜5.0μmの粒径を有する前記微粉砕磁石粉末を回収することを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の永久磁石の製造方法。
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