JP5500536B2 - 電力用半導体モジュールおよびその電力用半導体モジュールを用いた電力変換器 - Google Patents
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Description
従来の過電流検出方法として、2層の短冊状の導電層とこれらをスルーホールで連続的に接続することでトロイダル状のコイルを形成し、そのコイルの中間にリターン導体を形成した3層構造のプリント基板や、さらにこの周囲にシールド導体を形成したプリント基板を電流検出器とし、半導体スイッチ素子のエミッタ配線に取り付けた構造がある(例えば、特許文献1)。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、外部の磁気的、静電的な外乱の影響を少なくした電流検出器構造の簡素化により低コスト化を図り、半導体モジュールの過電流を正確にいち早く検知して半導体モジュールを保護し、信頼性の高い電力用半導体モジュールおよびそれを用いた電力変換器を得ることを目的としている。
また、第2の発明はトロイド状に巻線され形成されたトロイダルコイルが設けられた電流検出器を有する電力用半導体モジュールにおいて、電力用半導体モジュールの第1の主電流端子の上部に電流検出器のトロイダルコイルが設けられているとともに、トロイダルコイルの上部には電力用半導体モジュールの第1の主電流端子に接続された第1の外部配線がトロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有しているものである。
また第2の発明に係る電力用半導体モジュールは、上記の構成を有しているので、第1の外部配線によって外部磁束を打ち消すことができ、前記第1の発明と同様の効果があり、第3の発明によれば低コストで信頼性の高い電力変換器が得られるという効果がある。
以下この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1による電流検出器1の構造を示す平面図、図2は電流検出器1のA−A部分の断面図である。電流検出器1は、絶縁被覆された導体3などでトロイド状に等間隔で巻いて形成されたトロイダルコイル2と、トロイダルコイル2の上部に図2に示すように、トロイダルコイル2の平面投影形状を覆うような大きさの導電材5がトロイダルコイル2の一方の部位である上部に設けられている。図1に示すように導電材5はトロイダルコイル2の外径Dより大きい一辺Wの正方形状である。なおトロイダルコイル2は樹脂2aなどによって固着されている。図3は電流検出器1の出力を変換する回路図である。トロイダルコイル2の両端は終端抵抗6で接続され、終端抵抗6の両端は積分器7に接続される。図4にIGBTモジュールと電流検出器1の回路図を示す。この回路の詳細は後述する。
図2,図3に示すトロイダルコイル2の中空部4に図示省略した通電路にパルス状の通電電流Icが流れるとトロイダルコイル2に磁束が鎖交して、トロイダルコイル2には次式に示す誘導起電力eが発生する。
e=M・(dIc/dt)=L・(di/dt)+R・i
ここでMは通電路とトロイダルコイル2の相互インダクタンス、Lはトロイダルコイル2の自己インダクタンス、Rは終端抵抗6の抵抗値、iはトロイダルコイル2に流れる電流である。さらに、ω・L≪Rとすると、終端抵抗6の両端には次式に示す電圧Vが発生する。
V=M・(dIc/dt)
上式より、終端抵抗6の両端に発生する電圧は、通電電流Icの微分値に比例することがわかる。このため、終端抵抗6の両端に積分器7を接続すると、積分器7から通電電流Icを測定することができる。
導電材5は図1に示した正方形状に限ったものではなく、図6に示すトロイダルコイル2の直径Dを覆うような円板状や図7に示すトロイダルコイル2の平面投影形状を覆うドーナツ状でもよく、外部磁束8を打ち消す磁束10を発生させる渦電流9が流れるような形状であればよい。さらには上部でなく下部でもよく、両方の部位でもよい。なお、図6、図7の(a)、(b)は正面図、断面図を示す。
また、トロイダルコイル2をプリント基板化してもよく、2層の導体パターンをスルーホールで連続的に接続してトロイダル状に形成してもよい。
δ=√{2/(ω・σ・μ0・μr)}=√{1/(π・f・σ・μ0・μr)}
ここで、ω:角振動数、σ:導体の導電率、μ0:真空の透磁率(=4π×10−7[H/m])、μr:導体の比透磁率、f:周波数である。
導電材5の材質を銅とし、厚さを1mmとすると、σ=5.8×107[S/m]、μr=1、δ=1×10−3[mm]から、
f=4.4[kHz}
となる。
従って、導電材5を銅とし、厚さを少なくとも1mm以上とすると、周波数4.4kHz以上の外部磁束は導電材5に発生する渦電流により打ち消すことができる。なお、導電材5の厚さは半導体モジュールを構成する他の部品との整合性、工作性、コスト等を考慮して、最適な厚さが設定される。また、材質を銅としたが、これに限らず、適宜選定してよい。
一般的にIGBTモジュールの主電流端子であるエミッタ端子やコレクタ端子、これらの端子につながる外部配線に使用される材質は銅であり、厚さは1mm程度である。また、IGBTモジュールのスイッチング時の周波数は数100kHz〜数MHzであるので、これによって発生する外部磁束は導電材に発生する渦電流により打ち消すことができる。
図8は、この発明の実施の形態2による、電流検出器1を有するIGBTモジュール11の構造を示す正面図、図9は側面図、図10は電流検出器1の取り付け部分の図8のA−A断面図である。
図8に示すように、半導体スイッチ素子であるIGBTチップ12のコレクタ電極とダイオードチップ13のカソード電極は絶縁基板14a上の金属箔にはんだ付けされる。IGBTモジュール11の第2の主電流端子であるコレクタ端子18は、コレクタ配線電極16と絶縁基板14a上の金属箔を介して、IGBTチップ12のコレクタ電極とダイオードチップ13のカソード電極に接続される。IGBTチップ12のエミッタ電極とダイオードチップ13のアノード電極は、エミッタワイヤ15によって絶縁基板14b上の金属箔に接続される。IGBTモジュール11の第1の主電流端子であるエミッタ端子19は、エミッタ配線電極17と絶縁基板14b上の金属箔、エミッタワイヤ15を介して、IGBTチップ12のエミッタ電極とダイオードチップ13のアノード電極に接続される。第2の主電流端子のコレクタ端子18には第2の外部配線であるコレクタ外部配線20が接続され、図8,図9に示すように、電流測定器1のセンサ部であるトロイダルコイル2は、トロイダルコイル2の平面投影形状Dφを覆うような大きさのWを有する第1の主電流端子であるエミッタ端子19上に設置される。第1の外部配線であるエミッタ外部配線21は、図10に示すようにトロイダルコイル2の中空部4を通るエミッタ外部配線21と一体化された円筒部21aを有しており、円筒部21aを介してエミッタ外部配線21とエミッタ端子19が接続される。また、IGBTチップ12のゲート電極はゲートワイヤ、ゲート配線電極を介してゲート端子に接続される(図示せず)。また、コレクタ外部配線20はエミッタ外部配線21上に配置される。これらエミッタ外部配線21およびコレクタ外部配線20は図9では同一寸法を示しているが、必ずしも同一寸法である必要はない。
また、電流測定器1を、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいエミッタ端子19上に設置したため、中空部4に外部磁束が鎖交した場合、エミッタ端子19に渦電流が発生し、更にこの渦電流によって発生する磁束が外部磁束を打ち消す。このため、円筒部21aを流れる電流を正確に測定することができるので、IGBTモジュール11の過電流も精度よく検知し、保護することができる。
また、センサ部であるトロイダルコイル2を第1の主電流端子であるエミッタ端子19上に設置したため、電流測定器1をより簡素化して、低コスト化することができる。さらに、トロイダルコイル2の取外しや取付けが容易になる。
なお、本実施の形態2では、電流検出器1のセンサ部であるトロイダルコイル2をトロイダルコイル2の平面投影形状の大きいエミッタ端子19上に設置したが、これに限ったものではなく、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいコレクタ端子18上に設置しても同様な効果が得られる。すなわち、この実施の形態2ではエミッタを第1の主電流端子とし、コレクタを第2の主電流端子とし、これにつながる外部配線をそれぞれ第1,第2の外部配線としたが、これに替わりエミッタを第2の主電流端子、コレクタを第1の主電流端子、及びそれにつながる第2,第1の外部配線としてもよい。
図11は、この発明の実施の形態3による、電流検出器1を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図、図12は側面図である。また、電流検出器1の取り付け部分のA−A断面図は図10と同様であり、IGBTモジュールと電流検出器1の回路図は図4と同様である。
電流測定器1のセンサ部であるトロイダルコイル2は、第1の主電流端子のエミッタ端子19上に設置される。第1の外部配線であるエミッタ外部配線21および第2の外部配線であるコレクタ外部配線20は、図12に示すようにWbと同一寸法で、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいWbを有する。そしてトロイダルコイル2の中空部4を通るエミッタ外部配線21と一体化された円筒部21aを有しており、円筒部21aを介してエミッタ外部配線21とエミッタ端子19が接続される。なお、エミッタ外部配線21とコレクタ外部配線20は同一寸法Wbの例を示しているが、コレクタ外部配線20の寸法形状Wbはエミッタ外部配線21と異なる形状寸法であってもよい。
このように構成したことにより、IGBTモジュール11に流れるパルス電流は、エミッタ端子19上に設置したセンサ部であるトロイダルコイル2で検知し、終端抵抗6、積分器7を経由して測定することができる。
また、トロイダルコイル2を、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいエミッタ外部配線21の下に設置したため、中空部4に外部磁束が鎖交した場合、エミッタ外部配線21に渦電流が発生し、更にこの渦電流によって発生する磁束が外部磁束は打ち消す。このため、円筒部21aを流れる電流を正確に測定することができるので、IGBTモジュール11の過電流も精度よく検知し、保護することができる。
また、トロイダルコイル2をエミッタ外部配線21の下に設置したため、電流測定器1をより簡素化して、低コスト化することができる。さらに、センサ部2の取外しや取付けが容易になる。
なお、本実施の形態では、電流検出器1のトロイダルコイル2をトロイダルコイル2の平面投影形状より大きい第1の外部配線のエミッタ外部配線21の下に設置したが、これに限ったものではなく、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいWbを有する第2の外部配線のコレクタ外部配線20の下に設置しても同様な効果が得られる。
図13はこの発明の実施の形態4による、電流検出器1を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図、図14は側面図である。また、電流検出器1の取り付け部分のA−A断面図は図10と同様であり、IGBTモジュールと電流検出器の回路図は図4と同様である。
電流測定器1のセンサ部であるトロイダルコイル2は、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きい図14に示すWを有するエミッタ端子19上に設置される。エミッタ外部配線21およびコレクタ外部配線20は、トロイダルコイル2の平面投影形状より大きいWbを有する。そしてトロイダルコイル2の中空部4を通るエミッタ外部配線21と一体化された円筒部21aを有しており、円筒部21aを介してエミッタ外部配線21とエミッタ端子19が接続される。なお、エミッタ外部配線21とコレクタ外部配線20の形状寸法は実施の形態3と同様な関係を有している。
このように構成したことにより、IGBTモジュール11に流れるパルス電流は、エミッタ端子19上に設置したセンサ部2であるトロイダルコイルで検知し、終端抵抗6、積分器7を経由して測定することができる。このような構成を採用したので、前記実施の形態3と同様の作用、効果を奏する。
なお、本実施の形態4では、電流検出器1をトロイダルコイル2の平面投影形状より大きい第1の主電流端子のエミッタ端子19と第1の外部配線であるエミッタ外部配線21に挟むように設置したが、これに限ったものではなく、図15に示すように電流検出器1をトロイダルコイル2の平面投影形状寸法より大きいWbを有する第2の主電流端子であるコレクタ端子18と第2の外部配線であるコレクタ外部配線20に挟むように設置しても同様な効果が得られる。
図16は、この発明の実施の形態5による、電流検出器1を有するIGBTモジュールの構造を示す正面図、図17は側面図、図18は電流検出器1の取り付け部分の図16のA−A断面図である。また、IGBTモジュールと電流検出器の回路図は図4と同様である。
この実施の形態5は実施の形態4と同様にエミッタ端子19上には電流測定器1のトロイダルコイル2が設置される。エミッタ外部配線21は、トロイダルコイル2の中空部4を通るようにエミッタ外部配線21と一体化された円筒部21aと、この実施の形態5の特有の構成であるトロイダルコイル2の外周部に沿ったエミッタ外部配線21と一体化されたリング部21bを有している。エミッタ外部配線21と一体化した円筒部21aはエミッタ端子19に接続されるが、リング部21bはエミッタ端子19に接続しない。なお、エミッタ端子19の大きさW、トロイダルコイル外径Dφ、エミッタ外部配線21、およびコレクタ外部配線20の寸法Wbは前記実施の形態4と同一である。
このように構成したことにより、実施の形態3と同様の作用、効果を奏し、さらにまた、トロイダルコイル2の外周部に沿ってリング部21bを設けたことにより、センサ部であるトロイダルコイル2の周囲は、エミッタ電位であるエミッタ端子19、エミッタ外部配線21、円筒部21a、リング部21bで覆われ、静電シールドを形成する。これにより、外部からの容量性結合による静電ノイズを大幅に抑制することができるので、より正確に電流を測定することができるとともに低コスト化することができる。
17 エミッタ配線電極、18 コレクタ端子、19 エミッタ端子、
20 コレクタ外部配線、21 エミッタ外部配線、21b リング部。
Claims (8)
- トロイド状に巻線され形成されたトロイダルコイルが設けられた電流検出器を有する電力用半導体モジュールにおいて、前記電力用半導体モジュールの第1の主電流端子の上部に前記電流検出器のトロイダルコイルが設けられているとともに、前記第1の主電流端子が前記トロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有していることを特徴とする電力用半導体モジュール。
- 前記第1の主電流端子の材質を銅とし、かつその厚さを少なくとも1mm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の電力用半導体モジュール。
- トロイド状に巻線され形成されたトロイダルコイルが設けられた電流検出器を有する電力用半導体モジュールにおいて、前記電力用半導体モジュールの第1の主電流端子の上部に前記電流検出器のトロイダルコイルが設けられているとともに、前記トロイダルコイルの上部には前記電力用半導体モジュールの第1の主電流端子に接続された第1の外部配線が前記トロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有していることを特徴とする電力用半導体モジュール。
- 前記第1の主電流端子が前記トロイダルコイルの平面投影形状を覆うような大きさを有していることを特徴とする請求項3に記載の電力用半導体モジュール。
- 前記第1の主電流端子および前記第1の外部配線の材質を銅とし、かつその厚さを少なくとも1mm以上とすることを特徴とする請求項3に記載の電力用半導体モジュール。
- 前記第1の外部配線には、前記トロイダルコイルの外周に沿ってリング部が設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電力用半導体モジュール。
- 前記リング部は前記第1の主電流端子と同電位であることを特徴とする請求項6に記載の電力用半導体モジュール。
- 前記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電力用半導体モジュールを用いたことを特徴とする電力変換器。
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