JP5500032B2 - ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

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本発明は、ポリカーボネート樹脂に、耐薬品性の付与を目的としてポリエステル樹脂を複合化すると共に、寸法安定性や剛性の改善を目的として無機充填材を配合した樹脂組成物における流動性等の物性を改善すると共に、成形品性状(成形品表面外観)を改善したポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物と、このポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物を射出成形してなる成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂、特に芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性、寸法安定性等に優れるために、電気機器、通信機器、精密機械、自動車部品等、幅広い用途に使用されている。
これら各種用途に供されるポリカーボネート樹脂については、耐薬品性を改善するためにポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂との複合化が種々検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、寸法安定性や剛性の改良を目的として無機充填材を配合することが行なわれている。
一般に樹脂組成物を成形する際、特に金型のキャビティーに樹脂組成物を射出して成形する射出成形においては、樹脂組成物の流動性が成形性の良否を大きく左右する重要な項目となる。特に、意匠性や機能性を高めるために複雑な形状に設計された成形品や、軽量性や材料コストの低減を目的として中空品とされた成形品を成形する際には、樹脂組成物の流動性が特に優れることが望まれる。
また、無機充填材を配合した所謂、強化系樹脂組成物においては、樹脂組成物中の無機充填材の分散を良好なものとし、表面性を改良すること(ピンホールやシルバーの発生を抑制する)が求められている。
従来、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性の改善のために各種の添加剤を添加する方法や、主成分樹脂の分子量を低く設定する方法、或いは低分子量のポリマーの添加などの方法が提案されている(特許文献3〜5)。
しかしながら、流動性改善のための添加剤を添加することは、添加剤の副作用による機械物性の低下が否めないばかりか、成形時の添加剤のブリードなどの問題があった。また、主成分樹脂の分子量を低下させる方法や低分子ポリマーを添加する方法では、自ずと機械物性や耐薬品性の低下が否めず、満足な解決方法ではなかった。
一方で、成形品の表面性、なかでもピンホールは、配合した無機充填材の分散性の改良だけでは解決し得ない。即ち、これらピンホールやシルバーの原因は多岐に亘る(例えば組成物中のポリマーのゲル化、無機充填材の凝集、焦げ、カーボンブラック等有機物の凝集など)ため、解決の方法が定め難い。
ところで、ポリカーボネート樹脂にポリエステル樹脂を複合化すると、耐薬品性は改善されるものの、得られる樹脂組成物は熱安定性が悪く、成形工程においてシリンダー内で高温に保持されることにより、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とでエステル交換反応を起こし、反応による分解ガスの発生で泡、シルバーと称される成形品の外観不良の原因となる;ポリカーボネート樹脂の分子量低下によりポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性、耐熱変形性等が損なわれる;更には、高温下での滞留によりポリカーボネート樹脂組成物の粘度変化が生じることにより射出成形時の成形安定性が損なわれ、成形品のショートショットやバリが発生する;といった問題が起こる。
この問題を解決するために、本出願人は先に、ポリカーボネート−ポリエチレンテレフタレート複合樹脂組成物のポリエチレンテレフタレートとして、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレートを用いる技術を提案した(特許文献6〜9)。
即ち、ポリカーボネート−ポリエチレンテレフタレート複合樹脂組成物における滞留熱劣化の問題は、ポリエチレンテレフタレートの製造工程で使用され、製品として提供されるポリエチレンテレフタレート中に含有される重縮合触媒に起因するものであり、従って、ポリエチレンテレフタレートとして、この重縮合触媒を失活させたポリエチレンテレフタレートを用いることにより、滞留熱劣化を抑制することができる。
特開2007−23118号公報 特開2009−1620号公報 特開平6−299056号公報 特開平7−324159号公報 特開2008−143933号公報 特願2010−77223 特願2010−77224 特願2010−77225 特願2010−77226
本発明は、ポリカーボネート樹脂に、耐薬品性の付与を目的としてポリエステル樹脂を複合化すると共に、寸法安定性や剛性の改善を目的として無機充填材を配合した樹脂組成物における流動性等の物性を改善すると共に、成形品性状(成形品表面外観)を改善したポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物と、このポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物を射出成形してなる成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)に、このポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)よりも高流動性であり、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレートを含有するポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)を所定の割合で配合すると、このポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)が流動性改質剤として機能し、得られる複合樹脂組成物の流動性等の物性が改善されると共に、無機充填材の分散性も良好なものとなり、この結果、成形品の表面外観も改善されることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 無機充填材を含有するポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)100質量部に対し、無機充填材を含有し、以下の条件(I)及び(II)を満たすポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)5〜50質量部を配合してなるポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物であって、ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)100質量部に対し、ポリエステル樹脂(A2)1〜100質量部、無機充填材(A3)1〜60質量部、及びゴム性重合体(A4)0.5〜30質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
(I) ポリエステル樹脂として、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレートを含有する。
(II) ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)とポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)のMVR(メルトボリュームレート、JIS K7210に準拠し、温度300℃、荷重11.8Nで測定した値:cm/10min)をそれぞれMVR(A),MVR(B)としたときに、MVR(B)がMVR(A)に対して5〜120%大きい。
] ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)におけるポリエステル樹脂(A2)が、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする[1]に記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
] ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)100質量部に対し、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレート(B2)1〜100質量部、無機充填材(B3)1〜60質量部、及びゴム性重合体(B4)0.5〜30質量部を含有することを特徴とする[1]又は2]に記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
] 無機充填材が、ガラス繊維、タルク及びウォラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする[1]乃至[]のいずれかに記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
] ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)と、ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)の構成成分が、実質的に同一であることを特徴とする[1]乃至[]のいずれかに記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
] [1]乃至[]のいずれかに記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物を射出成形してなるポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂成形品。
本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物では、ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)に所定の割合で添加されたポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)が流動性改質剤として機能するために、流動性に優れ、従って、成形性に優れる。また、無機充填材の分散性も良好なものとなり、ピンホールやシルバー等が抑制された表面外観が良好な成形品を得ることができる。
ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)に添加されたポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)は、流動性改良のために従来用いられている他の添加剤のように、副作用やブリードといった問題を引き起こすことはなく、また、このポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)の配合により機械物性や耐薬品性の低下を引き起こすこともない。
本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物の高流動性、無機充填材の高分散性の効果は、特に、ガスアシスト等の中空射出成形品において有効に発揮される。即ち、ガスアシスト等の中空射出成形品においては、通常の中実射出成形品に比べて、射出成形時における金型表面への樹脂圧が低く、金型表面に樹脂が追従し難いために良好な成形品を得ることが困難であるが、本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物であれば、その優れた流動性で良好な成形品を得ることができる。
また、得られた成形品表面のピンホール等の表面欠陥は、成形品表面にメッキ等の塗装を施す場合、特に問題となるが、本発明によれば、ピンホールやシルバー等の欠陥のない表面性に優れた成形品を得ることができるため、このような用途にも好適である。
なお、本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性、耐熱変形性等の優れた物性を有する上に、無機充填材を含むために寸法安定性、剛性に優れ、また、ポリエステル樹脂を含むために耐薬品性にも優れる。
このような本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物は、電気・電子機器部品、OA機器、機械部品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類などの各種用途に有用であり、特に車輌外装・外板部品、車輌内装部品への適用が期待できる。
本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物が適用される車輌外装・外板部品としては、アウタードアハンドル、バンパー、フェンダー、ドアパネル、トランクリッド、フロントパネル、リアパネル、ルーフパネル、ボンネット、ピラー、サイドモール、ガーニッシュ、ホイールキャップ、フードバルジ、フューエルリッド、各種スポイラー、モーターバイクのカウルなどが挙げられる。
また、車輌内装部品としては、インナードアハンドル、センターパネル、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、ラゲッジフロアボード、カーナビゲーションなどのディスプレイハウジングなどが挙げられるが、本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物の適用分野は何らこれらのものに限定されない。
特に、本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物は、その優れた流動性によりガスアシスト等の中空射出成形品の成形に有効であり、また、その良好な成形品表面性状により、メッキ等の塗装が施される成形品に有効である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
以下において、本発明で用いるポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)、ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)を、それぞれ「本発明の組成物(A)」、「本発明の組成物(B)」と称し、これら組成物(A)と組成物(B)とを所定の割合で配合してなる本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物を「本発明の組成物(A/B)」と称す場合がある。
[ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)]
本発明の組成物(A)は、無機充填材を含むポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物であり、芳香族ポリカーボネ−ト樹脂(A1)100質量部に対し、ポリエステル樹脂(A2)1〜100質量部、無機充填材(A3)1〜60質量部、及びゴム性重合体(A4)0.5〜30質量部を含有する。
{ポリカーボネート樹脂}
本発明の組成物(A)に用いられるポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂が挙げられるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)である。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる、分岐していてもよい芳香族ポリカーボネート重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等の従来法によることができる。また、溶融法で製造され、末端基のOH基量を調整して製造されたポリカーボネート樹脂であってもよい。
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂の原料の一つである芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的なものとして、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
さらに、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシルフェニル)エタン(THPE)、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン等の分子中に3個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール等を分岐化剤として少量併用することもできる。
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物のなかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」とも言い、「BPA」と略記することもある。)が好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、その使用量は、該ヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
エステル交換法による重合においては、ホスゲンの代わりに炭酸ジエステルがモノマーとして使用される。炭酸ジエステルの代表的な例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等に代表されるジアルキルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでも、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と略記することもある。)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
また、上記の炭酸ジエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
エステル交換法により芳香族ポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。触媒種に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が使用されるが、中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。エステル交換法では、上記重合触媒をp−トルエンスルホン酸エステル等で失活させることが一般的である。
芳香族ポリカーボネート樹脂として好ましいものは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。また、難燃性等を付与する目的で、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合させることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、原料の異なる2種以上の重合体及び/又は共重合体の混合物であってもよく、分岐構造を0.5モル%まで有していてもよい。
ポリカーボネート樹脂の末端ヒドロキシル基含有量は、成形品の熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす。実用的な物性を持たせるためには、通常30〜2000ppm、好ましくは100〜1500ppm、さらに好ましくは200〜1000ppmであり、末端ヒドロキシル基含有量を調節する封止末端剤としてはp−tert−ブチルフェノール、フェノール、クミルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等を使用することができる。
ポリカーボネート樹脂中の残存モノマー量としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が150ppm以下、好ましくは100ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。エステル交換法により合成された場合には、さらに炭酸ジエステル残存量が300ppm以下、好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは150ppm以下である。
ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限は無いが、溶媒としてメチレンクロライドを用い、20℃の温度で測定した溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは10,000〜50,000の範囲のものであり、より好ましくは11,000〜40,000のものであり、特に好ましくは12,000〜30,000の範囲のものである。粘度平均分子量を10,000以上とすることにより、機械的特性がより効果的に発揮され、50,000以下とすることにより、成形加工がより容易になる。また、粘度平均分子量の異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を混合してもよく、粘度平均分子量が上記好適範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合し、上記分子量の範囲内としてもよい。
{ポリエステル樹脂(A2)}
本発明の組成物(A)に用いられるポリエステル樹脂(A2)としては、従来公知の任意のポリエステル樹脂を使用できるが、中でも芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。ここで芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリエステル樹脂を示し、例えば、芳香族ジカルボン酸成分と、ジオール(及び/又はそのエステルやハロゲン化物)成分とを主成分とし、これらを重縮合して得られる重合体又は共重合体である。
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2'−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3'−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルイソプロピリデン−4,4'−ジカルボン酸、アントラセン−2,5−ジカルボン酸、アントラセン−2,6−ジカルボン酸、p−ターフェニレン−4,4'−ジカルボン酸、ピリジン−2,5−ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
これら芳香族ジカルボン酸成分は、1種又は任意の割合で2種以上を併用してもよく、これら芳香族ジカルボン酸の中では、テレフタル酸が好ましい。尚、本発明の効果を損なわない範囲で、これら芳香族ジカルボン酸と共に、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂環式ジカルボン酸を併用してもよい。
ジオール成分としては、脂肪族グリコール類、ポリオキシアルキレングリコール類、脂環式ジオール類、芳香族ジオール類等が挙げられる。脂肪族グリコール類としては、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の炭素数2〜20のものが挙げられ、中でも炭素数2〜12、特に炭素数2〜10の脂肪族グリコール類が好ましい。
ポリオキシアルキレングリコール類としては、アルキレン基の炭素数が2〜4で、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール類、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
脂環式ジオール類としては、例えば1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、水素化ビスフェノールA等が挙げられる。また芳香族ジオール類としては、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコール等が挙げられる。
その他のジオール成分としては上述したジオール類のエステルや、ハロゲン化物、例えばテトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなど)付加物などのハロゲン化ジオール類が挙げられる。これらのジオール成分は、1種又は任意の割合で2種以上を併用してもよい。また少量であれば、分子量400〜6000の長鎖ジオール類、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を用いてもよい。
本発明に用いる芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレートが好ましい。ここで、ポリアルキレンテレフタレートとは、アルキレンテレフタレート構成単位を含む樹脂をいい、アルキレンテレフタレート構成単位と他の構成単位との共重合体であってもよい。
本発明に用いるポリアルキレンテレフタレートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメチレン−テレフタレート)、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
また、本発明に用いるポリアルキレンテレフタレートとして、上記の他、アルキレンテレフタレート構成単位を主構成単位とするアルキレンテレフタレート共重合体や、ポリアルキレンテレフタレートを主成分とするポリアルキレンテレフタレート混合物が挙げられる。さらに、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)等のエラストマー成分を含有又は共重合したものも用いることができる。
アルキレンテレフタレートコポリエステルとしては、2種以上のジオール成分とテレフタル酸からなるコポリエステルや、ジオール成分とテレフタル酸、及びテレフタル酸以外のジカルボン酸からなるコポリエステルが挙げられる。ジオール成分を2種以上用いる場合には、上述したジオール成分から適宜選択して決定すればよいが、主構成単位であるアルキレンテレフタレートに共重合されるモノマー単位を、25質量%以内とすることで、耐熱性が良好となるので好ましい。
例えば、エチレングリコール/イソフタル酸/テレフタル酸共重合体(イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート)や、1,4−ブタンジオール/イソフタル酸/テレフタル酸共重合体(イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート)等の、アルキレンテレフタレート構成単位を主構成単位とする、アルキレンテレフタレートコポリエステルの他に、1,4−ブタンジオール/イソフタル酸/デカンジカルボン酸共重合体等が挙げられ、中でもアルキレンテレフタレートコポリエステルが好ましい。
本発明に用いるポリエステル樹脂(A2)としては、アルキレンテレフタレートのコポリエステルを用いる場合には、上述のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレートや、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートなどが好ましく、特にこれらの内、耐熱性の観点から、イソフタル酸成分が25質量%以内のものが好ましい。
<ポリエチレンテレフタレート>
ポリエステル樹脂(A2)としては、特にポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。ここで、ポリエチレンテレフタレートとは、全構成繰り返し単位に対するテレフタル酸及びエチレングリコールからなるオキシエチレンオキシテレフタロイル単位(以下「ET単位」と称す場合がある。)の比率(以下「ET比率」と称す場合がある。)が好ましくは90当量%以上であるポリエチレンテレフタレート樹脂であり、本発明におけるポリエチレンテレフタレートはET単位以外の構成繰り返し単位を10当量%未満の範囲で含んでいてもよい。本発明におけるポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその低級アルキルエステルとエチレングリコールとを主たる原料として製造されるが、他の酸成分及び/又は他のグリコール成分を併せて原料として用いてもよい。
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸及びこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸及びその誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸等のオキシ酸又はその誘導体が挙げられる。
また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体等が挙げられる。
上記の様なテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールとを含む原料は、エステル化触媒又はエステル交換触媒の存在下におけるエステル化反応又はエステル交換反応により、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレーテ及び/又はそのオリゴマーを形成させ、その後、重縮合触媒及び安定剤の存在下で高温減圧下に溶融重縮合を行ってポリマーとされる。
エステル化触媒は、テレフタル酸がエステル化反応の自己触媒となるため特に使用する必要はない。また、エステル化反応は、エステル化触媒と後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能であり、また、少量の無機酸等の存在下に実施することができる。エステル交換触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、亜鉛、マンガン等の金属化合物が好ましく使用されるが、中でも得られるポリエチレンテレフタレートの外観上、マンガン化合物が特に好ましい。
重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、錫化合物等の反応系に可溶な化合物が単独又は組み合わせて使用される。重縮合触媒としては、色調及び透明性等の観点から二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。これらの重縮合触媒には重合中の分解反応を抑制するために安定剤を併用してもよく、安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート酸性リン酸エステル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等のリン化合物の1種又は2種以上が好ましい。
上記の触媒の使用割合は、全重合原料中、触媒中の金属の重量として、通常1〜2000ppm、好ましくは3〜500ppmの範囲とされ、安定剤の使用割合は、全重合原料中、安定剤中のリン原子の重量として、通常10〜1000ppm、好ましくは20〜200ppmの範囲とされる。触媒及び安定剤の供給は、原料スラリー調製時の他、エステル化反応又はエステル交換反応の任意の段階において行うことができる。更に、重縮合反応工程の初期に供給することもできる。
エステル化反応又はエステル交換反応時の反応温度は、通常240〜280℃であり、反応圧力は通常、大気に対する相対圧力として0.2〜3kg/cmG(20〜300kPa)である。また、重縮合時の反応温度は、通常250〜300℃であり、反応圧力は通常、絶対圧力として500〜0.1mmHg(67〜0.013kPa)である。この様なエステル化又はエステル交換反応及び重縮合反応は、一段で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。この様にして得られるポリエチレンテレフタレートは、極限粘度が通常0.45〜0.70dl/gであり、常法によりチップ化される。このチップの平均粒径は、通常2.0〜5.5mm、好ましくは2.2〜4.0mmの範囲とされる。
次に、上記の様に溶融重縮合により得られたポリマーは、通常固相重合に供される。固相重合に供されるポリマーチップは、予め固相重合を行う温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重合に供されてもよい。この様な予備結晶化は、(a)乾燥状態のポリマーチップを、通常120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度で1分間〜4時間加熱する方法、(b)乾燥状態のポリマーチップを、水蒸気又は水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、通常120〜200℃の温度で1分間以上加熱する方法、(c)水、水蒸気又は水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で吸湿させ調湿したポリマーチップを、通常120〜200℃の温度で1分間以上加熱する方法等によって行うことができる。ポリマーチップの調湿は、その含水分が通常100〜10000ppm、好ましくは1000〜5000ppmの範囲となる様に実施される。調湿したポリマーチップを結晶化や固相重合に供することにより、PETに含まれるアセトアルデヒドや微量に含まれる不純物の量を一層低減化することが可能である。
固相重合工程は、少なくとも一段からなり、通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃の重合温度、通常1kg/cmG〜10mmHg(絶対圧力として200〜1.3kPa)、好ましくは0.5kg/cmG〜100mmHg(絶対圧力として150〜13kPa)の重合圧力の条件下、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガス流通下で実施される。固相重合時間は、温度が高いほど短時間でよいが、通常1から50時間、好ましくは5〜30時間、更に好ましくは10〜25時間である。固相重合により得られたポリマーの極限粘度は、通常0.70〜0.90dl/gの範囲である。
本発明に用いるポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、適宜選択して決定すればよいが、通常0.5〜2dl/g、中でも0.6〜1.5dl/g、特には0.7〜1.0dl/gであることが好ましい。固有粘度を0.5dl/g以上、特には0.7dl/g以上とすることで、本発明の樹脂組成物(A)における機械的特性や、滞留熱安定性、耐薬品性、耐湿熱性が向上する傾向にあり好ましい。逆に固有粘度を2dl/g以下、特には1.0dl/g以下とすることで樹脂組成物の流動性が向上する傾向にあり好ましい。
本発明において、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、フェノール/テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃で測定した値である。
本発明に用いるポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基の濃度は、通常1〜60μeq/gであり、中でも3〜50μeq/g、更には5〜40μeq/gであることが好ましい。末端カルボキシル基濃度を60μeq/g以下とすることで、樹脂組成物の機械的特性が向上する傾向にあり、逆に末端カルボキシル基濃度を1μeq/g以上とすることで、樹脂組成物の耐熱性、滞留熱安定性や色相が向上する傾向にあり、好ましい。
なお、ポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度は、ベンジルアルコール25mLにポリエチレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定することにより求めることができる。
本発明で用いるポリエチレンテレフタレートは、上述のようなポリエチレンテレフタレートに重縮合触媒の失活処理を施したものであることが好ましい。
即ち、前述の如く、ポリカーボネート樹脂にポリエステル樹脂を複合化して得られる樹脂組成物は熱安定性が悪く、成形工程においてシリンダー内で高温に保持されることにより、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とでエステル交換反応を起こし、反応による分解ガスの発生で泡、シルバーと称される成形品の外観不良の原因となる;ポリカーボネート樹脂の分子量低下によりポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性、耐熱変形性等が損なわれる;更には、高温下での滞留によりポリカーボネート樹脂組成物の粘度変化が生じることにより射出成形時の成形安定性が損なわれ、成形品のショートショットやバリが発生する;といった問題が起こる。
この滞留熱劣化の問題は、ポリエチレンテレフタレートの製造工程で使用され、製品として提供されるポリエチレンテレフタレート中に含有される重縮合触媒に起因するものであり、従って、ポリエチレンテレフタレートとして、この重縮合触媒を失活させたポリエチレンテレフタレートを用いることにより、滞留熱劣化を抑制することができる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂の重縮合触媒の失活処理方法としては、特に制限はなく、用いた重縮合触媒に応じて従来公知の失活処理を施すことができる。この失活処理方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
重縮合触媒の失活処理方法1:ゲルマニウム触媒の熱水(蒸気)処理
ポリエチレンテレフタレートを熱水(蒸気)処理してポリエチレンテレフタレート中のゲルマニウム触媒を失活させる方法。
具体的には、ポリエチレンテレフタレートを容器に充填し、70〜150℃、例えば約100℃の水蒸気をポリエチレンテレフタレートに対して毎時1〜100質量%の量で5〜6000分間通蒸して、蒸気処理を行った後乾燥する。
ポリエチレンテレフタレートを容器内でポリエチレンテレフタレートの0.3〜10重量倍の蒸留水に浸漬させ、次に、ポリエチレンテレフタレート及び蒸留水が入った容器を外部より加熱し、内温を70〜110℃にコントロールし、3〜3000分間保持して熱水処理を行なった後、脱水し、乾燥する。
上記乾燥は、通常、窒素等の不活性ガス中、120〜180℃で3〜8時間行われる。
重縮合触媒の失活処理方法2:チタニウム触媒へのリン化合物添加
ポリエチレンテレフタレートにリン化合物を添加して、ポリエチレンテレフタレート中のチタニウム触媒を失活させる。この場合、リン原子の添加量は、ポリエチレンテレフタレートの重量を基準として7〜145ppmの範囲であることが好ましい。リン化合物の添加量が7ppm以上であると、触媒の失活を十分に行って、目的とする効果を得ることができ、リン原子の添加量が145ppm以下であると、リン化合物自体が粗大凝集粒子となって、外観不良や耐衝撃性の低下といった問題が生じることが防止される。
なお、添加するリン化合物としては、従来公知のリン酸エステル化合物類や亜リン酸エステル化合物類、そしてホスホネート化合物類等が挙げられる。中でも下記一般式(2)で表されるホスホネート化合物が好適である。
OC(O)XP(O)(OR …(2)
(式中、R及びRは炭素数1〜4のアルキル基、Xは−CH−又は−CH(Y)−(Yはフェニル基を示す。)であり、R及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
上記式(2)で表されるホスホネート化合物の中でも、アルキルホスホネート化合物が好ましく例示され、これらの中でも特にトリエチルホスホノ酢酸が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリエチレンテレフタレートの重縮合触媒の失活処理方法は、本発明で採用し得る失活処理の一例であって、本発明に係る失活処理は何ら上記の方法に限定されるものではない。
以下において、重縮合触媒の失活処理を施したポリエチレンテレフタレートを「失活PET」と称し、未処理のポリエチレンテレフタレートを「未処理PET」と称す。
本発明で用いる失活PETは、上述のようなポリエチレンテレフタレート中の重縮合触媒の失活処理がなされることによって、下記式(1)で算出される固相重合速度Ksが0.006(dl/g・hr)以下、特に0.005(dl/g・hr)以下、とりわけ0.001〜0.004(dl/g・hr)程度となったものが好ましい。
固相重合速度Ks=([η]s−[η]m)/T …(1)
ここで、[η]sは、当該ポリエチレンテレフタレートを窒素気流下210℃で3時間保持した後の該ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(dl/g)であり、[η]mは、当該ポリエチレンテレフタレートを窒素気流下210℃で2時間保持した後の該ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(dl/g)である。Tは1(時間)である。即ち、本発明では、窒素気流下210℃にて3時間保持した後の固有粘度を[η]s、そして同条件下で2時間保持した後の固有粘度を[η]mとし、これらの値を用いて、上述した(1)式により算出した固相重合速度Ksを、固相重合速度Ksとした。そしてTは1時間となる。
失活PETの固相重合速度Ksが0.006(dl/g・hr)以下であると、重縮合触媒の失活処理が十分であり、滞留熱劣化の抑制効果を十分に得ることができる。ただし、固相重合速度Ksを過度に小さくすることは困難であり、通常0.001(dl/g・hr)以上である。
<ポリブチレンテレフタレート>
ポリエステル樹脂(A2)としては、ポリブチレンテレフタレートを用いてもよい。ここで、ポリブチレンテレフタレートとは、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する樹脂をいう。本発明では、ジカルボン酸単位の50モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジオール成分の50モル%以上が1,4−ブタンジオール単位であるポリブチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。全ジカルボン酸単位中のテレフタル酸単位の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最適には98モル%以上である。全ジオール単位中の1,4−ブタンジオール単位の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、最適には98モル%以上である。テレフタル酸単位又は1,4−ブタンジオール単位が上記範囲であると、結晶化速度が適切な範囲であるので、成形性が良好となる。
上記した通り、ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。テレフタル酸以外のジカルボン酸については特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;などを挙げることができる。これらのジカルボン酸単位は、ジカルボン酸、又は、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料として用いることで、ポリマー骨格に導入できる。
上記した通り、ポリブチレンテレフタレートは、1,4−ブタンジオール以外のジオール単位を含んでいてもよい。1,4−ブタンジオール以外のジオールについては特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール;等を挙げることができる。
ポリブチレンテレフタレートは、更に、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能化合物;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能化合物;などから誘導される単位を含んでいてもよい。
本発明に用いるポリブチレンテレフタレートの固有粘度については特に制限はないが、機械的性質の観点から下限値が、成形加工性の観点から上限値が決定されてもよい。ポリブチレンテレフタレートの固有粘度は、0.70〜3.0dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.80〜1.5dl/g、特に好ましくは0.80〜1.2dl/gである。固有粘度が、前記範囲であると、良好な機械的性質を発揮できるとともに、良好な成形加工性が得られる。なお、上記固有粘度の値は、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)の混合溶媒を用いて、温度30℃で測定した値である。
本発明では、固有粘度の異なる2種以上のポリブチレンテレフタレートを併用してもよい。
本発明に用いるポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度は、120eq/Ton以下であることが好ましく、更に好ましくは2〜80eq/Ton、特に好ましくは5〜60eq/Tonである。末端カルボキシル基濃度が120eq/Ton以下であると、耐加水分解性及び流動性が良好になり、また2eq/Ton以上であるのが、生産性の観点から好ましい。末端カルボキシル基濃度は、ポリブチレンテレフタレートをベンジルアルコールに溶解し、0.1N(mol/L)の水酸化ナトリウムの水溶液にて滴定して求めることができ、上記値は、106g当たりのカルボキシル基当量である。
{樹脂成分}
本発明の組成物(A)の樹脂成分は、好ましくは前述の芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂の1種又は2種以上と、上述の失活PET等のポリエステル樹脂(A2)の1種又は2種以上とからなり、本発明の組成物(A)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)100質量部に対してポリエステル樹脂(A2)を1〜100質量部、好ましくは10〜80質量部、とりわけ好ましくは25〜60質量部含有する。
ポリカーボネート樹脂に対するポリエステル樹脂の含有割合が上記下限値以上であることにより、ポリエステル樹脂を配合することによる耐薬品性の向上効果を十分に得ることができ、上記上限値以下であることにより、ポリカーボネート樹脂本来の特性が損なわれることなく良好な耐衝撃性や熱安定性等の物性を得ることができる。
{無機充填材(A3)}
本発明の組成物(A)に用いる無機充填材(A3)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、これらのミルドファイバー、並びにスラグ繊維、ロックウール、ウォラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、ボロンウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムウイスカーなどの繊維状無機充填材や、ガラスフレーク、ガラスビーズ、黒鉛、タルク、マイカ、カオリナイト、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイトなどの珪酸塩化合物、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機フィラーが挙げられ、これらのうち、特に補強効果と物性及び外観のバランスが優れていることから、ガラス繊維、タルク、ウォラストナイトが好ましい。これらの無機充填材は、例えば、金属コートガラス繊維や金属コート炭素繊維などのように異種材料で表面を被覆したものであってもよい。これらの無機充填材は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下に、無機充填材(A3)として好適なタルクについて説明する。
本発明で用いるタルクとしては、平均粒子径が0.1〜10μmのタルクを嵩密度が0.4〜1.5g/mlとなるように造粒してなる顆粒状タルクが好ましく、特に、その粒度として目開き500μm篩上の割合が55質量%以上であるものが好ましい。
本発明に好ましく用いられる顆粒状タルクは、層状構造を持つ含水ケイ酸マグネシウムであって、化学式は4SiO・3MgO・HOで表され、通常、SiOを58〜66質量%、MgOを28〜35質量%、HOを約5質量%含んでいる。その他少量成分としてFeが0.03〜1.2質量%、Alが0.05〜1.5質量%、CaOが0.05〜1.2質量%、KOが0.2質量%以下、NaOが0.2質量%以下等を含有しており、比重は約2.7である。
本発明に好ましく用いられる顆粒状タルクは、平均粒子径0.1〜10μmのタルク(以下、「原料タルク」と言うことがある。)を造粒したものであり、この原料タルクの平均粒子径は、中でも0.5〜8μm、さらには1〜5μmであることが好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であることにより、補強効果が十分であり、また樹脂組成物混練時の作業性が良好なものとなる。逆に、平均粒子径が上記上限値以下であると、製品外観に悪影響がなく、ピンホールが防止され、更に耐衝撃性も十分なものとなる。最も好ましい平均粒子径は1〜4μm、特に2〜4μmである。
なお、本発明における平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるD50をいい、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定される。
また、本発明に好ましく用いられる顆粒状タルクは、樹脂との親和性を高めるために、表面処理が施されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類、トリエチルアミン等のアルカノールアミン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、流動パラフィン等の炭化水素系滑剤、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸、ポリグリセリン及びそれらの誘導体、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニュウム系カップリング剤等のカップリング剤から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
また、本発明に好ましく用いられる顆粒状タルクの嵩密度は通常0.4〜1.5g/mlであり、中でも0.5〜1.3g/ml、特に0.6〜1.1g/mlであることが好ましい。嵩密度を0.4g/ml以上とすることで樹脂組成物の押出加工性、難燃性、耐衝撃性、熱安定性がより向上する傾向にあり、一方、嵩密度を1.5g/ml以下とすることで樹脂組成物の成形品外観や耐衝撃性がより向上する傾向にある。
ここで嵩密度とは、以下の方法により求めた値である。
(1)顆粒状タルクを目開きが1.4mmの篩上に載せ、ハケで均等に軽く掃きながら篩を通す。
(2)篩に通した顆粒状タルクをJIS K5101に規定された嵩密度測定装置に付属する受器に山盛りになるまで投入する。
(3)受器の投入口から上部の山盛りになった顆粒状タルクをヘラで削り取り、受器内の顆粒状タルクの重量を測定し、下式にて嵩密度を算出する。
嵩密度(g/ml)=受器内の顆粒状タルクの重量(g)/受器の容量(ml)
また、本発明に好ましく用いられる顆粒状タルクの粒度は、目開き500μm篩上の割合が55質量%以上のものであり、中でも60質量%以上、さらには70質量%以上、特に90質量%以上であることが好ましい。顆粒状タルクの粒度において、目開き500μm篩上の割合が55質量%以上とすることで、本発明の組成物(A)の難燃性や熱安定性が、より向上する傾向にある。
ここで顆粒状タルクの粒度は、JIS Z8801に準拠して、以下の方法により求めた値である。
(1)顆粒状タルクを目開きが2mmの篩上に載せ、ハケで均等に軽く掃きながら篩を通す。
(2)篩に通した上記顆粒状タルクを200mlのビーカー一杯に入れ、吉田製作所製試料縮分器「1305
6号」(溝幅6mm)を用いて、30ml程度になるまで縮分を行う。
(3)目開き500μmの篩を用いて、縮分した上記顆粒状タルクの篩分けを行い、500μmの篩を通過しないもの(篩上)の重量を求め、全体量からの割合を求める。なお、篩分けは、筒井理化学器機製「電磁式振動篩い器M−100形」を用い、振動数120回/秒で10分間行う。
前述の原料タルクを用いた、本発明に好ましく用いられる顆粒状タルクの製造方法(造粒方法)は任意であり、従来公知の任意の造粒方法を使用できる。例えば、バインダーを用いて造粒したものが樹脂組成物の難燃性、熱安定性、耐衝撃性、剛性の点から好ましい。
本発明に好ましく用いられる顆粒状タルクを製造する際に用いるバインダーとしては、原料タルクとの造粒性が高く、無色又は白色に近く、不活性で安定な物質であり、樹脂成形体の物性を低下させないものであれば望ましい。例えば、ベントナイトなど湿潤状態下で高い粘結性を示す粘土鉱物、コロイダルシリカ、石膏、水溶性高分子、ワックス、高級脂肪酸、樹脂粉末などが挙げられる。中でも樹脂組成物の熱安定性、耐衝撃性、剛性の点から、粘土鉱物、水溶性高分子が好ましく、特に水溶性高分子が好ましい。
水溶性高分子としては、例えば水溶性ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、寒天、多糖類(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロプルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、「CMC」と略記することがある。)等のセルロース系誘導体や澱粉等)、タンパク質(ゼラチン、膠等)等が挙げられる。
中でも、粘結性が高く、タルクとの吸着性の高い水溶性ポリエステル樹脂、多糖類、タンパク質が好ましく、更には樹脂組成物の難燃性や耐衝撃性の点から、水溶性ポリエステル樹脂、CMCが好ましく、特に水溶性ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明において、バインダーとして好ましく用いられる水溶性ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸類又はその反応性誘導体からなるジカルボン酸成分と、ジオ−ル類又はそのエステル誘導体からなるジオ−ル成分と、水溶性付与成分とを原料主成分とし、これらを縮合反応させることにより得られる共重合体であり、水に対する溶解度を有するものを言う。水に対する溶解度は、適宜選択して決定すれば良く、水溶性付与成分の含有量で調整することができる。
水溶性ポリエステル樹脂の原料であるジカルボン酸類としては、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸のいずれでもよいが、樹脂組成物の耐熱性等の点から、芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'−ビフェニルエ−テルジカルボン酸、4,4'−ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4'−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4'−p−タ−フェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、5−メチルイソフタル酸などのアルキル基置換体など)や反応性誘導体(例えばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなどのアルキルエステル誘導体など)等を用いることもできる。
中でもテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及びこれらのアルキルエステル誘導体が好ましい。これら芳香族ジカルボン酸は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよく、該芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等の1種以上併用してもよい。
水溶性ポリエステル樹脂の原料であるジオ−ル類としては、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、デカメチレングリコ−ル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、シクロヘキサンジオ−ル、トランス−又はシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオ−ル等の脂環族ジオ−ル類;p−キシレンジオ−ル、ビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ジオ−ル類等を挙げることができ、これらの置換体も使用することができる。
中でも、樹脂組成物の耐熱性の点から、エチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好ましく、更にはエチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、特にエチレングリコ−ルが好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。またジオ−ル成分として、分子量400〜6000の長鎖ジオ−ル類、つまりポリエチレングリコ−ル、ポリ−1,3−プロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等の1種以上をジオ−ル類と併用して共重合させてもよい。
水溶性ポリエステル樹脂の原料である水溶性付与成分としては、例えば金属スルホネート基を有するジカルボン酸類、ポリエチレングリコール等が挙げられ、中でも耐熱性の点から金属スルホネート基を有するジカルボン酸類が好ましい。
金属スルホネート基を有するジカルボン酸類としては、例えば5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホナフタレン−2,6−ジカルボン酸等のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩又はこれらのエステル形成性誘導体が挙げられ、水溶性の点から5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はそのエステル誘導体が好ましい。
金属スルホネート基を有するジカルボン類の含有量としては、少なすぎると得られるポリエステル樹脂の水溶性が不十分となり、逆に多すぎても、水溶性ポリエステル樹脂の耐熱性が不十分となることがあるので、この含有量は、水溶性ポリエステル樹脂の原料である全カルボン酸成分に対して、1〜40モル%であることが好ましく、中でも5〜35モル%であることが好ましい。
このような水溶性ポリエステル樹脂の好適な具体例としては、テレフタル酸、エチレングリコール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸からなる共重合体が挙げられ、互応化学工業社製「プラスコートZ−221」「プラスコートZ−561」「プラスコートZ−446」等が挙げられる。
本発明においてバインダーとして用いられるCMCとは、例えば、天然パルプを原料として水酸化ナトリウムでアルカリセルロースとし、モノクロル酢酸でエーテル化したものである。その製法には溶媒法、水媒法がある。CMCの性質は、無水グリコールを単位とした重合度及びエーテル化度により変化する。本発明で用いるCMCとしては、造粒性、水への溶解性、水溶液の粘性の点から、平均重合度100〜500、エーテル化度0.5〜1.7、1%水溶液の粘度(25℃、B型粘度計)10〜500mPa・sのものが好ましい。
本発明に用いる、顆粒状タルクにおけるバインダー含有量は、顆粒状タルク100質量%中、0.01〜5質量%であることが好ましく、中でも0.05〜3.5質量%、特に0.1〜3質量%であることが好ましい。バインダー含有量を0.01質量%以上とすることで、顆粒状タルクが崩れ難くなり、樹脂組成物の難燃性や熱安定性、耐衝撃性がより向上する傾向となる。一方、バインダー含有量を5質量%以下とすることで樹脂組成中への分散が良好となり、樹脂組成物の成形品外観や耐衝撃性が向上する傾向にある。
バインダーによる顆粒状タルクの製造方法は任意であり、特に制限はないが、タルクとバインダーとの混練性を高めるとともに、顆粒製造時における混練物に可塑性を与え、製造を容易にし、かつ、造粒機の摩耗を低減し、さらに顆粒状物の硬さを調製するために湿潤剤を加えることが好ましい。通常、タルクとバインダーとに潤滑剤を加え、また、必要に応じて分散剤やその他の添加剤を加えて、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で撹拌しながら混合物とする。
この混合物を一軸や二軸等のスクリュー式押出機等で混練後、ストランド状に押出し、カッティングして造粒し、流動式乾燥機やバンドヒーター等を用いて乾燥して、顆粒状タルクを製造する。乾燥した後に分級を行うこともできる。
顆粒状タルクの大きさや形状は、棒状、円柱状、針状、球状、粒状、フレーク状、不定形等特に制限はなく、用途に応じて成形条件や整粒条件により種々のものを製造できる。例えば、棒状又は円柱状粒子を製造する場合、スクリーン式押出成形機のスクリーン目開きの大きさを変えることで軸径を適宜設定でき、成形後整粒して所望の軸長に裁断することができる。
上記の嵩密度及び粒度の範囲内であれば、その大きさにも特に制限はないが、溶融混練や成形に用いる樹脂ペレットより小さい方が溶融混練機や成形機で分散する際に有利である。例えば、棒状や円柱状の顆粒状タルクでは、平均軸径が0.2〜6mm、平均軸長が2〜6mmにするのが好ましく、平均軸径:平均軸長の比が1:0.5〜2の範囲内のものがさらに好ましい。
本発明で用いる潤滑剤としては、水や有機溶媒等があるが、価格や作業性の点から水が好ましく、水にアルコール類を混合してもよい。湿潤剤である水に、予めバインダーを溶解させたり、懸濁させることも可能で、他にも顆粒状物に必要とする添加剤等、例えば分散剤、界面活性剤、各種合成樹脂用添加剤、染顔料等を溶解又は懸濁させて用いることにより、より均一性を高めることができる。また、潤滑剤として水を用いた場合、流動式乾燥機等を用いて含まれた水分を乾燥して含水率を1質量%以下、中でも0.3質量%以下とすることが好ましい。乾燥温度は通常80〜150℃であり、中でも80〜110℃であることが好ましい。
潤滑剤の配合率は、タルクとバインダーの合計100質量部に対して通常10〜150質量部であり、中でも15〜100質量部、特に20〜60質量部であることが好ましい。潤滑剤の配合率が10質量部未満では効果が小さく、150質量部を超えると潤滑剤の除去に時間とエネルギーがかかり過ぎる場合がある。
本発明では、顆粒状タルクに分散剤を0.05〜2.0質量%、好ましくは0.1〜0.5質量%配合すれば、顆粒状タルクの樹脂組成物成形品中での分散性が向上するので好ましい。用いる分散剤は一般に知られるもので良く、例えば前述のようなアルコール類、アルカノールアミン、有機シリコーン系化合物、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、炭化水素系滑剤、塩基性アミノ酸、ポリグリセリン及びそれらの誘導体が挙げられる。本発明においては、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができ、前述の表面処理を行ったタルクを用い、さらに分散剤を加えて造粒してもよい。
さらに、本発明で用いる顆粒状タルクには、必要に応じて本発明の特徴を損なわない範囲で、分散剤の他に種々の添加剤を配合してもよい。そのような添加剤として具体的には、ヒンダードフェノール系等の各種酸化防止剤、ホスファイト系等の各種熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の各種紫外線吸収剤、リン酸エステル系、シリコーン系、金属塩系等の各種難燃剤、オレフィンワックス系、脂肪酸エステル系等の各種離型剤、フェノール系等の抗菌・抗カビ剤、アニオン系、カチオン系、非イオン系等の帯電防止剤、着色剤、タルク以外の充填剤、光安定剤、可塑剤、発泡剤等が挙げられる。もちろん、これらの添加剤は複数種配合することも可能である。
本発明の組成物(A)における無機充填材(A3)の含有割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)100質量部に対して1〜60質量部、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部である。
無機充填材(A3)の含有割合が上記下限値以上であることにより、無機充填材を配合したことによる寸法安定性や剛性の改良効果を十分に得ることができ、上記上限値以下であることにより、無機充填材の過剰配合による衝撃強度の低下の問題を防止することができる。
なお、本発明において、無機充填材(A3)は、寸法安定性、剛性の改良だけでなく、熱滞留時の樹脂組成物の増粘の抑制にも有効である。特に、無機充填材(A3)としては、表面処理が施されて樹脂成分との密着性が向上されたものを用いることで、熱滞留時の無機充填材(A3)の分散不良が抑制され、凝集による増粘を抑制し、ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物の成形安定性を改良することが出来、好ましい。
{ゴム性重合体(A4)}
本発明の組成物(A)に用いるゴム性重合体(A4)は、ガラス転移温度が0℃以下、中でも−20℃以下のゴム性重合体又はこれと共重合可能な単量体成分を共重合した共重合体であり、一般にポリカーボネート樹脂組成物等に配合されて、その機械的特性を改良し得る、従来公知の任意のものを使用することができる。
ゴム性重合体(A4)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム等)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム;ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム等)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」を意味し、後述の「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」を意味する。
かかるゴム性重合体に必要に応じ共重合される単量体成分としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が好適に挙げられる。その他の単量体成分としては、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物及びそれらの無水物、例えば無水マレイン酸等を挙げることができる。これらの単量体成分についても、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物の成形安定性の改良には、中でも、ゴム性重合体としてコア/シェル型グラフト共重合体タイプのエラストマーを用いることが好ましい。とりわけブタジエン含有ゴム、ブチルアクリレート含有ゴム、2−エチルヘキシルアクリレート含有ゴム、シリコーン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム性重合体をコア層とし、その周囲に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、及び芳香族ビニル化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体成分を共重合して形成されたシェル層からなるコア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。より具体的には、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPN(interpenetrating polymer network)ゴム)重合体等の、シェル層がポリメチルメタクリレート(PMMA)系重合又は共重合体ブロックからなるコア/シェル型ゴム性重合体を挙げることができる。
このようなコア/シェル型ゴム性重合体としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製のパラロイドEXL2315、EXL2602、EXL2603などのEXLシリーズ、KM330、KM336PなどのKMシリーズ、KCZ201などのKCZシリーズ、三菱レイヨン社製のメタブレンS−2001、SRK−200などが挙げられる。
ゴム性重合体にこれと共重合可能な単量体成分とを共重合したゴム性重合体のその他の具体例としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロツク共重合体(SBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)等が挙げられる。
これらのゴム性重合体(A4)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物(A)におけるゴム性重合体(A4)の含有割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)100質量部に対して0.5〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、とりわけ好ましくは5〜15質量部である。
ゴム性重合体(A4)の含有割合が上記下限値以上であることにより、ゴム性重合体(A4)を配合したことによる衝撃強度の改良効果と成形安定性の改良効果を十分に得ることができ、上記上限値以下であることにより、ゴム性重合体の過剰配合による熱安定性や剛性の低下を防止することができる。
なお、本発明の組成物(A)においては、特定量のゴム性重合体(A4)の配合で、熱滞留時の樹脂組成物の増粘を抑制することができるという効果も奏される。即ち、ゴム性重合体(A4)の量、そして好ましくは特定のゴム性重合体(A4)を用いることにより、熱滞留時のゴム性重合体(A4)の凝集を抑制して、ゴム性重合体(A4)の凝集による増粘を抑制し、これにより、本発明の組成物(A)の成形安定性を改良とすることができる。
{熱安定剤}
本発明の組成物(A)は、熱安定剤として、リン系熱安定剤及び/又はヒンダードフェノール系熱安定剤を含んでいてもよく、これらの特定の熱安定剤を含むことにより、耐滞留熱劣化性に優れた樹脂組成物を実現することができる。即ち、リン系熱安定剤は、過酸化物の分解作用により、また、ヒンダードフェノール系熱安定剤は過酸化物ラジカルを捕捉する作用により、熱劣化を抑止することができる。
リン系熱安定剤としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル等のリン系熱安定剤が挙げられる。
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニルホスフォナイト等が挙げられる。
上記のリン系熱安定剤の中では、ブトキシエチルアシッドホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物が好ましく、中でもブトキシエチルアシッドホスフェート、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
上記の中では、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つのフェノール系熱安定剤は、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社より、「イルガノックス1010」及び「イルガノックス1076」の名称で市販されている。
リン系熱安定剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤についても1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、リン系熱安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤とを併用してもよい。
これらの熱安定剤を用いる場合、リン系熱安定剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部、特に0.03〜1質量部用いることが好ましい。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部、特に0.03〜1質量部用いることが好ましい。これらの熱安定剤の配合量が上記下限値以上であることにより、熱安定剤を配合することによる滞留熱劣化の抑制効果を十分に得ることができる。ただし、熱安定剤の配合量は多過ぎてもその効果は頭打ちとなり、経済的でない。なお、リン系熱安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤とを併用する場合、各々の熱安定剤を上記配合範囲内とした上で、合計の配合割合が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.05〜2質量部となるように用いることが好ましい。
{その他の成分}
本発明の組成物(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(A2)、無機充填材(A3)、ゴム性重合体(A4)、熱安定剤の他、通常のポリカーボネート樹脂組成物に含有される他の種々の添加剤を含有していてもよい。
含有し得る各種添加剤としては、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、強化剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤・アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。以下、本発明の組成物(A)に好適な添加剤の一例について具体的に説明する。
離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族1価、2価又は3価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中では、好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の1価又は2価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和1価カルボン酸が更に好ましい。係る脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。係るアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。ここで、脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素化合物は部分酸化されていてもよい。これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス又はポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが更に好ましい。数平均分子量は、好ましくは200〜5000である。これらの脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であればよい。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。これらは2種類以上を併用してもよい。
離型剤を用いる場合、本発明の組成物(A)中のその含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.05〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。離型剤の含有量が上記下限値以上であると離型性改善の効果を十分に得ることができ、上記上限値以下であると離型剤の過剰配合による耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などの問題を防止することができる。
紫外線吸収剤の具体例としては、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などの有機紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましい。特に、ベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステルの群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物が挙げられる。また、その他のベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、2−ビス(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール][メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
上記の中では、好ましくは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール2−イル)フェノール]である。
紫外線吸収剤を用いる場合、本発明の組成物(A)中のその含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.05〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記下限値以上であることにより、耐候性の改良効果を十分に得ることができ、上記上限値以下であることにより、モールドデボジット等の問題を確実に防止することができる。
染顔料としては、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、酸化チタン、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料が挙げられる。有機顔料及び有機染料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、熱安定性の点から、カーボンブラック、酸化チタン、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
染顔料の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。染顔料の含有量が5質量部を超える場合は耐衝撃性が十分でない場合がある。
難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ポリスチレンなどのハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等の有機金属塩系難燃剤、ポリオルガノシロキサン系難燃剤などが挙げられるが、リン酸エステル系難燃剤が特に好ましい。
リン酸エステル系難燃剤の具体例としては、トリフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシレニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジキシレニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、4,4’−ビフェノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
難燃剤を用いる場合、本発明の組成物(A)中のその含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、更に好ましくは0.3〜15質量部である。難燃剤の含有量が上記下限値以上であることにより十分な難燃性を得ることができ、上記上限値以下であることにより、難燃剤の過剰配合による耐熱性の低下を確実に防止することができる。
滴下防止剤としては、例えば、ポリフルオロエチレン等のフッ素化ポリオレフィンが挙げられ、特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これは、重合体中に容易に分散し、且つ、重合体同士を結合して繊維状材料を作る傾向を示す。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。ポリテトラフルオロエチレンは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば三井・デュポンフロロケミカル社より、「テフロン(登録商標)6J」又は「テフロン(登録商標)30J」として、ダイキン工業社より「ポリフロン(商品名)」として市販されている。
滴下防止剤を用いる場合、本発明の組成物(A)中のその含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対し、通常0.1〜2質量部、好ましくは0.2〜1質量部である。滴下防止剤の配合量が多過ぎると成形品外観の低下が生じる場合がある。
なお、本発明の組成物(A)には、ポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂と前述のゴム性重合体以外の他の樹脂成分やゴム成分が含まれていてもよい。この場合、他の樹脂ないしゴム成分としては、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらの他の樹脂ないしゴム成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との併用による効果を十分に確保する上で、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して30質量部以下とすることが好ましい。
{組成物(A)の製造方法}
本発明に好適なポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、無機充填材、ゴム性重合体、その他必要に応じて用いられるリン系熱安定剤及び/又はヒンダードフェノール系熱安定剤や他の添加剤を用いて、従来公知の任意の方法を適宜選択して製造することができる。
具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、無機充填材、ゴム性重合体、並びに必要に応じて配合される添加剤を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練して樹脂組成物を製造することができる。また、各成分を予め混合せずに、又は、一部の成分のみ予め混合してフィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して樹脂組成物を製造することもできる。
[ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)]
本発明の組成物(B)は、無機充填材を含み、かつ、以下の条件(I)及び(II)を満たすものであるが、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)100質量部に対し、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレート(B2)1〜100質量部、無機充填材(B3)1〜60質量部、及びゴム性重合体(B4)0.5〜30質量部を含有する。
(I) ポリエステル樹脂として、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレートを含有する。
(II) ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)とポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)のMVR(メルトボリュームレート、JIS K7210に準拠し、温度300℃、荷重11.8Nで測定した値:cm/10min)をそれぞれMVR(A),MVR(B)としたときに、MVR(B)がMVR(A)に対して5〜120%大きい。
{ポリカーボネート樹脂}
本発明の組成物(B)に用いられるポリカーボネート樹脂としては、前述の本発明の組成物(A)に用いられるポリカーボネート樹脂を用いることができ、その好適な芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)についても芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)の説明をそのまま適用することができる。
{重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレート(B2)}
本発明の組成物(B)に用いられる重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレート(B2)としては、前述の本発明の組成物(A)において好適に用いられる前述の失活PETを用いることができ、その説明をそのまま適用することができる。
本発明の組成物(B)において、ポリエステル樹脂として失活PETを用いることは極めて重要であり、ポリエステル樹脂として失活PETを用いることにより、滞留熱劣化を抑制して、良好な機械的特性、成形安定性を得ることができる。特に、後述のように、本発明の組成物(A)から加熱加圧工程を経て本発明の組成物(B)を製造する場合、この失活PETによる耐滞留熱劣化性が有効に機能する。
{樹脂成分}
本発明の組成物(B)の樹脂成分は、好ましくは前述の芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)等のポリカーボネート樹脂の1種又は2種以上と、失活PET(B2)の1種又は2種以上とからなり、本発明の組成物(B)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)等のポリカーボネート樹脂100質量部に対して失活PET(B2)を1〜100質量部、特に10〜80質量部、とりわけ25〜60質量部含有することが好ましい。
ポリカーボネート樹脂に対する失活PETの含有割合が上記下限値以上であることにより、PETを配合することによる耐薬品性の向上効果を十分に得ることができ、上記上限値以下であることにより、ポリカーボネート樹脂本来の特性が損なわれることなく良好な耐衝撃性や熱安定性等の物性を得ることができる。
{無機充填材(B3)}
本発明の組成物(B)に用いられる無機充填材(B3)としては、前述の本発明の組成物(A)に用いられる無機充填材(A3)を用いることができ、好適な無機充填材や配合量についても前述の本発明の組成物(A)におけるものと同様である。
{ゴム性重合体(B4)}
本発明の組成物(B)に用いられるゴム性重合体(B4)としては、前述の本発明の組成物(A)に用いられるゴム性重合体(A4)を用いることができ、好適なゴム性重合体や配合量についても前述の本発明の組成物(A)におけるものと同様である。
{熱安定剤}
本発明の組成物(B)は、本発明の組成物(A)と同様に熱安定剤を含んでいてもよく、その熱安定剤としては、前述の本発明の組成物(A)に用いられる熱安定剤を用いることができ、好適な熱安定剤や配合量についても前述の本発明の組成物(A)におけるものと同様である。
{その他の成分}
本発明の組成物(B)は、本発明の組成物(A)と同様にその他の成分を含んでいてもよく、その他の成分としては、前述の本発明の組成物(A)に用いられるその他の成分を用いることができ、好適なその他の成分や配合量についても前述の本発明の組成物(A)におけるものと同様である。
{組成物(B)の組成}
本発明の組成物(B)は、本発明の組成物(A)とその構成成分が実質的に同一であることが好ましい。
ここで、構成成分が実質的に同一であるとは、組成物の調製に、同一の材料を同一の配合組成で混合して得られ、熱履歴の差異等により、前述の条件(II)を満たすようになったものをさし、特に、加熱により揮発する成分の差異のみ、或いは、主構成成分である樹脂成分の若干の分子量の差異があるのみで、樹脂成分や不揮発成分については同組成であることをさす。
このような本発明の組成物(B)は、例えば、前述の方法により製造された本発明の組成物(A)に再度熱と圧力を付与してペレット化することにより、例えば本発明の組成物(A)を溶融混練し、成形して得られた樹脂成形体を破砕することにより、或いは本発明の組成物(A)を溶融混練し、単に冷却して破砕することにより、得ることができるが、本発明の組成物(B)は、このような加熱加圧を経ていないバージン材であってもよい。このバージン材としての本発明の組成物(B)の製造方法は、前述の本発明の組成物(A)の製造方法と同様である。
{MFR}
本発明の組成物(A)と組成物(B)は、それぞれのMVR(メルトボリュームレート、JIS K7210に準拠し、温度300℃、荷重11.8Nで測定した値:cm/10min)をMVR(A),MVR(B)としたときに、MVR(B)がMVR(A)に対して5〜120%大きいことを必須とする。
即ち、以下の式で算出されるMVRの高さ率(%)が5〜120%である。
MVRの高さ率(%)=(MVR(B)−MVR(A))/MVR(A) ×100
このMVRの高さ率(%)は、中でも10〜115%、特に20〜115%であることが好ましい。このMVRの高さ率(%)が低すぎると成形品の外観改良への効果が小さく、フローマークやピンホール等が出る場合があり、高すぎてもバリや、金型内のエアの巻き込みによるシルバーの発生が多くなったりすることがある。
なお、本発明の組成物(A)のMVR(A)は3〜15cm/10min、特に4〜12cm/10min、とりわけ5〜10cm/10minであることが好ましい。本発明の組成物(A)のMVR(A)が上記下限値以上であることにより、流動性に優れた本発明の組成物(A/B)を得ることができ、上記上限値以下であることにより、耐衝撃性、耐湿熱性に優れた本発明の組成物(A/B)を得ることができる。
[本発明のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A/B)]
本発明の組成物(A/B)は、前述の本発明の組成物(A)100質量部に対して本発明の組成物(B)を5〜50質量部配合してなるものである。
ここで、本発明の組成物(A)に対し本発明の組成物(B)が少なすぎると外観改良への効果が小さく、フローマークやピンホール等が出る場合があり、多すぎるとバリになったり、成形品の機械的強度が低下する場合がある。好ましい配合割合は、本発明の組成物(A)100質量部に対して、本発明の組成物(B)を10〜50質量部、特に10〜45質量部、とりわけ20〜30質量部である。
本発明の組成物(A)と本発明の組成物(B)とを混合して得られる本発明の組成物(A/B)のMVR(メルトボリュームレート、JIS K7210に準拠し、温度300℃、荷重11.8Nで測定した値)は、5〜20cm/10min、中でも6〜20cm/10min、特に7〜15cm/10minであることが好ましい。
本発明の組成物(A/B)のMVRが上記上限値以下であることにより、耐衝撃性や耐湿熱性が良好となり、上記下限値以上であることにより、流動性が良好となり、残留歪みを抑えて、耐薬品性に優れた成形品を得ることができる。
従って、本発明の組成物(A/B)を調製する際には、前述のMVRの高さ率だけでなく、本発明の組成物(A)及び本発明の組成物(B)の各々のMVR(A),MVR(B)の値も考慮して、上記の配合範囲内で適当なMVRとなるようにその混合割合を適宜調整することが好ましい。
[ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂成形品]
本発明の組成物(A/B)から成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、多色射出成形法、ガスアシスト射出成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱冷却金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などを採用することができる。また、各種射出成形法においてはホットランナー方式を用いた成形法を選択することもできる。
また、本発明の組成物(A/B)を他の熱可塑性樹脂組成物と多色複合成形して複合成形品とすることもできる。
本発明の組成物(A/B)は、前述の如く、その優れた流動性により、射出成形、とりわけガスアシスト射出成形による中空成形品の成形に好適である。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において用いた原料成分は次のとおりである。
[ポリカーボネート樹脂]
(1)PC−A:
界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロン(登録商標)E−2000」、粘度平均分子量:28,000、末端ヒドロキシル基含有量:150ppm
(2)PC−B:
界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロン(登録商標)S−3000」、粘度平均分子量:22,000、末端ヒドロキシル基含有量:150ppm
(3)PC−C:
界面重合法で製造されたビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロン(登録商標)H−3000」、粘度平均分子量:20,000、末端ヒドロキシル基含有量:150ppm
[ポリエステル樹脂]
(1)未処理PET−1:
重縮合触媒として二酸化ゲルマニウム触媒を用いたポリエチレンテレフタレート 三菱化学(株)製「GG500S」、固有粘度[η]:0.76dl/g、末端カルボキシル基濃度AV:28μeq/g、ET比率:97.8当量%、固相重合速度Ks:0.0085dl/g・hr(物性値はいずれも後述の測定方法による。)
(2)失活PET−1:
上記未処理PET−1に対して、以下の重縮合触媒の失活処理を施したもの、固有粘度[η]:0.75dl/g、末端カルボキシル基濃度AV:30μeq/g、ET比率:97.8当量%、固相重合速度Ks:0.0031dl/g・hr(物性値はいずれも後述の測定方法による。)
<失活処理方法>
未処理PET−1 50kgを100℃の蒸留水50kg中で1時間煮沸処理した後、脱水し、窒素雰囲気中、120℃で6時間時間乾燥した。
(3)失活PET−2:
以下の未処理PETに対して、以下の重縮合触媒の失活処理を施したもの、固有粘度[η]:0.73dl/g、末端カルボキシル基濃度AV:12μeq/g、ET比率:97.6当量%、固相重合速度Ks:0.0042dl/g・hr(物性値はいずれも後述の測定方法による。)
<未処理PET>
重縮合触媒としてチタン系触媒を用いたポリエチレンテレフタレート 三菱化学(株)製品「ノバペックス(登録商標)RF543DE」、固有粘度[η]:0.74dl/g、末端カルボキシル基濃度AV:8.4μeq/g、ET比率:97.6当量%、固相重合速度Ks:0.0078dl/g・hr(物性値はいずれも後述の測定方法による)。
<失活処理方法>
未処理PET 100質量部に対して、以下のリン系熱安定剤a(アデカスタブAX−71)を0.01質量部と以下のリン系熱安定剤b(イルガフォス168)を0.03質量部添加し、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度270℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hrにてバレルより押出機にフィードし、溶融混練することにより失活PET−2のペレットを作製した。
リン系熱安定剤a:ADEKA社製「アデカスタブAX−71」(モノ又はジ−ステアリルアシッドホスフェート)
リン系熱系安定剤b:チバ・スペシャルティ・ケイミカルズ(株)製「イルガフォス168」(トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)
(4)PBT−1:
ポリブチレンテレフタレート 三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバデュラン(登録商標)5020」、固有粘度:1.20dl/g、末端カルボキシル基濃度:22eq/Ton
(5)PBT−2:
ポリブチレンテレフタレート 三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバデュラン(登録商標)5008」、固有粘度:0.85dl/g、末端カルボキシル基濃度:12eq/Ton
[ゴム性重合体]
(1)ゴム性重合体−1:
ポリブタジエン(コア)/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合物(シェル)からなるコア/シェル型グラフト共重合体 ローム・アンド・ハース・ジャパン社製「パラロイドEXL2603」
(2)ゴム性重合体−2
ポリアクリル酸アルキル(コア)/アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合物(シェル)からなるコア/シェル型グラフト共重合体 ローム・アンド・ハース・ジャパン社製「パラロイドEXL2315」
[熱安定剤]
(1)熱安定剤−1:
ブトキシエチルアシッドフォスフェート:COCO)P(O)(OH)3−n (n=1,2) 城北化学工業社製「JP−506H」
(2)熱安定剤−2:
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト 旭電化工業社製「アデカスタブAS2112」
(3)熱安定剤−3
ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト 旭電化工業社製「アデカスタブPEP−36」
[無機充填材(タルク)]
(1)タルク−A
松村産業社製 顆粒状タルク
平均粒子径:3.7μm、嵩密度0.76g/ml、粒度:目開き500μm篩上の割合が98質量%、粒子形状:円柱状、平均軸径:1.2mm、平均軸長:1.5mm、バインダー種:水溶性ポリエステル(互応化学工業社製「プラスコートZ−221」)、バインダー量:0.5質量%
(2)タルク−B
松村産業社製 顆粒状タルク
平均粒子径:2.0μm、嵩密度:0.72g/ml、粒度:目開き500μm篩上の割合が98質量%、粒子形状:円柱状、平均軸径:1.2mm、平均軸長:1.5mm、バインダー種:水溶性ポリエステル(互応化学工業社製「プラスコートZ−221」)、バインダー量:0.5質量%
また、各種物性ないし特性の評価方法は次の通りである。
<PETの末端カルボキシル基濃度>
樹脂チップ0.5gを精秤し、195℃のベンジルアルコール25ml中に溶解し、氷水中で数十秒間冷却した後エチルアルコール2mlを加え、自動滴定装置(東亜電波製「AUT−301」)を用いて、0.01N−NaOHベンジルアルコール溶液で中和滴定した。測定滴定量A(ml)、ブランク滴定量B(ml)、NaOHベンジルアルコールの力価F、及び、試料の秤量値W(g)より、下記式により、末端カルボキシル基量AV(μeq/g)を求めた。
AV=(A−B)×0.01×F×1000/W
<PETの固有粘度>
凍結粉砕したPET試料0.50gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合液を溶媒として、濃度(c)を1.0g/dlの溶液を調製した。ここで試料溶解条件は120℃で30分間で溶解させた。この溶液を30℃にてウベローデ型粘度計を用いて、溶媒のみ(c=0)に対する相対粘度(ηrel)を測定し、この相対粘度(ηrel)−1を比粘度(ηsp)とし濃度(c)との比(ηsp/c)を求めた。同様にして濃度(c)を0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとして、それぞれの比(ηsp/c)を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度[η](dl/g)として求めた。
<PETの組成分析>
樹脂試料を重水素化トリフルオロ酢酸に常温で溶解させた3重量%溶液を用いて、核磁気共鳴装置(日本電子社製「JNM−EX270型」)にてH−NMRを測定し、各ピークを帰属し、その積分比からテレフタル酸、及びテレフタル酸以外のジカルボン酸成分、並びに、エチレングリコール、及びそれ以外のジオール成分の割合を求め、オキシエチレンオキシテレフタロイル単位の含有率(ET比率)を算出した。
<PETの固相重合速度>
1粒当りの平均粒重が24mgとなるようにカットされたPETチップ10gを直径30mmφ、高さ30mmのステンレス製メッシュで作成した容器に入れ、イナートオーブン(ESPEC社製「IPHH−201型」)中で、40リットル/分の窒素気流下160℃で4時間乾燥させた。その後、窒素流通を保持した状態で160℃から210℃まで1時間かけて昇温し、210℃で保持後3時間後の固有粘度[η]s、2時間後の固有粘度[η]mから、以下の(1)式により算出した。
固相重合速度Ks=([η]s−[η]m)/1 …(1)
[実施例1〜13、比較例1〜6]
{組成物の調製}
上記原料成分を表1に示す割合で含有する組成物1〜10を以下のようにして調製した。
<未処理組成物1〜10の調製>
表1に示す各成分を表1に示す割合にて、タンブラ−ミキサ−で均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30XCT」)にフィードし、溶融混練した組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物(以下「未処理組成物」と称す。)1〜10のMVR(MVR−1)は、表1に示すとおりであった。
<粉砕組成物1〜10の調製>
上記で得られた各未処理組成物1〜10のペレットを120℃で5時間以上乾燥した後、ファナック製「α100iA型」射出成形機を使用して、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒の条件で、ISO引張試験片(厚さ4.0mm)を射出成形した。さらにZERMA社製「GSL180/180」にて粉砕した。未処理組成物1〜10からそれぞれ得られた各樹脂組成物(以下「粉砕組成物」と称す。)1〜10のMVR(MVR−2)は、表1に示す通りであった。
Figure 0005500032
{組成物(A/B)の調製及び評価}
上記の未処理組成物及び粉砕組成物のうち1つを組成物(A)とし、この組成物(A)よりもMVRの大きい組成物を組成物(B)として、これらを混合することにより組成物(A/B)を調製し、以下の評価を行って結果を表2に示した。
なお、表2には、得られた組成物(A/B)のMVRと、組成物(A/B)の調製に用いた2種の組成物のうち、MVRの小さい方の組成物(A)に対するMVRの大きい方の組成物(B)の、MVRの高さ率(%)を併記した。
(1)ノッチ付きシャルピー衝撃強度の測定
表2に示す組成物(A)と組成物(B)を120℃で5時間以上乾燥した後、表2に示す配合割合で混合し、ファナック製「α100iA型」射出成形機を使用して、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒の条件で、ISO引張試験片(厚さ4.0mm)を射出成形した。ISO179に準拠して、この試験片から厚さ4.0mmのノッチ付試験片を作製し、23℃の環境下において、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:KJ/m)を測定した。
(2)曲げ強度、曲げ弾性率の測定
上記(1)と同様にして、ISO 178に準拠して、曲げ試験片(厚さ4mm)を試験片とし、23℃の温度で曲げ強度(単位:MPa)及び、曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
(3)滞留後表面外観の評価
上記(1)において、ISO引張試験片(厚さ4.0mm)を射出成形した際に、射出成形に十分な樹脂組成物量の計量を行った。その後、当該組成物をシリンダー内に20分間保持した後に、同様の条件で射出成形した20分滞留後試験片について、目視にて外観を観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面にシルバーストリークなし
○:表面にわずかにシルバーストリークあり
△:表面にシルバーストリークあり
×:表面のシルバーストリークが著しい
(4)滞留後ノッチ付きシャルピー衝撃強度の測定
上記(3)の方法で得られた20分滞留後試験片から上記(1)と同様にノッチ付き試験片を作製し、23℃の環境下において、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
(5)湿熱処理後ノッチ付シャルピー衝撃強度の測定
上記(1)の方法で得られた試験片を、温度80℃、相対湿度95%の環境下で500時間の湿熱処理を実施した。得られた試験片のノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を、23℃の環境下において測定した。
(6)ガスインジェクション射出成形による耐ピンホール性の評価
表2に示す組成物(A)と組成物(B)を120℃で5時間以上乾燥した後、表2に示す配合割合で、日本製鋼所製「J−220EV−P型」射出成形機のホッパーに投入し、片側に自動車本体ドアへの取り付け部分を有するピラー/ドア取り付け部成形用金型(ガス注入用ノズルを有する。)を取り付け、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、充填時間7秒、ガス射出遅延8秒(樹脂充填完了の1秒後にガスを導入した。)、ガス圧10MPa、ガス保圧時間35秒、成形サイクル80秒の条件で、30ショット連続成形した。この30ショット中に発生したピンホール数をカウントした。
Figure 0005500032
{考察}
以上の結果より次のことが分かる。
比較例1,2は、組成物(B)に失活PETを用いていないものであり、耐衝撃性、耐滞留熱劣化性、成形品性状がいずれも劣る。
比較例3は、組成物(B)の配合量が少なく、また、MVRの高さ率も本発明の範囲外であり、やはり耐衝撃性、耐滞留熱劣化性、成形品性状がいずれも劣る。
比較例4は、組成物(B)に失活PETを用いておらず、またMVRの高さ率も本発明の範囲外であり、耐衝撃性、耐滞留熱劣化性、成形品性状がいずれも劣る。
比較例5は、組成物(B)の配合量が多過ぎるために、耐衝撃性、耐滞留熱劣化性、成形品性状がいずれも劣る。
比較例6は、組成物(B)の配合量が少な過ぎるために、やはり耐衝撃性、耐滞留熱劣化性、成形品性状がいずれも劣る。
これに対して、本発明のMVRの高さ率を満たす組成物(A)と失活PETを含む組成物(B)を本発明の範囲内で混合した実施例1〜13では、いずれも良好な結果が得られている。

Claims (6)

  1. 無機充填材を含有するポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)100質量部に対し、無機充填材を含有し、以下の条件(I)及び(II)を満たすポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)5〜50質量部を配合してなるポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物であって、
    ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A1)100質量部に対し、ポリエステル樹脂(A2)1〜100質量部、無機充填材(A3)1〜60質量部、及びゴム性重合体(A4)0.5〜30質量部を含有することを特徴とするポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
    (I) ポリエステル樹脂として、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレートを含有する。
    (II) ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)とポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)のMVR(メルトボリュームレート、JIS K7210に準拠し、温度300℃、荷重11.8Nで測定した値:cm/10min)をそれぞれMVR(A),MVR(B)としたときに、MVR(B)がMVR(A)に対して5〜120%大きい。
  2. ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)におけるポリエステル樹脂(A2)が、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
  3. ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)100質量部に対し、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレート(B2)1〜100質量部、無機充填材(B3)1〜60質量部、及びゴム性重合体(B4)0.5〜30質量部を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
  4. 無機充填材が、ガラス繊維、タルク及びウォラストナイトからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
  5. ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(A)と、ポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物(B)の構成成分が、実質的に同一であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至のいずれかに記載のポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂組成物を射出成形してなるポリカーボネート−ポリエステル複合樹脂成形品。
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