JP5495048B2 - レーザ加工方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、シリコンへのレーザ照射においては、アブレーション反応の際に全てがガス化されず、その一部がレーザ加工部周囲にデブリ(加工飛散物)として降り積もり、加工製品の品質を低下させてしまう問題があった。
すなわち、特許文献1の技術では、レーザ加工前に予めCVD法により表面に酸化被膜を形成する必要があり、その前処理のための別工程が必要なために生産効率の低下を招いてしまうという不都合があった。また、特許文献2の技術では、レーザ加工時に付随的に加工部周辺に形成される酸化被膜を用いているが、この方法ではデブリが飛散・堆積する範囲に合わせて材質や厚みが均一な酸化被膜を形成することが難しく、十分にデブリが除去されずに品質の低下を招いてしまう不都合があった。特に、単結晶または多結晶のシリコンの場合、そのように付随的に形成される酸化被膜はSiOなどの酸化数の低い物が含まれるため、酸化被膜自体のシリコン母材への固着力が強く、酸化被膜を精度良く除去することが困難であった。
すなわち、まず、酸素含有雰囲気中において予め低いエネルギー密度の第1のレーザ光の照射によって単結晶または多結晶のシリコン表面に、繊維状シリコン酸化物を堆積させてこれらの集合体からなる綿状の酸化被膜を形成する。このようにシリコン表面に直接的に低エネルギー密度のレーザ光を照射することで、特許文献2のようにレーザ加工時に付随的に生じさせたシリコン酸化被膜とは異なり、繊維状シリコン酸化物の集合体からなる綿状の酸化被膜を形成することができる。
この後、高いエネルギー密度の第2のレーザ光の照射によって加工領域の酸化被膜を除去すると同時にシリコンに穴開けや溝加工等を行う。この際、穴開けや溝加工等がなされた加工領域の部位周辺の酸化被膜上には、デブリが堆積する。次に、加工領域の部位周辺に残った酸化被膜をデブリと共に、レーザ照射、ケミカルエッチングまたはブラッシングなどにより除去することで、品質の高い加工製品を得ることができる。なお、残った綿状の酸化被膜は、シリコン母材への付着力が弱いため、ブラッシングなどで容易に除去することが可能である。
すなわち、このレーザ加工方法では、第1のレーザ光と第2のレーザ光とが、同一波長のレーザ光であり、第1のレーザ光を、加工領域およびその周辺の表面から焦点を外して照射するので、同一のレーザ光源を用いて光学系による焦点位置の変更だけで第1のレーザ光と第2のレーザ光との両方を照射でき、一台のレーザ加工機で一連の工程を簡便にかつ短時間で行うことができる。
すなわち、このレーザ加工方法では、第1のレーザ光を、波長550nm以下でパルス当たりのエネルギー密度が30mJ/cm2以下のパルスレーザ光とするので、直径100nm以下でアスペクト比が5以上の繊維状シリコン酸化物の集合体からなる綿状の酸化被膜を良好に形成することができる。また、第2のレーザ光を、波長550nm以下でパルス当たりのエネルギー密度が40mJ/cm2以上のパルスレーザ光とするので、シリコンにアブレーション反応が起こる閾値以上であって、シリコンを除去する加工が可能なエネルギー密度によりシリコンを良好に加工することができる。
すなわち、本発明に係るレーザ加工方法によれば、シリコンに対しアブレーション反応を生じさせる閾値近傍のエネルギー密度であり、且つ酸素含有雰囲気中でシリコンの表面に繊維状シリコン酸化物による酸化被膜を形成可能なエネルギー密度に設定された第1のレーザ光を加工領域およびその周辺に照射してこれら表面に酸化被膜を形成するので、前処理が不要であると共に材質や厚みが均一でシリコン母材への付着力が弱い酸化被膜をレーザ加工前に形成することができる。
したがって、本発明のレーザ加工方法によって、シリコンの高品質な加工製品を高い生産効率で得ることができる。
さらに、第1のレーザ光L1を、波長550nm以下でパルス当たりのエネルギー密度が30mJ/cm2以下のパルスレーザ光とし、第2のレーザ光L2を、波長550nm以下でパルス当たりのエネルギー密度が40mJ/cm2以上のパルスレーザ光としている。
上記ガルバノスキャナ6は、移動機構3の直上に配置されている。また、上記CCDカメラ7は、ガルバノスキャナ6に隣接して設置されている。
本実施例では、上記本実施形態のレーザ加工方法を用いて、多結晶シリコン板の加工を行った。また、第1のレーザ光および第2のレーザ光としては、平均出力7W、波長355nm、繰り返し周波数6kHz、焦点位置における集光径を20μmとしたレーザ光を採用した。すなわち、第1のレーザ光は、シリコンに対しアブレーション反応を生じさせる閾値近傍のエネルギー密度であって、アブレーション反応で加工領域のシリコンを物理的に除去する加工が可能なエネルギー密度よりも低いと共に酸素含有雰囲気中でシリコンの表面に繊維状シリコン酸化物による酸化被膜を形成可能なエネルギー密度に設定した。また、第2のレーザ光は、シリコンをアブレーション反応で加工領域のシリコンを物理的に除去する加工が可能なエネルギー密度に設定した。
この酸化被膜について、図3に走査電子顕微鏡による断面の拡大画像を示すと共に、図4に走査電子顕微鏡で2万倍に拡大した画像を示す。これらの画像から、酸化被膜は、繊維状シリコン酸化物の集合体で構成された綿状の被膜であることがわかる。また、この綿状の酸化被膜について、EPMA(電子線マイクロアナライザ)で組成を解析した結果、Si:O=27:73(Atom比)であり、組成式がSiO2,Si2O3,Si3O4などのシリコン酸化物のいずれか或いはそれらの混合で表されるものであると考えられる。
さらに、このレーザ加工後に、加工領域周囲の表面をブラッシングして表面に堆積したデブリと共に綿状の酸化被膜を除去した。このブラッシング後の加工領域を、図7に示す。この画像から、ブラッシング後にデブリと共に綿状の酸化被膜がきれいに除去されていることがわかる。
この観察では、多結晶シリコン板の表面に焦点位置を合わせた状態で固定し、第1のレーザ光を2mm角の矩形領域に連続照射することで、多結晶シリコン板の深さ方向への加工と加工面における綿状の酸化被膜の形成とについて調べた。
Claims (3)
- シリコンにレーザ光を照射して加工する方法であって、
シリコンに対しアブレーション反応を生じさせる閾値近傍のエネルギー密度であり、且つ酸素含有雰囲気中でシリコンの表面に繊維状シリコン酸化物による酸化被膜を形成可能なエネルギー密度に設定された第1のレーザ光を加工領域およびその周辺に照射してこれら表面に前記酸化被膜を形成する被膜形成工程と、
シリコンをアブレーション反応で加工可能なエネルギー密度で前記酸化被膜上から第2のレーザ光を前記加工領域に照射して該加工領域表面の前記酸化被膜を除去すると共に前記加工領域を加工する加工工程と、
前記加工工程後に残った前記酸化被膜を除去する被膜除去工程と、を有していることを特徴とするレーザ加工方法。 - 請求項1に記載のレーザ加工方法において、
前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光とが、同一波長のレーザ光であり、
前記第1のレーザ光を、前記加工領域およびその周辺の表面から焦点を外して照射することを特徴とするレーザ加工方法。 - 請求項1または2に記載のレーザ加工方法において、
前記第1のレーザ光を、波長550nm以下でパルス当たりのエネルギー密度が30mJ/cm2以下のパルスレーザ光とし、
前記第2のレーザ光を、波長550nm以下でパルス当たりのエネルギー密度が40mJ/cm2以上のパルスレーザ光とすることを特徴とするレーザ加工方法。
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