以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態以降においては、既に説明された実施形態と共通部分については共通の符号を用い、また、説明を省略することがある。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係るダイカストマシンDC1の射出装置1の要部の構成を示す図である。
射出装置1は、不図示の型締装置に保持された固定金型101及び移動金型103により形成されたキャビティ105に溶湯(溶融状態の金属材料)を射出・充填する装置である。
射出装置1は、キャビティ105に連通する射出スリーブ3と、射出スリーブ3内において溶湯をキャビティ105へ押し出すプランジャ5と、プランジャ5を駆動するシリンダ装置7とを有している。また、射出装置1は、シリンダ装置7に作動液(例えば油)を供給する液圧回路9と、液圧回路9を制御する制御装置13とを有している。
射出スリーブ3は、例えば、固定金型101に挿通されるように設けられている。プランジャ5は、射出スリーブ3を摺動するプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aに固定されたプランジャロッド5bとを有している。射出スリーブ3に形成された給湯口3aから溶湯が射出スリーブ3内に供給された状態で、プランジャチップ5aが射出スリーブ3内をキャビティ105に向かって摺動することにより、溶湯はキャビティ105に射出、充填される。
シリンダ装置7は、シリンダチューブ15と、シリンダチューブ15の内部を摺動可能な射出ピストン17及び増圧ピストン18と、射出ピストン17に固定され、シリンダチューブ15から延び出るピストンロッド19とを有している。なお、射出ピストン17及びピストンロッド19は、それぞれ別個に形成されて互いに固定されていてもよいし、一体的に形成されて互いに固定されていてもよい。
シリンダチューブ15は、射出シリンダ部15aと、射出シリンダ部15aに接続された増圧シリンダ部15bとを有している。射出シリンダ部15a及び増圧シリンダ部15bは、例えば、内部の断面形状が円形の筒状体である。
射出シリンダ部15aの内部は、射出ピストン17により、ピストンロッド19が延び出る側のロッド側室15rと、その反対側のヘッド側室15hとに区画されている。ロッド側室15r及びヘッド側室15hに選択的に作動液が供給されることにより、射出ピストン17はシリンダチューブ15内を摺動する。
増圧シリンダ部15bは、射出シリンダ部15aのヘッド側室15h側に接続され、また、射出シリンダ部15aよりも大径に形成されている。
増圧ピストン18は、射出シリンダ部15aの内部(ヘッド側室15h)を摺動可能な小径部18aと、増圧シリンダ部15bの内部を摺動可能な大径部18bとを有している。増圧シリンダ部15bの内部は、大径部18bにより、射出シリンダ部15a側の前側室15fと、その反対側の後側室15gとに区画されている。
従って、前側室15fの圧抜きを行うと、小径部18aのヘッド側室15hにおける作用面積と、大径部18bの後側室15gにおける作用面積との差に起因して、増圧ピストン18は、後側室15gの作動液から受ける圧力よりも高い圧力をヘッド側室15hの作動液に加えることが可能である。すなわち、シリンダ装置7は、増圧機能を有している。
シリンダ装置7は、プランジャ5に対して同軸的に配置されている。そして、ピストンロッド19は、プランジャ5にカップリングを介して連結されている。シリンダチューブ15は、不図示の型締装置などに対して固定的に設けられている。従って、射出ピストン17のシリンダチューブ15に対する移動により、プランジャ5は射出スリーブ3内を前進又は後退する。
液圧回路9は、ヘッド側室15h及び後側室15gに作動液を供給可能な構成を有している。具体的には、液圧回路9は、アキュムレータ21と、アキュムレータ21とヘッド側室15hとを連通するヘッド側流路23と、アキュムレータ21と後側室15gとを連通する後側流路25とを有している。また、液圧回路9は、ヘッド側流路23の作動液の流れを制御する逆止弁27と、後側流路25の作動液の流れを制御する流量調整弁29とを有している。
アキュムレータ21は、重量式、ばね式、空気圧式、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ21は、空気圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ21内に保持されている空気が圧縮されることにより蓄圧され、その蓄圧された圧力により作動液を供給する。
ヘッド側流路23及び後側流路25は、例えば、鋼管、可撓性のホース又は金属ブロックにより構成されている。ヘッド側流路23及び後側流路25は、アキュムレータ21側の一部の流路を共用している。ただし、ヘッド側流路23及び後側流路25は、別個にアキュムレータ21に接続されていてもよい。
逆止弁27は、パイロット圧力により制御可能な逆止弁により構成されている。具体的には、逆止弁27は、パイロット圧力が導入されていないときには、アキュムレータ21からヘッド側室15hへの作動液の流れを許容し、その反対方向の作動液の流れを禁止する。また、逆止弁27は、パイロット圧力が導入されると、上記のいずれの方向の流れも禁止する。
流量調整弁29は、圧力補償付の流量制御弁であり、流入側と流出側との圧力差を一定に保ち、作動液の流量を開口度により規定する。また、流量調整弁29は、サーボバルブとしても構成されており、流量を無段階に調整可能である。なお、流量調整弁29は、後側室15gに供給される作動液の流量を制御可能であるから、いわゆるメータイン回路を構成している。
また、液圧回路9は、ロッド側室15r及び前側室15fへの作動液の供給及びこれらのシリンダ室からの作動液の排出を実行可能な構成を有している。具体的には、液圧回路9は、ポンプ31と、タンク33と、ロッド側室15rに接続されたロッド側流路35と、前側室15fに接続された前側流路37と、これらの間の流れを制御するサーボバルブ41とを有している。
ポンプ31は、歯車ポンプ、ベーンポンプ、プランジャポンプなどの適宜な形式のポンプにより構成されてよい。ポンプ31は、例えば、定容量形ポンプにより構成され、電動機43により一定の速度で駆動されることにより、一定の圧力及び流量で作動液を吐出する。
ロッド側流路35及び前側流路37は、上述したヘッド側流路23等と同様に、適宜な部材により構成される。ロッド側流路35及び前側流路37は、サーボバルブ41側の一部の流路を共用している。なお、以下では、この共用部分を共用流路39ということがある。
サーボバルブ41は、3ポート3位置の切換弁により構成されている。より具体的には、サーボバルブ41は、共用流路39とポンプ31とを接続するとともに共用流路39とタンク33とを遮断する状態と、共用流路39とポンプ31とを遮断するとともに共用流路39とタンク33とを接続する状態と、共用流路39とポンプ31及びタンク33の双方とを遮断する状態との間で切り換え可能である。また、サーボバルブ41は、作動液の流量を無段階で調整可能である。サーボバルブ41は、ロッド側室15rから流出する作動液の流量を制御可能であるから、いわゆるメータアウト回路を構成している。
なお、液圧回路9は、上述した構成の他に、ポンプ31によりアキュムレータ21を蓄圧するための構成、ヘッド側室15h及び後側室15gの作動液を排出するための構成を有するが、これらの構成は公知の構成により実現されてよく、説明は省略する。
制御装置13は、例えば、CPU61、ROMやRAM等のメモリ63、入力回路65、及び、出力回路67を含んで構成されている。CPU61は、メモリ63に記憶されたプログラムを実行し、入力回路65を介して入力される入力信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を出力回路67を介して出力する。
入力回路65に信号を入力するのは、例えば、ユーザの入力操作を受け付ける入力装置69、ピストンロッド19の位置を検出する位置センサ71、ヘッド側室15hの圧力を検出するヘッド側圧力センサ73、ロッド側室15rの圧力を検出するロッド側圧力センサ75である。
出力回路67が信号を出力するのは、例えば、ユーザに情報を表示する表示器77、電動機43、サーボバルブ41、流量調整弁29、逆止弁27へのパイロット圧力の導入を制御する不図示の液圧回路である。
位置センサ71は、シリンダチューブ15に対するピストンロッド19の相対位置を検出するものであり、プランジャ5の位置を間接的に検出するものである。位置センサ71は、例えば、ピストンロッド19に設けられ、ピストンロッド19の軸方向に延びる不図示のスケール部とともにリニアエンコーダを構成している。なお、位置センサ71、又は、制御装置13は、検出した位置を微分することにより、速度を検出することが可能である。
ヘッド側圧力センサ73及びロッド側圧力センサ75は、溶湯をキャビティ105に射出するときにプランジャ5が溶湯に加える圧力等のプランジャ5が溶湯に加える圧力を間接的に検出するものである。すなわち、ヘッド側圧力センサ73の検出した圧力と射出ピストン17のヘッド側室15hにおける作用面積との積と、ロッド側圧力センサ75の検出した圧力と射出ピストン17のロッド側室15rにおける作用面積との積との差により、プランジャ5が溶湯に加えている力を算出することができる。
なお、以下では、プランジャ5が溶湯に加える力を、プランジャチップ5aの断面積で割った値(溶湯の圧力とみなせる。)を鋳造圧力といい、プランジャ5が溶湯に加える力を射出ピストン17の断面積で割った値を射出圧力というものとする。また、鋳造圧力と射出圧力とは比例することから、両者を特に区別しないことがあるものとする。
図2は、サーボバルブ41の構成を模式的に示す図である。
サーボバルブ41は、いわゆる電気−液圧式のサーボ弁により構成されており、弁本体45と、弁本体45を駆動するパイロット圧力を制御するパイロット部47と、パイロット部47を制御する電磁部49とを有している。
弁本体45は、いわゆるスプール式の弁により構成されており、弁スリーブ51と、弁スリーブ51内を摺動可能なスプール53とを有している。
弁スリーブ51は、内部の断面形状が円形の筒状に形成されている。弁スリーブ51には、弁スリーブ51の内外を連通する、シリンダポート55C、ポンプポート55P及びタンクポート55Tが形成されている。なお、以下では、単に「ポート55」といい、これらを区別しないことがある。シリンダポート55Cには、共用流路39が接続され、ポンプポート55Pにはポンプ31が接続され、タンクポート55Tにはタンク33が接続されている。各ポートの開口面の形状は、例えば、円形である。
これらのポート55は、スプール53の摺動方向(図2の左右方向)において、ポンプポート55P、シリンダポート55C、タンクポート55Tの順に配置されている。シリンダポート55Cは、例えば、スプール53の摺動方向において、ポンプポート55Pとの距離と、タンクポート55Tとの距離とが等しくなる位置、すなわち、ポンプポート55Pとタンクポート55Tとの中間位置に配置されている。
弁スリーブ51の内側面には、スプール53の摺動方向の、各ポート55に対応する位置にシリンダ溝部56C、ポンプ溝部56P及びタンク溝部56Tが形成されている。なお、以下では、単に「溝部56」といい、これらを区別しないことがある。溝部56は、弁スリーブ51の円周方向に延びて、弁スリーブ51を一周しており、シリンダ溝部56Cはシリンダポート55Cに連続し、ポンプ溝部56Pはポンプポート55Pに連続し、タンク溝部56Tはタンクポート55Tに連続している。
スプール53は、円柱の中間部分が縮径した形状に形成されており、弁スリーブ51を摺動する第1摺動部53a及び第2摺動部53bと、第1摺動部53aと第2摺動部53bとの間に設けられた離間部53cとを有している。離間部53cは、第1摺動部53a及び第2摺動部53bよりも小径に形成されており、弁スリーブ51から離間している。これにより、スプール53と弁スリーブ51との間には、連通流路SK1が形成されている。なお、スプール53は、例えば、離間部53cの中心位置に対して、スプール53の摺動方向において概ね対称に形成されている。
図2では、連通流路SK1は、3つのポート55のうち、シリンダポート55Cのみに接続されている。すなわち、図2は、シリンダポート55Cと、ポンプポート55P及びタンクポート55Tの双方とが遮断された状態を示している。
図2の状態から、スプール53が図2の左側へ移動すると、連通流路SK1は、シリンダポート55Cだけでなく、ポンプポート55Pにも接続される。すなわち、サーボバルブ41は、シリンダポート55Cとポンプポート55Pとが接続され、シリンダポート55Cとタンクポート55Tとが遮断された状態となる。
逆に、図2の状態から、スプール53が図2の右側へ移動すると、連通流路SK1は、シリンダポート55Cだけでなく、タンクポート55Tにも接続される。すなわち、サーボバルブ41は、シリンダポート55Cとポンプポート55Pとが遮断され、シリンダポート55Cとタンクポート55Tとが接続された状態となる。
スプール53は、例えば、両側に配置されたバネ57により弁スリーブ51に対して付勢されることにより、図2に示す中立位置に配置されている。そして、スプール53は、弁スリーブ51の両側端部に開口する2つのパイロットポート58に選択的に作動液が供給されることにより、スプール53の摺動方向の一方側又は他方側に移動する。なお、中立位置は、例えば、連通流路SK1とポンプ溝部56Pとの距離Laと、連通流路SK1とタンク溝部56Tとの距離Lbとが等しくなる位置に設定されている。
パイロット部47は、例えば、ノズル及びフラッパ、又は、スプールを含んで構成され、一種の弁として機能する。そして、アキュムレータ21から供給される作動液を、2つのパイロットポート58に選択的に供給する。
電磁部49は、例えば、モータ(ソレノイド)を含んで構成され、制御装置13からの制御信号に従ってパイロット部47のノズル又はスプールを駆動する。サーボバルブ41のスプール53の位置は、例えば、電磁部49に入力される電圧に比例する。
上述の説明から理解されるように、スプール53の第1摺動部53a及び第2摺動部53bは、ポート55間の流れを遮断することに寄与する部分である。そして、理想的には、第1摺動部53a及び第2摺動部53bと、弁スリーブ51との間に隙間はなく、図2に示す遮断状態においては、ポート55間の流れは完全に遮断される。
しかし、実際には、第1摺動部53aと第2摺動部53bとの間には若干の隙間(例えば、10〜50μm)があり、当該隙間においては作動液が流れる。すなわち、隙間流れが生じる。図2に示す遮断状態においては、ポンプポート55Pからの作動液が、第1摺動部53aと弁スリーブ51との隙間、連通流路SK1、及び、第2摺動部53bと弁スリーブ51との隙間を経由して、タンクポート55Tへ流れる。このとき、シリンダポート55Cにおいては、タンク33の圧力よりも大きく、ポンプ31の圧力よりも小さい圧力が付与される。なお、本願では、この圧力を隙間流れ圧力と呼ぶことがある。
隙間流れ圧力は、スプール53が図2の左側に移動して、連通流路SK1とポンプ溝部56Pとの距離Laが小さくなり、連通流路SK1とタンク溝部56Tとの距離Lbが大きくなるほど、ポンプ31の圧力に近づく。逆に、隙間流れ圧力は、スプール53が図2の右側に移動して、距離Laが大きくなり、距離Lbが小さくなるほど、タンク33の圧力に近づく。
図3は、シリンダポート55Cの圧力の変化を説明する図である。
図3の横軸は、スプール53の位置を示している。なお、図2の左右方向と、図3の横軸の左右方向とは対応している。縦軸は、シリンダポート55Cの圧力又はサーボバルブ41の開口度を示している。実線L1は、シリンダポート55Cの圧力の変化を示しており、一点鎖線L2は、サーボバルブ41の開口度の変化を示している。
スプール53が図2及び図3の左側(図3のポンプ接続範囲RgP)に位置している状態では、連通流路SK1を介してシリンダポート55Cとポンプポート55Pとが連通されており、シリンダポート55Cの圧力は、ポンプ31の圧力と同等である。また、La=0の位置から、スプール53が図2及び図3の左側へ移動するほど、連通流路SK1とポンプ溝部56Pとの重なり量が多くなり、シリンダポート55Cとポンプポート55Pと間の開口度は増加する。
また、逆に、スプール53が図2及び図3の右側(図3のタンク接続範囲RgT)に位置している状態では、連通流路SK1を介してシリンダポート55Cとタンクポート55Tとが連通されており、シリンダポート55Cの圧力は、タンク33の圧力(例えば0)と同等である。また、Lb=0の位置から、スプール53が図2及び図3の右側へ移動するほど、連通流路SK1とタンク溝部56Tとの重なり量が多くなり、シリンダポート55Cとタンクポート55Tと間の開口度は増加する。
一方、スプール53が、La=0の位置とLb=0の位置との間(図3の遮断範囲RgC)にあるときには、上述のように、隙間流れ圧力がシリンダポート55Cに付与される。そして、隙間流れ圧力は、スプール53が、La=0の位置に近づくほど大きくなり、Lb=0の位置に近づくほど小さくなり、その変化は、概ね線形近似することが可能である。また、スプール53が、遮断範囲RgCにあるときには、連通流路SK1は、ポンプ溝部56P及びタンク溝部56Tのいずれにも重ならず、サーボバルブ41の開口度は0である。
以上の構成を有する射出装置1の動作を説明する。
図4は、射出装置1における射出圧力P及び射出速度Vの変化を示すグラフである。
射出装置1は、概観すると、低速射出、高速射出、及び、増圧(昇圧)を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャを前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャを前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、プランジャの前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
(低速射出)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、図1に示す状態となっている。すなわち、射出ピストン17及び増圧ピストン18は、後退限等の初期位置に位置している。逆止弁27はパイロット圧力が導入されて閉じられている。流量調整弁29は閉じられている。サーボバルブ41は、図2に示す中立位置とされ、閉じられている。アキュムレータ21は蓄圧が完了している。ポンプ31は、電動機43により駆動され、一定の圧力を作動液に付与している。
固定金型101及び移動金型103の型締が終了し、溶湯が射出スリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置13は、逆止弁27へのパイロット圧力の導入を停止するとともに、サーボバルブ41を、シリンダポート55Cとタンクポート55Tとを接続する状態(スプール53がLb=0の位置よりも図2の右側へ移動した状態)とする。
これにより、アキュムレータ21からヘッド側室15hに作動液が供給され、射出ピストン17は、ロッド側室15rの作動液をタンク33に排出しつつ前進する。その結果、プランジャ5により射出スリーブ3内の溶湯がキャビティ105に射出される。
プランジャ5の速度は、サーボバルブ41の開口度の調整により制御され、ここでは、図4に示すように、比較的低速の低速射出速度VLとされる。また、このときの射出圧力は、比較的低圧のPLである。
(高速射出)
制御装置13は、位置センサ71の検出値に基づくプランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、サーボバルブ41におけるシリンダポート55Cとタンクポート55Tと間の開口度を大きくする。すなわち、スプール53を、低速射出時よりも、図2の右側へ移動させる。これにより、プランジャ5の速度は、図4に示すように、低速射出速度VLよりも高速の高速射出速度VHとなる。なお、このときの射出圧力は、低速射出時の射出圧力PLより高い圧力PHとなる。
(減速射出)
減速射出は、適宜な事象の発生により開始される。例えば、減速射出は、溶湯がキャビティ105にある程度充填され、その充填された溶湯からプランジャ5が反力を受けて減速されることにより開始される。若しくは、減速射出は、プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされたときに、サーボバルブ41におけるシリンダポート55Cとタンクポート55Tと間の開口度が小さくされることにより、開始される。又は、上記に例示した事象が同時に発生することにより開始される。なお、上記に例示した事象は、いずれが先に生じてもよいが、概ね同時に生じるように制御が行われることが好ましい。
減速射出動作では、射出速度は、高速射出速度VHから減速されて速度Vdとなる。ただし、キャビティ105には、ある程度溶湯が充填されていることから、射出圧力は、高速射出における高速射出圧力PHから上昇して圧力Pdとなる。
(増圧)
所定の増圧開始条件が満たされると、制御装置13は、流量調整弁29を開く。増圧開始条件は、例えば、鋳造圧力の検出値が所定の値に到達したこと、又は、プランジャ5の検出位置が所定の位置に到達したことである。流量調整弁29が開かれることにより、アキュムレータ21から後側室15gに作動液が供給される。そして、上述したように、増圧ピストン18の増圧機能により、後側室15gの作動液の圧力よりも高い圧力がヘッド側室15hに付与される。
このときの流量調整弁29の開口度は、サージ圧の発生を抑制するために、全開よりも小さい所定の開口度とされ、アキュムレータ21から後側室15gへの作動液の流量は所定の流量に制限される。この流量制限は、増圧完了後の適宜な時期まで維持される。
また、制御装置13は、サーボバルブ41を、シリンダポート55Cと、ポンプポート55P及びタンクポート55Tの双方とを遮断する状態とする。換言すれば、制御装置13は、隙間流れ圧力の制御を開始する。これにより、ロッド側室15r及び前側室15fは、隙間流れ圧力とされる。隙間流れ圧力は、スプール53の位置を適宜な位置とすることにより、アキュムレータ21の圧力よりも小さい値とされる。なお、隙間流れ圧力の開始タイミングは、流量調整弁29を開くタイミングと同時でもよいし、ずれていてもよい。
逆止弁27は、ヘッド側室15hの圧力が、増圧ピストン18の増圧機能によりアキュムレータ21の圧力よりも高くなることにより自閉する。ただし、逆止弁27は、パイロット圧力が導入されて閉じられてもよい。
そして、射出圧力は、圧力Ptを経て終圧Pmaxに到達する。また、射出速度は、キャビティ105に溶湯が完全に充填されることにより、速度Vtを経て0となる。
増圧工程において、プランジャ5から溶湯に付与される鋳造圧力は、以下の(1)式で示される。
Pc=(PHz×AHz−PR×ARz−PR×AR)/Ac (1)
ここで、Pc:鋳造圧力、PHz:後側室15gの圧力、AHz:大径部18bの後側室15gにおける受圧面積、PR:ロッド側室15r及び前側室15fの圧力(隙間流れ圧力)、ARz:大径部18bの前側室15fにおける受圧面積、AR:射出ピストン17のロッド側室15rにおける受圧面積、Ac:プランジャチップ5aの溶湯に対する作用面積である。
AHz、ARz、AR、Acは、各部材の寸法によって決定される値であり、PHzはアキュムレータ21に蓄圧された圧力によって決定されるから、鋳造圧力Pcは、圧力PRの制御により、任意の値に設定される。すなわち、鋳造圧力Pcは、サーボバルブ41における隙間流れ圧力の制御により任意の値に設定される。
なお、後側室15gの圧力PHzは、アキュムレータ21の充填後の圧力PACC及び鋳造圧力ドロップ比率RDを用いて、以下の(2)式で表わされる。
PHz=PACC×(1−RD) (2)
(保圧)
射出圧力が終圧Pmaxに到達すると、その終圧Pmaxが保たれるように保圧動作が行われる。例えば、制御装置13は、ヘッド側圧力センサ73及びロッド側圧力センサ75により検出される射出圧力が一定に保たれるように、サーボバルブ41における隙間流れ圧力をフィードバック制御する。
(プランジャ後退)
溶湯が凝固すると、制御装置13は、サーボバルブ41を、シリンダポート55Cとポンプポート55Pとが接続される状態とする。これにより、ロッド側室15r及び前側室15fに作動液が供給され、射出ピストン17及び増圧ピストン18は後退する。なお、この際、逆止弁27及び流量調整弁29は閉じられ、また、ヘッド側室15h及び後側室15gの作動液は、不図示の流路及び弁を介してタンク33に排出される。
なお、制御装置13における、溶湯が凝固したか否かの判定は、例えば、鋳造圧力Pmaxに達した時点等の所定の基準時点から、所定の時間が経過したか否かにより行われる。
上述のように、増圧は、流量調整弁29及びサーボバルブ41の制御により行われる。以下では、これらの弁の動作設定に関する処理について説明する。
図5は、制御装置13が実行する、流量調整弁29及びサーボバルブ41の動作設定に係る処理を示すフローチャートである。当該処理は、例えば、ダイカストマシンDC1が起動される度に行われる。
ステップS1では、制御装置13は、種々の鋳造条件の入力を受け付ける。入力される条件は、例えば、最終的な鋳造圧力(図4の終力Pmaxに対応する鋳造圧力)の目標値(設定鋳造圧力)、高速射出か終了してから鋳造圧力が設定鋳造圧力に到達するまでの時間の目標値(設定昇圧時間)である。これらの条件は、例えば、入力装置69に対する操作により入力される。前回起動時に入力された条件がメモリ63から読み出されてもよい。
ステップS2では、制御装置13は、ステップS1で入力された鋳造条件に基づいて、基準電圧の初期設定を行う。基準電圧は、増圧及び保圧工程において、サーボバルブ41に印加される電圧である。サーボバルブ41のスプール53は、上述のように、印加された電圧に応じた位置に位置する。すなわち、ステップS2では、設定鋳造圧力に対応した隙間流れ圧力の初期設定がなされる。
ステップS3では、制御装置13は、隙間流れ圧力制御の開始条件、換言すれば、サーボバルブ41を、シリンダポート55Cと、ポンプポート55P及びタンクポート55Tの双方とを遮断する状態とする条件の初期設定を行う。
本実施形態では、制御装置13は、ヘッド側圧力センサ73及びロッド側圧力センサ75に基づいて検出される実測鋳造圧力が、ステップS1で入力された設定鋳造圧力の所定の割合(制御開始割合Ra)に到達したときに隙間流れ圧力制御が開始されるように動作設定されている。そして、ステップS3では、制御装置13は、その制御開始割合Raの初期値を設定する。設定される値は、制御装置13が予め保持していてもよいし、ステップS1において入力されてもよいし、ステップS1において入力された値等に基づいて制御装置13が算出してもよい。制御開始割合Raの初期値は、例えば90%である。
ステップS4では、制御装置13は、ステップS1で入力された鋳造条件に基づいて、増圧工程における流量調整弁29における流量の初期設定を行う。例えば、設定昇圧時間で実際の鋳造圧力が設定鋳造圧力に到達する流量を所定のアルゴリズムに基づいて算出し、流量調整弁29の開口度を設定する。
ステップS5では、制御装置13は、図4を参照して説明した射出動作を行う。この射出動作に含まれる増圧工程では、上述のように、基準電圧がサーボバルブ41に印加され、基準電圧に応じた隙間流れ圧力がシリンダポート55Cに付与される。
ステップS6では、制御装置13は、ステップS1で設定した設定鋳造圧力と、ステップS3の射出動作における鋳造圧力の実測値とに基づいて、実測値がより設定鋳造圧力に近づくように、基準電圧の補正を行う。
ステップS7では、制御装置13は、ステップS1で設定した設定鋳造圧力に対する、ステップS5の射出動作における鋳造圧力の実測値の追従性の良否に基づいて、制御開始割合Raを補正する。
ステップS8では、制御装置13は、ステップS1で設定した設定鋳造圧力に対する、ステップS3の射出動作における鋳造圧力の実測値の追従性の良否に基づいて、増圧工程における流量調整弁29の開口度の補正を行う。
そして、制御装置13は、ステップS5に戻り、ステップS5〜S8を繰り返し実行する。
図6は、ステップS2の基準電圧初期設定について説明する図である。
図6において、横軸はサーボバルブ41に印加される電圧CSを示している。縦軸は、ロッド側室15r及び前側室15fの圧力PR、換言すれば、隙間流れ圧力を示している。実線L11は、電圧CSと圧力PRとの相関を示している。
図6に示されるような電圧CSと圧力PRと相関を示すマップは、製造者又は作業者により、理論計算や実験などに基づいて予め作成され、制御装置13は、そのマップのデータを保持している。そして、制御装置13は、そのデータに基づいて、圧力PRの目標値PR0に対応する電圧CS(基準電圧CS0)を特定する。なお、制御装置13は、マップのデータに代えて、電圧CSと圧力PRとの相関を示す計算式を用いてもよい。
目標値PR0は、ステップS1で入力された設定鋳造圧力に基づいて制御装置13により算出される。具体的には、以下のとおりである。
制御装置13は、入力装置69に対する操作などにより、予め、上述した(1)式における各種の面積AHz、Ac、ARz、ARの値を取得し、保持している。また、後側室15gの圧力PHzは、上述した(2)式より算出可能であり、制御装置13は、入力装置69に対する操作などにより、(2)式で用いられるPACC及びRDも予め保持している。
一方、上述した(1)式より、下記の(3)式が得られる。
PR=(PHz×AHz−Pc×Ac)/(ARz+AR) (3)
従って、制御装置13は、ステップS1で入力された設定鋳造圧力を(3)式のPcに代入することにより、設定鋳造圧力に対応した隙間流れ圧力の目標値PR0を取得することができる。
図7(a)及び図7(b)は、図5のステップS6の基準電圧補正について説明する図である。
図7(a)において、横軸は時間tを示し、縦軸は鋳造圧力Pcを示している。実線L13は、ヘッド側圧力センサ73及びロッド側圧力センサ75により検出された鋳造圧力の実測値の時間変化を示している。
制御装置13は、射出動作(図5のステップS5)が終了すると、鋳造圧力の実測値と設定鋳造圧力PC0との偏差ΔPCを算出する。偏差は、例えば、所定の偏差算出期間Taにおける鋳造圧力の実測値と設定鋳造圧力PC0との差の平均値とする。中央値などの平均値以外の代表値が用いられてもよい。偏差算出期間Taの開始時点及び長さは適宜に設定されてよい。例えば、偏差算出期間Taの開始時点は、保圧終了時点teから、製造者又は作業者により予め設定された時間遡った時点taから開始される。また、偏差算出期間Taの長さは、製造者又は作業者により、te−taよりも短い範囲で予め設定される。
次に、制御装置13は、算出した鋳造圧力の偏差ΔPCを、射出圧力の偏差ΔPCHに変換する。具体的には、以下の式により表わされる計算を実行する。
ΔPCH=ΔPC/RCH
RCH=AHz/Ac
なお、設定鋳造圧力PC0を射出圧力に換算しておき、その換算値と実測射出圧力とから射出圧力の偏差ΔPCHが算出されてもよい。
図7(b)において、横軸は射出圧力の偏差ΔPCHを示し、縦軸は基準電圧補正量ΔVkを示している。実線L15は、偏差ΔPCHと基準電圧補正量ΔVkとの対応関係を示している。
図7(b)に示されるような対応関係を示すマップは、製造者又は作業者により、理論計算や実験などに基づいて予め作成され、制御装置13は、そのマップのデータを保持している。そして、制御装置13は、そのデータに基づいて、実測された偏差ΔPCHに対応する補正量ΔVkを特定する。なお、制御装置13は、マップのデータに代えて、偏差ΔPCHと補正量ΔVkとを対応付けた計算式を用いてもよい。また、図7(b)では、偏差ΔPCHと補正量ΔVkとの関係が線形となっているが、当該関係は2次曲線などにより表わされてもよい。
そして、制御装置13は、現在の基準電圧CSnに基づいて、次回の基準電圧CSn+1を以下の(4)式により算出する。
偏差ΔPCH≧0では、
CSn+1=CSn−K×ΔVk
偏差ΔPCH<0では、
CSn+1=CSn+K×ΔVk (4)
ただし、K×ΔVk≧0である。Kは、補正係数であり、製造者や作業者により理論計算や実験などに基づいて予め定められ、制御装置13に保持されている。
図8(a)〜図8(c)は、図5のステップS7の隙間流れ圧力の制御開始条件補正について説明する図である。
図8(a)及び図8(b)において、横軸は時間tを示し、縦軸は鋳造圧力Pcを示している。点線L20は、図5のステップS1で設定された設定鋳造圧力及び設定昇圧時間により規定される設定鋳造波形を示し、実線L21は、制御開始条件の補正前の実測鋳造波形を示し、一点鎖線L22は、制御開始条件の補正後の実測鋳造波形を示している。
図8(a)において、制御開始条件の補正前においては、時点tS0において、サーボバルブ41を遮断状態とする制御が開始されている。そして、実線L21で示すように、オーバーシュートが生じている。そこで、ステップS7では、制御開始時点を、時点tS0よりも前の時点ts1に補正する。これにより、一点鎖線L22で示すように、オーバーシュートの発生が抑制される。
図8(b)において、制御開始条件の補正前においては、時点tS0において、サーボバルブ41を遮断状態とする制御が開始されている。そして、実線L21で示すように、アンダーシュートが生じている。そこで、ステップS7では、制御開始時点を、時点tS0よりも後の時点ts1に補正する。これにより、一点鎖線L22で示すように、アンダーシュートの発生が抑制される。
オーバーシュート又はアンダーシュートの発生は、例えば、所定の検出時間Tsにおける実測鋳造圧力の最大値PCFmaxと設定鋳造圧力との偏差ΔPCFを算出し、その大きさ及び正負に基づいて判別可能である。検出時間Tsの開始時点及び長さは適宜に設定されてよい。例えば、検出時間Tsの開始時点は、隙間流れ圧力の制御開始時点tS0とされ、検出時間Tsの長さは、理論計算や実験などに基づいて、隙間流れ圧力の制御開始から実測鋳造圧力が設定鋳造圧力に収束するのに要する時間よりも短い時間とされる。
補正後の制御開始時点tS1は、例えば、補正前の制御開始時点tS0に対して、偏差ΔPCFの大きさに応じた差で離れた時点に設定される。具体的には、以下のとおりである。
図8(c)において、横軸は、偏差ΔPCFを示し、縦軸は、制御開始条件補正率ΔRa(%)を示している。実線L25は、偏差ΔPCFと制御開始条件補正率ΔRaとの対応関係を示している。
図8(c)に示されるような対応関係を示すマップは、製造者又は作業者により、理論計算や実験などに基づいて予め作成され、制御装置13は、そのマップのデータを保持している。そして、制御装置13は、そのデータに基づいて、実測された偏差ΔPCFに対応する補正率ΔRaを特定する。なお、制御装置13は、マップのデータに代えて、偏差ΔPCFと補正率ΔRaとを対応付けた計算式を用いてもよい。また、図8(c)では、偏差ΔPCFと補正率ΔRaとの関係が線形となっているが、当該関係は2次曲線などにより表わされてもよい。
そして、制御装置13は、現在の制御開始割合Ranに基づいて、次回の制御開始割合Ran+1を次式により算出する。
ΔPCF≧0では、
Ran+1=Ran−Kf×ΔRa
ΔPCF<0では、
Ran+1=Ran+Kf×ΔRa
ただし、Kf×ΔRa≧0である。Kfは、補正係数であり、製造者や作業者により理論計算や実験などに基づいて予め定められ、制御装置13に保持されている。
以上の実施形態によれば、ダイカストマシンDC1の射出装置1は、プランジャ5と、シリンダ装置7と、サーボバルブ41と、制御装置13とを有する。サーボバルブ41は、ロッド側室15rとタンク33及びポンプ31の一方とを接続した状態、ロッド側室15rとタンク33及びポンプ31の他方とを接続した状態、及び、ロッド側室15rとタンク33及びポンプ31の双方とを遮断した状態の間で切り換え可能であり、ロッド側室15rとタンク33及びポンプ31の双方とを遮断した状態におけるポンプ31からタンク33への隙間流れによって生じ、ロッド側室15rに付与される隙間流れ圧力を制御可能である。制御装置13は、プランジャ5によりキャビティ105内の溶湯の圧力を上昇させる増圧工程において、溶湯の圧力が隙間流れ圧力の制御によって所定の設定鋳造圧力になるようにサーボバルブ41を制御する。
従って、例えば、ヘッド側室15hの圧力が一定であっても、鋳造圧力を任意の値に制御することができる。その結果、例えば、アキュムレータ21を常に最大の充填圧力で利用することができる。また、特許文献1の技術に比較して、サーボバルブ41を閉じた後にも鋳造圧力を制御できるという有利な効果が奏される。さらに、サーボバルブ41を開閉してロッド側室15rの圧力を調整する場合に比較して、ゲインが小さいことから、制御が安定しやすいという有利な効果が奏される。
サーボバルブ41は、弁スリーブ51と、弁スリーブ51内を摺動可能なスプール53とを有する。弁スリーブ51には、ロッド側室15rに接続されたシリンダポート55Cと、シリンダポート55Cに対してスプール53の摺動方向の一方側に位置し、ポンプ31に接続されたポンプポート55Pと、シリンダポート55Cに対してスプール53の摺動方向の他方側に位置し、タンク33に接続されたタンクポート55Tと、が形成されている。スプール53は、シリンダポート55Cとタンクポート55T及びポンプポート55Pの双方とを遮断する遮断範囲RgCと、遮断範囲RgCに対してスプール53の摺動方向の一方側に位置し、シリンダポート55Cとポンプポート55Pとを接続し、シリンダポート55Cとタンクポート55Tとを遮断するポンプ接続範囲RgPと、遮断範囲RgCに対してスプール53の摺動方向の他方側に位置し、シリンダポート55Cとタンクポート55Tとを接続し、シリンダポート55Cとポンプポート55Pとを遮断するタンク接続範囲RgTとに亘って移動可能である。そして、スプール53の遮断範囲RgC内における位置制御により隙間流れ圧力が制御される。
従って、サーボバルブ41は、汎用されているスプール式の3ポート3位置のサーボバルブにより構成することができる。また、スプールの位置と隙間流れ圧力との相関が簡潔であり、制御が容易化される。
射出装置1は、溶湯の圧力を検出可能なセンサ(ヘッド側圧力センサ73及びロッド側圧力センサ75)を更に備える。制御装置13は、センサ(73、75)により検出される鋳造圧力が設定鋳造圧力に収束するように、複数のショット間において、隙間流れ圧力の大きさのフィードバック制御を行う(ステップS6)。従って、金型や溶湯の温度上昇などの鋳造条件の変化に適応して、鋳造圧力を好適に制御することができる。
制御装置13は、サーボバルブ41を、ロッド側室15rとタンク33とを接続した状態からロッド側室15rとタンク33及びポンプ31の双方とを遮断した状態へ切り換えて増圧工程における隙間流れ圧力の制御を開始し、センサ(73、75)により検出された圧力が設定鋳造圧力に対してオーバーシュートしたときは、その後のショットにおいて、隙間流れ圧力の制御を開始するタイミングをオーバーシュートが生じたショットよりも早める(ステップS7)。また、制御装置13は、センサ(73、75)により検出された圧力が設定鋳造圧力に対してアンダーシュートしたときは、その後のショットにおいて、隙間流れ圧力の制御を開始するタイミングをアンダーシュートが生じたショットよりも遅らせる(ステップS7)。従って、オーバーシュート及びアンダーシュートの改善が図られる。
射出装置1は、ヘッド側室15hの作動液に作用する増圧ピストン18の背後のシリンダ室である、増圧工程において作動液が供給される後側室15gへ作動液を供給可能なアキュムレータ21と、アキュムレータ21から後側室15gへの作動液の流量を無段階に制御可能な流量調整弁29とを更に有する。制御装置13は、増圧工程において、隙間流れ圧力の制御とともに、流量調整弁29を全開よりも小さい所定の開口度とする制御を行う。従って、アキュムレータ21の圧力は最大値で用いつつ、オーバーシュート(サージ圧)の発生を抑制することができる。
なお、以上の実施形態において、ダイカストマシンDC1は本発明の成形機の一例であり、溶湯は本発明の成形材料の一例であり、固定金型101及び移動金型103は本発明の金型の一例であり、射出ピストン17は本発明のピストンの一例であり、ポンプ31は本発明の液圧源の一例であり、ヘッド側圧力センサ73及びロッド側圧力センサ75は本発明のセンサの一例であり、後側室15gは本発明の増圧用シリンダ室の一例である。
(第2の実施形態)
第2の実施形態の射出装置のハードウェアの構成は、第1の実施形態の射出装置1と同様であり、説明は省略する。第2の実施形態の射出装置は、隙間流れ圧力のフィードバック制御を各ショット内においても行う点が第1の実施形態と相違する。
図9(a)及び図9(b)は、第2の実施形態に係る射出装置の各ショット内のフィードバック制御を説明する図である。図9(a)において、横軸は時間tを示し、縦軸は鋳造圧力Pcを示し、実線L31は、実測された鋳造圧力の時間変化を示している。この図に示されるように、第2の実施形態では、制御装置13は、各ショット内において、所定の時間刻みΔt毎に偏差ΔPcを算出する。図9では、時点t1〜時点t3において、偏差ΔPcが算出されている様子を例示している。
そして、制御装置13は、算出された偏差ΔPcに基づいて、偏差ΔPcが縮小されるように、電圧CSのフィードバック制御を行う。制御は、比例制御やPID制御など適宜な制御方式が用いられてよく、また、第1の実施形態における複数のショット間におけるフィードバック制御と同様に、偏差ΔPcと補正量とを対応付けたマップが用いられてもよい。
図9(b)において、横軸は時間tを示し、縦軸はサーボバルブ41に印加される電圧CSを示している。実線L33は、サーボバルブ41に実際に印加された電圧を示している。図9(b)では、時点t1〜t2においては、時点t1の偏差ΔPcに基づいて電圧CSが補正され、時点t2〜t3においては、時点t2の偏差ΔPcに基づいて電圧CSが補正され、時点t3〜t4においては、時点t3の偏差ΔPcに基づいて電圧CSが補正されている場合を例示している。
また、第2の実施形態では、2ショット目以降の基準電圧CS0は、前回のショットの基準電圧を補正して得るのではなく、前回のショットにおいて実際に印加された電圧CSの平均値を補正して得られる点が第1の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
図10は、第2の実施形態に係る射出装置の複数のショット間のフィードバック制御を説明する図である。図10において、横軸は時間tを示し、縦軸はサーボバルブ41に印加される電圧CS又は鋳造圧力Pcを示し、実線L35は、実際にサーボバルブ41に印加された電圧CSの時間変化を示し、実線L37は、実測された鋳造圧力Pcの時間変化を示し、点線L39は、設定鋳造波形を示している。
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、制御装置13は、ショット間の偏差ΔPcとして、所定の偏差算出期間Taにおける鋳造圧力Pcの実測値と設定鋳造圧力PC0との差の平均値を算出し、その偏差ΔPcに基づいて、基準電圧補正量ΔVkを算出する。
また、制御装置13は、偏差算出期間Taにおいて、実際にサーボバルブ41に印加された電圧CSの平均値も算出する。実際に印加された電圧CSは、例えば、印加する電圧CSを決定したときのログ又は不図示の電圧計から得られる。そして、制御装置13は、電圧CSの平均値を第1の実施形態で示した(4)式のCSnとし、次回の基準電圧CSn+1を算出する。
以上の実施形態によれば、ショット内においても隙間流れ圧力の大きさのフィードバック制御が行われることから、より正確に実測鋳造圧力を設定鋳造圧力に収束させることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態の射出装置のハードウェアの構成は、第1の実施形態の射出装置1と同様であり、説明は省略する。また、第3の実施形態の射出装置は、第2の実施形態の射出装置と同様に、隙間流れ圧力のフィードバック制御を各ショット内においても行う。ただし、第3の実施形態の射出装置は、一定時間、第1の実施形態と同様に基準電圧のみによる隙間流れ圧力の制御を行う点が第2の実施形態と相違する。
図11は、第3の実施形態に係る射出装置のフィードバック制御を説明する図である。図11において、横軸は時間tを示し、縦軸はサーボバルブ41に印加される電圧CS又は鋳造圧力Pcを示し、実線L41は、サーボバルブ41に印加された電圧CSの時間変化を示し、実線L43は、設定鋳造圧力又は実測された鋳造圧力の時間変化を示している。
制御装置13は、隙間流れ圧力の制御開始時点ts4が到来すると、所定の基準電圧出力時間Tcsの間、第1の実施形態と同様に、予め設定された基準電圧CS0がサーボバルブ41に印加されるように制御信号を出力し、隙間流れ圧力を一定とする。そして、基準電圧出力時間Tcsが経過した後は、第2の実施形態と同様に、所定の時間刻み毎の偏差に基づくフィードバック制御を行う。なお、基準電圧出力時間Tcsは、製造者及び作業者が適宜に設定してよい。
第3の実施形態によれば、鋳造圧力若しくは隙間流れ圧力の制御の過渡期においては、制御の安定化が図られ、制御が安定した後は、フィードバック制御による制御の精度向上が図られる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、プラスチック射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、射出装置は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出であってもよい。作動液は、油に限定されず、例えば水でもよい。
シリンダ装置は、増圧式のものに限定されない。増圧シリンダ部(15b)及び増圧ピストン(18)を有さない、いわゆる単動式のものであってもよい。また、シリンダ装置は、増圧式の場合において、射出シリンダ部と増圧シリンダ部とが分離したものであってもよい。
なお、シリンダ装置が単動式の場合においては、増圧工程及び保圧工程時において、アキュムレータからの作動液はヘッド側室(15h)に供給される。流量調整弁は、アキュムレータとヘッド側室との間に設けられ、高速射出の完了後から増圧工程の開始までの間に、高速射出時よりも開口度が小さくされる。
また、シリンダ装置が増圧式の場合において、前側室(15f)は、ロッド側室(15r)とは別個にタンクに接続され、増圧工程及び保圧工程においてタンク圧とされてもよい。
隙間流れを生じさせる液圧源は、ポンプに限定されない。例えば、液圧源は、ピストンが電動機により駆動される作動液供給用のシリンダ装置であってもよい。
隙間流れが生じるサーボバルブは、スプール式のものに限定されない。例えば、スライド式の弁であってもよい。スライド式の弁は、スプール式と同様に、摺動板がタンクポート及びポンプポートを塞いだ状態でこれらのポートに対してスライドすることにより、隙間流れ圧力を制御できる。また、サーボバルブは、3ポート3位置の切換弁に限定されない。例えば、サーボバルブは、4ポート以上のものであってもよい。また、サーボバルブの駆動方式は、電気−液圧式に限定されず、例えば、電気式又は液圧式であってもよい。
隙間流れが生じるサーボバルブは、射出時におけるロッド側室からの作動液の排出、又は、プランジャの後退時におけるロッド側室への作動液の供給に寄与するものでなくてもよい。例えば、ロッド側室の作動液は、ランアラウンド回路によりヘッド側室に排出されてもよい。
隙間流れ圧力は、各ショット内において一定の値に制御され、且つ、複数のショット間で同一の大きさに制御されてもよい。この場合であっても、設定圧力が変更されたときに隙間流れ圧力が変化すれば、隙間流れ圧力の制御によって設定圧力が得られるようにサーボバルブが制御されていると特定することができる。
隙間流れ圧力の大きさが複数のショット間においてフィードバック制御される場合、直前の1ショットの偏差だけでなく、直前の少数のショットの偏差の平均値等に基づいてフィードバック制御が行われてもよい。同様に、隙間流れ圧力の大きさが各ショット内においてフィードバック制御される場合、直前の1時点の偏差だけでなく、直前の少数の時点の偏差の平均値等に基づいてフィードバック制御が行われてもよい。隙間流れ圧力の制御開始タイミングの補正についても、直前の1ショットの偏差だけでなく、直前の少数のショットの偏差の平均値等に基づいて補正が行われてもよい。このような平均値に基づくフィードバックでは、突発的な外乱に対する過剰な応答が抑制される。
成形材料の圧力を検出するセンサは、ロッド側室の圧力とヘッド側室の圧力とを算出するものに限定されない。例えば、センサは、キャビティ内に露出して成形材料の圧力を直接検出するものであってもよい。
アキュムレータや流量調整弁は本発明の必須要件ではない。例えば、ピストンが電動機により駆動される作動液供給用のシリンダ装置により、射出用のシリンダ装置に作動液が供給され、射出や増圧が行われてもよい。