ここで、レーザ加工は薄板Wに張力を付与した状態で施され、レーザ加工後は緊張が開放され、薄板Wは緊張前の状態に戻る。張力が付与されることで薄板Wが所定の変形比率で均一に弾性変形するのであれば、目標寸法に変形比率を乗じた補正寸法に基づいてレーザ加工を行うことで、緊張が開放されて弾性回復した薄板Wは目標寸法通りの加工が行われたこととなる。
これに対して、従来は複数の別々の押え部材102(図6参照)で受部材101に薄板Wが押し付けられるため、押え部材102の押し付け方によっては、受部材101の長さ方向に沿って薄板Wに歪みが生じることがあった。受部材101の長手方向に沿って薄板Wに歪みが生じると、薄板Wを緊張させたときの変形比率が受部材101の長手方向でばらつき、変形比率が不規則となるため、正確な補正寸法を算出することが困難であった。従って、薄板Wに目標寸法通りの加工を施すことができず、薄板Wの加工精度が低下する。
また、薄板Wの寸法(縦横の長さ)は薄板Wの一つの製造ロット内では安定しているが、製造ロット間では公差の範囲内で変動している。薄板Wの寸法が向かい合う壁部101a間の距離Lより長くなると、薄板Wの両端が壁部101aに突き当たって薄板Wが弛んでしまう。この場合には、受部材101と押え部材102との間に薄板Wを挟持して薄板Wを緊張させたとしても、薄板Wに十分な張力を付与できず、極端な場合には薄板Wに弛みが残ることがあった。このような場合は、十分な張力を薄板Wに付与できた場合と比べて薄板Wの変形比率が変わるため、上記と同様に加工精度が低下する。
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、加工精度を向上できるレーザ加工機および保持装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために、請求項1記載のレーザ加工機によれば、保持装置は、薄板が載上される載上面を有する受部材と、その受部材の載上面の後端側に立設される壁部と、その壁部の上端と連絡され載上面と段差状に形成される上段部に一端側が配設される付勢部材と、その付勢部材により上向きに付勢されつつ、載上面と所定の間隔をあけて載上面の長手方向に沿って対向する押圧面を有する押え部材とを備えているので、付勢部材によって形成される受部材と押え部材との隙間に薄板を容易に差し込むことができる。
また、壁部によって載上面と段差状に形成された上段部に付勢部材の一端側が配設されているので、受部材と押え部材との間に薄板を差し込むときに、薄板は壁部に邪魔されて付勢部材に達することができない。これにより、薄板の端部が突き当たって付勢部材が損傷することを防止できる。さらに、締付具を備えているので、薄板を差し込んで受部材の載上面に載上した後、押え部材の押圧面を薄板に押し付けることで、薄板を保持装置に保持できる。
また、押え部材は、第2挟持部の相対移動方向と直交方向における薄板の幅よりも長く形成される押圧面を有しているので、薄板の幅全体を単一の押え部材で押えることができ、押え部材の押圧面と受部材の載上面との間で歪みが生じることなく薄板を挟持できる。その結果、受部材の長手方向に亘って薄板の弾性変形量にばらつきが生じることを防ぎ、加工精度を向上できる効果がある。
また、第2挟持部が第1挟持部から離反する方向に相対移動する前の状態において、第1挟持部および第2挟持部の受部材にそれぞれ立設された壁部の下端部間の距離は、薄板の寸法公差の最大値よりも大きく設定されているので、薄板の寸法が公差の範囲内で最大値側に変動しても、受部材と押え部材との間に差し込まれる薄板の端部が壁部に突き当たることを防止できる。これにより、受部材と押え部材との間で、薄板に弛みが生じることなく挟持することができ、薄板を緊張させることで薄板に十分な張力を安定して付与することができる。よって、加工精度を向上できる効果がある。
請求項2記載のレーザ加工機によれば、受部材の載上面と押え部材の押圧面とが上下に重なる部位の受部材または押え部材の一方の壁部から遠い側に配設され、受部材または押え部材の他方に向かって光ビームを照射する光ビーム照射部と、受部材または押え部材の他方に形成され照射された光ビームが入射される透孔とを備えているので、透孔に入射される光ビームの有無を検知することによって、薄板の寸法が透孔の位置に達しないような短いものであるかを検出できる。薄板の寸法が短いときは、受部材の載上面と押え部材の押圧面とによる挟持や緊張が不完全になり、加工精度が低下することがあるが、レーザ加工前に薄板の寸法が短いかを判別できるため、請求項1記載のレーザ加工機の奏する効果に加え、薄板の寸法が短いことに気づかずに加工が行われることによる加工精度の低下を防止できる効果がある。
請求項3記載のレーザ加工機によれば、押え部材の押圧面または受部材の載上面は、第2挟持部の引張方向に沿って壁部から離れるにつれ互いに近づく方向に傾斜しているので、受部材と押え部材とによる薄板の挟持および第2挟持部と第1挟持部との離反により、押圧面または載上面の内側の縁が薄板に食い込むような力が働いて薄板を押止できる。その結果、受部材と押え部材との間に挟持される薄板に、引張力を損失なく付与することができ、制御された状態で薄板を弾性変形させることができる。その結果、請求項1又は2に記載のレーザ加工機の奏する効果に加え、加工精度を向上できる効果がある。
請求項4記載のレーザ加工機によれば、壁部は、下部側に対して上部側が加工ヘッドの方向に向かってそれぞれせり出しているので、受部材と押え部材との間に差し込まれる薄板の先端が、壁部に突き当たって受部材に収まり、壁部を乗り越えてしまうことが防止される。これにより、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ加工機の奏する効果に加え、受部材と押え部材とに挟まれる薄板が、壁部で折れ曲げられてしまうことを防止できる効果がある。
請求項5記載の保持装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載のレーザ加工機に使用される保持装置と同等の効果がある。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態におけるレーザ加工機1のXYステージ3の平面図である。レーザ加工機1は、被加工物としての金属製の薄板Wにレーザ光を照射することにより薄板Wを切断する装置である。レーザ加工機1は、集光したレーザ光を薄板Wに照射する加工ヘッド(図示せず)と、その加工ヘッドとの間に薄板Wを挟み込む加工台2とが定盤に対して固定配置されると共に、加工ヘッドから照射されるレーザ光の光軸に対して直交する方向に平面移動可能にXYステージ3が取り付けられ、加工ヘッドからのレーザ光の照射やXYステージ3のXY方向への移動或いはシリンダ40の駆動力などが制御装置(図示せず)によって制御される。
図1に示すようにXYステージ3は、所定間隔を隔てて対向する2本の長枠部材3a,3bの端部同士を2本の短枠部材3c,3dで連結して、平面視略額縁状に形成されている。なお、XYステージ3は長枠部材3a,3b及び短枠部材3c,3dに複数本の補強部材(図示せず)が連結され、それら各補強部材により箱状に形成されることで、全体としての剛性が補強されている。
XYステージ3には、薄板Wを保持する保持装置10が配設されている。保持装置10は、第1挟持部20及び第2挟持部30を備えて構成されている。第1挟持部20及び第2挟持部30は、短枠部材3c,3dに平行に配設された固定部材21及び可動部材31をそれぞれ備えており、固定部材21は、短枠部材3cの内側に沿って長枠部材3a,3b間に架設され、それら長枠部材3a,3bに対して締結ボルト31aによって締結固定される。なお、長枠部材3a,3bにはその長手方向(図1左右方向)に沿って所定間隔毎に締結孔(図示せず)が形成されており、固定部材21は薄板Wの大きさに応じた位置に固定される。可動部材31は、短枠部材3dの内側に沿って設けられ、その長手方向両端部(図1上下方向端部)がガイド部材4の案内面(図示せず)に摺動可能に保持されている。
第1挟持部20及び第2挟持部30は、固定部材21及び可動部材31の上面の縁部に沿って配設される細長い板状の受部材22,32(図3参照)と、受部材22,32の上部に配設される押え部材23,33と、その押え部材23,33に押圧力を付与する締付具24,34とを備えている。締付具24,34は、固定部材21及び可動部材31にそれぞれ4個がXYステージ3の幅方向(図1上下方向)中央を通る仮想線(図示せず)に対して対称となる位置に配設されている。
また、可動部材31の短枠部材3d側の側面には、短枠部材3dに取着されたシリンダ40がリンクLを介して連結されている。さらに可動部材31と短枠部材3dとは、連結部材50により連結されている。なお、シリンダ40は、可動部材31よりもXYステージ3の幅方向外側となる位置であってXYステージ3の幅方向(図1上下方向)中央を通る仮想線(図示せず)に対して対称となる位置に1個ずつが配設されている。連結部材50(図2参照)は、シリンダ40よりもXYステージ3の幅方向内側なる位置であって仮想線に対して対称となる位置に1個ずつが配設されている。
次いで、図2を参照して可動部材31近傍の詳細構成について説明する。図2はレーザ加工機1のXYステージ3の部分拡大平面図である。図2に示すように、シリンダ40はロッド41を可動部材31側へ向けた状態で短枠部材3dに取着され、ロッド41の先端には、リンクLの一端側が揺動可能にピン結合されている。一方、リンクLの他端側には、可動部材の側面に締結固定されたステー部材42が揺動可能にピン結合されている。
これにより、シリンダ40を動作させ、ロッド41を収縮駆動した場合には、その収縮力により可動部材31がリンクLを介してシリンダ40側(図2右側)へ引き寄せられ、薄板Wに張力が付与されるので、薄板Wを緊張させた状態でXYステージ3(図1参照)に保持できる。また、この場合、可動部材31の長手方向両端部がガイド部材4の案内面に前後左右方向へ摺動可能に保持されると共に、2本のリンクLを介して(図1参照)可動部材31がシリンダ40に連結されているので、薄板Wが若干弛んだ状態で固定されていたとしても、可動部材31を水平方向に傾けて、薄板Wを均一に緊張させることができる。
なお、シリンダ40は空気圧を利用してロッド41を伸縮駆動するエアシリンダであり、ロッド41の伸長駆動および収縮駆動の両方向を空気圧により動作させる復動型シリンダとして構成されている。よって、シリンダ40の駆動圧を開放(大気放出)することで、シリンダ40から可動部材31へ付与されている駆動力を解除することができる。
連結部材50は、可動部材31と短枠部材3dとを連結する部材であり、可動部材31の側面に締結ボルトにより締結固定され短枠部材3dへ向けて突出される平板状のストッパ部材51の底面が当接される平板状の基体部材52と、それらストッパ部材51の底面と基体部材52の上面とが摺動可能とされている。
ストッパ部材51及び基体部材52は、上面及び底面が互いに平行な平坦面として形成され、それら上面および底面がシリンダ40の伸縮方向と平行となるように配設されている。よって、シリンダ40の伸縮に伴う可動部材の平行移動時には、ストッパ部材51の底面と基体部材52の上面とが摺動可能とされている。
ストッパ部材51には、シリンダ40におけるロッド41の伸縮方向と平行に延設される平面視長円状の長穴51aが板厚方向に貫通形成され、基体部材52には、ストッパ部材51の長穴51aに対応する位置に平面視円形の軸挿通孔(図示せず)が板厚方向に貫通形成されている。また、短枠部材3dには、基体部材52の軸挿通孔に対応する位置に平面視円形の貫通孔(図示せず)が板厚方向に貫通形成されている。ハンドル部53は締結軸部材54の上部に螺着され、その締結軸部材54は、これら長穴51a、貫通孔にそれぞれ挿通され(図2紙面垂直方向)、下端にダブルナット機能を有する締結ナット部(図示せず)が回動不能に螺着されている。
これにより、ハンドル部53を回転させてハンドル部53を締結軸部材54に対して螺進させることで、ストッパ部材51及び基体部材52を締結ナット部(短枠部材3d)とハンドル部53との間で挟圧保持することができ(以下、この状態を「締結状態」と称す)、可動部材31と短枠部材3dとを連結部材50により締結することができる。即ち、薄板Wの切断加工を行うときには、シリンダ40の収縮力により可動部材31を短枠部材3d側へ引き寄せ、薄板Wの張力の付与による緊張状態を形成した後に、ハンドル部53の操作により連結部材50を締結状態とし、可動部材31と短枠部材3dとを連結部材50により連結する。その結果、薄板Wに切断加工が施される過程における薄板Wの伸び量を規制できる。
次に、図3から図5を参照して、保持装置10の詳細構成について説明する。図3は図2のIII−III線における保持装置10(第2挟持部30)の断面図である。なお、ここでは第2挟持部30の構成を説明して、同様に構成される第1挟持部20については説明を省略する。
図3に示すように、第2挟持部30は、薄板Wが載上される載上面32aが内側(図3左側)に形成される受部材32と、その受部材32の載上面32aの後端側(図3右側)に立設される壁部32bと、その壁部32bの上端と連絡され載上面32aと段差状に形成される上段部32cに一端側が固定される付勢部材35と、その付勢部材35の他端側が固定(当接)されて上向きに付勢されつつ、載上面32aと所定の間隔をあけて載上面32aの長手方向に沿って対向する押え部材33を備えて構成されている。
受部材32は、可動部材31の上面の内側(図3左側)縁部近傍にボルト等によって固定されており、載上面32aは受部材32の長手方向に亘って薄板Wの幅(図1上下方向)よりも長く形成されている。載上面32aには、長手方向に亘って凹凸面となるように溝部32a1が形成されている。載上面32aの内側端部には、突条状に形成された凸部32dが長手方向に亘って上向きに凸設されている。
壁部32bは、載上面32aの後端側(図3右側)に受部材32の長手方向(図3紙面垂直方向)に亘って立設されており、下部(図3下側)よりも上部が内側(図3左側)にせり出して形成されている。壁部32bの上部が下部よりもせり出しているため、載上面32aと押え部材33の押圧面33aとの間に薄板Wを差し込んだときに、差し込まれた薄板Wの先端が壁部32bを乗り越えてしまうことが防止される。なお、薄板Wが壁部32bを乗り越えてしまうと、受部材32に押え部材33を押し付けたときに、薄板Wの先端が壁部32bや上段部32cで折曲されてしまう。薄板Wへのレーザ加工は、薄板Wの一方の面からレーザ光を照射して切断した後、薄板Wを裏返して反対面にレーザ光で文字等を刻設することがあるが、薄板Wの先端が折曲されてしまうと、裏返した薄板Wの挟持が困難になるので、これを防止する必要があるからである。
上段部32cは、壁部32bの上端と連絡され載上面32aと段差状に形成される部位であり、受部材32の両端(図1上下方向)近傍の2箇所に、貫通孔32eが、上段部32cの上面から受部材32の底面に亘って貫通形成されている。付勢部材35は、圧縮コイルばねで形成されており、貫通孔32eに一端側から挿入されて可動部材31の上面と押え部材33の下面との間で圧縮されている。付勢部材35は、壁部32bによって載上面32aと段差状に形成された上段部32cに収装されているので、受部材32と押え部材33との間に薄板Wを差し込むときに、薄板Wは壁部32bに邪魔されて付勢部材35に達することができない。よって、薄板Wの端部が突き当たって付勢部材35が損傷することを防止できる。
押え部材33は、受部材32の上段部32cが収装される凹溝33bが長手方向に亘って形成されている。押え部材33に凹溝33bが形成されており、これに受部材32の上段部32cが収装される。そのため、受部材32に対して押え部材33が短手方向(図3左右方向)に位置ずれすることが防止される。また、凹溝33bの底面に付勢部材35の他端部が当接され、付勢部材35が可動部材31と押え部材33との間で圧縮されることにより、押え部材33は上向きに付勢される。このように、付勢部材35によって押え部材33が上向きに付勢されているので、載上面32aと押圧面33aとの間に隙間を設けておくことができる。保持装置10で薄板Wを保持する場合には、まず、この隙間に薄板Wを差し込めば良いので、容易に作業を行うことができる。
押圧面33aは、凹溝33bより内側(図3左側)に長手方向に亘って形成されている。押圧面33aは、受部材32の載上面32aに押圧される部位であり、長手方向に亘って凹凸面となるように溝部33a1が形成されている。押圧面33a及び載上面32aに溝部33a1,32a1が形成されているので、薄板Wを挟持したときに、それらの面と薄板Wとの摩擦抵抗を大きくすることができる。その結果、シリンダ40(図1及び図2参照)を収縮駆動して薄板Wを緊張させたときに、緊張させた薄板Wが押圧面33a及び載上面32aの間を滑って抜けてしまうことが抑制される。
押圧面33aの長手方向の長さは、可動部材31の相対移動方向(図3左右方向)と直交方向における薄板Wの幅よりも長く形成されている(図1及び図2参照)。これにより、押え部材33の押圧面33aと受部材32の載上面32aとの間で、薄板Wに歪みが生じることなく挟持できる。その結果、受部材32の長手方向に亘って薄板Wの弾性変形量にばらつきが生じることを防ぎ、加工精度を向上できる。
押圧面33aの短手方向の長さは、載上面32aの短手方向の長さより小さく形成されている。これにより、受部材32の載上面32aに薄板Wを載せた後、押え部材33の押圧面33aを薄板Wに押し付けると、図3に示すように、薄板Wは、載上面32aの内側に凸設された凸部32dに接触し、凸部32dから押圧面33aにかけて傾斜する。これにより、シリンダ40(図1及び図2参照)を駆動して薄板Wを緊張させたときに、その緊張力の分力が押圧面33aや載上面32aに作用する。その結果、摩擦抵抗をさらに大きくできるため、緊張させた薄板Wが滑って、押圧面33a及び載上面32aの間から抜けてしまうことが抑制される。
規制部36(図1及び図2参照)は、上向きに付勢された押え部材33の上方向への移動量を規制する部材であり、押え部材33の両端(図1上下方向)近傍の2箇所に配設されている。本実施の形態においては、規制部36は軸部36aと頭部36bとを備えたボルトで形成されており、押え部材33の厚さ方向(図3上下方向)に貫通形成された貫通孔に軸部36aが挿通され、その軸部36aは下端部が受部材32に螺着されている。頭部36bの外径は、軸部36aが挿通された押え部材33の貫通孔の内径より大きく設定されており、可動部材31の上面から頭部36bの下面までの高さは、付勢された押え部材33の上面が当接する高さに設定されている。その結果、頭部36bの下面に押え部材33の上面が当接することで、付勢された押え部材33のそれ以上の上方向への移動が規制される。
次に、図4を参照して、第2挟持部30の締付具について説明する。図4は図2のIV−IV線における保持装置10(第2挟持部30)の断面図である。なお、図4では、可動部材31の右側にみえるステー部材42の記載を省略している。
図4に示すように、第2挟持部30は、可動部材31の上面の外側(図4右側)縁部近傍にボルト等で固定された締付具34を備えている。締付具34は、押え部材33に形成された押圧面33aの上部を押圧する加圧体34aがリンク34bに取り付けられ、そのリンク34bが可動部材31の上面に固定されたブラケット34cにピン34dで連結されている。さらに持ち手34eがピン34fでリンク34bに連結されると共に、リンク34gを介してブラケット34cにピン34hで連結されている。
締付具34は以上のように構成されているので、持ち手34eを押し下げると、図4に示すように、加圧体34aが押え部材33を押し付けて、載上面32aと押圧面33aとの間に差し込んだ薄板Wが挟持される。また、持ち手34eを上方に上げると、リンク34bが時計回りに回動し加圧体34aが上方へ移動するので、押え部材33は付勢部材35(図3参照)による付勢力で上昇し、載上面32aと押圧面33aとに隙間が形成される。その結果、載上面32aと押圧面33aとの間で薄板Wを挟持させるために、この間に薄板Wを差し込むことが可能となる。
ここで、受部材32と押え部材33とに薄板Wを挟持させるためには、第2挟持部30が第1挟持部20(図1参照)から離反する方向に相対移動する前の状態(シリンダ40を伸長させて第2挟持部30と第1挟持部20との距離を近づけた状態)において、載上面32aと押圧面33aとの間に薄板Wを差し込むのであるが、第1挟持部20の受部材21に立設された壁部(図示せず)の下端部と、第2挟持部30の受部材32に立設された壁部32bの下端部との距離は、薄板Wの寸法公差の最大値よりも大きく設定されている。そのため、薄板Wの寸法が公差(±3mm程度)の範囲内で最大値側に変動しても、受部材32と押え部材33との間に差し込まれる薄板Wの端部が壁部32bに突き当たることを防止できる。
これにより、第1挟持部20と第2挟持部30との間で、弛みが生じることなく薄板Wを挟持することができ、薄板Wを緊張させることで薄板Wに十分な張力を安定して付与することができる。よって、薄板Wに付与する張力が薄板毎に変動して弾性変形量が変動することを防止できる。従って、レーザ光による加工精度を向上できる。
次に、図5(a)を参照して、光ビーム照射部60について説明する。図5(a)は図2のVa−Va線における保持装置10(第2挟持部30)の断面図である。図5(a)に示すように、第2挟持部30は、受部材32の載上面32aと押え部材33の押圧面33aとが上下に重なる部位の受部材32及び押え部材33に、上下に連通する透孔30a,30bが貫通形成されている。
透孔30a,30bは、それぞれ受部材32及び押え部材33の壁部32bから遠い側(図5左側)の挟持限界線の位置に形成されている。挟持限界線は、差し込まれた薄板Wの端部が挟持限界線を超えて壁部32b側にあれば、薄板Wを緊張させたときも載上面32aと押圧面33aとの間で薄板Wを挟持することができる限界を示す線である。これに対し、差し込まれた薄板Wの端部が挟持限界線を超えなければ、即ち載上面32aと押圧面33aとに挟まれる薄板Wの面積が狭くなれば、薄板Wを緊張させたときに載上面32aと押圧面33aとの間から薄板Wが抜けてしまうおそれが生じる。
本実施の形態においては、受部材32aに形成された透孔30aに、他方の透孔30bに向かって光ビームを照射する光ビーム照射部60が収装されており、押え部材33に形成された透孔30bには、透孔30bに入射された光ビームを受ける受光部61が収装されている。受光部61はケーブルCを介して光ビームの検出の有無を出力回路(図示せず)に入力し、出力回路はその検出結果を処理して制御装置(図示せず)に出力する。
制御装置は、加工ヘッドからのレーザ光の照射やXYステージ3のXY方向への移動或いはシリンダ40の駆動力などを制御する装置であり、受光部61が光ビームを検出した場合は、載上面32aと押圧面33aとに挟まれる薄板Wの面積が狭く、薄板Wを緊張させたときに載上面32aと押圧面33aとの間から薄板Wが抜けてしまうおそれが生じると判断されるため、警告音などによる作業者への報知がなされ、レーザ加工機1の動作を待機状態とする。
これに対し、受光部61が光ビームを検出しない場合は、差し込まれた薄板Wが挟持限界線(透孔30a,30bの位置)を越えていると判断されるため、シリンダ40(図1参照)を駆動させて薄板Wを緊張させ、レーザ加工を継続する。薄板Wの寸法が短いときは、受部材32の載上面32aと押え部材33の押圧面33aとによる薄板Wの挟持や緊張が不完全になり、薄板Wが抜けてしまう不具合が生じたり加工精度が低下したりすることがある。しかし、レーザ加工機1は光ビーム照射部60を備えており、レーザ加工前に薄板Wの寸法が短いかを判別できるため、薄板Wの寸法が短いことに気づかずに加工が行われることによる不具合や加工精度の低下を防止できる。
次に、図5(b)を参照して、押え部材33及び受部材32の形状について説明する。図5(b)は締付具34(図4参照)を開放したときの押え部材33及び受部材32の断面図である。図5(b)に示すように、押え部材33の押圧面33aは、第2挟持部30の相対移動方向(図5左右方向)に沿って壁部32bから離れるにつれて、受部材32の載上面32aに近づく方向に傾斜して構成されている。
これにより、薄板Wを載上面32aに載せてから締付具34(図4参照)を用いて押え部材33を下降させると、まず、押圧面33bの内側(図5左側)が薄板Wに接触し、押え部材33の下降に伴って次第に押圧面33aと薄板Wとの接触面積が広がっていく。そのため、押圧面33aの外側(図5右側)に比べて内側が薄板Wを強く圧迫する。シリンダ40(図1参照)を収縮させて第2挟持部30と第1挟持部20とを離反させると、押圧面33aの内側の縁が薄板Wに食い込むような力が働いて薄板Wを押止する。その結果、緊張した薄板Wが受部材32と押え部材33との間を滑ることが防止され、薄板Wに引張力を損失なく付与することができ、制御された状態で薄板Wを弾性変形させることができる。その結果、加工精度を向上できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量等)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記実施の形態では、押え部材33に形成された透孔30bに受光部61が収装され、受部材32に配設された光ビーム照射部60からの入射光の有無によって制御装置がレーザ加工機1を動作させる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、押え部材33に光ビーム照射部60を配設し、受部材32に受光部61を配設することも当然可能である。
また、受光部61は必ずしも必要ではなく、押え部材33に形成された透孔30bに受光部61を収装しない場合もある。この場合は、レーザ加工機1を操作する者が、透孔30bを通過する光ビームを視認することで薄板Wの有無を判断できる。薄板Wを挟持する操作を行ったにも関わらず、操作する者が透孔30bを通過する光ビームを視認できた場合(薄板Wの寸法が短い場合)には、操作する者がレーザ加工機1の操作を中止することで、不具合が生じることを未然に防止できる。
上記実施の形態では、保持装置10は固定部材21と可動部材31とを備え、可動部材31が固定部材21に対して平面移動する場合、即ち固定された第1挟持部20に対して第2挟持部30が平面移動する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1挟持部20と第2挟持部30の双方が移動して、保持された薄板Wに張力を付与することも可能である。この場合も同様の作用が得られる。
上記実施の形態では、押え部材33の押圧面33aが内側(図5左側)に向かって傾斜する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、受部材32の載上面32aが内側に向かって傾斜することも当然可能である。この場合も、載上面32a及び押圧面33aの内側(加工ヘッド側)で薄板Wを押止して強く挟持することが可能である。
上記実施の形態では、付勢部材35が圧縮コイルばねで形成された場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の付勢部材を採用することが可能である。他の付勢部材としては、例えば、板ばね、皿ばね、合成樹脂製やゴム製の弾性体等が挙げられる。