JP5489076B2 - 回転電機 - Google Patents

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Description

本発明は、回転電機に関する。
回転電機として、従来より、固定子巻線を有する固定子で発生する交流磁界(回転磁界)により永久磁石を有する回転子が回転するものが知られている。そして、このような回転電機の変換効率を高める(高効率化する)ために、固定子コアを軟磁性体や方向性電磁鋼板、薄板の珪素鋼鈑で構成することにより、固定子で発生する鉄損失(コアの渦電損、ヒステリシス損)を低減させる技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
特開2000−78780号公報
ここで、回転子の極数が変わらない条件下で回転電機の回転速度が高くなると、回転電機を制御するインバータの駆動周波数(固定子で発生する交流磁界の周波数ともいえる)が高くなるため、固定子で発生する鉄損失が異常に増加する。このため、一般的には、回転電機の定格速度(回転電機が許容する回転速度の上限値)が高くなるに従い、回転電機の極数を小さくしていた。つまり、定格速度が異なる回転電機ごとに、極数の異なる回転子コアを準備していた。
一方で、設備投資削減の観点から回転子コアの打ち抜き金型の費用を削減するために、定格速度が異なる回転電機に対して共通の回転子コアを用いる(つまり回転子コアを共用して回転子の極数を変えないようにする)ことが望まれている。しかしながらこの場合、上述したように、定格速度が比較的に高い回転電機において鉄損失が異常に増加してしまい、高効率化を実現できないという問題がある。
このように、回転子コアの打ち抜き金型の費用を削減しつつ、定格速度が比較的に高い回転電機においても高効率化を実現することは困難であった。
なお、上記従来技術を用いて鉄損失を低減させることが考えられるが、固定子コアの材質変更では、上記鉄損失の異常な増加を十分に抑制することが困難であった。その結果、定格速度が比較的に高い回転電機において十分な高効率化を実現することができなかった。
そこで、本発明は、回転子コアの打ち抜き金型の費用を削減しつつ、定格速度が比較的に高い場合においても十分な高効率化を実現することが可能な回転電機を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る回転電機は、固定子コアおよび当該固定子コアに設けられた固定子巻線を有する固定子と、固定子にギャップを介して囲まれた回転子コアおよび当該回転子コアに設けられた複数の永久磁石を有し、固定子において発生する交流磁界により回転する回転子と、を備え、回転子コアには、回転子の回転軸と平行に伸びる貫通孔が各永久磁石に対応するように複数形成されており、各永久磁石は、対応する貫通孔内に設けられた、等方性のボンド磁石であり、回転軸と垂直な方向における各永久磁石の断面形状がもつ径方向厚みは、回転軸と垂直な方向における貫通孔の径方向厚みよりも薄く、各永久磁石の径方向厚みは、回転電機で発生する鉄損失および銅損失の和である全損失が最小値となるときの厚みに設定され、永久磁石を貫通孔の径方向内側の壁面に取り付けることで、当該永久磁石の径方向外側と貫通孔の径方向外側の壁面との間に、隙間を形成し、回転子の回転軸方向における各永久磁石の長さは、当該回転軸方向における回転子コアの長さと略同じ長さであり、かつ、当該回転軸方向における固定子コアの長さとも略同じ長さであることを特徴とするものである。
また、本発明に係る回転電機は、固定子コアおよび当該固定子コアに設けられた固定子巻線を有する固定子と、固定子にギャップを介して囲まれた回転子コアおよび当該回転子コアに設けられた複数の永久磁石を有し、固定子において発生する交流磁界により回転する回転子と、を備え、回転子コアには、回転子の回転軸と平行に伸びる貫通孔が各永久磁石に対応するように複数形成されており、各永久磁石は、対応する貫通孔内に設けられた、等方性のボンド磁石であり、回転軸と垂直な方向における各永久磁石の断面形状がもつ径方向厚みは、回転軸と垂直な方向における貫通孔の径方向厚みよりも薄く、各永久磁石の径方向厚みは、回転電機で発生する鉄損失および銅損失の和である全損失が最小値となるときの厚みに設定され、永久磁石を貫通孔の径方向内側の壁面に取り付けることで、当該永久磁石の径方向外側と貫通孔の径方向外側の壁面との間に、隙間を形成し、回転子の回転軸方向における回転子コアの長さ及び固定子コアの長さは互いに略同じ長さであり、回転軸方向における各永久磁石の長さは当該回転軸方向における回転子コアの長さ及び固定子コアの長さよりも短いことを特徴とするものである。
このように、各永久磁石の径方向厚みを貫通孔の径方向厚みよりも薄くし、永久磁石と貫通孔との間に隙間を形成することで、永久磁石動作点を小さくしてギャップ中の磁束密度を小さくすることができる。これにより、固定子コアの磁束密度を低減させることができる。上述したように、固定子コアの磁束密度の2乗に比例することから、固定子コアの磁束密度を低減させることにより、固定子で発生する鉄損失の異常な増加を十分かつ効果的に抑制することができる。このため、回転電機の定格速度が比較的に高い場合でも、十分な高効率化を実現することが可能になる。また、回転子コアを共用することができるので、回転子コアの打ち抜き金型の費用を削減することもできる。
本発明によれば、回転子コアの打ち抜き金型の費用を削減しつつ、定格速度が比較的高い場合においても十分な高効率化を実現することが可能な回転電機、およびその製造方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る回転電機の断面を示す図 各素材の磁気特性を示した図 各素材の磁石表面磁束密度を示す図 第2実施形態に係る回転電機の回転子の製造工程図 永久磁石の不可逆減磁量を変化させた時の全損失実験結果の図 図4の第2工程の他例を示す図 第3実施形態に係る着磁方法を説明するための図 本発明の第4実施形態に係る回転電機の断面を示す図 永久磁石の表面磁束密度の算出結果を示す図
まず、本発明の概念について説明する。固定子で発生する鉄損失の密度である鉄損密度σは、以下の式1で表される。また、鉄損失Wは式2で表される。
(数1)
σ = σh+σe = Kh・f・B+Ke・f・B ・・・(式1)
W = σ・V ・・・(式2)
式1において、σhはヒステリシス損密度、σeは渦電流損密度、fは固定子コアの任意の場所(例えばティース部、ヨーク部など)での交番周波数(インバータの駆動周波数や交流磁界の周波数と考えても可)、Bは固定子コアの磁束密度、Vは固定子コアの体積である。Kh、Keはそれぞれ定数である。例えばKeの内訳は、固定子コアの板厚やその抵抗率などの材質に基づく固有値である。
式1に示すように、鉄損密度σは、ヒステリシス損密度σhと渦電流損密度σeの和で表される。また、ヒステリシス損密度σhおよび渦電流損密度σeは、それぞれ交番周波数fに依存する。ここで、交番周波数fは、回転電機の回転速度が高くなるに従い高くなる。このため、鉄損密度σは、回転電機の回転速度が高くなるに従い異常に増加することになり、固定子で発生する鉄損失Wが異常に増加することになる。
このような事象に対し、本発明では、固定子と回転子間のギャップ中の磁束密度を小さくすることにより、固定子コアの磁束密度Bを低減させる。鉄損密度σは、式1に示すように、固定子コアの磁束密度Bの2乗に比例することから、固定子コアの磁束密度Bを低減させることにより、固定子で発生する鉄損失の異常な増加を十分かつ効果的に抑制することができるからである。以下、ギャップ中の磁束密度を小さくするための複数の手段を各実施形態に詳述する。なお、以下の各実施形態おいて、同一の構成については同一の符号を付することにより、重複説明を適宜省略する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る回転電機の断面を示す図である。図1の断面は、回転電機の回転子の回転軸Oと垂直な方向から回転電機を切断したときの断面である。
図1において、回転電機は、固定子1および回転子2を備える。回転子2は略円筒状であり、その外周はギャップ3を介して固定子2に囲まれている。固定子1は、固定子コア11および固定子巻線12を有する。固定子コア11は、例えば、無方向性電磁鋼板、軟磁性体、方向性電磁鋼板、薄板の珪素鋼鈑などのいずれか1つを積層することにより構成される。固定子コア11は、ヨーク部11aおよびティース部11bにより構成される。固定子巻線12は、ティース部11b間に設けられる。固定子巻線12にインバータ等の駆動装置から電力を供給されることにより、固定子1に交流磁界(回転磁界)が発生し、この交流磁界により回転子2が回転する。
回転子2は、シャフト21、回転子コア22、および永久磁石23を有する。回転子コア22は、シャフト21の外周に設けられる。回転子コア22は、例えば、無方向性電磁鋼板、軟磁性体、方向性電磁鋼板、薄板の珪素鋼鈑などのいずれか1つを積層することにより構成される。回転子コア22には、回転軸Oと平行に伸びる貫通孔22aが極数に対応する数だけ形成される。図1の例では、極数は4である。各貫通孔22aには、永久磁石23が挿入される。また、隣り合う貫通孔22aの間には、磁束を遮断する空隙22bが形成されている。回転軸O方向における永久磁石23の長さは、回転軸O方向における回転子コア22および固定子コア11の長さと略同じ長さになっている。なお、本実施形態では、永久磁石23の径方向厚みと貫通孔22aの径方向厚みは、略同一になっている。
本実施形態では、ギャップ3中の磁束密度を小さくするために、永久磁石23の素材を変更し、永久磁石23の残留磁束密度を低減させる手段について説明する。図2は各素材の磁気特性を示した図である。図2において、Brは残留磁束密度、HcBはB−Hカーブでの保磁力、(BH)maxはB−Hカーブにおける最大エネルギー積である。図3は、各素材の磁石表面磁束密度を示す図である。図3では、20℃における図2に記載の各素材のB−HカーブおよびJ−Hカーブが示されている。また、磁石動作点PCを1.5としている。図3において、各素材の磁石表面磁束密度は、磁石動作点PCと各素材のB−Hカーブの交点(A点、B点、C点)が示す値となる。具体的には、A点におけるネオジウム磁石の磁石表面磁束密度は8.0(KG)となり、B点におけるボンド磁石の磁石表面磁束密度は4.0(KG)となり、C点におけるフェライト磁石の磁石表面磁束密度は2.7(KG)となる。図2および図3から、素材の残留磁束密度が小さくなるに従い、磁石表面磁束密度が小さくなることがわかる。磁石表面磁束密度が小さくなると、ギャップ3中の磁束密度が小さくなる。
このように、永久磁石23の素材をネオジウム磁石からフェライト磁石またはボンド磁石に変更して永久磁石23の残留磁束密度を低減させることにより、ギャップ3中の磁束密度を小さくすることができる。これにより、固定子1で発生する鉄損失の異常増加を十分かつ効果的に抑制することができる。その結果、回転子コア22の打ち抜き金型の費用を削減しつつ、定格速度が比較的高い回転電機に対し十分な高効率化を実現することができる。
また、本実施形態では、回転軸O方向における永久磁石23の長さを、回転軸O方向における回転子コア22および固定子コア11の長さと略同じ長さにしている。これを第1手法とする。鉄損失を低減させる別の第2手法として、回転軸O方向における回転子コア22の長さを、回転軸O方向における永久磁石23の長さよりも長くし、かつ、回転軸O方向における固定子コア11の長さと同じ長さにすることが考えられる。しかし、この第2手法では、回転軸O方向における永久磁石23の長さが回転軸O方向における回転子コア22の長さよりも短くなるため、ギャップ3中の磁束密度の分布が回転O軸方向において偏ってしまう。この第2手法の回転軸O方向における磁束密度の分布は、永久磁石23がない部分で磁束密度が非常に小さく、永久磁石23がある部分でほぼ一定の大きな値をとる、いわゆる台形近似の分布となる。一方、第1手法では、回転軸O方向における磁束密度の分布は一定となり、さらに、その値は従来法の一定値よりも更に小さくできる。次に、第1手法と第2手法の効果の違いを考えてみる。ギャップ3中の磁束密度が平均で0.8倍になるように考えた場合、第2手法では永久磁石23の長さを回転子コア22の長さの0.8倍になるように配置する。一方、第1手法では永久磁石23の材質を変える等して残留磁束密度を0.8倍になるようにする。式(1)、式(2)から明らかなように、固定子コア11の長さが同じである場合(固定子コア11の体積が同一である場合)、第2手法では体積が0.8倍になるため鉄損Wは0.8倍となる。しかし、第1手法では式(1)より、鉄損密度σが0.64倍となり、鉄損Wは0.64倍となり、第1手法のほうが鉄損減少効果が大きい。よって、好ましくは、第1手法を用いるとよい。第1手法を用いれば、ギャップ3中の磁束密度の分布が回転O軸方向において偏ることはなく一定に小さくすることができ、十分な高効率化を実現することができる。
なお、望ましくは、永久磁石23の素材をボンド磁石に変更するのがよい。今、ある電磁部寸法でネオジウム磁石を使用した回転電機の鉄損失が200(W)、銅損失が20(W)であるとし、全損失がそれらの合計220(W)発生している場合を想定する。また、銅損失は電流の2乗に比例し、電流は残留磁束密度の逆数に比例し、鉄損失は残留磁束密度の2乗に比例すると考える。この場合において永久磁石23の素材をフェライト磁石に変更すると、銅損失が176(W)、鉄損失が23(W)となる。それらの合計は199(W)となる。一方、永久磁石23の素材をボンド磁石に変更すると、銅損失が80(W)、鉄損失が50(W)となり、それらの合計が130(W)となり、全損失を最小にすることができる。このように、永久磁石23の素材をボンド磁石に変更すると、全損失を最小にすることができ、より十分な高効率化を実現することができる。
また、永久磁石23の素材をフェライト磁石に変更すると、ネオジウム磁石の場合よりも銅損失が増加する。このため、発熱、抜熱の関係から固定子巻線12の温度が増加してしまう。一方、永久磁石23の素材をボンド磁石に変更すると、フェライト磁石の場合よりも銅損失が増加しない。この意味でも、永久磁石23の素材をボンド磁石に変更することが望ましいといえる。
<第2実施形態>
本実施形態では、図1に示した回転電機においてギャップ3中の磁束密度を小さくするために、永久磁石23を故意に熱により不可逆減磁させ、永久磁石23の残留磁束密度を低減させる手段について説明する。これ以外の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、熱による不可逆減磁のメカニズムについては、周知であるため、ここでは具体的な説明を省略する。
図4は、回転電機の回転子の製造工程図である。図4(a)は第1工程、図4(b)は第2工程、図4(c)は第3工程を示す図である。図4(a)に示す第1工程において、既に磁化され表面に接着剤が塗布された永久磁石23が、所定形状に打ち抜かれた鋼板を積層して構成された回転子コア22の貫通孔22aに挿入される。その後、図4(b)に示す第2工程において、永久磁石23が挿入された回転子コア22が、図示しない加熱装置によって加熱される。なお、この加熱は、通常、2段階にわたって行われる。第1段階としては、永久磁石23に塗布された接着剤を硬化することが可能な温度で回転子コア22を加熱する。接着剤がエポキシ系接着剤であれば、130℃前後で加熱する。その後、第2段階として、200℃前後で回転子コア22を加熱し、焼き嵌めを行う。この第2工程における加熱により、永久磁石23を不可逆減磁させ、永久磁石23の残留磁束密度を低減させる。その後、図4(c)に示す第3工程において、シャフト21が回転子コア22に挿入され、回転子1が完成する。
このように、永久磁石23を熱により不可逆減磁させ、永久磁石23の残留磁束密度を低減させることにより、ギャップ3中の磁束密度を小さくすることができる。これにより、固定子1で発生する鉄損失の異常増加を十分かつ効果的に抑制することができる。その結果、回転子コア22の打ち抜き金型の費用を削減しつつ、定格速度が比較的高い場合においても十分な高効率化を実現することが可能な回転電機、およびその製造方法を提供することができる。
また本実施形態では、永久磁石23の素材は変更しないので、第1実施形態と比べて、素材の価格変動や素材の入手性に対し影響を受けにくい。
なお、望ましくは、永久磁石23の残留磁束密度を、回転電機の鉄損失および銅損失からなる全損失が最小値になるまで、永久磁石23を熱により不可逆減磁させるとよい。これにより、全損失を最小にすることができ、より十分な高効率化を実現することができる。以下、全損失を最小値とする永久磁石23の不可逆減磁の量について説明する。図5は、永久磁石23の不可逆減磁の量、全損失、および変換効率の関係を示した実験結果を示す図である。図5の結果は、回転子2の極数を10極とし、定格速度が3600rpmである回転電機をインバータで駆動した条件で得られたものである。
図5において、「方策なし」は永久磁石23を不可逆減磁させないものを示している。「方策なし」における全損失は54(W)となり、変換効率は78.7%となった。なお、回転子2の極数が10極である回転電機を3600rpmで回転させたとき、インバータの駆動周波数は、300(Hz)とかなり高い周波数になる。このため、図6に示すように、「方策なし」の全損失の内、90%が鉄損となっている。
「方策A」は、永久磁石23を「方策なし」から11%だけ不可逆減磁させたものを示している。「方策A」における全損失は41(W)となり、変換効率は83.0%となった。「方策B」は、永久磁石23を「方策なし」から25%だけ不可逆減磁させたものを示している。「方策B」における全損失は33(W)となり、変換効率は85.8%となった。この結果を受け、全損失の最小値と、全損失の最小値を得るための不可逆減磁の量、全損失が最小値となるときの変換効率を予想すると、図5の「予想」に示されたものとなる。具体的には、「予想」における全損失は31(W)となって最小値となり、不可逆減磁の量は「方策なし」の45%となり、変換効率は86.6%となった。
図5に示す結果より、永久磁石23を45%だけ不可逆減磁させることにより全損失が最小値となる。つまり、永久磁石23を45%だけ不可逆減磁させることにより、回転電機の全損失を最小値にすることができる。
なお、上記第2工程における加熱温度が、期待量だけ不可逆減磁させる温度よりも高い場合がある。この場合、必要以上に永久磁石23が減磁する。その対応策として図6に示すように、第2工程において、回転子コア22を鉄等からなる磁性体リング4で覆った状態で加熱するとよい。これにより、永久磁石23の磁石動作点が高くなるため、上記第2工程における加熱温度が、期待量だけ不可逆減磁させる温度よりも高くても、永久磁石23の減磁量を期待する量に調整することができる。
<第3実施形態>
本実施形態では、図1に示した回転電機においてギャップ3中の磁束密度を小さくするために、飽和磁化しないレベルの磁界により永久磁石23を着磁し、永久磁石23の残留磁束密度を低減させる手段について説明する。これ以外の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
永久磁石23の着磁工程は、図示しない着磁装置によって行われ、例えば、永久磁石23が無着磁の状態で図4(c)に示したように回転子コア22に挿入されて回転子2が完成した後に行われるか、図4(a)に示したように回転子コア22に挿入される前に行われる。通常、永久磁石の着磁工程は、永久磁石の磁石保磁力の3倍以上の磁界を印加して永久磁石を飽和磁化させることにより、永久磁石を着磁する。つまり、永久磁石を飽和磁化させるレベルの磁界を印加して着磁する。これに対し、本実施形態では、この磁界を調整することで、永久磁石23の残留磁束密度を低減させる。以下、本実施形態に係る着磁方法について、図7を用いて具体的に説明する。図7は、第3実施形態に係る着磁方法を説明するための図である。
図7において、平行四辺形状に形成された細線は、永久磁石のヒステリシスカーブ(J−Hカーブ)である。太線は、初磁化カーブである。ここで、硬磁性体からなる永久磁石に外部から磁界H(A/m)を印加すると、外部からの磁界を0(A/m)に戻しても、元の残留磁束密度Brに戻らないという性質をもつ。この性質により、永久磁石23の磁石保磁力の3倍以上の磁界H1(A/m)を永久磁石23に印加すると、磁界H1を0(A/m)しても、永久磁石23の残留磁束密度は0(T)に戻らず、Br1(T)となる。このように、磁界H1(A/m)を永久磁石23に印加することにより、永久磁石23は完全着磁される。一方、永久磁石23が飽和磁化されないレベルの磁界H2(A/m)を永久磁石23に印加すると、永久磁石23の残留磁束密度はBr2(T)となり、残留磁束密度は低減される。このように、飽和磁化されないレベルの磁界を永久磁石23に印加することにより、永久磁石23の残留磁束密度を低減させることができる。これにより、ギャップ3中の磁束密度を小さくすることができ、固定子1で発生する鉄損失の異常増加を十分かつ効果的に抑制することができる。その結果、回転子コア22の打ち抜き金型の費用を削減しつつ、回転電機の定格速度が比較的高い場合でも十分な高効率化を実現することが可能な回転電機、およびその製造方法を提供することができる。
なお、本実施形態においても第2実施形態と同様、望ましくは、鉄損失および銅損失からなる全損失が最小値となるように、永久磁石23に印加する磁界の強さを調整して着磁するとよい。
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態に係る回転電機の断面を示す図である。本実施形態に係る回転電機は、図1に示した第1実施形態に係る回転電機に対して、永久磁石23の厚みが薄くなった点で異なる。これ以外の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態では、ギャップ3中の磁束密度を小さくするために、永久磁石23の径方向厚みを薄くする。なお、回転子コア22は共用されるので、貫通孔22aの形状は変わらない。このため、貫通孔22aの回転軸O側と永久磁石23の固定子1側との間には、隙間5が形成される。永久磁石23の径方向厚みを薄くする手段としては、磁石メーカのインゴッド(磁石素材の塊)からのスライス寸法を変更するか、回転電機製造工程の中で磁石を薄く切削することなどが考えられる。
永久磁石23の径方向厚みを薄くすると、永久磁石23内部の反磁界が大きくなり、さらに、隙間5が形成されることで、永久磁石23および隙間5を含む磁気回路全体の磁石動作点が下がる。このため、永久磁石23の表面磁束密度が小さくなる。その結果、ギャップ3中の磁束密度を小さくすることができる。図9は、永久磁石23の径方向厚みを貫通孔22aの径方向厚みに対して30%、60%、100%で可変した場合に得られる永久磁石23の表面磁束密度をそれぞれ算出した結果を示す図である。また、図9では、永久磁石23として、ネオジウム磁石を用い、温度20℃として算出した。100%厚みと30%厚みの磁石動作点とB−Hカーブとの交点は、それぞれ10(KG)と6.5(KG)となっている。このことから、式1を参照すると、永久磁石23の径方向厚みを30%厚みにした場合、鉄損失は、約0.4倍となることが予想される。
このように、永久磁石23の径方向厚みを薄くすることで、ギャップ3中の磁束密度を小さくすることができる。これにより、固定子1で発生する鉄損失の異常増加を十分かつ効果的に抑制することができる。その結果、回転子コア22の打ち抜き金型の費用を削減しつつ、回転電機の定格速度が比較的高い場合でも十分な高効率化を実現することが可能な回転電機、およびその製造方法を提供することができる。
なお、本実施形態において、望ましくは、永久磁石23の径方向の厚みは、鉄損失および銅損失からなる全損失が最小値となる厚みに設定されるとよい。
なお、以上に示した各実施形態に係る手段は、回転子の極数が4極以上で定格速度が1800rpm以上の回転電機において適用させると、その効果はさらに顕著なものとなる。
また、以上に示した各実施形態に係る回転子2の構造は、永久磁石23が回転子コア22の内部に設けられた所謂IPM構造であったが、これに限定されない。回転子2の構造は、永久磁石23が回転子コア22の外周に設けられた所謂SPM構造であってもよい。この場合であっても、一定の効果を奏する。
以上、本発明の実施形態について説明した。ただし、いわゆる当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態から適宜変更が可能であり、また、上記実施形態と変更例による手法を適宜組み合わせて利用することも可能である。すなわち、このような変更等が施された技術であっても、本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
1 固定子
11 固定子コア
11a ヨーク部
11b ティース部
12 固定子巻線
2 回転子
21 シャフト
22 回転子コア
23 永久磁石
22a 貫通孔
22b 空隙
3 ギャップ
4 磁性体リング
5 隙間

Claims (2)

  1. 固定子コアおよび当該固定子コアに設けられた固定子巻線を有する固定子と、
    前記固定子にギャップを介して囲まれた回転子コアおよび当該回転子コアに設けられた複数の永久磁石を有し、前記固定子において発生する交流磁界により回転する回転子と、
    を備え、
    前記回転子コアには、前記回転子の回転軸と平行に伸びる貫通孔が各前記永久磁石に対応するように複数形成されており、
    各前記永久磁石は、対応する前記貫通孔内に設けられた、等方性のボンド磁石であり、
    前記回転軸と垂直な方向における各前記永久磁石の断面形状がもつ径方向厚みは、前記回転軸と垂直な方向における前記貫通孔の径方向厚みよりも薄く、各前記永久磁石の前記径方向厚みは、前記回転電機で発生する鉄損失および銅損失の和である全損失が最小値となるときの厚みに設定され、
    前記永久磁石を前記貫通孔の径方向内側の壁面に取り付けることで、当該永久磁石の径方向外側と前記貫通孔の径方向外側の壁面との間に、隙間を形成し、
    前記回転子の回転軸方向における各前記永久磁石の長さは、当該回転軸方向における前記回転子コアの長さと略同じ長さであり、かつ、当該回転軸方向における前記固定子コアの長さとも略同じ長さである
    ことを特徴とする回転電機。
  2. 固定子コアおよび当該固定子コアに設けられた固定子巻線を有する固定子と、
    前記固定子にギャップを介して囲まれた回転子コアおよび当該回転子コアに設けられた複数の永久磁石を有し、前記固定子において発生する交流磁界により回転する回転子と、
    を備え、
    前記回転子コアには、前記回転子の回転軸と平行に伸びる貫通孔が各前記永久磁石に対応するように複数形成されており、
    各前記永久磁石は、対応する前記貫通孔内に設けられた、等方性のボンド磁石であり、
    前記回転軸と垂直な方向における各前記永久磁石の断面形状がもつ径方向厚みは、前記回転軸と垂直な方向における前記貫通孔の径方向厚みよりも薄く、各前記永久磁石の前記径方向厚みは、前記回転電機で発生する鉄損失および銅損失の和である全損失が最小値となるときの厚みに設定され、
    前記永久磁石を前記貫通孔の径方向内側の壁面に取り付けることで、当該永久磁石の径方向外側と前記貫通孔の径方向外側の壁面との間に、隙間を形成し、
    前記回転子の回転軸方向における前記回転子コアの長さ及び前記固定子コアの長さは互いに略同じ長さであり、前記回転軸方向における各前記永久磁石の長さは当該回転軸方向における前記回転子コアの長さ及び前記固定子コアの長さよりも短い
    ことを特徴とする回転電機。
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