以下、添付図面を参照して、本願の開示する荷役システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る荷役システムが適用されるコンテナヤード2の外観について図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係るコンテナヤード2の模式図である。
図1は、コンテナヤード2を上方から見た図であり、Z軸の正方向は、鉛直上向きを示す。なお、以下では同図右上に示すような座標軸を適宜用いて説明を行うこととし、また、同図では説明を容易にするために一部の形状を単純化して示す。
コンテナヤード2は、港湾施設や駅等に併設されており、コンテナ300を荷役し、一時集積しておく場所のことである。また、コンテナヤード2の近傍には、ターミナルビル3が設置される。
図1に示すように、コンテナ300の集積場所であるコンテナヤード2には、クレーン1a、1bと、X軸方向に平行に位置する複数のレーン201、202、203とが設置される。
なお、図1には2台のクレーン1a、1bが設置される場合について示したが、コンテナヤード2に設置されるクレーンは、1台であってもよいし、3台以上であっても構わない。
クレーン1a、1bは、コンテナヤード2に設けられるヤードクレーン等のクレーンであり、コンテナシャーシを牽引するトラック301とコンテナヤード2との間での荷役作業を行う。
具体的には、クレーン1a、1bは、トラック301によってコンテナ船等から配送されてきたコンテナ300をコンテナヤード2へ降ろす積み降ろし作業やコンテナヤード2に集積されたコンテナ300をトラック301に積み込む積み込み作業を行う。
また、クレーン1a、1bは、上述の積み降ろし作業や積み込み作業だけでなく、コンテナ300の整理作業等も行う。たとえば、クレーン1a、1bは、トラック301に対するコンテナ300の積み込み作業を迅速に行うために、トラック301へ積み込むべきコンテナ300を予め積み込み易い場所へ移動させる。
なお、クレーン1a、1bの構成については、図3を用いて後述する。レーン201、202、203上において、クレーン1a、1bは、各レーン201、202、203に沿ってX軸方向へ移動(以下、「走行」と記載する)する。
また、破線で囲んだレーンチェンジエリア200において、クレーン1a、1bは、Y軸方向へ移動(以下、「縦走行」と記載する)し、その際必要によりレーンチェンジする。
クレーン1a、1bは、走行中にはレーン201、202、203付近に設置される給電装置(図示せず)から供給される電力によって駆動し、さらに給電装置から供給される電力をクレーン1a、1bに設けられる蓄電装置へ充電する。
なお、クレーン1a、1bは、たとえば吊り具の巻下げ動作または走行装置(図示せず)による減速動作によって生じた回生電力を蓄電装置へ充電する。また、クレーン1a、1bは、吊り具の巻上げ時等の力行動作には、蓄電装置に充電された回生電力が利用される。
ターミナルビル3には、コンテナ施設全体を管理する管理装置30が設置される。管理装置30は、クレーン1a、1bやガントリークレーン(図示せず)のスケジュール管理、クレーン1a、1bやガントリークレーンに対する作業指示およびクレーン1a、1bからの状態収集等を行う。このように、クレーン1a、1bは、管理装置30によって集中管理され、管理装置30からの指示に基づいて荷役作業等を実行する。
ここで、従来の荷役システムでは、上述した回生電力を有効利用するために、蓄電装置を満充電の状態にはしない。なぜなら、クレーン1a、1bは、蓄電装置が満充電の状態で回生電力が発生すると、それ以上充電することができないため、回生電力を廃棄せざるを得ないからである。
このように、従来の荷役システムは、最も蓄電装置の電力を必要とするレーンチェンジの開始時にも満充電ではないことになる。したがって、従来の荷役システムでは、レーンチェンジ直前にクレーンを一旦停止させ、給電装置から充電させなくてはならないため、充電中は作業が止まってしまい荷役の作業効率を低下させてしまう。
そこで、第1の実施形態に係る荷役システムでは、クレーン1a、1bがレーンチェンジエリア200に到達するまでの走行中に予め蓄電装置へ所定量の電気量を充電しておくこととした。
具体的には、第1の実施形態に係る荷役システムでは、蓄電装置の状態およびクレーン1a、1bの状態に基づき、蓄電装置に蓄電される電気量を示す蓄電量がレーンチェンジするのに十分な電気量となるように蓄電装置へ充電する。
これにより、クレーン1a、1bは、レーンチェンジエリア200に到達した時点でレーンチェンジする際に必要な電力が蓄電装置に充電されていることによって、クレーン1a、1bは、動作を止めることなくレーンチェンジすることができる。
このようにすることによって、第1の実施形態に係る荷役システムでは、作業効率を低下させることなく荷役作業を行うことができる。
つぎに、第1の実施形態に係る荷役システムの構成について図2を用いて説明する。図2は、荷役システムのシステム構成を示す図である。
図2に示すように、荷役システムは、クレーン1と、給電装置20と、管理装置30とを備える。クレーン1と給電装置20とは、給電用ケーブルによって着脱可能に接続される。給電装置20は、給電用ケーブルを介してクレーン1へ電力を供給する。
また、クレーン1と管理装置30とは、通信ネットワーク40を介して相互に接続される。なお、通信ネットワーク40としては、たとえば有線LAN(Local Area Network)や無線LANといった一般的なネットワークを用いることができる。
管理装置30は、荷役システム全体を管理する装置である。たとえば、管理装置30は、コンテナ船の到着予定時刻、コンテナヤード2に蔵置されたコンテナ300のトラック301による搬出予定時刻等の作業スケジュール情報に応じて荷役計画情報を作成し、作成した荷役計画情報をクレーン1の制御部15へ送信する。
なお、荷役計画情報は、管理装置30が作業スケジュール情報に基づいて自動的に作成することとしてもよいし、作業員等が管理装置30を用いて手動で作成することとしてもよい。
なお、ここで、クレーン1の外観構成について図3を用いて説明しておく。図3は、クレーン1の外観構成を示す模式斜視図である。
図3に示すように、クレーン1は、一対の脚部101の上部にガーダ102を掛け渡した門型形状を備える。ガーダ102上には、吊り具103の巻上げまたは巻下げを行う巻上部(図示せず)を備えたトロリー104が横行可能に載置されており、トロリー104には運転室108が装備されている。
また、脚部101の下部には、シルビーム110を備え、さらに、シルビーム110の下部には、それぞれタイヤを備える走行部105が設けられる。走行部105は、ガーダ102と直交する方向、すなわち、トロリー104の横行方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に向かって走行可能に構成されている。
なお、レーンチェンジする際には、走行部105に備えるタイヤの向きが90°変換され、クレーン1は、横行方向(Y軸方向)に向かって走行(縦走行)可能となる。
また、一方のシルビーム110には、電気制御室106と、ケーブルリール107とを備え、電気制御室106には、図示しない受電装置11と、蓄電装置12とをさらに備える。なお、受電装置11と、蓄電装置12とは別々の設置場所となることもある。
ケーブルリール107は、給電用ケーブル109の巻き取りおよび巻き戻しを行い、給電用ケーブル109へ一定の張力を与える。また、かかるケーブルリール107には、給電用ケーブル109の張力をなくしフリーな状態として自在に引き出すことができる機能が設けられる。
なお、給電用ケーブル109には、ケーブルリール107から所定長さの位置に給電用ケーブル109を分離できるコネクタ(図示せず)が設けられ、給電装置20から着脱可能に接続される。
クレーン1がレーン201内を走行方向(X軸方向)に向かって走行中の場合には、電気制御室106に備える受電装置11は、給電装置20から供給される電力を受電することができる。
一方、レーンチェンジする際、すなわち、クレーン1がレーンチェンジエリア200内を縦走行する際には、給電装置20から給電用ケーブル109が外され、給電装置20と切り離され、給電装置20からの電力供給が遮断される。したがって、クレーン1は、レーンチェンジする際には、蓄電装置12に蓄電される電力によって駆動する。
また、レーンチェンジする際には、クレーン1は、走行部105を蓄電装置12の電力によってジャッキアップさせ、走行部105に備えるタイヤの向きを変換するための電力を消費する。
また、かかる動作中は、運転室108の冷暖房エアコンや冷却ファン(いずれも図示せず)等に供給される電力も蓄電装置12から供給しなくてはならない。したがって、クレーン1は、レーンチェンジ中に最も蓄電装置12の電力を消費する。
なお、クレーン1の走行動作、レーンチェンジ動作を含む縦走行動作、および吊り具103の巻上げまたは巻下げ動作(以下、単に「巻動作」と記載する)等は、作業員によって行われる。
具体的には、作業員は、運転室108に設けられる表示操作部(図示せず)の操作レバーやスイッチを操作することによって所望の動作を行う。そして、表示操作部は、各操作に対応する動作指令を制御部15を介してクレーン制御部14へ渡すことによってクレーン1の各動作が行われる。
なお、ここでは、クレーン1が有人クレーンである場合の例について説明するが、クレーン1は管理装置30からの指示に従って自動的に動作する無人クレーンであってもよい。
また、給電装置20は、給電用ケーブル109を介してクレーン1へ電力を供給する場合の例について示したが、給電設備の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、トロリー線によって電力を供給してもよい。
このとき、クレーン1の一定の走行経路、すなわち、走行方向に沿ってトロリー線を敷設し、クレーン1に、トロリー線に摺動する集電子を設け、集電子を介して外部から電力を蓄電装置12へ充電させる。また、レーンチェンジする際には、集電子がトロリー線より外され、外部からの電力供給が遮断される。
図2に戻り、クレーン1の内部構成について説明する。クレーン1は、受電装置11と、蓄電装置12と、クレーン駆動部13と、クレーン制御部14と、制御部15とを備える。蓄電装置12は、蓄電部12aと、昇降圧チョッパ12bとをさらに備え、制御部15は、充電指令部15aと、制限速度指令部15bとをさらに備える。
受電装置11は、給電装置20から供給される交流電力を直流電力に変換する。
蓄電部12aは、バッテリやコンデンサ等が用いられ、直流電力を蓄電する。また、蓄電部12aは、受電装置11からの供給電力やクレーン駆動部13からの巻下げ動作、走行減速動作等による回生電力を充電する。
昇降圧チョッパ12bは、たとえば、シリアル伝送によって充電指令部15aとの間でデータ(情報)を送受信する。昇降圧チョッパ12bは、充電指令、放電指令および充電レートを充電指令部15aから受信する。さらに、昇降圧チョッパ12bは、受電装置11側の直流電圧、直流電流の値および蓄電部12aの直流電圧の値を充電指令部15aへ送信する。たとえば、受電装置11側の直流電圧、直流電流は、昇降圧チョッパ12bが検出し、蓄電部12aの直流電圧は、蓄電部12aが検出し、昇降圧チョッパ12bに送信する。
また、昇降圧チョッパ12bは、充電指令部15aからの充放電指令にしたがって、蓄電部12aの直流電力を充放電する。なお、昇降圧チョッパ12bは、蓄電部12aに入出力する電流が充放電指令となるように電流制御する。
具体的には、充放電指令が正であれば放電指令、負であれば充電指令であり、その絶対値が放電レートあるいは充電レート(Pcr)に対応する。つまり、昇降圧チョッパ12bは、充電指令部15aからの充放電指令が負の場合、充電レートに基づいて蓄電部12aを充電し、正の場合、放電レートに基づいて蓄電部12aを放電する。
クレーン駆動部13は、受電装置11と蓄電装置12とからの直流電力を交流電力に変換し、クレーン制御部14からの駆動指令に応じた交流電力を供給して各駆動部を駆動させる。
具体的には、クレーン駆動部13には、クレーン1の走行および縦走行を行う走行部105、吊り具103の巻上げまたは巻下げを行う巻上部、トロリー104の横行を行う横行部等の駆動部を備える。そして、クレーン駆動部13は、クレーン制御部14からの駆動指令に応じて、各駆動部に設けられるモータ等を駆動させることによってそれぞれの動作をさせる。
クレーン制御部14は、クレーン駆動部13を制御する制御部である。具体的には、クレーン制御部14は、制御部15から受け付けた各動作に対応する動作指令に基づいてクレーン1の走行や縦走行等の動作をさせる。
また、クレーン制御部14は、クレーン1に備える各種センサによってレーンチェンジエリア200までの距離や走行速度等を管理する。したがって、クレーン制御部14は、必要に応じて、クレーン1のレーンチェンジまでの距離や時間(距離/走行速度)を制御部15へ渡す処理を併せて行う。
制御部15は、クレーン1全体を制御する制御部である。具体的には、制御部15は、管理装置30から受信した荷役計画情報に基づいてクレーン1の動作指令を生成し、生成した動作指令をレーン制御部14や蓄電装置12に対して出力する。また、制御部15は、クレーン制御部14や蓄電装置12から受け付けた各種情報に基づいて蓄電装置12に対して充放電指令を出力し、表示操作部から受け付けた各操作に対応する動作指令をクレーン制御部14に対して出力する処理を併せて行う。
ここで、荷役計画情報は、荷役作業に関する情報であり、コンテナ船との荷役作業の有無、トラック301との荷役作業の有無といった情報が含まれるものとする。
制御部15は、管理装置30からの荷役計画情報に限らず、クレーン1の状態情報等も取得するものとする。ここで、状態情報とは、たとえば、蓄電装置12の電圧、クレーン1の姿勢、各駆動設備(吊り具103、トロリー104、走行部105)の位置、速度、稼働状況(稼働中か非稼動中かを区別する情報)等の情報である。
そして、制御部15は、荷役計画情報やクレーン1の位置等に基づいてレーンチェンジが行われる旨を報知する「レーンチェンジ指示」を所定のタイミングで充電指令部15aへ出力する処理を併せて行う。なお、「レーンチェンジ指示」を制御部15が報知することとしたが、管理装置30が報知することとしてもよい。
ここで、クレーン1は、レーンチェンジ中に、最も蓄電部12aの電力を消費するため、レーンチェンジエリア200に到達するまでの走行中に予め蓄電部12aへ所定量の電気量を充電しておく。
そこで、充電指令部15aは、レーンチェンジ指示を受け付けたならば、蓄電部12aから受け付けた電圧と、クレーン制御部14から受け付けたレーンチェンジまでの距離や時間に基づいて充電レート(Pcr)を算出する処理を行う処理部である。
ここで、充電レート(Pcr)は、蓄電部12aが電力を充電する際に、給電装置20から供給される単位時間当たりの電力量に対応している。充電指令部15aは、算出した充電レート(Pcr)で充電するよう、昇降圧チョッパ12bへ充放電指令を出力する処理を併せて行う。
上述しているように、充電指令部15aは、昇降圧チョッパ12bの受電装置11側の直流電圧、直流電流の値および蓄電部12aの直流電圧を受信している。そして、充電指令部15aは、これら受信した各情報に基づいて昇降圧チョッパ12bが出力している直流電力を算出し、昇降圧チョッパ12bへの充放電指令を算出して、昇降圧チョッパ12bへ送信する。
具体的には、充電指令部15aは、蓄電部12aの直流電圧に基づいて、蓄電部12aの蓄電量を算出する。ここで、蓄電部12aの蓄電量の算出手法の詳細について図4を用いて説明する。図4は、蓄電部12aの蓄電率と閉路電圧との関係を示すグラフである。閉路電圧とは蓄電部12aに充放電電流が流れていない状態の電圧のことである。
まず、図4に示すような蓄電部12aの蓄電率と閉路電圧との関係の場合、蓄電部12aの電圧がa(V)ならば、蓄電率はb(%)であることがわかる。そして、満充電の時の蓄電部12aの蓄電量(f)へ蓄電率を乗じることによって現時点の蓄電量(f×b/100)が算出される。
なお、上記のようにして蓄電量を算出することとしたが、昇降圧チョッパ12bから入出力される電力量に基づいて蓄電量を算出してもよい。さらに、充電指令部15aが受信する情報のいくつかを、充電指令部15aが直接検出するようにしてもよい。
つづいて、充電指令部15aは、現時点の蓄電量が所定の閾値以下の場合に、充電を開始することとし、充電レート(Pcr)を算出する。ここで、充電レート(Pcr)の算出手法の詳細について図5および図6を用いて説明する。図5は、蓄電部12aの蓄電量とレーンチェンジ位置との関係を示すグラフであり、図6は、蓄電量の閾値とレーンチェンジ位置との関係を示すグラフである。
図5に示すように、横軸は、レーン201上の位置を示し、x1はレーンチェンジエリア200の位置であり、横軸左方向からx1へ向かって移動するクレーン1の位置を示す。縦軸は、蓄電部12aの蓄電量を示す。また、目標蓄電量(e1)は、レーンチェンジする時点の蓄電量を予測したものであり、レーンチェンジするのに十分な電気量(Elc)に基づいて設定される。
たとえば、実線のグラフに示すように、充電指令部15aは、位置:x0の地点で蓄電部12aの蓄電量(e0)が所定の閾値(Th)以下となるので、蓄電部12aへ充電を開始させることとする。
そして、充電指令部15aは、クレーン制御部14から受け付けたレーンチェンジまでの距離(x1−x0)に基づいて充電レート(Pcr)を算出する。
ここで、クレーン1は、一定の走行速度(v0)で走行しているので、レーンチェンジまでの時間(t0)は、式(1)のようになる。なお、加速度・減速度は一定のため、走行速度(v0)までに要する加速時間、減速時間については省略した。
t0=(x1−x0)/v0 …(1)
したがって、充電レート(Pcr)は、式(2)のようになる。
Pcr=(e1−e0)/t0 …(2)
充電指令部15aは、算出した充電レート(Pcr)で充電するよう、昇降圧チョッパ12bへ充放電指令を出力する。これによって、クレーン1がレーンチェンジエリア200に到着した時点に、蓄電部12aの蓄電量は、目標蓄電量(e1)となる。
破線のグラフの場合も同様に、充電指令部15aは、クレーン1の位置がx2の地点となったら、充電を開始させる。これにより、荷役システムでは、レーンチェンジまでの距離に応じて、充電レートを変更することができ、効率よく充電を行うことができる。
ところが、1点破線のグラフに示すように、クレーン1の位置がx3の地点で充電を開始させた場合、x3からx1まで移動する時間が短いため、算出した充電レート(Pcr)は、設備容量を超えてしまうことがある。
なお、設備容量とは、受電装置11が給電装置20から供給する際の単位時間当たりの最大電力量のことである。また、レーンチェンジまでの時間(t0)とレーンチェンジまでの距離とは比例関係にあるので、充電レート(Pcr)や設備容量は、充電を開始させる位置からx1までのグラフの傾きで表される。
たとえば、設備容量が2点破線に示した傾きcであるとするならば、1点破線のグラフに示すグラフは、傾きcより急傾斜であるので、算出した充電レートが設備容量を超えてしまうこととなる。
この場合、制限速度指令部15bは、充電レート(Pcr)が設備容量を超えないように調整する。具体的には、制限速度指令部15bは、レーンチェンジする直前に、給電装置20から電力を充電するためにクレーン1を一旦停止して充電する場合よりも時間がかからない範囲で、クレーン1の走行速度を遅く制限する。
そして、制限速度指令部15bは、制限した走行速度でクレーン1を走行させる制限速度指令をクレーン制御部14へ出力する。これにより、レーンチェンジまでの時間が長くなることから、制限速度指令部15bは、充電レート(Pcr)が設備容量を超えないように調整することができる。また、制限速度指令部15bは、必要な場合には速度を制限する充電レートの閾値をクレーン1単独の設備容量でなく、港湾設備にかかる設備容量から決定してもよいし、港湾設備で消費している電力量に応じて切替えてもよい。
また、充電レート(Pcr)が設備容量を超えないように調整することとしたが、制限速度指令部15bは、昇降圧チョッパ12bが行う電流制御の出力が所定値を超えるか否かによってクレーン1の走行速度を制限することとしてもよい。
なお、ここでは、充電指令部15aが充電を開始するかを判定する際の蓄電量の閾値(Th)を、所定の設定値(e0)を用いることとしたが、図6に示すように、レーンチェンジまでの距離、すなわちクレーン1の位置に基づいて、閾値を変動させてもよい。
図6に示すように、横軸は、図5と同様にレーン201上の位置を示し、縦軸は、蓄電部12aの蓄電量を示す。そして、同図のグラフに示したように、レーンチェンジまでの距離が長いほど、閾値を高くすることによって充電レート(Pcr)が設備容量を超えないようにすることができる。
また、閾値(Th)は、レーンチェンジするのに十分な電気量(Elc)と、レーンチェンジまでの時間(t0)と、充電レート(Pcr)とに基づいて式(3)のように設定してもよい。
Th=Elc−Pcr×t0 …(3)
図6または式(3)のようにレーンチェンジまでの距離に応じて閾値(Th)を設定することによって、荷役システムでは、効率よく充電を行うことができる。
ここで、クレーン1では、巻上げ動作および横行動作を行った場合には電力を消費することとなるが、巻下げ動作を行った場合には回生電力の発生により消費電力がマイナスとなる。
このため、レーンチェンジ指示を受け付けてから、クレーン1がレーンチェンジエリア200に到達するまでの間に、巻動作がある場合には、充電指令部15aは、かかる動作による過不足電力量(Eh)を加味したうえで充電レート(Pcr)を算出する。また、レーンチェンジ指示を受け付けてから、クレーン1がレーンチェンジエリア200に到達するまでの間に、巻動作がない場合には、過不足電力量(Eh)は0とする。
なお、図2に示したクレーン1全体を制御する制御部15の処理は、クレーン制御部14内で行ってもよい。また、制御部15をクレーン1とは別体とし、クレーン1および管理装置30に接続される制御装置を設ける構成とし、制御装置によって制御部15の処理を行ってもよい。
つぎに、クレーン1が実行する指令出力処理の処理手順について図7を用いて説明する。図7は、第1の実施形態に係る指令出力処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、充電指令部15aは、レーンチェンジ指示を受け付けたか否かを判定し(ステップS101)、受け付けていない場合(ステップS101,No)、レーンチェンジ指示を受け付けるまでステップS101を繰り返す。
また、充電指令部15aは、レーンチェンジ指示を受け付けた場合(ステップS101,Yes)、昇降圧チョッパ12bから電圧を取得し(ステップS102)、取得した電圧によって蓄電部12aの現時点の蓄電量を算出する(ステップS103)。
充電指令部15aは、現時点の蓄電量が所定の閾値以下であるか否かを判定し(ステップS104)、現時点の蓄電量が所定の閾値より大きい場合(ステップS104,No)、ステップS102へ処理を移行する。
一方、充電指令部15aは、現時点の蓄電量が所定の閾値以下の場合(ステップS104,Yes)、クレーン制御部14からレーンチェンジまでの距離を取得する(ステップS105)。
また、充電指令部15aは、巻動作による過不足電力量を算出し(ステップS106)、蓄電部12aの現時点の蓄電量とレーンチェンジまでの距離とに基づいて充電レートを算出する(ステップS107)。
その後、充電指令部15aは、算出した充電レートが設備容量を超えないか否かを判定する(ステップS108)。そして、充電指令部15aは、充電レートが設備容量を超えない場合(ステップS108,Yes)、充放電指令として充電レートを昇降圧チョッパ12bへ出力し(ステップS109)、一連の指令出力処理を終了する。
一方、ステップS107で算出した充電レートが設備容量を超えた場合(ステップS108,No)、制限速度指令部15bは、充電レートが設備容量を超えないように制限して走行速度および充電レートを算出する(ステップS110)。
その後、制限速度指令部15bは、制限した走行速度でクレーン1を走行させる制限速度指令をクレーン制御部14へ出力する(ステップS111)。また、充電指令部15aは、充放電指令として再算出された充電レートを昇降圧チョッパ12bへ出力し(ステップS112)、一連の指令出力処理を終了する。
上述したように、第1の実施形態に係る荷役システムでは、蓄電装置の状態およびクレーンの状態に基づき、蓄電装置の蓄電量がレーンチェンジするのに十分な電気量を確保できるよう、クレーンの走行中に蓄電装置へ電力を充電させる。
これにより、クレーンは、レーンチェンジエリアに到達した時点でレーンチェンジする際に必要な電力が蓄電装置へ充電されることによって、クレーンは、動作を止めることなくレーンチェンジを開始することができる。このようにすることによって、第1の実施形態に係る荷役システムでは、作業効率を低下させることなく荷役作業を行うことができる。
ところで、上述した第1の実施形態に係る荷役システムでは、レーンチェンジ指示を受け付けた時点で、蓄電装置へ充電するか否かを判定することとしたが、これに限定されるものではない。
たとえば、レーンチェンジ指示を受け付けるまでは、レーンチェンジまでの距離または時間に基づいて蓄電装置へ充電するか否かを別途判定することとしてもよい。そこで、以下に示す第2の実施形態では、レーンチェンジ指示を受け付けるまでにも、指令出力処理を行う場合について説明する。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る荷役システムは、レーンチェンジ指示を受け付けるまでに、図8を用いて説明する指令出力処理を別途行う点が、第1の実施形態に係る荷役システムとは異なる。
なお、コンテナヤードの構成および荷役システムのシステム構成については、図1および図2と同様であるので、ここでは、コンテナヤードの構成および荷役システムのシステム構成の説明については省略することとする。
第2の実施形態に係る荷役システムのクレーン1が実行する指令出力処理の処理手順について図8を用いて説明する。図8は、第2の実施形態に係る指令出力処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、充電指令部15aは、クレーン制御部14からレーンチェンジまでの距離を取得し(ステップS201)、取得した距離が所定の閾値以下であるかを判定する(ステップS202)。
そして、充電指令部15aは、取得した距離が所定の閾値より長い場合(ステップS202,No)、ステップS201へ処理を移行する。
一方、充電指令部15aは、取得した距離が所定の閾値以下である場合(ステップS202,Yes)、昇降圧チョッパ12bから電圧を取得し(ステップS203)、取得した電圧によって蓄電部12aの現時点の蓄電量を算出する(ステップS204)。
以下、ステップS205〜ステップS210の処理は、図7のステップS106〜ステップS112の処理と同じであるので、説明を省略する。
なお、ここでは、レーンチェンジまでの距離に基づいて蓄電部12aへ充電するか否かを判定することとしたが、レーンチェンジまでの時間に基づいて判定を行ってもよい。また、距離と時間とのそれぞれに閾値を設け、独立させて各判定の論理和(OR)によって判定を行ってもよい。さらに、クレーン1では、レーンチェンジ指示を受け付けたか否かに関わらず、管理装置30から受信した荷役計画情報に基づいて蓄電部12aへ充電するタイミングを決定してもよい。
上述したように、第2の実施形態に係る荷役システムでは、レーンチェンジ指示を受け付けるタイミング以外にも、レーンチェンジまでの距離や時間に基づいて蓄電装置へ充電するか否かを判定することとした。
これにより、第2の実施形態に係る荷役システムでは、充電指令部15aがレーンチェンジ指示を受け付けてからレーンチェンジまでの時間が短い場合であっても、既に他の条件に基づいて蓄電装置への充電が開始される。
このため、第2の実施形態に係る荷役システムは、算出した充電レートが設備容量を超えることがないので、クレーンの走行速度を遅く調整する必要がない。したがって、第2の実施形態に係る荷役システムは、荷役の作業効率を向上させることができる。
(第3の実施形態)
つぎに、第3の実施形態に係る荷役システムについて図9を用いて説明する。図9は、第3の実施形態に係るコンテナヤードの模式図である。第3の実施形態に係る荷役システムは、コンテナヤードに複数のレーンチェンジエリア200a、200bが設置される点で、第1の実施形態および第2の実施形態の荷役システムとは異なる。
なお、荷役システムのシステム構成については、図2と同様であるので、ここでは、荷役システムのシステム構成の説明については省略することとする。
図9に示すように、第3の実施形態に係るコンテナヤードは、2ケ所のレーンチェンジエリア200a、200bが設置される。各レーンに対するクレーン1の走行方向(X軸方向)および縦走行方向(Y軸方向)は、第1の実施形態と同様である。
第3の実施形態に係る充電指令部15aは、クレーン1の位置および走行方向に基づいて蓄電装置へ充電するか否かを判定する。
具体的には、充電指令部15aは、管理装置30から受信したクレーン1の位置および走行方向に基づいていずれのレーンチェンジエリア200a、200bへ向かって走行しているかを判定する。
そして、充電指令部15aは、走行方向の終端側に設けられるレーンチェンジエリアの位置と現時点のクレーン1の位置との差分からレーンチェンジまでの距離を算出する。なお、走行方向の終端側に双方のレーンチェンジエリア200a、200bがある場合は、クレーン1の位置から近いレーンチェンジエリアをレーンチェンジするエリアとする。
したがって、充電指令部15aは、レーンチェンジするエリアの位置と、現時点のクレーン1の位置との差分からレーンチェンジまでの距離を算出する。また、管理装置30から受信した荷役計画情報によってレーンチェンジするエリアを決定してもよい。
なお、図9に示したコンテナヤードには、2ケ所のレーンチェンジエリアを設置することとしたが、レーンの長さに応じて、3ケ所以上のレーンチェンジエリアを設置してもよい。
上述したように、第3の実施形態に係る荷役システムでは、コンテナヤードの所定のレーンに対して2ケ所のレーンチェンジエリアを設置することとした。これにより、第3の実施形態に係る荷役システムは、レーンチェンジするまでの走行方向の移動距離が短くなることによって消費電力を抑止することができるとともに、走行時間を短縮することができる。したがって、第3の実施形態に係る荷役システムでは、総作業時間を短縮することができ荷役の作業効率を向上させることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。