以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1及び図2を参照し、本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分されている。空間A,Bには、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成されている。空間Cには、インクジェットヘッド10に対するインク供給源としてのカートリッジ39が収容されている。
空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド(記録ヘッド)10(以下、ヘッド10と称す。)、これら4つのヘッド10のインク増粘を抑制するキャッピング機構70、用紙Pを搬送方向(図1中左から右に向かう方向)に搬送する搬送ユニット21、搬送ユニット21の下端近傍に設けられたワイピング機構(払拭手段)60、用紙Pをガイドするガイドユニット等が配置されている。空間Aには、プリンタ1の各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る制御装置(制御手段)1pが配置されている。
制御装置1pは、外部装置から供給された画像データに基づいて、記録動作(プリンタ1の各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインクの吐出動作等)を制御する。制御装置1pは、メンテナンス指令に基づいて、搬送ユニット21、ワイピング機構60及びキャッピング機構70を制御し、メンテナンスを行う。ここで、メンテナンスとは、4つのヘッド10の吐出面10aを覆うキャッピングや、このキャッピングを行う際に搬送ベルト8の表面8a上の異物(インク、紙粉等)を除去するワイピング動作をいう。メンテナンスの具体的な内容については、図8を参照して後述する。
搬送ユニット21は、ベルトローラ6,7、両ローラ6,7間に巻回されヘッド10の吐出面10aと対向する位置を通過する表面(搬送面)8aを有するエンドレスの搬送ベルト8、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置された吸着プラテン22等を有する。ベルトローラ7は、駆動ローラであって制御装置1pによって駆動された搬送モータ121(図6参照)によって回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ7には、エンコーダ80(図6参照)が設けられおり、ベルトローラ7の回転量はエンコーダ80により把握される。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。
搬送ベルト8は、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂からなり、108〜1014Ωcm程度の体積抵抗率及び可撓性を有しているが、同様の体積抵抗率及び可撓性を有することが可能であれば、どのような材質であってもよい。また、搬送ベルト8は環状に形成されており、表面8aも環状に連続している。また、表面8aには、図2に示すように、主走査方向に延在した予備吐出領域Hが形成されている。予備吐出領域Hは、後述の予備吐出が行われる領域であり、フッ素樹脂やシリコン撥水剤などによる撥液コーティングが施され、表面8aの他の領域よりも撥液性が高くなっている。なお、搬送ベルト8をフッ素樹脂により形成する場合には、予備吐出領域Hは、搬送ベルト8のフッ素樹脂のフッ素含有量よりも高いフッ素含有量のフッ素樹脂によってコーティングを施す。また、予備吐出領域Hは、搬送ベルト8の全幅に亘って形成されている。また、予備吐出領域Hは、副走査方向に関して、用紙P及び後述のサブワイパ51よりも短く形成されている。ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。表面8aのうちの、後述の用紙センサ20と対向する位置を通過可能な位置には、不図示のマークが設けられている。マークの反射率は表面8aの反射率と異なっており、マークは用紙センサ20によって検知される。予備吐出領域Hの、表面8a内における位置は、マークの位置及びベルトローラ7の回転量によって把握される。
吸着プラテン22は、図1及び図2に示すように、絶縁材料から構成された板状のベース部材32と、ベース部材32の上面32aに接着された2つの電極33,34と、これら電極33,34全体を覆うように上面32aに接着された保護フィルム23とを含んでおり、搬送ベルト8を挟んで4つのヘッド10に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支えている。これら電極33,34は、副走査方向(搬送方向)に沿って延在する複数の長尺部33a,34aを有し、これら長尺部33a,34aが主走査方向に交互に配置された櫛歯形状となっている。また、電極33,34は、筐体1a内に設けられた電源36(図6参照)に接続されている。なお、電源36は、制御装置1pにより制御される。これら吸着プラテン22及び電源36によって、搬送ベルト8の表面8aに用紙Pを吸着させる吸着部が構成されている。
保護フィルム23は、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂からなり、108〜1014Ωcm程度の体積抵抗率を有しているが、同様の体積抵抗率を有することが可能であれば、どのような材質であってもよい。
ニップローラ4は、搬送方向に関して吸着プラテン22の上流端であって、電極33,34の長尺部33a,34aと対向する位置に配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット1bから送り出されてきた用紙Pを搬送ベルト8の表面8aに押さえ付ける。また、ニップローラ4は、導電性材料から構成されたローラである。
この構成において、制御装置1pの制御により、ベルトローラ7を図1中時計回りに回転させることによって、搬送ベルト8が走行する。このとき、搬送ベルト8の走行に伴ってベルトローラ6及びニップローラ4が回転する。また、用紙Pを搬送ベルト8で搬送するとき、制御装置1pの制御により、2つの電極33,34に互いに異なる電位(電極33は正又は負の電位、電極34はグランド電位)が印加される。なお、用紙Pを搬送ベルト8で搬送する際は、電極33に、例えば1kVの電位が印加される。
このように2つの電極33,34に電位が印加されると、ニップローラ4が導電性であるため、ニップローラ4と対向する部分においては、電流が、電極33(長尺部33a)から保護フィルム23→搬送ベルト8→用紙Pを通ってニップローラ4に至り、ニップローラ4から用紙P→搬送ベルト8→保護フィルム23を通って電極34(長尺部34a)に流れる。そして、搬送ベルト8の用紙Pと対向する部分に正又は負の電荷が生じ、用紙Pの搬送ベルト8と対向する面に先の電荷とは極性の異なる電荷が誘起され、これらの電荷同士が引き合うことで用紙Pを搬送ベルト8に吸着させる吸着力が生じる。
一方、ニップローラ4と対向しない部分においては、電流が、電極33(長尺部33a)から保護フィルム23→搬送ベルト8→用紙Pに至り、用紙Pから搬送ベルト8→保護フィルム23を通って電極34(長尺部34a)に流れる。このときの用紙Pの抵抗値はニップローラ4に比して非常に高くなるため、当該経路における全体の抵抗値がニップローラ4を通る経路における全体の抵抗値よりも大きくなる。そのため、同じ電位を両電極33,34に印加していても、ニップローラ4を通る経路のときの方が、電流値が大きくなる。そして、搬送ベルト8と用紙Pの間に働くジョンセン・ラーベック力、すなわち、吸着プラテン22による吸着力は、これらの間に流れる電流の増加に伴って増加する。したがって、電流値が大きくなることで、ニップローラ4と対向する部分においては吸着力が他の部位に比して大きくなる。
こうして、給紙ユニット1bから送り出された用紙Pは、まずは吸着力が非常に大きくなった部位(ニップローラ4と対向する部分)で表面8aに吸着される。当該用紙Pは、搬送ベルト8が走行方向(搬送方向)に走行されるのに伴って他の部位(ニップローラ4と対向しない部分)で保持(吸着)されながら搬送される。搬送ベルト8の表面8a上に吸着されつつ搬送されてきた用紙Pが4つのヘッド10のすぐ下方(吐出面10aと対向する領域)を順に通過する際に、制御装置1pが各ヘッド10を制御し、各ヘッド10が用紙Pに向けて各色のインクを吐出する。こうして、用紙Pに所望のカラー画像が形成される。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを表面8aから剥離し、さらに搬送方向下流側へと導く。
ワイピング機構60は、メインワイパ41、サブワイパ51、ワイパクリーナー45等を含む。ワイピング機構60の各部は、搬送ベルト8の下側ループに対向した位置に配置されている。搬送ベルト8の内側であって、搬送ベルト8を挟んでワイパ41,51と対向する位置に、搬送ベルト8の下側ループを内側から支えるプラテン9が配置されている。各ワイパ41,51が異物除去を行う際、プラテン9により、ワイパ41,51による押圧力で搬送ベルト8が撓むのが防止される。これにより、各ワイパ41、51の延出方向において各ワイパ41、51と搬送ベルト8との接触圧が均一となり、高い払拭性能が確保される。ワイピング機構60のより具体的な構成については、図3及び図4を参照して後述する。
各ヘッド10は、図1及び図2(a)に示すように、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するライン式のヘッドである。各ヘッド10の下面は、多数の吐出口10bが開口した吐出面10aである。記録(画像形成)に際して、各ヘッド10の吐出面10aからそれぞれブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが吐出される。これら4つのヘッド10は、副走査方向に並設されている。また、これらのヘッド10は、吐出面10aが搬送ベルト8の上側ループの表面8aに対向し、且つ、吐出面10aと表面8aとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるように配置されている。
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
空間Bには、給紙ユニット1bが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。給紙トレイ24は、上方に開口した箱体であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
上述したように、空間A,Bに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。外部装置から受信した記録指令に基づいて、制御装置1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ125(図6参照)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ127(図6参照)、搬送モータ121(図6参照)等を駆動する。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。このとき、上述のように制御装置1pは電源36を制御して、搬送ベルト8上に搬送されてくる用紙Pを表面8aに吸着させる。そして、用紙Pが各ヘッド10の真下を搬送方向に通過する際、制御装置1pは各ヘッド10から各色のインクが順に吐出されるように各ヘッド10を制御して、用紙P上にカラー画像を形成させる。なお、インクの吐出動作は、用紙センサ20からの検出信号に基づいて行われる。用紙センサ20は、図2(a)に示すように、搬送ベルト8の副走査方向における一端側に配置され、搬送される用紙Pを検出可能である。用紙Pは、搬送ベルト8によって搬送された後、剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送されて、上方の開口30から排紙部31に排出される。なお、剥離プレート5よりも、用紙Pの搬送方向下流側には、用紙センサ81が配置されている。制御装置1pは、搬送方向に搬送される用紙Pが用紙センサ20によって検知された後、所定時間を過ぎても用紙センサ81によって検知されない場合には、ジャム(紙詰り)が発生したと判断する。用紙センサ81は、剥離プレート5よりも搬送方向下流側に限らず、ヘッド10よりも下流側に配置されていれば良い。
空間Cには、カートリッジユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジユニット1cは、トレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ39を有する。4つのカートリッジ39は、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ収容する。カートリッジ39はチューブ(図示せず)を介して対応するヘッド10にインクを供給する。本実施形態におけるインクには、水溶性のインクが採用されている。具体的には、水溶性インクは、水、湿潤剤、浸透剤、着色剤等を含んでいる。湿潤剤には、グリセリンやジエチレングリコールが用いられる。湿潤剤によって、インクの乾燥(インクの水分の減少)が抑制されている。しかし、水分が減少して乾燥したインク(増粘インク)はインク中の湿潤剤の濃度が高くなっているため、湿潤剤が周囲の水分を吸収する吸湿剤として作用してしまう。つまり、増粘インクは、湿潤剤の吸湿性により、周囲に存在する乾燥していないインクの水分を吸収してしまう。
次に、図3及び図4を参照し、ワイピング機構60の構成について説明する。ワイピング機構60は、図3に示すように、メインワイプ機構40及びサブワイプ機構50を含む。
メインワイプ機構40は、メインワイパ41及びワイパクリーナー45を有する。メインワイパ41は、後述の第1ワイピング動作時に用いられる。メインワイパ41は、ゴム等の弾性材料からなる板状部材であり、主走査方向に延在している。メインワイパ41の基端(下端)は、シャフト42の周面に固定されている。シャフト42は、主走査方向に延在しており、フレーム62に回転可能に支持されている。シャフト42の回転に伴って、メインワイパ41はシャフト42を回転中心として回動する。フレーム62は筐体1a(図1参照)に固定されている。
メインワイプ機構40は、シャフト42を回転させる構成部材として、モータ41Mの出力軸に固定されたギア43a、ギア43aに噛合したギア43b、及び、ギア43bの回転に伴い回転するウォームギア43cを有する。シャフト42の一端には、ウォームギア43cの周面と噛合したウォームホイール42gが設けられている。モータ41Mの駆動に伴ってギア43a,43b,43cが回転すると、ウォームホイール42gが回転する。これにより、シャフト42が主走査方向に沿った軸を中心として回転し、水平面に対するメインワイパ41の傾斜角度が変化する。
メインワイパ41の傾斜角度は、第1ワイピング動作時にメインワイパ41の先端近傍が撓みながら搬送ベルト8の表面8aに接触し、且つ、第1ワイピング動作時以外のときはメインワイパ41の先端が搬送ベルト8の表面8aから離隔するよう、制御装置1pによって制御される。また、メインワイパ41の傾斜角度は、後述のワイパクリーニング時はメインワイパ41の先端がワイパクリーナー45に接触し、且つ、ワイパクリーニング時以外のときはメインワイパ41の先端がワイパクリーナー45から離隔するよう、制御装置1pによって制御される。
また、メインワイパ41は、主走査方向の長さが搬送ベルト8の幅より若干長く、搬送ベルト8の幅全体に亘って配置されている。つまり、メインワイパ41は、主走査方向の中心が搬送ベルト8の幅方向の中心と一致し且つ平面視において搬送ベルト8の幅方向両側にメインワイパ41が突出するように配置されている。したがって、第1ワイピング時にメインワイパ41の先端は搬送ベルト8の幅全体に接触する。第1ワイピング動作によって、表面8aのうちのメインワイパ41によって払拭された領域から所望量の異物が除去される。メインワイパ41によって表面8aからはほとんどの異物が除去される。よって、メインワイパ41によって拭ききれずに表面8aに付着した異物が搬送ベルト8によって搬送される用紙Pの裏面に付着することや、表面8aに付着した異物によって搬送ベルト8の用紙Pに対する吸着力が低下して搬送ベルトが用紙Pを搬送できなくなることは防止される。
ワイパクリーナー45は、ワイパクリーニング時に用いられる部材であり、例えばスポンジ等の吸収体からなる。ワイパクリーナー45は、円筒状であり、主走査方向に延在し、シャフト46に軸支されている。シャフト46は、主走査方向に延在しており、フレーム62に回転可能に支持されている。シャフト46の回転に伴って、ワイパクリーナー46は回転する。
メインワイプ機構40は、シャフト46を回転させる構成部材として、モータ45Mの出力軸に固定されたプーリ47、シャフト46の一端に固定されたプーリ46p、及び、プーリ46pとプーリ47との間に巻回されたベルト48を有する。モータ45Mの駆動に伴ってプーリ47が回転すると、ベルト48が走行し、プーリ46pが回転する。これにより、シャフト46がワイパクリーナー45と共に回転する。
サブワイプ機構50は、サブワイパ51及びサブワイパクリーナー55aを有し、搬送ベルト8によって用紙Pが搬送方向に搬送されるときの搬送ベルト8の走行方向に関して、メインワイプ機構40の下流に配置されている。サブワイパ51は、後述の第2ワイピング動作時に用いられる。サブワイパ51は、ゴム等の弾性材料からなる板状部材であり、副走査方向に延在している。サブワイパ51の副走査方向の長さは、予備吐出領域Hの副走査方向の長さよりも長くなっている。サブワイパ51の基端(下端)は、ワイパサポータ51aに固定されている。ワイパサポータ51aは、副走査方向に延在している。ワイパサポータ51aの副走査方向両端にはスライダ52が設けられており、ワイパサポータ51aは副走査方向に沿った軸を中心として回転可能に一対のスライダ52に支持されている。ワイパサポータ51aの回転に伴って、サブワイパ51が回動する。なお、サブワイパ51及びワイパサポータ51aは、図4(a)における時計回り方向に、バネ等の付勢部材(図示せず)により付勢されている。一対のスライダ52は、主走査方向に移動可能に、一対のバー53に支持されている。バー53はそれぞれ主走査方向に延在し、スライダ52に貫挿されている。一対のスライダ52の主走査方向への移動に伴って、サブワイパ51が主走査方向に移動する。
サブワイプ機構50は、サブワイパ51を主走査方向に移動させる構成部材として、一対のスライダ52のそれぞれに下側ループが固定された一対のベルト54、一対のベルト54がそれぞれ巻回されたプーリ54a1,54a2、一対のベルト54がそれぞれ両端に巻回されたローラ54b、及び、ローラ54bの両端に設けられたプーリ54b1,54b2を有する。さらにサブワイプ機構50は、上記構成部材として、プーリ54b2と一体的に回転するギア54c、及び、ギア54cに噛合し且つモータ59Mの出力軸に固定されたギア54dを有する。モータ59Mの駆動に伴ってギア54c,54dが回転すると、プーリ54b2が回転する。そしてプーリ54b2の回転に伴ってローラ54bが回転し、一対のベルト54が走行する。これにより、スライダ52がワイパサポータ51aを支持しつつ主走査方向に移動する。
また、サブワイプ機構50は、サブワイパ51を回転させる構成部材として、ワイパサポータ51aの下方に配置されたプレート58を有する。プレート58は、主走査方向に細長く、水平面に平行に配置された板状部材である。図4(a)に示すように、サブワイパ51が主走査方向に移動する間、ワイパサポータ51aの下端がプレート58の表面に摺接する。
プレート58の表面(上面)は、主走査方向両端を除いて、平らである。プレート58の主走査方向一端(ワイピング動作時におけるサブワイパ51の移動方向(図3の矢印方向)上流側の端部)に段差面58a、主走査方向他端に傾斜面58bがそれぞれ設けられている。段差面58aは、プレート58の表面の主走査方向両端以外の部分よりも低い面である。プレート58の表面における段差面58aと段差面58a以外の部分との境界には、凸部58a1が設けられている。
サブワイパクリーナー55aは、第2ワイピング動作終了後にサブワイパ51をクリーニングする部材であり、例えばスポンジ等の吸収体からなる。サブワイパクリーナー55aは、円筒状であり、副走査方向に延在し、シャフト55bに軸支されている。シャフト55bは、副走査方向に延在しており、フレーム62に回転可能に支持されている。シャフト55bの回転に伴って、サブワイパクリーナー55aは回転する。
また、サブワイプ機構50は、シャフト55bを回転させる構成部材として、モータ51Mの出力軸に固定されたプーリ57、シャフト55bの一端に固定されたプーリ55a1、及び、プーリ57とプーリ55a1との間に巻回されたベルト56を有する。モータ51Mの駆動に伴ってプーリ57が回転すると、ベルト56が走行し、プーリ55a1が回転する。これにより、シャフト55bがサブワイパクリーナー55aと共に副走査方向に沿った軸を中心として回転する。凸部58a1は、プレート58の表面の主走査方向両端以外の部分よりも凸部58a1が上方に突出した位置と、プレート58の表面の主走査方向両端以外の部分と同じ高さになるように凸部58a1が没入した位置とに移動可能である。なお、凸部58a1は、上方に向けて付勢されており、外力が加えられない状態においては、プレート58の表面の主走査方向両端以外の部分よりも上方に突出した位置にある。
ここで、第2ワイピング動作時におけるサブワイパ51の動作について、説明する。なお、第2ワイピング動作は、サブワイパ51が表面8aに接触しつつ主走査方向に沿って移動し、表面8aから異物を払拭する動作である。
サブワイパ51は、第2ワイピング動作時以外のとき、図4(a)に示すように、プレート58の主走査方向一端のホームポジションにて、上下方向に関して搬送ベルト8の表面8aに対向しつつ、先端が表面8aに接触しない傾斜角度で静止している。このとき、図4(b)に示すように、ワイパサポータ51aの下端51a1が凸部58a1の段差面58a側の斜面に当接している。
第2ワイピング動作時に、モータ59Mの駆動に伴ってスライダ52が主走査方向に移動を開始しようとしたとき、図4(b),(c),(d)に示すように、下端51a1が凸部58a1の上記斜面に当接しながら回転する。これにより、付勢部材による付勢力に抗って、ワイパサポータ51aと共にサブワイパ51が副走査方向に沿った軸51bを中心として回転し、水平面に対するサブワイパ51の傾斜角度が徐々に大きくなるようにθ1からθ3へと変化し、サブワイパ51の先端が搬送ベルト8の表面8aに接触する。スライダ52がさらに主走査方向に移動すると、凸部58a1が下端51a1によって下方に押されて、凸部58a1とプレート58の表面の主走査方向両端以外の部分とが同じ高さになるように凸部58a1が没入した位置に移動する。スライダ52がさらに主走査方向に移動すると、図4(e)に示すように、下端51a1が凸部58a1を通過する。このとき、サブワイパ51及びワイパサポータ51aには付勢部材による付勢力(サブワイパ51の傾斜角度がθ3からθ1となる向きの力)が働いているが、下端51a1がプレート58の表面に支持されているため、サブワイパ51の傾斜角度はθ3に維持される。そして、サブワイパ51は、先端を表面8aに接触させつつ、主走査方向に移動する。サブワイパ51がプレート58の主走査方向他端に至り、下端51a1が傾斜面58bに到達したとき、図4(f)に示すように、下端51a1がプレート58の表面(傾斜面58b)から離隔する。これにより、付勢部材の付勢力によりワイパサポータ51aと共にサブワイパ51が副走査方向に沿った軸51bを中心として回転し、水平面に対するサブワイパ51の傾斜角度がθ3から再びθ1と変化し、サブワイパ51の先端が搬送ベルト8の表面8aから離隔する。
第2ワイピング動作の終了後、サブワイパ51は、水平面に対する傾斜角度をθ1に維持し、先端が表面8aから離隔した状態で、先端がサブワイパクリーナー55aに当接する位置まで移動される。そして、サブワイパ51の先端がサブワイパクリーナー55aによりクリーニングされた後、図4(g)に示すように、サブワイパ51は、ホームポジションに向けて主走査方向に移動する。ホームポジション近傍において下端51a1が凸部58a1の段差面58aと反対側の斜面に当接して、凸部58a1を下方に移動させつつ凸部58a1を通過した後、サブワイパ51は、水平面に対する傾斜角度をθ1に維持し、先端が表面8aから離隔した状態で、ホームポジションで停止される。
傾斜角度θ3は、サブワイパ51の先端近傍が撓みながら搬送ベルト8の表面8aに接触するように設定されている。また、傾斜角度θ3においては、サブワイパ51の搬送ベルト8の表面8aに対する押圧力が、第1ワイピング動作時におけるメインワイパ41の表面8aに対する押圧力よりも小さくなるように設定されている。具体的には、サブワイパ51の回動中心軸である軸51bと搬送ベルト8の表面8aとの距離が、メインワイパ41の回動中心軸であるシャフト42と搬送ベルト8の表面8aとの距離よりも長くなるように設定されている。なお、サブワイパ51の回動中心軸である軸51bと搬送ベルト8の表面8aとの距離と、メインワイパ41の回動中心軸であるシャフト42と搬送ベルト8の表面8aとの距離とが同じ場合であっても、第2ワイピング動作時におけるサブワイパ51の水平面に対する傾斜角度θ3が、第1ワイピング動作時におけるメインワイパ41の水平面に対する傾斜角度よりも小さくなるように設定されていてもよい。つまり、第1ワイピング動作時におけるメインワイパ41の水平面に対する傾斜角度がθ3よりも大きくなるように設定されていても良い。
サブワイパ51における表面8aから異物を払拭する払拭能力は、メインワイパ41の払拭能力よりも小さくなっている。このようにサブワイパ51による押圧力がメインワイパ41による押圧力よりも小さくなることで、第2ワイピング動作時において、サブワイパ51と表面8aとの摩擦力が小さくなる。そのため、第2ワイピング動作時において、サブワイパ51の主走査方向の移動に伴って搬送ベルト8が主走査方向に移動する(ズレる)のを抑制することができる。搬送ベルト8が主査方向にズレるのを抑制できるため、搬送ベルトの搬送精度の低下を抑制できる。さらに、押圧力の大きなメインワイパ41で後述するように異物を確実に狭い範囲に集めることができると共に、押圧力の小さなサブワイパ51で搬送ベルト8をずらすことなく狭い範囲に集められた異物を除去することができる。
なお、サブワイパ51の押圧力が小さくなっていても、サブワイパ51と搬送ベルト8の表面8aとは接触しているので、表面8aから所望量の異物は除去される。つまり、サブワイパ51によって除去されるのは、メインワイパ41が表面8aから離隔されたときに残存する異物(メインワイパ41によって狭い範囲に集められた異物)、又は、撥液性の高い予備吐出領域Hに付着した異物であり、さらに、サブワイパ51による拭き残しも僅かである。そのため、サブワイパ51によって拭ききれずに表面8aに付着した異物が搬送ベルト8によって搬送される用紙Pの裏面に付着することや、表面8aに付着した異物によって搬送ベルト8の用紙Pに対する吸着力が低下して搬送ベルト8が用紙Pを搬送できなくなることは防止される。
また、サブワイパ51を主走査方向に移動させる構成部材(ベルト54等)は、搬送ベルト8の幅全体に亘って配置されている。したがって、サブワイパ51は、第2ワイピング動作時に、先端近傍が撓みながら搬送ベルト8の表面8aに接触した状態で、搬送ベルト8の幅方向一端から他端に亘って移動し、搬送ベルト8の幅全体の異物を除去する。なお、各ワイパ41,51により除去された異物は、各ワイパ41,51の下方にある受け皿(図示せず)により受容される。
キャッピング機構70は、図2(a)及び図5に示すように、4つのヘッド10の周囲に配設された環状のキャップ71と、キャップ71を上下方向に移動させる移動機構72とを有している。キャップ71は、4つのヘッド10を取り囲むと共に、内周面上端付近でのみ4つのヘッド10がなす側周面と当接している。また、キャップ71の下端部は、ゴムなどの弾性部材から形成されている。
移動機構72は、キャップ71の側面に固定された2つのフランジ71a,71bと、フランジ71aをスライド可能に支持するガイド75と、外周面に雄ねじが形成された軸76と、制御装置1pに制御され軸76を回転させるモータ77とを有している。ガイド75は、筐体1aに固定されており、フランジ71aの中央に形成された孔に通されている。軸76は、筐体1aに固定されたモータ77に接続されているとともに、フランジ71bの中央に形成され内周面に雌ねじが形成されたネジ孔に螺入されている。
この構成において、制御装置1pの制御により、軸76が正回転すると、キャップ71が搬送ベルト8から離隔した退避位置(図5(a)に示す位置)からキャップ71の下端が搬送ベルト8の表面8aに当接する当接位置(図5(b)に示す位置)に移動する。なお、退避位置は、吐出面10a、キャップ71及び搬送ベルト8の表面8aに囲まれた密閉空間がつくられない位置であって、吐出面10aがキャップ71及び搬送ベルト8の表面8aによって覆われない位置である。一方、当接位置は、吐出面10a、キャップ71及び搬送ベルト8の表面8aに囲まれた密閉空間がつくられる位置であって、吐出面10aがキャップ71及び搬送ベルト8の表面8aによって覆われる位置である。このとき、キャップ71の上端と4つのヘッド10の側周面とが当接しているので、吐出面10a、搬送ベルト8の表面8a及びキャップ71によって囲まれた空間(吐出口10bと通じる外部空間)が密閉空間となる。これら4つの吐出面10aは、キャップ71及び搬送ベルト8の表面8aによって覆われ(キャッピングされ)、密閉されているため、ヘッド10の吐出口10b近傍のインクの増粘を抑制することが可能となる。一方、制御装置1pの制御により、軸76が逆回転すると、キャップ71が当接位置から退避位置に移動する。
次に、図6、図7を参照し、プリンタ1の電気的構成について説明する。制御装置1pは、図6に示すように、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)101に加えて、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)103、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )104、I/F(Interface)105、I/O(Input/Output Port)106等を有する。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(例えば、用紙Pに記録される画像に係る画像データ)が一時的に記憶される。ASIC104では、画像データの書き換え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)が行われる。I/F05は、外部装置とのデータ送受信を行う。I/O106は、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。
制御装置1pは、各モータ121,125,127,41M,45M,51M,59M,77、用紙センサ20、電源36、各ヘッド10の制御基板等に接続されている。また、制御装置1pは、図7に示すように上述のハードウェアによって構築された第1ワイピング実行部131、第2ワイピング実行部132、記憶部133、認識部134、キャッピング制御部135、及び、予備吐出制御部136などの機能部を有している。
第1ワイピング実行部131は、表面8aから離隔した位置にあるメインワイパ41の先端を表面8aに接触させ、メインワイパ41と表面8aとを相対的に搬送方向に移動させて表面8a上の異物を払拭する第1ワイピング動作を行うように、モータ41M及び搬送モータ121を制御する。本実施形態における第1ワイピング動作は、キャッピングを行う前に後述の第1領域Gを形成するように表面8aを払拭する前ワイピング動作(第1払拭動作)と、キャッピングが行われている最中に後述の第2領域Fを払拭する後ワイピング動作(第2払拭動作)とを含んでいる。
第2ワイピング実行部132は、表面8aから離隔した位置にあるサブワイパ51の先端を表面8aに接触させ、サブワイパ51と表面8aとを相対的に主走査方向に移動させて表面8a上の異物を払拭する第2ワイピング動作を行うように、モータ59M及び搬送モータ121を制御する。
記憶部133は、プリンタ1の電源が「ON」されてから「OFF」されるまでの間に行われるプリンタ1の動作履歴を記憶する。なお、記憶部133に記憶された動作履歴は、後述のキャッピングを行うメンテナンス指令による一連の動作が行われるとリセットされる。
認識部134は、記録部133に記憶された動作履歴に基づいて、表面8aにおける第1領域G及び第2領域Fの位置を認識する。つまり、認識部134は、動作履歴に基づいて、インク付着量が所定量以下であると推定され、且つ、当接位置に配置されたキャップ71によって囲まれる表面8aのうちの包囲範囲8b(図5(b)参照)以上の大きさを有する領域を第1領域Gとして認識し、表面8aのうちの第1領域Gの位置を認識する。一方、認識部134は、動作履歴に基づいて、インク付着量が所定量を超えると推定され、且つ、表面8aのうちのキャップ71によって囲まれる包囲範囲8b以上の大きさを有する領域を第2領域Fとして認識し、表面8aのうちの第2領域Fの位置を認識する。第1領域G内は、当該「包囲範囲8bと同じ寸法の範囲」内でのインク付着量が前記所定量以下となっている。一方、第2領域Fは、表面8aのうちの包囲範囲8b以上の大きさを有する領域であって、包囲範囲8bと同じ寸法の範囲内におけるインク付着量が前記所定量を超えると推定される領域である。
具体的には、認識部134は、インクが搬送ベルト8の表面8a全体に付着する動作(例えば、前記所定量を超えるインクミストの発生が予想される記録動作や、ジャムの発生、パージ)が行われたときの動作履歴に基づいて、搬送ベルト8の表面8a全体に前記所定量を超えるインクが付着していると認識する。つまり、表面8a全体が第2領域Fであると認識する。なお、前記所定量を超えるインクミストの発生が予想される記録動作とは、後述のキャッピングを行うメンテナンス指令による一連の動作が行われてから(表面8aがワイピングされてから)、ヘッド10から吐出された累積インク量が前記所定量を超えたときをいう。この場合、認識部134は、搬送ベルト8の表面8a全体にインクミストが付着しており、その付着量も前記所定量を超えていると認識する。また、ジャムが発生したときは、用紙Pが搬送されていないにも拘わらず、ヘッド10からインクが吐出されるため、表面8a全体に前記所定量を超えるインクが付着していると推定される。そのため、ジャムが発生したときは、認識部134は表面全体を第2領域Fと認識する。また、パージ(ポンプの駆動によりヘッド10内のインクに圧力を付与して全吐出口からインクを吐出させる動作)が行われたときは、ジャムの発生と同様に、多くのインクが吐出され、表面全体にインクが前記所定量を超えて付着していると推測される。そのため、パージが行われたときは、表面8a全体を第2領域Fと認識する。ここで、前記所定量を超えるインク付着量とは、吐出面10aがキャップ71及び表面8aによって覆われた場合に、表面8aに付着したインクによって吐出口10a近傍のインクの水分が吸収されて吐出口10a内のインクの乾燥が進行される場合における、表面8aに付着したインクの量である。また、認識部134は、表面8aのうちの、ワイピング機構60で払拭された領域を第1領域Gとして認識する。つまり、認識部134は、搬送ベルト8の表面8a全体が第2領域Fであると認識した後においても、ワイピング機構60によって表面8aの一部もしくは全体が払拭されれば、その払拭された領域を第1領域Gとして認識する。メインワイパ41によって払拭された領域に付着しているインクの付着量は僅かであるため、吐出面10aがキャップ71及び表面8aによって覆われている際に、表面8aに付着しているインクによって、吐出口10a近傍のインクの水分が吸収されるのが抑制されるためである。
また、認識部134は、予備吐出(画像データとは異なる予備吐出データに基づくヘッド10のアクチュエータの駆動により吐出口から予備吐出領域Hにインク吐出させる動作)が行われたときの動作履歴に基づいて、予備吐出領域Hを第2領域Fと認識し、この領域H以外の領域を第1領域Gと認識する。
キャッピング制御部135は、認識部134によって認識された第1領域Gとキャップ71とが当接して、吐出面10aがキャップ71及び第1領域Gによって覆われるキャッピングが行われるように、移動機構72(モータ77)及び搬送ユニット21(搬送モータ121)を制御する。キャッピング制御部135は、移動機構72を制御して、キャップ71を、退避位置(図5(a)に示す位置)から当接位置(図5(b)に示す位置)に移動させてキャッピングを行う。キャッピング制御部135は、移動機構72の制御により、仮キャッピングと本キャッピングとを行うことが可能である。仮キャッピングが行われているときのキャップ71の表面8aに対する押圧力は、本キャッピングが行われているときのキャップ71の表面8aに対する押圧力よりも小さい。具体的には、キャッピング制御部135は、仮キャッピングよりも、本キャッピングの方が、キャップ71の位置が下方になるように移動機構72を制御する。
予備吐出制御部136は、外部装置から供給された画像データとは異なる予備吐出データに基づいて、予備吐出領域Hに各ヘッド10からインクが吐出されるように、各ヘッド10及び搬送ユニット21(搬送モータ121)を制御する。なお、本実施形態において、予備吐出は、予備吐出領域Hに行われるが、表面8a全体に行われてもよい。
次に、図8を参照し、制御装置1pが実行するメンテナンスの内容について説明する。以下の各処理は、ROM102に記憶されているプログラムにしたがって、CPU101が実行する。
制御装置1pは、図8に示すように、先ず、キャッピングを行うメンテナンス指令の受信の有無を判断する(ステップ1:S1)。メンテナンス指令は、例えば、プリンタ1の電源投入後、搬送ベルト8の表面8aに向けてパージや予備吐出が行われた後、ジャムが生じた時、所定期間の間に記録動作が行われない時等に受信される。
制御装置1pは、ステップ1において、メンテナンス指令を受信しなければ(NO)、待機状態を継続する。制御装置1pは、ステップ1において、メンテナンス指令を受信すると(YES)、ステップ2(S2)に進む。ステップ2においては、認識部134が記憶部133に記憶された動作履歴に基づいて、表面8aに第2領域Fが存在するか否かを認識する。記録部133が記憶する動作履歴中に表面8aの全体又は部分的にインクが付着する動作(前記所定量を超えるインクミストの発生が予想される記録動作や、ジャムの発生、パージ、予備吐出)がない場合、認識部134が表面8a全体が第1領域Gと認識し、ステップ10(S10)に進む。一方、動作履歴の中に表面8aの全体又は部分的にインクが付着する動作が含まれていると、認識部134は、当該動作に対応した第2領域Fが表面8aに存在すると認識し、ステップ3(S3)に進む。なお、動作履歴が表面8aの全体にインクが付着する動作(前記所定量を超えるインクミストの発生が予想される記録動作や、ジャムの発生、パージ)のときは、認識部134が表面8a全体を第2領域Fと認識しているため、第1領域Gが存在しない。この場合、表面8aのうちの、後述する前ワイピング動作で払拭された領域が第1領域Gと認識部134に認識される。
次に、ステップ3(S3)において、制御装置1pは、動作履歴中に表面8aの全体にインクが付着する動作があるかを判定する。つまり、認識部134が、表面8a全体が第2領域Fであると認識している場合はステップ4(S4)に進み、表面8aの予備吐出領域Hが第2領域Fであると認識している場合はステップ9(S9)に進む。なお、本実施形態においては、予備吐出が予備吐出領域Hに行われているが、表面8a全体に行われていてもよい。この場合、ステップ3を省略し、ステップ4に進み、後述のステップ4以降と同様な動作が行われればよい。一方、パージ動作におけるインク量を少なくし予備吐出動作と同様に表面8aのうちの特定の領域にパージが行われる場合は、ステップ9以降と同様な動作が行われればよい。
次に、ステップ4においては、制御装置1pは、搬送ベルト8が停止した状態でモータ41Mを駆動し、メインワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として図1中時計回りに一回転させる。この回転の際、メインワイパ41の先端は、撓みながらワイパクリーナー45の周面に接触する。このとき、メインワイパ41の先端に付着した異物がワイパクリーナー45に付着し、メインワイパ41の先端から除去される(ワイパクリーニング)。
なお、制御装置1pは、1又は数回のワイパクリーニング(S4)の完了の度に、ワイパクリーナー45を360度より小さい所定角度だけ回転させる。これにより、ワイパクリーニング時にメインワイパ41の先端が接触するワイパクリーナー45の部分が変化し、メインワイパ41の先端に付着した異物を効果的に除去することができる。
次に、ステップ5(S5)において、第1ワイピング実行部131は、モータ41Mを駆動し、メインワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、搬送ベルト8の表面8aから離隔した位置にあるメインワイパ41の先端を表面8aに接触させ、メインワイパ41の先端が撓みながら表面8aに接触したタイミングで、モータ41Mの駆動を停止する。そして、第1ワイピング実行部131は、搬送モータ121を駆動して搬送ベルト8を走行させる。これにより、搬送ベルト8の表面8a上の異物が、メインワイパ41によって表面8aの狭い範囲に集められながら除去されていく。具体的には、図9(a)に示すように、メインワイパ41と表面8aとが接触した状態で搬送ベルト8を走行させ、表面8aを払拭して第1領域Gを形成する(前ワイピング動作)。なお、図9においては、第2領域Fにだけハッチングを施して分かり易くしている。
次に、ステップ6(S6)において、キャッピング制御部135は、図9(b)に示すように、第1領域Gの走行方向の先端がキャップ71の搬送方向の下流端と対向するときに、搬送モータ121の駆動を停止し、キャップ71を退避位置から当接位置に移動させるように、モータ77を制御する。このとき、キャッピング制御部135は、仮キャッピングを行うようにモータ77を制御する。
次に、ステップ7(S7)において、第1ワイピング実行部131は、再度搬送モータ121を駆動して搬送ベルト8を走行させ、搬送ベルト8が前ワイピング動作を含めて1周以上回転した後に、搬送モータ121の駆動を停止する。このように、キャッピングが行われている最中に搬送ベルト8が走行され、搬送ベルト8が1周以上走行されることで、図9(c)に示すように、表面8a全体が第1領域Gとなる。つまり、ステップ7では、前ワイピング動作において払拭されなかった第2領域Fが払拭される(後ワイピング動作)。このため、表面8a全体がメインワイパ41によって払拭され、表面8aにインクが固着しにくくなる。そして、第1ワイピング実行部131は、搬送ベルト8が停止した状態で、モータ41Mを駆動し、メインワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、メインワイパ41の先端を表面8aから離隔させる。
次に、ステップ8(S8)において、第2ワイピング実行部132は、搬送モータ121の駆動により搬送ベルト8を走行させ、メインワイパ41が表面8aから離隔した位置がサブワイパ51の副走査方向の中心と重なるタイミングで搬送モータ121の駆動を停止する。このとき、表面8aのキャップ71と対向する領域は、第1領域Gとなっている。そして、キャッピング制御部135は、キャップ71の表面8aに対する押圧力が先の仮キャッピングにおける押圧力よりも大きくなるように、モータ77を制御する(本キャッピング)。これにより、後ワイピング動作が終了した後において、吐出面10aに対する気密性を向上させることが可能となる。また、仮キャッピングにおける表面8aに対する押圧力は本キャッピングにおける表面8aに対する押圧力よりも小さいため、後ワイピング動作において仮キャッピングを行いつつ搬送ベルト8を走行させても表面8aとキャップ71との間の摩擦力が小さくなる。このため、搬送ベルト8の走行に伴う搬送負荷を小さくすることが可能となる。
本キャッピングが行われている最中に、第2ワイピング実行部132は、モータ59Mを正方向に駆動する。これにより、搬送ベルト8の表面8aから離隔した位置にあるサブワイパ51の先端が表面8aに接触し、さらにサブワイパ51がホームポジションから主走査方向に移動することで、搬送ベルト8の表面8a上の異物(すなわち、メインワイパ41を表面8aから離隔させることによって当該表面に残留する異物)がサブワイパ51によって狭い範囲に集められながら除去されていく(第2ワイピング動作)。このため、表面8aにインクが残存しにくくなる。この結果、表面8aで用紙Pを搬送するときに、用紙Pの表面8aと対向する面にインクが付着しにくくなり、用紙Pが汚れにくくなる。また、第2ワイピング動作が行われるときには、本キャッピングによって搬送ベルト8とキャップ71との間の摩擦力が大きくなっているので、第2ワイピング動作でサブワイパ51の移動方向に搬送ベルト8がずれるのを抑制することが可能となる。そして、第2ワイピング実行部132は、サブワイパ51がプレート58の主走査方向他端に至ったタイミングで、モータ59Mの駆動を一旦停止する。このとき、サブワイパ51の先端は、表面8aから離隔し(図4(f)参照)、且つ、サブワイパクリーナー55aに当接している。その後、第2ワイピング実行部132は、モータ59Mを逆方向に駆動し、サブワイパ51を主走査方向に逆向き(異物除去時におけるサブワイパ51の移動方向(図3の矢印方向)とは逆の方向)に移動させ(図4(g)参照)、サブワイパ51がホームポジションに至ったタイミングで、モータ59Mの駆動を停止する。こうして、第1及び第2ワイピング動作が終了するとともに、吐出面10aがキャップ71によってキャッピングされた状態となる。
一方、ステップ9において、第2ワイピング実行部132は、搬送モータ121の駆動により搬送ベルト8を走行させ、副走査方向に関してサブワイパ51の中心と第2領域F(予備吐出領域H)の中心とが重なるタイミングで搬送モータ121の駆動を停止する。このとき、搬送ベルト8の予備吐出領域H以外は第1領域Gであるため、キャップ71と対向する領域も第1領域Gとなる。そして、キャッピング制御部135は、キャップ71を退避位置から当接位置に移動させるように、モータ77を制御する(本キャッピング)。このときのキャップ71の表面8aに対する押圧力がステップ8の本キャッピングのときと同じになるように、モータ77を制御する。
キャップ71が当接位置に移動された後(本キャッピングが行われている最中)に、第2ワイピング実行部132は、ステップ8と同様な第2ワイピング動作が行われるように、モータ59Mを正方向に駆動し、サブワイパ51がプレート58の主走査方向他端に至ったタイミングでモータ59Mの駆動を一旦停止する。その後、第2ワイピング実行部132は、モータ59Mを逆方向に駆動し、サブワイパ51を主走査方向に逆向きに移動させ、サブワイパ51がホームポジションに至ったタイミングで、モータ59Mの駆動を停止する。こうして、第2ワイピング動作が終了するとともに、吐出面10aがキャップ71によってキャッピングされた状態となる。
また、ステップ10において、キャッピング制御部135は、表面8aの任意の位置とキャップ71とを当接させるように、モータ77を制御する(本キャッピング)。このときのキャップ71の表面8aに対する押圧力がステップ8の本キャッピングのときと同じになるように、モータ77を制御する。こうして、吐出面10aがキャップ71によってキャッピングされた状態となる。
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、吐出面10aを覆う表面8aの第1領域Gには包囲範囲8bと同じ寸法の範囲内に前記所定量以下のインクしか付着していないので、キャッピングした状態において吐出口10b内のインクの乾燥が進行するのを抑制することが可能となる。
また、ステップ6においては、表面8aに第2領域Fが存在しているにも拘わらず、吐出面10aをキャッピングしている。このため、表面8aに存在する第2領域Fをなくすために表面8a全体をメインワイパ41が払拭するよりも前に、キャッピング制御部135は吐出面10aをキャッピングすることが可能となる。よって、吐出口10b内のインクの乾燥をより抑制することができる。
また、ステップ5においては、キャッピングされる前に表面8aを払拭して第1領域Gを形成している。このため、当該領域におけるインク付着量が確実に少なくなる。つまり、包囲範囲8bと同じ寸法の範囲内のインク付着量が前記所定量以下であっても表面8aを払拭していない領域には、微量のインク(ミスト)が付着している場合がある。一方、払拭した領域におけるインク付着量は先の領域よりも少なくなる。したがって、払拭した領域を第1領域Gとすることで、キャッピングした状態において、吐出口10b内のインクの乾燥が進行されるのをより一層抑制することが可能となる。
また、ステップ5〜7においては、前ワイピング動作における搬送ベルト8の走行が1周未満の回転であり、その前ワイピング動作後に仮キャッピングが行われる。そして、仮キャッピングが行われている最中に後ワイピング動作が行われ、前ワイピング動作時において払拭されなかったインクが表面8aから払拭される。このため、前ワイピング動作の時間を短くすることが可能となり、キャッピングが行われるタイミングが早くなる。このため、吐出口10b内のインクの乾燥をより一層抑制することができる。
また、認識部134は、予備吐出されたインクが着弾していない領域が第1領域G、予備吐出されインクが着弾したインクが払拭されていない予備吐出領域Hが第2領域Fであると認識するため、表面8aのインク付着量を実測して第1領域G及び第2領域Fを認識するような認識手段と比較して構成が簡素化される。また、認識部134は、記憶部133に記憶された動作履歴に基づいて、第1領域Gの位置(予備吐出領域H以外の表面8aの領域)を認識することが可能となるので、認識手段の構成が簡素化される。
第1変形例として、上述のステップ2において、認識部134が、表面8aに第2領域Fが存在しておらず、表面8a全体が第1領域Gと認識した場合はステップ10(S10)に進み、表面8aに第2領域Fが存在すると認識した場合、図10に示すように、ステップ3(J3)以降の処理が行われてもよい。ステップ3(J3)においては、上述のステップ4(S4)と同様のワイパクリーニングが行われる。
次に、ステップ4(J4)において、第1ワイピング実行部131は、モータ41Mを駆動し、メインワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、搬送ベルト8の表面8aから離隔した位置にあるメインワイパ41の先端を表面8aに接触させ、メインワイパ41の先端が撓みながら表面8aに接触したタイミングで、モータ41Mの駆動を停止する。そして、第1ワイピング実行部131は、搬送モータ121を駆動して搬送ベルト8を1周以上走行させた後、搬送モータ121の駆動を停止する。これにより、搬送ベルト8の表面8a全体の異物が、メインワイパ41によって表面8aの狭い範囲に集められながら除去されていく。こうして、表面8a全体に第1領域Gが形成される(第1ワイピング動作)。そして、第1ワイピング実行部131は、搬送ベルト8が停止した状態で、モータ41Mを駆動し、メインワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、メインワイパ41の先端を表面8aから離隔させる。
次に、ステップ5(J5)において、第2ワイピング実行部132は、搬送モータ121の駆動により搬送ベルト8を走行させ、メインワイパ41が表面8aから離隔した位置がサブワイパ51の副走査方向の中心と重なるタイミングで搬送モータ121の駆動を停止する。このとき、表面8a全体が第1領域Gとなっているので、キャップ71と対向する領域も第1領域Gとなっている。そして、キャッピング制御部135は、キャップ71を退避位置から当接位置に移動させるように、モータ77を制御する(本キャッピング)。このときのキャップ71の表面8aに対する押圧力が上述のステップ8(S8)の本キャッピングのときと同じになるように、モータ77を制御する。
キャップ71が当接位置に移動された後(本キャッピングが行われている最中)に、第2ワイピング実行部132は、ステップ8(S8)と同様な第2ワイピング動作が行われるように、モータ59Mを正方向に駆動し、サブワイパ51がプレート58の主走査方向他端に至ったタイミングでモータ59Mの駆動を一旦停止する。その後、第2ワイピング実行部132は、モータ59Mを逆方向に駆動し、サブワイパ51を主走査方向に逆向きに移動させ、サブワイパ51がホームポジションに至ったタイミングで、モータ59Mの駆動を停止する。こうして、第1及び第2ワイピング動作が終了するとともに、吐出面10aがキャップ71によってキャッピングされた状態となる。
以上のような第1変形例においても、吐出面10aを覆う表面8aの第1領域Gには包囲範囲8bと同じ寸法の範囲内に前記所定量以下のインクしか付着していないので、キャッピングした状態において吐出口10b内のインクの乾燥が進行するのを抑制することが可能となる。また、ステップ4(J4)において、表面8a全体を払拭するので、当該表面全体が第1領域Gとなり、表面8aの任意の位置でキャッピングをすることが可能となる。加えて、制御構成が簡易になる。
第2変形例においては、上述のステップ3(S3)において、ステップ4(S4)に進む場合は、第1変形例のステップ3(J3)に進んでもよい。つまり、表面8a全体に第2領域Fが存在するときだけ、第1変形例と同様なステップ3(J3)〜ステップ5(J5)が行われてもよい。これにおいても同様な効果を得ることができる。加えて、制御構成が簡易になる。
第3変形例においては、上述のステップ2(S2)において、認識部134が、表面8aに第2領域Fが存在しておらず、表面8a全体が第1領域Gと認識した場合はステップ10(S10)に進み、表面8aに第2領域Fが存在すると認識した場合、ステップ3(S3)を飛ばしてステップ4(S4)に進んでもよい。これにおいても、上述の実施形態と同様に、キャッピングした状態において吐出口10b内のインクの乾燥が進行するのを抑制することが可能となる。加えて、制御構成が簡易になる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、表面8aの幅方向全体に対向する検出面を有する画像センサを設け、当該画像センサによって表面8a上における第1領域G及び第2領域Fを検出し、その検出信号に基づいて、認識部134が第1領域G及び第2領域Fの表面8a上における位置を認識する認識手段を有していてもよい。こうすれば、表面8a上の第1領域G及び第2領域Fの認識精度が向上する。
また、ワイピング機構60が設けられていなくてもよい。この場合、キャッピング制御部は、受信したメンテナンス指令に基づいて、認識部134が認識した第1領域Gとキャップ71とが当接するように移動機構72及び搬送ユニット21を制御すればよい。また、ワイピング機構は、メインワイプ機構40及びサブワイプ機構50のいずれか一方だけを有していてもよい。メインワイパ41は、主及び副走査方向に対して交差した方向に延在していてもよい。また、サブワイパ51は、主及び副走査方向に対して交差した方向に延在していてもよい。また、第2ワイピング動作時において、サブワイパ51は主及び副走査方向に交差した方向に移動してもよい。また、第1ワイピング動作時において、搬送ベルト8を停止させた状態又は搬送ベルト8を走行させた状態でメインワイパ41を副走査方向に移動させてもよい。
また、認識部134は、表面8aにおいて第1領域Gだけの位置を認識してもよい。つまり、第2領域Fを認識しなくてもよい。また、予備吐出制御部136が設けられていなくてもよい。
また、搬送ベルトに限定されず、例えば、回転ドラム等であってもよい。メイン及びサブワイパは、先端が搬送部材の表面に接触しつつ当該表面に対して相対的に移動することにより当該表面上の異物を除去することができる限りは、板状に限定されず、様々な形状であってよい。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。