JP5487892B2 - 低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主として、液体アンモニアとLPGなどの他種液化ガスとを混載する多目的タンク用の鋼材などに使用される低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法に関するものである。
エネルギー需要の高まりと海上輸送における輸送効率の向上の観点から、液体アンモニアとLPGなどの他種液化ガスとを混載する多目的船の需要がある。同船のタンク用鋼材として必要な特性は、IGCコード(International Gas Carrier Code)において次のように規定されている。
(a)設計温度(TD)が、0℃より低く−55℃までの鋼板における低温靭性は、板厚tに応じた下記の温度で試験して、規定の値を満たさなければならない。(IGCコード6.2)
試験温度 TD−48℃の場合
t≦25mm: (TD−5℃) −53℃
25<t≦30mm: (TD−10℃) −58℃
30<t≦35mm: (TD−15℃) −63℃
35<t≦40mm: (TD−20℃) −68℃
(b)耐応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking:SCC)対策として降伏強さ440MPa以下とする(IGCコード17.13)。また、規格により降伏強さ355MPa以上と定められているため、降伏強さは355〜440の狭いレンジとなる。
(c)タンク許容応力は、鋼材の引張強さ(TS)下限×1/3、降伏強さ(YP)下限×1/2のいずれか小さい方の値としなければならないが、規格より降伏強さの下限355MPaを考慮する必要性から、引張強さの下限が533MPaの高強度仕様となる。(IGCコード4.5)
このように、多目的タンク用として適用できるには、高い引張強さ、狭い幅の降伏強さ、高靭性という互いに相反する厳しい要求特性を同時に満足する鋼板を製造する必要がある。
液化アンモニアタンク用鋼における従来の製造方法としては、例えば、特許文献1では、900℃以上の温度で累積圧下率10〜80%の粗圧延を行った後、冷却速度が2〜40℃/sの加速冷却をAr3+50℃〜Ar3−50℃まで行い、その後650℃以上で仕上圧延を終了し、5〜40℃/sの冷却速度で200〜450℃まで冷却する方法を提案している。
この方法では、圧延途中に冷却が必要となるため生産性の面で課題が残る。また、350℃を超える停止温度では、水冷停止後の復熱・放熱が焼き戻しと同等の影響を及ぼし、降伏点が出るため、所望の低降伏比を実現することができない。
鋼を低降伏比化するための製造方法として、例えば、特許文献2においては、スラブを1000〜1250℃に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上とし、720℃以上の温度で熱間圧延を終了後、680℃以上の温度から冷却を開始し、150〜350℃の温度で冷却停止することで、引張試験において、荷重−伸び曲線がラウンドなカーブを描き、降伏点が出ないことを特徴とする製造方法を提案している。
降伏点(YP)が出ないラウンドな荷重−伸び曲線においては、降伏強さとして一般的に0.2%耐力(YS)が採用されるため、同一強度の鋼材の引張試験において降伏強さはYS<YPとなり、同時に降伏比(YPまたはYS/TS)も低下する。
しかしながら、所望のYSを得るための上記冷却停止温度では、板厚が薄くなるにつれ板厚中央における冷却速度が高くなるため、ベイナイト単相の組織となり、引張強さ及び降伏強さ共に規定された上限を超えてしまう。
従って、全ての板厚において安定して所望の引張強さ及び降伏強さを得ることが出来ないという問題がある。
特開平10−306316号公報 特開平11−293380号公報
多目的タンク用鋼材は、上記のように、許容される降伏強さの幅が狭いため、冷却条件として板厚を考慮していない従来技術では、得られた鋼板の降伏強さのばらつきの範囲が広く、要求される降伏強さに対する的中精度が低く、歩留が悪いという問題がある。
そこで、本発明は、狭い範囲の降伏強さが求められるような場合においても、安定して低い降伏比が得られるようにして、多目的タンク用鋼材に適する低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板を提供することを課題とする。
本発明は、引張強さ及び降伏強さを安定して得るために、組織をフェライト+ベイナイトの二相組織とすることで、母材鋼板において、高い引張強さ、狭い要求範囲を満たす降伏強さ及び高靭性を確保することを基本的な技術思想とするものであり、その手段として、熱間圧延後の冷却において、薄手材においては途中で冷却速度を変化させる二段冷却を行い、図1の連続冷却曲線図に示すように、前段の冷却では冷却速度を下げ、フェライト変態開始線を通過するようにして、フェライト生成を促進させ、後段の冷却では冷却速度を上げて、組織のベイナイト化を図るようにする。
また、板厚中央の冷却速度は、熱伝導のために板厚によって冷却速度が異なるため、適正な引張強さ及び降伏強さを得るため、板厚に応じて適切な冷却条件を設定することにより、全ての板厚において、所望の降伏強さを安定して得られるようになった。
そのような本発明の要旨は以下の通りである。
(1)鋼成分が質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.40%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜1.0%、Ti:0.005〜0.025%、Al:0.06%以下、N:0.001〜0.005%を含み、残部Fe及び不可避的不純物よりなり、かつ、次式、Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5、で表わされるCeqが0.38以下である鋳片を、1200℃超に加熱した後、熱間圧延に際し、オーステナイト再結晶温度域での圧延を、累積圧下量を30%以上で、1パスあたりの平均圧下率を15%以上とする条件で行い、かつ、オーステナイト未再結晶温度域での圧延を累積圧下量を30%以上とする条件で行い、熱間圧延終了時の板厚をt(mm)とすると、(810−t)℃以上の温度で熱間圧延を終了し、700℃以上の温度から冷却を開始し、前記板厚tに応じて下記(a)〜(c)の条件で冷却を行い、200〜300℃の温度で冷却を停止することを特徴とする板厚10mm超40mm以下の低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
(a)10<t≦20:700℃から620〜580℃までを平均冷速10〜20[℃/sec]で冷却し、引き続いて200〜300℃の冷却停止温度までを平均冷速70〜80[℃/sec]で冷却する。
(b)20<t≦35:700℃から620〜580℃までを平均冷速15〜25[℃/sec]で冷却し、引き続いて200〜300℃の冷却停止温度までを平均冷速30〜40[℃/sec]で冷却する。
(c)35<t≦40:700から200〜300℃の冷却停止温度までを平均冷速20〜30[℃/sec]で冷却する。
(2)前記鋳片の鋼成分として、さらに、質量%で、
Ca:0.0005〜0.0060%
Cr:0.01〜0.5%、
Mo:0.01〜0.5%、
Nb:0.002〜0.050%
V :0.01〜0.05%、
の1種または2種以上を含むことを特徴とする前記(1)記載の低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
本発明により、狭い範囲の降伏強さが求められるような場合においても、安定して低い降伏比が得られるようにして、多目的タンク用鋼材に適する低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板を、歩留ロスを抑えて安価に製造することができる。
熱間圧延後の冷却を2段冷却とした場合のCCT模式図を示す。
以上のような本発明について、以下、詳細に説明する。
まず、本発明で、鋼組成を上記のように規定した理由について説明する。なお、含有量の%は質量%を意味する。
Cは鋼材の特性に最も顕著に影響する元素であり、下限の0.05%は、必要な強度を確保し、溶接熱影響部が必要以上に軟化することのないようにするための最小量である。
しかし、C量が多すぎると焼入れ性が必要以上に上がり、鋼材が本来有すべき強度・靭性のバランス、溶接性等に悪影響を及ぼすため、上限を0.15%とした。
Cのより好ましい範囲は、0.06〜0.10%である。
Siは脱酸のために鋼に含まれる元素であるが、多く添加すると溶接性や溶接熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)靭性が劣化するため、上限を0.4%に限定した。鋼の脱酸はTi、Alでも十分可能であり、HAZ靭性、焼入れ性等の観点からは低いほど望ましく、必ずしも添加する必要はない。
Mnは強度、靭性を確保する上で不可欠な元素であり、そのために必要な下限は1.0%である。しかし、Mn量が多すぎると焼入れ性が上昇して、溶接性、HAZ靭性を劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助長するので上限を2.0%とした。
Mnのより好ましい範囲は、1.20〜1.80%である。
Pは本発明においては不純物であり、P量の低減はHAZにおける粒界破壊を減少させる傾向があるため、Pは少ないほど好ましい。含有量が多いと、母材及び溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.02%とした。
SはPと同様本発明においては不純物であり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材及び溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.01%とした。
Niは過剰に添加しなければ、溶接性、HAZ靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これらの効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必須である。一方過剰な添加は高価なだけでなく、溶接性を劣化させるので好ましくない。さらに、Niを多く添加すると、液体アンモニア中で応力腐食割れを誘起する可能性が指摘されているため、上限を1.0%とした。
Niのより好ましい範囲は、0.10〜0.80%である。
CuはNiとほぼ同様の効果、現象を示し、上限の0.5%は溶接性劣化に加え、過剰な添加は熱間圧延時にCu−クラックが発生し製造困難となるため規制される。下限は実質的な効果が得られるための最小量とすべきで、0.05%である。
Cuのより好ましい範囲は、0.10〜0.40%である。
Tiは母材およびHAZの靭性向上のために必須の元素である。Tiは、Al量が少ない場合(例えば、0.003%以下)には、Oと結合してTi23を主成分とする析出物を形成し、粒内変態フェライト生成の核となり、HAZ靭性を向上させる。また、Tiは、Al量にかかわらず、Nと結合し、TiNとしてスラブ中に微細析出し、スラブ加熱時のγ粒の粗大化を抑制し、圧延組織の細粒化して母材の靭性向上に有効であり、また、鋼板中に存在する微細TiNは、溶接時にHAZ組織を細粒化するためHAZ靭性の向上に有効である。これらの効果を得るためには、Tiは最低0.005%必要である。しかし多過ぎるとTiCを形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、その上限は0.025%とする。
Tiのより好ましい範囲は、0.005〜0.020%である。
Alは、一般に脱酸のために鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本発明においては、その下限は限定しない。しかし、Al量が多くなると、鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶接金属の靭性が劣化するので上限を0.06%とした。
Alのより好ましい範囲は、0.040%以下である。
Nは不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、Nbと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させ、また、TiNを形成して前述のように鋼の性質を高める。このため、N量として最低0.001%必要である。しかしながら、N量の増加はHAZ靭性、溶接性に極めて有害であり、その上限は0.005%である。
なお、上記範囲であれば何れでも好ましい。
本発明は、以上の元素を基本成分とするが、必要に応じて、Ca、Cr、Mo、Vの1種または2種以上を含有することができる。基本成分に、これらの元素を更に添加する目的は、本発明における鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を更に向上させるためであり、その添加量は自ずと制限されるべき性質のものである。以下これらの元素の添加理由について説明する。
CaはCa系酸化物を生成することで大入熱溶接時のオーステナイト粒成長を抑制しHAZ靭性を高め、また、MnSの形態制御およびAl23クラスター形態制御に有効であり鋼中清浄度を高める。このため、Ca量として0.0005%以上とすることが好ましい。しかし、Ca量の増加は粗大介在物を生成させHAZ靭性、溶接性に有害であり、その上限は0.003%である。
CrおよびMoは0.01%以上の添加で母材の強度、靭性をともに向上させる。しかし添加量が多過ぎると母材、溶接部の靭性および溶接性の劣化を招き、また後述する組織制御が困難となって好ましくないため上限をいずれも0.5%とした。
Cr、Moのより好ましい範囲は、0.10〜0.40%である。
Nbは0.002%以上添加するとオーステナイトの未再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発揮する上で有効な元素である。また、焼入れの際の加熱オーステナイトの細粒化にも寄与する。しかし、過剰な添加は、溶接部の靭性劣化を招くため上限を0.05%とした。
Nbのより好ましい範囲は、0.01〜0.04%である。
VはNbとほぼ同様の作用を有するものであるが、Nbに比べてその効果は小さい。また、Vは焼入れ性にも影響を及ぼし、上記元素と同様組織制御の観点から添加するものである。Nbと同様の効果は、0.01%未満では効果なく、上限は0.05%まで許容できる。
Vのより好ましい範囲は、0.01〜0.04%である。
本発明では、個々の成分の含有範囲を以上のように限定しても、成分系全体が適切でないと優れた特性は得られない。このため、下式で表されるCeqの値を0.38%以下に限定する。このCeqは溶接性を表す指標で、値が低いほど溶接性は良好である。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5
ここで、C、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vは、各元素の質量%で表される含有量である。
次に、優れた低温靭性を確保しつつ、上述したような要求特性を満足するための製造条件について説明する。
本発明では、上記成分よりなる鋳片を、1200℃超に加熱した後、熱間圧延を施す。
加熱温度を1200℃超に限定した理由は、鋳片中の偏析を拡散させるためである。1200℃以下では偏析が十分に拡散されず板厚中央における靭性が改善されない。
熱間圧延に際しては、オーステナイト再結晶温度域での圧延を、累積圧下量を30%以上で、1パスあたりの平均圧下率を15%以上とする条件で行い、かつ、オーステナイト未再結晶温度域での圧延を、累積圧下量を30%以上とする条件で行い、熱間圧延終了時の板厚をt(mm)としたとき、(810−t)℃以上の温度で熱間圧延を終了する。
熱間圧延において、再結晶温度域での累積圧下量を30%以上とした理由は、複数パスでの圧下率を十分確保するためである。これ未満の累積圧下量では、軽圧下圧延による異常粒成長により強度および靭性の劣化を招く。
各パスあたりの平均圧下率を15%以上とした理由は、再結晶に必要な限界歪を加えるためである。これ未満の圧下率では軽圧下圧延による異常粒成長により強度および靭性の劣化を招く。
また、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧化量を30%以上とした理由は、オーステナイトを顕著に細粒化するためである。
なお、再結晶温度域での上記圧延は900℃以上で行い、未再結晶温度域での上記圧延は850℃以下で行うのが好ましい。
熱間圧延終了温度が低下すると、圧延中にフェライトが変態析出し、このフェライトを加工する恐れがあり、低降伏比化や低温靭性確保の点で好ましくない。このため、熱間圧延終了温度は板厚tに応じて、(810−t)℃以上とする。
熱延後の鋼板は、板厚が薄くなるのに伴いその温度が低下しやすくなるため、前記のフェライトの加工や、更には冷却開始温度の低下に繋がるため、圧延終了温度の条件として、板厚を考慮した上記の温度とする。
なお、熱延鋼板の適用板厚は、10mm超40mm以下である。強度設計上10mm超の板厚が必要であり、また、IGCコード4.11より、加圧による機械的応力除去を行うタンクの胴板の板厚は最大で40mmとなるからである。
熱間圧延終了後、700℃以上の温度から冷却を開始し、200〜300℃の冷却停止温度まで冷却する。その際、700℃から冷却停止温度まで、熱延鋼板の板厚t(mm)に応じて下記(a)〜(c)の条件で冷却を行うようにして、冷却後に所定の組織分率のフェライトとベイナイト組織を得る。
(a)10<t≦20
前段の700℃から620〜580℃を平均冷速10〜20[℃/sec]で冷却し、後段の600℃から冷却停止温度までを平均冷速70〜80[℃/sec]で冷却する。
(b)20<t≦35
前段の700℃から620〜580℃を平均冷速15〜25[℃/sec]で冷却し、後段の600℃から冷却停止温度までを平均冷速30〜40[℃/sec]で冷却する。
(c)35<t≦40
700℃から200〜300℃の冷却停止温度までを平均冷速20〜30[℃/sec]冷却する。
この冷却は、圧延方向に沿って複数ある冷却ゾーンに、水量密度を可変にできる加速冷却装置を設け、個々の冷却装置の水量密度を変えることにより行う。
ここで、冷却開始温度を700℃以上とするのは、変態域の冷却速度を早めることで組織を微細化し、強度と靭性を同時に向上させるためである。開始温度が700℃を下回ると、粗大なフェライトが析出し始め、強度低下や靭性を劣化させるため、700℃以上からの冷却に限定した。
また、板厚毎に上記(a)〜(c)の温度範囲と冷却速度を設定する理由は、板厚差による焼入れ性を制御し、引張強さ及び降伏強さが所望範囲にある材質を得るためである。
前段の冷却では、図1に示すように、フェライト変態開始線を通過するように冷却して、フェライト変態を促進させるために比較的緩冷却とする。しかし、700℃から620〜580℃の平均冷却速度が、(a)〜(c)に設定する速度以下では、フェライト変態が過度に促進されてフェライト主体の組織となり、引張強さが不足するとともに、引張試験において降伏点が出やすくなる。一方、設定速度以上ではベイナイト組織が過剰となり引張強さの上限を超過する。
後段の冷却では冷却速度を上げて、組織のベイナイト化を図る。620〜580℃の温度範囲から冷却停止温度(300〜200℃の間)までの冷却速度が、(a)〜(c)に設定する冷却速度以下ではフェライト分率が増加し、引張強さが不足するとともに降伏点が出やすくなる。一方、設定速度以上ではマルテンサイトが生成され、引張強さの上限を超過するとともに靭性が劣化する。
前段の冷却を、620〜580℃までとするのは、620℃超の温度から後段の冷却速度とすると、強冷却によりベイナイト変態が支配的になり過剰焼入れのため引張強さが上限を超過するためであり、580℃を下回る温度から後段の冷却速度とすると、フェライト主体の組織になるためである。
この冷却は、200〜300℃の温度で停止しなければならない。冷却停止温度が300℃を超える場合は、冷却停止後の復熱−放冷が実質上の焼き戻しとなり、強度低下とともに、降伏点が出るようになるため、低降伏比化することができない。
一方、冷却停止温度が200℃を下回ると、溶接やガス切断などの熱影響による軟化が顕著になるため、使用性能上好ましくない。また、水冷停止温度が低温であると、鋼板中の水素が拡散しにくいため、水素性内部欠陥の原因となる。このため、水冷停止温度の下限温度を200℃とした。
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例で採用した条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一条件例であり、本発明は、この例に限定されるものではない。
表1に示す化学成分の各種鋼スラブを、転炉−連続鋳造の工程により作製し、このスラブを、表2に示す製造条件(加熱温度、オーステナイト(γ)再結晶温度域の累積圧下率と各パスの平均圧下率、γ未再結晶温度域の累積圧下率、仕上げ温度、冷却速度、仕上げ厚さ)にて加工・熱処理して鋼板を製造した。得られた鋼板から試験片を採取し、引張強さTS、降伏強さYS,降伏比YR、低温靭性(シャルピー衝撃試験)vEaveを調査した。
引張試験については、全厚の平型引張試験片を用い、C方向試験を実施した。
シャルピー衝撃試験については、2mmV−ノッチ試験片を用い、IGCコード6.2に規定された試験温度でL方向試験を実施した。板厚中央は、不純物が濃縮し偏析となるため、当該位置の靭性は表層と比較して劣る。本発明では、スラブ加熱時に加熱温度による偏析拡散を図っているため、靭性の評価として試験片は板厚中央(1/2t)より採取した。
表1に使用した鋼の成分を、表2に鋼板の製造条件と諸特性を示す。
鋼成分及び製造条件ともに本発明の方法に従って製造した発明例No.1〜14は、タンク用鋼板として必要な、引張強さTS:533〜630MPaおよび降伏強さYS:355〜440MPaの範囲をいずれも満たしているとともに、降伏比YRも低く、良好な低温靭性を有する。これに対して、鋼成分あるいは製造条件のいずれかが本発明に因らない比較例No.15〜34はいずれかの特性が劣る。
なお、引張強さTSの上限は、船級ルール(BV)より630MPaとした。
より詳細には、No.15は成分的にはC量が低いため、YP、TSは低く、下限を下回る。No.16はC量およびCeqが高いことから、TSの上限を超過する。また、同時にYSも上限を超過する。No.17はNi添加フリーであるため、YP、TSは低く下限値を下回る。
No.18は加熱温度が低く、板厚中央における靭性が劣る。No.19は再結晶温度域における累積圧下率が低く、靭性が劣る。No.20再結晶温度域における平均圧下率が低く、低温靭性が劣る。No.21は未再結晶温度域における累積圧下率が低く、低温靭性が劣る。No.22は圧延終了温度が低く、降伏点が出て高YRとなり、また、低温靭性も劣る。
No.23は冷却開始温度が高く、降伏点が出るため、YP上限を超過する。また、低温靭性が劣る。No.24は冷却停止温度が高く、降伏点が出るため、YP上限を超過する。また、TSも下限を下回る。
No.25は前段の冷却速度が下限を下回っており、YPが出るため、YP上限を超過する。また、TSも下限を下回る。No.26は前段の冷却速度が上限を上回っているため、TSの上限を超過する。
No.27は後段の冷却速度が下限を下回っているため、YPが出てYP上限を超過する。また、TSも下限を下回る。No.28は後段冷却速度が上限を上回っているため、TSの上限を超過する。また、YSも上限を超過する。No.29は前段の冷却速度が下限を下回っており、YPが出てYP上限を超過する。また、TSも下限を下回る。
No.30は前段の冷却速度が上限を上回っているため、TSの上限を超過する。また、YSも上限を超過する。No.31は後段の冷却速度が下限を下回っているため、YPが出てYS上限を超過する。また、TSも下限を下回る。No.32は後段の冷却速度が上限を上回っているため、TSの上限を超過する。また、YSも上限を超過する。
No.33は冷却速度が下限を下回っており、YPが出てYP上限を超過する。また、TSも下限を下回る。No.34は冷却速度が上限を上回っているため、TSの上限を超過する。また、YSも上限を超過する。
Figure 0005487892
Figure 0005487892

Claims (2)

  1. 鋼成分が質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0.40%以下、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜1.0%、Ti:0.005〜0.025%、Al:0.06%以下、N:0.001〜0.005%を含み、残部Fe及び不可避的不純物よりなり、かつ、次式、Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5、で表わされるCeqが0.38以下である鋳片を、1200℃超に加熱した後、熱間圧延に際し、オーステナイト再結晶温度域での圧延を、累積圧下量を30%以上で、1パスあたりの平均圧下率を15%以上とする条件で行い、かつ、オーステナイト未再結晶温度域での圧延を累積圧下量を30%以上とする条件で行い、熱間圧延終了時の板厚をt(mm)とすると、(810−t)℃以上の温度で熱間圧延を終了し、700℃以上の温度から冷却を開始し、前記板厚tに応じて下記(a)〜(c)の条件で冷却を行い、200〜300℃の温度で冷却を停止することを特徴とする板厚10mm超40mm以下の低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
    (a)10<t≦20:700℃から620〜580℃までを平均冷速10〜20[℃/sec]で冷却し、引き続いて200〜300℃の冷却停止温度までを平均冷速70〜80[℃/sec]で冷却する。
    (b)20<t≦35:700℃から620〜580℃までを平均冷速15〜25[℃/sec]で冷却し、引き続いて200〜300℃の冷却停止温度までを平均冷速30〜40[℃/sec]で冷却する。
    (c)35<t≦40:700から200〜300℃の冷却停止温度までを平均冷速20〜30[℃/sec]で冷却する。
  2. 前記鋳片の鋼成分として、更に、
    Ca:0.0005〜0.0060%
    Cr:0.01〜0.5%、
    Mo:0.01〜0.5%、
    Nb:0.002〜0.050%
    V :0.01〜0.05%、
    の1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
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