以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明を適用した制御装置10を含むモータ駆動システムの概略構成を示すシステム構成図である。この図1に示すモータ駆動システムは、燃料電池自動車の駆動系システムとして構成されたものであり、燃料電池1と、強電圧バッテリである二次電池2と、双方向昇降圧型のDCDCコンバータ3と、DCDCコンバータ3の負荷となるインバータ4及び交流モータ5と、DCDCコンバータ3の動作を制御する制御装置10とを備える。このような構成のモータ駆動システムにおいて、インバータ4が交流モータ5を駆動するために必要な電力は、燃料電池1と二次電池2から供給される。DCDCコンバータ3は、燃料電池1の出力電圧を制御することで燃料電池1の発電量を調整し、また、二次電池2からの充放電電力によるインバータ4への電力供給を調整している。DCDCコンバータ3の入力電圧Vin(つまり二次電池2に接続される端子間の電圧)は電圧センサ6により測定され、DCDCコンバータ3の出力電圧Vout(つまりインバータ4に接続される端子間の電圧)は電圧センサ7により測定される。これら電圧センサ6,7による測定値Vin,Voutは制御装置10に入力され、DCDCコンバータ3の動作制御に用いられる。
DCDCコンバータ3は、昇降圧用のリアクトルLと、IGBTなどのスイッチング素子Q1〜Q4とを備え、各スイッチング素子Q1〜Q4に対して並列にフライホイールダイオードが接続されて構成される。
スイッチング素子Q1及びQ2とスイッチング素子Q3及びQ4はそれぞれ一対のアームをなし、制御装置10からの指令に従って、一定のキャリア周波数で相補的にオン/オフされる。すなわち、各スイッチング素子Q1〜Q4は、スイッチング素子Q1(もしくはQ3)がオンのときにはスイッチング素子Q2(もしくはQ4)がオフとなり、逆にスイッチング素子Q1(もしくはQ3)がオフのときにはスイッチング素子Q2(もしくはQ4)がオンとなるように、制御装置10から出力されるゲート信号Q1_G〜Q4_Gに従ってドライバにより駆動される。この際、各スイッチング素子Q1〜Q4のゲート信号Q1_G〜Q4_Gには、スイッチング素子Q1とQ2(もしくはスイッチング素子Q3とQ4)が同時にオンすることによるデッドショートを防ぐために、スイッチング素子Q1とQ2(もしくはスイッチング素子Q3とQ4)を同時オフさせるデッドタイム期間Tdが設けられる。
ここで、スイッチング素子Q1のオンデューティをD1、スイッチング素子Q3のオンデューティをD2と定義する。ここではオン時間+デッドタイム分のデューティとしてD1,D2を定義している。デッドタイム期間Tdが0であるとすると、定常状態では、DCDCコンバータ3の入力電圧Vinと出力電圧Voutとの間には、Vout=D1/D2×Vinの関係が成り立つ。よって、昇圧させたいときは、スイッチング素子Q1を完全オン状態としながらD2を可変させることで、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutを入力電圧Vin以上に昇圧させることが可能となる。一方、降圧させたいときは、スイッチング素子Q3を完全オン状態としながらD1を可変させることで、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutを0〜Vinの範囲で降圧させることが可能となる。
図2は、DCDCコンバータ3が昇圧動作を行っているときのスイッチング素子Q3,Q4に対応するゲート信号Q3_G,Q4_Gと、リアクトルLに流れる電流ILの波形との関係を示した図である。スイッチング素子Q3,Q4をデューティD2でスイッチングすることで、リアクトルLの両端の電圧が変わり、リアクトル電流ILの波形は三角波状になっている。
ここで、リアクトル電流ILのピーク最小値が0A以上の領域(以下、力行状態と呼ぶ)では、スイッチング素子Q3(及び並列ダイオード)に電流が流れている時間は(D2+Dd)×Tcとなる。なお、TcはPWMキャリア周期であり、DdはPWMキャリア周期Tcに対するデッドタイム期間Tdの割合(Td/Tc)である。よって、スイッチング素子Q3の実質的なデューティはD2+Ddとなる。一方、リアクトル電流ILのピーク最大値が0A以下の領域(以下、回生状態と呼ぶ)では、同様の理由により、スイッチング素子Q3(及び並列ダイオード)の実質的なデューティはD2−Ddとなる。また、リアクトル電流ILの電流平均が0A近辺(以下、無負荷近辺と呼ぶ)では、スイッチング素子Q3(及び並列ダイオード)の実質的なデューティはD2となる。このほか、無負荷近辺と力行状態、もしくは無負荷近辺と回生状態の中間では、リアクトル電流ILの電流波形が三角波にならない領域が存在する。
以上のように、デッドタイム期間Tdがあることによって、スイッチング素子Q3,Q4の実デューティが変動し、出力電圧Voutが変動する。このデッドタイム起因の電圧変動は、他の変動要因である負荷変動や電圧指令値変動によって発生する電圧変動に比べて大きく、DCDCコンバータ3の性能を向上させていく上で、問題となる。このようなデッドタイム起因の電圧変動を抑制する方法としては、例えば、リアクトル電流を電流センサで測定しながら、デッドタイムの影響が現われる領域でスイッチング素子のデューティを補正するといった方法が考えられるが、リアクトル電流を測定してデッドタイムの影響が現われる領域を識別するには高精度の電流センサが必要となるため、コスト高を招くという問題がある。また、前記の特許文献1に記載されているように、電流フィードフォワード制御とオフセット補正制御とを組み合わることで、電流センサを用いずにデッドタイム起因の電圧圧変動を抑制する手法が知られているが、前記の特許文献1に記載の制御装置の構成では、性能向上にはオフセット補正のフィードバックゲインを上げる必要があり、制御の安定性が損なわれるという問題がある。
そこで、本発明を適用した制御装置10では、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutが最大負荷変動で起こると推定される電圧変動幅以上に変動した場合に、その出力電圧Voutの変動がデッドタイム期間Tdに起因するデューティ変動によるものと判断し、このデッドタイム起因の電圧変動を補償する補償値を演算して、算出した補償値をデューティD1,D2に加算する構成とすることで、オフセット補正のフィードバックゲインを上げることなく、デッドタイム起因の電圧変動を有効に抑制できるようにしている。
以下、本発明を適用した制御装置10の具体的構成について説明する。以下に示す制御装置10は、例えば、マイクロコンピュータに所定の制御プログラムを実装することによって実現される。
図3は、本発明の第1の実施形態として示す制御装置10の構成を示すブロック図である。本実施形態の制御装置10は、前記の特許文献1に記載の制御装置と同様に、電流フィードフォワード制御とオフセット補正制御とを組み合わせた構成を基本構成としており、電圧PI制御及び電流フィードフォワード制御を行う電圧PI+電流FF制御部11と、オフセット補正制御を行うオフセット補正部12と、昇降圧制御切換処理部13と、PWM信号発生器14a,14bとを備える。
電圧PI+電流FF制御部11は、DCDCコンバータ3の出力電圧目標値Vout*と電圧センサ7により測定されたDCDCコンバータ3の出力電圧Voutとの偏差から、電流フィードフォワード制御出力Verrを演算するものであり、上記の偏差に対して比例制御定数KPv1を乗ずる制御ブロック111と、s×H(s)なる伝達特性を有するハイパスフィルタを備えた制御ブロック112と、上記の偏差に対して積分制御定数KIv1を乗ずる制御ブロック113と、制御ブロック112の出力と制御ブロック113の出力を加算する加算器114と、加算器114の出力に対してリアクトルLのインダクタンス値を乗ずる制御ブロック115とを有する。
オフセット補正部12は、後述する出力電圧推定値Vout_esと電圧センサ7により測定されたDCDCコンバータ3の出力電圧Voutとの偏差をPI制御によりフィードバックして、オフセット補正出力Dosを演算するものであり、上記の偏差に対して比例制御定数KPv2を乗ずる制御ブロック121と、上記の偏差に対して積分制御定数KIv2を乗ずる制御ブロック122と、制御ブロック122の出力を積分する積分演算器123と、制御ブロック121の出力と積分演算器123の出力を加算する加算器124とを有する。
昇降圧制御切換処理部13は、昇圧制御を行う場合と、降圧制御を行う場合とのそれぞれにおいて、電圧センサ6により測定されたDCDCコンバータ3の入力電圧Vinと、電圧センサ7により測定されたDCDCコンバータ3の出力電圧Voutと、電圧PI+電流FF制御部11からの電流フィードフォワード制御出力Verrと、オフセット補正部12からのオフセット補正出力Dosとから、下記式(1)〜(4)に従って、DCDCコンバータ3のスイッチング素子Q1のオンデューティD1及びスイッチング素子Q3のオンデューティD2を演算する。
降圧制御時
D1=(Vout+Verr)/Vin+Dos ・・・(1)
D2=1 ・・・(2)
昇圧制御時
D1=1 ・・・(3)
D2=(Vin−Verr)/Vout+Dos ・・・(4)
PWM信号発生器14a,14bは、昇降圧制御切換処理部13の出力を受け、一定のPWMキャリアでデッドタイム期間Tdを含むデューティD1,D2のパルス波形(PWM信号)を出力する。このPWM信号発生器14a,14bから出力されるパルス波形は、ゲート信号Q1_G〜Q4_GとしてDCDCコンバータ3の各スイッチング素子Q1〜Q4のゲートを駆動し、これにより各スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作が行われる。
本実施形態の制御装置10では、以上の基本構成に加えて、さらにデッドタイム起因の電圧変動を抑制するための構成として、電圧目標値変動補償モデル15と、デッドタイム補償領域判定部16と、デッドタイム補償値発生器17と、デッドタイム補償部18とが設けられている。
電圧目標値変動補償モデル15は、DCDCコンバータ3の出力電圧目標値Vout*を入力として、この出力電圧目標値Vout*に対応するDCDCコンバータ3の出力電圧の推定値Vout_esを演算する。この電圧目標値変動補償モデル15は、以下のようにして決まる伝達関数ブロックである。本実施形態の制御装置10のように電流フィードフォワード制御とオフセット補正制御とを組み合わせた構成において、デッドタイムが0、オフセット補正部12の応答が電流フィードフォワード制御に比べて十分遅く、補助的な役割を果たすだけであるとする。この場合、DCDCコンバータ3の伝達関数は近似的に、下記式(5)で表すことができる。
この式(5)において、KPv1は電圧PI+電流FF制御部11における比例制御定数、KIv1は電圧PI+電流FF制御部11における積分制御定数、CはDCDCコンバータ3の出力側のコンデンサ容量、sはプラス演算子である。
上記の式(5)のうち、出力電圧目標値Vout*に比例する第一項が電圧目標値変動に相当し、負荷電流Ioutに比例する第二項が負荷電流変動による電圧変動に相当する。ここで、負荷変動が無いとすれば、DCDCコンバータ3の出力電圧目標値Vout*と出力電圧Voutとの関係は、下記式(6)、(7)のように表すことができる。
本実施形態では、上記の式(7)のGv(s)を電圧目標値変動補償モデル15として用い、DCDCコンバータ3の出力電圧目標値Vout*から出力電圧推定値Vout_esを演算する。
デッドタイム補償領域判定部16は、電圧目標値変動補償モデル15で演算した出力電圧推定値Vout_esと電圧センサ7で測定した出力電圧Voutとの偏差(Vout_es−Vout)を予め定めた所定値(電圧閾値Vth1,Vth2)と比較して、電圧値サンプリングn回目のDCDCコンバータ3の負荷状態S(n)を決定する。
具体的に説明すると、例えば図4に示すように、出力電圧推定値Vout_esと出力電圧Voutとの偏差(Vout_es−Vout)に対して、プラス側とマイナス側にそれぞれ電圧閾値Vth1,Vth2を設定しておく。これら電圧閾値Vth1,Vth2は、デッドタイム起因の電圧変動を除くと、出力電圧推定値Vout_esと出力電圧Voutとの偏差がVth2からVth1の範囲内(Vth2<(Vout_es−Vout)<Vth1)となるように設定する。つまり、デッドタイム以外の要因で生じうる電圧変動幅をW1とすると、電圧閾値Vth1,Vth2は、このW1から外れた値に設定される。なお、ここでは負荷変化率が限定されているような負荷の場合を想定しており、電圧目標値変動によって起こる電圧変動分は電圧目標値変動補償モデル15により電圧推定値に反映されているので、デッドタイム起因の電圧変動を除く変動は、負荷電流Ioutの変動によるものと制御モデルのアンマッチングによって生じるものに限定される。
デッドタイム補償領域判定部16は、出力電圧推定値Vout_esと出力電圧Voutとの偏差(Vout_es−Vout)が、プラス側の電圧閾値Vth1以上であればS(n)=+1を出力し、電圧閾値Vth2より大きく且つ電圧閾値Vth1未満であればS(n)=0を出力し、電圧閾値Vth2以下であればS(n)=−1を出力する。したがって、デッドタイム補償領域判定部16がS(n)=0を出力しているときは、電圧変動が起こっていたとしても、デッドタイム起因でないことが分かる。
一方、デッドタイム補償領域判定部16がS(n)=+1を出力しているときは、デッドタイム起因の電圧変動によりDCDCコンバータ3の出力電圧Voutが下がっており、リアクトル電流ILが増加してピーク値が0A付近になり、昇圧制御の場合は実質的なデューティD2が上がった状態、降圧制御の場合は実質的なデューティD1が下がった状態となっていることを示している。このような状態は、力行状態(IL>0)から無負荷状態もしくは無負荷状態から回生状態(IL<0)へと移行しているときに現れる。
また、デッドタイム補償領域判定部16がS(n)=−1を出力しているときは、デッドタイム起因の電圧変動によりDCDCコンバータ3の出力電圧Voutが上がっており、リアクトル電流ILが増加してピーク値が0A付近になり、昇圧制御の場合は実質的なデューティD2が下がった状態、降圧制御の場合は実質的なデューティD1が上がった状態となっていることを示している。このような状態は、無負荷状態から力行状態(IL>0)、もしくは回生状態(IL<0)から無負荷状態へ移行しているときに現れる。
デッドタイム補償値発生器17は、デッドタイム補償領域判定部16から出力されたコンバータ負荷状態S(n)に応じて、デッドタイム補償値Dcmpを出力する。このデッドタイム補償値発生部17によるデッドタイム補償値Dcmp出力のアルゴリズムをフローチャートにしたのが図5である。デッドタイム補償値発生器17は、内部にカウンタを持ち、制御周期毎に起動されるたびに図5のアルゴリズムに従ってデッドタイム補償値Dcmpを演算する。
以下、図5を参照しながら、デッドタイム補償値発生器17の動作を説明する。
まず、デッドタイム補償領域判定部16が出力するコンバータ負荷状態S(n)が前回の制御サイクルにおけるコンバータ負荷状態S(n−1)と比較して異なるか、もしくは内部カウンタがカウンタ最大値C_max以上である場合(ステップS1においてYesと判定される場合)について述べる。この場合には、デッドタイム補償値発生器17は、デッドタイム補償領域判定部16が出力するコンバータ負荷状態S(n)の値に従って、デッドタイム補償値Dcmpを決める(ステップS2)。つまり、S(n)=+1であれば、デッドタイム補償値Dcmpとして+Ddを出力し、内部カウンタ値を0にリセットする(ステップS3)。また、S(n)=−1であれば、デッドタイム補償値Dcmpとして−Ddを出力し、内部カウンタ値を0にリセットする(ステップS4)。また、S(n)=0であれば、デッドタイム補償値Dcmpとして0を出力し、内部カウンタ値を0にリセットする(ステップS5)。なお、Ddはデッドタイムデューティである。
次に、デッドタイム補償領域判定部16が出力するコンバータ負荷状態S(n)が前回の制御サイクルにおけるコンバータ負荷状態S(n−1)と比較して同じで、かつ、内部カウンタがカウンタ最大値C_max未満の場合(ステップS1においてNoと判定される場合)について述べる。この場合には、デッドタイム補償値発生器17は、デッドタイム補償値Dcmpとして0を出力するとともに、コンバータ負荷状態S(n)の値に従って内部カウンタを操作する(ステップS6)。つまり、S(n)=+1もしくはS(n)=−1であれば、デッドタイム補償値Dcmpとして0を出力し、内部カウンタ値を+1増加させる(ステップS7)。また、S(n)=0であれば、デッドタイム補償値Dcmpとして0を出力し、内部カウンタ値を0にリセットする(ステップS8)。
デッドタイム補償値発生器17は、以上のように動作することで、コンバータ負荷状態S(n)が±1に変化した時に0でないデッドタイム補償値Dcmp(=±Dd)を出力し、一度0でないデッドタイム補償値Dcmpを出力すると、その時点を起点として、内部カウンタ最大値C_max×制御サイクルの時間は、デッドタイム補償値Dcmpを出力しない(つまりDcmp=0を出力する)。そして、内部カウンタ最大値C_max×制御サイクルの時間以上が経過した後でも、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutが出力電圧推定値Vout_es内に戻らなければ(つまりS(n)=0になっていなければ)、再度デッドタイム補償値Dcmp(=±Dd)を出力する。
デッドタイム補償部18は、インパルス関数発生器181と乗算器182及び加算器183を有し、デッドタイム補償値発生器17から出力されるデッドタイム補償値Dcmpとインパルス関数との積を、オフセット補正部12の積分演算器123の入力に加算する。このデッドタイム補償部18による処理は、オフセット補正部12の積分演算器123の積分値をリセットして、デッドタイム補償値Dcmpとリセット前の積分値の和で初期化することと等価である。デッドタイム補償値Dcmが加算されたオフセット補正部12の積分演算器123の出力は、最終的にDCDCコンバータ3のスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するデューティD1,D2に加減算される。その結果、リアクトル電流ILのピーク値が0A近辺になっても、実質的なスイッチング素子Q1〜Q4のデューティの変動を抑えることができ、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutの変動を抑えることが可能となる。
図6は、本実施形態の制御装置10により実際にデッドタイム起因の電圧変動を抑える動作の波形を示したのである。以下、この図6を参照しながら実際の動作を説明する。
まず、時間t0以前においては、負荷電流Iout>0の力行状態でDCDCコンバータ3が動作している。このとき、リアクトル電流ILのピーク値は0A以上であり、完全に系が制御されている場合には、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutは出力電圧目標値Vout*と一致している。この場合、出力電圧Voutに変動がないため、デッドタイム補償領域判定部16はS(n)=0を出力し、デッドタイム補償値発生器17が出力するデッドタイム補償値Dcmpは0であり、内部カウンタは0にリセットされている。オフセット補正部12は、制御モデルのアンマッチ分を補正するだけのオフセット補正出力Dos分を積分演算器123が保持している。
次に、時間t0を越えて負荷電流Ioutが減少を始めたとする。このとき、上記式(5)の第二項から分かるように、負荷電流Ioutの変動率(=dIout/dt)に比例した電圧変動がDCDCコンバータ3の出力電圧Voutに発生する。ここでは負荷電流Ioutが減少する方向なので出力電圧Voutは上昇している。この場合、デッドタイム補償領域判定部16は、出力電圧推定値Vout_esと出力電圧Voutの偏差は電圧閾値Vth2〜Vth1の間にあるので、依然としてコンバータ負荷状態S(n)=0を出力し、デッドタイム補償値発生器17が出力するデッドタイム補償値Dcmpは0であり、内部カウンタは0にリセットされたままである。なお、オフセット補正部12があるため、出力電圧Voutの変動は時間の経過とともに減少している。
その後、時間t1になってリアクトル電流ILのピーク値(リプル電流最低値)が0A近辺に差し掛かると、デッドタイムの影響でデューティD1,D2に対して実質的なスイッチング素子Q1〜Q4のデューティが変動することから、出力電圧Voutが上昇を始める。
さらに、時間t2になって出力電圧推定値Vout_esと出力電圧Voutの偏差が電圧閾値Vth2以下になると、デッドタイム補償領域判定部16はデッドタイムに起因する電圧変動が起きたと判定して、コンバータ負荷状態S(n)=−1を出力する。デッドタイム補償値発生器17は、デッドタイム補償領域判定部16の出力がS(n−1)=0からS(n)=−1に変わったことを受けて、デッドタイム補償値Dcmpとして−Ddを出力し、内部カウンタを0にリセットしてカウントを開始する。デッドタイム補償部18は、デッドタイム補償値発生器17が出力するデッドタイム補償値Dcmp(=−Dd)とインパルス関数との積を、オフセット補正部12の積分演算器123の入力に加算する。これは、積分演算器123の積分値をリセットして、デッドタイム補償値Dcmpとリセット前の積分値の和で積分値を初期化することと等価である。よって、離散系での実現にあたっては、積分演算器123の積分に、積分演算の制御サイクルのタイミングで積分値に単純にデッドタイム補償値Dcmpを加えてやればよい。
その結果、図6に示すように、オフセット補正部12の出力であるオフセット補正出力Dosに対して、ステップ状にデッドタイム補償値である−Ddが加わることになる。デッドタイム補償値が加算されたオフセット補正部12の積分演算器123の出力は、最終的にDCDCコンバータ3のスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するデューティD1,D2に加減算される。この場合、出力電圧Voutの上昇を抑える方向でデューティが補償される。その結果、リアクトル電流ILのピーク値が0A近辺になっても、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutの変動を抑えることができる。また、デッドタイム補償値を出力するのはt2の瞬間だけでよく、デッドタイムに起因する電圧変動が起きたと判断した瞬間にすぐに補償ができ、しかも一度補償したら、デッドタイム補償値は積分値として残るので、その後、デッドタイム補償値を出力し続ける必要はない。
デッドタイム補償値発生器17からデッドタイム補償値Dcmp(=−Dd)が出力された後は、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutが下がってコンバータ負荷状態S(n)が変化するか、内部カウンタ値が内部カウンタ最大値C_maxになるまで、デッドタイム補償値Dcmpの発生がマスクされる。ここで、内部カウンタ最大値C_maxは、デッドタイム補償値Dcmpを出力してからDCDCコンバータ3の出力電圧Voutの変動が収まると予想される時間以上の値に設定しておく。これにより、デッドタイム補償を行ってから出力電圧変動が収まるまでの間に、まだデッドタイムに起因する電圧変動が起き続けていると判定して過剰にデッドタイム補償を行ってしまい、不必要な電圧変動を引き起こすといった不都合を回避することができる。
その後、負荷電流Ioutが減少を続け、時間t3のタイミングになって今度はリアクトル電流ILのピーク最大値が0A近辺になったとする。このとき、再度デッドタイムの影響でデューティD1,D2に対して実質的なスイッチング素子Q1〜Q4のデューティが変動することから、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutが上昇を始める。ここで負荷電流Ioutの変動率が高いと、t2とt3の時間間隔は短くなるので、出力電圧Voutの変動が電圧閾値Vth2内に戻る前に、再度出力電圧Voutの上昇が始まる。この場合、デッドタイム補償領域判定部16が出力するコンバータ負荷状態S(n)は−1のままなので、時間t3のタイミングでは、デッドタイム補償値発生器17はデッドタイム補償値Dcmpを0にしたままである。また、内部カウンタの値はカウンタ最大値C_max未満となり、内部カウンタのインクリメントが続けられる。
次に時間t4のタイミングで、デッドタイム補償値発生器17の内部カウンタの値がカウンタ最大値C_max以上になる。ここでデッドタイム補償値発生器17は内部カウンタを0にリセットし、コンバータ負荷状態S(n)が−1なので、デッドタイム補償値Dcmpとして−Ddを再度出力する。その結果、再度オフセット補正出力Dosに対してステップ状に−Ddが加わり、最終的にスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するデューティD1,D2に加減算される。その結果、リアクトル電流ILのピーク値が0A近辺になっても、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutの変動を抑えることができる。
以上の例のように、負荷電流ILの変動率が高い場合は、時間t2から時間t3の間にデッドタイム補償値Dcmpとして2回分の−2Ddを一度に出力すれば、一度で出力電圧変動を抑えることが可能である。しかし、負荷電流ILの変動率が低い場合は、時間t2と時間t3との間に時間差があり、このため、負荷変動率が高いときの補償値−2Ddを一度に出力すると、過補償になって不必要な電圧変動を引き起こすことになる。そこで、本実施形態の制御装置10のように、内部カウンタを用いてデッドタイム補償を一定期間禁止する方法をとり、2回の電圧変動時にそれぞれ−Ddの補償値を出力する構成とすることで、過補償による不必要な電圧変動を引き起こすことなく、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutの変動を効果的に抑制することができる。
図7は、本実施形態の効果を確認するためのシミュレーションを行った結果を示す図である。シミュレーションの動作条件は、DCDCコンバータ3の入力電圧Vin=400V、DCDCコンバータ3の出力電圧目標値Vout*=200V、負荷電流Ioutを+100Aから−100Aまで負荷変動率10kA/sで動作させる条件とした。なお、リアクトルLのインダクタンスは300μHで、デッドタイムは5μs、PWMキャリア周波数は10kHzである。シミュレーション結果を示す図7において、図7(a)は負荷電流Iout及びリアクトル電流ILの波形を示し、図7(b)はDCDCコンバータ3の出力電圧Voutの波形を示し、図7(c)はデッドタイム補償値Dcmpの波形を示し、図7(d)はオフセット補正出力Dosの波形を示している。なお、図7(b)及び図7(c)では、本実施形態の制御装置10を用いた場合(実施例1)のシミュレーション結果を実線で示すとともに、比較対象として、PI制御定数などは全て同じにして前記の特許文献1に記載の制御装置を用いた場合(比較例)のシミュレーション結果を破線で示している。
図7のシミュレーション結果から分かるように、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutの変動最大値が比較例では25Vとなっているのに対し、実施例1では10Vに抑えられており、60%の電圧変動の低減が実現されている。すなわち、比較例の場合は同等の性能を実現するためにはゲインマージンを削って安定性を犠牲にする必要があるが、実施例1ではゲインマージンを変更せずに制御の安定性を維持したまま、電圧変動抑制の性能を向上させることが可能となっている。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の制御装置10によれば、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutが最大負荷変動で起こると推定される電圧以上に変動した場合にデッドタイムによるデューティ変動が生じたと判断し、そのときのDCDCコンバータ3の負荷状態S(n)に応じたデッドタイム補償値Dcmpを出力して、DCDCコンバータ3の各スイッチング素子Q1〜Q3を駆動するデューティD1,D2に対してデッドタイム補償値Dcmpを加算することでデッドタイム起因の電圧変動を抑制するようにしているので、オフセット補正部12のフィードバックゲインを上げることなくデッドタイム起因の電圧変動を抑制することができ、制御の安定性を確保しながらDCDCコンバータ3の出力電圧の変動を有効に抑制することができる。
また、本実施形態の制御装置10によれば、リアクトル電流ILを測定する電流センサなどを用いることなくデッドタイム補償を行うようにしているので、電流センサの誤検知により過補償となって不要な電圧変動を招くといった問題や、誤検知の少ない高性能な電流センサを用いることでコスト高を招くといった問題を有効に回避しながら、デッドタイム起因の電圧変動を有効に抑制することができる。
また、本実施形態の制御装置10によれば、デッドタイム補償値Dcmpをオフセット補正部12の積分演算器123の入力に加算し、これを積分演算器123の初期値として代入することにより積分演算器123を初期化する構成としているので、デッドタイム起因の電圧変動が発生したときに即座にデューティD1,D2の補償を行うことができ、デッドタイム起因の電圧変動をさらに効果的に抑制することができる。
また、本実施形態の制御装置10によれば、デッドタイム補償値Dcmp(=±Dd)の出力を内部カウンタにより管理し、オフセット補正部12の積分演算器123を初期化してから一定時間経過後にデッドタイム補償値Dcmp(±Dd)を出力したときに積分演算器123を再度初期化する構成としているので、負荷変動率が低い場合でも過補償による不要な電圧変動を生じさせることなく、デッドタイム起因の電圧変動を有効に抑制することができる。
また、本実施形態の制御装置10によれば、電圧目標値変動補償モデル15を用いて、DCDCコンバータ3の出力電圧目標値Vout*の変動に応じたDCDCコンバータ3の出力電圧推定値Vout_esを演算し、この出力電圧推定値Vout_esと電圧センサ7で測定した出力電圧Voutとの偏差からデッドタイムに起因したデューティ変動が生じているかどうかを判断するようにしているので、出力電圧目標値Vout*の変動があった場合でもその影響を受けることなく、デッドタイム起因の電圧変動を有効に抑制することができる。
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態として示す制御装置20の構成を示すブロック図である。本実施形態の制御装置20は、電圧PI制御と電流PI制御とを組み合わせた構成に対して本発明を適用した例である。本実施形態の制御装置20は、第1の実施形態の制御装置10と同様に、例えば燃料電池自動車の駆動系システムとして構成されたモータ駆動システム(図1参照)において、双方向昇降圧型のDCDCコンバータ3の動作を制御するコントローラとして利用される。ただし、本実施形態の制御装置20を用いる場合は、モータ駆動システムにはDCDCコンバータ3のリアクトル電流ILを測定するための電流センサ8が付加され、この電流センサ8により測定されたリアクトル電流ILが、制御装置20に入力される。なお、以下の説明において、第1の実施形態と共通もしくは同等の構成については第1の実施形態と共通の符号を用い、重複した説明は省略する。
本実施形態の制御装置20は、第1の実施形態の制御装置10における電圧PI+電流FF制御部11とオフセット補正部12に代えて、電圧PI制御部21と電流PI制御部22とを備える。
電圧PI制御部21は、DCDCコンバータ3の出力電圧目標値Vout*と電圧センサ7により測定されたDCDCコンバータ3の出力電圧Voutとの偏差から、リアクトル電流目標値IL*を演算するものであり、上記の偏差に対して比例制御定数KPvを乗ずる制御ブロック211と、上記の偏差に対して積分制御定数KIvを乗ずる制御ブロック212と、制御ブロック212の出力を積分する積分演算器213と、制御ブロック211の出力と積分演算器213の出力を加算する加算器214とを有する。
電流PI制御部22は、リアクトル電流目標値IL*と電流センサ8により測定されたリアクトル電流ILとの偏差から、電流フィードバック制御出力(第1の実施形態における電流フィードフォワード制御出力に相当)Verrを演算するものであり、上記の偏差に対して比例制御定数KPiを乗ずる制御ブロック221と、上記の偏差に対して積分制御定数KIiを乗ずる制御ブロック222と、制御ブロック222の出力を積分する積分演算器223と、制御ブロック221の出力と積分演算器223の出力を加算する加算器224とを有する。
本実施形態の制御装置20においても、第1の実施形態の制御装置10と同様に、DCDCコンバータ3の入力電圧Vin、出力電圧Vout、電流フィードバック制御出力Verr、オフセット補正出力Dosをもとに、昇高圧制御切換処理部13において、昇圧制御時と降圧制御時とのそれぞれでDCDCコンバータ3のスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するデューティD1,D2が演算される。そして、PWM信号発生器14a,14bから一定のPWMキャリアでデッドタイム期間Tdを含むデューティD1,D2のパルス波形がゲート信号Q1_G〜Q4_Gとして出力され、これに応じてDCDCコンバータ3の各スイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作が行われる。
また、本実施形態の制御装置20においても、第1の実施形態の制御装置10と同様に、デッドタイム起因の電圧変動を抑制するための構成として、電圧目標値変動補償モデル15と、デッドタイム補償領域判定部16と、デッドタイム補償値発生器17と、デッドタイム補償部18とが設けられている。電圧目標値変動補償モデル15、デッドタイム補償領域判定部16、デッドタイム補償値発生器17の構成及び動作は第1の実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。ただし、本実施形態の制御装置20では第1の実施形態10で説明したオフセット補正部12が設けられていないため、デッドタイム補償部18に、第1の実施形態におけるオフセット補正部12の積分演算器123に相当する積分演算器184が付加されている。そして、デッドタイム補償部18は、デッドタイム補償値発生器17から出力されるデッドタイム補償値Dcmpとインパルス関数との積を積分演算器184に入力し、この積分演算器184の出力をオフセット補正出力Dosとして出力している。この積分演算器184の出力は、第1の実施形態と同様に、最終的にDCDCコンバータ3のスイッチング素子Q1〜Q4を駆動するデューティD1,D2に加減算される。その結果、リアクトル電流ILのピーク値が0A近辺になっても、実質的なスイッチング素子Q1〜Q4のデューティの変動を抑えることができ、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutの変動を抑えることが可能となる。
図9は、本実施形態の効果を確認するためのシミュレーションを行った結果を示す図である。なお、シミュレーションの動作条件や回路定数などは第1の実施形態で説明したものと同様である。このシミュレーション結果を示す図9において、図9(a)は負荷電流Ioutの波形を示し、図9(b)はDCDCコンバータ3の出力電圧Voutの波形を示し、図9(c)はオフセット補正出力Dosの波形を示している。なお、図9(b)では、本実施形態の制御装置20を用いた場合(実施例2)のシミュレーション結果を実線で示すとともに、比較対象として、PI制御の制御定数は全て同じにして電圧PI制御及び電流PI制御のみを行った場合(比較例)のシミュレーション結果を破線で示している。
図9のシミュレーション結果から分かるように、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutの変動最大値が比較例では40Vとなっているのに対し、実施例2では20Vに抑えられており、50%の電圧変動の低減が実現されている。ここで、実施例2で実現される電圧変動低減と同等の効果は、リアクトル電流ILを測定する電流センサ8を用いてデッドタイム補償を行った場合にも達成できるものと推察されるが、実際の製品で用いられる電流センサ8には製造ばらつきや温度特性、経年劣化などの誤差要因がある。このため、実際に電流センサ8を用いてデッドタイム補償を行おうとすると、電流センサ8の誤差による誤検知によって、必要ない領域でデッドタイム補償を行ってデューティの変動を生じさせ、不必要な出力変動要因を引き起こすことが懸念される。これに対して、本実施形態では、デッドタイム補償を行うために電流センサ8を用いてはおらず、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutが実際に変動したときだけ動作して、デッドタイム補償を行うようになっている。したがって、電流センサ8を用いてデッドタイム補償を行った場合に懸念される上述した問題を生じさせることなく、デッドタイムに起因する電圧変動を有効に抑制することができる。
以上のように、本実施形態の制御装置20においても、DCDCコンバータ3の出力電圧Voutが最大負荷変動で起こると推定される電圧以上に変動した場合にデッドタイムによるデューティ変動が生じたと判断し、そのときのDCDCコンバータ3の負荷状態S(n)に応じたデッドタイム補償値Dcmpを出力して、DCDCコンバータ3の各スイッチング素子Q1〜Q3を駆動するデューティD1,D2に対してデッドタイム補償値Dcmpを加算することでデッドタイム起因の電圧変動を抑制するようにしているので、オフセット補正部12のフィードバックゲインを上げることなくデッドタイム起因の電圧変動を抑制することができ、制御の安定性を確保しながらDCDCコンバータ3の出力電圧の変動を有効に抑制することができる。
また、本実施形態の制御装置20は、電流PI制御用に電流センサ8でリアクトル電流ILを測定しているが、デッドタイム補償を行うために電流センサ8を用いていないので、第1の実施形態の制御装置10と同様に、電流センサ8の誤検知により過補償となって不要な電圧変動を招くといった問題や、誤検知の少ない高性能な電流センサ8を用いることでコスト高を招くといった問題を有効に回避しながら、デッドタイム起因の電圧変動を有効に抑制することができる。
なお、以上の第1、第2の実施形態においては、出力電圧目標値Vout*が一定の場合で負荷が変動する場合を想定してデッドタイム起因の電圧変動を抑制する場合の動作例について説明したが、現実のDCDCコンバータ3の動作状況としては、出力電圧目標値Vout*と負荷電流とが同時に変動するような場合も想定される。このような場合であっても、出力電圧目標値Voutの変動に対する応答は、電圧目標値変動補償モデル15によって出力電圧推定値Vout_esに反映されることになるので、上述した動作例をそのまま適用してデッドタイム起因の電圧変動を抑えることが可能である。
また、出力電圧目標値Vout*が一定であるような用途に用いるときは、デッドタイム補償領域判定部16において、出力電圧推定値Vout_esと出力電圧Voutとの偏差の代わりに、直接、出力電圧指令値Vout*と出力電圧Voutとの偏差を用いてデッドタイムに起因したデューティ変動の有無を判断することも可能である。
また、第1の実施形態では、電流フィードフォワード制御とオフセット補正制御を組み合わせて実施する構成の制御装置に対して本発明を適用した例を説明し、第2の実施形態では、電圧PI制御と電流PI制御とを組み合わせて実施する構成の制御装置に対して本発明を適用した例を説明したが、本発明は、以上の例に限定されるものでなく、DCDCコンバータ3の電圧を制御する制御装置に対して広く適用することが可能である。
また、第1、第2の実施形態では、図1に示した燃料電池自動車の駆動系システムに用いるDCDCコンバータ3を制御対象とする制御装置に対して本発明を適用した例を説明したが、ハイブリッド自動車用の昇圧コンバータや、据え置き型の電源装置に用いるコンバータなど、スイッチング素子の動作にデッドタイムを設けてデッドショートを防止する構成のDCDCコンバータを制御対象とする制御装置に本発明を適用した場合にも、同様の効果を得ることが可能である。