以下、本発明に係る画像形成装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の一例であるプリンター1の内部構成を概略的に示す断面図である。プリンター1は、プリンター本体10内に画像形成部2が設けられている。画像形成部2は、用紙に対する画像の形成(印刷)を行うものであり、感光体ドラム3、感光体ドラム3の周囲に配設された帯電部4、露光部5、現像部6及びクリーニング部7等を備えている。感光体ドラム3は、像担持体の一例であり、同図中に示す矢印方向に回転可能に構成された例えばアモルファスシリコンからなる。
帯電部4は、感光体ドラム3の表面を所定電位に均一に帯電させるものである。露光部5は、所謂レーザ走査ユニット(レーザスキャナ)であり、パソコン等(不図示)から送信されてきた画像データに基づき生成されたレーザービームを感光体ドラム3の表面に照射し、感光体ドラム3上に静電潜像を形成するものである。現像部6は、感光体ドラム3に形成された静電潜像に対して、後述のトナーカートリッジ61から供給されるトナーを付着させることで、トナー像として静電潜像を顕在化(顕画化)させるものである。クリーニング部7は、後述の転写部9によるトナー転写が終了した後、感光体ドラム3の表面に残留しているトナーを清掃するものである。
また、プリンター1は、画像形成部2(感光体ドラム3)へ向けて給紙を行う給紙部8、感光体ドラム3上のトナー像を用紙に転写する転写部9、及び用紙に転写されたトナー像を定着させる定着部11を備えている。給紙部8は、各サイズの用紙を収納する給紙カセット81、収納されている用紙を取り出すためのピックアップローラー82、用紙が搬送される経路である搬送路83及び搬送路83中の用紙の搬送を行う搬送ローラー84等を備え、給紙カセット81から1枚ずつ送り出された用紙を後述の転写ローラー91と感光体ドラム3とのニップ部へ向けて搬送する。なお、給紙部8はトナー像が転写された用紙を搬送路85を経て定着部11へ搬送し、さらに、定着部11で定着処理された用紙を搬送ローラー86や排出ローラー87によって、プリンター本体10上部の用紙排出トレイ12へ排出する。
転写部9は、転写ローラー91を備え、搬送されてきた用紙を介して転写ローラー91を感光体ドラム3に押し付けた状態で、感光体ドラム3上に顕在化されたトナー像を用紙に転写させるものである。搬送路85における転写部9より下流側の適所には、定着部11が設けられている。定着部11は、用紙に転写されたトナー像を定着させるものである。定着部11はヒートローラー11a及び圧ローラー11bからなり、ヒートローラー11aの熱によって用紙上のトナーを溶かし、圧ローラー11bによって圧力を加えて用紙上にトナー像を定着させる。
図2は、現像部6の構成を示す断面図(現像ローラー方向と垂直な方向の断面図)である。現像部6は、トナー(現像剤)を収納する所謂容器(コンテナー)からなるトナーカートリッジ(トナー収容体の一例)61、及び現像ローラー621等を備えた現像ユニット62から構成されている。現像部6は、汲み上げローラー622や供給ローラー623の回転駆動によってトナーカートリッジ61のトナーを攪拌部へ供給し、攪拌ローラー611(攪拌スクリュー)の回転駆動によってトナーを攪拌部現像ローラー621へ供給する。現像ローラー621の外周部には現像スリーブ6211が設けられており、この現像スリーブ6211には現像バイアスが印加されており、攪拌部でプラスに帯電されたトナーを、感光体ドラム3表面の露光部分(露光により静電気が除去されてなる静電潜像の部分)に吸着させる。なお、汲み上げローラー622や供給ローラー623の回転駆動は、不図示の駆動源から不図示の駆動軸(入力ギア)等に入力された駆動力によって行われる。また、現像部6は、トナーカートリッジ61が現像ユニット62に対して着脱自在に装着(言い換えれば、トナーカートリッジ61が画像形成部2に対して着脱自在に装着)できるように構成されている。
図3は、図2における現像部6の符号Aで示す範囲の部分拡大図である。同図に示すように、トナーカートリッジ61の例えば一側壁部に無線タグ101が、現像ユニット62の例えば一側壁部に、通信部102が取り付けられている。無線タグ101と通信部102とは、所定の距離(例えば約5mm)を隔てて対向配設されている。
無線タグ101は、通信部102との無線通信(交信)を行うものである。無線タグ101は、例えば電磁波(電波)を使ってデータを送受信することが可能な半導体チップ(無線ICチップ)を備え、通信部102からの電磁波によって起電力を発生し(電磁誘導の原理に基づく)、この電力によって回路を駆動させて通信部102と制御データ(識別コード)等を交換することで上記無線通信を行う。
通信部102は、無線タグ101との間で、予め設定された周波数で無線通信が可能に構成されたものであり、無線タグ101に対して出力する無線通信の通信出力が可変である。詳細に説明すると、通信部102は、所定の通信出力で、所定の周波数の電磁波を出力して無線タグ101との間で無線通信をする。これにより、無線タグ101に記憶されているデータを読み出し、及び無線タグ101にデータを書き込む。ここでは、通信部102は基本周波数として、例えば、約13.56MHzの周波数の電磁波を出力する。この周波数での振幅を標準の振幅から大きくあるいは小さく変化させて電磁波を出力する。或いは周波数を変調させてこの基本周波数よりも大きなあるいは小さな周波数の電磁波を出力する。すなわち、通信部102は通信出力を任意な出力に変化させることが可能である(通信出力が可変である)。出力の変調方式は通信装置の規格に応じてAM変調やFM変調などがあるが、本実施形態ではAM変調方式を採用している。通信部102は、後述の制御部70と接続されており、制御部70による制御によって電磁波の出力調整(振幅変調、周波数変調;通信出力の大きさの変更)が行われるとともに、無線タグ101との通信状態(後述する無線タグ101と通信可能となる電磁波出力)等の情報を制御部70に送信する。
ところで、無線タグ101及び通信部102は、元来別の目的で使用されるべく備えられているものである。例えば、無線タグ101は、ICタグと呼ばれる媒体に、トナーカートリッジ固有の情報つまりトナーカートリッジ61の使用回数或いはコンテナー内のトナーの特性等の情報が予め記憶されたものとされ、トナーカートリッジ61が現像部6に装着された際(言い換えれば、画像形成部2に装着された際)など、通信部102によりトナーカートリッジ61側の固有情報を交信によって読み取り、プリンター1本体側でこの情報を利用するなどといった目的で使用される。本実施形態では、トナー残量の算出に、既設の無線タグ101及び通信部102の構成を利用することができ、よりコストダウンを図ることが可能となる。
図4は、プリンター1の電気的な構成の一例を示すブロック図である。プリンター1は給紙部8、画像形成部2、通信部102、定着部11、制御部70、操作表示部50及びネットワークI/F部30等を備える。給紙部8及び定着部11に関しては、図1で説明しているので、説明を省略する。
画像形成部2は、無線タグ101を有するトナーカートリッジ61からトナーが供給される現像部6を含み、静電潜像をトナーにより画像に現像して、その画像を用紙に形成する機能を有し、トナーカートリッジ61が着脱可能に装着される。
通信部102は、無線タグ101との間で無線通信が可能に構成されたものであり、無線タグ101に対して出力する無線通信の通信出力が可変である。
ネットワークI/F部30は、LAN等のネットワークを介して接続されたパソコン等の情報処理装置との間における種々のデータの送受信を制御するものである。
操作表示部50は、プリンター1のフロント部等に設けられ、ユーザーからの各種指示命令が入力される入力キーとして機能し、又は所定の情報を表示するものである。
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる。CPUはプリンター1を動作させるために必要な制御を、画像形成部2等のプリンター1の上記構成要素に対して実行する。ROMはプリンター1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及び作業領域等に利用される。
制御部70は、通信強度検出部71、第1のテーブル記憶部72、第2のテーブル記憶部73、選択部74及び算出部75等を備える。
通信強度検出部71は、通信部102が無線タグ101に対して出力する無線通信の通信出力を変化させて、通信部102と無線タグ101との間で無線通信が可能になるときの当該通信出力を通信強度として検出する。
第1のテーブル記憶部72は、複数の第1のテーブルを予め記憶している。第1のテーブルは、上述した予め設定された周波数で無線通信がされた場合に、通信強度検出部71で検出される通信強度とトナーカートリッジ61内のトナー残量との関係を表すテーブルである。第1のテーブルは、通信部102と無線タグ101との距離に対応づけて複数用意されている。
第2のテーブル記憶部73は、第2のテーブルを予め記憶している。第2のテーブルは、トナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合に通信強度検出部71で検出される通信強度と、その通信強度の場合に複数の第1のテーブルの中から選択すべき第1のテーブルとを対応づけたものである。
選択部74は、トナーカートリッジ61が画像形成部2に装着されてから画像形成部2で最初に画像形成の動作が実行される前に(言い換えれば、トナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合に)通信強度検出部71で検出された通信強度を用いて、その通信強度の場合に複数の第1のテーブルの中から選択すべき第1のテーブルを、第2のテーブルを参照して選択する。
算出部75は、画像形成部2で画像形成の動作が実行された後に(例えば、画像形成部2で予め定められた枚数の用紙に画像が形成される毎に)通信強度検出部71で検出された通信強度を用いて、当該通信強度と選択部74により選択された第1のテーブルとを基にして、トナーカートリッジ61内のトナー残量を算出する。
次に、本実施形態に係るトナー残量の算出の前提となる通信部102の通信出力のレベル(通信強度)を利用したトナー残量の算出について説明する。
図5は、通信部102と無線タグ101との間の無線通信(以下、「無線通信」と省略して記載する場合がある)において、通信強度と周波数との関係の一例を示すグラフである。横軸が周波数を示し、縦軸が通信強度を示している。ここでの周波数とは、無線通信において、通信部102から出力される信号(通信出力)の周波数をいう。通信強度とは、通信部102が無線タグ101に対して出力する無線通信の通信出力を変化させて、通信部102と無線タグ101との間で無線通信が可能になるときの当該通信出力の大きさをいう。言い換えれば、通信強度とは、無線通信可能な通信出力の大きさの最低値をいう。
Ftagは、無線タグ101の共振周波数である。Fopは、無線通信において、通信部102が実際に使用する無線信号の周波数である。Imaxは、通信強度の最大値である。1/2・Imaxは、Imaxの半値である。
通信強度と周波数との関係を示す曲線C1,C2,C3は、ガウス関数となる。曲線C1はトナーカートリッジ61内にトナーがない場合、曲線C2はトナーカートリッジ61内にトナーが半分残っている場合、曲線C3はトナーカートリッジ61内にトナーが満杯の場合を示している。
周波数Fopにおいて、トナーカートリッジ61内にトナーがない場合の通信強度をI1、トナーが半分残っている場合の通信強度をI2、トナーが満杯の場合の通信強度をI3とすると、下記関係が成立する。
I3>I2>I1
図6は、図5に示す通信強度とトナー残量との関係を示すグラフである。横軸が通信強度を示し、縦軸がトナー残量を示している。トナー残量が少なくなるに従って、通信強度が小さくなっている。これは、トナーに含まれる磁性体が原因である。磁性体は無線通信の信号の強度に影響を与え、同じ周波数(例えば、周波数Fop)の下で、トナー残量に応じて通信強度が異なる。図6に示すグラフをルックアップテーブルとして表した第1のテーブル(通信強度とトナー残量との関係を表すテーブル)を予め作成し、第1のテーブル記憶部72に記憶させ、トナー残量の算出に利用する。この理解のために、後述する図15のトナー残量算出ステップS19について、先に説明する。
図7はトナー残量算出ステップの一例を示すフローチャートである。まず、プリンター1の外部装置(PC)等からの指示入力などに応じて、通信強度検出部71による制御により、周波数Fopの標準出力(初期出力)で、通信部102から無線タグ101に対する通信動作が開始される(ステップS1)。標準出力とは、トナーカートリッジ61内にトナーがない場合に、通信部102と無線タグ101との間で無線通信が可能になるときの通信出力(通信強度)をいう。次に、通信強度検出部71によって、ステップS1における標準出力で無線タグ101との無線通信が可能であれば、この標準出力が通信強度として検出され、標準出力で通信不能(エラー)となる場合には、通信可能な出力になるまで出力が大きく(調節)され、この通信可能となったときの出力が通信強度として検出される(ステップS2)。そして、算出部75は、図6に示すグラフをルックアップテーブルとして表した第1のテーブルを用いて、ステップS2において通信強度検出部71により検出された通信強度のときのトナー残量を算出する(ステップS3)。トナー残量が算出された後、制御部70は、このトナー残量の情報を例えば操作表示部50に表示させる(ステップS4)。
図5では、通信部102と無線タグ101との距離の基準値(所定距離、例えば約5mm)を決めて、周波数Fopにおいて、トナーカートリッジ61内のトナー残量が半分の場合の通信強度が、ガウス曲線の最大値Imaxの半値となるように設定している。ガウス曲線は最大値Imaxの半値となる付近が、ほぼ線形になるので、図6に示すように、線形(ほぼ線形)のグラフが得られる。
しかし、通信部102と無線タグ101との距離の誤差は不可避的に発生するので、トナーカートリッジ61内のトナー残量が半分の場合の通信強度が、ガウス曲線の最大値Imaxの半値と異なることが起きる。
図8及び図10は、無線通信において、通信部102が実際に使用する無線信号の周波数Fopにおいて、トナー残量が半分の場合(曲線C2)の通信強度が、ガウス曲線の最大値Imaxの半値より大きい例(図8)と小さい例(図10)を示している。図8及び図10の縦軸及び横軸の意味は、図5の縦軸及び横軸の意味と同じである。
通信部102と無線タグ101との距離が近くなると、通信部102のアンテナと無線タグ101との結合係数が増加する。これにより、通信部102のアンテナと無線タグ101の自己インダクタンスとの相互インダクタンスが増加するので、周波数が低周波側に移動する。従って、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より小さい場合、図8に示すように、曲線C1,C2,C3は、図5に示す曲線C1,C2,C3を左へ(低周波側)シフトしたものとなり、周波数Fopにおいて、トナー残量が半分の場合(曲線C2)の通信強度が、ガウス曲線の最大値Imaxの半値より大きくなっている。
これに対して、通信部102と無線タグ101との距離が遠くなると、周波数が高周波側に移動する。従って、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より大きい場合、図10に示すように、曲線C1,C2,C3は、図5に示す曲線C1,C2,C3を右へ(高周波側)シフトしたものとなり、周波数Fopにおいて、トナー残量が半分の場合(曲線C2)の通信強度が、ガウス曲線の最大値Imaxの半値より小さくなっている。
図8及び図10に示すように、周波数Fopにおいて、トナー残量が半分の場合(曲線C2)の通信強度が、ガウス曲線の最大値Imaxの半値と異なる。これにより、トナー残量が半分の場合の曲線C2は、周波数Fop付近において、非線形となる。
図9は図8に示す関係において、通信部102の通信強度とトナーカートリッジ61内のトナー残量との関係を示すグラフである。すなわち、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より小さい場合、図6に示す通信強度とトナー残量との関係は、図9に示すように変化している。図11は図10に示す関係において、通信部102の通信強度とトナーカートリッジ61内のトナー残量との関係を示すグラフである。すなわち、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より大きい場合、図6に示す通信強度とトナー残量との関係は、図11に示すように変化している。
図9に示すように、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より小さい場合、トナー残量が多くなるに従って、グラフの傾きが小さくなる。これに対して、図11に示すように、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より大きい場合、トナー残量が多くなるに従って、グラフの傾きが大きくなる。このように、無線通信において、通信部102が実際に使用する無線信号の周波数Fopにおいて、トナーカートリッジ61内のトナー残量が半分の場合の通信強度が、ガウス曲線の最大値の半値と異なることにより、グラフが非線形となるので、図9及び図11に示すグラフは、図6に示すグラフと異なったものになっている。
従って、無線タグ101と通信部102との距離の誤差が原因で、図9や図11に示すトナー残量と通信強度との関係が成立しているのに、図6に示す関係が成立するテーブルを用いてトナー残量を算出すると、トナー残量を正確に算出できなくなる。
図12は、トナーカートリッジ61が画像形成部2に装着されてから画像形成部2で最初に画像形成の動作が実行される前(以下、「最初に画像形成の動作が実行される前」と省略して記載する場合がある)の通信強度と周波数との関係を示すグラフである。言い換えれば、トナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合の通信強度と周波数との関係を示すグラフである。曲線C4,C5,C6はガウス関数である。曲線C4は、通信部102と無線タグ101との距離が基準値の場合を示している。曲線C5は、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より小さい場合を示している。曲線C6は、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より大きい場合を示している。
周波数Fopにおいて、通信部102と無線タグ101との距離が基準値の場合(曲線C4)の通信強度は、基準値より大きい場合(曲線C6)の通信強度よりも大きくなり、基準値より小さい場合(曲線C5)の通信強度よりも小さくなる。
これは、通信部102のアンテナと無線タグ101との間に、以下に示す式の相互インダクタンスMが作用するからである。相互インダクタンスは通信部102と無線タグ101との距離により変化し、周波数Fopの下では、距離が小さくなるに従って、通信強度が大きくなる。
M=k(L1×L2)1/2
k:結合係数
L1:無線タグ101の自己インダクタンス
L2:通信部102のアンテナのインダクタンス
通信強度と周波数の関係において、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より大きい場合(曲線C6)は、トナーカートリッジ61内のトナー残量が少ない場合と同様になる。通信部102と無線タグ101との距離が基準値の場合(曲線C4)は、トナーカートリッジ61内のトナー残量が半分の場合と同様になる。通信部102と無線タグ101との距離が基準値より小さい場合(曲線C5)は、トナーカートリッジ61内のトナー残量が多い場合と同様になる。
本実施形態では、図6に示すグラフをルックアップテーブルとして表した第1のテーブル(通信部102と無線タグ101との距離が基準値の場合のテーブル)、図9に示すグラフをルックアップテーブルとして表した第1のテーブル(通信部102と無線タグ101との距離が基準値より小さい場合のテーブル)、図11に示すグラフをルックアップテーブルとして表した第1のテーブル(通信部102と無線タグ101との距離が基準値より大きい場合のテーブル)を予め用意する。これらの三種類の第1のテーブルが第1のテーブル記憶部72に予め記憶されている。
図12に示すトナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合のグラフにおいて、通信部102と無線タグ101との距離が基準値の場合(曲線C4)の周波数Fopでの通信強度をI4とする。第1のテーブルの選択の仕方として二つの態様がある。
第1のテーブルの選択の仕方の第1態様では、トナーカートリッジ61が画像形成部2に装着されてから画像形成部2で最初に画像形成の動作が実行される前に(言い換えれば、トナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合に)、通信強度検出部71で検出された通信強度Iを用いて、以下のように、テーブルを選択する。なお、I4+αは、周波数Fopにおいて、曲線C5の通信強度より小さい値であり、I4−αは、周波数Fopにおいて、曲線C6の通信強度より大きい値である。
(1)I4−α≦I≦I4+α:図6に示すグラフをルックアップテーブルとして表したテーブル(以下、基準距離用テーブルと称する)
(2)I>I4+α:図9に示すグラフをルックアップテーブルとして表したテーブル(以下、短距離用テーブルと称する)
(3)I<I4−α:図11に示すグラフをルックアップテーブルとして表したテーブル(以下、長距離用テーブルと称する)
第1のテーブルの選択の仕方の第1態様を用いる場合、第2のテーブル記憶部73には、上記(1)〜(3)の関係を表す第2のテーブルが予め記憶される。
これまでは、通信強度の最大値Imaxが同じ場合で説明した。しかし、何らかの原因(例えば、無線タグ101や通信部102のアンテナの形状)で、通信強度の最大値がImaxと異なる値であるImax´になることがある。例えば、図10に示す曲線C1,C2,C3の最大値Imaxが、図13に示すように、最大値Imax´になることがある(Imax<Imax´)。この場合、図12に示す曲線C6が上へシフトして、図14に示すように、曲線C6´となる。最初に画像形成の動作が実行される前に通信強度検出部71で検出された通信強度Iが、I4−α≦I≦I4+αを満たすと、本来は図11に示す長距離用テーブルを選択しなければならないのに、図6に示す基準距離用テーブルが選択されてしまう。これにより、トナー残量の算出の精度が低下する。
以上のように、通信強度の値が一つであると、通信強度の最大値が変動すると、間違った第1のテーブルを選択する可能性が生じる。
図14に示すように、トナーカートリッジ61が画像形成部2に装着されてから画像形成部2で最初に画像形成の動作が実行される前に(言い換えれば、トナーカートリッジ61が満杯の場合に)、周波数が異なる二つ(Fop、Fref)の信号を用いて通信部102と無線タグ101との間で無線通信をさせて、それぞれの周波数における通信強度を検出した場合、通信強度の差Dは、通信強度の最大値が変動しても同じであることが分かる。これは、通信強度が変動しても、曲線C6が曲線C6´に平行移動しているからである。
そこで、第2態様では、最初に画像形成の動作を実行される前に通信強度を検出する際に、周波数Fopに加えて、異なる周波数を用いる。ここでは、通信部102と無線タグ101との距離が基準値において、無線タグ101の共振周波数を用いて通信部102と無線タグ101との間で無線通信をさせた場合に、検出される通信強度の半値となる二つの周波数の一方である周波数Frefを用いる。
(周波数Fopのときの通信強度Iop)−(周波数Frefのときの通信強度Iref)に応じて、例えば、以下のように第1のテーブルを選択する。
(4)−0.1≦(Iop−Iref)/Iop≦0.1:図6に示す基準距離用テーブル
(5)(Iop−Iref)/Iop>0.1:図9に示す短距離用テーブル
(6)(Iop−Iref)/Iop<−0.1:図11に示す長距離用テーブル
第1のテーブルの選択の仕方の第2態様を用いる場合、第2のテーブル記憶部73には、上記(4)〜(6)の関係を表す第2のテーブルが予め記憶される。言い換えれば、第2のテーブルは、トナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合に通信強度検出部71で検出される各通信強度の差と、当該差の場合に三種類の第1のテーブルの中から選択すべき第1のテーブルとを対応づけたものである。以上の通り、第2態様では、通信強度の最大値が異なっても、正しい第1のテーブルを選択できるので、トナー残量の算出の精度を向上させることができる。
次に、本実施形態に係るプリンター1を用いたトナー残量の算出について、第2態様の場合を例にして、主に図4及び図15を用いて説明する。図15は、本実施形態に係るプリンター1を用いたトナー残量の算出を説明するフローチャートである。
ユーザーが、トナーの無くなったトナーカートリッジ61を画像形成部2から取り出し、画像形成部2に新たなトナーカートリッジ61を装着した後、プリンター1の電源をオンする(ステップS11)。
制御部70は、画像形成部2にトナーカートリッジ61が正しく装着されているか判断する(ステップS12)。例えば、トナーカートリッジ61が画像形成部2に正しく装着されている場合に、オンするスイッチを画像形成部2に設け、そのスイッチがオンすれば、制御部70は、画像形成部2にトナーカートリッジ61が正しく装着されていると判断する。
制御部70が、画像形成部2にトナーカートリッジ61が正しく装着されていないと判断した場合(ステップS12でNo)、制御部70は操作表示部50にトナーカートリッジ61が未装着であることを表示させる(ステップS13)。
制御部70が、画像形成部2にトナーカートリッジ61が正しく装着されていると判断した場合(ステップS12でYes)、通信強度検出部71は周波数Fopで通信強度を検出する(ステップS14)。通信強度検出部71は、周波数を周波数Fopから周波数Frefに変更して、通信強度を検出する(ステップS15)。
選択部74は、(周波数Fopのときの通信強度)−(周波数Frefのときの通信強度)の差を用いて、第1のテーブルを選択する(ステップS16)。詳細には、選択部74は、 (周波数Fopのときの通信強度)−(周波数Frefのときの通信強度)の差を用いて、その差の場合に複数の第1のテーブルの中から選択される第1のテーブルを、第2のテーブルを参照して選択する。
制御部70は、プリンター1(言い換えれば、画像形成部2)で、10枚印刷(10枚の用紙に画像形成)されたか判断し(ステップS17)、10枚印刷されていなければ(ステップS17でNo)、ステップS17を繰り返す。
制御部70が、プリンター1で10枚印刷されたと判断した場合(ステップS17でYes)、通信強度検出部71は、周波数Fopで通信強度を検出する(ステップS18)。
算出部75は、ステップS16で選択部74が選択した第1のテーブルとステップS18で通信強度検出部71が検出した通信強度とを基にして、トナーカートリッジ61内のトナー残量を算出する(ステップS19)。
制御部70は、ステップS19で算出されたトナー残量が、トナーカートリッジ61内のトナー残量が少ないことを示す予め定められた所定値より小さくなったかを判断する(ステップS20)。制御部70は、トナー残量が、予め定められた所定値より小さいと判断しない場合(ステップS20でNo)、ステップS17に戻る。これにより、予め定められた枚数(ここでは10枚)の用紙に画像が形成される毎に、トナー残量が算出されることになる。
一方、制御部70は、トナー残量が予め定められた所定値より小さいと判断した場合(ステップS20でYes)、操作表示部50にトナーカートリッジ61を交換する旨を表示させる(ステップS21)。
本実施形態の主な効果を説明する。
図4に示す通信強度検出部71で検出される通信強度は、トナーカートリッジ61内のトナー残量が同じでも(例えば、満杯)、通信部102と無線タグ101との距離に応じて異なる。本実施形態に係るプリンター1では、通信強度検出部71で検出される通信強度とトナーカートリッジ61内のトナー残量との関係を表す第1のテーブルを、通信部102と無線タグ101との距離に対応づけて三種類用意している(基準距離用テーブル、長距離用テーブル、短距離用テーブル)。
トナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合に通信強度検出部71で検出される通信強度と、その通信強度の場合に三種類の第1のテーブルの中から選択すべき第1のテーブルとを対応づけた第2のテーブルを予め用意している。そして、ステップS12,S14,S15,S16で説明したように、トナーカートリッジ61が画像形成部2に装着されてから画像形成部2で最初に画像形成の動作が実行される前に(言い換えれば、トナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合に)通信強度検出部71で検出された通信強度を用いて、三種類の第1のテーブルの中からその通信強度に対応づけられた第1のテーブルを、第2のテーブルを参照して選択する(ステップS16)。この第1のテーブルを用いてトナー残量を算出する(ステップS19)。
以上のように、本実施形態に係るプリンター1によれば、通信強度検出部71で検出される通信強度とトナーカートリッジ61内のトナー残量との関係を表す第1のテーブルを、通信部102と無線タグ101との距離に対応づけて三種類用意し、その距離に応じて第1のテーブルを選択できるようにしている。従って、トナーカートリッジ61を画像形成部2に装着したときの無線タグ101と通信部102との距離に誤差が生じていても、一つの第1のテーブルを用いてトナー残量を算出する場合に比べて、トナー残量の算出精度を高めることができる。
通信部102と無線タグ101との距離に誤差が生じていても、複数の第1のテーブルの中からその誤差に応じた第1のテーブルを、第2のテーブルを用いて選択できる理由は、以下の通りである。トナーカートリッジ61が画像形成部2に装着されてから画像形成部2で最初に画像形成の動作が実行される前は、トナーカートリッジ61内のトナーが満杯なので、通信部102と無線タグ101との距離と、通信強度とは相関関係を有する。第2のテーブルは、トナーカートリッジ61内のトナーが満杯の場合に通信強度検出部で検出される通信強度と、その通信強度の場合に複数の第1のテーブルの中から選択すべき第1のテーブルとを対応づけている。従って、第2のテーブルは、通信部102と無線タグ101との距離と、その距離に割り当てられた第1のテーブルとを、対応づけて記憶していることになるのである。
本実施形態において、テーブルの選択の仕方の第2態様によれば、次の効果を有する。図14に示すように、通信強度と無線通信に用いる信号の周波数との関係を示すグラフが、通信強度が高くなるようにシフト又は通信強度が低くなるようにシフトしても、周波数が異なる二つの信号を用いてそれぞれ検出された通信強度の差Dは、同じである。テーブルの選択の仕方の第2態様によれば、異なる周波数Fop,Frefの二つの信号を用いて通信部102と無線タグ101との間で無線通信をさせて、それぞれの周波数における通信強度を検出し、これらの通信強度の差を用いて第1のテーブルを選択している。従って、上記通信強度と周波数との関係を示すグラフが、通信強度が高くなるようにシフト又は通信強度が低くなるようにシフトしても、正しい第1のテーブルを選択することが可能となる。
また、本実施形態において、テーブルの選択の仕方の第2態様によれば、次の効果を有する。最初に画像形成の動作が実行される前に通信強度検出部71で検出された通信強度を用いて、その通信強度に対応する第1のテーブルを選択する場合、通信部102と無線タグ101との距離の誤差に対する通信強度の変化が小さければ、正しい第1のテーブルを選択できない可能性がある。通信強度と無線通信に用いる信号の周波数との関係を示すグラフは、ガウス関数なので、無線タグ101の共振周波数を用いて無線通信をすれば、最大の通信強度が得られる。そのグラフ(ガウス関数)において、通信強度の最大値Imaxの半値近辺が通信強度の変化の最も大きい点である。テーブルの選択の仕方の第2態様によれば、図14に示すように、通信部102と無線タグ101との距離が基準値において(曲線C4)、無線タグ101の共振周波数Ttagを用いて通信部102と無線タグ101との間で無線通信をさせた場合に、検出される通信強度の半値となる二つの周波数Fop,Frefを用いて、通信強度を検出している。通信強度と無線通信に用いる信号の周波数との関係を示すグラフにおいて、上記二つの周波数における通信強度は、いずれも通信部102と無線タグ101との距離の誤差に対する通信強度の変化が大きい箇所なので、正しい第1のテーブルをより確実に選択することができる。
さらに、本実施形態によれば、次の効果を有する。上述したように、通信強度と無線通信に用いる信号の周波数との関係を示すグラフは、ガウス関数である。そのグラフ(ガウス関数)において、通信強度の最大値の半値近辺が、トナーカートリッジ61内のトナー残量に対する通信強度の変化の最も大きい箇所である。本実施形態によれば、図5に示すように、図6に基づく基準距離用テーブルにおいて、トナー残量の半分の場合(曲線C2)の通信強度を、通信強度の最大値Imaxの半値にされている。従って、トナー残量の半分の場合の通信強度を、トナーカートリッジ61内のトナー残量に対する通信強度の変化の最も大きい箇所にしているので、通信部102と無線タグ101との距離が基準値の場合にトナー残量の算出精度を最もよくすることができる。
また、本実施形態によれば、次の効果を有する。ガウス関数は最大値の半値から離れるにしたがって変化量が小さくなる。よって、例えば、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より大きい場合を基準のテーブル(トナー残量の半分の場合の通信強度を、通信強度の最大値Imaxの半値にされている)にすれば、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より小さい場合、通信強度の最大値Imaxの半値の箇所と離れるので、トナーカートリッジ61内のトナー残量に対する通信強度の変化量が小さくなる。本実施形態によれば、通信部102と無線タグ101との距離が基準値の場合の第1のテーブルが基準距離用テーブルなので、図9を基にした短距離用テーブル、図11を基にした長距離用テーブルのいずれについても、通信強度は、トナーカートリッジ61内のトナー残量に対する通信強度の変化が比較的大きい箇所にすることができる。従って、通信部102と無線タグ101との距離が基準値より小さい場合、大きい場合のいずれについてもトナー残量の算出精度を比較的良くすることができる。