以下、発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明に係る冷蔵庫の第一の実施形態を、図1から図10を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の外観正面図、図2は、冷蔵庫の庫内の構成を示す図1のA−A断面図、図3は、冷蔵庫の冷気ダクトや冷気吹き出し口の配置などを示す正面図、図4は、冷却器収納室周辺の拡大図(図2中のB−B断面)、図5は野菜室戻りダクト吐出口周辺の拡大図(図1中のC−C断面)、図6は空気流制御部材100の構成を示す図、図7は空気流制御部材100と周りの部品との関係を示す空気流制御部材100周辺の拡大図(図4のD−D断面)、図8は冷却器からの除霜水を受ける樋の構成を示す図3のE−E断面図、図9は冷却器収納室周辺の流れを表す図(図2中のB−B断面)、図10は冷凍温度帯室底面の冷蔵室戻り冷気風路を示す図(図4のF−F断面)である。
なお、特に記載のない場合、上下左右は図1の上下左右方向を示し、同様に前面側(前側)は図2の左側,背面側(後ろ側)は図2の右方向を示す。
図1に示すように、第一の実施形態の冷蔵庫1は、食品貯蔵室として、上方から、冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6を備えている。また、製氷室3と上段冷凍室4は、同じ高さ位置において左右に配置されている。なお、製氷室3と上段冷凍室4と下段冷凍室5の総称として冷凍温度帯室60、冷蔵室2と野菜室6の総称として冷蔵温度帯室61と呼ぶことがある。
冷蔵室2は、前面側に、左右に分割された観音開きの冷蔵室扉2a,2bを備え、製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a,上段冷凍室扉4a,下段冷凍室扉5a,野菜室扉6aを備えている。
また、冷蔵庫1は、各扉の開閉状態をそれぞれ検知する図示しない扉センサと、扉開放状態と判定された状態が所定時間(例えば1分間)以上継続された場合に、使用者に報知する図示しないアラーム、冷蔵室2や野菜室6の温度設定や冷凍温度帯室60の温度設定をする図示しない温度設定器等を備えている。
図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10(冷蔵庫本体)により隔てられている。また、冷蔵庫1の断熱箱体10は真空断熱材26を実装している。
冷蔵庫1の庫内は、冷蔵室−冷凍室断熱仕切壁28により冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照)とが隔てられ、冷凍室−野菜室断熱仕切壁29により、下段冷凍室5と野菜室6とが隔てられている。
扉2a,2bの庫内側には複数の扉ポケット32が備えられている。また、冷蔵室2は複数の棚36により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6は、各室の前部に備えられた扉と一体に引き出される、収納容器4b,5b,6bがそれぞれ設けられており、各扉の図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器4b,5b,6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、製氷室扉3aと一体に、図示しない収納容器(図2中の符号3b)が設けられ、製氷室扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器3bが引き出せるようになっている。
なお、上段冷凍室4は、急速冷凍室として使用できるように構成されている。急速冷凍性能の向上のために、上段冷凍室4の収納容器4bには図示しないアルミトレーが備えられており、冷凍速度が向上するようになっている。
また、冷蔵庫1は、冷却器7,冷却器収納室8,庫内ファン9を備えている。なお、冷却器収納室8下部の左端壁面を、以下、左端壁面8aと称する。冷却器7は、下段冷凍室5の略背部に配置され、冷却器収納室8内に設けられている。冷却器7の上方に設けられた庫内ファン9により、冷却器7と熱交換して冷やされた空気が冷蔵室ダクト11を介して冷蔵室2に送られ、野菜室ダクト12を介して野菜室6に送られ、冷凍室ダクト13を介して上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3の各室へ送られる。各室への送風は冷蔵室ダンパ50,野菜室ダンパ51,冷凍室ダンパ52の開閉により制御される。なお以下では、冷蔵室ダンパ50が開状態、野菜室ダンパ51,冷凍室ダンパ52が閉状態で庫内ファン9稼働状態を、冷蔵室単独運転、野菜室ダンパ51が開状態、冷蔵室ダンパ51,冷凍室ダンパ52が閉状態で庫内ファン9稼働状態を、野菜室単独運転、冷蔵室ダンパ50,野菜室ダンパ51が開状態、冷凍室ダンパ52閉状態で庫内ファン9稼働状態を、冷蔵−野菜室運転と称する。
冷蔵室ダンパ50が開状態の時は、図3に示すように、冷却器7で熱交換された冷気は、庫内ファン9により昇圧され、冷蔵室ダクト11を経て多段に設けられた吹き出し口2cから冷蔵室2に送られる。冷蔵室2の冷却を終えた冷気は、冷蔵室戻りダクト16を介して冷却器収納室8に戻り、再び冷却器7に戻って冷却される。なお、冷蔵室戻りダクト16は冷却器収納室8の下部右側と繋がっており、この冷蔵室戻りダクト16と冷却器収納室8の境界を、以下、冷蔵室戻りダクト吐出口16aと称する。また、冷蔵室戻りダクト16において、下方向への流れを左方向に転向する手前の箇所(図9中の領域c)で風路面積を拡大している。
野菜室ダンパ51が開状態の時は、冷却器7で熱交換された冷気は、庫内ファン9により昇圧され、野菜室ダクト12を介して、野菜室6の背面右側上部に設けられた野菜室吹き出し口6cから野菜室6に流入して野菜室6を冷却する。野菜室6の冷却を終えた冷気は、冷凍室−野菜室断熱仕切壁29の下部左前方に設けられた野菜室戻り口6dから、野菜室戻りダクト18(図2参照)を介して、冷却器収納室8に戻り、再び冷却器7に戻って冷却される。なお野菜室戻りダクト18は、冷却器収納室8の下部左前方と繋がっており(図2,図3参照)、この野菜室戻りダクト18と冷却器収納室8の境界を、以下、野菜室戻りダクト吐出口18aと称する(図5参照)。なお、野菜室戻りダクト18は野菜室戻りダクト吐出口18aに向けて斜め下方に傾斜しており、斜め下方に冷気が吹き出すようにしてある(図5参照)。さらに野菜室戻りダクト18は、野菜室戻り冷気が、野菜室戻りダクト吐出口18aから除霜ヒータ22の中心よりも下方に向けて吹き出されるように構成されている。
また、野菜室ダクト12と冷蔵室戻りダクト16は、冷却器収納室8の側方で前後方向に平行に流れ、野菜室ダクト12が前面側、冷蔵室戻りダクト16が背面側として、冷蔵室戻りダクト吐出口16aを、冷却器収納室8側面の背面寄りに設けている(図8参照)。
また、冷凍室ダンパ52が開状態のときには、冷却器7で熱交換された冷気が庫内ファン9により昇圧され、冷凍室ダクト13を経て各吹き出し口3c,4c,5cからそれぞれ製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5へ送風される。そして、製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5を冷却した冷気は、冷凍室戻り口17から冷却器収納室8に戻り、再び冷器7へと流れる。なお、第一の実施形態の冷蔵庫1では、冷凍温度帯室60の吹き出し口3c〜5cは、計7個備えられているが、これに限定されず、適宜変更することができる。また、図10に示すように、冷却器収納室8の下部左端には、冷却器収納室8の左端壁面8aと、冷却器収納室8の背面8bと、冷却器収納室8と冷凍温度帯室60を隔てる壁8cとで囲まれた領域(以下、この領域を「緩衝領域」と称する)を設けている。
なお、冷却器7が収納された冷却器収納室8の下方には樋24があり、その樋24には除霜ヒータ支持部材21が設けられ、除霜ヒータ支持部材21上に除霜ヒータ22が設けられている。除霜ヒータ22は、例えば、ガラス管ヒータであり、ガラス管の外周にアルミニウム製の放熱フィン22aを備えたものである。また、除霜ヒータ22の上方には、除霜水が除霜ヒータ22に滴下することを防止するための除霜ヒータカバー23(図5等参照)が設けられている。第一の実施形態の冷蔵庫1の除霜ヒータ支持部材21の奥行寸法は5mm(図8の寸法e)となっており、冷蔵室戻りダクト吐出口16aの側方投影領域内に設けられているが、冷蔵室戻りダクト吐出口16aの奥行寸法(60mm。図8の寸法a)に比べて十分に小さく、冷蔵室戻り冷気には影響を及ぼさない。なお、第一の実施形態の冷蔵庫1の除霜ヒータ支持部材21と樋24は一体成型品となっている。
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜は、除霜運転時に除霜ヒータ22によって融かされ、その際に生じた除霜水は樋24に流入した後に、排水管27を介して機械室19に配置された蒸発皿20(図2参照)に達し、圧縮機25(図2参照)及び、機械室19内に配設される図示しない凝縮器の発熱により蒸発させられる。排水管27は、冷却器7の下部投影面内にある。なお、樋24と排水管27の境界を、以下、排水口27aと称する(図7参照)。
また、冷却器7の正面から見て左上部には冷却器7に取り付けられた冷却器温度センサ35、冷蔵室2には冷蔵室温度センサ33、下段冷凍室5には冷凍室温度センサ34がそれぞれ備えられており、それぞれ、冷却器7の温度(以下、「冷却器温度」と称する)、冷蔵室2の温度(以下、「冷蔵室温度」と称する)、下段冷凍室5の温度(以下、「冷凍室温度」と称する)を検知できるようになっている。更に、冷蔵庫1は、庫外の温度を検知する図示しない外気温度センサを備えている。なお、野菜室6にも野菜室温度センサ33aが配置されている。
ちなみに、第一の実施形態の冷蔵庫1では、イソブタンを冷媒として用い、冷媒封入量は約88gと少量にしている。
冷蔵庫1の天井壁上面側には、CPU,ROMやRAM等のメモリ,インターフェース回路等を搭載した制御基板31(制御手段)が配置されている(図2参照)。制御基板31は、前記した外気温度センサ(図示せず),冷却器温度センサ35(図2参照),冷蔵室温度センサ33(図2参照),野菜室温度センサ33a(図2参照),冷凍室温度センサ34(図2参照),各貯蔵室扉の開閉状態をそれぞれ検知する前記した扉センサ、冷蔵室2の内壁に設けられた図示しない温度設定器等と接続し、前記ROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機25のON/OFF等の制御,冷蔵室ダンパ50,野菜室ダンパ51、及び冷凍室ダンパ52を個別に駆動する図示省略のそれぞれのアクチュエータの制御、庫内ファン9のON/OFF制御や回転速度制御、前記した扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。
第一の実施形態の冷蔵庫1では、図6(b)に示す空気流制御部材100を、排水口27aの開口位置に設けている(図4,図7参照)。なお、この位置は、冷却器7の下方投影領域内であり、さらに、庫内ファン9の下方投影領域内でもある。
空気流制御部材100は、図6(a)に示すように、縦部材101と、横部材102と、縦部材101と横部材102を固定するための円盤部材103で構成されている。ちなみに、縦部材101,横部材102,円盤部材103はアルミニウム製である。なお、図6(b)中の矢印は空気流制御部材100を冷蔵庫1に実装した際の冷蔵室戻り冷気の流れ方向である。以下では、空気流制御部材100を構成する縦部材101のうち、横部材102よりも後側(背面側)を転向作用部101a、前側を圧力調整作用部101bと呼ぶことがある。また、横部材102のうち、冷蔵室戻り冷気流れ方向に対して上流側を上流側仕切部102a、下流側を下流側仕切部102bと呼ぶことがある(図6(b)参照)。
図8に示すとおり、縦部材101は冷蔵室戻り冷気の流れ方向(図8中の矢印方向)に対して略直角に配設されており、冷蔵室戻り冷気を転向させるようにしてある。縦部材101の長さ(図8の寸法b)は65mm、転向作用部101aの長さ(図8の寸法e)は38mm、圧力調整作用部101bの長さ(図8の寸法f)は26mmとなっている。また、冷却器収納室8の背面側と縦部材101間の距離(図8の寸法c)は5mm、冷却器収納室8の冷凍室側と縦部材101間の距離(図8の寸法d)は10mmとなるように構成されている。なお、第一の実施形態の冷蔵庫1の冷蔵室戻りダクト吐出口16aの奥行寸法(図8の寸法a)は60mmとなっている。
また、空気流制御部材100の下部は、図7に示すように全面が樋24(排水口27a)とは接することがなく、風行部材100の下部と樋24の間には5mmの隙間(図7の寸法a)を設けている。
また、冷蔵室戻り冷気は、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから冷却器収納室8の冷却器7の下部領域に流入するが、この下部領域には、冷蔵室戻りダクト吐出口16a近傍から空気流制御部材100に向かって、風路が漸次拡大される風路拡大領域24aが設けられている(図4,図9参照)。
以上、第一の実施形態に係る冷蔵庫1の構造を説明したが、以下に第一の実施形態に係る冷蔵庫1が奏する効果について説明する。
第一の実施形態の冷蔵庫では、冷凍室ダンパ52(送風制御ダンパ)を閉じた状態で庫内ファン9(送風機)を稼働させる運転モードを備え、冷蔵室戻り冷気を転向させる縦部材101を有する空気流制御部材100を、冷却器収納室8の下部の冷凍室戻り口17の開口範囲内に配設している。これによって低コストで、スペース効率の悪化を伴わずに、冷却効率を向上させた冷蔵庫となる。理由を以下で説明する。
まず、本発明が適用されていない比較例の冷蔵庫、即ち空気流制御部材100を設置していない冷蔵庫において、冷蔵室単独運転時に起こる現象を説明する(以下、図11及び図12参照)。
一般に、風路の入口と出口があった場合、風路の入口を閉鎖すれば、風路の出口から流れが流入することはない(質量保存則)。したがって、冷凍室ダンパ52によって冷凍温度帯室60内への風路の入口を閉鎖すれば、冷凍室戻り口17から冷蔵室戻り冷気は流入しないはずである。しかしながら、第一の実施形態の冷蔵庫のように、冷却器収納室8の側方から冷蔵室戻り冷気が流入して、冷却器収納室8の前方に冷凍室戻り口17が開口している場合には、以下で説明する現象によって、冷蔵室戻り冷気が、冷凍室戻り口17を介して冷凍温度帯室60に流入する。
冷蔵室単独運転時、冷蔵室戻り冷気は冷蔵室ダクト16から冷蔵室戻りダクト吐出口16aを介して、冷却器収納室8に流入する。このとき、冷蔵室戻りダクト16内においては下方に向かって戻り冷気が流れ、冷蔵室戻りダクト吐出口16aが左向きに開口しているので、冷蔵室戻りダクト吐出口16aにおける冷気流れは、主に左下方に向かって吐出される(図11中の矢印参照)。したがって、冷蔵室戻り冷気は、主に冷却器収納室8の下部を左方向へ流れる(図11中の矢印参照)。冷却器収納室8の下部を左方向へ流れた冷蔵室戻り冷気は、左端壁面8aに到達し、上方に転向される。このとき、流れが衝突するため左端壁面8a近傍の圧力(静圧)は上昇する。したがって、冷却器収納室8の下部領域では、左端壁面8a近傍に高圧力領域(図11,図12の領域b′)が形成され、冷蔵室戻りダクト吐出口16a近傍よりも、相対的に圧力が高くなる。
図12は、図11のF−F断面を表す図である。左端壁面8a近傍に高圧力領域(領域b′)が形成されるので、冷凍室戻り口17近傍の圧力場は、図12に示すように、相対的に左側が高圧、右側が低圧となる。したがって、下段冷凍室5の冷凍室戻り口17の左側近傍の空気は相対的に圧力が高いため、冷凍温度帯室60に流出し、相対的に圧力が低い冷凍室戻り口17の左側近傍に流入する、図12中に矢印で示すような循環流が形成される。この循環流によって、冷却器収納室8内の熱(冷蔵室戻り冷気の熱)が冷凍温度帯室60の内部に運ばれる。また、この循環流は、冷凍室戻り口左端から右端にわたって形成されるため、規模が大きく、冷却器収納室8内のより多くの熱が冷凍温度帯室60に流入する。
以上の現象によって冷蔵室単独運転時に冷凍温度帯室60に熱が流入するが、この熱は、本来、冷蔵室単独運転によって冷却されるべき熱である。冷蔵室単独運転では、冷蔵温度帯室を冷却できる程度の冷気温度を生成すればよいので、冷却器7の温度を比較的高温にできる。一般に、冷却器温度が高い(蒸発温度が高い)と冷凍サイクル成績係数は高くなるので、冷蔵室単独運転時の冷凍サイクル成績係数は高い(冷蔵−野菜室運転、野菜室単独運転も同様に冷凍サイクル成績係数は高い)。一方、上記の現象によって一度冷凍温度帯室60に流入してしまった熱を再び吸熱する(冷却する)ためには、冷凍温度帯室を冷却できる程度の低温冷気を生成して、冷凍温度帯室に送る必要がある。低温冷気生成のためには、冷却器7の温度を低温にする(例えば圧縮機を高回転とする)必要があるため、冷凍サイクル成績係数は低くなる。したがって、本来は冷蔵室単独運転で冷却できる熱が、冷凍温度帯室60に流入してしまうと、同じ熱量であっても、冷凍サイクル成績係数が低い状態で冷却することになってしまうので、冷却効率が低下する。
一方、第一の実施形態の冷蔵庫では、冷凍室ダンパ52(送風制御ダンパ)を閉じた状態で庫内ファン9(送風機)を稼働させる運転モードを備え、冷蔵室戻り冷気を転向させる縦部材101を有する空気流制御部材100を、冷却器収納室8の下部の冷凍室戻り口17の開口範囲内に配設している。これによって低コストで、スペース効率の悪化を伴わずに、冷却効率を向上させた冷蔵庫となる。その理由を、図9及び図10を参照しながら以下で説明する。
図9に示すとおり、冷蔵室単独運転時、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから冷却器収納室8に流入した冷気は、冷却器収納室8の下部を左方向に流れるが、空気流制御部材100に達すると、縦部材101によって主に上方に転向させられる(以下、この流れ場に及ぼす作用を「転向作用」と称する)。また、流れの転向に伴って、空気流制御部材100の上流側(図9,図10の領域a)の圧力は高くなり、空気流制御部材100の下流側は相対的に低圧となる(以下、この圧力場に及ぼす作用を「圧力調整作用」と称する)。これにより、高圧となる箇所が冷却器収納室8左端近傍の1箇所(図9,図10の領域b)から、左端と空気流制御部材100の上流側2箇所(図9,図10の領域aと領域b)となる(図9,図10参照)。したがって、図10に示すように冷凍温度帯室60に生じる循環流は分割されて小規模となり、冷凍室戻り口17のごく近傍のみに生じるようになる。したがって、冷凍温度帯室60への冷蔵室戻り冷気の流入量を十分小さくすることができ、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
また、第一の実施形態の冷蔵庫で採用している空気流制御部材100は小型のアルミニウム製の部品であるため、低コストであり、また、冷却器収納室8内に配設されるため、食品貯蔵スペースが減少することはない。
第一の実施形態の冷蔵庫では、空気流制御部材100を冷却器7の下方投影領域内に設置している。これにより冷却器7の着霜分布が改善され、冷却効率及び除霜効率が向上する。理由を、図9を参照しながら以下で説明する。
図9中に矢印で示すように、空気流制御部材100を設置しない場合、冷蔵室戻り冷気は、冷却器収納室8の下部を左方向へ流れ、上方に転向されて冷却器7に流入する。したがって、冷蔵室戻り冷気は、冷却器7の左側を主に通過する。このため、冷却器の右側が有効に利用できないので冷却効率が低くなる。また、一般に、比較的温度が高い冷蔵室戻り冷気は、多くの水分を含んでいる(絶対湿度が高い)ため、冷蔵室戻り冷気が流れやすい個所には霜が成長し易い。したがって、冷蔵室戻り冷気が冷却器7の左側に偏って流れる場合、霜も左側に偏って成長する。霜が偏って付着していると、その箇所は除霜時に解け難くなるため、除霜時間が長くなり、除霜効率が低くなる。
一方で、第一の実施形態の冷蔵庫では、空気流制御部材100を冷却器7の下方投影領域内に設置しているので、図9に示すように、空気流制御部材100によって上方に転向された流れが、冷却器7に流入するようになる。したがって、冷却器の利用できる面積が広がり、冷却効率が向上する。また、着霜の偏りも改善されるため、除霜効率が向上する。
また第一の実施形態の冷蔵庫では、除霜時に、冷凍室ダンパ52を閉じ、冷蔵室ダンパ50を開いた状態で庫内ファン9と除霜ヒータ22を稼働させる、ファン稼働除霜を実施する。このファン稼働除霜時の流れ場は冷蔵室単独運転とほぼ同じであり、冷蔵室戻り冷気が流れる箇所の除霜が促進される。よって、冷蔵室戻り冷気が冷却器7内を偏って流れることを解消することで、ファン稼働除霜時において、冷蔵室戻り冷気が流れ難い個所を減らすことができるので、冷却器7の全体を除霜し易くなる。したがって、空気流制御部材100を冷却器7の下方投影領域内に設置することは、ファン稼働除霜の除霜効率向上に有効となる。
第一の実施形態の冷蔵庫の空気流制御部材100は、流れを転向させる縦部材101と、縦部材の上流の領域を前後に分割する、横部材102を備えている。これにより、転向作用による着霜分布改善効果と、圧力調整作用による冷凍室への熱影響低減効果をともに高めることができる。理由を以下で説明する。
上述のとおり、空気流制御部材100は、流れ場,圧力場に対して、転向作用と圧力調整作用を及ぼす。縦部材101の転向作用によって冷蔵室戻り冷気の流れを十分上方に転向した場合、空気流制御部材100周辺から冷却器7に向かう流れによって、冷却器7の右側の有効利用と、着霜の偏りを減らすことに有効となる(図9参照)、一方で、流れを十分上方に転向させると、縦部材101の右側(図10中の領域a)の圧力が過剰に上昇して、図10中の領域bの圧力より高くなってしまい、領域aから領域b近傍に向かう流れが新たに形成されて、縦部材101の圧力調整作用による冷凍温度帯室60への冷蔵室戻り冷気の流入抑制効果が減少する。第一の実施形態の冷蔵庫の空気流制御部材100は、縦部材101で、流れを十分上方に転向するが、この時の特に背面側の圧力上昇の影響が、冷凍室戻り口17近傍に影響し難いように、横部材102で圧力場を分断している。したがって、冷凍室戻り口17近傍の圧力は、横部材102より前面側の圧力調整作用部101aの寸法によって調節でき(第一の実施形態の冷蔵庫では圧力調整作用部101bの長さ(図8の寸法f)を26mmに調節している)、転向作用による着霜分布改善効果と、圧力調整作用による冷凍室への熱影響低減効果をともに高めることができる。したがって、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
第一の実施形態では、空気流制御部材100を庫内ファン9の下方投影領域内に設置している。これにより空気流制御部材100で昇圧された冷蔵室戻り冷気がスムーズに冷却器7−庫内ファン9に流れ、風路抵抗が少ない流れ場とすることができる。
また、空気流制御部材100の奥行寸法(図8の寸法b)を、冷蔵室戻りダクト吐出口の奥行寸法(図8の寸法a)より大きくしている。これにより、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから、流入する流れに対して空気流制御部材100を確実に作用させることができる。
第一の実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから冷却器収納室8の冷却器7の下方の領域に冷蔵室戻り冷気が流入するが、この下部領域には、冷蔵室戻りダクト吐出口16a近傍から空気流制御部材100に向かって、風路が漸次拡大する風路拡大領域24aが設けられている。一般に、流速が高い流れを転向させると、風路抵抗が大きくなるが、第一の実施形態の冷蔵庫では、風路拡大領域24aによって、冷蔵室戻り冷気の流れを減速させてから、空気流制御部材100によって転向させるので、転向に伴う風路抵抗の上昇が小さく、風量の減少を抑えることができる。
なお、本実施形態の冷蔵庫における風路拡大領域24aは、高さ方向に風路を拡大しているが、例えば、奥行方向に風路を拡大するようにしてもよい。
第一の実施形態の冷蔵庫では、空気流制御部材100を、冷却器収納室8の下部に備えられた樋24の最深部に配設している。これにより空気流制御部材100の高さ寸法を十分確保することができるため、冷蔵室戻りダクト吐出口16a流れに対して十分作用させることができる。
また、冷却器収納室8の下部には樋24が備えられ、前記空気流制御部材100と、前記樋24の表面間に5mmの隙間(図7の寸法a)を設けている。これにより、除霜水が滞留することがなくなり、滞留した水が凍結することで、除霜水が良好に排水されなくなるといった事態が生じにくい、信頼性の高い冷蔵庫となる。
また、樋24には排水口27aが備えられ、排水口27aの開口位置に、空気流制御部材100を配設している。排水口27aは、排水管27を介して、機械室19と連通しており、庫内ファンの稼働によって、排水口27aから庫外の暖気が流入することがある。第一の実施形態の冷蔵庫では、排水口27aの開口位置に空気流制御部材100を配設することで、庫外から暖気が流入し難くしている(抵抗体として作用させている)。したがって、暖気の流入による熱負荷の増加を抑えられるので、省エネ性が高い冷蔵庫となる。
また、冷蔵室戻りダクト吐出口16aを、冷却器収納室8側面の背面寄りに設けている。これにより、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから流入する冷蔵室戻り冷気の主流は、冷却器収納室内の背面側を流れるようになる(図8参照)。したがって、冷蔵室戻り冷気の主流と、冷凍室戻り口17の間の距離が十分確保されるため、冷蔵室戻り冷気が、冷凍室戻り口17を介して、冷凍温度帯室60に熱影響を与えることを抑制できる。
第一の実施形態の冷蔵庫の空気流制御部材100は、図8の寸法dよりも図8の寸法cが小さくなるように構成されている。寸法cを小さくすることで冷却器収納室8内の背面側を流れる冷蔵室戻り冷気に対して、空気流制御部材100を十分作用させることができる。一方、寸法dを小さくすると、冷却器収納室8内の前面側を流れる冷蔵室戻り冷気に対して空気流制御部材100が十分作用するようになるが、冷凍室戻り口17近傍で圧力が大きく上昇するため、圧力調整作用による冷凍温度帯室60への冷蔵室戻り冷気の流入抑制効果が減少する。したがって、寸法dよりも寸法cが小さくなるように構成することが望ましい。
第一の実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室戻りダクト16において下方向への流れを左方向に転向する手前の箇所(図9中の領域c)において、風路面積を拡大している。これにより流速を下げることができ、冷蔵室戻り冷気の転向に伴う縮流(加速流)を軽減でき、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから空気流制御部材100に向かう流れの流速を下げることができる。これにより空気流制御部材100での転向に伴う抵抗が軽減され、風量の減少を抑えることができる。
第一の実施形態の冷蔵庫では、空気流制御部材100の後縁100aは除霜ヒータカバー23の後縁23aよりも背面側にある(図7参照)。これにより、除霜ヒータカバー22によって、空気流制御部材100の転向作用が阻害され難くなるので、確実に空気流制御部材100の転向作用による効果が得られる。
第一の実施形態の冷蔵庫では、冷却器収納室8の下部左端には、冷却器収納室8の左端壁面8aと、冷却器収納室8の背面8bと、冷却器収納室8と冷凍温度帯室60を隔てる壁8cとで囲まれた緩衝領域を設けている(図10参照)。
冷却器収納室8の左端壁面8aでは冷気が上方に転向されるため、左端壁面8aの近傍は圧力が高くなる(領域b(図10参照))。したがって、左端壁面8a近傍の高い圧力の影響が直接前方の冷凍温度帯室60に及ばないように、冷却器収納室8と冷凍温度帯室60を隔てる壁8cを設けることで、緩衝領域8bを確保している。これにより、冷凍温度帯室60への冷蔵室戻り冷気の流入量を小さくすることができ、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
また、野菜室戻りダクト18を、野菜室戻りダクト吐出口18aに向けて斜め下方に傾斜(図5参照)させている。これにより、冷蔵−野菜室運転中、及び野菜室単独運転中に、野菜室戻り冷気が、冷凍室戻り口17を介して、冷凍温度帯室60に熱影響を与えることを抑制でき、冷却効率が高い冷蔵庫となる。理由を、図14を参照しながら説明する。
はじめに、本発明が適用されていない冷蔵庫として、野菜室戻り冷気が、野菜室戻りダクト吐出口18aから斜め上方に向けて吹き出されるように野菜室戻りダクト18を構成している場合について、図13を参照しながら、冷蔵−野菜室運転時に起こる現象を説明する。なお本実施形態の冷蔵庫1で冷蔵−野菜室運転を実施した場合、冷蔵室循環冷気風量は0.13m3/min、野菜室循環冷気風量は0.02m3/minとなり、冷蔵室戻り冷気風量に比べ、野菜室戻り冷気風量は少ない。したがって、冷蔵−野菜室運転中の冷却器収納室内の流れは、風量が多い冷蔵室戻り冷気によって基本的な流れ場が形成され、その流れ場に野菜室戻り冷気の流入が加わることになる(冷蔵室戻り冷気の流れ方は図9,図10と類似)。
図13は、野菜室戻り冷気が、野菜室戻りダクト吐出口18aから斜め上方に向けて吹き出されるように野菜室戻りダクト18を構成した場合の冷蔵室−野菜室運転中の、野菜室戻り冷気の流れを表す図である(冷蔵室戻り冷気の流れは省略)。図13に示すように、野菜室戻り冷気の主流(図13中の太矢印)は、斜め上方に向けて吹き出され、冷凍室戻り口17近傍を流れるが、図9,図10に示す高圧となる領域bの影響で、容易に冷凍温度帯室60に押し出される。
一方、図14は、第一の実施形態の冷蔵庫の野菜室戻りダクト吐出口18aの周辺の構造と野菜室戻り冷気の流れを表す図である(冷蔵室戻り冷気の流れは省略)。図14に示すように、第一の実施形態の冷蔵庫では、野菜室戻り冷気が、野菜室戻りダクト吐出口18aから斜め下方に向けて吹き出すように、野菜室戻りダクト18を構成しているので、野菜室戻り冷気の主流(図14中の太矢印)は、冷却器収納室8の下部を通り、冷却器収納室8の背面側に向かう。したがって、野菜室戻り冷気が容易に冷凍温度帯室60に押し出されて、冷凍温度帯室60を暖めることがなくなるため、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
また、図15は、図13に示す構成の冷蔵庫で、野菜室単独運転を実施した場合の野菜室戻り冷気の流れを表す図である。図15に示すように、野菜室戻り冷気の主流が、斜め上方に向けて吹き出すようにすると、除霜ヒータ22の前方を通る主流の影響で、野菜室戻りダクト吐出口18aの上部の冷凍室戻り口17の近傍に図15中に示すような渦が発生する。この渦が野菜室戻り冷気の主流の近傍から、冷凍室戻り口17の開口近傍に、熱を輸送するので、冷凍温度帯室60の温度が上昇する。一方、第一の実施形態の冷蔵庫では図14に示すように、野菜室戻り冷気が、野菜室戻りダクト吐出口18aから斜め下方に向けて吹き出すように野菜室戻りダクト18を構成しているので、野菜室戻り冷気の主流と冷凍室戻り口17の間の距離が大きく確保され、冷凍室戻り口17近傍に渦が生じ難く(発生しても弱く)なる。したがって、野菜室戻り冷気が、冷凍室戻り口17を介して、冷凍温度帯室60に熱影響を与えることを抑制でき、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
また、第一の実施形態の冷蔵庫では、野菜室戻り冷気が、野菜室戻りダクト吐出口18aから除霜ヒータ22の中心よりも下方に向けて吹き出されるように野菜室戻りダクト18を構成している(図14参照)。これにより、斜め下方に向けて吹き出された野菜室戻り冷気が、除霜ヒータに衝突して、その一部が上方(冷凍室戻り口17に近づく方向)に転向されることを抑えることができる。よって、野菜室戻り冷気が冷凍温度帯室60を暖めることを抑制でき、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
なお本実施形態の空気流制御部材100では、空気流制御部材100を空気流制御部材101と横部材102を組み合わせた十字型の部材として、縦部材101は冷蔵室戻り冷気の流れ方向に略直角となるように設置しているが、空気流制御部材100の形態は、この形態に限定されるものではなく、例えば、図20に示すような様々な変形例が考えられる。
図20は空気流制御部材を上方から見た図である(図中の太矢印は冷蔵室戻り冷気流れの流れ方向)。図20中に示す(a)のように、空気流制御部材100は、縦部材101を冷蔵室戻り冷気の転向作用が得られる範囲であれば、冷蔵室戻り冷気流れ方向に対して斜めに設置しても構わない。図20(a)のようにすることで、冷蔵室戻り冷気を、より冷却器7の背面側に流入させるようにできる。また、図20の(b)のようにT字型のものでも構わない。これは、図6(b)に示す空気流制御部材の横部材102の一部(下流側仕切部102b)を省略したものであるが、基本的に横部材102は縦部材101の上流側に生じる高圧領域を分割するために配置するものなので、縦部材101の下流側は省略しても構わない。図6(b)に示す形態を採用すれば十字型とする場合に対してコストを低減できる。また、冷気の転向作用が得られる範囲であれば図6(c)に示すように縦部材101を傾斜させて、風路抵抗を小さくするように調整してもよい。圧量調整作用が小さくて良い場合には、図6(d)に示すL字型としてもよい。さらに、コストが重要となる場合は、転向作用と圧力調整作用のバランスを調整する難易度が高くなるが図6(e)に示すように、縦部材101のみとしても良い。
(第2実施形態)
本発明に係る冷蔵庫の第二の実施形態を、図13及び図14を参照しながら説明する。図13は冷却器からの除霜水を受ける樋の構成を示す図4のF−F断面図、図14は除霜ヒータ右側支持部材と周りの部品との関係を示す除霜ヒータ右側支持部材周辺の拡大図(図13のG−G断面図)である。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。以下では、右側の除霜ヒータ支持部材21を、特に、除霜ヒータ右側支持部材21aと称する。
第二の実施形態の除霜ヒータ右側支持部材21aは、第一の実施形態の除霜ヒータ支持部材21よりも奥行寸法が長く、第二の実施形態の冷蔵庫1の除霜ヒータ右側支持部材21aの奥行寸法は40mm(図13の寸法e)となっており、冷蔵室戻りダクト吐出口16aの側方投影領域内に設けられている。なお、第二の実施形態の冷蔵庫1の除霜ヒータ支持部材21(除霜ヒータ右側支持部材21a含む)と樋24は一体成型品となっている。また、除霜ヒータ右側支持部材21aは、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから、空気流制御部材100に至る間の風路拡大領域24aに設けられている。
また、第二の実施形態の冷蔵庫1では、除霜ヒータ右側支持部材21aと冷却器収納室8前面側壁面の間の距離(本実施形態では10mm:図13の寸法g)は、除霜ヒータ右側支持部材21aと冷却器収納室8背面側壁面の間の距離(本実施形態では30mm:図13の寸法f)よりも短くなっている(図13,図14参照)。
また、図14に示すように、除霜ヒータ右側支持部材21aと樋24間に高さ方向に5mm(図14の寸法a)の隙間を持つ排水空間21b(図14参照)を設けてある。
なお第二の実施形態の冷蔵庫1の縦部材101の長さ(空気流制御部材100の奥行寸法:図16の寸法b)は、60mmとなっており、冷却器収納室8の背面側と空気流制御奥行部材101間の距離(図16の寸法c)は5mm、冷却器収納室8の冷凍室側と空気流制御奥行部材101間の距離(図16の寸法d)は15mmとなるように構成されている。
以上、第二の実施形態に係る冷蔵庫1の構造を説明したが、以下に第二の実施形態に係る冷蔵庫1が奏する効果について説明する。
第二の実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから、空気流制御部材100に至る間に、冷蔵室戻り冷気を背面側に誘導するための第二の空気流制御部材(ヒータ支持部材21a)を備えている。これにより、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから流入する冷蔵室戻り冷気の主流は、冷却器収納室内の背面側を流れるようになる(図13参照)。したがって、冷蔵室戻り冷気の主流と、冷凍室戻り口17の間の距離が十分確保されるので、冷蔵室戻り冷気が、冷凍室戻り口17を介して、冷凍温度帯室60に熱影響を与えることを抑制でき、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
第二の実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室戻り冷気を背面側に誘導するための部材(除霜ヒータ右側支持部材21a)は、前面側の隙間寸法(図13の寸法g)より、背面側の隙間寸法(図13の寸法f)が大きくなるようにしている。これにより、確実に、冷蔵室戻り冷気を背面側に誘導できる。
第二の実施形態の冷蔵庫では、空気流制御部材100の奥行寸法(図13の寸法b)を、冷却器収納室8の背面から、除霜ヒータ右側支持部材21aに至る寸法(図13の寸法f)より大きくしている。これにより、冷却器収納室8の背面側に誘導された冷蔵室戻り冷気を、空気流制御部材100で確実に上方に転向させることができる。
第二の実施形態の冷蔵庫では、冷蔵室戻りダクト吐出口16aから、空気流制御部材100に至る間に、冷蔵室戻り冷気を背面側に誘導するための部材として、ヒータ支持部材21を用いている。これにより、除霜ヒータ22の支持と、冷蔵室戻り冷気を背面側に誘導するという二つの機能を、共通の部材で実現でき、さらに本実施形態の冷蔵庫1では除霜ヒータ右側支持部材21aは樋24と一体成型品のため、低コストとなる。
第二の実施形態の冷蔵庫では、除霜ヒータ右側支持部材21aと、樋24間に5mmの隙間を持つ排水空間21bを設けている。これにより、除霜水が滞留することがなくなり、滞留した水が凍結することで、除霜水が良好に排水されなくなるといった事態が生じにくい信頼性の高い冷蔵庫となる。
なお本実施形態では、除霜ヒータ右側支持部材21aの奥行寸法(図13の寸法e)で、除霜ヒータ右側支持部材21aと冷却器収納室8前面側壁面の間の距離(図13の寸法g)は、除霜ヒータ右側支持部材21aと冷却器収納室8背面側壁面の間の距離(図13の寸法f)よりも短くしたが、例えば、冷却器収納室8前面側壁面に突出部を設けて、図13の寸法gを小さくし、図13の寸法fよりも短くすることでも同様の効果を得られる。
(第3実施形態)
本発明に係る冷蔵庫の第3の実施形態を、図15を参照しながら説明する。なお、以下で説明する構成以外は、第一の実施形態の冷蔵庫1と同一であるため、説明を省略する。また、図15において、第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図15は、野菜室冷気戻りダクト吐出口周辺の拡大図(図1中のC−C断面)である。図15に示すように、第3の実施形態の冷蔵庫では、前側に延伸した除霜ヒータカバー23′が除霜ヒータ22の上部に備えられている。これにより、除霜ヒータカバー23′の前側の風路寸法W1(本実施形態ではW1=10mm。図15の寸法a)より、除霜ヒータカバー23′の後側の風路寸法W2(本実施形態ではW2=20mm:図18の寸法b)の方が大きくなっている。
以上の第三の実施形態の冷蔵庫では、除霜ヒータカバー23の前側の風路寸法W1(図15の寸法a)より、除霜ヒータカバー23の後側の風路寸法W2(図15の寸法b)の方が大きくなるようにしているので、野菜室戻り冷気は、より抵抗の少ない冷却器収納室8の背面側を流れるようになる。したがって、野菜室戻り冷気が冷凍室戻り口17を介して、冷凍温度帯室60に熱影響を与えることを抑制でき、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
(第4実施形態)
本発明に係る冷蔵庫の第4の実施形態を、図16を参照しながら説明する。なお、以下で説明する構成以外は、第一の実施形態の冷蔵庫1と同一であるため、説明を省略する。また、図16において、第1実施形態と同一の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
図16は、野菜室冷気戻りダクト吐出口周辺の拡大図(図1中のC−C断面)である。図16に示すように、第4の実施形態の冷蔵庫では、冷凍室戻り冷気流入領域17aと野菜室戻り冷気流入領域18bが、仕切部材110によって分離されている。
したがって、第4の実施形態の冷蔵庫では、野菜室戻り冷気が、野菜室戻り冷気流入領域18bから冷凍室戻り冷気流入領域17aに流入し難いので、野菜室戻り冷気が冷凍室戻り口17を介して、冷凍温度帯室60に熱影響を与えることを抑制でき、冷却効率が高い冷蔵庫となる。
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。