JP5484381B2 - 示温性材料 - Google Patents
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Description
この示温性材料やそれを用いたインジケータは、色相の変化を観察することで簡便に温度を知ることができる。特に、温度によって可逆的色相が変化するインジケータは、簡単に表面温度を知ることができるため、温度管理を行う機械設備、器具や商品、火傷を防止する器具や道具に貼り付けられて使用されている。
そこで、可逆的な示温性材料の検討が行われ、水銀含有ハロゲン化錯体化合物が開発された。しかし、この化合物は水銀を含んでおり、人体への安全性及び環境への配慮の観点から非水銀系の材料が望まれた。
また、最近では特許文献6にアルキルアンモニウム塩化合物由来の両親媒性カチオンと、金属錯体化合物とのラメラ状態の混合物からなる示温性材料が提案されてきている。
非特許文献1、2では、発光波長390〜405nmにおける発光効率が高い青緑蛍光体として、Ba2SiS4が報告され、その発光特性が開示されている。また、非特許文献3では、ユーロピウム添加アルカリ土類金属硫化物−SiS2系が報告され、ユーロピウム添加SrSi2S5は青く発光することが示されている。
一方、非特許文献3では、SrSi2S5:Eu3+の発光特性が述べられている。しかしながら、Ba2SiS4:Eu2+は紫外線で励起可能の青色であり、可視光で励起できない。SrSi2S5:Eu3+は可視光でも励起できるが、黄緑色の発光であった。
特許文献8には、Ba2SiS4:Ce3+のEL特性に関する記載はあるが他の特性の記載は無い。
さらに、赤色の蛍光体では、温度依存性が大きいものは知られていなかった。
また、本発明に係る第2の示温性材料は、温度によって蛍光輝度が変化する蛍光輝度の温度依存性を有する可視光応答型蛍光体と、透明な樹脂との混練体であることを特徴とする示温性材料である。
本発明者らは、温度によって蛍光輝度が変わる可視光応答型蛍光体として鋭意検討した結果、一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3で表され、かつ0.3>x>0.015、0.2>y>0.005である蛍光体が有用であることを見出した。
この蛍光体は、図2−bに示すように近紫外(300nm)から可視光(450nm)で励起可能であり、赤色の蛍光を発光し、且つ図2−c、図2−dに示すように発光する蛍光強度が、常温(25℃)のときの蛍光強度を100とした場合、50℃で約47%、75℃で22%、100℃で10%、150℃では5%未満に低下し、その色相が赤色から白色に変化するものである。
したがって、この蛍光体を印刷可能な透明な樹脂材料と組み合わせる、例えば混合、練込み後に、温度測定対象物に塗布することにより、可逆的な示温性材料として使用することができることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
本発明に係る示温性材料料を構成する蛍光体は、以下の工程により製造する。
なお、説明は一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3で表される蛍光体について行っているが、Srを含まない一般式(Ca1−xEuy)SiS3で表される蛍光体についても、Srが関わる部分を除いて同様の説明によって製造することができる。
第1工程は、図1−aに示すEuが均一に分散したEu添加(Ca、Sr)CO3を錯体重合法により作製する工程である。
まず、初めに酢酸ストロンチウム、酢酸カルシウムおよび酢酸ユーロピウムを、水に溶解する。それらの溶解液、それぞれを所定の組成式の成分比となるように混合し、室温で攪拌後、クエン酸を加えて、50℃から80℃の温度範囲で30分から1時間攪拌して錯化し、その後プロピレングリコールを加えて、80℃から150℃の温度範囲で5時間から12時間攪拌してエステル化を行い、有機物前駆体を得る。その得られた有機物前駆体を450℃で酸化分解し、その後750℃から950℃で焼成して、Euが均一に分散したEu添加(Ca、Sr)CO3を作製する。
出発原料としてのユーロピウム原料は、炭酸塩や硝酸塩を使用しても良い。また、ストロンチウム源としては硝酸塩や炭酸ストロンチウムをクエン酸、リンゴ酸や酒石酸等に溶解したものを用いても良い。
次の第2工程は、第1の工程で作製したEuが均一に分散したEu添加(Ca、Sr)CO3を、H2Sを10%含む不活性ガス中でガス還元硫化してEuが均一に分散したEu添加(Ca、Sr)Sを作製する。
その条件として、ガス還元硫化温度は900から975℃の範囲が好ましく、特に950℃が好ましく、硫化時間は2時間から10時間が好ましい。H2Sを含んだガスの濃度は1%から50%の範囲で硫化することができる。しかし、50%を超えるH2S濃度では配管やガスパッキンの劣化原因になるため、取り扱いにくく、また1%未満では硫化に必要とするH2Sを流すために大流量とすることが必要であったり、あるいは長時間処理が必要になったりするので好ましくない。
そこで、硫化の効率の点からは、反応条件により適宜変わるが、概ね、必要とされる硫黄量の1.5倍から6倍モル、より好ましくは3倍から5倍モルのH2Sガスを流すことが実用面で好ましい。
すなわち、15℃未満では不活性ガスに含まれる二硫化炭素の濃度が低くなり、還元硫化が進まないため好ましくなく、46℃以上では二硫化炭素の沸点以上となって蒸発量の制御が難しく、均一な還元硫化が難しくなるため好ましくない。
この不活性ガス中に二硫化炭素(CS2)を含ませる方法としては、不活性ガスを液体の二硫化炭素中に通す方法が好適に利用できる。
第2工程により得られたEu添加(Ca、Sr)Sに、Si粉末と硫黄を加えて混合し、その後、圧縮成型してペレットを作製する。加えるSi粉末と硫黄のモル比は1:2として、0.2から0.5MPaの圧力で圧縮成型行うと良い。
続いて、ペレットをアンプルに入れて油回転型真空ポンプでアンプル内を真空に引き、酸素−水素バーナーで加熱して真空封入する。真空度は、1から10Pa程度とする。
アンプルの破裂による危険防止のため、このアンプルを金属パイプに入れてボックス炉で焼成する。その焼成条件は、図1−bに示すように室温から400℃、400℃から反応温度、反応温度で長時間焼成、炉で冷却の4段階で焼成を行う。
このように4段階の工程を踏まえる理由は、蒸気圧の高い硫黄を含むために、室温から硫黄が蒸発するまで(約400℃まで)は、ゆっくり温度を上昇させる(約2時間が好ましい)。
反応温度は750℃から900℃未満の範囲とすることが必要である。750℃以下では、反応温度が足りず一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3で表され、かつ0.3>x>0.015、0.2>y>0.005、x−y>0の蛍光体が得られない。また900℃を以上では、Ca2SiS4が形成してしまう。
さらに反応温度は、800℃〜875℃の範囲が好ましく、図2−a、図3に示すように、反応温度が800℃と850℃であれば、一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3で表され、かつ0.3>x>0.015、0.2>y>0.005、x−y>0の単相のみが得られる。
なお、Siの原料としては金属シリコーンを用いることが好ましく、図7の比較例4で示されるように、SiS2を用いた場合には既知のCa2SiS4が生成した。これはSiとSを混ぜた方がSiの拡散が容易になるためと思われる。
図4−aの実施例3に示されるように、CaとSrの比を変えて850℃で焼成した蛍光体のXRD回折結果からは、その組成比、Srが0%や1%では既知のCa2SiS4が主となるXRDパタンーンとなっている。Srが3%から10%では既知のCa2SiS4や原料とは異なる相が単相として存在している。このXRD回折結果が本発明の(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3結晶相を示している。
図8の「比較例参照」に示されるように、「CS2」を用いるとCa2SiS4が生成し、「H2S」では原料のCaSとSiのピークとなり、本発明の結晶相は得られなかった。
また、上記の第1工程から第3工程により得られた本発明のEuが均一に分散した一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3で表され、かつ0.3>x>0.015、0.2>y>0.005、x−y>0である蛍光体粉末について、蛍光特性を測定して、以下の知見を得た。
さらに、この励起発光特性は、図4−cに示すようにCaとSrの比を変えて800℃で焼成した結果からは、Srが25%(X=0.25)の本発明の結晶相からの発光は、50%(X=0.5)や100%(X=1)のSrSi2S5の発光と発光波長が大きく異なる。またSrが0%のCa2SiS4:Euの発光とも発光スペクトルが大きく異なるものである。
さらに、図9に示すように原料であるSrS:Euとは励起波長が異なり、CaS:Euとは発光波長が大きく異なる。
実施例1に係る試料の温度消光を示す図2−cからは、室温(25℃)から温度を上げると発光の形状やピーク波長は変わらずにピーク強度が低下することが分かる。
また室温(25℃)時の蛍光強度を100とした場合、50℃で約47%、75℃で22%、100℃で10%、150℃では5%未満と低下していることが分かる。なお、200℃ではほとんど発光が見られない。
さらに、図2−dに示すように、強度の低下が大きく150℃までの温度変化で蛍光が大きく変化することがわかり、示温性材料として適した温度特性を示している。
蛍光体粒子の粒径は、0.1〜30μmが好ましく、0.5〜10μmが更に好ましい。粒径が0.1μm未満では、その粒径が小さいことにより流動性や、分散性が悪いため、透明な樹脂と均一に混合することは難しい。30μmを超える粒径では樹脂に混ぜたときに沈降して樹脂と均一に混合しないため好ましくない。また塗布後に凹凸が大きく表面の平坦性がなくなり、発光が不均一となるため好ましくない。
また、エポキシ樹脂には、LEDなどで使われている(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式エポキシ樹脂などが好適である。
このインク組成物は、蛍光体に、インキ用樹脂とインキ用溶媒とからなるビヒクルや、添加剤を添加して調製したものである。ビヒクルや添加剤の構成成分やその量は、印刷方法や、インキ組成物の物性を考慮して、適宜調整して使用することができる。
本発明の示温性材料に添加物として、温度に応じた示温性材料の色調の変化を際立たせたり、目視し易い色調に整えたりする調整顔料等を適宜添加しても良い。
[第1工程]
第1工程では、錯体重合法によるEuが均一に分散したEu添加(Ca、Sr)CO3を作製する。
酢酸カルシウム(和光純薬株式会社製)と酢酸ストロンチウム0.5水和物(和光純薬株式会社製)を純水に溶解して其々1モル/Lの溶液と酢酸ユーロピウム(和光純薬株式会社製)を純水に溶解して0.2モル/Lの溶液を作製した。これら溶液をCa:Sr:Euのモル比が90:9:1になるように混合して原料溶液とした。溶液をホットプレート上80℃に加熱しクエン酸(和光純薬株式会社製 98%)を30.7g加え1時間攪拌して錯化した。さらにプロピレングリコール(関東化学株式会社製 99.5%)を12.2g加え、120℃で3時間攪拌して脱水縮合を行った。
第2工程では、ガス還元硫化法によるEuが均一に分散したEu添加(Ca、Sr)Sを作製する。
第1工程で得たEuが均一に分散したEu添加(Ca、Sr)CO3である焼成物をアルミナのボートに入れて管状炉に装入し、H2Sを10%含むArガス中で還元硫化した。ガス還元硫化条件は、温度950℃で5時間行い、ガス還元硫化中H2Sの使用量は金属成分の合計モル数の5倍モルになるように調整した。
第3工程では、真空アンプル法で一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3で表され、かつ0.3>x>0.015、0.2>y>0.005である蛍光体を作製する。
第2工程で得たEu添加(Ca、Sr)S粉末0.0799gと市販のSi粉末0.0371gと硫黄粉末0.0847gをメノウ乳鉢で20分混合した混合物を、ハンドプレスを用いて2MPaまで加圧し、φ12mmの成型体(ペレット)を作製した。
その成型体を石英アンプルに真空封入し、この石英アンプルを金属製パイプに入れて図1−bに示す熱処理条件で900℃、850℃、800℃まで加熱し24時間保温して熱処理を行い、3種類の試料を作製した。
すなわち、Ca:Sr:Euのモル比を1−A:0:Aとして、Aの値を0、0.01、0.03、0.05、0.08、0.10とし、第3工程の真空アンプルの熱処理温度だけを、850℃固定した以外は、実施例1と同じ条件で試料を作製して、そのXRDを測定した。
その測定結果を図5−aに示し、蛍光測定結果を図5−bに示す。
A=0と0.01の試料は発光しなかった。またEu濃度が高くなると発光ピークが618nm(A=0.03)から626nm(A=0.10)まで長波長側に移動していた。さらに、Srを含まない場合では、Euの量は0.01より多い量が必要であることがわかる。
Ca:Sr:Euのモル比を0.90:0.1−A:A(x=0.01、y=A)として、Aの値を0.005(0.5%)、0.01(1%)、0.03(3%)、0.05(5%)、0.08(8%)、0.10(10%)とし、第3工程の真空アンプルの熱処理温度だけを、850℃固定した以外は、実施例1と同じ条件で試料を作製した。
その蛍光測定結果を図6に示す。Aが0.005と0.01は発光が2つのピークを持つ。またEu濃度が高くなると発光ピークが621nm(A=0.03)から626nm(A=0.10)まで長波長側に移動した。
Euが均一に分散した(Ca、Sr)S:Euの代わりにCaS:EuとSrS:Euの混合物とし、第3工程の真空アンプルの熱処理温度だけを、850℃固定した以外は、実施例1と同じ条件で試料を作製して、そのXRDを測定した。
その測定結果を図7(実施例6)に示す。蛍光測定結果は実施例1の結果と同じであった。
第3工程の真空アンプルの熱処理に代えてCS2−Arで850℃2時間硫化した以外は、実施例1と同じ条件で試料を作製し、そのXRDを測定した。
その測定結果を図8(比較例1)に示す。Ca2SiS4のピークで本発明の結晶相は得られなかった。
第3工程の真空アンプルの熱処理に代えてCS2−Arで850℃5時間硫化した以外は、実施例1と同じ条件で試料を作製して、そのXRDを測定した。
その測定結果を図8(比較例2)に示す。Ca2SiS4のピークで本発明の結晶相は得られなかった。
第3工程の真空アンプルの熱処理に代えてH2S(10%)−Arで850℃5時間硫化した以外は、実施例1と同じ条件で試料を作製して、そのXRDを測定した。
その測定結果を図8(比較例3)に示す。原料のピークのみで本発明の結晶相は得られなかった。
第3工程でSiとSの代わりにSiS2とし、850℃にした以外は、実施例1と同じ条件で試料を作製して、そのXRDを測定した。
その測定結果を図7(比較例4)に示す。Ca2SiS4のピークが主で本発明の結晶相は得られなかった。
上記手順により作製された(Ca0.9Sr0.09Eu0.01)SiS3蛍光体を120℃の真空乾燥機にて1時間処理し、混錬機(「泡取り錬太郎」;株式会社シンキー製AR−250)を用いて熱硬化性を有すると共に、常温で流動性を有する透明な樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:JCR6175)50重量部に、この蛍光体50重量部加え、攪拌4分、脱泡2.5分を行って、塗布用樹脂Aを得た。
次に塗布用樹脂BをAl基板に塗布し、熱風乾燥機で150℃の温度で16時間加熱して硬化接着させた。
効果を確認するため、本発明の示温性材料を含んだ樹脂を塗布したAl基板を加熱し、色の変化を見たところ、発光波長375nmの近紫外LED(ナイトライド・セミコンダクター株式会社製:NS375L‐ERLM)を照射すると温度が低い状態では赤であるが、温度上昇と共に白くなり150℃以上で白となることを確認した。また温度が低下すると元の色に戻り、繰り返し使用できることも確認した。
Claims (7)
- 温度によって蛍光輝度が変化する蛍光輝度の温度依存性を有する可視光応答型の一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3蛍光体(但し、0.3>x>0.015、0.2>y>0.005、x−y>0)、および透明な樹脂を含むことを特徴とする示温性材料。
- 温度によって蛍光輝度が変化する蛍光輝度の温度依存性を有する可視光応答型の一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3蛍光体(但し、0.3>x>0.015、0.2>y>0.005、x−y>0)と、透明な樹脂との混練体であることを特徴とする示温性材料。
- 温度によって蛍光輝度が変化する蛍光輝度の温度依存性を有する可視光応答型の一般式(Ca1−xEuy)SiS3蛍光体(但し、0.3>x>0.015、0.2>y>0.005)、および透明な樹脂を含むことを特徴とする示温性材料。
- 温度によって蛍光輝度が変化する蛍光輝度の温度依存性を有する可視光応答型の一般式(Ca1−xEuy)SiS3蛍光体(但し、0.3>x>0.015、0.2>y>0.005)と、透明な樹脂との混練体であることを特徴とする示温性材料。
- 前記透明な樹脂が、熱硬化性を有し、かつ常温で流動性を有するシリコーン樹脂、またはエポキシ樹脂から選ばれる透明な樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の示温性材料。
- (Ca、Sr、Eu)SとSiとS、または(Sr、Eu)Sと(Ca、Eu)SとSiとSを混合して、真空アンプル中で熱処理を行うことを特徴とする一般式(Ca1−xSrx−yEuy)SiS3(但し、0.3>x>0.015、0.2>y>0.005、x−y>0)蛍光体の製造方法。
- (Ca、Eu)SとSiとS、または(Ca、Eu)SとSiとSを混合して、真空アンプル中で熱処理を行うことを特徴とする一般式(Ca1−xEuy)SiS3(但し、0.3>x>0.015、0.2>y>0.005)蛍光体の製造方法。
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