JP5482188B2 - 光学素子製造用ナノインプリントモールドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学素子、特に発光ダイオードの発光面に設けられる光学素子を製造するためのナノインプリントモールドの製造方法に関する。
従来の電球、蛍光灯に比べ、発光ダイオード(以下、「LED」という)は、小型、長寿命、超軽量、低発熱性であるという特徴を有している。また、近年、LEDの発光効率が向上しているとともに、低炭素化社会の要請から、高い応答速度の走査ランプ、液晶表示装置用のバックライト、自動車の制御パネル照明灯、信号機、一般の照明器具等の応用分野において、LEDが電球や蛍光灯に代わって用いられつつある。
LEDは、n型ドーピング半導体層とp型ドーピング半導体層とで発光層を挟持した構造を有し、n型ドーピング半導体層からの電子がp型ドーピング半導体層からの電子正孔と発光層において再結合するとき発光する。しかし、LEDで発光された光は、LEDが配設されている基板との界面、LEDと空気層との界面等で反射されるため外部取出効率が低く、LEDの発光効率の向上を有効に活用できていないという問題があった。
この外部取出効率を高めるために、LEDの発光面に設ける光学素子としてフォトニック結晶が使用されており、例えば、ステッパーを利用してLEDの発光面にフォトニック結晶を作製することが提案されている(例えば、特許文献1)。このようなステッパーを利用したフォトニック結晶の作製は、大面積化が可能であり、また、製造コストも低く抑えられるものであった。しかし、例えば、図7に鎖線で示されるような6角形単位、図8に鎖線で示されるような6角形単位であってステッパーのショットの境界線上にパターンが位置するもの、図9に鎖線で示されるような4角形単位であってステッパーのショットの境界線上にパターンが位置するもの等、パターンの周期性のとりにくい構造を有するフォトニック結晶が近年開発されており、このようなフォトニック結晶は、ステッパーを使用した従来の方法では作製が困難であった。
一方、微細加工技術として、近年ナノインプリント技術に注目が集まっている。ナノインプリント技術は、基材の表面に微細な凹凸構造を形成したモールド(型部材)を用い、凹凸構造を被加工物に転写することで微細構造を等倍転写するパターン形成技術である(特許文献2)。そして、フォトニック結晶をナノインプリント技術で形成することも検討されている。
特開2005−208180号公報 米国特許第5,772,905号
フォトニック結晶を作製するためのナノインプリントモールドの作製としては、例えば、マスター版用の基板上にステッパーを利用してマスクパターンを形成し、エッチングで所望の凹凸構造を有するマスター版を作製する方法がある。しかし、この場合も、単純な周期ではないフォトニック結晶用のモールド製造では、マスター版の作製工程で、上記と同様の問題があった。また、フォトニック結晶用のモールド作製では、ステッパーの制御は数nmの精度が要求され、ステッパーの制御限界からモールドの大面積化が難しいという問題もあった。
一方、マスター版へのマスクパターン形成を電子線描画で行うことにより、単純な周期ではないフォトニック結晶を作製するためのナノインプリントモールドも作製可能である。ここで、電子線スポットビームは、最大直径が30nm程度であり、数十nm以上のサイズの描画には適していない。また、電子線矩形ビームは、1辺が50〜100nm程度の四角形であり、この電子線矩形ビームを用いた円形の描画は、円形に近似した多角形を描画することにより行われる。しかし、このような多角形の電子線描画のデータは、データ量が多く描画に要する時間が多大であり、例えば、直径4インチの基板へのマスクパターン形成における電子線描画には数日を要し、実用レベルにないという問題があった。また、電子線描画では、描画対象であるモールド用の基板の帯電、あるいは、電子線散乱による近接効果の影響により、描画精度が低下するという問題もあった。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、光学素子製造用ナノインプリントモールドを高い精度で製造でき、かつ、大面積化にも対応できる製造方法を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明は、基板の一方の面に感光性レジストを塗布し、該感光性レジストにレーザ描画を行い、その後、現像を施して、所望の開口パターンを有するマスクパターンを形成する工程と、前記マスクパターンを介して前記基板を所望の深さまでエッチングする工程と、を有し、前記マスクパターンの開口パターンは円形の開口部を有し、該開口部の円形目標直径D(単位:nm)と、使用するレーザの波長λ(単位:nm)と、円形に近似させたレーザ描画データとしての正N角形のN(Nは4以上の整数)、レーザが通過する媒質の屈折率nとの間に、下記の式(1)、式(2)の関係が成立するようにレーザの波長λと、レーザ描画データの正N角形のNを設定するような構成とした。
90 ≦ D ≦ 1000 … 式(1)
λ/n < D < λN/(2n) … 式(2)
本発明の他の態様として、円形に近似させた描画データとしての正N角形の軌道の最大対角線長さをLmax(単位:nm)、正N角形の中心から軌道の1辺への垂線長さをLmin(単位:nm)、円形目標直径D(単位:nm)、レーザのスポット形状の直径d(単位:nm)との間に下記の式(3)、式(4)の関係が成立するようにレーザスポット形状の直径d、正N角形の最大対角線長さLmax、垂線長さLminを設定するような構成とした。
d ≧ 2Lmin … 式(3)
d+2Lmin < D < d+Lmax … 式(4)
前記レーザ描画データの正N角形において、Nは6から8の範囲であるような構成とした。
このような本発明は、レーザ描画を行いてマスクパターンを形成するので、レーザスポットが円形であり、かつ、スポット径がレーザ波長と略同程度あるいはレーザ波長よりも大きいことの利点を活かして、電子線描画に比べてデータ量の少ない描画データで短時間に真円に近い円形の描画が可能であり、また、電子線描画で生じるような描画対象であるモールド用の基板の帯電、電子線散乱による近接効果の影響、描画精度の低下が防止され、これにより、高い精度でマスクパターンを形成することができ、したがって、作製するモールドの精度も高いものとなり、かつ、大面積化にも対応できる。さらに、電子線描画を用いるモールドの製造方法では、製造に要する時間が長く、製造コストの点から、作製したモールドはナノインプリントに供するのではなく、マスター版として使用しコピーモールドを作製する必要があった。しかし、本発明ではモールドの製造時間を大幅に短縮することができるので製造コストの大幅な低減が可能であり、作製したモールドを直接ナノインプリントに供することができ、コピーモールドに比べて精度面でも優れたモールドの使用を可能とする。
また、マスクパターンの円形の開口部の円形目標直径Dと、使用するレーザの波長λと、円形に近似させたレーザ描画データとしての正N角形のNと、レーザ描画の媒質の屈折率nとの間に所定の関係が成立するようにレーザの波長λと、レーザ描画データの正N角形のNを設定することにより、さらに真円に近い円形描画が可能となり、特に、Nを6から8の範囲とすることにより、データ量の少なさと真円への近似の両立が最適なものとなる。
本発明の光学素子製造用ナノインプリントモールドの製造方法を説明するための工程図である。 本発明の光学素子製造用ナノインプリントモールドの製造方法を説明するための工程図である。 正4角形の軌道を設定した場合のレーザ描画を説明するための図である。 正6角形の軌道を設定した場合のレーザ描画を説明するための図である。 正8角形の軌道を設定した場合のレーザ描画を説明するための図である。 本発明により製造されたナノインプリントモールドを使用した光インプリント方法の一例を説明するための工程図である。 ステッパーのショットとパターンの周期性との関係を説明するための図である。 ステッパーのショットとパターンの周期性との関係を説明するための図である。 ステッパーのショットとパターンの周期性との関係を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、本発明の光学素子製造用ナノインプリントモールドの製造方法を説明するための工程図である。まず、基板1の一方の面に感光性レジスト4を塗布し(図1(A))、次に、感光性レジスト4にレーザ描画を行い、その後、現像し、必要に応じて硬化処理を施して、所望の開口パターン5aを有するマスクパターン5を形成する(図1(B))。尚、本発明におけるレーザ描画については後述する。
図示例では、基板1は基材2の一方の面2aにハードマスクとして金属膜3を備えたものであり、この金属膜3上に感光性レジスト4が塗布されている。基材2は、例えば、ガラス、石英、シリコン等の無機材料からなるものを使用することができ、また、樹脂材料からなるものであってもよい。基材2の厚さは適宜設定することができ、例えば、0.5mm〜7mm程度の範囲で設定することができる。金属膜3は、基材2をエッチングするためのハードマスクとして機能すること、あるいは、基材2が透明な場合に裏面からのレーザの反射を防止することを目的としたものであり、例えば、クロム等の材質であってよく、厚みは、例えば、10nm〜110nm程度の範囲で適宜設定することができる。このような金属膜3は、公知の真空成膜法により形成することができる。
また、感光性レジスト4は、使用するレーザの波長域に感光波長域を有するものであり、例えば、G線用レジスト、I線用レジスト、DUV用レジスト、化学増幅型レジスト等を使用することができる。感光性レジスト4の塗布は、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、バーコート法、スリットコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ディスペンサーコート法等による行うことができる。また、感光性レジスト4の塗布厚み(乾燥後の厚み)は、マスクパターン5の厚みを左右するものであり、例えば、0.2μm〜0.6μm、好ましくは0.3μm〜0.5μmの範囲で適宜設定することができる。感光性レジスト4の塗布厚みが0.2μm未満であると、金属膜3をエッチングすることが難しくなり、0.6μmを超えると、所望のフォトニック結晶構造を解像させることが難しくなり好ましくない。
次いで、マスクパターン5を介して基板1を所望の深さまでエッチングし(図1(C))、その後、マスクパターン5を除去して、所望の凹部構造12を備えたモールド11を作製する(図1(D))。基板1のエッチングは、まず、金属膜3をエッチングするが、この金属膜3のエッチングはエッチャントを利用したウェットプロセスも可能であるが、パターンが微細なため、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスにおけるプロセスガスとしては、例えば金属膜3がクロムの場合には、酸素と塩素を用いることが好ましい。
次に、基材2を所望の深さまでエッチングするが、ここでは、例えば基材が石英の場合は、ドライプロセスが好ましく、プロセスガスとしてはフッ素系ガスを用いることが好ましい。このようなエッチングで形成する凹部構造12の深さは、モールドを用いて作製する光学素子に応じて適宜設定することができ、例えば、フォトニック結晶の作製用途の場合には、深さは100nm〜2000nm程度の範囲で設定することができる。以上の工程により、光学素子製造用ナノインプリントモールドが作製される。
尚、上記のモールド11では、金属膜3を残した状態となっているが、通常は金属膜3がない状態が多く、金属膜3が不要な場合は、金属膜用のエッチャントを用いて金属膜3をウェットプロセスで除去してモールド11とする。
また、本発明では、以下の述べるように、上記のように作製したモールドをマスター版として、このマスター版からコピーモールドを作製し、このコピーモールドを光学素子製造用ナノインプリントモールドとしてもよい。すなわち、コピーモールド用基材22上にインプリント材料23を、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、バーコート法、スリットコート法、ダイコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ディスペンサーコート法等により供給し、インプリント材料23にモールド11を押付ける(図2(A))。そして、インプリント材料23を硬化させてモールド11を離型し(図2(B))、形成されたインプリント材料の残膜部23aを除去してインプリント材料によるマスクパターンを形成し、コピーモールド用基材22を選択的に露出させる。次いで、コピーモールド用基材22の露出部に対してドライエッチングを施して凹部22aを形成し、その後、マスクパターンとして機能したインプリント材料23を除去する。これにより、モールド11の反転パターンを有するコピーモールド21を作製する(図2(C))。このコピーモールド21を用いて所定の光学素子を製造してもよい。
ここで、感光性レジスト4のレーザ描画について説明する。
本発明では、マスクパターン5に形成する開口パターン5aの円形目標直径D(形成目標である真円形状の開口の直径、単位:nm)と、使用するレーザの波長λ(単位:nm)と、円形に近似させたレーザ描画データとしての正N角形のN(Nは4以上の整数)、レーザ描画の媒質の屈折率nとの間に下記の式(1)、式(2)の関係が成立するようにレーザの波長λと、レーザ描画データの正N角形のNを設定する。円形目標直径Dが90nm未満であると、レーザスポットの直径の限界以下となりレーザ描画ができず、また、1000nmを超えると、レーザスポットの直径に比較して大きすぎるため、より円形に近づけるために正N角形のNを大きく設定する必要があり、設計上好ましくない。また、式(2)の関係が成立しないようなレーザ、描画データを使用した場合、後述する真円率が増大するので好ましくない。尚、レーザが通過する媒質が空気の場合、屈折率nを1とする。
90 ≦ D ≦ 1000 … 式(1)
λ/n < D < λN/(2n) … 式(2)
そして、使用可能なレーザの中に、そのスポット形状の直径dが、マスクパターン5に形成する開口パターン5aの円形目標直径Dに一致するものが存在する場合には、そのレーザを所望の位置に点照射して描画とすることができる。
また、円形目標直径Dが使用可能なレーザのスポット形状の直径dよりも大きい場合には、円形に近似させた描画データとして正N角形の軌道を設定し、この軌道上をレーザで描画する。この場合、正N角形の軌道の最大対角線長さをLmax(単位:nm)、正N角形の中心から軌道の1辺への垂線長さをLmin(単位:nm)としたときに、円形目標直径D(単位:nm)、レーザのスポット形状の直径d(単位:nm)、最大対角線長さLmax、垂線長さLminとの間に下記の式(3)、式(4)の関係が成立するようにレーザスポット形状の直径d、描画データとして正N角形(最大対角線長さLmax、垂線長さLmin)を設定する。この関係が成立しない場合、正N角形の軌道上を描画した領域内に未描画の部位が残存することになったり、また、後述する真円率が増大するので好ましくない。
d ≧ 2Lmin … 式(3)
d+2Lmin < D < d+Lmax … 式(4)
本発明において使用するレーザ描画機としては、描画する最小単位(アドレスサイズ)が数nmで制御させることが可能な描画機が好ましい。これは、円形パターンを数nmの座標位置ごとに描画する必要があるためである。また、上記のように、本発明の円形目標直径Dは、90nm〜1000nmの範囲であることから、使用するレーザ描画機の波長としてはDUV(深紫外光)が適している。
図3は正4角形(N=4)の軌道を設定した場合のレーザ描画を説明するための図である。この場合、正4角形の軌道31の対角線の長さが最大対角線長さLmaxとなり、垂線長さLminは正4角形の1辺の長さの半分に相当する(図3(A))。図示例では、直径dのレーザスポット41に斜線を付して示している。そして、正4角形の軌道31上を、レーザスポット41を走査(図示例では右回りに走査)することにより、外郭線51で囲まれる領域の描画が行われる(図3(B))。尚、図示例では、正4角形の軌道31の4つの頂点に位置するときのレーザスポット41を鎖線で示している。図3(C)に示されるように、このようにレーザ描画を行った領域(外郭線51で囲まれる領域であり、斜線を付している)と、直径Dの真円(二点鎖線で示している)とを対比すると、正4角形の軌道31の各頂点に対応する部位での描画領域は真円の外側に突出し、正4角形の軌道31の各辺の中央部に対応する部位での描画領域は真円の内側に位置している。
また、図4は正6角形(N=6)の軌道を設定した場合のレーザ描画を説明するための図である。この場合、正6角形の軌道32の最大対角線長さLmaxは中心を通る対角線の長さとなる(図4(A))。図示例では、直径dのレーザスポット42に斜線を付して示している。そして、正6角形の軌道32上を、レーザスポット42を走査(図示例では右回りに走査)することにより、外郭線52で囲まれる領域の描画が行われる(図4(B))。尚、図示例では、正6角形の軌道32の6つの頂点に位置するときのレーザスポット42を鎖線で示している。図4(C)に示されるように、このようにレーザ描画を行った領域(外郭線52で囲まれる領域であり、斜線を付している)と、直径Dの真円(二点鎖線で示している)とを対比すると、正6角形の軌道32の各頂点に対応する部位での描画領域は真円の外側に突出し、正6角形の軌道32の各辺の中央部に対応する部位での描画領域は真円の内側に位置している。
さらに、図5は正8角形(N=8)の軌道を設定した場合のレーザ描画を説明するための図である。この場合、正8角形の軌道33の最大対角線長さLmaxは中心を通る対角線の長さとなる(図5(A))。図示例では、直径dのレーザスポット43に斜線を付して示している。そして、正8角形の軌道33上を、レーザスポット43を走査(図示例では右回りに走査)することにより、外郭線53で囲まれる領域の描画が行われる(図5(B))。尚、図示例では、正8角形の軌道33の8つの頂点に位置するときのレーザスポット43を鎖線で示している。図5(C)に示されるように、このようにレーザ描画を行った領域(外郭線53で囲まれる領域であり、斜線を付している)と、直径Dの真円(二点鎖線で示している)とを対比すると、正8角形の軌道33の各頂点に対応する部位での描画領域は真円の外側に突出し、正8角形の軌道33の各辺の中央部に対応する部位での描画領域は真円の内側に位置している。
このような描画領域の外郭線51、52、53の真円率は、走査型電子線顕微鏡(SEM)で観測したパターンの真円に対するずれを平均2乗誤差方法で計測することで求め、本明細書ではこの真円率を、その値が小さい場合には真円に対するずれが小さく、形成されたパターンが真円に近いことを示し、一方その値が大きい場合には真円に対するずれが大きく、形成されたパターンが真円から遠いことを示す指標とする。そして、本発明では、下記のように真円率を算出し、真円率が3%以下である場合を実用レベルとする。通常、レーザ描画データとしての正N角形のNが6以上であれば真円率が3%以下となり、Nが大きい程、真円率が低下する。しかし、Nが大きくなるとデータ量は増大し、レーザ描画に要する時間が増大する。このため、Nを6から8の範囲とすることにより、データ量の少なさと真円への近似の両立が最適なものとなる。
(真円率の算出)
得られたSEM像から、理想真円半径をR(θ)とし、SEM計測にて得られた
半径をR′(θ)とし、真円率Δ(θ)を
Δ(θ)=[│R(θ)−R′(θ) │/R(θ)]×100
から算出し、各θ位置で求めたΔ(θ)の平均値を真円率とする。
本発明の円形目標直径Dは、上記の式(1)で説明したように、90nm〜1000nmの範囲であることが好ましい。当該範囲から外れると、例えば、作製される光学素子がLEDの発光面に設けるフォトニック結晶の場合、フォトニック結晶によるLEDの外部取出効率が低下してしまうためである。また、当該範囲のパターンを作製するには従来の電子線描画では短時間、かつ高精度で作製することが困難であり、レーザ描画を採用する利点がより発揮される。また、本発明ではレーザ描画を用いることで、電子線に比べて近接効果の影響が抑えられるため、隣接するパターンの中心同士の間隔を数nm以下となるように狭めて設計することもでき、得られるモールドを用いてより高機能な光学素子を形成することが可能となる。また、本発明ではレーザ描画を用いることでパターン密度が大きい場合にも、電子線描画で必要な電子線近接効果補正の演算を行う必要がなく、描画データの作製時間を短縮することができる。
このように、本発明ではレーザ描画を行いてマスクパターン5を形成するので、レーザスポットが円形であり、かつ、スポット径がレーザ波長と略同程度あるいはレーザ波長よりも大きいことの利点を活かして、電子線描画に比べてデータ量の少ない描画データで短時間に真円に近い円形の描画が可能である。また、電子線描画で生じるような描画対象であるモールド用の基板の帯電、電子線散乱による近接効果の影響、描画精度の低下が防止される。このため、高い精度でマスクパターンを形成することができ、したがって、作製するモールド11の精度、あるいは、このモールド11をマスター版として用いて作製するコピーモールド21の精度も高いものとなり、かつ、大面積化にも対応できる。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
次に、本発明により製造されたナノインプリントモールドを使用した光インプリント方法の一例について、上述のモールド21を用いた場合を例として、図6を参照して説明する。
まず、所望の凹凸構造を形成する対象である基板71の一方の面に光硬化性樹脂層72を形成する(図6(A))。基板71の材質は、作製する光学素子に応じて適宜選択することができ、特に制限はなく、例えば、フォトニック結晶の作製用途の場合には、シリコン、サファイア、シリコン炭化ケイ素、スピネル等を挙げることができる。
次に、モールド21を光硬化性樹脂層72に押し当て、モールド21を介して光硬化性樹脂層72に光を照射して硬化させる(図6(B))。その後、モールド21を離型することにより、モールド21が有する凹凸構造22が反転した凹凸構造72aを有する樹脂層72′が得られる(図6(C))。そして、樹脂層72′をマスクとして、基板71をドライエッチングし(図6(D))、その後、樹脂層72′を除去することにより所望の凹凸構造74を備えた基板71を得ることができる(図6(E))。
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
金属膜としてクロム薄膜(厚み60nm)を一方の面に有する石英基材(直径6インチ、厚み6.35mm)を基板として準備し、この基板のクロム薄膜上に感光性レジスト(富士フイルム(株)製 FEP−171レジスト)をスピンコート法で塗布し、120℃で10分間乾燥した。乾燥後の感光性レジストの厚みは0.3μmであった。
次に、レーザ描画装置 (ETEC(株)製 ALTA4300)を用いて、形成目標である真円形状の開口の直径D(円形目標直径D)を500nmに設定し、下記の条件で感光性レジストをレーザ描画した。この条件は、上記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)の関係を満足するものであった。また、下記の条件でレーザ描画を行う領域は、基板の中央の直径4インチの円形状領域とした。
(レーザ描画の条件)
・使用レーザ : アルゴンイオンレーザ(2倍高調波、波長257nm)
・レーザスポット径d : 250nm
・レーザ描画の媒質 : 空気
・描画データの正N角形 : N=6
最大対角線長さLmax=277nm
垂線長さLmin=120nm
このような条件でのレーザ描画に要した時間は1.5時間であった。
次に、レーザ描画を行った感光性レジストをポストベーク(120℃、10分間)した後、現像し、硬化処理(120℃、10分間)を施して、直径500nmの円形の開口がピッチ550nmで図9に示されるように配設された開口パターンを有するマスクパターンを形成した。この開口パターンの円形開口の真円率を、上述にようにSEMを使用して測定、算出したところ、2.2%であり、実用レベル(真円率が3%以下)にあることが確認された。
次いで、ドライエッチング装置(プロセスガス:酸素、塩素)を用いてマスクパターンを介しクロム薄膜をエッチングし、その後、同様にドライエッチング装置(プロセスガス:フッ素系ガス)を用いてマスクパターンを介し石英基材をエッチングした。その後、マスクパターンを除去した。これにより、表面のクロム薄膜からの深さが500nmである凹部構造が、上記のマスクパターンの開口パターンと同様に配列したパターンを形成した。その後、エッチャントとしての硝酸セリウム第二アンモニウム溶液に浸し、表面のクロム薄膜を除去してモールドを得た。
[実施例2]
レーザ描画の条件を下記の条件とした他は、実施例1と同様にしてマスクパターンを作製した。このレーザ描画の条件は、上記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)の関係を満足するものであった。
(レーザ描画の条件)
・使用レーザ : アルゴンイオンレーザ(2倍高調波、波長257nm)
・レーザスポット径d : 250nm
・レーザ描画の媒質 : 空気
・描画データの正N角形 : N=8
最大対角線長さLmax=260nm
垂線長さLmin=120nm
このような条件でのレーザ描画に要した時間は1.6時間であった。
このように形成したマスクパターンの開口パターンの円形開口の真円率を実施例1と同様に測定、算出したところ、1.3%であり、実用レベル(真円率が3%以下)にあることが確認された。
次いで、形成したマスクパターンを介し、実施例1と同様にして、エッチングを行い、その後、マスクパターンを除去した。これにより、表面のクロム薄膜からの深さが500nmである凹部構造が、上記のマスクパターンの開口パターンと同様に配列したパターンを形成した。その後、エッチャントとしての硝酸セリウム第二アンモニウム溶液に浸し、表面のクロム薄膜を除去してモールドを得た。
[比較例1]
実施例1と同様の基板を準備し、この基板のクロム薄膜上に感光性レジスト(富士フイルム(株)製 FEP−171レジスト)をスピンコート法で塗布し、120℃で10分間乾燥した。乾燥後の感光性レジストの厚みは0.3μmであった。
次に、電子線描画装置 (日本電子(株)製 JBX9000)を用いて、形成目標である真円形状の開口の直径D(円形目標直径D)を実施例1、2と同様に500nmに設定し、下記の条件で感光性レジストを電子線描画した。
(電子線描画の条件)
・露光量 : 13μC/cm2
・近接効果補正パラメーター : η=0.8、σ=10
・描画データの正N角形 : N=8
このような条件での電子線描画に要した時間は約10日間であった。
次に、電子線描画を行った感光性レジストを現像し、硬化処理(120℃、10分間)を施して、直径500nmの円形の開口がピッチ550nmで図9に示されるように配設された開口パターンを有するマスクパターンを形成した。この開口パターンの円形開口の真円率を実施例1と同様に測定、算出したところ、2.0%であり、実用レベル(真円率が3%以下)にあることが確認された。
次いで、形成したマスクパターンを介し、実施例1と同様にして、エッチングを行い、その後、マスクパターンを除去した。これにより、表面のクロム薄膜からの深さが500nmである凹部構造が、上記のマスクパターンの開口パターンと同様に配列したパターンを形成した。その後、エッチャントとしての硝酸セリウム第二アンモニウム溶液に浸し、表面のクロム薄膜を除去してモールドを得た。
上記の実施例1、2と比較例1の結果から、レーザ描画を行う実施例1、2は、電子線描画を行う比較例1と同様の精度(真円率)でパターンを形成する場合、描画に要する時間を大幅に短縮できることが確認された。
[比較例2]
形成目標である真円形状の開口の直径D(円形目標直径D)を400nmに設定し、レーザ描画の条件を下記の条件とした他は、実施例1と同様にしてマスクパターンの作製を試みた。このレーザ描画の条件は、使用するレーザの波長が大きく、上記の式(1)、式(3)、式(4)の関係を満足するものの、上記の式(2)の関係が成立しないものであった。
(レーザ描画の条件)
・使用レーザ : He−Cdレーザ(波長422nm)
・レーザスポット径d : 300nm
・レーザ描画の媒質 : 空気
・描画データの正N角形 : N=6
最大対角線長さLmax=231nm
垂線長さLmin=100nm
このような条件でのレーザ描画に要した時間は2.0時間であった。
しかしながら、マスクパターンの開口パターンは得られず(解像せず)、真円率を測定、算出することができなかった。
[比較例3]
レーザ描画の条件を下記の条件とした他は、実施例1と同様にしてマスクパターンの作製を試みた。このレーザ描画の条件は、描画データの正6角形の設定(最大対角線長さLmax、垂線長さLmin)が不適切であり、上記の式(1)、式(2)、式(3)の関係を満足するものの、上記の式(4)の関係が成立しないものであった。
(レーザ描画の条件)
・使用レーザ : アルゴンイオンレーザ(2倍高調波、波長257nm)
・レーザスポット径d : 250nm
・レーザ描画の媒質 : 空気
・描画データの正N角形 : N=6
最大対角線長さLmax=139nm
垂線長さLmin=60nm
このような条件でのレーザ描画に要した時間は1.5時間であった。
しかしながら、マスクパターンの開口パターンは得られず(解像せず)、真円率を測定、算出することができなかった。
光インプリント技術を用いた光学素子の製造に利用可能である。
1…基板
4…感光性レジスト
5…マスクパターン
5a…開口パターン
11…モールド
12…凹部構造
21…コピーモールド
22…モールド形成用基材
31,32,33…レーザ描画データの正N角形の軌道
41,42,43…レーザスポット

Claims (3)

  1. 基板の一方の面に感光性レジストを塗布し、該感光性レジストにレーザ描画を行い、その後、現像を施して、所望の開口パターンを有するマスクパターンを形成する工程と、
    前記マスクパターンを介して前記基板を所望の深さまでエッチングする工程と、を有し、 前記マスクパターンの開口パターンは円形の開口部を有し、該開口部の円形目標直径D(単位:nm)と、使用するレーザの波長λ(単位:nm)と、円形に近似させたレーザ描画データとしての正N角形のN(Nは4以上の整数)、レーザが通過する媒質の屈折率nとの間に、下記の式(1)、式(2)の関係が成立するようにレーザの波長λと、レーザ描画データの正N角形のNを設定することを特徴とする光学素子製造用ナノインプリントモールドの製造方法。
    90 ≦ D ≦ 1000 … 式(1)
    λ/n < D < λN/(2n) … 式(2)
  2. 円形に近似させた描画データとしての正N角形の軌道の最大対角線長さをLmax(単位:nm)、正N角形の中心から軌道の1辺への垂線長さをLmin(単位:nm)、円形目標直径D(単位:nm)、レーザのスポット形状の直径d(単位:nm)との間に下記の式(3)、式(4)の関係が成立するようにレーザスポット形状の直径d、正N角形の最大対角線長さLmax、垂線長さLminを設定することを特徴とする請求項1に記載の光学素子製造用ナノインプリントモールドの製造方法。
    d ≧ 2Lmin … 式(3)
    d+2Lmin < D < d+Lmax … 式(4)
  3. 前記レーザ描画データの正N角形において、Nは6から8の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学素子製造用ナノインプリントモールドの製造方法。
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