JP5481655B2 - 抗菌組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、抗菌性を有している組成物に関するものであり、より詳細には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌剤に関するものである。
抵抗力が低下している患者へのMRSAの院内感染が、近年問題となっている。院内感染症の5割以上を占めるMRSA感染症は、一旦発症するとほとんどの抗生物質が効かないので治療が困難である。代表的な治療薬として、バンコマイシンが知られている。バンコマイシンは、耐性菌の出現が少ない抗菌薬としてMRSAの治療に汎用されていたが、バンコマイシン耐性菌の出現が報告されている。近年、MRSAに対する治療薬としてリネゾリドが開発されたが、あくまでもバンコマイシン耐性菌に対しての使用のみが許可されている。
MRSAについては、感染者の治療だけでなく、感染を広げないことも重要である。特に、病院内における、免疫力が低下した患者での発症を防ぐためには、病院内への菌体の持ち込みを封じる必要がある。MRSAは薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌であり、一般的な黄色ブドウ球菌と同様に、健康な人の鼻腔、咽頭、皮膚などから検出されることが知られている。特に、MRSAが鼻腔内に保菌されていると全身的なMRSA感染を起こしやすいことがよく知られている。鼻腔内MRSA除菌薬としてムピロシンが開発されている。ムピロシンの除菌率は通常90%以上と非常に優れており、鼻腔用軟膏として繁用されている。また、ムピロシン軟膏を使用することによって術後のMRSA感染症が減少することも知られている。しかし、過剰使用によるムピロシン耐性菌の出現も報告されている。
MRSAの治療等に抗生物質を用いる場合、上述したようにさらなる薬剤耐性を細菌に付与する可能性が否定できない。また、抗生物質を乱用することは副作用の観点からも好ましくない。よって、非抗生物質を用いた安全性の高いMRSA対策が期待されている。
強力な還元作用を有しているアスコルビン酸は、酸化された後に抗悪性腫瘍細胞傷害活性を示す(非特許文献1参照)。この傷害活性は、アスコルビン酸が溶液中で電子を1つ失ってフリーラジカルになることに起因していると考えられている。アスコルビン酸ラジカルは、感受性の高い腫瘍細胞に効果的であっても正常細胞には何ら影響を与えない。このように安全性の高いアスコルビン酸は、化粧品などに広く使用されている。
特開2000−104063号公報(平成12年4月11日公開) 特開2002−17248号公報(平成14年1月22日公開) 特開2006−116433号公報(平成18年5月11日公開) 特開2006−315969(平成18年11月24日) Proc. Nat. Acad. Sci. 104: p.8749-8754 (2007) Proc. Nat. Acad. Sci. 80: p.129-132 (1983) Clinical Infectious Diseases 32:1408-13 (2001) The Journal of Infectious Diseases 194:98-107 (2006)
しかし、細菌は正常な動物細胞よりもはるかに強固な細胞膜を有している。よって、正常細胞に何ら影響を与えることなく腫瘍細胞を傷害するアスコルビン酸の細胞傷害能力は、細菌を殺傷し得るほど高くない。実際に、アスコルビン酸の抗菌作用は報告されていない。また、正常細胞の細胞膜を破壊し得る界面活性剤を高濃度で用いたとしても細菌の細胞膜を破壊することはできず、細菌の細胞膜を破壊するためには特定の酵素が必要とされる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全性が高くかつ実用的な抗菌技術を、抗生物質を用いることなく提供することにある。
本発明者らはこれまでに、安全性の高い竹抽出物を用いた抗酸化剤、食品の鮮度保持剤、抗菌剤などを開発している(特許文献1〜3参照)。竹抽出物は、それ自体が強い抗菌活性を有しており、その活性の本体はラジカル化したセミキノンであると考えられている。
本発明者らは、抗菌活性を発揮し得ない用量(サブドーズ)の竹抽出物をアスコルビン酸に添加した際に、顕著な抗菌活性が示されることを見出した。示された抗菌活性は、アスコルビン酸に対するモウソウチク抽出物の割合を増やしても増強されなかったことから、モウソウチク抽出物自体の抗菌活性ではなく、サブドーズの竹抽出物がアスコルビン酸に作用したことにより生成された抗菌活性であることがわかった。さらなる検討を重ねることによって、本発明者らは、サブドーズの竹抽出物の作用によって抗菌作用を示し得る程度のアスコルビン酸ラジカルが生成されたことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る抗菌組成物は、アスコルビン酸ラジカルを含有していることを特徴としている。腫瘍細胞を傷害することと細菌を傷害することとは技術的に何ら関連性がないので、このような技術常識に基づけば、アスコルビン酸のフリーラジカル化を強化することによって抗菌作用を生成し得るということは、当業者が予測し得るものではない。さらに、抗菌作用を生成し得る程度にまでアスコルビン酸のフリーラジカル化が強化され得ることもまた、当業者が予測し得るものではない。
また、本発明に係る抗菌組成物は、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を含有していることを特徴としている。本発明に係る抗菌組成物において、上記物質は竹抽出物であることが好ましい。アスコルビン酸および竹抽出物のような安全性が高い物質を組み合わせることによって優れた抗菌作用を得ることができるということもまた、当業者が予測し得ることではない。また、本発明に係る抗菌組成物は、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を含有していればよいので、液体形態に限定されない。
本発明に係る抗菌組成物は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の除菌に用いられることが好ましい。また、本発明に係る抗菌組成物は、皮膚または粘膜に適用するための外用剤であってもよく、この場合、液状製剤、軟膏またはエアロゾルの形態であることが好ましい。
本発明に係る抗菌用キットは、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を備えていることを特徴としている。
本発明に係る抗菌方法は、アスコルビン酸ラジカルを被験体に適用する工程を包含することを特徴としている。本発明において、アスコルビン酸ラジカルが被験体に直接適用されてもよいが、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を混合した後に生成されたアスコルビン酸ラジカルが被験体に適用されてもよい。また、本発明に係る抗菌方法は、アスコルビン酸を被験体に適用する工程、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を被験体に適用する工程を包含してもよく、この場合、これらの2工程は同時または連続的に行われてもよい。
本発明を用いれば、安全性が高くかつ実用的な抗菌技術を、抗生物質を用いることなく実現することができる。
本発明は、抗菌組成物を提供する。一実施形態において、本発明に係る抗菌組成物は、アスコルビン酸ラジカルを含有していることを特徴としている。「アスコルビン酸ラジカル」は、溶液中で電子を1つ失ってフリーラジカル化したアスコルビン酸が意図される。アルコルビン酸は溶液(特に体液)中でフリーラジカルになることが知られているので、当業者はアスコルビン酸ラジカルを容易に調製し得る。
本明細書中において使用される場合、用語「抗菌」は「抗細菌」、「抗真菌」および「抗ウイルス」を包含し、細菌、真菌およびウイルスを傷害することが意図され、好ましくは細菌の除去(除菌)およびウイルスの除去が意図される。標的とし得る細菌はグラム陽性菌でもグラム陰性菌でもよく、好ましくはstaphylococciであり、好ましくはS. aureusであり、より好ましくはメチシリン耐性のS. aureus(MRSA)である。また、標的として好ましい真菌としては、カンジダ、白癬などが挙げられるが、これらに限定されない。
また、一実施形態において、本発明に係る抗菌組成物は、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を含有していることを特徴としている。「アスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質」は、アスコルビン酸の還元作用を強く誘導し得る物質であればよく、後述する実施例にて示される竹抽出物以外に、例えば、竹抽出物の有効成分の1つであるベンゾキノン(2,6−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン)などが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。より詳細には、アスコルビン酸のラジカル化を促進する物質としては、1,4−ベンゾキノンが好ましく、アスコルビン酸のラジカル化を促進する能力が阻害ざれない限り、1,4−ベンゾキノンは置換基を有してもよく、この場合、2位と5位、または2位と6位に置換基を有していることが好ましい。1,4−ベンゾキノンにおける置換基として好ましいものは、OH、ハロゲン、アミノ基、C〜Cのアルキル、C〜Cのアルコキシ、C〜C10のアリール、C〜C10のアリールオキシなどが挙げられるがこれらに限定されない。好ましい実施形態において、1,4−ベンゾキノンの2位および6位が置換されていることが好ましく、2位および6位の置換基は同一であることがより好ましい。なお、アスコルビン酸のラジカル化を促進する物質は、精製標品が用いられてもよいが、粗精製物や粗抽出物であってもよい。なお、特許文献1〜3等に抗酸化剤として示されている竹抽出物がアスコルビン酸ラジカルの生成を促進することは、当該分野の技術常識に基づけば当業者が容易に予測し得ることではない。また、アスコルビン酸ラジカルをアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質と共存させることもまた、当業者に適宜なし得ることである。
本明細書中で使用される場合、「組成物」は各種成分が一物質中に含有されている形態であることが意図される。一般に、組成物は「二種以上の成分が全体として均質に存在し、一物質として把握されるもの」が意図され、有効成分以外に他の成分(例えば、薬学的に受容可能なキャリア)を含有してもよい。本発明に係る抗菌組成物は、有効成分であるアスコルビン酸ラジカルを含有していることを特徴としており、単独で使用されても、他の物質または組成物と併用されてもよい。この場合、併用されるべき他の物質または組成物が本発明に係る抗菌組成物中に提供されてもされない場合であっても、後述する「キット」の範疇に入り得、組成物としてではなくキットとして提供され得ることを当業者は容易に理解する。なお、本発明に係る組成物は有効成分が含まれていればよく、有効成分以外の成分は、適用部位や適用形態などに応じて、当業者が適宜設計し得る。
本明細書中で使用される場合、「竹抽出物」は、竹植物から公知の手法によって得られた抽出物が意図され、実施例にて用いられている市販品に限定されない。竹植物は、イネ科タケ亜科のマダケ属、ナリヒラダケ属、トウチク属、オカメザサ属、ササ属、アズマザサ属、ヤダケ属、メダケ属、カンチク属、ホウライチク属などに属する竹または笹であり、本発明に好適に用いられ得るのはマダケ属に属するモウソウチク、マダケ、ハチクである。
竹抽出物は、例えば、特許文献2に記載されるように、粉末状にしたモウソウチク竹茹部分をエタノール等の水系溶媒中で攪拌し、遠心分離によって得られた上清を濾過して得られてもよい。この場合、撹拌中に活性炭を添加してもよい。また、竹抽出物は、特許文献3に記載されるように、竹植物を水蒸気の存在下にて120〜180℃で水蒸気処理し、これを冷却した後、エタノール等を含む抽出溶剤で抽出されてもよい。
抽出の際には、抽出効率を高めるために、竹をチップ状さらには粉末状にして用いることが好ましい(特許文献2、3等参照)。竹全体を粉末状にして抽出してもよいが、不純物が多くなり、その後の使用に悪影響を及ぼすこともあり得る。竹植物の茎部分のうち、特に表面から0.5mm以内の表皮部分から抽出されたものは、抗菌剤、抗酸化剤などとして特に有効である(特許文献3等参照)。このように、抽出対象部位を限定することが好ましいが、表皮以外の部分にも活性成分は含まれているので、竹植物の茎部分全体からの抽出物であってもかまわない。特に、細い竹または笹の場合には、表皮部分だけを分離することは実用的でなく、茎部分、あるいは茎と葉を含めた全体を用いて抽出すればよい。
なお、本明細書中で使用される場合、「竹抽出物」は、特許文献4に開示されるような竹抽出物/シクロデキストリン複合物であってもよい。このような複合物を用いれば、竹抽出物を乾燥粉末状態にて供給し得る。
本明細書中で使用される場合、用語「外用剤」は、皮膚または粘膜に適用されるものが意図され、皮膚としては、顔、首、胸、背中、腕、脚、手および頭皮の皮膚が意図され、粘膜としては、鼻腔内粘膜、口腔内粘膜が意図される。
外用剤としては、固体、半固体または液状の製剤などが挙げられ、例えば、軟膏剤(例えば油性軟膏、親水性軟膏など)、乳濁剤(例えば乳液、ローションなど)などとして提供され得る。さらに、本発明の一実施形態に係る外用剤は、エアロゾルの形態で適用されてもよい。
本発明は、いわゆる薬浴に用いられてもよく、この場合は液状製剤の形態であることが好ましい。また、全身に容易に塗布するために、本発明は乳濁剤の形態であることが好ましい。
粘液等の存在下ではアスコルビン酸ラジカルによって過酸化水素が生じる(非特許文献1,2等参照)。過酸化水素は強い抗菌活性を有している(非特許文献3参照)。また、生成された過酸化水素は、体液中のペルオキシダーゼによって過酸化水素が代謝される過程において1分子酸素を生成し、この1分子酸素は、粘膜において分泌されている分泌型IgAの酵素活性によってオゾンに変換される(非特許文献4参照)。オゾンの抗菌活性は極めて強力であり、あらゆる細菌を殺傷することができる。このように、本発明は粘膜へ適用されることが好ましく、鼻腔用軟膏またはエアロゾルの形態であることが好ましい。
軟膏剤は、その基剤成分として、例えば、脂肪類、多価アルコール、炭化水素等が使用され得、界面活性剤等が添加され得る。上述した過酸化水素による抗菌活性を利用するためには、軟膏剤は親水性であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。なお、油性軟膏としては、油性基剤をベースとするもの、油/水、水/油型の乳化系基剤をベースとするもののいずれであってもよい。上記油性基剤としては、特に限定されず、例えば、植物油、動物油、合成油、脂肪酸、および天然または合成のグリセライド等が挙げられる。
なお、特許文献3等に示されるような抗菌剤は、竹抽出物が難溶性であることにより、液状製剤や軟膏の形態を採用することが非常に困難である。しかし、本発明においては、難溶性である竹抽出物が用いられる場合であっても、本発明に必要とされる竹抽出物の量は微量であるため、本発明は、液状製剤、軟膏、エアロゾルなどの任意の形態が採用され得る。
被験体に対して提供されるアスコルビン酸ラジカルの濃度は、塗布される面積100cmに対して0.1〜10mMであることが好ましく、0.5〜5mMであることがより好ましく、0.7〜1.0mMであることが最も好ましい。したがって、本発明に含有されるべきアスコルビン酸ラジカルの量は、適宜希釈されて用いられればよいので、上述した濃度範囲以上であればよい。また、本発明に含有されるべきアスコルビン酸、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質の量は、上述した濃度範囲のアスコルビン酸ラジカルを供給し得る量であればよく、当業者であれば、後述する実施例に基づいて適宜設計し得、例えば、好ましいアスコルビン酸の濃度範囲は1.4〜2.0mMであることが最も好ましいといえる。
本発明はまた、抗菌用キットを提供する。一実施形態において、本発明に係る抗菌用キットは、アスコルビン酸ラジカルを備えていることを特徴としている。また、一実施形態において、本発明に係る抗菌用キットは、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を備えていることを特徴としている。
本明細書中で使用される場合、「キット」は各種成分の少なくとも1つが別物質中に含有されている形態であることが意図される。本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは各材料を使用するための指示書を備える。本明細書中においてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に内包されている状態が意図される。また、本発明に係るキットは、複数の異なる組成物を1つに梱包した包装であり得、ここで、組成物の形態は上述したような形態であり得、溶液形態の場合は容器中に内包されていてもよい。本発明に係るキットは、有効成分や他の成分を同一の容器に混合して備えていても別々の容器に備えていてもよい。「指示書」は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。本発明に係るキットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。さらに、本発明に係るキットは、抗菌目的に用いられ得る必要な器具をあわせて備えていてもよい。
本発明はさらに、抗菌方法を提供する。本発明において、アスコルビン酸ラジカルが被験体に直接適用されてもよいが、アスコルビン酸ラジカルを生成すべきアスコルビン酸およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を被験体に適用してもよい。すなわち、一実施形態において、本発明に係る抗菌方法は、アスコルビン酸ラジカルを被験体に適用する工程を包含することを特徴としている。他の実施形態において、本発明に係る抗菌方法は、アスコルビン酸、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を被験体に適用する工程を包含することを特徴としている。本実施形態において、アスコルビン酸およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質の被験体への適用は、両物質を混合し後に適用することが好ましいが、アスコルビン酸を被験体に適用する工程、およびアスコルビン酸ラジカルの生成を促進する物質を被験体に適用する工程を別々に包含してもよく、この場合、これらの2工程は同時または連続的に行われてもよい。
なお、アスコルビン酸ラジカルに基づく本発明が、抗腫瘍剤としてもまた非常に有効であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
〔MRSA〕
本実施例において使用したMRSAは臨床分離株(MLST ST5、spa−t002#1)であるが、国内で分離される8割程度がこのMLST ST5株であるといわれている。
〔抗菌剤の作製〕
0.1gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC;ニチリン化学)を10mLのPBS(pH7.4)に溶解した(95℃で10分間)。溶解後、溶液を室温まで冷却し、2.4gのL−ascorbate(Wako)およびモウソウチク抽出物0.3mL(タケックス・ラボ)を添加して混合物を得た。この混合物(軟膏)を使用時まで4℃にて保存した。
〔抗菌剤の活性測定〕
1×10CFUのMRSAをブレイン・ハートインフュージョン寒天培地上にコンラジ棒を使用して播種した。乾燥させた培地表面に、4℃にて保存した軟膏(保存期間1〜4日間)を所定量滴下した。35℃で一晩培養した後、発育阻止円の半径を計測した(図1〜3)。
図1の縦軸は発育阻止円の半径の2乗を示し、横軸は軟膏量を示す。抗菌活性はL−ascorbateと竹抽出物との反応によって生成され、その活性は培地に滴下した軟膏の量に比例することがわかった。また、その活性は、4℃での保存で維持されることもわかった。
図2の縦軸は発育阻止円の半径の2乗を示し、横軸は保存期間を示す。軟膏のMRSA抗菌活性はL−ascorbateとモウソウチク抽出物の混合直後に産生され始め、4℃での保存期間中に上昇し、3日後にピークを迎え、それ以降は漸減することがわかった。
図3は、滴下した軟膏量が、9.4mg、14.1mg、18.8mg、23.5mg、28.2mgの場合の、形成された発育阻止円を示す。軟膏量に応じて阻止円が大きくなることがわかる。
〔抗菌剤における活性の増強〕
モウソウチク抽出物の希釈液(1/2〜1/256)を二倍段階希釈によって作製し、1mLのL−ascorbate(0.24mg/mL)に添加して合計10μLの混合液(軟膏)を調製した。1×10CFUのMRSAをブレイン・ハートインフュージョン寒天培地上にコンラジ棒を使用して播種した。乾燥させた培地表面に、上記軟膏(各20μL)を滴下し、35℃で一晩培養した後、発育阻止円の半径を測定した(図4)。コントロールには、同量の0.24mg/mL L−ascorbate、および同量のモウソウチク抽出物のみ(上記の希釈液)を使用した。なお、軟膏に含まれているモウソウチク抽出物の量は、原液の1/100未満であるので、モウソウチク抽出物のみのコントロールとして、1/128希釈、1/256希釈のものを用いて図中に示した。
図4の縦軸は、発育阻止円の半径の2乗を示し、横軸は、添加したモウソウチク抽出物の希釈倍率を示す。抗菌活性を有することが知られているモウソウチク抽出物を図中に示した濃度で用いた場合(コントロール)には全く抗菌活性がないものの、同濃度のモウソウチク抽出物をL−ascorbateと混合することによってL−ascorbateの活性が顕著に増強されて抗菌効果として発揮されることがわかった。
〔抗菌剤のMRSAに対する最小発育阻止濃度の測定〕
96ウェルマイクロプレート(200μL)に5×10CFU/ブレイン・ハートインヒュージョンブロス(100μL)のMRSAを添加した。モウソウチク抽出物の希釈液(1/2〜1/256)を×2希釈によって作製し、1mLのL−ascorbate(0.24mg/mL)に添加して合計10μLの混合液(軟膏)を調製した。この軟膏を、上記ウェルに添加し、35℃で一晩培養した後、発育阻止円の半径を記録した。最小阻害濃度(MIC値)は、軟膏量で7.5mg/mLであった。
本発明は、人体に対しても非常に安全でありかつ優れた抗菌性を有しており、さらに、細菌に対して薬剤耐性を付与する危険性がないので、特に院内感染の防除に有効である。
本発明に係る抗菌剤の活性を測定した結果を示す図である。 本発明に係る抗菌剤の活性を測定した結果を示す図である。 本発明に係る抗菌剤の活性を測定した結果を示す図である。 本発明に係る抗菌剤の活性を測定した結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 抗菌活性を発揮し得ない用量の竹抽出物の希釈液を調製する工程、および
    上記希釈液をアスコルビン酸と混合する工程
    を包含することを特徴とする抗菌組成物の製造方法
  2. 上記抗菌組成物が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の除菌に用いられることを特徴とする請求項1に記載の製造方法
  3. 上記抗菌組成物が、皮膚または粘膜に適用するための外用剤であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法
  4. 上記抗菌組成物が、液状製剤、軟膏またはエアロゾルの形態であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法
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