JP5480578B2 - プロトン伝導性材料、プロトン伝導性電解質膜、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

プロトン伝導性材料、プロトン伝導性電解質膜、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、プロトン伝導性材料、プロトン伝導性電解質膜、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。
これまでの豊かな生活は、石油や石炭などの化石燃料を大量に消費して得られたエネルギーを使用することで、手に入れられたものである。しかしながら、近年は、その代償として地球規模の環境問題が表面化してきており、経済発展は大きな転換期を迎えている。今後、持続可能な成長を実現するためには、エネルギー変換効率とエネルギー密度が高く、地球環境を汚染しないクリーンなエネルギーが必要となる。
燃料電池は、次世代クリーンエネルギーとして注目されており、それを構成する電解質の種類により、大きく固体高分子形、リン酸形、固体酸化物形、溶融炭酸塩形等に分類される。なかでも、固体高分子形燃料電池(以下、PEFCと略記する)は、他の方式に比べて、装置が小型かつ高出力であるため、小規模オンサイト型発電用、車両等の移動体用、携帯機器用の電源等として、次世代の主力を担うシステムと位置付けられている。
そして、燃料としてアルコール、エーテル、炭化水素類等、水素以外の液体燃料を直接供給し、触媒反応によってこれらの燃料からプロトンと電子を取り出す燃料電池が検討されている。このような燃料電池の代表例は、メタノール(通常、水溶液として使用する)を燃料とする直接メタノール型燃料電池(以下、DMFCと略記する)である。DMFCは外部改質器などの補機を必要とせず、燃料の取り扱いが容易であるため、多種多様な燃料電池の中でも、特に小型、携帯用電源として最も期待されている。
一方、燃料電池用として好適なプロトン伝導性電解質膜として、有機ケイ素化合物を利用し、ケイ素−酸素結合からなる架橋構造を有するものが開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。有機ケイ素化合物は、強い結合エネルギーを有するケイ素−酸素結合からなるために、化学的安定性、耐熱性及び耐酸化性が高く、その組成によって多くの特異な性質を付与できるため、電気、電子、事務機器、建築、食品、医療、繊維、プラスチック、紙、パルプ、塗料ゴムといったあらゆる産業分野で使用されている。また、ケイ素−酸素結合からなる架橋構造は、プロトン伝導性電解質膜のように、強い酸性条件下で高温高湿にさらされる場合でも、プロトン伝導性電解質膜内部の架橋構造として好適に使用できる。さらに、メタノールなどのアルコールを燃料として使用した場合でも、ケイ素−酸素架橋構造により膨潤が小さく抑えられるので、アノードで利用されなかったメタノールがカソード側へ漏れ出して反応する、いわゆるメタノールクロスオーバー(以下、MCOと略記することがある)の低減が期待できる。
しかし、有機ケイ素化合物としてケイ素−酸素結合を有する場合には、主骨格がポリシロキサンという無機成分であるために剛直となり、一旦硬化してしまうと柔軟性に乏しくなる。そのため、例えば、フッ素系スルホン酸で構成された代表的なプロトン伝導性電解質膜であるナフィオン(登録商標)(デュポン社製)を電極バインダーとして使用し、有機ケイ素化合物の膜と電極とを接合した場合には、膜の配合によっては、高い接合性を発現することが難しい場合があった。また、その結果生ずる界面によって、接触抵抗が大きくなる場合があった。一方、ケイ素−酸素結合よりも柔軟性に優れたケイ素−炭素結合を多く有するプロトン伝導性電解質膜の場合は、前述した接合性と接触抵抗の改善が見られた。しかし、ケイ素−炭素結合の分子間力が非常に弱いため、湿度変化等の外部刺激の影響を受け易く、耐衝撃性及び燃料遮断性が低下するという問題点があった。
また、高濃度燃料を使用した場合は、一般的なフッ素系のプロトン伝導性電解質膜や炭化水素系のプロトン伝導性電解質膜と同様に、一部の有機ケイ素化合物のプロトン伝導性電解質膜でも、膨潤によって変形し、膜と電極との接着性が弱くなり接触抵抗が大きくなる場合もあった。
DMFCは、燃料供給方式の違いによって大きく2種類に分類される。ポンプ等の補機によって強制的に燃料供給を行うアクティブ型と、浸透によって燃料供給を行うパッシブ型である。アクティブ型は補機を搭載するため、システムが複雑化してしまうが、燃料供給条件や温度を制御できるため、高出力を得易い。一方、パッシブ型は補機がないため、出力はアクティブ型に劣るが、システムは非常にシンプルで小型・軽量化が可能である。携帯機器用燃料電池として、出力が必要なノートPC向けにはアクティブ型が、コンパクトな設計が必要な携帯電話向けにはパッシブ型が、主にそれぞれ開発されている。
パッシブ型DMFCは補機がないため、アクティブ型よりもMCOの影響を大きく受ける。特に高濃度燃料の運転では、MCOによって燃料がカソード上で反応し、温度上昇とそれに伴うMCOの増加が起こる。この繰り返しによって系の温度が上昇し過ぎて、運転が続行不可能になる問題点があった。
特許第3679104号公報 国際公開第2003/026051号パンフレット
パッシブ型のDMFCでは、MCOが高い膜を使用すると、多くの燃料が膜を透過してカソード側で反応し、カソード側の温度が上昇する。その結果、系全体の温度が上昇して、膜のMCOはさらに大きくなる。この温度上昇サイクルの繰り返しによって、最終的には安定的な発電が出来なくなり、DMFCとしての系そのものが成り立たなくなる。また、MCOが大きいほど、燃料であるメタノール水溶液が無駄になるだけでなく、カソード側で反応して電位を下げるため、出力が低下する。このように、燃料利用効率と出力が同時に大きく低下するという問題点があった。
また、温度上昇サイクルの繰り返しのために、パッシブ型DMFCにおいて、発電を安定的に持続しながら燃料を使い切ることが困難であった。
また、一般的にDMFC用電解質膜は親水性であり、燃料であるメタノール水溶液によって膨張、溶出など形状が変化することが多かった。そのため、メタノール濃度の増加率に対してMCOの増加率の方が大きいことがほとんどであり、高濃度ではMCOの増加率が急増することが通常であった。その結果、パッシブ型DMFCで安定的な発電状態を維持することが困難であった。
また、DMFCでは、通常プロトン伝導に随伴水が必要であるため、アノード側は水が不足気味になる。高濃度燃料を使用した場合、この傾向が顕著に現れる。通常、カソードで発生する生成水の逆拡散を利用して随伴水の不足分を補う。しかしながら、補機を有さないパッシブ型DMFCにおいては、プロトン伝導性電解質膜が効率的な逆拡散をする必要があった。
しかし、パッシブ型DMFCを安定的に発電できるようなプロトン伝導性電解質膜は、MCOを低く抑えた膜であり、一般的に疎水性が高く、吸水性や保水性は低かった。そのため、膜によるカソード生成水の効率的な逆拡散ができず、抵抗が増大するという問題点があった。
さらにDMFC用電解質膜においては、高プロトン伝導性を実現するために、多数の酸基が必要となり、燃料である極性溶媒に対して耐久性、形状安定性、低MCO性能を維持すること、すなわち、これらの諸物性と高プロトン伝導性との両立が難しかった。
例えば、低MCO化の試みは、一般にメタノール分子の透過性だけでなく、プロトンの透過性も抑制してしまう。とりわけ、ナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)のMCOに対する電解質膜のMCOの比が0.1よりも小さいような低MCO膜では、プロトン伝導性が急激に低下した。すなわち、低MCOと低抵抗(低バルク抵抗、低界面抵抗)の両立は困難であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高濃度のメタノールを使用して発電する場合でも、メタノールクロスオーバー(MCO)を低減でき、DMFC、特にパッシブ型DMFCにおいても抵抗を低く維持すること、温度上昇サイクルを使用温度領域内の低温(通常25〜50℃)で抑えること、安定的な発電を維持し、燃料を使い切れることが可能なプロトン伝導性電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、金属−酸素結合と、酸基と、疎水性の架橋構造体と、を有するプロトン伝導性材料であって、前記架橋構造体が、粒子の連続体を構成するとともに、前記粒子の間隙に疎水性の架橋構造を有し、プロトン伝導路が形成されているプロトン伝導性材料において、前記架橋構造は、重合性不飽和二重結合を有するシラン化合物(α)並びに酸基及び重合性不飽和二重結合を有する酸基含有化合物(β)からなる群から選択される二種以上の少なくとも一部の間を架橋剤によって架橋したものであり、前記架橋剤は、前記シラン化合物(α)又は酸基含有化合物(β)と結合可能な重合性不飽和二重結合を一つ以上有する疎水性の官能基を一分子中に有することを特徴とするプロトン伝導性材料である。
請求項2にかかる発明は、前記粒子が、一次粒子の表面にさらに二次粒子が存在する複合粒子であり、該複合粒子の表面及び/又は内部にプロトン伝導路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性材料である。
請求項3にかかる発明は、ケイ素−酸素結合による架橋構造を含むケイ素−酸素結合型構造体(A)と、酸基を有する酸基含有構造体(B)と、がケイ素−酸素結合によって連結された構造を有し、前記ケイ素−酸素結合型構造体(A)が、下記一般式(1)で表され、前記酸基含有構造体(B)が、重合性不飽和二重結合を有するシラン化合物(α)と、酸基及び重合性不飽和二重結合を有する酸基含有化合物(β)と、が共有結合した構造体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロトン伝導性材料である。
Figure 0005480578
(式中、Rは炭素数1〜50の二価の炭化水素基又は酸素原子であり;R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基であり、少なくとも一つはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基であり;mは1以上の整数であり、mが2以上である場合には、複数のR〜Rはそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。)
請求項4にかかる発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロトン伝導性材料を使用したことを特徴とするプロトン伝導性電解質膜である。
請求項5にかかる発明は、初期メタノール濃度が3〜65質量%であるメタノール水溶液層及び水層を仕切るように前記プロトン伝導性電解質膜を配置し、所定時間経過後に前記メタノール水溶液層から前記プロトン伝導性電解質膜を介して前記水層へメタノールが透過した後の、前記水層中のメタノール濃度を、初期メタノール濃度が異なる二種類の前記メタノール水溶液層を使用して測定した時に、前記水層中のメタノール濃度の増加率が、前記メタノール水溶液層の初期メタノール濃度の増加率よりも低く、かつ前記メタノール水溶液層の初期メタノール濃度が高いほど、前記水層中のメタノール濃度の増加率が低くなることを特徴とする請求項4に記載のプロトン伝導性電解質膜である。
請求項6にかかる発明は、請求項4又は5に記載のプロトン伝導性電解質膜の片面上に、該プロトン伝導性電解質膜に対して、表面方向のプロトン伝導性が同等以上である高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上、あるいは前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、この順で積層されていることを特徴とするプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜である。
請求項7にかかる発明は、請求項4又は5に記載のプロトン伝導性電解質膜の一方の面上に、該プロトン伝導性電解質膜に対して、表面方向のプロトン伝導性が同等以上である高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、他方の面上に、前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、それぞれこの順で積層されていることを特徴とするプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜である。
請求項8にかかる発明は、請求項6又は7に記載のプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜の一方の面上に燃料極が、他方の面上に酸素極がそれぞれ接合されていることを特徴とする膜−電極接合体である。
請求項9にかかる発明は、請求項8に記載の膜−電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池である。
請求項10にかかる発明は、前記膜−電極接合体を単位セルとして、前記単位セルの外側に、燃料及び/又は酸素の通路となる一対のセパレータが設置されるとともに、隣り合う複数の前記単位セルが相互に連結されていることを特徴とする請求項9に記載の固体高分子形燃料電池である。
本発明によれば、高濃度のメタノールを使用して発電する場合でも、MCOを低減でき、DMFC、特にパッシブ型DMFCにおいても抵抗を低く維持すること、温度上昇サイクルを使用温度領域内の低温(通常25〜50℃)で抑えること、安定的な発電を維持し、燃料を使い切ることが可能なプロトン伝導性電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供できる。これにより、優れた発電性能を長期に渡って維持できる。
本発明のプロトン伝導性電解質膜を例示する概略図である。 本発明のプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜を用いた膜−電極接合体を例示する概略図である。
以下、本発明について詳しく説明する。
<プロトン伝導性材料>
本発明のプロトン伝導性材料は、金属−酸素結合と、酸基と、疎水性の架橋構造体と、を有するプロトン伝導性材料であって、前記架橋構造体が、粒子の連続体を構成するとともに、前記粒子の間隙に疎水性の架橋構造を有し、プロトン伝導路が形成されていることを特徴とする。
金属−酸素結合は、強い酸性条件下で高温高湿にさらされた場合や、メタノール等のアルコールを燃料として使用した場合でも、安定した形状を維持できる。
前記金属−酸素結合を構成する金属としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等が例示でき、ケイ素が好ましい。
前記粒子は、電解質粒子が互いに結合した粒子の連続体を構成している。このような粒子の連続体においては、その架橋密度や粒子間結合強度を調整することで、プロトン伝導性材料の強度や可撓性も適宜調整できる。
また、前記粒子は、表面に酸基を有しており、粒子と粒子との間隙に、プロトン伝導路が形成されている。このような構造をとることにより、電解質の機械的強度が向上し、かつ効率的にプロトンが伝導される。
前記粒子は球形であることが好ましいが、不定形粒子でも良い。ここで不定形粒子とは、完全な曲面により構成されておらず、一部又は全部に角のある箇所を有する粒子を指す。粒子の平均粒子径は、1〜500nmであることが好ましく、3〜200nmであることがより好ましい。平均粒子径が500nmを超えると、プロトン伝導を担う粒子の表面積が減少し、高いプロトン伝導度が得られなくなることがあり、さらに、粒子の間隙が大きくなり過ぎて脆くなることがある。一方、平均粒子径が1nmよりも小さいと、均一層に近くなり、より少ない酸基で効率的にプロトン伝導できなくなる場合がある。平均粒子径の範囲を前述の好ましい範囲とすることにより、十分な強度を確保しつつ、プロトン伝導経路を十分に確保できる。粒子径は、例えば、電界放射形走査電子顕微鏡(FE−SEM)等の電子顕微鏡写真から直接求めることもできるが、小角X線散乱等の手段によって求めることもできる。また、粒子径には分布があっても良い。すなわち、均一な粒子径の粒子の連続体であっても良いし、不均一な粒子径の粒子の連続体であっても良い。ここで、粒子径が均一であると、粒子径にもよるが、幾何学的に間隙ができ易く、高いイオン伝導度を発現できることがある。一方、粒子径分布があると、密なパッキングが可能であり、燃料遮断性の向上や膜の強度向上に寄与する。したがって、使用状況に応じて粒子径分布を選択することが好ましい。粒子径は、使用する原料の構造、分子量又は濃度、あるいは溶媒の種類、反応温度等の条件の調整により制御できる。
前記粒子は、電解質の一次粒子の表面に、さらに該一次粒子とは異なる成分の二次粒子が存在する複合粒子であることが好ましい。そして、前記一次粒子及び二次粒子は、互いに異なる成分であることが好ましい。また、前記複合粒子の表面及び/又は内部には、プロトン伝導路が形成されていることが好ましい。このように、前記複合粒子が互いに結合した粒子の連続体構造とすることにより、本発明の一層優れた効果が得られる。
一次粒子の平均粒子径は、10〜200nmであることが好ましく、20〜150nmであることがより好ましく、30〜100nmであることが特に好ましい。さらに、二次粒子の平均粒子径は、1〜300nmであることが好ましく、2〜200nmであることがより好ましく、3〜150nmであることが特に好ましい。
以下、プロトン伝導性材料の好ましい実施形態について、より詳細に説明する。
(1)第一のプロトン伝導性材料
第一のプロトン伝導性材料は、ケイ素−酸素結合による架橋構造を含むケイ素−酸素結合型構造体(A)(以下、ケイ素−酸素結合型構造体(A)と略記する)と、酸基を有する酸基含有構造体(B)(以下、酸基含有構造体(B)と略記する)と、がケイ素−酸素結合によって連結された構造を有し、ケイ素−酸素結合型構造体(A)が、下記一般式(1)で表され、酸基含有構造体(B)が、重合性不飽和二重結合を有するシラン化合物(α)(以下、シラン化合物(α)と略記する)と、酸基及び重合性不飽和二重結合を有する酸基含有化合物(β)(以下、酸基含有化合物(β)と略記する)と、が共有結合した構造体を含むものである。
Figure 0005480578
(式中、Rは炭素数1〜50の二価の炭化水素基又は酸素原子であり;R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基であり、少なくとも一つはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基であり;mは1以上の整数であり、mが2以上である場合には、複数のR〜Rはそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。)
プロトン伝導性材料は、酸基含有構造体(B)が配合されて形成されていることにより、膜中の酸基濃度を高濃度に維持できるとともに、膜中のプロトン濃度を上昇させることができ、長時間安定した燃料電池作動を達成できる。
(i)ケイ素−酸素結合型構造体(A)
ケイ素−酸素結合型構造体(A)は、前記一般式(1)で表される。
一般式(1)中、Rは炭素数1〜50の二価の炭化水素基又は酸素原子である。炭素数が50より多くなると架橋が不十分であり、プロトン伝導性材料の耐膨潤性、耐熱性が見込めなくなる。
の二価の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでも良く、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれでも良い。
前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでも良いが、飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。
該脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
該脂肪族炭化水素基の特に好ましいものとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が例示できる。
前記芳香族炭化水素基は、単環式及び多環式のいずれでも良いが、単環式であることが好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
また、Rの二価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が結合した2価の基でも良く、このようなものとしては、芳香族炭化水素の二個の水素原子が2価の脂肪族炭化水素基で置換された二価の基が好ましい。ここで、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、上記で説明したものの中から、炭素数の総数が50以下となる組み合わせを選択すれば良い。好ましいものとして具体的には、ベンゼンの1位及び4位の水素原子がアルキレン基で置換されたものが例示でき、該アルキレン基としては炭素数1〜5であるものが好ましく、炭素数1〜3であるものがより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
は、ヘテロ原子を有していても良い。ここで、「ヘテロ原子を有する」とは、Rの少なくとも一つの水素原子又は炭素原子が、ヘテロ原子又はヘテロ原子を有する基で置換されていることを指す。また、ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が例示できる。なかでも、Rの少なくとも一つの炭素原子が、酸素原子(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−NH−C(=O)−)で置換されたものは、これらの結合形成の容易性、構造体の柔軟性、原料の入手容易性の観点から好ましい。
上記のなかでもRとしては、耐酸性が高く、極めて安定であることから、二価の炭化水素基が好ましい。そして、酸、ラジカル等による攻撃に対して安定であり、さらに、屈曲可能な構造であるため、プロトン伝導性材料に適度な柔軟性を付与でき、緻密性なども調整できることから、直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。これら安定性、柔軟性、緻密性等は、飽和脂肪族炭化水素基の分子長で調整できる。
一般式(1)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基である。ここで、R〜Rのいずれかが、式「−O−Si−」で表される基である場合には、ケイ素−酸素結合型構造体(A)が、他のケイ素−酸素結合型構造体(A)と結合していることを示す。
一般式(1)中、mは1以上の整数である。
が2以上である場合には、複数のR〜Rはそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。例えば、一般式(1)において、mが2以上の整数である場合には、ケイ素−酸素結合型構造体(A)は、Rとして炭素数1〜50の二価の炭化水素基と酸素原子とを両方含むものであっても良く、このようなものとして、一般式「−Si−R’−Si−O−(式中、R’は炭素数1〜50の二価の炭化水素基を表す)」で表される繰り返しの基本骨格を有するものが例示できる。同様に、複数のRも互いに同一でも異なっていても良く、複数のRも互いに同一でも異なっていても良い。そして、RとRも互いに同一でも異なっていても良い。
ケイ素−酸素結合型構造体(A)は、例えば、RがOであり、且つR〜Rが「−O−Si−」である場合のように、無機化合物の場合もあれば、有機化合物を複合した有機無機複合体の場合もある。有機化合物を複合する場合は、無機物が有する耐熱性と、有機物が有する柔軟性とを両方兼ね備えたプロトン伝導性材料を形成できる。このような化合物を使用する場合には、架橋構造間の分子構造設計により、柔軟性をはじめとする各膜物性の調整が可能である。プロトン伝導性材料としての重要な特性の一つである燃料遮断性も、分子構造、架橋密度の調整により調整できる。
これらの構造体を形成する架橋性前駆体は、そのまま市販されているものもあり、さらに、不飽和結合を有するものは、対応するシリル化合物のヒドロシリル化反応により合成でき、水酸基やアミノ基等を有するものも同様に合成できる。
ケイ素−酸素結合型構造体(A)として、具体的には、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(ジエトキシメチルシリル)オクタン、1,8−ビス(エチルジメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン及びn−ブチルトリメトキシシラン等のアルコキシシランが加水分解されたモノマーが、重縮合したものが好ましい。また、前記アルコキシシランのアルコキシ基が、他のアルコキシ基で置換されたものも同様に使用できるし、さらに本発明においては、これらアルコキシシランに限定されるものではない。そしてこれら以外にも、例えば、ケイ酸や、少なくとも一つの水酸基が塩を形成しているケイ酸塩をモノマーとして、これらの一種以上が重縮合したものも、好ましいものとして例示できる。前記ケイ酸塩としては、ケイ酸のアルカリ金属塩が例示でき、ケイ酸ナトリウムが好ましい。
また、ケイ素−酸素結合型構造体(A)の形成には、オリゴマーも使用でき、これを重縮合させて、ケイ素−酸素結合型構造体(A)としても良い。好適なオリゴマーとして、各種市販品も利用でき、具体的には、KC−89、KR−500、KR−212、KR−213、KR−9218(いずれも信越化学工業社製)等が例示できる。
さらに、前記モノマー及びオリゴマーを併用して、ケイ素−酸素結合型構造体(A)としても良い。
ケイ素−酸素結合型構造体(A)は、一種の原料(前記モノマー又はオリゴマー)が重縮合したものでも良く、二種以上の原料(前記モノマー及び/又はオリゴマー)が重縮合したものでも良い。二種以上が重縮合したものである場合、これら原料の組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
ケイ素−酸素結合型構造体(A)は、前記原料由来のアルコキシ基又は該アルコキシ基が加水分解された水酸基が残存していても良いが、アルコキシ基及び水酸基の残存数が少ないものほど好ましく、アルコキシ基及び水酸基が残存せずに、すべて重縮合反応したものが最も好ましい。アルコキシ基及び水酸基の残存数が少なく、ケイ素−酸素結合を形成しているほど、緻密な構造をとり、プロトン伝導性材料の耐熱性、燃料遮断性、機械的強度が向上する。
本発明においては、適切なケイ素−酸素結合型構造体(A)を使用することで、シリカ架橋粒子を形成させることもでき、その架橋密度や粒子間結合強度を調整することで、プロトン伝導性材料の強度、可撓性を適宜調整することもできる。
ケイ素−酸素結合型構造体(A)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(ii)酸基含有構造体(B)
酸基含有構造体(B)は、シラン化合物(α)と酸基含有化合物(β)とが共有結合した構造体を含むものである。そして、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)のみが結合して形成されていても良いし、シラン化合物(α)及び/又は酸基含有化合物(β)に、これら以外のその他の成分が結合して形成されていても良い。
一般に、ケイ素−酸素架橋性化合物は構造が剛直なため、酸基等の極性が高い部分が多く存在すると、温度変動や極性溶媒の含浸等による燃料遮断性、プロトン伝導性の低下を生じさせる場合がある。これに対して、酸基含有構造体(B)において、酸基含有化合物(β)に由来する酸基と、シラン化合物(α)に由来するケイ素原子とは、所定の距離だけ離間して架橋構造を形成する。そのため、高燃料遮断性や強度等、プロトン伝導性電解質膜に求められる様々な特性をより向上させることができる。さらに、酸基含有構造体(B)中に有機部位が多く含まれることにより、プロトン伝導性電解質膜に柔軟性が付与され、耐衝撃性が向上する。また、必要に応じて架橋剤(C)を導入することにより、柔軟かつ強固な架橋構造が得られるため、耐衝撃性及び耐極性溶媒性が一層向上する。
酸基含有構造体(B)においては、酸基含有化合物(β)に由来する酸基と、シラン化合物(α)に由来するケイ素原子とが、少なくとも3つ以上の連続した炭素原子間の結合を介して結合していることが好ましく、少なくとも4つ以上の連続した炭素原子間の結合を介して結合していることがより好ましい。これにより、酸基とケイ素原子との結合距離が近い場合に生じ得る、極性溶媒の急激な浸入や冷熱繰り返し等の衝撃によるプロトン伝導性電解質膜の構造の破壊や特性劣化を抑制するより一層高い効果が得られる。
(ii−1)シラン化合物(α)
シラン化合物(α)は、重合性不飽和二重結合を有するものであれば良く、ケイ素−酸素結合と重合性不飽和二重結合を有するものが特に好ましい。
好ましいシラン化合物(α)として具体的には、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(メチルジエトキシシリル)プロピルアクリレート、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(メチルジエトキシシリル)プロピルメタクリレート、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、アリルトリメトキシシラン等が例示できる。
これらの中でもシラン化合物(α)としては、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、アリルトリメトキシシランが特に好ましい。
また、シラン化合物(α)としては、オリゴマーも使用できる。好適なオリゴマーとして、各種市販品も利用でき、具体的には、X−22−164、X−22−164AS、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475(いずれも信越化学工業社製)等が例示できる。
シラン化合物(α)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すれば良い。
(ii−2)酸基含有化合物(β)
酸基含有化合物(β)は、酸基及び重合性不飽和二重結合を有するものであれば良い。
酸基含有化合物(β)における酸基としては、水中での酸解離定数で定義される該酸基含有化合物(β)のpKaを5以下とするものが好ましく、スルホン酸基(スルホ基、−SOH)、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボキシル基(カルボン酸基、−C(=O)−OH)、硫酸基、リン酸基、ホウ酸基等が例示でき、スルホン酸基が特に好ましい。
酸基含有化合物(β)の好ましいものとしては、プロトン付加が可能なヘテロ原子を三つ以上有し、且つメチレン基が二つ以上連結した直鎖構造を含むアクリルアミド誘導体又は(メタ)アクリレート誘導体が例示できる。ここでプロトン付加が可能なヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子が例示でき、スルホン酸基等、前記酸基を構成する原子であっても良い。
好ましい酸基含有化合物(β)として、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸、3−スルホプロピルメタクリレート、p−スチルスルホン酸、4,4’−ジアミノスチルベンゼン−2,2’−ジスルホン酸、イタコン酸ビス(3−スルホプロピル)等が例示できる。
これらの中でも、酸基含有化合物(β)としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が特に好ましい。
酸基含有化合物(β)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
酸基含有構造体(B)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(2)第二のプロトン伝導性材料
第二のプロトン伝導性材料は、第一のプロトン伝導性材料において、ケイ素−酸素結合型構造体(A)及びシラン化合物(α)、あるいはケイ素−酸素結合型構造体(A)及び酸基含有化合物(β)が、架橋剤(C’)で架橋されているものである。ここで、架橋剤(C’)は、少なくとも一部のケイ素−酸素結合型構造体(A)及びシラン化合物(α)間、あるいは、少なくとも一部のケイ素−酸素結合型構造体(A)及び酸基含有化合物(β)間で架橋していれば良い。
(iii)架橋剤(C’)
架橋剤(C’)は、プロトン伝導性材料中で、構成成分同士を架橋すると共に、プロトン伝導性材料に親水性を付与するものである。そして、架橋剤(C’)を配合することで、膜中に水分子を多数保持できるとともに、プロトン伝導性材料のメタノール遮断性が一層向上し、高濃度発電や低加湿発電においても、長時間安定した燃料電池作動を達成できる。
架橋剤(C’)の好ましいものとしては、水酸基及び重合性不飽和二重結合を有するものが例示でき、具体的には、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール等が例示できる。さらに、上記以外にも好ましいものとして、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルリン酸、アクリル酸等が例示できる。
架橋剤(C’)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(3)第三のプロトン伝導性材料
第三のプロトン伝導性材料は、第一又は第二のプロトン伝導性材料において、ケイ素−酸素結合型構造体(A)及び/又は酸基含有構造体(B)が、さらに、水酸基含有構造体(P)と連結された構造を有し、前記水酸基含有構造体(P)が、ヒドロキシアルコキシ基を有する化合物(a)(以下、化合物(a)と略記することがある)と、リン原子を有する重合性無機酸成分及び/又は無機酸重合体(b)(以下、無機酸(b)と略記することがある)とが連結した構造を含むものである。
(iv)水酸基含有構造体(P)
水酸基含有構造体(P)は、「解離プロトン数(mmol)/質量(g)」で定められるmEqの値が0.5〜5であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。このようにすることで、高濃度燃料を使用した場合でも、高い発電性能を発揮でき、高い燃料遮断性を実現できると共に、膜と電極との接合強度を一層向上させることができる。
(iv−1)化合物(a)
化合物(a)において、ヒドロキシアルコキシ基は、特に限定されないが、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基又はヒドロキシプロポキシ基であることが好ましい。
また、化合物(a)の水酸基一つあたりの分子量(「(化合物(a)の分子量)/(化合物(a)の水酸基の数)」)は、30〜300であることが好ましい。
また、化合物(a)は、重合性不飽和二重結合を有していても良く、その場合の化合物(a)の重合性不飽和二重結合一つあたりの分子量(「(化合物(a)の分子量)/(化合物(a)の重合性不飽和二重結合の数)」)は、100〜300であることが好ましい。
このような化合物(a)としては、水酸基型低分子材料、水酸基型モノマー材料及び水酸基型有機無機ハイブリッド材料が例示できる。
水酸基型低分子材料の好ましいものとしては、1,3−ビス(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−2−プロパノール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)エーテル、1,2,3−プロパントリオール、グリセロールトリグリシジルエーテル、グリセロールトリプロポキシレートトリグリシジルエーテル、グリセロール三酢酸等が例示でき、1,2,3−プロパントリオールが特に好ましい。
水酸基型モノマー材料の好ましいものとしては、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレート、1,3−ジメタクリル酸グリセロール、メチリデングリセロール、グリセロールモノメタクリレート、グリセロールモノアセテート、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール等が例示でき、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレートが特に好ましい。
水酸基型有機無機ハイブリッド材料の好ましいものとしては、グリセロール2−リン酸二ナトリウム・n水和物、ケイ酸ナトリウム・n水和物又はビニルリン酸と、前記水酸基型低分子材料又は水酸基型モノマー材料とを反応させて得られる化合物等が例示でき、グリセロール2−リン酸二ナトリウムn水和物又はビニルリン酸と、前記水酸基型低分子材料又は水酸基型モノマー材料とを反応させて得られる化合物が特に好ましい。ここで、nは1以上の整数である。
化合物(a)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(iv−2)無機酸(b)
無機酸(b)の好ましいものとしては、ポリリン酸、リン酸ナトリウム・n水和物と他の重合性無機成分とを反応させて得られる化合物等が例示でき、ポリリン酸が特に好ましい。
無機酸(b)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
水酸基含有構造体(P)は、さらに、ポリビニルアルコールが結合した構造を含んでいても良い。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は、95モル%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがより好ましい。
また、水酸基含有構造体(P)は、親水性樹脂を架橋できる架橋材で架橋されたものでも良く、該架橋剤として、ジヒドラジド類、トリヒドラジド類、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、ジアミン類、トリアミン類、ジアルデヒド類、トリアルデヒド類等が例示できる。
水酸基含有構造体(P)は、さらに、水酸基含有構造体(P)を形成するモノマーと結合可能な官能基を有し、且つ酸基を有さないモノマー、あるいは水酸基含有構造体(P)又は水酸基含有構造体(P)を形成するモノマーと結合可能な官能基を複数有する架橋剤を配合して形成されたものでも良い。このようなもので好ましいものとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ビス(アクリロイルオキシ)ブタン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1−(アクリロイルオキシ)−3−(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、ジビニルベンゼン、3−(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニルメタクリレート等が例示できる。
水酸基含有構造体(P)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(iv−3)酸基含有構造体(H)
水酸基含有構造体(P)は、さらに、酸基含有構造体(H)が結合した構造を含んでいても良い。
酸基含有構造体(H)の好ましいものとしては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸、3−スルホプロピルメタクリレート、4,4’−ジアミノスチルベンゼン−2,2’−ジスルホン酸、イタコン酸ビス(3−スルホプロピル)等のモノマーを重合させたポリマーが例示できる。
さらに、酸基含有構造体(H)の好ましいものとしては、酸基を有し且つケイ素−酸素結合により膜の架橋構造と結合できる、下記一般式(2)で表される構造体が例示できる。
Figure 0005480578
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合または水酸基であり;Yはプロトン供与性基であり;Rは二価の有機基であり;Rはメチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であり;mは0、1又は2であり;mが0又は1である場合には、複数のXは互いに同一でも異なっていても良く;mが2である場合には、二つのRは互いに同一でも異なっていても良い。)
一般式(2)中、Xは架橋に関与する−O−結合または水酸基である。そして、酸基含有構造体(H)は、Xとして架橋に関与する−O−結合を有する場合には、ケイ素−酸素結合による架橋構造を有していて、Xがすべて水酸基である場合には、ケイ素−酸素結合による架橋構造を形成し得るものである。すなわち、水酸基は架橋構造を形成し得る基である。
一般式(2)中、Yはプロトン供与性基であり、プロトン供与性を有するものであれば特に限定されないが、酸基であることが好ましい。ここで、酸基としては、スルホ基(スルホン酸基、−SOH)、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボキシル基(カルボン酸基、−C(=O)−OH)、硫酸基、リン酸基、ホウ酸基等、種々の酸基が例示できるが、pKaが低く、膜中プロトン濃度を十分に確保でき、熱的にも安定である点から、スルホン酸基が特に好ましい。
一般式(2)中、Rは二価の有機基であり、プロトン供与性基(Y)と、X及びRが結合しているケイ素原子とを、共有結合により連結するものである。
は、二価の有機基であれば特に限定されないが、耐熱性、耐酸性、耐酸化性等に優れているものが好ましい。このような観点から、Rは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、直鎖状のアルキレン基であることがより好ましい。直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、3〜10であることが特に好ましい。
Yがスルホン酸基である場合、「−R−Y」は、下記一般式(2a)で表されることが好ましい。
Figure 0005480578
(式中、mは1〜20の整数である。)
一般式(2a)中、mは1〜20の整数であり、1〜10であることが好ましく、3〜10であることがより好ましい。
上記の中で、mが3である酸基含有構造体(H)の一つである3−(トリヒロドキシシリル)プロパンスルホン酸は、Gelest社より市販されており、また、臭化アリルを原料とした合成法も確立されており、入手が容易であるため、好適である。
本発明においては、例えば、酸基の代わりに酸基の前駆体基を有する、酸基含有構造体(H)の前駆体(H’)を他の成分と連結した後、前記酸基の前駆体基を酸基に変換することにより、プロトン伝導性材料としても良い。ここで、「酸基の前駆体基」とは、化学反応等により、酸基に変換可能な基のことを指す。「化学反応」としては酸化反応や、エステル結合の分解反応等が例示できる。具体的には、酸基がスルホン酸基である場合、「酸基の前駆体基」としては、メルカプト基(チオール基)、スルホン酸エステル基等が例示できる。ただし、これらに限定されるものではない。
例えば、前記前駆体(H’)として、市販品のある3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS−810(チッソ社製)、KBM−803(信越化学社製))等が好適である。
また、mが4以上であれば、Yと前記ケイ素原子との結合距離が近い場合に生じ得る、極性溶媒の急激な浸入や冷熱繰り返し等の衝撃による、プロトン伝導性材料の構造の破壊や特性劣化を抑制する一層高い効果が得られる。
さらに、下記一般式(2−1)で表されるオリゴマー又はポリマーを使用して架橋構造を形成させたのち、メルカプト基を酸化することにより、酸基含有構造体(H)とすることもできる。
Figure 0005480578
(式中、kは1〜20の整数であり;lは3〜500の整数であり;R10はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基又はフェニル基であり;R11はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基又は式「−O−Si−」で表される基であり、複数のR11は互いに同一でも異なっていても良い。)
一般式(2−1)中、R11がメトキシ基であり、kが3であり、lが10であるものは、信越シリコーン社より市販されており(X−41−1805)、好適である。
酸基含有構造体(H)は、さらに、接着補助剤が配合されて形成されていても良い。接着補助剤としては、シリカ粉体、カルシウム系粉体、セラミック系粉体、タルク、カオリン等が例示できる。シリカ粉体としては、中空シリカ粒子(シリカバルーン)、無アルカリガラス等が好ましい。
酸基含有構造体(H)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(v)その他の成分
第一〜第三のプロトン伝導性材料は、前記成分以外に、さらに、その他の成分が配合されて形成されていても良い。その他の成分の好ましいものとしては、架橋剤、相溶化剤(D)が例示できる。また、酸基含有構造体(H)又はその前駆体(H’)が、水酸基含有構造体(P)の有無によらず、独立して配合されていても良い。
(v−1)架橋剤
架橋剤としては、プロトン伝導性材料中で、構成成分同士を架橋するものであれば、任意のものが使用できる。なかでも好ましいものとして、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)からなる群から選択される二種以上を架橋する架橋剤(C)が例示でき、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)を架橋するものが好ましい。ここで、架橋剤(C)は、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)からなる群から選択される二種以上の少なくとも一部の間で架橋していれば良い。
架橋剤(C)を配合することで、プロトン伝導性材料のメタノール遮断性が一層向上し、高濃度発電や低加湿発電においても、長時間安定した燃料電池作動を達成できる。
(v−2)架橋剤(C)
上記のような観点から、架橋剤(C)とは、シラン化合物(α)又は酸基含有化合物(β)と結合可能な官能基を一つ以上、一分子中に有する化合物である。このようなものであれば、架橋剤(C)は特に限定されないが、重合性不飽和二重結合を一つ以上有するものが好ましい。好ましいものとして具体的には、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ビス(アクリロイルオキシ)ブタン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1−(アクリロイルオキシ)−3−(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、ジビニルベンゼン、3−(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニルメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAグリセロレートジアクリレート等の炭化水素系架橋剤;2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート等のフッ素系モノマーが例示できる。
架橋剤(C)の配合割合は、架橋剤(C)の官能基数をN、分子量をN、モル数をN、酸基含有化合物(β)のモル数Bとすると、下記式(W1)及び(W2)の少なくとも一方の関係を満たすことが好ましい。これにより、酸基濃度の低下や、プロトン伝導性の低下を抑制する一層高い効果が得られる。
m/Nf<200 ・・・・(W1)
n/Bn<1 ・・・・(W2)
架橋剤(C)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
また、プロトン伝導性材料は、シラン化合物(α)の重合性不飽和二重結合の反応率が30%以上であるものが好ましく、50%以上であるものがより好ましい。また、酸基含有化合物(β)中の重合性不飽和二重結合の反応率が30%以上であるものが好ましく、50%以上であるものがより好ましい。ここで、「重合性不飽和二重結合の反応率」とは、膜作製時に配合する化合物全量中の二重結合の総数をu、膜作製後に未反応のまま残存している、前記化合物由来の二重結合の総数をuとした場合に、下記式(W3)で定義されるものである。
(u−u)/u×100(%) ・・・・(W3)
シラン化合物(α)の反応重合性については、シラン化合物(α)同士の重合数及び架橋剤(C)を介したシラン化合物(α)同士の重合数の総数をpα−α、シラン化合物(α)と酸基含有化合物(β)との重合数及び架橋剤(C)を介したシラン化合物(α)と酸基含有化合物(β)との重合数の総数をpα−βとした時、下記式(W4)を満たすことが好ましい。
α−α/pα−β<1 ・・・・(W4)
(v−3)相溶化剤(D)
相溶化剤(D)は、配合成分を均一に混合できるものであれば、特に限定されない。好ましいものとしては、モノアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の非イオン性界面活性剤が例示できる。また、相溶化剤としての機能だけでなく、プロトン伝導性電解質膜を構成する材料として必要な機能、例えば、プロトン伝導性、架橋反応性等を併せ持つものであっても良い。
相溶化剤(D)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
プロトン伝導性材料においては、プロトン伝導性を高める目的で、別の酸成分として、その他の酸基含有成分を併用しても良い。ここで、その他の酸基含有成分は、低分子〜高分子のいずれでも良く、酸基とは、上記と同様のものである。好ましいものとして具体的には、スルホコハク酸やその重縮合物が例示できる。
プロトン伝導性材料としては、プロトン伝導性を有するものであれば、上記以外のものも使用できる。例えば、ケイ素−酸素結合型構造体(A)の原料(以下、原料(A)と略記することがある)、酸基含有構造体(B)、シラン化合物(α)、酸基含有化合物(β)、水酸基含有構造体(P)、化合物(a)、無機酸(b)及び酸基含有構造体(H)からなる群から選択される一種の成分を単独で又は連結させて、あるいは二種以上の成分を連結させて、プロトン伝導性材料として使用しても良い。さらに、架橋剤等、その他の成分を配合して形成したものを使用しても良い。二種以上の成分を連結させる場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に調整できる。
前記プロトン伝導性材料は、いずれも、後述するプロトン伝導性電解質膜、プロトン伝導性電解質膜に対して表面方向のプロトン伝導性が同等以上である高プロトン伝導層(以下、高プロトン伝導層と略記する)、メタノール遮断層、ガス遮断層、又はプロトン伝導性材料からなる膜−電極接合層を構成できる。
<プロトン伝導性電解質膜>
本発明のプロトン伝導性電解質膜は、上記本発明のプロトン伝導性材料を使用したことを特徴とする。具体的には、金属−酸素結合と、酸基と、疎水性の架橋構造体とを有し、前記架橋構造体が、粒子の連続体を構成するとともに、前記粒子の間隙に疎水性の架橋構造を有し、プロトン伝導路が形成されているものである。そして、前記金属−酸素結合を構成する金属は、ケイ素であることが好ましい。本発明のプロトン伝導性電解質膜の好ましいものとしては、スルホン化不飽和炭化水素、スルホン化芳香族炭化水素又はスルホン化無機化合物を、不飽和アルコキシシラン、シリコンオリゴマー、不飽和芳香族炭化水素等の架橋基で相互に結合した架橋構造体等が例示できる。
例えば、初期メタノール濃度が所定値のメタノール水溶液層、及び水層を、前記プロトン伝導性電解質膜で仕切って配置すると、時間経過と共にメタノール水溶液層側からプロトン伝導性電解質膜を介して水層側へメタノールが透過し、水層側のメタノール濃度が上昇する。メタノール水溶液層の初期メタノール濃度を高くすれば、含まれるメタノール分子数が多くなるため、通常は透過するメタノール分子数も増加する。これに対して本発明のプロトン伝導性電解質膜は、所定時間経過後の水層中のメタノール濃度を、初期メタノール濃度が異なる二種類のメタノール水溶液層を使用して測定した時に、水層中のメタノール濃度の増加率が、メタノール水溶液層の初期メタノール濃度の増加率よりも低く、かつメタノール水溶液層の初期メタノール濃度が高いほど、水層中のメタノール濃度の増加率が低くなるものが好ましい。この関係を式で表すと、以下のようになる。
メタノール水溶液層の初期メタノール濃度がxの時の水層中のメタノール濃度をy、メタノール水溶液層の初期メタノール濃度がx(ただし、x<x)の時の水層中のメタノール濃度をyとした時、
{(x−x)/x×100} > {(y−y)/y×100}
同様に、メタノール水溶液層の初期メタノール濃度をx→x、x→x(ただし、x<x)とした時、水層中のメタノール濃度がy→y、y→yとなったとすると、
{(y−y)/y×100} > {(y−y)/y×100}
例えば、このようなプロトン伝導性電解質膜として、メタノール水溶液層の初期メタノール濃度の増加率が同じである場合、初期メタノール濃度が高い場合の水層中のメタノール濃度の増加率が低いものが例示できる。測定に供するメタノール水溶液層の初期メタノール濃度は、3〜65質量%であることが好ましい。また、水層中のメタノール濃度は、好ましくは30〜50℃、より好ましくは40℃で、好ましくは2〜5時間後、より好ましくは3時間後に測定することが好ましい。また、前記水層は、純水からなる層であることが好ましい。
なかでも好ましいプロトン伝導性電解質膜は、40℃で3時間後の純水層側のメタノールの濃度が、前記メタノール水溶液層の初期メタノール濃度の1/10000〜1/10となるような、メタノール遮断性を有するものであり、1/1500〜1/10であることがより好ましく、1/300〜1/10であることが特に好ましく、1/60〜1/10であることが最も好ましい。
そして、前記メタノール水溶液層の初期メタノール濃度が30質量%である場合に、上記のようなメタノール遮断性を示すプロトン伝導性電解質膜が特に好ましい。具体的には、40℃で3時間後における前記純水層側のメタノール濃度が、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%となるプロトン伝導性電解質膜が例示できる。これは、フッ素系スルホン酸で構成された代表的なプロトン伝導性電解質膜であるナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)の同条件下におけるメタノール遮断性の1/1000〜1倍に相当する。
プロトン伝導性電解質膜の50℃、90%RH(相対湿度)における単位質量あたりの含水量q(g)は、0.05〜1であることが好ましく、0.1〜0.5であることがより好ましい。
また、40℃で相対湿度を40%から80%へ上げた時のプロトン伝導性電解質膜の単位質量あたりの含水量の増加率は、1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜2であることが最も好ましい。
50℃、90%RH(相対湿度)における、プロトン伝導性電解質膜の酸基一つあたりの水分子数(n)と、同条件下におけるナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)の酸基一つあたりの水分子数の比は、0.1〜10であることが好ましく、0.2〜5であることがより好ましく、0.5〜2であることが最も好ましい。ここで酸基は、前記と同様である。
プロトン伝導性電解質膜の厚みは、1〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
[プロトン伝導性電解質層]
本発明のプロトン伝導性電解質膜は、単独で使用することもできるが、その片面又は両面に、プロトン伝導性電解質層を設けることで、MEAとしての性能を一層向上させることができる。
前記プロトン伝導性電解質層としては、前記高プロトン伝導層、メタノール遮断層、ガス遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上のものが例示できる。これらの二つ以上のものを積層して使用する場合には、その組み合わせ及び積層順は、目的に応じて任意に選択できる。そして、プロトン伝導性電解質膜の両面にプロトン伝導性電解質層を設ける場合には、これらプロトン伝導性電解質層は互いに同一でも良く、異なっていても良い。ここで、「プロトン伝導性電解質層が異なる」とは、プロトン伝導性電解質層を構成する層又はその組み合わせが異なるか、あるいは構成する層の組み合わせが同じで、且つそのプロトン伝導性電解質膜に対する積層順が異なることを指す。
高プロトン伝導層、メタノール遮断層、ガス遮断層及び膜−電極接合層は、それぞれ個別に積層されていなくても良く、例えば、一つの層が、高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される二つ又は三つを兼ねても良いし、高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される二つ又は三つを兼ねても良い。例えば、高プロトン伝導層及び膜−電極接合層を一つの層としても良いし、メタノール遮断層及び膜−電極接合層を一つの層としても良く、高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層を一つの層としても良い。
好ましいプロトン伝導性電解質層としては、高プロトン伝導層を含むものが例示できる。
本発明のプロトン伝導性電解質膜は、電極を形成するための電極用バインダーとしても使用できる。例えば、通常使用される電極用バインダーのように、電極を張り合わせてMEA化を行うことはもとより、スプレーを使って触媒を吹き付けることで、CCM(Catalyst Coated Membrane)構造を作製することも可能である。
<プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜>
本発明のプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜は、上記本発明のプロトン伝導性電解質膜の片面上に、前記高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上、あるいは前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、この順で積層されていることを特徴とする。
また、本発明のプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜は、上記本発明のプロトン伝導性電解質膜の一方の面上に、前記高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、他方の面上に、前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、それぞれこの順で積層されていることを特徴とする。
プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜の好ましいものとして、具体的には、プロトン伝導性電解質膜上に高プロトン伝導層が積層され、さらに該高プロトン伝導層上に、メタノール遮断層又はガス遮断層、及び膜−電極接合層がこの順で積層されたもの;プロトン伝導性電解質膜上に高プロトン伝導層が積層され、さらに該高プロトン伝導層上に、メタノール遮断層又はガス遮断層がこの順で積層されたもの;プロトン伝導性電解質膜上に高プロトン伝導層が積層され、さらに該高プロトン伝導層上に膜−電極接合層が積層されたものが例示できる。
プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜のより好ましいものとして、具体的には、プロトン伝導性電解質膜の片面上に、前記高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層がこの順で積層されているもの、並びに前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層がこの順で積層されているものが例示できる。そして、これらのなかでも、プロトン伝導性電解質膜の一方の面上に、前記高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層がこの順で積層され、他方の面上に前記高プロトン伝導層が積層されているもの、並びにプロトン伝導性電解質膜の一方の面上に、前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層がこの順で積層され、他方の面上に前記高プロトン伝導層が積層されているものが例示できる。
また、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜のより好ましいものとして、具体的には、さらに、プロトン伝導性電解質膜の一方の面上に、前記高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層がこの順で積層され、他方の面上に高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層がこの順で積層されているものが例示できる。
[高プロトン伝導層]
高プロトン伝導層は、プロトン伝導性電解質膜に対して、表面方向のプロトン伝導性が同等以上であれば特に限定されない。そして、高プロトン伝導層の表面方向のプロトン伝導性は、プロトン伝導性電解質膜の1〜1000倍であることが好ましく、1〜100倍であることがより好ましく、1〜10倍であることが特に好ましく、1〜5倍であることが最も好ましい。高プロトン伝導層及びプロトン伝導性電解質膜の表面方向のプロトン伝導性は、同方向の抵抗値を測定し、これら抵抗値を比較することで比較できる。
高プロトン伝導層の厚みは、1〜40μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
高プロトン伝導層の厚みが1μmよりも小さいと、プロトン伝導性電解質膜に対して、表面方向のプロトン伝導性の向上が不十分で、厚み方向のプロトン伝導性の向上が小さくなる可能性がある。また、厚みが40μmよりも大きいと、厚み方向の抵抗が大きくなって、発電性能が低下する可能性がある。また、配合によっては、水やメタノールによって膨潤し、膜−電極接合体の構造を維持できない可能性がある。
[メタノール遮断層]
メタノール遮断層は、プロトン伝導性電解質膜に対してメタノール遮断性が同等以上であれば、特に限定されない。そして、メタノール遮断層のメタノール透過性は、プロトン伝導性電解質膜の0.001〜1倍であることが好ましく、0.05〜0.6倍であることがより好ましい。
また、メタノール遮断層の水透過性は、プロトン伝導性電解質膜の0.1〜100倍であることが好ましく、0.5〜50倍であることがより好ましく、0.7〜10倍であることが特に好ましく、0.9〜5倍であることが最も好ましい。
メタノール遮断性及び水透過性が、いずれも上記範囲内であるメタノール遮断層は、後述する膜−電極接合体において、プロトン伝導性電解質膜に対して燃料極(アノード)側に配置することが好ましい。
メタノール遮断層の厚みは、1〜40μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
メタノール遮断層の厚みが1μmよりも小さいと、メタノール遮蔽性が不十分になり、メタノールクロスオーバー(MCO)により、発電性能が低下する可能性がある。また、厚みが40μmよりも大きいと、水の透過性も低下し、プロトン伝導性、発電性能が低下する可能性がある。
[ガス遮断層]
ガス遮断層は、プロトン伝導性電解質膜に対してガス遮断性が0.1倍以上であれば、特に限定されない。ガス遮断性は、例えば、透過ガス量により比較できる。そして、ガス遮断層のガス遮断性は、プロトン伝導性電解質膜の0.1〜10000倍であることが好ましく、0.1〜1000倍であることがより好ましく、0.2〜700倍であることが特に好ましく、0.2〜500倍であることが最も好ましい。
また、ガス遮断層の水透過性は、プロトン伝導性電解質膜の0.1〜100倍であることが好ましく、0.1〜10倍であることがより好ましく、0.3〜5倍であることが特に好ましく、0.5〜3倍であることが最も好ましい。
ガス遮断性及び水透過性が、いずれも上記範囲内であるガス遮断層は、後述する膜−電極接合体において、プロトン伝導性電解質膜に対して酸素極(カソード)側に配置することが好ましい。
ガス遮断層の厚みは、1〜40μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
ガス遮断層の厚みが1μmよりも小さいと、酸素が透過し、カソードでの反応効率が下がり、発電性能が低下する可能性がある。また、プロトン伝導性電解質膜が乾燥し、プロトン伝導性を維持するための十分な随伴水を保持できない可能性がある。また、厚みが40μmよりも大きいと、厚み方向の抵抗が大きくなって、発電性能が低下する可能性がある。また、配合によっては、水やメタノールによって膨潤し、膜−電極接合体の構造を維持できない可能性がある。
[膜−電極接合層]
プロトン伝導性電解質膜の片面又は両面に積層された最外層の高プロトン伝導層、メタノール遮断層又はガス遮断層上には、さらに、前記膜−電極接合層が積層されていても良い。高プロトン伝導層、メタノール遮断層又はガス遮断層と電極との接着性が良好でない場合、又は、例えば、パッシブ型DMFC等のように、膜と電極との接着性が界面抵抗として現れやすいシステムにおいては、膜−電極接合層を設けることが特に好ましい。ここで、「最外層」とは、プロトン伝導性電解質膜上に積層された各層のうち、最も上方の層のことを指す。本発明のプロトン伝導性電解質膜に電極を接合することで、膜−電極接合体が得られる。
膜−電極接合層の厚みは、1〜50μmであることが好ましく、2〜40μmであることがより好ましく、3〜35μmであることが特に好ましい。
膜−電極接合層の厚みが1μmよりも小さいと、電極との接着性が不十分になり、膜−電極間の抵抗が増大する可能性がある。また、厚みが50μmよりも大きいと、厚み方向の抵抗が大きくなって、発電性能が低下する可能性がある。また、配合によっては、メタノールによって膨潤し、膜−電極接合体の構造を維持できない可能性がある。
前記プロトン伝導性電解質層の厚みに好ましい範囲があるのは、種々の電極構造に対応するためでもある。例えば、表面積が非常に大きな電極の場合には、電極に層が入り込んで最適な界面を形成するために、厚みは厚い方が好ましい。しかし、あまり厚過ぎると逆に拡散性を阻害し、性能を低下させてしまう。
また、プレスやディッピングによって、プロトン伝導性電解質層をプロトン伝導性電解質膜上に形成する際に、プロトン伝導性電解質層は多少なりともプロトン伝導性電解質膜を構成する成分と結合又は一体化する。そして、プロトン伝導性電解質膜は、その種類によっては、プロトン伝導性電解質層との相性が異なるため、プロトン伝導性電解質層とプロトン伝導性電解質膜の厚みの合計が、そのままプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜の総厚みとなる訳ではない。
プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜は、温度20〜80℃、相対湿度30〜90%の条件下における厚み方向のプロトン伝導性が、プロトン伝導性電解質層形成前のプロトン伝導性電解質膜の1〜1000倍であることが好ましく、1〜100倍であることがより好ましく、1〜10倍であることが特に好ましく、1〜5倍であることが最も好ましい。前記厚み方向のプロトン伝導性は、同方向の抵抗値を測定し、これら抵抗値を比較すれば良い。
プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜の厚みは、1〜230μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。
本発明において、プロトン伝導性電解質膜、高プロトン伝導層、メタノール遮断層、ガス遮断層及び膜−電極接合層は、前記プロトン伝導性材料から構成され、上記のような各物性は、プロトン伝導性材料を構成する材料の組成で適宜調整できる。
プロトン伝導性電解質膜は、第一のプロトン伝導性材料で構成されたものが好ましい。
高プロトン伝導層は、水酸基含有構造体(P)が配合されて構成されたものが好ましく、水酸基含有構造体(P)同士が結合して構成されたもの、又は酸基含有構造体(B)と水酸基含有構造体(P)とが結合して構成されたものが好ましい。そして、水酸基含有構造体(P)は、ポリビニルアルコールが結合した構造を含んでいるものが好ましい。さらに、これらに架橋剤(C)が配合されて構成されたものも好ましい。
メタノール遮断層は、第三のプロトン伝導性材料で構成されたものが好ましい。
ガス遮断層は、原料(A)、酸基含有構造体(B)、化合物(a)、ポリビニルアルコール及びその他の酸基含有成分を配合成分として構成されたものが好ましい。
膜−電極接合層は、水酸基含有構造体(P)が配合されて構成されたものが好ましく、水酸基含有構造体(P)同士が結合して構成されたもの、又は酸基含有構造体(B)と水酸基含有構造体(P)とが結合して構成されたものがより好ましく、さらにその他の酸基含有成分が配合されたものが特に好ましい。そして、水酸基含有構造体(P)は、ポリビニルアルコールが結合した構造を含んでいるものが好ましい。さらに、酸基含有構造体(B)、化合物(a)、ポリビニルアルコール及びその他の酸基含有成分を配合成分として構成されたものも好ましい。
前記プロトン伝導性材料は、これを構成するための原料を、目的に応じて任意の配合比で配合し、反応させることで作製できる。
例えば、プロトン伝導性電解質膜の作製において、原料(A)、シラン化合物(α)、酸基含有化合物(β)、前駆体(H’)を配合する場合には、シラン化合物(α)1モルに対する化合物(β)の配合量は、2.5〜50モルであることが好ましく、3〜40モルであることがより好ましく、3.5〜35モルであることが特に好ましい。
また、シラン化合物(α)1モルに対する原料(A)の配合量は、3〜70モルであることが好ましく、6〜65モルであることがより好ましく、8〜60モルであることが特に好ましい。
また、シラン化合物(α)1モルに対する前駆体(H’)の配合量は、1〜30モルであることが好ましく、1.5〜25モルであることがより好ましく、2〜20モルであることが特に好ましい。
さらに、架橋剤(C)を配合する場合には、シラン化合物(α)1モルに対する架橋剤(C)の配合量は、0.1〜8モルであることが好ましく、0.3〜6モルであることがより好ましく、0.5〜4モルであることが特に好ましい。
また、例えば、高プロトン伝導層又はメタノール遮断層の作製において、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)を配合する場合には、シラン化合物(α)1モルに対する酸基含有化合物(β)の配合量は、5〜130モルであることが好ましく、10〜120モルであることがより好ましく、15〜110モルであることが特に好ましい。
さらに、原料(A)を配合する場合には、シラン化合物(α)1モルに対する原料(A)の配合量は、1〜30モルであることが好ましく、3〜25モルであることがより好ましく、7〜20モルであることが特に好ましい。
さらに、架橋剤(C)を配合する場合には、シラン化合物(α)1モルに対する架橋剤(C)の配合量は、0.5〜5モルであることが好ましく、0.8〜3モルであることがより好ましく、1〜2モルであることが特に好ましい。
さらに、化合物(a)及び無機酸(b)(すなわち、水酸基含有構造体(P))を配合する場合には、化合物(a)1gに対する無機酸(b)の配合量は、0.5〜30gであることが好ましく、1〜20gであることがより好ましく、1.5〜15gであることが特に好ましい。
さらに、ポリビニルアルコールを配合する場合には、化合物(a)1gに対するポリビニルアルコールの配合量は、0.5〜40gであることが好ましく、1〜30gであることがより好ましく、1.5〜25gであることが特に好ましい。
また、例えば、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート等、シラン化合物(α)と架橋剤(C’)とを兼ねるものを配合しても良い。
また、例えば、ガス遮断層の作製において、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)を配合する場合には、シラン化合物(α)1モルに対する酸基含有化合物(β)の配合量は、0.1〜10モルであることが好ましく、0.2〜5モルであることがより好ましく、0.2〜3モルであることが特に好ましい。
さらに、原料(A)及び化合物(a)を配合する場合には、原料(A)1gに対する化合物(a)の配合量は、1〜30gであることが好ましく、3〜20gであることがより好ましく、5〜15gであることが特に好ましい。
さらに、ポリビニルアルコールを配合する場合には、化合物(a)1gに対するポリビニルアルコールの配合量は、0.5〜20gであることが好ましく、1〜15gであることがより好ましく、1.5〜7gであることが特に好ましい。
さらに、その他の酸基含有成分を配合する場合には、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)の総量1モルに対する、その他の酸基含有成分の配合量は、0.5〜15モルであることが好ましく、1〜10モルであることがより好ましく、1.5〜5モルであることが特に好ましい。
また、例えば、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール等、化合物(a)と架橋剤(C’)とを兼ねるものを配合しても良い。
また、膜−電極接合層の作製において、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)を配合する場合には、シラン化合物(α)1モルに対する酸基含有化合物(β)の配合量は、高プロトン伝導層等の場合と同様で良い。
さらに、化合物(a)及び無機酸(b)(すなわち、水酸基含有構造体(P))を配合する場合には、化合物(a)1gに対する無機酸(b)の配合量は、高プロトン伝導層等の場合と同様で良い。
さらに、ポリビニルアルコールを配合する場合には、化合物(a)1gに対するポリビニルアルコールの配合量は、0.05〜5gであることが好ましく、0.1〜3gであることがより好ましく、0.15〜1gであることが特に好ましい。
さらに、その他の酸基含有成分を配合する場合には、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)の総量1モルに対する、その他の酸基含有成分の配合量は、0.001〜1モルであることが好ましく、0.005〜0.5モルであることがより好ましく、0.005〜0.1モルであることが特に好ましい。
前記プロトン伝導性材料を形成する時の条件は、使用する原料の種類や目的に応じて、適宜調整すれば良く、特に限定されない。例えば、原料は、すべて一括して配合しても良いし、一種類又は複数種類の原料を、所望の順序で順次配合しても良い。
例えば、重合性組成物を得るときは、好ましくは−10〜100℃で、好ましくは1〜24時間かけて調製すると良い。また、重合性組成物には、光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤を配合することが好ましい。重合開始剤及び熱重合開始剤としては、公知のものが使用できる。
また、重合性組成物を加熱硬化する時は、好ましくは60〜160℃で、好ましくは12〜36時間かけて行うと良い。
本発明においては、プロトン伝導性電解質膜、高プロトン伝導層、メタノール遮断層及びガス遮断層からなる群から選択される一つ以上が、多孔質基材(Q)中で形成され、強度が強化されていても良い。そして、この場合、少なくともプロトン伝導性電解質膜が、多孔質基材(Q)中で形成され、強度が強化されていることが好ましい。
これまでの多孔質基材(Q)中で形成されたプロトン伝導性材料では、通気性が良いため、通常のキャストされたプロトン伝導性材料よりも、ガス遮断性が低い傾向にある。そのため、例えば、酸素極(カソード)中の酸素ガスが、燃料極(アノード)側にまで浸透し易く、電極での反応効率が低下し易い。また、プロトン伝導性材料が乾燥することで、プロトン伝導性も低下し易い。さらに、燃料極で発生したプロトンが燃料極で反応することで、電極での反応効率が低下し易い。その結果、燃料電池の発電性能が低下し易い。これに対して本発明においては、プロトン伝導性材料が保水性に優れるので、このような発電性能の低下が効果的に抑制できる。
(vi)多孔質基材(Q)
多孔質基材(Q)は、有機材料からなるものでも良いし、無機材料からなるものでも良い。これら材料には、レーヨンや精製セルロースのようなセルロース系繊維、絹のようなフィブリル化を起こし易い繊維も含まれる。さらに、多孔質基材(Q)には、極性溶媒を含浸できるプロトン伝導性電解質膜も含まれる。
有機材料としては、ポリエチレン;超高分子量ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリイミド;ポリアリレート系液晶ポリマー等の高分子化合物が例示できる。なかでも、フッ素樹脂、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン又はポリイミドからなる高分子材料は、膜厚や孔径の異なる様々な種類のものが市販されているので好適である。
無機材料としては、ガラス、シリカ、アルミナ、カーボン、炭化ケイ素等が例示できる。
また、多孔質基材(Q)は、複数種類の材料からなるものでも良い。
そして、多孔質基材(Q)は、親水化処理されたものが好ましい。
多孔質基材(Q)の形態としては、上記各材料からなる繊維をシート状に成形した不織布、織布が例示できる。織布は平織り、斜文織、朱子織、からみ織り等のいずれの織り方で織られていても良い。織布はまた、個々の繊維を直接織ったものでも良く、繊維を束ねて形成されたもの(例えば、ガラス糸等の無機糸)を織ったものでも良い。シート状の多孔質基材(Q)は、二種以上の繊維を組み合わせて構成されていても良い。
多孔質基材(Q)は、平均孔径が0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがより好ましい。孔径が小さ過ぎると、ケイ素−酸素結合型構造体(A)や酸基含有構造体(B)を形成するための配合成分が充填され難くなり、プロトン伝導性が低下する。また、孔径が大き過ぎると、燃料遮断性が低下したり、膜の強度が低下し、破損するおそれがある。
多孔質基材(Q)の空孔率は、プロトン伝導性材料の強度、配合成分の充填率との兼ね合いにより一概には言えないが、通常は10〜98%であることが好ましく、20〜97%であることがより好ましい。
多孔質基材(Q)の厚みは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は0.3〜100μmであることが好ましく、0.5〜80μmであることがより好ましい。
多孔質基材(Q)で強化されたプロトン伝導性材料を作製する場合には、プロトン伝導性材料を形成するための成分を含有する液体を多孔質基材(Q)に含浸させ、次いで、オーブン等を使用して加熱することで、前記成分を加熱硬化させ、さらに、焼成すれば良い。加熱時の温度及び時間は、前記重合性組成物を加熱硬化する時と同様で良い。そして、成分の配合量は、多孔質基材を使用しない場合と同様で良い。
本発明において、プロトン伝導性材料、特にプロトン伝導性電解質膜は、その中に含まれるプロトン付加が可能な全てのヘテロ原子の非共有電子対の総数の5%以上がプロトン付加されていることが好ましい。
図1は、本発明で使用するプロトン伝導性電解質膜を例示する概略図である。図1に示すように、プロトン伝導性電解質膜1は、燃料極(アノード)と接合される第一主表面1a及び酸素極(カソード)と接合される第二主表面1bを有しており、第一主表面中に存在するケイ素原子数(アノード側表面原子数(X))が、第二主表面中に存在するケイ素原子数(カソード側表面原子数(X))より多く形成されている。そして、アノードとプロトン伝導性電解質膜1との接触表面を原点0、原点0からp(μm)の距離にあるケイ素原子数をX、メタノール水溶液濃度をCm(体積%)とした時、厚みZ(μm)のプロトン伝導性電解質膜は、下記式(W5)〜(W8)を満たすことが好ましい。このような膜は、プロトン伝導性電解質膜の原料である重合性組成物を本硬化前に遠心分離すること等により得られる。
o≧Xp≧Xz (0≦p≦z) ・・・・(W5)
o/Xz ≧1.3 ・・・・(W6)
Cm>30(ただし1aがアノードと接合し、1bがカソードと接合する。) ・・・・(W7)
Cm≦30(ただし1aがカソードと接合し、1bがアノードと接合する。) ・・・・(W8)
本発明のプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜は、高濃度のメタノールを使用して発電する場合でも、MCOを低減でき、高プロトン伝導性及び高燃料遮断性を発現できる。
<膜−電極接合体>
本発明の膜−電極接合体は、上記本発明のプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜の一方の面上に燃料極(アノード)が、他方の面上に酸素極(カソード)がそれぞれ接合されていることを特徴とする。燃料極(アノード)及び酸素極(カソード)は、それぞれ、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜の最外層の面上に接合されている。
膜−電極接合体の好ましいものとして、具体例には、プロトン伝導性電解質膜の両面に積層された最外層の高プロトン伝導層、メタノール遮断層又はガス遮断層上の少なくとも一方に膜−電極接合層が積層され、さらに一方の最外層上に燃料極(アノード)が積層され、他方の最外層上に酸素極(カソード)が積層されたものが例示できる。
そして、より好ましいものとして、具体的には、プロトン伝導性電解質膜上に、前記高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層がこの順で積層され、該膜−電極接合層上に燃料極が積層されたもの、プロトン伝導性電解質膜上に、前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層がこの順で積層され、該膜−電極接合層上に酸素極が積層されたものが例示できる。本発明の膜−電極接合体の具体例を図2に示す。
<固体高分子形燃料電池>
本発明の固体高分子形燃料電池は、上記本発明の膜−電極接合体を備えることを特徴とする。
好ましい固体高分子形燃料電池の具体例としては、上記本発明の膜−電極接合体を単位セルとして、前記単位セルの外側に、燃料及び/又は酸素の通路となる一対のセパレータが設置されるとともに、隣り合う複数の前記単位セルが相互に連結されたものが例示できる。
本発明の固体高分子形燃料電池は、上記本発明のプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜又は膜−電極接合体を使用することで、優れた発電性能を長期に渡って維持できる。
本発明によれば、高濃度のメタノールを使用して発電する場合でも、MCOを低減でき、パッシブ型DMFCにおいても、カソード生成水の逆拡散をプロトン伝導性電解質膜で効率的に行うことによって、低抵抗を維持することができ、温度上昇サイクルを使用温度領域内の低温(通常25〜50℃)で抑えること、安定的な発電を維持し、燃料を使い切ることが可能である。
また、本発明は、あらゆるメタノール濃度(0〜100質量%)において、濃度増加率よりもMCO増加率が小さく、メタノール濃度が高濃度になるほど、メタノール透過速度が小さくなる燃料電池の作製に好適である。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
以下に示すように、高プロトン伝導層、メタノール遮断層、ガス遮断層、膜−電極接合層、プロトン伝導性電解質膜、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜を作製し、これらの物性を評価した。まず、評価方法を以下に示す。
<評価方法>
(1)表面方向のプロトン伝導性比
サンプルを通常の電気化学セル(例えば、特開2002−184427号公報中、図3に記載されたものと同一のもの)にセットし、サンプルと白金板とを密着させた。この白金板に、電気化学インピーダンス測定装置(ソーラトロン社製、1260型)を接続し、周波数0.01Hz〜100kHzの領域でインピーダンスを測定し、サンプルのプロトン伝導度を測定した。
なお、上記測定では、サンプルを、電気的に絶縁された密閉容器中で支持し、高濃度メタノール雰囲気(65質量%)で、温度コントローラーによりセル温度を室温から80℃まで変化させ、それぞれの温度で表面方向のプロトン伝導度(インピーダンス)を測定した。
そして、フッ素系スルホン酸で構成された代表的なプロトン伝導性電解質膜であるナフィオン117(登録商標)(デュポン社製)について、同様の条件で表面方向のインピーダンスを測定し、この測定値で、上記各種サンプルの表面方向のインピーダンス測定値を割った比を算出した。
(2)含水量q
作製したサンプル(4〜6cm角)を、穴を開けた容器内に入れ、さらに、この容器を50℃、90%RH(相対湿度)に調整した恒温恒湿オーブン(エスペック社製、SH−240S3型)内に静置した。次いで、24時間後にこの容器を取り出し、50℃で真空加熱して水分を除去した。次いで、直ちに膜の質量を測定し、単位質量あたりの含水量q(g)を算出した。
(3)水分子数n
2M塩化ナトリウム水溶液を調製し、メスシリンダーを使用して、前記水溶液をサンプルが入ったサンプル管瓶に加えた。そのまま室温で終夜静置し、膜中のスルホン酸をナトリウム塩に置換した。得られたプロトン水溶液を、ビーカーに移した。また、膜を水で洗浄し、その洗浄液も同じビーカーに移した。そして、電位差自動滴定装置APB−510と電動ビュレットAT−420(京都電子社製)を使用して、水酸化ナトリウム水溶液(0.01mol/l、和光純薬工業社製)を滴下していき、プロトンの中和反応を行った。
pH7になった時の水酸化ナトリウム水溶液の滴下量から膜のプロトン数(mmol)を算出し、前記方法で得られた含水量qから算出した水数(mmol)を除することで、酸基一つあたりの水分子数nを得た。
(4)水透過性(気相間)
気液間における水透過性(以下、「WCO(G)」と略記する。)を、以下の方法により測定した。
直径2cmの円形の窓を有する二つの円柱形セルを使用し、窓の部分でゴムパッキンを介して、サンプルを挟み込んだ。一方のセルには純水を入れ、他方のセルには窒素を500kPaで流した。40℃で3時間、スターラーで攪拌し、その間、流れてきた窒素中に含まれる水蒸気をガスクロマトグラフィーにより測定し、水の検出濃度が安定するのを確認した。安定してから、1時間で検出された水蒸気量の総量Yを測定し、下記式(1)によって定義したWCO(G)を算出した。
そして、フッ素系スルホン酸で構成された代表的なプロトン伝導性電解質膜であるナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)を比較対象サンプルとして、同様の条件でWCO(G)を算出し、この算出値で上記の各種サンプルのWCO(G)を割った比を算出し、水透過性を評価した。
WCO(G)(μmol/cm/day)=
Y×100000/18.02×T/10000×24/H×1/πR ・・・(1)
(式中、Tはサンプルの厚み(μm)、Hは試験時間(hr)、Rは評価セルの窓の半径(cm)を表す。)
(5)メタノール透過性(液相間)
液相間におけるメタノール透過性(以下、「MCO(L)」と略記することがある。)を、以下の方法により測定した。
直径2cmの円形の窓を有する二つの円柱形セルを使用し、窓の部分でゴムパッキンを介して、サンプルを挟み込んだ。一方のセルには純メタノールを、他方のセルには純水を入れ、40℃で3時間、スターラーで攪拌した。その後、純水側に透過したメタノールの濃度X(質量%)をガスクロマトグラフィーにより測定し、下記式(2)によって定義したMCO(L)を算出した。
そして、フッ素系スルホン酸で構成された代表的なプロトン伝導性電解質膜であるナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)を比較対象サンプルとして、30質量%の条件でMCO(L)を算出し、この算出値で上記の各種サンプルのMCO(L)を割った比を算出し、メタノール透過性を評価した。3質量%、10質量%、65質量%の条件でも同様に評価した。
MCO(μmol/cm/day)=
(V−X)/(100−X)×1000/32.04×T/10000×24/H×1/πR ・・・(2)
(式中、Vは純水の質量(mg)、Tはサンプルの厚み(μm)、Hは試験時間(hr)、Rは評価セルの窓の半径(cm)を表す。)
(6)メタノール透過量
前記メタノール透過性の評価で使用したセルを使用して、サンプルを挟み込んだ。そして、一方のセルには30質量%メタノール水溶液を、他方のセルには純水を入れ、40℃で3時間、スターラーで攪拌した。その後、純水側に透過したメタノールの濃度(質量%)をガスクロマトグラフィーにより測定し、メタノール透過量(質量%)とした。
(7)ガス遮断性
ヘリウムリークデテクタMSE−2000形装置(島津製作所社製)を使用して、ヘリウムガス透過試験を行った。この装置では、一定流量の窒素管路中に、サンプルからリークしたヘリウムガスを混合し、混合気体の一部を一定流量で計測部に導入した。計測部は質量分析計と同様の構造であり、ヘリウムガスのみを検出するように条件を予め調整しておいた。そして、導入した混合気体中のヘリウムガスを、常温で0.2MPaの圧力で供給し、30秒後にサンプルを介して流れた時の圧力を測定した。この測定値と、サンプルを設けずに窒素ガスのみを同様に流した時の圧力の測定値とから、単位時間あたりの圧力差を算出し、透過ガス量の指標とした。
そして、フッ素系スルホン酸で構成された代表的なプロトン伝導性電解質膜であるナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)を比較対象サンプルとして、同様の条件で単位時間あたりの圧力差を算出し、この算出値を上記の各種サンプルの前記算出値で割った比をさらに算出し、ガス遮断性を評価した。
(7)MEA耐久性(電極接着性)
1辺が5cmの正方形に切断したサンプルを、充分水で濡らして含水させた後、このサンプルを1辺が2.5cm角のナフィオン(登録商標)(デュポン社製)電極バインダー製の電極で挟み、精密プレス機を使用して、140℃、1kNの条件下、3分間プレスし、膜−電極接合体(MEA)を作製した。得られた膜−電極接合体を、サンプル瓶に満たされた65質量%メタノール中に浸漬し、30℃に保持して24時間静置した。次いで、60℃で1時間加熱した後、10℃まで冷却して24時間静置した。さらに、再び30℃まで昇温し、24時間静置した。これを1サイクルとし、この手順を3サイクル行った。次いで、浸漬した膜−電極接合体を取り出し、MEA構造が維持されているかどうかを確認し、耐温度衝撃性と形状保持安定性から電極接着性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:MEA構造を維持している
△:MEA構造を維持しているが、電極の剥がれが目視で確認できる
×:電極が剥がれ落ちている
(8)低濃度発電性能
膜−電極接合体を、パッシブ型DMFC単セルに規定の方法でセットした。このセルを燃料電池発電評価装置(エヌエフ回路ブロック設計社製、「As−510」)にセットし、セルの温度は制御せず、メタノールの濃度を15体積%として、膜浸透によってメタノールを供給し、空気は自然給気で運転して、セルのI−Vを計測し、最大出力を比較した。
各サンプルの発電性能を比較するための評価基準として、比較例1のサンプルを使用した場合の最大出力を1として、相対値を算出した。
(9)高濃度発電性能
メタノールの濃度を50体積%としたこと以外は、前記(8)と同様の方法で評価した。
<サンプルの作製>
[実施例1]
(重合性組成物)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−803)53.0g、テトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE−04)131.2g及びメタノール26.5gをフラスコに計量し、0℃で10分間撹拌した。そこに、0.01N塩酸15.6gとメタノール20.8gとを混合した溶液を添加し、0℃で1時間撹拌し、40℃に昇温後、さらに2時間撹拌した。次いで、フッ化カリウム(和光純薬社製)0.114gとメタノール29.7gとを混合した溶液を添加し、40℃で1時間撹拌し、80℃に昇温後、さらに2時間撹拌した。得られた混合溶液を0℃に冷却し、その後、40℃真空にてアルコールを分留した。得られた溶液を0℃に冷却し、ジエチルエーテル200mLを加えて、0℃で10分間撹拌した後、メンブレンフィルター(ミリポア社製、オムニポアメンブレン孔径0.2μm)を使用して濾過した。得られた濾液から40℃真空にてジエチルエーテルを分留し、メルカプト基含有シランオリゴマーを46.9g得た。
得られたメルカプト基含有シランオリゴマー2.17g、トリエトキシビニルシラン(信越化学社製、KBE−1003)0.81g、テトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE−04)2.43g及びテトラメトキシシラン(東京化成社製)0.86gを混合した液に、水0.15gとトリエチルアミン(和光純薬社製)0.07gとを滴下した。室温で10分間攪拌した後、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(アルドリッチ社製)30質量%水溶液16.7gを滴下した。得られた混合溶液を0℃に冷却し、1,4−ジビニルベンゼン0.65g(和光純薬社製)、ビスフェノールAグリセロレートジアクリレート0.24g(アルドリッチ社製、グリセロール/フェノール=1)を加えて、5分間撹拌した。次いで、光重合開始剤(ライトケミカル社製、KR−02)0.1gと、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1gを添加し、重合性組成物(1−A)を得た。
(プロトン伝導性電解質膜)
得られた重合性組成物(1−A)1gをN,N−ジメチルホルムアミド10mLに溶解させ、得られた溶液をテフロン(登録商標)基板状にキャストし、UV照射してから室温で80時間養生した。次いで、ギアオーブンを使用して130℃で24時間加熱硬化した後、酢酸60mL、30%過酸化水素水15mLを混合して調製した過酢酸溶液にこれを浸漬し、ホットプレートにて50℃で1時間加熱して、酸化を行った。そして、得られた膜を過酢酸溶液から取り出し、40℃の水に1時間浸漬して過酢酸溶液を充分に除き、半透明のプロトン伝導性電解質膜(M1)を得た。
[実施例2]
(プロトン伝導性電解質膜)
実施例1で得られた重合性組成物(1−A)1gをN,N−ジメチルホルムアミド10mLに溶解させ、得られた溶液を、フッ素樹脂フィルム上でポリエチレン/ポリプロピレン製多孔質膜(厚み:1〜60μm、空孔率:30〜95%、平均孔径:0.01〜1.0μm)に含浸させた。含浸後の膜にフッ素樹脂フィルムを被せ、その上からアプリケーターで膜厚がおよそ30μmになるようにレベリングした。次いで、フィルムを剥がし、UV照射してから室温で80時間養生した。そして、フッ素樹脂フィルムを新たに膜に被せ、2枚のガラス板でフッ素樹脂フィルムを介して前記膜を挟み、この状態でガラス製の容器に水500mLと共に入れた。次いで、ギアオーブンを使用して、80℃で24時間加熱硬化し、焼成して膜を得た。次いで、実施例1と同様の方法で、過酢酸溶液を使用した酸化にこの膜を供し、半透明のプロトン伝導性電解質膜(M2)を得た。
[実施例3]
(重合性組成物)
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(アルドリッチ社製)50質量%水溶液16.5g、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(東京化成社製)0.1g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬社製)10質量%水溶液1g、ポリリン酸0.1g、5質量%に濃度調整したポリビニルアルコール(平均重合度2000、ケン化度98.0mol%以上、和光純薬社製)水溶液8g、グリセロール2−リン酸二ナトリウムn水和物(和光純薬社製)0.02gを混合した。得られた混合溶液を0℃に冷却し、5分間撹拌した。次いで、光重合開始剤(ライトケミカル社製、KR−02)0.1g、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1gを添加し、重合性組成物(3−A)を得た。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(アルドリッチ社製)50質量%水溶液16.5g、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(東京化成社製)0.5g、テトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE−04)3.4g、ポリリン酸0.2g、5質量%に濃度調整したポリビニルアルコール(平均重合度2000、ケン化度98.0mol%以上、和光純薬社製)水溶液4g、グリセロール2−リン酸二ナトリウムn水和物(和光純薬社製)0.02gを混合した。得られた混合溶液を0℃に冷却し、5分間撹拌した。次いで、光重合開始剤(ライトケミカル社製、KR−02)0.1g、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1gを添加し、重合性組成物(3−B)を得た。
ポリ(4−スチレンスルホン酸)18質量%水溶液(アルドリッチ社製)4g、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸15質量%水溶液(アルドリッチ社製)1g、10質量%に濃度調整したポリビニルアルコール(平均重合度2000、ケン化度98.0mol%以上、和光純薬社製)水溶液20g、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール(東京化成社製)1g、トリメトキシビニルシラン0.31g、ケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)(和光純薬社製)(52〜57質量%)0.11g、グリセロール2−リン酸二ナトリウムn水和物(和光純薬社製)0.06g、スルホコハク酸70質量%水溶液(アルドリッチ社製)2gを混合した。得られた混合溶液を0℃に冷却し、5分間撹拌した。次いで、光重合開始剤(ライトケミカル社製、KR−02)0.1g、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1gを添加し、重合性組成物(3−C)を得た。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(アルドリッチ社製)50質量%水溶液16.5g、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(東京化成社製)0.1g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬社製)10質量%水溶液1g、ポリリン酸(和光純薬社製)0.4g、1,2,3−プロパントリオール(アルドリッチ社製)0.2g、グリセロール2−リン酸二ナトリウムn水和物(和光純薬社製)0.02g、5質量%に濃度調整したポリビニルアルコール(平均重合度2000、ケン化度98.0mol%以上、和光純薬社製)水溶液1g、70質量%スルホコハク酸(アルドリッチ社製)0.1gを混合した。得られた混合溶液を0℃に冷却し、超音波ホモジナイザーで均一に分散させた。次いで、光重合開始剤(ライトケミカル社製、KR−02)0.1g、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1gを添加し、重合性組成物(3−D)を得た。
(プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜)
上記各重合性組成物1gをN,N−ジメチルホルムアミド10mLに溶解させ、得られた溶液をテフロン(登録商標)基板状にキャストし、アプリケーターを使用して、塗布した組成物の厚みを5〜20μmに調整した。そして、UV照射してから室温で80時間養生した。次いで、ギアオーブンを使用して130℃で24時間加熱硬化した後、半透明のプロトン伝導性フィルムとして、重合性組成物(3−A)(厚み16μm)から高プロトン伝導層(3−A)を、重合性組成物(3−B)からメタノール遮断層(3−B)(厚み6μm)を、重合性組成物(3−C)からガス遮断層(3−C)(厚み7μm)を、重合性組成物(3−D)から膜−電極接合層(3−D)(厚み5μm)を、それぞれ作製した。
また、得られた高プロトン伝導層(3−A)、メタノール遮断層(3−B)の破断面をFE−SEMにより観察したところ、電解質内部において、粒子径が50〜80ナノメートル程度の不定形粒子構造をとっていることが確認された。
実施例2で得られたプロトン伝導性電解質膜(M2)、高プロトン伝導層(3−A)、メタノール遮断層(3−B)、膜−電極接合層(3−D)を水で充分に濡らして、それぞれ含水させた。そして、アノード側からカソード側へ向けて、膜−電極接合層(3−D)、メタノール遮断層(3−B)、高プロトン伝導層(3−A)、プロトン伝導性電解質膜(M2)、高プロトン伝導層(3−A)をこの順に積層し、精密プレス機を使用して、140℃、1kNの条件下、3分間プレスすることで、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜(M3)を得た。
[実施例4]
(プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜)
実施例2で得られたプロトン伝導性電解質膜(M2)、高プロトン伝導層(3−A)、ガス遮断層(3−C)、膜−電極接合層(3−D)を水で充分に濡らして、それぞれ含水させた。そして、アノード側からカソード側へ向けて、高プロトン伝導層(3−A)、プロトン伝導性電解質膜(M2)、高プロトン伝導層(3−A)、ガス遮断層(3−C)、膜−電極接合層(3−D)をこの順に積層し、精密プレス機を使用して、140℃、1kNの条件下、3分間プレスすることで、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜(M4)を得た。
[実施例5]
(プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜)
実施例2で得られたプロトン伝導性電解質膜(M2)、高プロトン伝導層(3−A)、メタノール遮断層(3−B)、ガス遮断層(3−C)、膜−電極接合層(3−D)を水で充分に濡らして、それぞれ含水させた。さらに、アノード側からカソード側へ向けて、膜−電極接合層(3−D)、メタノール遮断層(3−B)、高プロトン伝導層(3−A)、プロトン伝導性電解質膜(M2)、高プロトン伝導層(3−A)、ガス遮断層(3−C)、膜−電極接合層(3−D)をこの順に積層し、精密プレス機を使用して、140℃、1kNの条件下、3分間プレスすることで、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜(M5)を得た。
得られたプロトン伝導性電解質膜又はプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜(M1)〜(M5)を、FE−SEMにより観察したところ、いずれにおいても粒子径が50〜80ナノメートル(nm)程度の不定形である一次粒子が核となり、その一次粒子表面に、さらに粒子径が10〜100ナノメートル程度の不定形である二次粒子が存在する複合粒子が、互いに疎水性基によって結合した粒子の連続体構造を有していることが確認された。
[比較例1]
プロトン伝導性電解質膜として、ナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)を使用して、そのまま前記評価に供した。
[比較例2]
プロトン伝導性電解質膜として、ナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)を使用したこと以外は、実施例5と同様にして、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜(MR2)を得た。
[比較例3]
(重合性組成物)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−803)53.0g、テトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE−04)131.2g及びメタノール26.5gをフラスコに計量し、0℃で10分間撹拌した。そこに、0.01N塩酸15.6gとメタノール20.8gとを混合した溶液を添加し、0℃で1時間撹拌し、40℃に昇温後、さらに2時間撹拌した。次いで、フッ化カリウム(和光純薬社製)0.114gとメタノール29.7gとを混合した溶液を添加し、40℃で1時間撹拌し、80℃に昇温後、さらに2時間撹拌した。得られた混合溶液を0℃に冷却し、その後、40℃真空にてアルコールを分留した。得られた溶液を0℃に冷却し、ジエチルエーテル200mLを加えて、0℃で10分間撹拌した後、メンブレンフィルター(ミリポア社製、オムニポアメンブレン孔径0.2μm)を使用して濾過した。得られた濾液から40℃真空にてジエチルエーテルを分留し、メルカプト基含有シランオリゴマーを46.9g得た。
得られたメルカプト基含有シランオリゴマー2.17g、トリエトキシビニルシラン(信越化学社製、KBE−1003)0.81g、テトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE−04)2.43g及びテトラメトキシシラン(東京化成社製)0.86gを混合した液に、水0.15gとトリエチルアミン(和光純薬社製)0.07gとを滴下した。室温で10分間攪拌した後、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(アルドリッチ社製)30質量%水溶液14.1gを滴下した。得られた混合溶液を0℃に冷却し、ポリエチレングリコールジアクリレート0.9g(アルドリッチ社製、質量平均分子量:約258)を加えて、5分間撹拌した。次いで、光重合開始剤(ライトケミカル社製、KR−02)0.1gと熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)0.1gを添加し、重合性組成物(R3−1)を得た。
(プロトン伝導性電解質膜)
得られた重合性組成物(R3−1)1gをN,N−ジメチルホルムアミド10mLに溶解させ、得られた溶液をテフロン(登録商標)基板状にキャストし、UV照射してから室温で80時間養生した。次いで、ギアオーブンを使用して130℃で24時間加熱硬化した後、酢酸60mL、30%過酸化水素水15mLを混合して調整した過酢酸溶液にこれを浸漬し、ホットプレートにて50℃で1時間加熱して、酸化を行った。そして、得られた膜を過酢酸溶液から取り出し、40℃の水に各1時間浸漬して過酢酸溶液を充分に除き、半透明のプロトン伝導性電解質膜(MR3)を得た。
プロトン伝導性電解質膜として、M6を使用したこと以外は、実施例5と同様にして、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜(MR4)を得た。
<結果>
上記実施例及び比較例で作製した各サンプルとその評価結果を表1〜7に示す。
Figure 0005480578
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実施例1〜5のプロトン伝導性電解質膜及びプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜は、ケイ素−酸素結合から構成される粒子骨格構造を有し、疎水性基によって粒子の連続体構造を形成していた。そして、一次粒子表面、並びに二次粒子の表面及び内部にプロトン伝導経路が形成されていた。
そして、実施例2では、プロトン伝導性電解質膜が多孔質基材中で形成され、強化されていることによって、メタノール遮断性とMEA耐久性が向上した。
また、実施例3では、高プロトン伝導層、メタノール遮断層、膜−電極接合層をプロトン伝導性電解質膜の面上に形成することによって、表面方向のプロトン伝導性、メタノール遮断性、MEA耐久性が向上した。
また、実施例4では、高プロトン伝導層、ガス遮断層、膜−電極接合層をプロトン伝導性電解質膜の面上に形成することによって、表面方向のプロトン伝導性、ガス遮断性、MEA耐久性が向上した。
また、実施例5では、高プロトン伝導層、メタノール遮断性、ガス遮断層、膜−電極接合層をプロトン伝導性電解質膜の面上に形成することによって、表面方向のプロトン伝導性、メタノール遮断性、ガス遮断性、MEA耐久性が向上した。
そして、実施例1〜5では、液相間におけるメタノール透過性(MCO(L))が比較例1よりも小さく、メタノール濃度が高くなるに従い、この比は小さくなった。
そして、メタノール水溶液の初期メタノール濃度を高くした際に、その前後におけるメタノール濃度の増加率よりも、透過メタノール濃度の増加率が小さく、また比較する初期メタノール濃度が高ければ高いほど、透過メタノール濃度の増加率が小さくなる傾向が見られた。
その結果、使用燃料であるメタノールの濃度が低い領域から高い領域まで、カソード生成水の逆拡散をプロトン伝導性電解質膜で効率的に行うことにより、抵抗を低く維持でき、パッシブ型DMFCにおける温度上昇サイクルを、使用温度領域内の低温(通常25〜50℃)で抑えることができ、安定的な発電が可能であることが確認できた。また、電流密度が高い領域においても、生成する水を効率的に逆拡散でき、フラッティングの影響が小さく、安定した発電が可能なプロトン伝導性電解質膜、プロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜、膜−電極接合体が得られた。
これに対して、比較例1〜2では、プロトン伝導性電解質膜として使用したナフィオン(登録商標)117(デュポン社製)の内部に、粒子の連続体構造は観測できなかった。また、比較例3では、プロトン伝導性電解質膜の内部に、粒子の連続体構造が観測されたが、粒子間を連結する疎水性基が存在しなかった。その結果、比較例1〜3は、実施例1〜5よりも、性能が劣っていた。
以上より、本発明のプロトン伝導性材料より得られたプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜は、高いプロトン伝導性、メタノール遮蔽性、ガス遮断性、MEA耐久性を有しており、燃料電池用として、高い性能を発現することが確認できた。
1・・・プロトン伝導性電解質膜
1a・・・第1主面
1b・・・第2主面

Claims (10)

  1. 金属−酸素結合と、酸基と、疎水性の架橋構造体と、を有するプロトン伝導性材料であって、
    前記架橋構造体が、粒子の連続体を構成するとともに、前記粒子の間隙に疎水性の架橋構造を有し、プロトン伝導路が形成されているプロトン伝導性材料において、
    前記架橋構造は、重合性不飽和二重結合を有するシラン化合物(α)並びに酸基及び重合性不飽和二重結合を有する酸基含有化合物(β)からなる群から選択される二種以上の少なくとも一部の間を架橋剤によって架橋したものであり、
    前記架橋剤は、前記シラン化合物(α)又は酸基含有化合物(β)と結合可能な重合性不飽和二重結合を一つ以上有する疎水性の官能基を一分子中に有することを特徴とするプロトン伝導性材料。
  2. 前記粒子が、一次粒子の表面にさらに二次粒子が存在する複合粒子であり、該複合粒子の表面及び/又は内部にプロトン伝導路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性材料。
  3. ケイ素−酸素結合による架橋構造を含むケイ素−酸素結合型構造体(A)と、酸基を有する酸基含有構造体(B)と、がケイ素−酸素結合によって連結された構造を有し、
    前記ケイ素−酸素結合型構造体(A)が、下記一般式(1)で表され、
    前記酸基含有構造体(B)が、重合性不飽和二重結合を有するシラン化合物(α)と、酸基及び重合性不飽和二重結合を有する酸基含有化合物(β)と、が共有結合した構造体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロトン伝導性材料。
    Figure 0005480578
    (式中、Rは炭素数1〜50の二価の炭化水素基又は酸素原子であり;R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基であり、少なくとも一つはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基であり;mは1以上の整数であり、mが2以上である場合には、複数のR〜Rはそれぞれ互いに同一でも異なっていても良い。)
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロトン伝導性材料を使用したことを特徴とするプロトン伝導性電解質膜。
  5. 初期メタノール濃度が3〜65質量%であるメタノール水溶液層及び水層を仕切るように前記プロトン伝導性電解質膜を配置し、所定時間経過後に前記メタノール水溶液層から前記プロトン伝導性電解質膜を介して前記水層へメタノールが透過した後の、前記水層中のメタノール濃度を、初期メタノール濃度が異なる二種類の前記メタノール水溶液層を使用して測定した時に、前記水層中のメタノール濃度の増加率が、前記メタノール水溶液層の初期メタノール濃度の増加率よりも低く、かつ前記メタノール水溶液層の初期メタノール濃度が高いほど、前記水層中のメタノール濃度の増加率が低くなることを特徴とする請求項4に記載のプロトン伝導性電解質膜。
  6. 請求項4又は5に記載のプロトン伝導性電解質膜の片面上に、該プロトン伝導性電解質膜に対して、表面方向のプロトン伝導性が同等以上である高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上、あるいは前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、この順で積層されていることを特徴とするプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜。
  7. 請求項4又は5に記載のプロトン伝導性電解質膜の一方の面上に、該プロトン伝導性電解質膜に対して、表面方向のプロトン伝導性が同等以上である高プロトン伝導層、メタノール遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、他方の面上に、前記高プロトン伝導層、ガス遮断層及び膜−電極接合層からなる群から選択される一つ以上が、それぞれこの順で積層されていることを特徴とするプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜。
  8. 請求項6又は7に記載のプロトン伝導性電解質層付プロトン伝導性電解質膜の一方の面上に燃料極が、他方の面上に酸素極がそれぞれ接合されていることを特徴とする膜−電極接合体。
  9. 請求項8に記載の膜−電極接合体を備えることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
  10. 前記膜−電極接合体を単位セルとして、前記単位セルの外側に、燃料及び/又は酸素の通路となる一対のセパレータが設置されるとともに、隣り合う複数の前記単位セルが相互に連結されていることを特徴とする請求項9に記載の固体高分子形燃料電池。
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