JP2010170837A - 電解質材料組成物、膜−電極接合剤、接合層付き電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

電解質材料組成物、膜−電極接合剤、接合層付き電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】接合強度に優れた膜−電極接合体、該接合体を備え、高い発電性能、燃料バリア性及び強度を有する固体高分子形燃料電池、並びに該接合体を作製するための電解質材料組成物、膜−電極接合剤及び接合層付き電解質膜の提供。
【解決手段】非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)及び水を含むエマルジョンと、酸基含有高分子材料(Y)を含む水溶液とが配合されてなる電解質材料組成物;かかる組成物からなる膜−電極接合剤;かかる接合剤を使用して形成された膜−電極接合層が、電解質膜の片面又は両面に、設けられてなる接合層付き電解質膜;かかる電解質膜の接合層上に、電極が配置されてなる膜−電極接合体;かかる接合体を備えた固体高分子形燃料電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、電解質材料組成物、膜−電極接合剤、接合層付き電解質膜、膜−電極接合体、及び固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池は、それを構成する電解質の種類により、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形、固体高分子形等に分類されるが、なかでも固体高分子形燃料電池(以下、PEFCと略記することがある)は、他の方式に比べて、装置が小型かつ高出力であるため、小規模オンサイト形発電用、車両パワーソース等の移動用や携帯機器用の電源等として、次世代の主力を担うシステムと位置付けられている。
PEFCの基本構造は、プロトン(水素イオン)伝導性膜(電解質膜)の両側に、白金等の触媒が担持されたガス拡散電極が配置され、さらにその両外側に、燃料を供給するための構造を有する一対のセパレータが配置されたものである。この基本構造を単位セルとして、隣り合う複数セルを相互に連結することで、所望の電力を取り出すことが可能となる。このような接合体の片側(一般的にアノード又は燃料極と呼ばれる)から、例えば、水素を燃料として供給すると、燃料極側では、触媒によりH→2H+2eの反応が起こり、プロトンと電子が生じる。ここで、プロトンは、電極に接触している電解質膜を通して反対極(一般的にカソード、空気極又は酸素極と呼ばれる)側に供給される。また、電子は、燃料極側の電極で集電され、電気として使用された後、空気極側に供給される。一方、空気極(酸素極)側では、供給された空気(酸素)、電解質膜を通過してきたプロトン、電気として使用された電子を受け取り、触媒により、1/2O+2H+2e→HOの反応が起こる。
このように、燃料電池の作動による化学反応は、電解質膜と触媒が担持されたガス拡散電極の界面部分で起こるため、膜、電極及び触媒の界面構造が発電効率等、性能面に大きく影響する。電解質膜とガス拡散電極との接合体は、一般に「膜−電極接合体」(MEA:Membrane/Electrode Assembly)と呼ばれ、燃料電池の主要な技術開発分野の1つとなっている。
MEAにおいては、膜、触媒、電極が適度な界面を持って結合されている必要がある。即ち、燃料極側を例として挙げれば、燃料である水素等が触媒表面に接触でき、水素から発生したプロトンと電子が、それぞれ膜、電極に効率的に受け渡される必要がある。現在のところ、燃料電池用の電解質膜として最も標準的に使用されているものは、熱可塑性を有するスルホン化フッ素系樹脂(例えば、ナフィオン(登録商標)(デュポン社製))である。
しかしながら、熱可塑性を有するスルホン化フッ素系樹脂は、PEFCを稼働する際の耐熱性が不足するという問題点があった。即ち、スルホン基の凝集によりイオンチャネルが形成され、プロトン伝導性を発揮するものの、熱可塑性を有するが故に、特定の温度以上では塑性変形し、イオンチャネル構造が破壊されてしまうのである。このため、ガラス転移温度(Tg)である約130℃以上では短時間で、又は100〜130℃でも徐々に塑性変形が起こり、イオン伝導性が低下するとともに、高燃料バリア性を維持することが難しい。
さらに近年、燃料電池の燃料としてアルコール、エーテル、炭化水素類等の水素以外の燃料を使用し、触媒により、これらの燃料からプロトンと電子とを取り出す燃料電池も検討されている。このような燃料電池の代表例は、メタノール(通常、水溶液として用いる)を燃料とする直接メタノール型燃料電池(DMFC)である。DMFCは、外部改質器を必要とせず、燃料の取扱いが容易なため、燃料電池の多様な種類のうちで小型、携帯用電源として最も期待されている。
しかしながら、前述のスルホン化フッ素系樹脂膜は、メタノールとの親和性が極めて高いことから、メタノールを吸収することで大きく膨潤してしまい、メタノールが、膨潤した電解質膜を透過し、カソード側へ漏れ出す、いわゆるメタノールクロスオーバー(以下、MCOと略記することがある)が発生し、燃料電池の出力が大きく低下してしまうという深刻な問題があった。
一方、スルホン化フッ素系樹脂以外の燃料用電池用電解質膜についても、炭化水素系、無機系等、様々な種類の膜が盛んに開発されている。例えば、有機ケイ素化合物は、強い結合エネルギーを有するケイ素−酸素結合からなるために、化学的安定性、耐熱性及び耐酸化性が高く、その組成によって多くの特異な性質を付与できるため、電気、電子、事務機器、建築、食品、医療、繊維、プラスチック、紙、パルプ、塗料、ゴムといったあらゆる産業分野で使用されている。
この有機ケイ素化合物を利用し、ケイ素−酸素結合からなる架橋構造を有する電解質膜が開示されている(例えば、特許文献1参照)。ケイ素−酸素結合からなる架橋構造は、プロトン伝導性膜のように、強い酸性(プロトン存在)条件下で、高温高湿にさらされる場合でも、比較的安定であり、燃料電池膜内部の架橋構造として好適である。さらに、メタノールなどのアルコールを燃料として使用した場合でも、ケイ素−酸素架橋構造により膨潤が小さく抑えられ、MCOを小さくすることが期待できる。しかし、このような電解質膜を使用して、膜−電極接合体を作製しようとした場合、従来から一般的に使用されているスルホン化フッ素系樹脂膜のように、加熱プレスにより樹脂を可塑化して強固に電極と接合させることが難しいという問題点があった。
そこで、膜と電極とを接着させるための接合部を設けることで高い接着強度を持たせることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、電解質膜と電極との界面の少なくとも一部で、接着剤からなる層(接合層)により接合された電解質膜電極接合体が開示されている(特許文献3参照)。ここでは、接着剤として、エポキシ系接着剤、変性アクリレート系接着剤、変性シリコーン系接着剤、炭化水素系接着剤、及びこれら接着剤とイオン交換樹脂を含むものが提案されている。また、電解質膜としてナフィオン(登録商標)を用い、接着剤に含まれるイオン交換樹脂としてもナフィオン(登録商標)ディスパージョンを用いた例のみが挙げられている。
また、特許文献3には、膜−電極接合体において、接着剤は、電極の一部にのみ塗布することで、燃料、酸素、あるいは水及び二酸化炭素等の反応生成物の拡散を阻害せず、燃料電池が具備すべき特性を低下させずに、耐久性や信頼性を向上させることが可能となる旨の記載がある。そして実施例では、接着剤を一部に塗布したもののみが開示されている。
特許第3679104号公報 特許第4009593号公報 特開2005−285569号公報
しかし、特許文献2に記載の方法によれば、高い膜−電極接着性を実現できるが、比較的高い温度で運転した場合、高い温度と低い温度で繰り返し温度変化させながら運転した場合、代表的なスルホン化フッ素系樹脂であるナフィオン(登録商標)樹脂を電極バインダとした電極を使用して、燃料であるメタノール水溶液濃度を比較的高くして運転した場合などで、膜と電極の接合部に応力が集中して、これらが剥離してしまうという問題点があった。
さらに、膜−電極接合部を形成する方法としては、プロトン伝導性物質を含む液状物を膜の片面または両面に塗布した後、液が存在する膜表面に電極を配置し、加熱などにより硬化させる方法が挙げられる。しかし、この方法では、液状物が電極に含浸し過ぎて、燃料や空気(酸素)の通り道を塞いでしまい、高い出力が発現しなかったり、接合部が膜と電極の界面にうまく形成されず、接着強度が低下したりするという問題点があった。その場合、液状物の組成、粘度、塗布量や、電極の構成成分の組成、多孔質構造などを調整することで高い出力と高い膜−電極接着強度を実現しようとしても、その調整が難しく、配合やプロセスの制約が多くなったり、作製にも手間がかかるといった問題点があった。
一方、特許文献3に記載の膜−電極接合体では、接着剤にイオン交換樹脂を含まない接合層を、電解質膜−電極界面の全面に形成した場合には、プロトン伝導性が阻害され、十分な発電出力が得られないという問題点があった。これに対して、接合層を一部のみに形成した場合には、接合強度を向上させることが難しいという問題点があった。さらに、ナフィオン(登録商標)膜、及びナフィオン(登録商標)ディスパージョンを含む接着剤は、比較的高温で運転した場合や、燃料に高濃度メタノールを用いた場合に、ナフィオン(登録商標)が軟化、膨潤するため、接合強度を向上させることが難しいという問題点があった。
さらに、例示されている接着剤は二液硬化型接着剤や一液硬化型接着剤であり、イオン交換樹脂と混合する場合には、反応により粘度が高くなるため均一に混合できず、十分な接合強度が得られないという問題点もあった。
さらに、膜−電極接合部を形成する際にも、特許文献2に記載の方法と同様の問題点があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、接合強度に優れた膜−電極接合体、該接合体を備え、高い発電性能、燃料バリア性及び強度を有する固体高分子形燃料電池、並びに該接合体を作製するための電解質材料組成物、膜−電極接合剤及び接合層付き電解質膜を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)及び水を含むエマルジョンと、酸基含有高分子材料(Y)を含む水溶液とが配合されてなることを特徴とする電解質材料組成物である。
請求項2にかかる発明は、前記非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の電解質材料組成物である。
請求項3にかかる発明は、さらに、酸基を有さない親水性高分子材料(Z)が配合されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電解質材料組成物である。
請求項4にかかる発明は、前記親水性高分子材料(Z)が水酸基含有高分子材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解質材料組成物である。
請求項5にかかる発明は、前記水酸基含有高分子材料がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項4に記載の電解質材料組成物である。
請求項6にかかる発明は、さらに、粘着性付与剤が配合されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電解質材料組成物である。
請求項7にかかる発明は、前記粘着性付与剤がエマルジョン型であることを特徴とする請求項6に記載の電解質材料組成物である。
請求項8にかかる発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電解質材料組成物からなることを特徴とする膜−電極接合剤である。
請求項9にかかる発明は、請求項8に記載の膜−電極接合剤を使用して形成された膜−電極接合層が、電解質膜の片面又は両面に、設けられてなることを特徴とする接合層付き電解質膜である。
請求項10にかかる発明は、請求項9に記載の接合層付き電解質膜の接合層上に、電極が配置されてなることを特徴とする膜−電極接合体である。
請求項11にかかる発明は、電解質膜の片面又は両面に、請求項8に記載の膜−電極接合剤を使用して形成された膜−電極接合層を介して、電極が配置されてなることを特徴とする膜−電極接合体である。
請求項12にかかる発明は、請求項10又は11に記載の膜−電極接合体を備えたことを特徴とする固体高分子形燃料電池である。
本発明によれば、高い発電性能、燃料バリア性及び強度を有する固体高分子形燃料電池を提供できる。
本発明の膜−電極接合体を例示する概略断面図である。
<電解質材料組成物>
本発明の電解質材料組成物は、非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)及び水を含むエマルジョンと、酸基含有高分子材料(Y)を含む水溶液とが配合されてなることを特徴とする。
本発明の電解質材料組成物は、高プロトン伝導性と高接着性を有する材料であり、特に、燃料電池用電解質膜と電極とを接合させる接合剤として好適である。
(イ)非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)
非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ロジン系樹脂等が例示できる。なかでも、接着性が高く、かつ皮膜形成後の吸水性が低いこと、酸基含有高分子材料(Y)との親和性が高く、耐久性に優れた電解質材料を形成できる点から、特にアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂又は熱可塑性でない樹脂は、接着性が低いため、本発明の電解質材料組成物には適さない。
前記熱可塑性樹脂(X)におけるアクリル系樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル系モノマーを重合してなる樹脂が例示できる。
前記アクリル系樹脂は、一種の前記モノマーからなる重合体でも良いし、二種以上の前記モノマーを併用して得られた共重合体でも良い。二種以上の前記モノマーを併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
さらに、前記アクリル系樹脂は、前記モノマーと、前記モノマーと重合可能なその他のモノマーとの共重合体でも良い。その他のモノマーとしては、好ましいものとして、スチレン;酢酸ビニル;トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルアクリレート等のラジカル重合性シラン化合物が例示できる。その他のモノマーは、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上のその他のモノマーを併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
前記アクリル系樹脂は、さらに、前記モノマーを重合してなる樹脂と、該樹脂に該当しないその他の樹脂との重合体でも良い。
前記アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されない。好ましいものとしては、−70〜100℃程度のものが例示でき、用途、使用条件に応じて適した樹脂を選択すれば良い。使用温度が比較的低い場合には、ガラス転移温度が−70〜0℃程度の樹脂を選択した方が、接着性を高くできる点で好ましい。使用温度が比較的高い場合には、ガラス転移温度が低過ぎると変形等により接着性が低下するため、−30〜40℃程度の樹脂が好ましい。
前記エマルジョンは市販品をしても良く、多くの市販品から適宜選択できる。
具体的には、JSR社製「アクリルエマルジョン」、DIC社製「ボンコート」、新中村化学工業社製「ニューコート」等が例示できる。また、アクリルエマルジョン系接着剤として市販されているものも好適であり、積水フーラー社製「エスダイン」、コニシ社製「ボンド」等が例示できる。
前記エマルジョンは、非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)の固形分濃度が、30〜65質量%であることが好ましく、40〜55質量%であることがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂(X)と水を含むエマルジョンは、さらに、乳化剤(界面活性剤)を含んでいても良い。これにより、前記熱可塑性樹脂(X)の重合安定性、エマルジョンの安定性が向上する。
乳化剤としては特に限定されず、好ましいものとしては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩類等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系乳化剤等が例示できる。
乳化剤の使用量は特に限定されないが、前記熱可塑性樹脂(X)100質量部に対し、通常は固形分換算で1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。10質量部を超える場合には、得られる皮膜の耐水性が低下することがある。また、1質量部未満の場合には、乳化時のエマルジヨンの安定性が悪くなることがある。
また、乳化剤を含まないエマルジョン(ソープフリーエマルジョンと呼ばれることもある)も、より耐水性が高い皮膜が得られるため、好適に使用される。
エマルジョンの粒径は特に限定されないが、前記熱可塑性樹脂(X)を重合し易く、エマルジョンの安定性が高いことから、0.05〜10μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。
(ロ)酸基含有高分子材料(Y)
酸基含有高分子材料(Y)としては、スルホン酸基(スルホ基)、カルボン酸基(カルボキシル基)、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基等の酸基を有する高分子材料が例示できる。好ましいものとして、具体的には、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸、3−スルホプロピルメタクリレート、4,4’−ジアミノスチルベンゼン−2,2’−ジスルホン酸、イタコン酸ビス(3−スルホプロピル)、アクリル酸、メタクリル酸等の酸基を有するモノマーを重合させたポリマー;ビニルリン酸、アリルリン酸等の酸基を有するモノマーを重合させたポリマー;ポリリン酸が例示できる。このようなモノマー、ポリマーは、比較的安価に入手でき、種類も豊富である。さらに、重合性不飽和二重結合を有するモノマーを重合させる場合、反応が比較的容易に起こるため、制御し易く、目的とする構造を簡単な重合制御装置で得られるため、好適である。
酸基含有高分子材料(Y)は、一種のモノマーを重合させたものでも良いし、二種以上のモノマーを共重合させたものでも良い。二種以上のモノマーを共重合させる場合には、これらモノマーの組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すれば良い。このように複数種のモノマーを共重合させたものとして、一分子中に複数種の酸基を有するものも好適であり、好ましいものとして、具体的には、ビニルスルホン酸−アクリル酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸−アクリル酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸−ビニルリン酸共重合体が例示できる。
酸基含有高分子材料(Y)は、さらに酸基以外の官能基を有していても良い。酸基以外の官能基としては、架橋性を有する官能基(以下、架橋性基と略記する)が特に好ましい。架橋性基としては、好ましいものとして、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、メルカプト基等が例示でき、水酸基、カルボニル基がより好ましい。酸基と架橋性基とを有する高分子材料としては、ビニルスルホン酸−ビニルアルコール共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸−ビニルアルコール共重合体等が例示できる。このような酸基と架橋性基とを有する高分子材料を含むことで、膜−電極接合体の接合強度、接合層の耐水性、耐極性溶媒性を一層向上させることができる。
また、酸基と架橋性基とを有する高分子材料は、酸基を有するモノマー(V)と、酸基を有さず且つケイ素原子を有するモノマー(W)との重合物であることが好ましい。
酸基を有するモノマー(V)としては、好ましいものとして、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸、3−スルホプロピルメタクリレート、4,4’−ジアミノスチルベンゼン−2,2’−ジスルホン酸、イタコン酸ビス(3−スルホプロピル)、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルリン酸、アリルリン酸等が例示できる。
酸基を有さず且つケイ素原子を有するモノマー(W)としては、好ましいものとして、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(メチルジエトキシシリル)プロピルアクリレート、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(メチルジエトキシシリル)プロピルメタクリレート、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン等が例示できる。
このような構成とすることで、酸基含有部の近傍に、ケイ素−酸素架橋構造を持たせることができ、実使用時における接合層のメタノール等による溶解、膨潤を防ぎ、高い酸基濃度を実現し、その結果、一層高出力の燃料電池が得られる。
酸基含有高分子材料(Y)が有する酸基以外の官能基は、一種でも良いし二種以上でも良い。二種以上である場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
酸基含有高分子材料(Y)としては、上記以外にも、当該技術分野で知られる、プロトン伝導性を有する酸基含有高分子材料や電解質材料も使用できる。
酸基含有高分子材料(Y)においては、酸基の塩も酸基に含める。具体的には、酸基の少なくとも一つのプロトン(H)が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン等のカチオンで置換された基等が例示できる。ただし、これらに限定されるものではない。酸基の塩は、加熱による膜及び電極の構成成分の劣化が酸性条件下で顕著に加速される場合に、好適に使用される。この場合、後述する膜―電極接合体の製造時に、加熱工程の後に、酸基の塩を酸基に変換する工程が必要となる。具体的には、硫酸、塩酸等の水溶液等に浸漬させた後、水等により洗浄する工程が挙げられる。
酸基含有高分子材料(Y)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
酸基含有高分子材料(Y)を含む水溶液において、酸基含有高分子材料(Y)の濃度は、100質量部に対して、3〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
(ハ)酸基を有さない親水性高分子材料(Z)
本発明の電解質材料組成物は、さらに、酸基を有さない親水性高分子材料(Z)(以下、親水性高分子材料(Z)と略記する)が配合されていても良い。
親水性高分子材料(Z)は、酸基以外の親水性基又は親水性の結合を、側鎖又は主鎖に有するポリマーであれば、特に限定されない。
また、親水性高分子材料(Z)は、架橋性基を有していても良い。この場合、親水性基以外に架橋性基を有していても良く、親水性且つ架橋性である基を有していても良い。
親水性基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、オキソ基、カルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、メルカプト基等が好ましいものとして例示でき、水酸基が特に好ましい。
親水性の結合としては、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等が例示できる。
親水性高分子材料(Z)で好ましいものとしては、種々の分子量・ケン化度のポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等が例示でき、なかでも、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールは、各種架橋剤により架橋可能な水酸基を有し、各種分子量のものが市販されている点でより好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。これら親水性高分子材料(Z)は、極性基を有するため、電解質膜と電極との接着力の向上、接合層の凝集力向上に寄与する。
ポリビニルアルコールは、平均重合度が1000〜6000であることが好ましく、3000〜4500であることがより好ましい。重合度が小さ過ぎると、接合層が耐水性に劣ることがあり、燃料電池として使用中に、膜−電極界面の溶解等が起こって、出力が低下し易くなることがある。また、重合度が大き過ぎると、水溶液の粘度が高過ぎて、他の材料と十分に均一な溶液を作製できないことがある。なお、ポリビニルアルコールの質量平均分子量については、平均重合度と平均ユニット分子量との積により、おおよその値が算出できる。ここで、ポリビニルアルコールのユニットは(CHCHOH)x(CHCHOCOCH)yで表され、x+y=1である。
また、ケン化度は特に限定されないが、高いほど好ましく、90%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。ケン化度が高い方が、加熱硬化でより耐水性の高い接合層を形成できる。なお、ケン化度が99.99%以上のものは入手が困難であり、入手できてもコストが上昇してしまう。前記x及びyにより、ケン化度は、x/(x+y)×100(%)で表される。
ポリエチレングリコールの質量平均分子量は1000000以上であることが好ましく、2000000以上であることがより好ましい。分子量が大きい方が、耐水性、耐膨潤性が優れた接合層を形成できる。
親水性高分子材料(Z)が架橋性基を有する場合、これを架橋するために併用する架橋剤は、架橋性基の種類に応じて適宜選択すれば良く、好ましいものとして、ジヒドラジド類、トリヒドラジド類、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、ジアミン類、トリアミン類、ジアルデヒド類、トリアルデヒド類、ジグリシジルエーテル類、トリグリシジルエーテル類、アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシアルミニウム等が例示できる。また、ポリアクリル酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリルアミド−アクリル酸ヒドラジド共重合体等のポリマーを架橋剤として使用しても良い。
上記の中でも、特に、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコールの水酸基と反応して、容易に架橋を形成し、接合層の耐水性、耐膨潤性の向上に寄与する点から、ジカルボン酸類、トリカルボン酸類、ジアルデヒド類、トリアルデヒド類、ジグリシジルエーテル類、トリグリシジルエーテル類、アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシアルミニウム等が好ましく、スルホコハク酸、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、グリセロールトリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル等がより好ましい。
親水性高分子材料(Z)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すれば良い。
本発明の電解質材料組成物は、上記各成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲でさらに、粘着性付与剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、熱安定剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、有機溶剤等のその他の成分が配合されていても良い。そして、これらの中でも、粘着性付与剤を含むことが好ましい。
(二)粘着性付与剤(U)
前記粘着性付与剤(U)は特に限定されないが、具体的には、脂肪族系石油樹脂;脂環族系石油樹脂;芳香族系石油樹脂;スチレン系樹脂;キシレン樹脂;フェノール樹脂;テルペン樹脂;水添テルペン樹脂;テルペンフェノール樹脂;水添テルペンフェノール樹脂;クマロン樹脂;水添石油系樹脂;ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル類、重合ロジンエステル、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル、ロジン変成フェノール樹脂;ロジンフェノール類等のロジン系樹脂が例示できる。
これらの中でも、ロジン系樹脂、水添石油系樹脂等のエマルジョン型の粘着性付与剤が好ましく、ロジンエステル類、ロジンフェノール類等のロジン系樹脂からなるエマルジョンが特に好ましい。
ロジンエステル類としては、ガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジンの原料ロジン又は前記原料ロジンを不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジンと、多価アルコールとをエステル化反応させて得られたもの;重合ロジンの多価アルコールエステル;原料ロジンを部分的にフマル化又はマレイン化し、次いでエステル化して得られた、部分マレイン化ロジンの多価アルコールエステル又は部分フマル化ロジンの多価アルコールエステル;原料ロジンを部分的にフマル化もしくはマレイン化した後、不均化し、次いでエステル化して得られた、部分マレイン化不均化ロジンの多価アルコールエステル又は部分フマル化不均化ロジンの多価アルコールエステル等が例示できる。
前記ロジンフェノール類としては、原料ロジン又は安定化ロジンに、フェノール類を付加させ熱重合したもの、あるいはさらに次いでエステル化したものが例示できる。
前記エステル化で使用する多価アルコールは特に限定されないが、具体的には、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール等が例示できる。
前記ロジン系樹脂は、乳化剤を使用してエマルジョン化するが、該乳化剤の好ましいものとしては、α−オレフィンスルホン化物、アルキルサルフェート、アルキルフェニルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアラルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸ハーフエステル塩、ロジン石鹸等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤が例示できる。
乳化剤の使用量は特に限定されないが、前記ロジン系樹脂100質量部に対し、通常は固形分換算で1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。10質量部を超える場合には、得られる皮膜の耐水性が低下することがある。また、1質量部未満の場合には、乳化時のエマルジョンの安定性が悪くなることがある。
前記ロジン系樹脂と水とからなるエマルジョンとしては、市販品を使用しても良い。好ましい市販品としては、ハリマ化成社製「ハリエスター」、荒川化学工業社製「スーパーエステル」等が例示できる。
本発明の電解質材料組成物は、非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)及び水を含むエマルジョンと、酸基含有高分子材料(Y)を含む水溶液とを配合することで製造できる。
前記熱可塑性樹脂(X)及び水を含むエマルジョンは、所望の配合成分と水を混合することで得られる。
前記熱可塑性樹脂(X)及び水を含むエマルジョン、又は酸基含有高分子材料(Y)を含む水溶液は、配合時にさらに水や高極性の有機溶媒で希釈しても良い。ここで有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールが例示できる。
混合は、公知の方法で行えば良く、例えば、スクリューミキサー、スターラー、ホモジナイザー、スタティックミキサー又は自公転ミキサー等を使用して、混合すれば良い。
非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)及び水を含むエマルジョンと、酸基含有高分子材料(Y)を含む水溶液との配合比は、前記エマルジョン及び水溶液の種類に応じて適宜調整すれば良く、一概には言えないが、通常は、非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)の配合量が、酸基含有高分子材料(Y)100質量部に対して、好ましくは50〜300質量部、より好ましくは70〜200質量部となるような配合比とすることが好ましい。
また、本発明の電解質材料組成物中における、各配合成分の配合量は、配合成分の種類に応じて適宜調整すれば良いが、通常は以下の通りである。
すなわち、非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)の配合量は、1.5〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。
酸基含有高分子材料(Y)の配合量は、1.5〜10質量%であることが好ましく、2〜7質量%であることがより好ましい。
非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)及び酸基含有高分子材料(Y)の総配合量は、3〜20質量%であることが好ましく、4〜15質量%であることがより好ましい。
親水性高分子材料(Z)の配合量は、0.5〜5質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。
粘着性付与剤(U)の配合量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.3〜3質量%であることがより好ましい。
そして、本発明の電解質材料組成物中における、配合成分の総配合量は、各配合成分の種類に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、5〜35質量%であることが好ましく、7〜25質量%であることがより好ましい。
<膜−電極接合剤>
本発明の膜−電極接合剤は、上記本発明の電解質材料組成物からなることを特徴とする。
<接合層付き電解質膜>
本発明の接合層付き電解質膜は、上記本発明の膜−電極接合剤を使用して形成された膜−電極接合層(以下、接合層と略記する)が、電解質膜の片面又は両面に、設けられてなることを特徴とする。
接合層付き電解質膜の厚さは目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は10〜200μmであることが好ましく、30〜100μmであることがより好ましい。
(電解質膜)
本発明における好ましい電解質膜としては、以下のものが例示できる。
(1)酸基含有構造体(H)とケイ素−酸素架橋構造体(A)とを反応させて得られる電解質膜(第一の電解質膜)、
(2)ケイ素−酸素架橋構造体(A)と、酸基を有しかつケイ素−酸素結合による架橋構造を有するか又は該架橋構造を形成し得る酸基含有架橋構造体(B)(以下、酸基含有架橋構造体(B)と略記する)とが、ケイ素−酸素結合によって連結された電解質膜(第二の電解質膜)
(3)第二の電解質膜において、酸基含有架橋構造体(B)が、重合性不飽和二重結合を有するシラン化合物(α)(以下、シラン化合物(α)と略記する)と、酸基及び重合性不飽和二重結合を有する酸基含有化合物(β)(以下、酸基含有化合物(β)と略記する)とが、共有結合した構造を含む電解質膜(第三の電解質膜)
以下、各電解質膜について、詳しく説明する。
(1)第一の電解質膜
燃料電池動作時には、アノードで生じたプロトンが膜に供給され、一方、カソードでは膜中のプロトンが消費される。電解質膜中には、あらかじめある程度のプロトンが存在する。アノードではプロトン供給によりプロトン濃度が高まり、カソードではプロトン消費によりプロトン濃度が低くなる。このようにして膜中に生じるプロトン濃度勾配が、アノードからカソードへのプロトン拡散の駆動力である。膜中にプロトンが十分に存在しない場合は、カソード側のプロトンが不足し、安定した燃料電池作動が望めない。従って、高い出力を発現する燃料電池用電解質膜を提供するためには、酸基が高濃度に存在し、かつ酸基が連続的に配置されたプロトン伝導経路を形成している必要がある。
本発明では、酸基含有構造体(H)とケイ素−酸素架橋構造体(A)とを使用することで、強固な架橋を形成し、メタノール等による溶解、膨潤が起こり難く、膜中に酸基が高濃度に存在する状態を確保できると共に、膜中のプロトン濃度を上昇させることが可能となり、長時間安定して高出力の燃料電池作動が達成できる膜が得られる。
(i)酸基含有構造体(H)
酸基含有構造体(H)としては、酸基含有高分子材料(Y)と同じものを使用できる。
また、酸基含有構造体(H)は、酸基含有高分子材料(Y)の前駆体(Y’)と結合可能な官能基を有し、かつ酸基を有さないモノマーユニットや、前記高分子材料(Y)又はその前駆体(Y’)と結合可能な官能基を複数有する架橋剤ユニットを、さらに含んでいても良い。
ここで、「酸基含有高分子材料(Y)の前駆体(Y’)」とは、前記高分子材料(Y)を形成するためのモノマーまたはオリゴマーのことを指す。これら前駆体(Y’)には、例えば、前記高分子材料(Y)における酸基の前駆体基を有するものも含まれる。ここで、「酸基の前駆体基」とは、化学反応等により、酸基に変換可能な基のことを指す。「化学反応」としては酸化反応や、エステル結合の分解反応等が例示できる。具体的には、酸基がスルホン酸基である場合、「酸基の前駆体基」としては、メルカプト基(チオール基)、スルホン酸エステル基等が例示できる。ただし、これらに限定されるものではない。
前記前駆体(Y’)と結合可能な官能基を有し、かつ酸基を有さないモノマーユニットの好ましいものとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン等が例示できる。
前記高分子材料(Y)又はその前駆体(Y’)と結合可能な官能基を複数有する架橋剤の好ましいものとしては、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ビス(アクリロイルオキシ)ブタン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1−(アクリロイルオキシ)−3−(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、ジビニルベンゼン、3−(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニルメタアクリレート等が例示できる。
第一の電解質膜において、酸基含有高分子材料(Y)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(ii)ケイ素−酸素架橋構造体(A)
ケイ素−酸素架橋構造体(A)としては、下記一般式(I)で表される構造体が好ましい。
Figure 2010170837
(式中、Rは炭素数1〜50の二価の炭化水素基又は酸素原子であり;R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基であり;R〜Rが複数である場合には、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていても良く;mは1以上の整数である。)
一般式(I)中、Rは炭素数1〜50の二価の炭化水素基又は酸素原子である。炭素数が50より多くなると架橋が不十分であり、耐膨潤性、耐熱性が見込めなくなる。
の二価の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでも良く、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれでも良い。
前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれでも良いが、飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。
該脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
該脂肪族炭化水素基の特に好ましいものとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が例示できる。
前記芳香族炭化水素基は、単環式及び多環式のいずれでも良いが、単環式であることが好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
また、Rの二価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が結合した2価の基でも良く、このようなものとしては、芳香族炭化水素基の二個の水素原子が2価の脂肪族炭化水素基で置換されたものが好ましい。ここで、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、上記で説明したものの中から、炭素数の総数が50以下となる組み合わせを選択すれば良い。好ましいものとして具体的には、ベンゼンの1位及び4位の水素原子がアルキレン基で置換されたものが例示でき、該アルキレン基としては炭素数1〜5であるものが好ましく、炭素数1〜3であるものがより好ましく、エチレン基が特に好ましい。
は、ヘテロ原子を有していても良い。ここで、「ヘテロ原子を有する」とは、Rの少なくとも一つの水素原子又は炭素原子が、ヘテロ原子又はヘテロ原子を有する基で置換されていることを指す。また、ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が例示できる。なかでも、Rの少なくとも一つの炭素原子が、酸素原子(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−NH−C(=O)−)で置換されたものは、これらの結合形成の容易性、構造体の柔軟性、原料の入手容易性の観点から好ましい。
上記のなかでもRとしては、耐酸性が高く、極めて安定であることから、二価の炭化水素基であることが好ましい。そして、酸、ラジカル等による攻撃に対して安定であり、さらに、屈曲可能な構造であるため、電解質膜に適度な柔軟性を付与でき、緻密性なども調整できることから、直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。これら安定性、柔軟性、緻密性等は、飽和脂肪族炭化水素基の分子長で調整できる。
一般式(I)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシキ基、イソプロポキシキ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、水酸基又は式「−O−Si−」で表される基である。ここで、R〜Rのいずれかが、式「−O−Si−」で表される基である場合には、ケイ素−酸素架橋構造体(A)が、他のケイ素−酸素架橋構造体(A)と結合していることを示す。
〜Rが複数である場合には、複数のR〜Rはそれぞれ同一でも異なっていても良い。例えば、一般式(I)において、mが2以上の整数である場合には、ケイ素−酸素架橋構造体(A)は、Rとして炭素数1〜50の二価の炭化水素基と酸素原子とを両方含むものであっても良く、このようなものとして、一般式「−Si−R’−Si−O−(式中、R’は炭素数1〜50の二価の炭化水素基を表す)」で表される繰り返しの基本骨格を有するものが例示できる。同様に、複数のRもそれぞれ同一でも異なっていても良く、複数のRもそれぞれ同一でも異なっていても良い。
一般式(I)中、mは1以上の整数である。
ケイ素−酸素架橋構造体(A)は、一般式(I)においてRがOであり、かつR〜Rが「−O−Si−」である場合のように、無機化合物である場合もあれば、有機化合物を複合した有機無機複合体で構成されている場合もある。有機化合物を複合する場合には、無機化合物が有する耐熱性と、有機化合物が有する柔軟性とを両方兼ね備えた電解質膜を形成できる。このような化合物を使用する場合には、架橋構造間の分子構造設計により柔軟性をはじめとする各膜物性の調整が可能である。電解質膜としての重要な特性の一つであるプロトン伝導性、燃料バリア性も、酸基濃度、分子構造、架橋密度を調整することで調整できる。
これらの構造体を形成する架橋性前駆体は、そのまま市販されているものもあり、さらに、不飽和結合を有するものは、対応するシリル化合物のヒドロシリル化反応により合成でき、水酸基やアミノ基等を有するものも同様に合成できる。
ケイ素−酸素架橋構造体(A)としては、例えば、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,8−ビス(ジエトキシメチルシリル)オクタン、1,8−ビス(エチルジメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランや、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン等のアルコキシシランが加水分解されたモノマーが、重縮合したものが好ましい。また、前記アルコキシシランのアルコキシ基が他のアルコキシ基に置き換わったものも同様に使用できるし、さらに本発明においては、これらアルコキシシランに限定されるものではない。
ケイ素−酸素架橋構造体(A)は、一種の前記モノマーが重縮合したものでも良く、二種以上の前記モノマーが重縮合したものでも良い。二種以上の前記モノマーが重縮合したものである場合、これらモノマーの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
ケイ素−酸素架橋構造体(A)は、前記アルコキシシラン由来のアルコキシ基又は該アルコキシ基が加水分解された水酸基が残存していても良いが、アルコキシ基及び水酸基の残存数が少ないものほど好ましく、アルコキシ基及び水酸基が残存せずに、すべて重縮合反応したものが最も好ましい。アルコキシ基及び水酸基の残存数が少なく、ケイ素−酸素結合を形成しているほど、緻密な構造をとり、耐熱性、燃料バリア性、機械的強度が向上する。
本発明においては、適切なケイ素−酸素架橋構造体(A)を使用することで、シリカ架橋粒子を形成させることもでき、その架橋密度や粒子間結合強度を調整することで、電解質膜の強度、可撓性を適宜調整することもできる。
ケイ素−酸素架橋構造体(A)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
ケイ素−酸素架橋構造体(A)の使用量は、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、酸基含有構造体(H)1モルに対して、0.5〜6モルであることが好ましく、1〜3.5モルであることがより好ましい。
(2)第二の電解質膜
(iii)酸基含有架橋構造体(B)
酸基含有架橋構造体(B)は、酸基を有しかつケイ素−酸素結合による架橋構造を有するか又は該架橋構造を形成し得るものであり、下記一般式(II)で表される構造体が好ましい。
Figure 2010170837
(式中、Xは架橋に関与する−O−結合または水酸基であり、Xが複数である場合には、複数のXはそれぞれ同一でも異なっていても良く;Rは少なくとも一つの酸基を有する分子鎖であり;Rはメチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であり、Rが複数である場合には、複数のRはそれぞれ同一でも異なっていても良く;mは0、1又は2である。)
Xは架橋に関与する−O−結合または水酸基である。そして、酸基含有架橋構造体(B)は、Xとして架橋に関与する−O−結合を有する場合には、ケイ素−酸素結合による架橋構造を有していて、Xがすべて水酸基である場合には、ケイ素−酸素結合による架橋構造を形成し得るものである。すなわち、水酸基は架橋構造を形成し得る基である。
は、少なくとも一つの酸基を有する分子鎖であり、共有結合によりケイ素原子と結合している。ここで、酸基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基、硫酸基、リン酸基、ホウ酸基等、種々の酸基が例示できるが、pKaが低く、膜中プロトン濃度を十分に確保でき、熱的にも安定である点から、スルホン酸基が特に好ましい。
における酸基の数は特に限定されないが、1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
酸基含有架橋構造体(B)において、Rの酸基と、Xが結合しているケイ素原子との間の分子構造は、特に限定されないが、耐熱性、耐酸性、耐酸化性等に優れているものが好ましい。そのためには、前記分子構造は直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、直鎖状のアルキレン基であることがより好ましい。直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
そして、Rは、前記ケイ素原子に結合している部位とは反対側の分子末端に酸基を有することが好ましい。
における酸基がスルホン酸基である場合、Rは、下記一般式(III)で表されることが好ましい。
Figure 2010170837
(式中、nは1〜20の整数である。)
nは1〜20の整数であり、1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
上記の中でも、nが3である酸基含有架橋構造体(B)の一つである3−(トリヒロドキシシリル)プロパンスルホン酸は、Gelest社より市販されており、また、臭化アリルを原料とした合成法も確立されており、入手が容易であるため、特に好ましい。また、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、サイラエースS−810)等を使用して架橋構造を形成させた後、メルカプト基を酸化することにより、酸基含有架橋構造体(B)とすることもできる。
さらに、下記一般式(VI)で表されるオリゴマー又はポリマーを使用して架橋構造を形成させたのち、メルカプト基を酸化することにより、酸基含有架橋構造体(B)とすることもできる。
Figure 2010170837
(式中、R10はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基又はフェニル基であり;R11はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基フェニル基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基又は式「−O−Si−」で表される基であり;kは1〜20の整数であり;lは3〜500の整数である。)
ここで、式中、R11がメトキシ基であり、kが3であり、lが10であるものは、信越化学社より市販されており(X−41−1805)、好適である。
酸基含有架橋構造体(B)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(iv)ケイ素−酸素架橋構造体(A)
第二の電解質膜におけるケイ素−酸素架橋構造体(A)は、第一の電解質膜の場合と同じであり、一種を単独で使用しても良く、二種以上を併用しても良い。そして、酸基含有架橋構造体(B)として、前記一般式(II)で表される構造体と併用することで、ケイ素−酸素架橋構造体(A)と酸基含有架橋構造体(B)とがケイ素―酸素結合によって連結され、高い酸基濃度を保ちつつ、メタノールによる溶解や膨潤が発生し難く、かつ熱による軟化、変形の少ない電解質膜が得られる。
(3)第三の電解質膜
(v)ケイ素−酸素架橋構造体(A)
第三の電解質膜におけるケイ素−酸素架橋構造体(A)は、第一の電解質膜の場合と同様であるが、前記一般式(I)で表される構造体が好ましい。
(vi)酸基含有架橋構造体(B)
第三の電解質膜においては、酸基含有架橋構造体(B)は、前記シラン化合物(α)と前記酸基含有化合物(β)とが共有結合した構造を含む。
第三の電解質膜としては、シラン化合物(α)と酸基含有化合物(β)とが共有結合した構造を含む酸基含有架橋構造体(B)と、架橋基本構造体(骨格)となるケイ素−酸素架橋構造体(A)とが、シロキサン結合を形成するように構成されたものが例示できる。あるいは、シラン化合物(α)と酸基含有化合物(β)とが共有結合していることに加えて、シラン化合物(α)同士又は酸基含有化合物(β)同士が重合体を形成しているものでも良く、さらに、後述する架橋剤(C)が、シラン化合物(α)、酸基含有化合物(β)又は架橋剤(C)と架橋化合物を形成しているものでも良い。
一般に、ケイ素−酸素架橋性化合物は構造が剛直なため、極性の高い部分が多く存在すると、温度変動によるプロトン伝導性、燃料バリア性の劣化を生じさせる場合がある。これに対して、酸基含有架橋構造体(B)において、酸基含有化合物(β)に由来する酸基と、シラン化合物(α)に由来するケイ素原子とは、所定の距離だけ離間して架橋構造を形成する。そのため、高燃料バリア性や強度等、電解質膜に求められる様々な特性をより向上させることができる。さらに、酸基含有架橋構造体(B)中の有機部位を多く有することにより、電解質膜に柔軟性が付与され、耐衝撃性が向上する。また、必要に応じて架橋剤(C)を導入することにより、柔軟かつ強固な架橋構造が得られるため、耐衝撃性及び耐極性溶媒性が一層向上する。
酸基含有架橋構造体(B)においては、酸基含有化合物(β)に由来する酸基と、シラン化合物(α)に由来するケイ素原子とが、少なくとも4つ以上の連続した炭素原子間の結合を介して結合していることが好ましい。これにより、酸基とケイ素原子との結合距離が近い場合に生じ得る、極性溶媒の急激な侵入による電解質膜の破壊や特性劣化を抑制する一層高い効果が得られる。
(vii)シラン化合物(α)
シラン化合物(α)としては、好ましいものとして、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(メチルジエトキシシリル)プロピルアクリレート、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリルレート、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルメタクリルレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリルレート、3−(メチルジエトキシシリル)プロピルメタクリルレート、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン等が例示できる。なかでも、ケイ素−酸素結合と不飽和二重結合を有する化合物が特に好ましい。
シラン化合物(α)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
(viii)酸基含有化合物(β)
酸基含有化合物(β)としては、プロトン付加が可能なヘテロ原子を3つ以上有する化合物が好ましく、スルホン酸基を有する化合物がより好ましい。
特に好ましい酸基含有化合物(β)としては、スルホン酸基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルが例示でき、なかでも、スルホン酸基を構成する硫黄原子とエステル結合を構成する酸素原子とが、少なくとも二つ以上の連続した炭素原子間の結合を介して結合しているものが最も好ましい。
また、特に好ましい酸基含有化合物(β)としては、スルホン酸基を有するアクリルアミド誘導体も例示でき、スルホン酸基を構成する硫黄原子とアクリルアミド骨格を構成する窒素原子とが、少なくとも二つ以上の連続した炭素原子間の結合を介して結合しているものが最も好ましい。
このような酸基含有化合物(β)としては、好ましいものとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸、3−スルホプロピルメタクリレート、イタコン酸ビス(3−スルホプロピル)等が例示できる。
酸基含有化合物(β)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
第三の電解質膜においても、酸基含有架橋構造体(B)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
例えば、ケイ素−酸素架橋構造体(A)と、酸基含有架橋構造体(B)とが、ケイ素−酸素結合によって連結された電解質膜(第二及び第三の電解質膜)は、メタノールクロスオーバー(MCO)が極めて小さく、プロトン伝導性も高いが、加熱プレス等で電極と接合することが難しい。しかし、本発明の電解質材料組成物を膜−電極接合剤として使用すれば、接合強度が十分に高い膜−電極接合体が得られる。
(ix)その他の成分
本発明における電解質膜は、上記以外のその他の成分を配合して形成されたものでも良い。
電解質膜におけるその他の成分としては、架橋剤(C)、相溶化剤(D)が例示できる。
架橋剤(C)としては、シラン化合物(α)又は酸基含有化合物(β)に結合可能な官能基を一分子中に二つ以上有する架橋剤が好ましく、具体的には、N,N’−メチレンビス(アクリルアミド)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ビス(アクリロイルオキシ)ブタン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1−(アクリロイルオキシ)−3−(メタクリロイルオキシ)−2−プロパノール、ジビニルベンゼン、3−(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニルメタアクリレート等の炭化水素系架橋剤が例示できる。また、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート等のフッ素系モノマー等を配合してもよい。
架橋剤(C)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
架橋剤(C)の使用量は、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)の総使用量に対して、3〜30モル%であることが好ましく、5〜15モル%であることがより好ましい。
相溶化剤(D)は、配合成分を均一に混合できるものであれば、特に限定されない。好ましいものとしては、モノアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の非イオン性界面活性剤が例示できる。また、相溶化剤としての機能だけでなく、プロトン伝導性膜を構成する材料として必要な機能、例えば、プロトン伝導性、架橋反応性等を併せ持つものであっても良い。
相溶化剤(D)は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
電解質膜においては、プロトン伝導性を高める目的で、別の酸成分として、前記酸基含有高分子材料(Y)や、プロトン伝導性を有する電解質材料を併用しても良い。
また、前記第一〜第三の電解質膜を形成するためのいずれかの配合成分を併用した電解質膜も好適に使用できる。このような電解質膜としては、ケイ素−酸素架橋構造体(A)及び酸基含有架橋構造体(B)以外に、さらに、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)を別途併用したものが例示できる。
この場合、ケイ素−酸素架橋構造体(A)の使用量は、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、酸基含有架橋構造体(B)1モルに対して、1〜10モルであることが好ましく、2〜6モルであることがより好ましい。
また、酸基含有化合物(β)の使用量は、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、シラン化合物(α)1モルに対して、5〜30モルであることが好ましく、10〜20モルであることがより好ましい。
そして、酸基含有架橋構造体(B)、シラン化合物(α)及び酸基含有化合物(β)の総使用量は、ケイ素−酸素架橋構造体(A)1モルに対して、0.5〜7モルであることが好ましく、1〜4モルであることがより好ましい。
さらに、膜の強度を高めるために、多孔質基材の孔内に電解質材料が充填された構造のものを、電解質膜として使用しても良い。
多孔質基材は、有機材料からなるものでも良いし、無機材料からなるものでも良い。
有機材料としては、ポリエチレン;超高分子量ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリイミド;ポリアリレート系液晶ポリマー等の高分子化合物が例示できる。なかでも、フッ素樹脂、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン又はポリイミドからなる高分子材料は、膜厚や孔径の異なる様々な種類のものが市販されているので好適である。
無機材料としては、ガラス、シリカ、アルミナ、カーボン、炭化珪素等が例示できる。
多孔質基材の孔径は、0.05〜10μmであることが好ましく、0.1〜1.0μmであることがより好ましい。孔径が小さ過ぎると、電解質材料が充填され難くなり、プロトン伝導性が低下する。また、孔径が大き過ぎると、燃料バリア性が低下したり、膜の強度が低下し、破損するおそれがある。
多孔質基材の空孔率は、膜の強度、電解質の充填率との兼ね合いで一概には言えないが、通常は30〜98%であることが好ましく、40〜95%であることがより好ましい。
多孔質基材の形態としては、上記各材料からなる繊維をシート状に成形した不織布、織布が例示できる。織布は平織り、斜文織、朱子織、からみ織り等のいずれの織り方で織られていても良い。織布はまた、個々の繊維を直接織ったものでも良く、繊維を束ねて形成されたもの(例えば、ガラス糸等の無機糸)を織ったものでも良い。シート状の多孔質基材は、二種以上の繊維を組み合わせて構成されていても良い。
多孔質基材の厚さは目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は10〜150μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。
電解質膜は、上記のようなものであれば、市販品でも良いし、所望の成分を反応させて作製したものでも良い。反応させる場合の温度、時間等の条件は、反応させる成分の種類に応じて適宜調整すれば良い。
多孔質基材の孔内に電解質材料が充填された構造の電解質膜を作製する場合には、例えば、該電解質材料を形成するための原料(オリゴマー等)を含有する液体を多孔質基材に含浸させ、次いで、オーブン等を使用して、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃の温度で、好ましくは12〜36時間程度加熱硬化させ、さらに、好ましくは80〜230℃、より好ましくは90〜210℃の温度で、好ましくは4〜12時間程度焼成する方法が挙げられる。焼成して得られた膜をさらに洗浄することで、目的とする電解質膜が得られる。
本発明の接合層付き電解質膜は、上記電解質膜の片面又は両面に、上記本発明の膜−電極接合剤を使用して接合層を形成することで製造できる。
接合層は、例えば、電解質膜の所定箇所に、膜−電極接合剤を塗布して、これを加熱乾燥することで形成できる。
膜−電極接合剤の塗布方法は特に限定されず、当該技術分野の公知の方法を適用でき、好ましい方法として、ロールコート法、スプレーコート法、ドクターブレード法、ディップコート法、転写法及び電着塗装法が例示できる。
膜−電極接合剤の加熱乾燥方法としては、好ましい方法として、オーブンによる加熱、膜−電極接合剤を塗布した電解質膜を、二枚の離型フィルムで挟持して加熱プレスすることによる加熱等で乾燥する方法が例示できる。加熱プレスによる乾燥では、接合層付き電解質膜の厚さも容易に調整できる。
加熱条件は、膜−電極接合剤中の溶媒を蒸発させることができれば、後述する電極との接合を妨げない範囲で適宜調整すれば良いが、例えば、加熱プレス時には、好ましくは100〜140℃、より好ましくは110〜130℃の温度で、好ましくは1〜10分間程度、加熱プレスすると良い。加熱プレス時の圧力は、電解質膜や接合層が破壊されない圧力であれば良く、0.1〜10kN程度が好ましい。
また、前記電解質材料組成物を、離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の基材上に塗布及び乾燥して、所望の厚さの接合層フィルムを形成した後、これを電解質膜の両面にそれぞれ設置して、加熱プレス等でプレスすることにより、接合層フィルムを電解質膜上に転写する方法も好適である。このようにすることで、接合層中の成分が電解質膜に含浸し難くなり、電解質液の急激な含浸によるミクロクラック等の発生を抑制できる。
接合層フィルム形成時の加熱条件は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃の温度で、好ましくは30〜90分間程度加熱した後、さらに、好ましくは80〜120℃、より好ましくは90〜110℃の温度で、好ましくは90〜150分程度加熱する条件が例示できる。
また、接合層フィルムを電解質膜上に転写する時の加熱プレスの条件は、先に述べた加熱プレスの条件と同様で良い。
電解質材料組成物の組成は、電解質膜を構成する電解質とは異なる組成とし、その乾燥皮膜(接合層)の膨潤率が、電解質膜を構成する電解質材料の膨潤率より大きいことが好ましい。十分に軟化及び/又は膨潤しないと、接合層の電極多孔質構造への含浸が小さく、十分な接合強度が発現しないことがある。
接合層は、前記電解質膜よりも、極性溶媒含浸時の膨潤率が大きいことが特に好ましい。ここで、極性溶媒とは、後述する膜−電極接合体の製造時に使用する極性溶媒のことを指す。このようにすることで、膜−電極接合体の製造時に、接合層が十分に軟化及び/又は膨潤し、電極の多孔質構造へ十分に含浸し、一層接合強度が向上する。接合層の膨潤率は、電解質膜を構成する電解質とは異なる組成の前記電解質材料組成物を使用することで、適宜調整できる。
<膜−電極接合体>
本発明の膜−電極接合体(MEA)は、電解質膜の片面又は両面に、上記本発明の膜−電極接合剤を使用して形成された膜−電極接合層を介して、電極が配置されてなることを特徴とする。
なかでも、好ましい膜−電極接合体は、上記本発明の接合層付き電解質膜の接合層上に、電極が配置されてなることを特徴とするものである。
以下、図1を参照して、本発明の膜−電極接合体について説明する。図1は、本発明の膜−電極接合体を例示する概略断面図である。
図1に例示するように、膜−電極接合体1においては、電解質膜2の両面に接合層3が設けられている。そして、一方の接合層3上には第一の触媒層4aが設けられ、該第一の触媒層4a上には第一のガス拡散層4bが設けられている。また、他方の接合層3上には第二の触媒層5aが設けられ、該第二の触媒層5a上には第二のガス拡散層5bが設けられている。そして、第一の触媒層4a及び第一のガス拡散層4bで第一の電極4が構成され、第二の触媒層5a及び第二のガス拡散層5bで第二の電極5が構成されている。第一の電極4及び第二の電極5のいずれか一方は一方はアノードであり、他方はカソードである。
電解質膜2及び接合層3は、上記で説明したものである。
第一の触媒層4a及び第二の触媒層5aは、例えば、触媒を担持した電子伝達性物質を含む層であり、いずれも同様の構成を有する。前記触媒としては、白金、白金−ルテニウム合金等が例示できる。前記電子伝達性物質としては、カーボン及び各種金属が例示でき、カーボンが特に好ましい。触媒を担持した電子伝達性物質は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は目的に応じて適宜選択すれば良い。
第一の触媒層4a及び第二の触媒層5aは、例えば、電解質材料と、触媒を担持した電子伝達性物質とを混合し、これを水やアルコール等で適度な粘度に希釈した後、カーボンペーパー等のガス拡散層に塗布して、加熱等により溶媒を蒸発させることで形成できる。
第一のガス拡散層4b及び/又は第二のガス拡散層5bは、撥水化されていることが好ましい。特にカソード側の電極では、生成された水によってフラッディングを起こしてしまうことがあるが、撥水化により生成水を容易に排除でき、フラッディングの発生を効果的に抑制できる。
第一のガス拡散層4b及び/又は第二のガス拡散層5bは、撥水性材料であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、電子伝達媒体であるカーボンブラックとの混合体であっても良い。この場合、カーボンブラックとPTFEの混合比(カーボンブラック:PTFE、質量比)は、3:7〜7:3であることが好ましく、4:6〜6:4であることがより好ましく、5:5であることが特に好ましい。
第一のガス拡散層4b及び第二のガス拡散層5bの厚さは、上限が0.1mmであることが好ましい。このようにすることで、抵抗値の上昇を抑制でき、出力を一層向上させることができる。一方、厚さの下限は、ガス拡散層の強度等を考慮して適宜設定すれば良い。
また、カーボンブラックとしては、比表面積が10m/g以上のものが好ましい。
接合層3は、電解質膜2と第一の電極4との間、電解質膜2と第二の電極5との間に配置され、電解質膜2とこれら電極との接合強度を向上させる。これにより、従来の膜−電極接合体よりも、高い発電出力、高い燃料バリア性を実現できる。
本発明の膜−電極接合体は、例えば、前記接合層付き電解質膜の接合層に、極性溶媒を含浸させ、該接合層を軟化及び/又は膨潤させた後、電極と貼り合わせ、加熱又は加熱プレスすることで製造できる。
含浸させる極性溶媒は、水又は高極性の有機溶媒である。該有機溶媒としては、膜との親和性が良好であり、比較的低沸点である点から、メタノール、エタノール等のアルコール類が好ましい。前記極性溶媒は、一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。二種以上を併用した好ましい極性溶媒としては、水及びアルコール類の混合溶媒が例示できる。これらの中でも、前記極性溶媒としては、水が特に好ましい。
極性溶媒を含浸させる条件は、接合層が十分に軟化及び/又は膨潤する限り、特に限定されない。含浸させる時間は、通常、数秒〜1時間程度であることが好ましく、含浸させる温度は、通常10〜30℃程度であることが好ましい。時間が長過ぎたり、温度が高過ぎると、接合層中の成分が溶出して、続く硬化工程で接着力が発現しないことがある。
軟化及び/又は膨潤させた接合層を電極と貼り合わせた後は、これを加熱又は加熱プレスして、極性溶媒を蒸発させることで、膜−電極接合体が得られる。この時、前記電解質材料組成物中に架橋性化合物を配合した場合には、その架橋性基が反応して、接合層と電極とが一層強固に接合される。
加熱方法は特に限定されず、オーブン等による加熱、遠赤外線加熱、誘導加熱等、任意の方法を適用できる。また、加圧しながら貼付及び硬化を行えば、さらに電解質膜と電極との密着性が向上するため、プロトン伝導性が一層高い接合界面を形成できる。このような方法としては、好ましくは90〜140℃、より好ましくは110〜130℃の温度で、好ましくは1〜10分間程度加熱プレスする方法が例示できる。加熱プレス時の圧力は、電解質膜、接合層、電極が破壊されない圧力であれば良く、0.5〜2kN程度が好ましい。
本発明の膜−電極接合体は、上記方法に加え、例えば、前記電解質材料組成物(膜−電極接合剤)を、電解質膜及び/又は電極に塗布した後、塗布した前記電解質材料組成物を挟み込むように、電解質膜及び電極を貼り合わせ、加熱又は加熱プレスする方法でも製造できる。
ここで、前記電解質材料組成物の塗布方法は、前記接合層付き電解質膜の製造時における塗布方法と同様である。また、加熱又は加熱プレス方法も上記と同様であり、これにより極性溶媒を蒸発させることで、膜−電極接合体が得られる。この場合も、前記電解質材料組成物中に架橋性化合物を配合した場合には、その架橋性基が反応して、接合層と電極とが一層強固に接合される。この方法で形成される接合層も、上記製造方法における接合層と同様の機能を有する。
上記方法により製造された膜−電極接合体は、接合プロセスにおいて、接合層が電極の凹凸(多孔質構造)に適度に進入し、その状態で乾燥、硬化されるため、接合強度が非常に大きい。したがって、このような膜−電極接合体を備えた燃料電池は、乾燥−湿潤サイクルでも、応力が発生し難く、剥離等が生じず、長期に渡って安定した出力を発現できる。
また、従来の液体状の電解質材料組成物を使用して、電解質膜と電極を接合する場合とは異なり、電解質材料の電極への含浸が多過ぎて発電出力が低下したり、接合強度が低下したりする不具合が生じ難い。さらに、複雑な電解質材料液の組成調整や粘度調整が不要なので、高い出力と高い接合強度を有する膜―電極接合体を簡便に製造できる。
<固体高分子形燃料電池>
本発明の固体高分子形燃料電池は、上記本発明の膜−電極接合体を備えたことを特徴とする。
具体的には、膜−電極接合体の外側に、燃料及び空気(酸素)の通路となる一対のセパレータが設置され、さらにこれらセパレータの外側に、電流を取り出すための集電板が設置された形態のものが例示できる。
また、膜−電極接合体を単位セルとして、その外側に、燃料及び酸素(空気)の通路となる一対のセパレータが設置され、隣り合う複数の単位セルが相互に連結された形態のものが例示できる。
本発明の固体高分子形燃料電池は、上記本発明の膜−電極接合体を使用することで、極めて優れた発電性能、燃料バリア性及び強度(膜−電極接合体の接合強度)を有するものである。
なお、前記触媒層としては、触媒を担持した電子伝達性物質と併用する電解質材料として、本発明の電解質材料組成物を使用したものも好適である。この場合、本発明の電解質材料組成物は、高い接着性と高いプロトン伝導性を有するため、触媒層において、強固に電子伝達性物質同士を結着すると共に、触媒層は、電解質膜又は接合層と効率良くプロトンを授受できる。したがって、このような固体高分子形燃料電池は、一層優れた発電性能及び強度(膜−電極接合体の接合強度)を有するものである。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<1.電解質膜の作製>
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、サイラエースS−810)21.2g、テトラエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE−04)52.5g及びメタノール10.7gをフラスコに計量し、常温で5分間撹拌した。そこに、0.1N塩酸6.2gとメタノール8.2gとを混合した溶液を添加し、更に常温で3時間撹拌した。次いで、フッ化カリウム0.057gとメタノール9.7gとを混合した溶液を添加し、オイルバスで80℃に加熱しながら3時間撹拌した。得られた混合溶液を5℃に冷却し、その後、35℃で真空にてメタノールを分留した。得られた溶液にジエチルエーテル120mlを添加して、常温で10分間撹拌した後、5℃に冷却し、濾紙(ADVANTEC社製、定量濾紙No.5C)を用いて濾過した。得られた濾液から、35℃で真空にてジエチルエーテルを分留し、メルカプト基含有シランオリゴマーを得た。
得られたメルカプト基含有シランオリゴマー4.37gとシリコーンオリゴマーKR−500(信越化学工業社製、KR−500)0.51gとを混合した液に、水0.16gとトリエチルアミン0.060gとを滴下した。次いで、氷冷下で20分間攪拌した後、フッ素樹脂フィルム上で、この溶液をポリエチレン製多孔質基材(膜厚約40μm、平均孔径0.7μm、1辺15cmの正方形状に切断)に含浸させた。含浸後の膜にフッ素樹脂フィルムを被せ、その上からアプリケーターで膜厚が45μmとなるようにレベリングした。フッ素樹脂フィルムを被せたまま室温で16時間養生した後、フィルムを剥がし、更に室温で8時間養生した。養生後の膜を2枚のガラス板でフッ素樹脂フィルムを介して挟み、この状態でガラス製の容器に水500mlとともに入れ、ギアオーブンを用いて80℃で24時間加熱硬化させた後、100℃から200℃まで1時間に20℃の割合で昇温し、更に200℃で3時間焼成した。得られた膜をガラスシャーレに移し、1N塩酸水溶液及び水に浸漬し、未反応物及び触媒を膜から抽出した。抽出液を除いた後、酢酸125ml、30質量%過酸化水素水100mlを混合して作製した過酢酸溶液に膜を浸漬し、ホットプレートにて60℃で1時間加熱した。得られた膜を過酢酸溶液から取り出し、80℃の水に1時間ずつ、2回浸漬して過酢酸溶液を充分に除いて、半透明の膜を得た。これを電解質膜として用いた。
<2.接合層の作製>
(2−1.膜−電極接合剤の作製)
アクリル系樹脂エマルジョン(新中村化学社製、ニューコートSKF−1000C、固形分46質量%)0.60g、水1.5g、7.5質量%ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(アルドリッチ社製、質量平均分子量約200万)水溶液2.0gを十分に混合し、電解質材料組成物を得た。これを接合剤として用いた。
(2−2.膜−電極接合剤を塗布、乾燥する工程)
得られた接合剤を、上記工程で得られた電解質膜(5cm角)の両面に塗布し、フッ素樹脂フィルムに挟んだ状態でプレス機(新東工業社製)にて120℃−1kNで5分間プレスした。
この工程をもう一度行い、膜厚約55μmの接合層付き電解質膜を得た。
<3.膜−電極接合体の作製>
上記工程で得られた接合層付き電解質膜を、約23℃の水に約10秒間浸漬した。その後、電解質膜の一方の面に、カソード電極としてガス拡散電極(米国E−TEK社製、2.5cm角、白金担持量0.5mg/cm2)を、他方の面にアノード電極としてガス拡散電極(米国E−TEK社製、2.5cm角、白金担持量0.5mg/cm2、ルテニウム担持量0.3mg/cm)を設置した。その後、プレス機(新東工業社製)にて120℃−1kNで5分間プレスし、膜−電極接合体を得た。
[実施例2]
<1.電解質膜の作製>
実施例1と同様にして電解質膜を得た。
<2.接合層の作製>
(2−1.膜−電極接合剤の作製)
アクリル系樹脂エマルジョン(新中村化学社製、ニューコートSKF−1000C、固形分46質量%)0.45g、水0.66g、7.5質量%ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(アルドリッチ社製、質量平均分子量約200万)水溶液2.0g、7質量%ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製、質量平均分子量146000〜186000、ケン化度99%以上)水溶液1.0gを十分に混合し、電解質材料組成物を得た。これを接合剤として用いた。
(2−2.膜−電極接合剤を塗布、乾燥する工程)
得られた接合剤を、上記工程で得られた電解質膜(5cm角)の両面に塗布し、フッ素樹脂フィルムに挟んだ状態でプレス機(新東工業社製)にて120℃−1kNで5分間プレスした。
この工程をもう一度行った後、さらにギアオーブンにて100℃で1時間加熱し、膜厚約55μmの接合層付き電解質膜を得た。
<3.膜−電極接合体の作製>
実施例1と同様にして膜−電極接合体を得た。
[実施例3]
<1.電解質膜の作製>
1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gelest社製)0.4gとテトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE−04)0.6gを2−プロパノール0.75gに溶解させた。3−(トリヒドロキシシリル)プロパンスルホン酸33質量%水溶液(Gelest社製)1.8gに2−プロパノール0.75gを加えた。約0℃に冷却した後、この両者を混合し、数分間撹拌して、透明でやや粘調な混合液を得た。
得られた混合液1.86g、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(東京化成工業社製)0.16g、トリメトキシビニルシラン(信越化学工業社製、KBM−1003)0.15g、テトラエトキシシラン(信越化学工業社製、KBE−04)1.75gを混合した液を約0℃で10分攪拌した後、氷冷しながら、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(和光純薬工業社製)6.25gを水6.25gに溶解した液と、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業社製)10質量%水溶液1.0gと、1,4−ジビニルベンゼン(和光純薬工業社製)0.3gとを、これに滴下した。さらに得られた混合溶液を、窒素バブリングしながら30分間撹拌した。これに、熱ラジカル発生剤2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド(和光純薬工業社製、VA−044)0.2gを水0.8gに溶解した液を添加し、重合性組成物を得た。
得られた重合性組成物3.0gを、フッ素樹脂フィルム上でポリエチレン製多孔質基材(平均孔径0.7μm、厚さ40μm、1辺15cmの正方形状に切断)に含浸させた。含浸後の膜にフッ素樹脂フィルムを被せ、その上からアプリケーターで膜厚が45μmになるようにレベリングした。これを、2枚のガラス板でフッ素樹脂フィルムを介して挟み、ギアオーブンを用いて80℃で24時間加熱硬化した後、120℃で8時間焼成して膜を得た。得られた膜を80℃の水に1時間ずつ、2回浸漬して洗浄し、半透明の膜を得た。これを電解質膜として用いた。
<2.接合層の作製>
(2−1.膜−電極接合剤の作製)
アクリル系樹脂エマルジョン(新中村化学社製、ニューコートSKF−1000C、固形分46質量%)0.48g、水1.5g、7.5質量%ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(アルドリッチ社製、質量平均分子量約200万)水溶液2.0g、粘着性付与剤としてロジン系樹脂エマルジョン(ハリマ化成社製、ハリエスターSK−70D、固形分50質量%)0.11gを十分に混合し、電解質材料組成物を得た。これを接合剤として用いた。
(2−2.膜−電極接合剤を塗布、乾燥する工程)
実施例1と同様にして接合層付き電解質膜を得た。
<3.膜−電極接合体の作製>
実施例1と同様にして膜−電極接合体を得た。
[実施例4]
<1.電解質膜の作製>
実施例3と同様にして電解質膜を得た。
<2.接合層の作製>
(2−1.膜−電極接合剤の作製)
アクリル系樹脂エマルジョン(JSR社製、AE981E、固形分50質量%)0.32g、水0.66g、7.5質量%ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(アルドリッチ社製、質量平均分子量約200万)水溶液2.0g、7質量%ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製、質量平均分子量146000〜186000、ケン化度99%以上)水溶液1.0g、粘着性付与剤としてロジン系樹脂エマルジョン(ハリマ化成社製、ハリエスターSK−70D、固形分50質量%)0.08gを十分に混合し、電解質材料組成物を得た。これを接合剤として用いた。
(2−2.膜−電極接合剤を塗布、乾燥する工程)
実施例2と同様にして接合層付き電解質膜を得た。
3.膜−電極接合体の作製
実施例1と同様にして膜−電極接合体を得た。
[実施例5]
<1.電解質膜の作製>
実施例3と同様にして電解質膜を得た。
<2.接合層の作製>
(2−1.膜−電極接合剤の作製)
アクリル系樹脂エマルジョン(積水フーラー社製、エスダイン7110、固形分50質量%)0.40g、水0.6g、7.5質量%ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(アルドリッチ社製、質量平均分子量約200万)水溶液2.0g、7質量%ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製、質量平均分子量146000〜186000、ケン化度99%以上)水溶液1.0gを十分に混合し、電解質材料組成物を得た。これを接合剤として用いた。
(2−2.膜−電極接合剤を塗布、乾燥する工程)
実施例1と同様にして接合層付き電解質膜を得た。
<3.膜−電極接合体の作製>
実施例1と同様にして膜−電極接合体を得た。
[実施例6]
<1.電解質膜の作製>
実施例3と同様にして電解質膜を得た。
<2.接合層の作製>
(2−1.膜−電極接合剤の作製)
酸基含有高分子材料(Y)として、酸基を有するモノマー(V)と、酸基を有さず且つケイ素原子を有するモノマー(W)との重合物を下記の方法で作製した。
10.6質量%2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(和光純薬工業社製)ナトリウム水溶液72.9gを十分に窒素バブリングした後、これに、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド(和光純薬工業社製、VA−044)0.21gを投入し、溶解させた。この水溶液と、50質量%3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート(東京化成工業社製)/メタノール溶液4.2gとを氷冷下で混合し、窒素雰囲気下、60℃で3時間攪拌しながら加熱して、粘調な液体を得た。
得られた粘調液体に、その固形分重量の4倍量の酸型陽イオン交換樹脂を投入し、攪拌しながら、氷冷下で6時間放置した。イオン交換樹脂を濾過により取り除き、粘調な酸性液体を得た。
アクリル系樹脂エマルジョン(JSR社製、AE981E、固形分50質量%)0.32g、水0.66g、上記で得られた粘調な酸性液体(固形分約11質量%)2.0g、7質量%ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製、質量平均分子量146000〜186000、ケン化度99%以上)水溶液1.0g、粘着性付与剤としてロジン系樹脂エマルジョン(ハリマ化成社製、ハリエスターSK−70D、固形分50質量%)0.08gを十分に混合し、電解質材料組成物を得た。これを接合剤として用いた。
(2−2.膜−電極接合剤を塗布、乾燥する工程)
実施例2と同様にして接合層付き電解質膜を得た。
<3.膜−電極接合体の作製>
実施例1と同様にして膜−電極接合体を得た。
[比較例1]
電解質膜としてナフィオン117(登録商標)(デュポン社製)を使用し、これを十分に湿潤させたものと、実施例1で用いたガス拡散電極(米国E−TEK社製)とをプレス機(新東工業社製)にて140℃−1kNで3分間プレスし、膜−電極接合体を得た。
[比較例2]
膜−電極接合剤として、10質量%ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(アルドリッチ社製、質量平均分子量約200万)水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にして膜−電極接合体を得た。
[比較例3]
膜−電極接合剤として、10.5質量%ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(アルドリッチ社製、質量平均分子量約200万)水溶液2.0g、10質量%ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製、質量平均分子量146000〜186000、ケン化度99%以上)水溶液1.0gを十分に混合した電解質材料組成物を使用したこと以外は、実施例2と同様にして膜−電極接合体を得た。
<評価方法>
(1)接合強度評価
作製した膜−電極接合体を、30質量%メタノール水溶液200mlと共にガラス瓶に入れ、プラスチック製の中蓋と外蓋をした。60℃のオーブン中に設置した振とう機に、このガラス瓶をセットし、振とうしながら60℃の環境に放置し、電極が剥離する時間を調べた。剥離時間は、アノード、カソードどちらかの電極で、接合面の面積の約50%以上が剥離した時間とした。結果を表1に示す。なお、評価基準は下記の通りである。
×・・1時間以内に剥離
△・・2〜24時間で剥離
○・・25〜168時間で剥離
◎・・169時間以上(1週間以上)剥離なし
(2)発電性能評価
膜−電極接合体を燃料電池用単セル(JARI標準セル)に規定の方法でセットした。このセルを燃料電池発電評価装置(エヌエフ回路ブロック設計社製、As−510)にセットし、燃料に30質量%メタノール水溶液を用い、セル温度35℃、メタノール水溶液流量1ml/分、空気流量100ml/分の条件で運転し、セルのI−Vを計測し、最大出力を比較し、発電性能を評価した。比較例1のナフィオン117(登録商標)を電解質膜に用いた場合の最大出力を100として、相対値を示した。結果を表1に示す。
(3)MCO評価
直径2cmの円形の窓を有する2つの円形セルを使用し、窓の部分でゴムパッキンを介して、実施例で使用した電解質膜を挟み込み、一方のセルには30質量%メタノール水溶液を、他方のセルには純水を入れ、35℃にて3時間、スターラーで攪拌した。その後、純水側に透過したメタノール量をガスクロマトグラフィーにより測定し、電解質膜としてナフィオン117(登録商標)を使用した場合の透過量を1.0とした透過量の比(MCO比)を算出した。
Figure 2010170837
実施例1〜6の膜−電極接合体を使用した固体高分子形燃料電池は、高い接合強度(接着耐久性)を有することが確認され、高濃度メタノール水溶液を燃料に用いた場合でも高い耐久性を発現することが示された。さらに、高い発電性能を併せ持つことが示された。また、本実施例で使用した電解質膜のMCO比(ナフィオン117(登録商標)比)は、約0.1であった。
以上から本発明の固体高分子形燃料電池は、高濃度メタノール水溶液を燃料に用いた場合でも、高い発電性能を長期間発現でき、強度及び燃料バリア性に優れることが示された。
本発明は、固体高分子形燃料電池に利用可能である。
1・・・膜−電極接合体、2・・・電解質膜、3・・・接合層、4・・・第一の電極、4a・・・第一の触媒層、4b・・・第一のガス拡散層、5・・・第二の電極、5a・・・第二の触媒層、5b・・・第二のガス拡散層

Claims (12)

  1. 非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)及び水を含むエマルジョンと、酸基含有高分子材料(Y)を含む水溶液とが配合されてなることを特徴とする電解質材料組成物。
  2. 前記非水溶性非フッ素系熱可塑性樹脂(X)がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の電解質材料組成物。
  3. さらに、酸基を有さない親水性高分子材料(Z)が配合されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電解質材料組成物。
  4. 前記親水性高分子材料(Z)が水酸基含有高分子材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解質材料組成物。
  5. 前記水酸基含有高分子材料がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項4に記載の電解質材料組成物。
  6. さらに、粘着性付与剤が配合されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電解質材料組成物。
  7. 前記粘着性付与剤がエマルジョン型であることを特徴とする請求項6に記載の電解質材料組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の電解質材料組成物からなることを特徴とする膜−電極接合剤。
  9. 請求項8に記載の膜−電極接合剤を使用して形成された膜−電極接合層が、電解質膜の片面又は両面に、設けられてなることを特徴とする接合層付き電解質膜。
  10. 請求項9に記載の接合層付き電解質膜の接合層上に、電極が配置されてなることを特徴とする膜−電極接合体。
  11. 電解質膜の片面又は両面に、請求項8に記載の膜−電極接合剤を使用して形成された膜−電極接合層を介して、電極が配置されてなることを特徴とする膜−電極接合体。
  12. 請求項10又は11に記載の膜−電極接合体を備えたことを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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