JP5478456B2 - 液状試料検査用プレパラート - Google Patents

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Description

本発明は、体液等の液状試料を光学顕微鏡で検査するためのプレパラートに係り、特に、粘性の高低に関わらず試料を容易に均一に収容することができ、検査することができる液状試料検査用プレパラートに関する。
血液、組織液、尿等の液状試料を顕微鏡で観察する場合、従来より、スライドガラスと呼ばれる矩形のガラス板の上に当該液状試料を数滴垂らして染色等の所定の処理を施し、カバーガラスを被せてプレパラートが作成されていた。
しかしながら、液状試料を一定の厚さにするのは容易ではなく、そのためプレパラートの作成には相当の熟練が必要であり、また、スライドガラスとカバーガラスの間から液状試料が漏れて手指を汚染することもあった。また、スライドガラスもカバーガラスもガラス製であるので、重量が大きく、また壊れ易いという問題を有していた。
このような欠点を解消するため、プラスチック製のスライドガラスとカバーガラスがわずかな隙間を介して密着され、隔壁が前記隙間(セル)の左右を密封するとともに、隙間の前後に試料注入用の開口部と通気口が設けられたスライド(特許文献1参照)が提案されている。このスライドは試料注入用の開口部に液状試料を滴下すれば毛細管現象により試料が自動的にセルの中に引き込まれて広がり、試料の厚さも均一になるので、簡単にプレパラートを作成できる。
特開平4−214519号公報
しかしながら、検査の対象になる試料は粘性の低いものばかりではなく、例えば、尿沈渣のような粘性が高い試料もある。このような粘性が高い試料を上記の特許文献1に記載のスライドの開口部に滴下しても、試料が毛細管現象により自動的に吸い込まれることはない。
粘性が高い資料の場合には、一旦カバーガラスを外してからセルに試料を滴下し、その後にカバーガラスを載置して試料を押し広げる方法が考えられる。しかしながら、接着されたカバーガラスを引き剥がしたり付け直したりするのは煩雑である。
また、プラスチック製のカバーガラスを使用する場合、適当な剛性を持たせるには当該カバーガラスを厚くする必要があるが、この場合、分厚いカバーガラスが邪魔で顕微鏡の対物レンズを試料に近付けることができず、試料の観察が困難になる。これに加え、一般にプラスチックの透明度はガラスと比べて低く、蓋部を厚くすればその分だけ当該蓋部を通過する光の量が減るので、試料の観察がさらに困難になる。
一方、カバーガラスを薄くすれば、今度は適当な剛性を保つことが出来ず、試料の調整中や観察中にカバーガラスが撓んでしまい、作業性が大変悪くなる。
本発明はかかる実情に鑑み、従来技術の上記問題点を解消し、粘性が低い試料ばかりでなく、粘性が高い試料であっても、容易に試料を収容できる液状試料検査用プレパラートを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の特徴の第1は、基板部及び蓋部からなり、前記基板部には試料を収容するための凹窩部が設けられ、前記蓋部はヒンジ部を介して基板部と一体的に設けられるとともに、前記凹窩部に被覆可能であり、前記蓋部には、当該蓋部を前記凹窩部に被覆した際に試料注入用の開口部となる切欠き部が設けられ、前記凹窩部の深さは、前記蓋部を前記凹窩部上に被覆した状態で、蓋部の下面と凹窩部の底面との間で毛細管現象が生じる深さであり、凹窩部の周囲に、該凹窩部よりも深い溝部が設けられているとともに、蓋部の裏面側には前記溝部に嵌入するリブが突設されており、溝部の深さがリブの突設高さよりも大きいことを特徴とする液状試料検査用プレパラートを内容とする。
本発明の特徴の第は、リブが表面側から内側に向けて突出したU字形状またはJ字形状であることを特徴とする請求項1に記載の液状試料検査用プレパラートを内容とする。
本発明の特徴の第は、蓋部の内、凹窩部上を被覆する部分が、その周辺部よりも低く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状試料検査用プレパラートを内容とする。
本発明の特徴の第は、凹窩部に蓋部を被せた状態において、試料注入用の開口部から凹窩部の中央側に向けて凹窩部と蓋部の間隔がテーパ状に狭くなるように、前記切欠き部及び/又は凹窩部の周囲が斜面状に形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずかに記載の液状試料検査用プレパラートを内容とする。
本発明による液状試料検査用プレパラートは、蓋部の端縁に試料注入用の開口部となる切欠き部が設けられるとともに、蓋部を試料収容部である凹窩部の上に被覆した状態において、蓋部の下面と凹窩部の底面との間隔が毛細管現象が生じるように構成されているので、粘性が低い試料の場合は蓋部を凹窩部の上に被覆して試料注入用の開口部に試料を滴下すれば、毛細管現象により自動的に試料が蓋部と凹窩部の間に広がり、凹窩部の中に試料が収容される。
また、試料の粘性が高い場合は、蓋部を持ち上げることにより、凹窩部の中に試料を容易に収容することができる。
さらに、蓋部の裏面にはリブが突設されているので、該リブが補強の役割を果たして剛性を付与し、その結果、該蓋部が薄くても撓みにくく、試料を観察しやすく且つ作業性に優れている。リブは凹窩部の周囲に設けられた溝部に嵌入するので、試料観察時の邪魔にはならない。
なお、溝部の深さをリブの突出高さよりも大きくすることにより、余分の試料がこの溝部のなかに収容されるので、試料が外部に漏れ出し汚染するような事故が防止される。
リブを表面側から内側に向けて突出するU字形状又はJ字形状とすることにより、本発明のプレパラートを作成する際に、リブ側に樹脂が流れ難くなるので、先にリブ側に流れ込んだ樹脂が、後で蓋部の中央部付近で合流することにより出来るウェルドラインの発生を抑制できる。
また、リブが当該リブの幅方向に容易に収縮変形するので、リブ及び溝部の寸法精度が少々悪くても、好適にリブを溝部内に嵌入できる。
蓋部の内、凹窩部上を被覆する部分をその周辺部よりも低くすれば、凹窩部上に被覆される部分に傷が付きにくくなるので、本発明のプレパラートを多数積み重ねたり束ねたりすることができ、作業性が向上する。
凹窩部に蓋部を被せた際に、当該凹窩部と蓋部の隙間がテーパ状に狭くなるように構成すれば、粘性が少々高い試料でも、開口部から試料を押し込むことにより、凹窩部全体に試料を押し広げることができる。
図1(a)は本発明の液状試料検査用プレパラートの一例を示す概略図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(a)のB−B断面図である。 図2(a)は図1において、蓋部を凹窩部に被覆した状態を示す概略図であり、(b)は(a)のC−C断面図である。 図3は図1において、蓋部を凹窩部に被覆した状態における拡大断面図である。 図4は、蓋部と凹窩部の間を部分的にテーパ状としたプレパラートの拡大断面図である。
本発明の液状試料検査用プレパラート1は、図1乃至図3に示した如く、基板部2及び蓋部3からなり、前記基板部2には試料を収容するための凹窩部2aが設けられ、前記蓋部3はヒンジ部3aを介して基板部2と一体的に設けられるとともに、前記凹窩部2aに被覆可能であり、前記蓋部3には、当該蓋部3を前記凹窩部2aに被覆した際に試料注入用の開口部となる切欠き部3bが設けられ、前記凹窩部2aの深さは、前記蓋部3を前記凹窩部2a上に被覆した状態で、蓋部3の下面と凹窩部2aの底面との間で毛細管現象が生じる深さであり、凹窩部2aの周囲に、該凹窩部2aよりも深い溝部2bが設けられているとともに、蓋部3の裏面側には前記溝部2bに嵌入するリブ3dが突設されており、該溝部2bの深さが該リブ3dの突設高さよりも大きいことを特徴とする。
本発明の液状試料検査用プレパラート1は、図1に示すように、基板部2と蓋部3とからなり、蓋部3はヒンジ部3aを介して基板部2に接続されている。
基板部2の形状は特に限定されないが、従来より顕微鏡観察に多用されているスライドガラスと同様、横長の矩形とすれば、従来と同様の方法で顕微鏡にセットでき、試料を観察できるので好ましい。
基板部2には試料を収容するための凹窩部2aが設けられ、図2に示すように、当該凹窩部2aは前記蓋部3で被覆されるようになっている。蓋部3及び凹窩部2aの形状は、後述の試料注入用の開口部を除き、凹窩部2aを蓋部3で覆うことができれば特に限定されないが、従来から使用されているカバーガラスと同様、一辺15〜20mm程度の正方形状とすれば、外観が通常のスライドガラス及びカバーガラスを使用した場合と同様になるので、従来と同じ方法で検査をすることができる。
本発明におけるヒンジ部3aは、蓋部3を凹窩部2aの上で開閉可能とするための部分である。その構造は特に限定されないが、試料検査用のプレパラートは使い捨てとして扱われる場合が多いので、数回程度の開閉に耐える強度を有していれば十分である。
例えば、蓋部3と基板部2を成形する際に両者の間にV字状の切り込み(ノッチ)を1〜3条設け、これをヒンジ部3aとすることができる。このようなヒンジ部3aで基板部2と蓋部3を接続すれば、材質にもよるが、蓋部3を、プレパラートに要求される回数(2〜3回程度)開閉しても壊れない程度の構造を安価に製造することができる。また、切込み(ノッチ)に代えて、蓋部3と基板部2の間を薄いフィルム状としてヒンジ部とすることもできる。
本発明において、凹窩部2aに蓋部3を被覆すれば、図3に示すように、凹窩部2aと蓋部3で囲まれる空間が生じ、この空間内(以後、試料室5と称する場合がある)に試料が注入・収容される。試料室5の形状は、試料及び検査内容に応じて試料が観察しやすくなるよう任意に定めればよいが、通常は縦横それぞれ15〜20mm、高さ0.03〜0.5mm程度とされる。
本発明においては、蓋部3には、試料室5に液状試料を滴下するための開口部となる切欠き部3bが設けられる。詳述すれば、図1に示したような、切欠き部3bが設けられた蓋部3で凹窩部2aの上を被覆すれば、図2に示したように、該切欠き部3bが試料注入用の開口部となり、この部分に試料を滴下すれば蓋部3と凹窩部2aとの間での毛細管現象により試料室5内に試料が注入され収容される。
切欠き部3bの位置は、蓋部3を凹窩部2aに被せたときに凹窩部2aと重なる部分である限り特に限定されないが、顕微鏡による試料観察の妨げにならないように凹窩部2aの端部と重なる位置に切欠き部3bを設けるのが好ましい。なお、図1乃至図3に示した例では、ヒンジ部3aの側に切欠き部3bが設けられており、蓋部3を凹窩部2aに被せたときに切欠き部3bの一部が凹窩部2aの端部と重なって、試料注入用の開口部となるように構成されている。
上記した通り、本発明では試料注入用の開口部3bに液状試料を滴下すれば、毛細管現象により液状試料が試料室5内で広がり収容されるように構成される。具体的には、例えば、蓋部3の下面と凹窩部2aの底面との間隔(即ち、試料室5の高さ)を0.2〜0.5mm程度とすることにより、尿、血液、組織液等の比較的粘性が低い液状試料は毛細管現象により試料室5内で自動的に注入され収容される。
なお、粘性が比較的高い液状試料の場合、試料を開口部3bに滴下しても毛細管現象は生じないが、液状試料と試料室5の間の分子間力は働いているので、僅かな力を加えれば液状試料が試料室5内に広がる場合もある。このような場合、凹窩部2aに蓋部3が被さっている状態で、試料注入用の開口部3bから蓋部3の中央側に向かって凹窩部2aと蓋部3の隙間がテーパ状に狭くなるように形成されていれば(以後、テーパ部5aと称することがある。図4参照)、開口部3bから試料を押し込むことにより、凹窩部2a全体に試料を押し広げることができる。
テーパ部5aを形成させるには、蓋部3の切欠き部3b及び/又は基板部2の凹窩部2aの周囲を斜面状に形成すればよい。図4では、蓋部3の切欠き部3b付近が斜面状3gに形成されている。
例えば尿沈渣のように、試料の粘性が極めて高い場合には、上記のように試料を滴下し毛細管現象により試料室5内に注入・収容することは困難である。このような場合は、蓋部3を持ち上げて凹窩部2aに直接試料を収容した後、蓋部3を凹窩部2a上に被覆する。この場合、必要に応じ、蓋部3の上から試料を押し広げる。更に、必要に応じ、蓋部3の斜面状3gの部分を押すことにより、液料を試料室5に押し込むことができる。
蓋部3を持ち上げ易くする方法としては、例えば、図1に示したように、蓋部3の先端部分に指掛け突起3cを設けて、この部分に指を掛けて蓋部3を開けることができるようにする方法が挙げられる。ただし、指掛け突起3cが基板部2の端縁から突出している場合は、検査中にこの指掛け突起3cに検査器具等が当たって蓋部3が不意に開く恐れが大きくなり、一方、突出していなければ指を掛けて蓋部3を持ち上げることが困難である。
従って、図2に示したように、基板部2の端縁であって凹窩部2aの近傍に指入れ凹部2cを凹設し、指掛け突起3cがこの指入れ凹部2c内では突出するが、基板部2の外形内に収まり突出しないように構成するのが好ましい。このようにすれば、指掛け突起3cに指を掛けることができると共に、指掛け突起3cに検査器具等が当たって蓋部3が不意に開くような恐れが小さくなる。
上記のように蓋部3を開閉させる場合、蓋部3にはある程度の剛性が必要であるが、本発明においては、蓋部3の裏面側にリブ3dが突設することにより剛性を得ている。このため、リブ3dが蓋部3の補強の役割を果たし剛性を付与するので、蓋部3の厚さを0.1〜0.3mm程度にまで薄くしても蓋部3の開閉時に撓むことがなく、作業性がよい。また、蓋部を薄くできるので、顕微鏡の対物レンズを試料に一層近付けることができ、且つ透明度の低い蓋部3により試料からの反射光が遮られるようなこともないので、試料の観察が容易になる。
本発明においてリブ3dの形状は、蓋部3に剛性を与えることができ、且つ溝部2b内に収まる限り、特に限定されない。ただし、リブ3dを中実にすれば、本発明のプレパラート1を射出成形等で作成する際に、樹脂が被覆部3eより先にリブ3dの部分に流れ、リブ3d側から被覆部3eに向かって樹脂が流れることにより、被覆部3eの中央付近で樹脂が合流し、この部分でウェルドラインが出来ることがある。このウェルドラインは試料観察の際の妨げになる場合があるので、被覆部3eには無いほうが好ましく、リブ3dの形状を表面側から内側に向けて突出するU字形状又はJ字形状とすることによりウェルドラインを解消することができる(図3参照)。
即ち、リブ3dをU字形状又はJ字形状にすれば、樹脂がリブ3d側に流れにくくなり、先に被覆部3e側に流れて、この被覆部3eからリブ3dに樹脂が流れるので、樹脂が被覆部3e内で合流することがなくなり、被覆部3eにおけるウェルドラインの発生を抑制できる。
なお、U字形状又はJ字形状のリブ3dは外力が加わることにより当該リブ3dの幅方向に容易に収縮変形可能なので、リブ3d及び溝部2bの寸法精度が少々悪くても(例えば、リブ3dの幅方向の寸法が溝部2bの幅方向の寸法より少々大きくても)、好適にリブ3dを溝部2b内に嵌入できる。従って、プレパラート1の作成時に寸法精度をさほど気にする必要がないので、安価に製造できるとともに、歩留りが向上する。
図3に示すように、蓋部3の内、凹窩部上を被覆する部分(以後、被覆部3eと称することがある)については、その周辺部3f(前記被覆部3eの周りを囲んでいる部分)より低く形成するほうが好ましい。このようにすれば、本発明のプレパラートを多数積み重ねたり束ねたりして、プレパラート同士が擦れ合う様な場合でも、蓋部の表面部分には傷が付かないので、試料の観察に支障を生じることがなく、且つ当該プレパラートの保存や持ち運びが容易になり、作業性が向上する。
被覆部3eと周辺部3fの高度差は、例えば本発明のプレパラート同士を擦り合わせた場合でも被覆部3eに擦り傷が出来ない程度であれば特に限定されないが、基板部2の厚さを勘案して、0.1〜0.5mm程度が好ましい。
蓋部3は不意に開くのを防ぐために、係止構造4を設けるのが好ましい。具体的な構造は特に限定されないが、例えば、図3に記載されているように、蓋部3の指掛け突起3cの先端から内側に向けて突起4aを設けるとともに、基板部2の指入れ凹部2cの内側から外側にむけて突起4bを設け、これらの突起4a、4bを互いに係合させる構造が挙げられる。蓋部3を開ける場合は、指掛け突起3cに指を掛け少し上方に撓ませると突起4aと4bの係合を容易に解くことができる。
本発明では、図1に示したように、凹窩部2aの周囲に該凹窩部2aより深い溝部2bが設けられており、この溝部2bに上記のリブ3dが嵌入するように構成されている。このため、試料の調整時や観察時に当該リブ3dが邪魔になることがない。
また、溝部2bの深さをリブ3dの突出高さよりも大きくすれば、試料室5に入りきらない余分な試料が溝部2bに流れ込むので、試料注入用の開口部3bから余分な試料が洩出して基板部2の表面を汚染する恐れが小さくなる。また、試料の洩出を気にする必要がなくなるので、滴下する試料の量が少なすぎて試料室5に十分な試料が注入されないようなトラブルも防ぐことができる。
本発明において、溝部2bは凹窩部2aの周囲全周に設けてもよいが、図1に示したように、試料注入用の開口部となる切欠き3bの近辺については溝部2bを省略したほうが好ましい。このようにすれば、試料室5が試料で満たされる前に溝部2bに試料が流れ込むような不都合が防止できるので、滴下する試料の量が少ない場合でも問題なく検査を行うことができる。また、試料が先に溝部2b全体に流れ込んでしまい、中央部に気泡が残ってしまう様なトラブルを防止できる。
また、試料が先に溝部2bに流れ込むのを防ぐため、図1に示したように、溝部2bの内側に壁部2dを設けることもできる。このようにすれば開口部に滴下した試料は壁部2dに塞き止められ、先に凹窩部2aの中が試料で満たされてから、余分の試料が溝部2b内に溢れ出るので、試料が足りなくなったり、凹窩部2a内の試料に気泡が残るトラブルが一層防止される。
前記壁部2dは溝部2bの内側全体に設けてもよいが、図1に示したように、試料を滴下するための開口部が設けられた辺に対向する辺の一部、好ましくは凹窩部2aのコーナー部分、に壁部2dを設けず、この壁部2dの不在部分を空気抜き2fとすれば、凹窩部2a内に気泡が残るトラブルが一層効果的に防止される。
基板部2は、凹窩部2を除く表面を粗面化することにより、凹窩部2とそれ以外の場所がひと目で見分けが付くようにすることができる(図示せず)。これにより、例えば、顕微鏡を覗くだけで対物レンズの下に凹窩部2があるか否かを即座に判断することが可能となり作業性が高められる。
また、図1に示されるように、基板部2の表面の一部のみを粗面化して、必要に応じ、被検者の氏名や番号を筆記・印刷するための記録部2fとすることができ、これにより、被検者を取り違える等のトラブルを防止することができる。
なお、凹窩部2aを複数設ける場合にはそれぞれの凹窩部2aを区別するための識別記号を付してもよい。使用できる識別記号は、アルファベットの他、ひらかな、カタカナ、数字、幾何学模様など、それぞれの凹窩部2aを区別できるものであれば、なんでも良い。
識別記号を付す場所もそれぞれの凹窩部2aを区別できる限り特に限定されず、指掛け突起3cに識別記号を付しても良いし、各凹窩部2aの周囲等に付しても良い。
識別記号を付す方法も特に限定されず、例えば本発明のプレパラート1を成形するための金型に識別記号を刻設して、識別記号が浮き彫り状に突設されるようにしてもよいし、成形後に識別記号を印刷してもよい。
本発明における液状試料検査用プレパラート1の材質は、透明な高分子材料である限り特に限定されず、通常の光学用の透明樹脂から選ぶことができる。その具体例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート、ポリイミド等を挙げることができ、このなかでも、アクリル樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィンが特に好ましい。
叙上のとおり、本発明の液状試料検査用プレパラートによれば、液状試料の粘性が低い場合は勿論、粘性が高い場合でも極めて容易にプレパラートを作成でき、その有用性は頗る大である。
1 液状試料検査用プレパラート
2 基板部
2a 凹窩部
2b 溝部
2c 指入れ凹部
2d 壁部
2e 空気抜き
2f 記録部
3 蓋部
3a ヒンジ部
3b 切欠き部(試料注入用の開口部)
3c 指掛け突起
3d リブ
3e 被覆部
3f 周辺部
3g 斜面状
4 係止構造
4a、4b 突起
5 試料室
5a テーパ部

Claims (4)

  1. 基板部及び蓋部からなり、
    前記基板部には試料を収容するための凹窩部が設けられ、
    前記蓋部はヒンジ部を介して基板部と一体的に設けられるとともに、前記凹窩部に被覆可能であり、
    前記蓋部には、当該蓋部を前記凹窩部に被覆した際に試料注入用の開口部となる切欠き部が設けられ、
    前記凹窩部の深さは、前記蓋部を前記凹窩部上に被覆した状態で、蓋部の下面と凹窩部の底面との間で毛細管現象が生じる深さであり、
    凹窩部の周囲に、該凹窩部よりも深い溝部が設けられているとともに、蓋部の裏面側には前記溝部に嵌入するリブが突設されており、溝部の深さがリブの突設高さよりも大きいことを特徴とする液状試料検査用プレパラート。
  2. リブが表面側から内側に向けて突出したU字形状またはJ字形状であることを特徴とする請求項1に記載の液状試料検査用プレパラート。
  3. 蓋部の内、凹窩部上を被覆する部分が、その周辺部よりも低く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状試料検査用プレパラート。
  4. 凹窩部に蓋部を被せた状態において、試料注入用の開口部から凹窩部の中央側に向けて凹窩部と蓋部の間隔がテーパ状に狭くなるように、前記切欠き部及び/又は凹窩部の周囲が斜面状に形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずかに記載の液状試料検査用プレパラート。
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