(第1実施形態)
以下、本発明のダンパー装置について、これを備えた搬送装置を有する記録装置としてのプリンターにおいて具体化した第1実施形態について、図を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態のプリンター11は、筐体状をなすフレーム12内に、装着部13、給送部14、分離部15、搬送手段としての搬送部16、記録手段としての記録部17、及び排出部18を備えている。なお、これらは、プリンター11において記録が施される対象物としての用紙Pの搬送経路に沿って順次に配置されている。
まず、装着部13は、フレーム12内の底部側(図1では下部側)に配置され、フレーム12における一つの側面(図1では右側面)に開口した矩形の挿入口19を介してフレーム12の外部と連通している。そして、この挿入口19を介して用紙Pが積層状態に載置されたカセット20を用紙Pの積層方向と直交する方向(図1では左右方向)に挿抜させることにより、カセット20と共に用紙Pを装着部13に対して着脱自在に装着できるようになっている。
次に、給送部14は、フレーム12内において装着部13の内奥と対応する位置に配置され、図示しない給送モーターの駆動力に基づき回転するピックアップローラー14aを備えている。そして、挿入口19から装着部13に挿入されたカセット20において積層状態に載置されている用紙Pのうち、最上位の用紙Pを、このピックアップローラー14aの回転によって、挿入口19とは反対の方向に給送する給送動作を行うようになっている。
また、分離部15は、フレーム12内において、装着部13に装着された状態にあるカセット20の挿入方向前側の端面と対向することになる位置に配置され、装着部13側から見た場合に上り勾配の斜面を形成する斜板21を備えている。そして、この斜板21の斜面にて構成される分離斜面21aに対して、給送部14から給送された用紙Pが紙先端を当接させつつ乗り越えるように移動することによって、分離部15は用紙Pを一枚ずつ下流側の搬送部16に送るようになっている。
図1に示すように、搬送部16は、フレーム12内において、分離部15から送られた用紙Pを反転させてフレーム12内の上部の記録部17側へ搬送可能な反転搬送路22を形成するように配置されている。そして、その反転搬送路22の上流部には分離ローラー23が設けられると共に、その反転搬送路22の分離ローラー23よりも下流側には複数の中間搬送ローラー24が搬送方向に間隔をおいて設けられている。分離ローラー23は、分離斜面21aで分離されずに重なって送られた用紙Pを分離させて、中間搬送ローラー24が設けられた下流側に用紙Pを一枚ずつ確実に送るようになっている。中間搬送ローラー24は、各々が回転動作することによって用紙Pをカセット20から分離部15への給送方向(図1では左側方向)とは反対方向となる反転搬送方向(図1では右側方向)に反転して搬送し、記録部17に送るようになっている。
また、記録部17は、既述したように、フレーム12内の上部に配置され、搬送用ローラー対25、記録ヘッド26、及び用紙Pの支持台となる支持部材27を備えている。記録ヘッド26は、ガイド軸28に沿って、用紙Pの搬送方向と交差する幅方向(図1では紙面と直交する方向)に往復移動可能なキャリッジ29に固定されている。キャリッジ29は、図示しない駆動手段(モーター)によって、ガイド軸28に沿った主走査方向に移動するように駆動されるとともに、その主走査方向における位置が位置検出装置(エンコーダー)30によって検出されることで、その駆動位置が制御されるようになっている。
このような構成を有する記録部17に送られた用紙Pは、従動搬送用ローラー31と共に搬送用ローラー対25を構成する駆動搬送用ローラー32の回転に伴って、両搬送用ローラー31,32間に挟持されながら主走査方向と交差する副走査方向に搬送され、記録ヘッド26と支持部材27との間を移動する。このとき、用紙Pは支持部材27に押し付けられて移動するとともに、記録ヘッド26との間にはギャップPGが形成されるようになっている。そして、この状態において、記録ヘッド26は、キャリッジ29の移動とともに用紙Pの幅方向となる主走査方向に移動するとともに、この移動に際して図示しないノズルから、ギャップPGを介して離間する用紙Pに対して記録用の液体としてのインクを噴射することにより画像を形成するようになっている。画像が形成された用紙Pは、その後、排出部18に送られる。
排出部18は、排出用ローラー対33と排出用スタッカー34を備えている。用紙Pは、歯車からなる従動排出用ローラー35と共に排出用ローラー対33を構成する駆動排出用ローラー36の回転に伴って、両排出用ローラー35,36間に挟持されながら搬送方向下流側(図1では右側方向)に搬送され、排出用スタッカー34に排出される。こうして、プリンター11において用紙Pに所定の画像が記録される。
さらに、図1に示すように、本実施形態のプリンター11は、ピックアップローラー14aの回転によってカセット20から分離部15側に送り出され、分離斜面21aによって一枚ずつ分離されながら搬送部16に送られる用紙Pの受け渡し部分に、ダンパー装置100を備えている。このダンパー装置100と搬送部16とによって、記録部17に対して用紙Pを一枚ずつ安定して供給する搬送装置が構成されている。以下、本実施形態のダンパー装置100について、図を参照して説明する。
図2は、本実施形態のダンパー装置100の構造を示す斜視図であり、カセット20が装着部13に未装着である状態を示している。図示するように、ダンパー装置100は、第1部材としてのベース110、第2部材としてのスライダー120、スライダーカセット130、および用紙Pの移動を規制する規制部材としてのストッパー140とを備えている。なお、図2を含め、以降の説明に用いる図面において説明を容易にするため、カセット20の抜き取り方向をD1、挿入方向をD2、これらと直交する方向のうち、用紙Pの厚さ方向をD3、用紙Pの幅方向をD4、とそれぞれ表記する。
ベース110は、プリンター11のフレーム12に固定されている。また、ベース110における用紙Pの幅方向D4の中央部には、スライダー120が摺動する第1摺動面SPが設けられている。なお、本実施形態では、スライダー120は、カセット20の挿入方向D2および抜き取り方向D1に沿う方向を摺動方向としている。この第1摺動面SP、およびスライダー120について、先に図3を用いて説明する。図3は、後述するスライダーカセット130およびストッパー140を取り外すとともに、ベース110からスライダー120を離間した状態で示した斜視図である。
図示するように、スライダー120には、ベース110の第1摺動面SPと対向する面側に第2摺動面TPが設けられている。この第2摺動面TPは、摺動方向(挿入方向D2または抜き取り方向D1)と交差する断面での形状を摺動方向と交差する幅方向D4に凹凸が繰り返して形成された凹凸形状(所謂櫛歯形状)とするように凹条と凸条とが形成された面形状を有している。そして、第2摺動面TPは、凹凸形状を形作る複数の凸条の長手方向が挿入方向D2に沿って互いに平行に形成されることによって、第1摺動面SPとの重なり方向となる厚さ方向D3における平面視で、略矩形形状の平面領域を呈する面形状として形成されている。
一方、ベース110には、スライダー120がカセット20の抜き取り方向D1及び挿入方向D2に所定の距離移動できるように、このスライダー120に設けられた第2摺動面TPよりも挿入方向D2において長い平面領域を有する第1摺動面SPが設けられている。この第1摺動面SPには、第2摺動面TPに形成された凹凸形状に対して、粘性部材としての粘性グリスを介して所定の間隔を有して対向する面形状が形成されている。なお、第1摺動面SPの面形状の詳細については後述する。
スライダー120は、この第2摺動面TPと第1摺動面SPとの間に粘性グリスを介在させながら、ベース110の第1摺動面SP上を付勢手段としての一対のコイルばねB1a,B1bによって挿入方向D2に付勢されて移動できるようになっている。このとき、第1摺動面SPと粘性グリスを介して対向する第2摺動面TPとの間でダンパー機構が構成される。このダンパー機構の詳細についても後述する。
また、スライダー120における第2摺動面TPが設けられた面と反対側の面には、所謂フック型の形状を呈した突出部121が形成されている。この突出部121には、幅方向D4に貫通するとともに抜き取り方向D1側に開口端を有する所定幅のスリット状の係合空間125が抜き取り方向D1に向けて下がり勾配となるように斜状に設けられている。この係合空間125には、図2に示したように、後述するストッパー140の係合ピン145が係合するようになっている。
図2に戻り、スライダーカセット130は、その幅方向D4における両側の端部分139がベース110と係合するとともに、その係合状態を保ちながら挿入方向D2および抜き取り方向D1に沿って往復移動(摺動)できるようになっている。また、スライダーカセット130は、一対のコイルばねB2aおよびコイルばねB2b(図4参照)によって、抜き取り方向D1に常時付勢されるようになっている。
コイルばねB2aおよびコイルばねB2bは、一端がベース110に他端がスライダーカセット130にそれぞれ支持または固定されるように配設された圧縮ばねである。また、これらのコイルばねB2aおよびコイルばねB2bは、スライダー120を挿入方向D2に付勢するコイルばねB1a,B1bよりも、用紙Pの幅方向D4において第2摺動面TPの中心から離れた位置にそれぞれ配設されている。具体的には、厚さ方向D3における平面視で、コイルばねB1a,B1bと平面的に重ならない位置であって第2摺動面TPの中心と反対側となる幅方向D4の両端付近の位置にそれぞれ配設されている。なお、スライダー120のばね支持部123a,123bに一端が固定されたコイルばねB1a,B1bの他端は、スライダー120のばね支持部123a,123bと対向するようにスライダーカセット130に設けられたばね支持部(図5に片側のばね支持部130bのみ図示)にそれぞれ支持または固定されている。
またスライダーカセット130には、厚さ方向D3における平面視での中央部分に開口部130hが設けられ、この開口部130h内にスライダー120の突出部121が位置するようになっている。そして、この開口部130hの挿入方向D2における開口縁辺135は、スライダー120が挿入方向D2に移動した場合にスライダー120の突出部121の一部となる係止部122と当接するように形成されている。従って、スライダーカセット130は、開口部130hの開口縁辺135によって、スライダー120の挿入方向D2への移動を規制するようになっている。
一方、スライダーカセット130には、プリンター11に挿入されるカセット20の挿入方向D2側の端部が図2中に太線矢印で示したように移動して当接する当接部131が形成されている。なお、本実施形態では、スライダーカセット130において、この当接部131とほぼ同じ位置であってカセット20が当接する面と反対側の面に、コイルばねB2aおよびコイルばねB2b、さらにコイルばねB1aおよびコイルばねB1bの他端が支持または固定されるようになっている。
なお、本実施形態では、スライダー120が図2に示すように最も抜き取り方向D1側の位置に保持された状態において、コイルばねB1a,B1bは、圧縮された状態になっている。こうすることによって、コイルばねB1a,B1bは、スライダー120とスライダーカセット130との間において、安定して固定された状態が維持できるようになっている。
図2に示すように、ストッパー140は、挿入方向D2と対向する側に略平坦な規制面141が形成されている。規制面141は、用紙Pの移動を規制する位置(これを「規制位置」と呼ぶ)において、分離斜面21aに対して交差する方向(ここでは挿入方向D2と直交する厚さ方向D3)になるように設定されている。また、ストッパー140は、厚さ方向D3側の端部(この場合、下端部)において回転軸部146が形成されるとともに、ベース110に対して規制面141がこの回転軸部146を支点として回動可能になるよう取り付けられている。また、ストッパー140には、幅方向D4の両側端から規制面141と反対側に向けて平行に延びる一対の壁部が形成されている。そして、この一対の壁部間に軸方向が幅方向D4に延びる円柱状の係合ピン145が支持されている。この係合ピン145は、前述したスライダー120の突出部121に設けられた係合空間125と係合して所謂カム機構を構成するようになっている。このカム機構によって、ストッパー140の規制面141は、スライダー120の挿入方向D2への移動とともに基端側の回転軸部146を中心に回転し、その先端側が挿入方向D2側に傾くようになっている。この傾きによって、規制面141は分離斜面21aに対してカセット20と反対側に位置するとともに、分離斜面21aから挿入方向D2側へ退避するようになっている。
このように構成されたダンパー装置100は、ストッパー140を規制位置に位置させることで、挿入方向D2に挿入されたカセット20に載置された用紙Pが挿入方向D2へ移動することによって生ずる力つまり慣性力Fd(図2中に太線白抜き矢印で示す)を規制面141にて受け止める。こうすることによって、用紙Pの挿入方向D2の側端面Pseを規制して、積層された各用紙Pの移動を停止させようとするものである。その後、用紙Pの挿入方向D2への移動の規制を解除するように、ストッパー140を、その規制面141が分離斜面21aから退避するように挿入方向D2側に倒れた位置(これを「解除位置」と呼ぶ)になるように動作させる。このストッパー140が規制位置から解除位置に倒れるまでの動作中に用紙Pの移動が停止するようになっている。この動作について、図4及び図5を用いて説明する。
図4(a)は、カセット20が装着部13に未装着である状態におけるダンパー装置100を、厚さ方向D3における平面視で模式的に示した平面図である。また、図4(b)は、カセット20が装着部13に装着された状態におけるダンパー装置100を、厚さ方向D3における平面視で模式的に示した平面図である。
図4(a)に示すように、カセット20がスライダーカセット130の当接部131に当接するまでの未装着の状態では、スライダーカセット130は、コイルばねB2a,B2bのばね力F2a,F2bによって、抜き取り方向D1に付勢されている。従って、スライダーカセット130は、開口部130hの開口縁辺135がスライダー120における突出部121の係止部122を抜き取り方向D1側に押圧することにより、スライダー120が挿入方向D2へ移動しないようにしている。また、このときスライダー120は抜き取り方向D1側にも移動しないように、ベース110に設けられた度当て部(不図示)に対して当接することによって位置が決まるようになっている。こうしてスライダー120は、スライダーカセット130の開口縁辺135およびベース110の度当て部によって位置決めされることによって、ストッパー140の規制面141を用紙Pの移動を規制する規制位置(図2に実線で示すように垂立した位置)に維持させることになる第1の位置に保持される。なお、この第1の位置では、スライダー120は、その第2摺動面TPが、第1摺動面SPの平面領域において抜き取り方向D1側に位置するようになっている。
次に、図4(b)に示すように、カセット20が挿入されると、スライダーカセット130は、当接部131に当接したカセット20の装着によって挿入方向D2に押されて移動する。従って、スライダーカセット130の開口縁辺135がスライダー120(係止部122)から離れた状態となるので、スライダー120は、挿入方向D2へ移動できる状態となる。このとき、前述するように、第1摺動面SPと粘性グリスを介して対向する第2摺動面TPとの間で形成されるダンパー機構の作用によって、スライダー120は直ちには移動することなく、コイルばねB1a,B1bは一旦圧縮された状態となる。
圧縮されたコイルばねB1a,B1bは、図中白抜き矢印で示したように挿入方向D2に沿う方向のばね力F1a,F1bを発生させる。従って、この発生したばね力F1a,F1bによって、スライダー120は、その第2摺動面TP(図中ハッチング部分)を第1摺動面SPと対向させながら、第1摺動面SP上を挿入方向D2に沿って移動(摺動)する。この移動においてダンパー機構のダンパー力が作用することによって、スライダー120は、このばね力F1a,F1bとダンパー力との差に応じた速度で挿入方向D2へゆっくり移動する。このため、ストッパー140は規制位置から解除位置にゆっくり回転する。ダンパー装置100では、ダンパー機構が呈するダンパー力の作用によってストッパー140をこのようにゆっくり回転させる。こうすることによって、ダンパー装置100は、用紙Pの挿入方向D2の側端面Pseの移動を規制して、用紙Pの挿入方向D2への移動を停止させるようになっている。これについて、図5を用いて説明する。
図5はダンパー装置100を幅方向D4から見た場合の模式図である。図5(a)は、図4(b)に示した状態、つまりカセット20の装着によってスライダーカセット130の開口縁辺135がスライダー120から離れた状態であって、ストッパー140が用紙Pの規制位置に位置している状態を示している。また、図5(b)は、ストッパー140が用紙Pの移動を停止させた位置に位置している状態を示し、図5(c)は、ストッパー140が解除位置に位置している状態を示している。なお、図5では、説明を容易にするため構成部材を必要に応じて断面で示している。
まず図5(a)に示すように、ストッパー140は、カセット20の装着時点において、スライダー120が第1の位置から移動を開始するまでの間、規制面141は略垂立状態にある。従って、カセット20の装着時点において、挿入方向D2へ移動する用紙Pは、まずこの垂立した規制面141によってその移動が規制される。すなわち、ストッパー140は、規制面141に用紙Pの挿入方向D2の側端面Pseを当接させて、用紙Pの挿入方向D2への移動を規制する。
このとき、規制面141に当接した用紙Pは、その慣性力Fdをストッパー140に対して挿入方向D2へ作用させることになるので、ストッパー140は係合ピン145によってスライダー120を挿入方向D2へ移動させるように作用する。従って、スライダー120には、圧縮されたコイルばねB1a,B1bのばね力に加えて、この慣性力Fdに伴う力が挿入方向D2に作用することになる。
一方、スライダー120の第2摺動面TPには、粘性グリスを介して対向する第1摺動面SPとの間で構成されるダンパー機構が呈するダンパー力によって、スライダー120の挿入方向D2への移動に抗する力が作用する。従って、スライダー120は挿入方向D2へゆっくり移動することになるので、ストッパー140は垂立状態から時間差を有して徐々にゆっくり倒れていく。
この結果、図5(b)に示したように、カセット20に積層載置された用紙Pの挿入方向D2への移動が、ゆっくりと図中矢印で示したように回転するストッパー140の規制面141によって停止されることになる。このように、ストッパー140は、規制位置から解除位置まで回転する回転途中の位置において、規制面141によって用紙Pの移動を停止させる規制終了位置を有するのである。このとき、スライダー120は、ストッパー140の規制位置となる第1の位置から、その挿入方向D2側の端部が挿入方向D2へ距離L1移動(摺動)した第3の位置に位置している。換言すれば、スライダー120は第3の位置において、ストッパー140を規制終了位置に位置させることになる。
その後、スライダー120は、コイルばねB1a,B1bのばね力F1a,F1bを受ける一方、このばね力と抗するように作用するダンパー機構のダンパー力を受けることによって、挿入方向D2側に継続してゆっくり移動する。従って、ストッパー140は、スライダー120の係合空間125と係合ピン145とによるカム機構の作用によって、図5(c)に示したように、先端部分が挿入方向D2側に矢印で示したように継続してゆっくり倒れることになる。
そして、スライダー120は、その挿入方向D2側の端部が第3の位置から挿入方向D2へ距離L2移動した状態で、ベース110に設けられた度当て部(不図示)に当接することによって位置決めされる。この位置決めによって、スライダー120の第2摺動面TPは、第1摺動面SPの平面領域における挿入方向D2側の位置まで所定の距離(ここでは距離L1+距離L2)移動するようになっている。このとき、ストッパー140は、図示するように、分離斜面21aから挿入方向D2側に退避した解除位置となる。こうして、スライダー120は、ベース110の度当て部に当接することによって、ストッパー140の規制面141を用紙Pの移動の規制を解除する解除位置に維持させることになる第2の位置に保持される。
なお、カセット20が装着部13から抜き取られると、スライダーカセット130がコイルばねB2a,B2bの付勢力によって抜き取り方向D1側に押されて移動するとともに、スライダー120を、第2の位置から第1の位置に戻すようになっている。そして、このスライダー120の第2の位置から第1の位置への戻りに合わせて、ストッパー140はカム機構によって回転し、その規制面141が倒れた状態から元の状態、つまり解除位置から規制位置に戻るように構成されている。
ダンパー装置100においては、カセット20の装着時において、このようにストッパー140の回転動作が行われることによって、用紙Pの移動を規制して所望どおり停止させるようにしている。ところで、上記の説明から明らかなように、ダンパー装置100において、用紙Pの移動が実際に停止するまでの間では、用紙Pの挿入方向D2への慣性力に抗するために大きなダンパー力が必要である。すなわち、この間において、大きなダンパー力をスライダー120に作用させることによってスライダー120を挿入方向D2へゆっくり移動させれば、用紙Pの慣性力Fdが大きい場合(例えば、用紙Pの積層枚数が多い場合)においても、所望どおりに用紙Pの移動を停止させることが可能である。
一方で、ダンパー力を大きくすると、ばね力F1a,F1bに抗するように作用するためにスライダー120の移動摺動速度が遅くなる。このため、スライダー120が第1の位置から第2の位置まで移動することによってストッパー140が分離斜面21aから退避する解除位置になるまでに、相当の時間を要することになる。この結果、プリンター11において、カセット20が装着されてから用紙Pの給送動作に移行するまでの待ち時間が長くなってしまう。従って、ストッパー140を早く解除位置に移動させるためには、ダンパー機構において発生するダンパー力を、用紙Pの移動停止以降小さくすることによって、スライダー120を速く移動させるようにすることが必要である。
本実施形態では、用紙Pの移動が規制されるとともに、用紙Pの給送動作へ移行するまでの待ち時間が長くならないように抑制されたダンパー力が得られるように、ダンパー機構を構成する第1摺動面SPの面形状を工夫した。この具体的な面形状について説明を行う前に、ダンパー機構においてダンパー力をどのように発生させるのかについて、図6を用いて説明する。
図6(a)に示すように、工夫前の比較例となる第1摺動面SPの面形状が、平面領域全体に同一形状の凹凸が形成された面形状(図7参照)である場合、ダンパー力DFは、スライダー120の移動において、ばね力F1a(F1b)に応じた一定比率で発生する。すなわち、スライダー120が挿入方向D2に沿って第1の位置KSから第2の位置KKに移動するまでの間、第2摺動面TPは、粘性グリスを介して対向する第1摺動面SPとの間の隙間および対向する面の面積が一定である。従って、ダンパー力DFは、ばね力F1a(F1b)に、第1摺動面SPと第2摺動面TPとの間に介在する粘性グリスの特性(例えば粘度やちょう度)に応じて定まる一定の比率を乗じた大きさで発生する。
ちなみに、図6(a)では、カセット20が装着された直後であって、第1の位置KSにスライダー120が位置している状態において圧縮されたコイルばねB1a(B1b)のばね力F1aは値Fsであり、ダンパー力DFは値Dsであることを示している。そしてスライダー120が挿入方向D2に沿って距離L1+距離L2だけ移動して第2の位置KKに位置した時点において、コイルばねB1a(B1b)はスライダー120の移動に伴って圧縮量が少なくなる。この結果、ばね力F1aは弱くなって値Fkとなりダンパー力DFは値Dkとなることを示している。
なお、図示するように、本実施形態において、コイルばねB1a(B1b)は圧縮量に比例したばね力F1a(F1b)を呈するものとしている。また、ダンパー力DFは、ばね力F1a(F1b)に対して一定の比率で発生するものとしている。また、本実施形態では、スライダー120が第2の位置に位置した時点においてコイルばねB1a(B1b)は圧縮された状態であるものとしている。もとより、コイルばねB1a,B1bは、スライダー120が第2の位置において、圧縮が解消された状態(すなわち、ばね力=ゼロ)であっても差し支えない。
さて、図6(a)に示した比較例では、スライダー120が第1の位置KSから第3の位置KEまでの距離L1を移動する場合と、第3の位置KEから第2の位置KKまでの距離L2を移動する場合とにおいて、ばね力F1a(F1b)に対して同じ比率でダンパー力DFが発生する。従って、比較例では、スライダー120が第2の位置KKに近づくにつれてばね力F1a(F1b)が減少するために、スライダー120を第2の位置KKに移動させる力、すなわち、ばね力F1a(F1b)とダンパー力DFとの力の差分量が次第に小さくなっていく。この結果、スライダー120を挿入方向D2へ移動させる力が漸減してスライダー120はゆっくりした移動を継続したり、あるいは移動速度が更に遅くなったりすることになるため、ストッパー140はゆっくり回転して解除位置に到達するまでの時間が長くなる。
そこで、本実施形態では、発生するダンパー力DFが図6(b)に示したダンパー力DFhになるように工夫する。すなわち、図示するように、スライダー120が第1の位置KSから第3の位置KEまでの距離L1を移動する場合には、比較例と同様に、ばね力F1a(F1b)に対して一定の比率を乗じた大きさのダンパー力を発生させる。その後、第3の位置KEから第2の位置KKまでの距離L2を移動する場合には、発生するダンパー力をできるだけ小さくするのである。
前述するように、スライダー120が第3の位置KEに移動するまでに、用紙Pは移動が停止されているため、それ以降は基本的にダンパー力が発生しないようにすることが好ましいためである。こうすれば、スライダー120が第2の位置に近づくにつれてばね力F1a(F1b)が減少するものの、ダンパー力が小さくなっていることから、スライダー120を第2の位置KKに移動させるための力(ばね力とダンパー力との力の差分量)は図6(a)に示した比較例に比べて大きくすることができる。この結果、スライダー120を挿入方向D2へ速く移動させることができるため、ストッパー140を早く解除位置に到達させることができる。
以下、図6(b)に示したようなダンパー力DFhを発生させるために工夫した第1摺動面SPの面形状について、まず工夫前となる比較例について図7を用いて説明した後、その詳細内容を図8〜図12を用いて説明する。なお、以降の説明において、ダンパー機構を構成する第1摺動面SPと第2摺動面TPについての説明を判り易くするため、ベース110とスライダー120の外形形状については簡略化し、単純な箱型形状として図示している。また、第2摺動面TPの外形形状とスライダー120外形形状とを同一形状で図示している。
さて、図7は比較例のダンパー機構の説明図であり、図7(a)は形状が簡略化されたベース110とスライダー120とを離間した状態で示した斜視図である。また、図7(b)はベース110を第1摺動面SPに対する垂直方向つまり第1摺動面SPと第2摺動面TPとが重なる厚さ方向D3から見た平面図であり、図7(c)は図7(b)においてC1−C1線で示した位置でのベース110の断面図ある。
図7(a)に示すように、比較例のスライダー120には、抜き取り方向D1または挿入方向D2に沿った方向を長手方向とする凸条120Hと凹条120Lとが、幅方向D4に交互に繰り返し配列された凹凸形状を面形状とする第2摺動面TPが形成されている。一方、ベース110には、抜き取り方向D1または挿入方向D2に沿った方向を長手方向とする凸条110Hと凹条110Lとが、幅方向D4に交互に繰り返し配列された凹凸形状を面形状とする第1摺動面SPが形成されている。そして、図7(c)に示したように、第1摺動面SPに形成された凸条110Hは第2摺動面TPに形成された凹条120Lと所定の隙間を有して対向し、第1摺動面SPに形成された凹条110Lは第2摺動面TPに形成された凸条120Hと所定の隙間を有して対向するように形成されている。もとより、この隙間に粘性グリスが充填されて介在することによって、ダンパー機構が構成される。
このため、スライダー120が第1の位置KSから挿入方向D2に移動して第2の位置KKに到るまでの間、第2摺動面TPと第1摺動面SPとの間の対向状態(隙間の広さ、対向面積の大きさ)は一定となる。従って、図7(b)に示すように、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tが、第1摺動面SPにおいて、挿入方向D2へ第1の位置KSから距離L1移動して第3の位置KEに到る間と、第3の位置KEから距離L2移動して第2の位置KKに到る間とにおいて、ばね力F1a(F1b)に対して同じ比率でダンパー力が発生する。
ここで、図示するように、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tが第1の位置KSから挿入方向D2に距離L1移動して第3の位置KEに到る間において、スライダー120の第2摺動面TPが移動する第1摺動面SPにおける区間を第1の区間R1とする。また、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tが、第3の位置KEから挿入方向D2に距離L2移動して第2の位置KKに到るまでの第1摺動面SPにおける区間を第2の区間R2とする。
さて、周知のように、粘性材料を介して互いに対向しながら相対移動する2面間において発生するダンパー力は、2面間に介在する粘性材料の特性(粘度やちょう度)、2面間の隙間(距離)、2面間で粘性部材を介して対向する対向面積(広さ)に依存する。このうち、介在させる粘性材料の特性を変えてダンパー力を調節(小さく)する方法は、本実施形態では1つの摺動面において特性の異なる複数の粘性材料を摺動方向に並べて介在させることになるので、摺動によって粘性材料が混ざってしまう虞がある。そこで、本実施形態では2面間の隙間と対向面積に着目して、図6(b)に示したようなダンパー力DFhを発生させるように第1摺動面SPの面形状を工夫した。すなわち、図7に示した比較例に対して、隙間が広くなれば発生するダンパー力が小さくなること、対向面積が少なくなれば発生するダンパー力が小さくなることを利用して、摺動面の面形状を工夫した。以下、本実施形態のダンパー機構における第1摺動面SPの面形状の詳細について図8を用いて説明する。
図8に示すように、本実施形態のダンパー機構における第1摺動面SPの面形状は第1摺動面SPと第2摺動面TPとの2面間の隙間を広くした例である。なお、図8(a)は形状が簡略化されたベース110の斜視図である。また、図8(b)はベース110を第1摺動面SPに対する垂直方向つまり厚さ方向D3から見た平面図であり、図8(c)は図8(b)においてC2−C2線で示した位置でのベース110の断面図ある。
図8(a)(b)に示すように、本実施形態では、ベース110において凸条110Hの幅方向D4における寸法つまり凸条幅について、抜き取り方向D1側の凸条部110H1の幅W1よりも、挿入方向D2側の凸条部110H2の幅W2を狭くする。そして、本実施形態では、狭くなった幅W2を有する凸条部110H2を、第1摺動面SPの第2の区間R2において形成する。これにより、凹条110Lは、凸条110Hと反対に、抜き取り方向D1側の凹条部110L1の幅よりも、挿入方向D2側の凹条部110L2の幅が広くなる。
従って、図8(b)(c)に示すように、第1摺動面SPにおいて、スライダー120が第1の区間R1を移動する間は、第2摺動面TPと第1摺動面SPとの間の隙間は比較例と同じ状態になる。この結果、スライダー120が第1の区間R1を移動する間では、ばね力F1a(F1b)に対して比較例と同じ比率でダンパー力が発生する。
一方、スライダー120が第1摺動面SPにおける第2の区間R2への移動に移ると、第2摺動面TPのうち第2の区間R2を移動する面は、第1摺動面SPとの間の隙間が比較例に対して幅方向D4において大きな隙間GAPになる。そして、スライダー120が挿入方向D2へ移動し、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tの第2の区間R2側への移動量が多くなるにつれて、第1摺動面SPと第2摺動面TPとの間で大きな隙間GAPを有して対向する面積領域が徐々に多くなる。
この結果、スライダー120が第2の区間R2を移動する間において、ダンパー機構が発生するダンパー力を比較例に対して小さくすることができる。このような工夫によって、図6(b)に示したようなダンパー力DFhを発生させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図9を用いて説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と第1摺動面の面形状のみが相違し、その他の点は同一構成であるため、以下では第1実施形態との相違点を主に説明し、その他の点は同一符号を付すことにして重複説明は省略する。また、図9(a)は形状が簡略化されたベース110の斜視図である。また、図9(b)はベース110を第1摺動面SPに対する垂直方向つまり厚さ方向D3から見た平面図であり、図9(c)は図9(b)においてC3−C3線で示した位置でのベース110の断面図ある。
図9(a)(b)(c)に示すように、本実施形態では、上記第1実施形態において、ベース110に形成された挿入方向D2側の凸条部110H2について、厚さ方向D3に沿った面を斜面SMにして幅を狭くしたものである。そして、このように斜面SMが形成された凸条部110H2は、第1摺動面SPの第2の区間R2において設けられる。
従って、スライダー120が第1摺動面SPにおける第2の区間R2への移動に移ると、第2摺動面TPと第1摺動面SP(凸条部110H2)との間の隙間は、例えば図9(c)における領域E1に示したように、比較例(凸条部110H1)より大きくなる。そして、スライダー120が挿入方向D2へ移動し、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tの第2の区間R2側への移動量が多くなるにつれて、第1摺動面SPと第2摺動面TPとの間で大きな隙間を有して対向する面積領域が徐々に多くなる。また、本実施形態では、凸条部110H1に対して凸条部110H2の表面積も少なくなるので、第1摺動面SPにおいて、第2摺動面TPと対向する面積が少なくなる。
この結果、スライダー120が第2の区間R2を移動する間において、ダンパー機構が発生するダンパー力を比較例に対して小さくすることができる。このような工夫によって、図6(b)に示したようなダンパー力DFhを発生させることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図10を用いて説明する。なお、第3実施形態も、第1実施形態とは第1摺動面の面形状のみが相違し、その他の点は同一構成であるため、以下では第1実施形態との相違点を主に説明し、その他の点は同一符号を付すことにして重複説明は省略する。上記第1実施形態では幅方向D4において隙間を広くしたが、この実施形態では2面間の隙間を厚さ方向D3において広くした例である。なお、図10(a)は形状が簡略化されたベース110の斜視図である。また、図10(b)はベース110を第1摺動面SPに対する垂直方向つまり厚さ方向D3から見た平面図であり、図10(c)は図10(b)においてC4−C4線で示した位置でのベース110の断面図ある。
図10(a)(b)(c)に示すように、本実施形態では、ベース110における凸条110Hの厚さ方向D3における寸法つまり凸条の高さを、抜き取り方向D1側の凸条部110H1の高さよりも、挿入方向D2側の凸条部110H2の高さの方が低くなるようにしている。そして、本実施形態では、高さが低くなった凸条部110H2を、第1摺動面SPの第2の区間R2において形成する。
従って、図10(b)(c)に示すように、第1摺動面SPにおいて、スライダー120が第1摺動面SPの第1の区間R1を移動する間は、第2摺動面TPと第1摺動面SPとの間の厚さ方向D3における隙間は比較例とほぼ同じ隙間GAP1になる。この結果、スライダー120が第1の区間R1を移動する間では、ばね力F1a(F1b)に対して比較例と同じ比率でダンパー力が発生する。
一方、第1摺動面SPにおいて、スライダー120が第1摺動面SPにおける第2の区間R2への移動に移ると、第2摺動面TPのうち第2の区間R2を移動する面は、第1摺動面SPとの間の隙間が比較例に対して厚さ方向D3において大きな隙間GAP2になる。また、隙間が大きくなることによって、凸条部110H1に対して凸条部110H2の表面積も少なくなるので、第1摺動面SPにおいて、第2摺動面TPと対向する面積が少なくなる。そして、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tの第2の区間R2側への移動量が多くなるにつれて、第1摺動面SPと第2摺動面TPとの間で大きな隙間GAP2を有して対向する面積領域が徐々に多くなる。また、第2摺動面TPと対向する第1摺動面SPの面積が小さくなる。
この結果、スライダー120の第2の区間R2における移動においてダンパー機構が発生するダンパー力を比較例に対して小さくすることができる。このような工夫によって、図6(b)に示したようなダンパー力DFhを発生させることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図11を用いて説明する。なお、第4実施形態も、第1実施形態とは第1摺動面の面形状のみが相違し、その他の点は同一構成であるため、以下では第1実施形態との相違点を主に説明し、その他の点は同一符号を付すことにして重複説明は省略する。この実施形態は、上記第3実施形態において凸条の高さをゼロにまで下げた場合つまり凸条部110H2を形成しない例である。なお、図11(a)は形状が簡略化されたベース110の斜視図である。また、図11(b)はベース110を第1摺動面SPに対する垂直方向つまり厚さ方向D3から見た平面図であり、図11(c)は図11(b)においてC5−C5線で示した位置でのベース110の断面図ある。
図11(a)(b)(c)に示すように、本実施形態では、上記第3実施形態において、凸条110Hの挿入方向D2側の凸条部110H2の高さをゼロとすることによって、凸条110Hを凸条110HSとして形成する。すなわち、凸条110HSは、凸条110Hの長手方向の長さを短くした形状となる。そして、本実施形態では、凸条110HSを、第1摺動面SPの第1の区間R1において形成する。
従って、図11(b)(c)に示すように、スライダー120が第1摺動面SPの第1の区間R1を移動する間は、第2摺動面TPと第1摺動面SPとの間の隙間は比較例とほぼ同じ状態となる。この結果、スライダー120が第1の区間R1を移動する間では、ばね力F1a(F1b)に対して比較例と同じ比率でダンパー力が発生する。
一方、スライダー120が第1摺動面SPにおける第2の区間R2への移動に移ると、第2摺動面TPのうち第2の区間R2を移動する面は、第1摺動面SPにおいて凸条部分が形成されてないので、対向する第1摺動面SPの面積が著しく少なくなる。また、第2摺動面TPとの間の隙間が相当に広くなった面積領域が多くなる。そして、スライダー120が挿入方向D2へ移動し、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tの第2の区間R2側への移動量が多くなるにつれて、第1摺動面SPと第2摺動面TPとの間で対向する面積が著しく少なくなるとともに隙間が相当に広がった領域が徐々に多くなる。
この結果、スライダー120が第2の区間R2を移動する間において、ダンパー機構が発生するダンパー力を比較例に対して相当に小さくすることができる。このような工夫によって、図6(b)に示したようなダンパー力DFhを発生させることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図12を用いて説明する。なお、第5実施形態も、第1実施形態とは第1摺動面の面形状のみが相違し、その他の点は同一構成であるため、以下では第1実施形態との相違点を主に説明し、その他の点は同一符号を付すことにして重複説明は省略する。この実施形態は上記第4実施形態において、第1摺動面SPにおいて形成する凸条110Hを、全て長さの短い凸条110HSとしない例である。なお、図12(a)は形状が簡略化されたベース110の斜視図である。また、図12(b)はベース110を第1摺動面SPに対する垂直方向つまり厚さ方向D3から見た平面図であり、図12(c)は図12(b)においてC6−C6線で示した位置でのベース110の断面図ある。
図12(a)(b)に示すように、本実施形態では、ベース110における凸条110Hが挿入方向D2側において形成されない、つまり長手方向の長さが短い凸条110HSを、凸条110Hの一本おきに形成する。そして、本実施形態では、長さの短い凸条110HSを、第1摺動面SPの第1の区間R1において形成する。
従って、図12(b)(c)に示すように、スライダー120が第1摺動面SPの第1の区間R1を移動する間は、第2摺動面TPと第1摺動面SPとの間の隙間は比較例とほぼ同じ状態となる。この結果、スライダー120が第1の区間R1を移動する間では、ばね力F1a(F1b)に対して比較例と同じ比率でダンパー力が発生する。
一方、スライダー120が第1摺動面SPにおける第2の区間R2への移動に移ると、第2摺動面TPのうち第2の区間R2を移動する面は、図中領域E2に示したように凸条が形成されない領域が、幅方向D4に沿って交互に存在するため、第2摺動面TPとの隙間は比較例に対して広くなる。また、第2摺動面TPとの間の隙間が相当に広くなった領域が多くなる。そして、スライダー120が挿入方向D2へ移動し、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tの第2の区間R2側への移動量が多くなるにつれて、第1摺動面SPと第2摺動面TPとの間で広い隙間を有して対向する面積領域が徐々に多くなる。また、対向面積が小さい領域が徐々に多くなる。
この結果、スライダー120が第2の区間R2を移動する間において、ダンパー機構が発生するダンパー力を第4実施形態よりは大きくなるものの、比較例に対して小さくすることができる。このような工夫によって、図6(b)に示したようなダンパー力DFhを発生させることができる。また、スライダー120の第2の区間R2においても凸条110Hを形成していることから、第2の区間R2においてスライダー120を安定して摺動させることができるので、ダンパー機構が発生するダンパー力を安定して小さくすることができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図13を用いて説明する。なお、第6実施形態も、第1実施形態とは第1摺動面の面形状のみが相違し、その他の点は同一構成であるため、以下では第1実施形態との相違点を主に説明し、その他の点は同一符号を付すことにして重複説明は省略する。この実施例は上記第5実施形態において、第1摺動面SPにおいて形成する凸条110Hを、幅方向D4の両端にそれぞれ少なくとも1つ形成した実施形態である。なお、図13(a)はベース110を第1摺動面SPに対する垂直方向つまり厚さ方向D3から見た平面図であり、図13(b)は図13(a)においてC7−C7線で示した位置でのベース110の断面図ある。
図13(a)(b)に示すように、本実施形態では、ベース110における凸条110Hが挿入方向D2側において、その両端にそれぞれ一本形成し、それ以外は、長手方向の長さが短い凸条110HSを形成する。そして、本実施形態では、長さの短い凸条110HSを第1摺動面SPの第1の区間R1において形成する。
従って、スライダー120が第1摺動面SPの第1の区間R1を移動する間は、第2摺動面TPと第1摺動面SPとの間の隙間は比較例とほぼ同じ状態となる。この結果、スライダー120が第1の区間R1を移動する間では、ばね力F1a(F1b)に対して比較例と同じ比率でダンパー力が発生する。
一方、スライダー120が第1摺動面SPにおける第2の区間R2への移動に移ると、第1摺動面SPの中央部分に凸条が形成されない領域が存在するため、第2摺動面TPのうち第2の区間R2を移動する面と第1摺動面SPとの隙間は比較例に対して広くなる。また、第2摺動面TPとの間の隙間が相当に広くなった領域が多くなる。そして、スライダー120が挿入方向D2へ移動し、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tの第2の区間R2側への移動量が多くなるにつれて、第1摺動面SPと第2摺動面TPとの間で広い隙間を有して対向する面積領域が徐々に多くなる。また、対向面積が小さい領域が徐々に多くなる。
この結果、スライダー120の第2の区間R2における移動において第1摺動面SPの両端に形成された凸条110Hによってスライダー120を安定して摺動させることができるので、ダンパー機構が発生するダンパー力を比較例に対して安定して小さくすることができる。このような工夫によって、図6(b)に示したようなダンパー力DFhを発生させることができる。
上記説明した各実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ストッパー140によって用紙Pの移動が停止された後のダンパー装置100のダンパー力を小さくすることができる。したがって、ストッパー140は、用紙Pの移動を停止させた後、解除位置まで速く回転して移動することができる。この結果、給送動作を開始するまでの時間を早くすることができるので、給送動作へ移行するまでの待ち時間が長くならないように抑制することができる。
(2)凹条110Lと凸条120H、凸条110Hと凹条120Lとがそれぞれ対向することによって第1摺動面SPと第2摺動面TPとが対向する表面積を多くすることができる。従って、ストッパー140が用紙Pの移動を停止させるまでの間、ダンパー装置100のダンパー力を大きくすることができる。この結果、ストッパー140は、この大きなダンパー力によって、用紙Pの移動を確実に規制することができる。
(3)第2の区間R2において第1摺動面SPと第2摺動面TPとの間の幅方向D4の隙間が広くなるので、ストッパー140が用紙Pの移動を停止した後のダンパー装置100のダンパー力を小さくすることができる。したがって、ストッパー140は、用紙Pの移動を停止させた後、解除位置まで速く回転して移動することができるので、給送動作を開始するまでの時間を早くすることができる。
(4)第1摺動面SPに形成された凸条110Hは、第2の区間R2において第2摺動面TPと対向する隙間が広くなるので、ストッパー140が用紙Pの移動を停止させた後のダンパー装置100のダンパー力を小さくすることができる。したがって、ストッパー140は、用紙Pの移動を停止させた後、解除位置まで速く回転して移動することができるので、給送動作を開始するまでの時間を早くすることができる。
(5)第2の区間R2において第2摺動面TPと対向する第1摺動面SPの面積が少なくなるので、ストッパー140が用紙Pの移動を停止させた後のダンパー装置100のダンパー力を小さくすることができる。したがって、ストッパー140は、用紙Pの移動を停止させた後、解除位置まで速く回転して移動することができるので、給送動作を開始するまでの時間を早くすることができる。
(6)第2の区間R2においてスライダー120を第1摺動面SPに沿って安定して摺動させることができるので、ダンパー装置100のダンパー力を安定して小さくすることができる。また、例えばスライダー120が第1の区間R1から第2の区間R2へ移動する際、スライダー120の移動を安定して行うことができる。したがって、ストッパー140は、用紙Pの移動を停止させた後、解除位置まで安定して速く回転して移動することができるので、給送動作を開始するまでの時間を安定して早くすることができる。
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記各実施形態では、第1摺動面SPにおいて、スライダー120の挿入方向D2側の端部120tが第3の位置KEから挿入方向D2に移動を開始する位置を基準にして凸条形状を変更するものとして説明しているが、これに限るものでないことは勿論である。上述するように、ダンパー力は用紙Pの移動が停止した以降であれば、スライダー120の挿入方向D2の移動において、任意の位置から小さくすることが可能である。従って、第1摺動面SPに形成する凸条は、スライダー120が第3の位置KEから第2の位置KKまで移動する間において、第2の区間R2における任意の位置から挿入方向D2において変更するようにしてもよい。なお、このとき、ストッパー140が所望される待ち時間内に規制位置から解除位置まで回転移動できる速さで、スライダー120が第1の位置KSから第2の位置KKまで移動できるように変更することが好ましいことは言うまでも無い。
・上記各実施形態を任意に組み合わせて実施した実施形態を採用してもよい。例えば、凸条110Hについて、幅方向D4の寸法(幅)を小さくすることに加えて、厚さ方向D3の寸法(高さ)を小さくするようにしてもよい。
・上記各実施形態では、第2摺動面TPを、幅方向D4において凹凸が連続する所謂櫛歯形状の凹凸形状としたが、必ずしも櫛歯形状に限らず、断面が三角形である凹凸が連続する鋸歯形状としてもよい。あるいは、凹凸がない平坦面としてもよい。要は、粘性グリスを介することでダンパー機能を呈する形状であればよい。なお、凹凸がない平坦面とした場合は、例えば、第1摺動面SPの面全体を、第1の区間に対して第2の区間の方が、第2摺動面TPからより遠ざけて隙間を広くすることによってダンパー力を小さくする方法が1つの方法として採用可能である。
・上記各実施形態では、記録装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。記録装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する記録装置がある。あるいは、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置に本発明を適用することができる。