JP5476259B2 - バルブ構造 - Google Patents

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Description

この発明は、バルブ構造に関し、特に、車両に搭載される油圧緩衝器への具現化に向くバルブ構造の改良に関する。
車両に搭載される油圧緩衝器におけるシリンダ体内に収装の、たとえば、ピストン部にあって、リーフバルブの撓み作動で減衰力を発生させるバルブ構造としては、これまでに種々の提案がある。
その中で、特許文献1に開示の提案にあっては、ピストン部を構成するバルブディスクたるピストン体が有するポートの開口面積、すなわち、ポートの下流側端を開口させてピストン体に着座するリーフバルブにおける受圧面を設定する開口窓の面積が固定とされている。
すなわち、図6は、特許文献1に開示されている図3に相当するが、この図6に示すところにあって、油圧緩衝器は、作動流体たる作動油が充填されるシリンダ体1内に収装されてこのシリンダ体1内に上流側室R1と下流側室R2とを画成するピストン部がシリンダ体1内に出没可能に挿通されるロッド体2の先端部2aに連結されるピストン体3を有してなる。
そして、このピストン体3は、いわゆる肉厚部にロッド体2の軸方向に沿う伸側のポート3aを有する一方で、シリンダ体1内の下流側室R2に対向する端面に形成のバルブシート部3bにリーフバルブ4を内周側固定で外周側自由の態勢に着座させる。
このとき、この特許文献1に開示されているところにあって、バルブシート部3bは、特許文献1に開示されている図4に相当する図7中にハッチングして示すように、四つの独立した開口窓3c、すなわち、伸側のポート3aの図6中で上端となる下流側端を開口させながらリーフバルブ4における受圧面積を設定する開口窓3cを形成してなる。
それゆえ、この開口窓3cを形成するバルブシート部3bに着座するリーフバルブ4を有するバルブ構造にあっては、このピストン体3が図6中でシリンダ体1内を下降する油圧緩衝器の伸長作動時に、伸側のポート3aを介しての開口窓3cにおける圧力作用でリーフバルブ4の外周側が撓むようになり、リーフバルブ4の外周側とバルブシート部3bとの間に出現する隙間を介して上流側室R1からの作動油が下流側室R2に流出し、このときの作動油の流通が制御されることで、所望の大きさとなる減衰力の発生を可能にする。
特開平10−274272号公報(段落番号0004,同0005,同0008,図3,図4)
ところで、上記した特許文献1に開示の提案にあっては、所望の大きさとなる減衰力の発生を可能にし得る点で、基本的に問題がある訳ではないが、その利用にあって、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
すなわち、上記した特許文献1に開示のバルブ構造にあって、伸側のポート3aのリーフバルブ4に対する開口面積、つまり、伸側のポート3aの下流側端が開口する開口窓3cにおけるリーフバルブ4に対する開口面積が固定されている。
それゆえ、この開口窓3cを介しての作動油の流れによる減衰力を発生するリーフバルブ4を有するバルブ構造による発生減衰力の特性は、本案図たる図5に示すところを借りて説明すると、次のようになる。
先ず、図5中に符号aで示すピストン速度が0.1m/秒近辺に至らない微低速領域では、バルブシート部3bに形成の打刻オリフィスやリーフバルブ4に形成の切欠などによるオリフィス特性の減衰力が発生する。
次に、図5中に符号bで示すピストン速度が0.1m/秒近辺から0.3m/秒近辺に至る前となる低速領域では、リーフバルブ4が開放作動することによるバルブ特性の減衰力が発生する。
さらに、図5中に符号cで示すピストン速度が0.3m/秒近辺から0.6m/秒近辺に至る前となる中速領域では、リーフバルブ4が全開放されるから、ポート3aの断面積に基づく特性、つまり、ポート特性の減衰力が発生されて、この特性は、ピストン速度が0.6m/秒近辺となる高速領域に連続する。
したがって、ピストン速度が中速領域に至る前までと、中速領域から高速領域に至るまでとを観察すると、発生減衰力の特性は、図5中に実線Aで示すバルブ特性と同じく破線A1で示すポート特性とがリニアに連続する特性となる。
このことからすると、上記したバルブ構造にあっては、ピストン速度が中速領域に至る前の低速領域にあるときの減衰力の高さを保障して、車両における乗り心地を良好に保つ場合には、ピストン速度が中速領域になるときに、減衰力が高過ぎることになって、車両における乗り心地を良好に保つことが困難になる危惧がある。
すなわち、ピストン速度が微低速領域にあるときの減衰力をオリフィス特性で保障して、たとえば、低速走行する車両におけるロール制御を可能にする一方で、ピストン速度が中速領域に至る前の低速領域にあるときの減衰力をバルブ特性で保障して、たとえば、平坦路を通常走行する車両における乗り心地を良好に保つことが可能になる。
このとき、バルブ特性の減衰力が車両における乗り心地を良好に保つものとなるようにするためには、たとえば、リーフバルブ4におけるクラッキング圧を高くするなどして充分な高さの減衰力の発生を可能にすることになる。
しかし、ピストン速度が言わば特定の速度領域となる中高速領域にあるときの減衰力をその前のピストン速度が低速領域にあるときの減衰力にリニアに連続させて発生(図5中の破線A1参照)させると、減衰力がいわゆる高過ぎることになって、車両における乗り心地を悪化させる危惧がある。
そこで、このピストン速度が中高速領域にあるときの減衰力については、ピストン速度が低速領域にあるときの減衰力にそのままリニアに連続させずしてこれが低くされ、車両における乗り心地を悪化させないことが望まれる。
なお、上記した特許文献1に開示の提案にあって、ピストン体3に形成の圧側のポートにおける下流側端がピストン体3の上流側室に対向する端面に形成される開口窓に開口する設定とされると共に、この開口窓をリーフバルブが開放可能に閉塞する設定とされる場合には、油圧緩衝器の収縮作動時に上記したところと同様の現象が発現されて、同じく車両における乗り心地を悪くすると言える。
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、たとえば、車両に搭載される油圧緩衝器に具現化されるとき、ピストン速度が特定の速度領域に至るまでは好ましい減衰力が発生されて車両における乗り心地を良好に保つ一方で、ピストン速度が特定の速度領域にあるときにも車両における乗り心地を悪化させずして、その汎用性の向上を期待するのに最適となるバルブ構造を提供することである。
上記した目的を達成するために、この発明によるバルブ構造の構成を、基本的には、上流側室と下流側室とを画成しながらポートを有して上流側室と下流側室との連通を許容すると共に下流側室に対向する端面に形成されて上記のポートの下流側端を開口させる開口窓を有する環状のバルブディスクと、このバルブディスクに積層されて上記の開口窓を開放可能に閉塞するリーフバルブとを有してなるバルブ構造において、バルブディスクが上記の開口窓における開口面積を可変にする可変手段を有し、この可変手段がピストン速度を特定の速度領域に到達させたときに上記の開口窓における開口面積を拡大してなるとする。
そして、上記したバルブ構造の構成にあって、より具体的には、可変手段が開口窓における開口面積を広狭可能にする隔壁体と、この隔壁体を開口窓における開口面積を狭める方向に附勢する附勢体とを有し、開口窓における圧力が附勢体の附勢力に抗して隔壁体を移動させて開口窓における開口面積を拡大してなるとする。
それゆえ、この発明によれば、上流側室と下流側室とを画成しながらポートを有して上流側室と下流側室との連通を許容すると共に下流側室に対向する端面に形成されて上記のポートの下流側端を開口させる開口窓を有するバルブディスクが上記の開口窓を開放可能に閉塞するリーフバルブに対向する開口窓の開口面積を可変にする可変手段を有してなるから、この可変手段が作動するまでは、好ましい減衰力の発生を可能にする一方で、可変手段が作動するときには、リーフバルブにおける受圧面積を大きくして、それまで発生されていた減衰力が継続して高くなることを抑制でき、以降高過ぎることになる減衰力の発生を回避できる。
このとき、可変手段が開口窓における開口面積を広狭する隔壁体と、この隔壁体を開口窓における開口面積を狭める方向に附勢する附勢体とを有してなることで、開口窓における圧力が附勢体の附勢力に抗して隔壁体を移動させるときに、開口窓における開口面積を拡大することが可能になる。
そして、この発明にあっては、ピストン速度が特定の速度領域に到達したときの圧力によって、可変手段が作動し、すなわち、可変手段における隔壁体が後退して開口窓の開口面積を大きくするから、ピストン速度の速度領域の如何に相応させて最適な減衰力の発生状態を具現化できる。
その結果、このバルブ構造を具有する油圧緩衝器が車両に搭載されるとき、ピストン速度が特定の速度領域に至る前までは所望の減衰力の発生を保障し得て、車両における乗り心地を良好に保つことを可能にすると共に、ピストン速度が特定の速度領域たる中速領域になるときには、それまで発生されていた減衰力が継続して発生されることで減衰力が高過ぎることになるのを回避し得て、車両における乗り心地が悪化されないようにすることが可能になる。
この発明のバルブ構造を具現化したピストン部を備える油圧緩衝器を示す部分縦断面図である。 図1のバルブ構造におけるピストン体に形成の開口窓がリーフバルブに対向する際の面積を破線図と仮想線図とで示すリーフバルブの平面図である。 図1のバルブ構造における可変手段を有するピストン体を示す端面図である。 図1のバルブ構造における可変手段をピストン体と共に拡大して示す部分縦断面図である。 ピストン速度に対する減衰力の関係を示す特性図である。 従来例とされるバルブ構造を具現化したピストン部を備える油圧緩衝器を図1と同様に示す図である。 図6のバルブ構造を構成するピストン体における開口窓を形成するバルブシート部を示す平面図である。
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明によるバルブ構造は、図示するところでは、車両に搭載される油圧緩衝器におけるピストン部に具現化される。
先ず、車両に搭載される油圧緩衝器は、図1に示すように、作動流体が充填されるシリンダ体1内に摺動可能に収装されるピストン部を有し、このピストン部は、シリンダ体1内に出没可能に挿通されるロッド体2における図中で上端部となる先端部2aに連結されながらシリンダ体1内にピストンリングPrの配設下に摺動可能に収装されてシリンダ体1内に上流側室R1と下流側室R2を画成する。
少し説明すると、図1に示すところにあって、シリンダ体1は、上方部材とされて、図示しないが、下端開口をヘッド部材で適宜の密封構造下に封止すると共に、このヘッド部材の軸芯部にロッド体2を適宜の密封構造下に上下動可能に貫通させる。
そして、このシリンダ体1にあっては、油圧緩衝器が車両に搭載されるとき、上端側たるボトム側が車両における車体側に連結され、油圧緩衝器が単筒型とされる場合には、図示しないが、たとえば、シリンダ体1のボトム側に収装されたフリーピストンやブラダなどの気液分離を可能にしながら伸縮や膨縮を可能にする隔壁体で画成される気室を有し、また、油圧緩衝器が複筒型とされる場合には、同じく図示しないが、シリンダ体1の外方に外筒を有し、この外筒とシリンダ体1との間が油面を境にする気室を有するリザーバに設定されるなどして、シリンダ体1に対してロッド体2が出没する際などのシリンダ体1内における容積変化を補償する。
ロッド体2は、下方部材とされ、図中で上端側たる先端側が上記のシリンダ体1内に出没可能に挿通されると共に、図中での上端部たる先端部2aがピストン部を保持しながら図中で下端側となる基端側をシリンダ体1の外に突出させ、油圧緩衝器が車両に搭載されるとき、下端部たる基端部が車両における車軸側に連結される。
ちなみに、図示するところでは、油圧緩衝器がシリンダ体1を上方部材にすると共にロッド体2を下方部材にする倒立型に設定されてなるが、この発明の具現化にあっては、これに代えて、図示しないが、シリンダ体1が下方部材とされると共にロッド体2が上方部材とされる正立型に設定されてなるとしても良い。
ピストン部は、ロッド体2における先端部2aに連結され、図示するところでは、ロッド体2における段部2b、すなわち、ロッド体2の本体部たる軸部(符示せず)と先端部2aとの境界部となる段部2bと、ロッド体2の先端部2aの螺条部(符示せず)に螺合されるピストンナット5との間に挟持される。
そして、このピストン部は、外周にピストンリングPrを有しながらシリンダ体1内に摺動可能に収装されてこのシリンダ体1内に上流側室R1および下流側室R2を画成する環状のバルブディスクたるピストン体3を有すると共に、このピストン体3の下流側室R2に対向する端面に伸側減衰バルブを構成する環状のリーフバルブ4を有し、同じく上流側室にR1に対向する端面に圧側減衰バルブを構成する環状のリーフバルブ6を有してなる。
そして、リーフバルブ4,6の各背面にはそれぞれ環状に形成の間座(符示せず)の配設下に環状のバルブストッパ7が配設され、この各バルブストッパ7の背面に上記のピストンナット5が隣接され、あるいは、上記の段部2bが隣接されている。
ピストン体3は、図示するところにあって、全体的には厚肉の円板状に形成されながら軸芯部にロッド体2の先端部2aを挿通させる態勢に連結され、前記したピストン部におけるピストンリングPrは、このピストン体3における外周に、たとえば、モールド成形などで合口を有しない態様に配設され、あるいは、割りリング状に形成されて合口を有する態様に配設される。
また、このピストン体3は、ロッド体2の軸方向に沿って貫通する伸側のポート3aと圧側のポート3dとを有し、この伸側のポート3aおよび圧側のポート3dによって上流側室R1と下流側室R2との連通を可能にする。
そしてまた、このピストン体3にあっては、下流側室R2に対向する端面に伸側のポート3aの下流側端を開口させる開口窓3cを有し、上流側室R1に対向する端面に圧側のポート3dの下流側端を開口させる開口窓3eを有する。
ピストン体3にあって、端面に各ポート3a,3dの下流側端を開口させる開口窓3c,3eを形成することで、この開口窓を開放可能に閉塞するリーフバルブ4,5における受圧面積が設定される。
ちなみに、このピストン体3にあって、リーフバルブ4を着座させるバルブシート部3b(図3中のハッチング部分参照)は、ピストン体3における下流側室R2に対向する端面に形成されるが、図示するところでは、ピストン体3における下流側室R2に対向する端面にあっていわゆる不要部分が切削などされた残部として形成される。
しかし、バルブシート部3bを含めて、凡そこのバルブシート部は、ポートの下流側端を開口させる開口窓を画成することからすれば、上記したところに代えて、図示しないが、ピストン体3における端面に隆起するようにして形成されても良いことはもちろんである。
なお、このピストン体3にあっては、リーフバルブ6を着座させるバルブシート部(図示せず)についても、上記のバルブシート部3bと同様にして形成される。
ところで、ピストン体3に形成されるバルブシート部3bは、伸側のポート3aの下流側端を開口させる開口窓3cを形成するが、この発明にあっては、この開口窓3cの開口面積は、後述する可変手段10によって広狭されるから、この開口窓3cは、図示するところでは、可変手段10の作動を実現し得る態勢に形成されてなる。
すなわち、前記した特許文献1に開示の提案にあっては、四つの開口窓3cが十字花状に形成されるが(図7参照)、この発明にあっては、図3中にハッチングして示すように、四つの開口窓3cが十字状に形成される。
つまり、前記した特許文献1に開示の提案では、各開口窓3cが平面視で扇形状を呈して、全体を看るとき、十字花状を呈するが、図示するところにあっては、各開口窓3cがほぼ矩形状を呈して、全体を看るとき、十字形状を呈するとしている。
これは、後述するが、図示するところでは、可変手段10を開口窓3cに関連付けて設けるとするからであり、したがって、可変手段10が開口窓3cに関連付けて設けられないのであれば、開口窓3cのいわゆる平面形状については任意に設定されて良い。
なお、伸側のポート3aの図1中で下端となる上流側端、および、圧側のポート3dの図1中で上端となる上流側端は、上記のバルブシート部3bを形成することによって出現する扇形状の流入路(符示せず)にそれぞれ開口する。
リーフバルブ4は、ピストン体3における伸側のポート3aの図中で上端となる下流側端を開口させる開口窓3cを開放可能に閉塞するように配設され、リーフバルブ6は、ピストン体3における圧側のポート3dの図中で下端となる下流側端を開口させる開口窓3eを開放可能に閉塞するように配設される。
そして、各リーフバルブ4,6は、図示するところにあって、環状のリーフバルブ体を複数枚積層してなり、内周側固定で外周側自由の態勢に配設されて各開口窓3c,3eを開放可能に閉塞し、外周側が撓んでバルブシート部から離座するときにこのバルブシート部との間に作動油が通過する隙間を出現させる。
なお、図示するところでは、各リーフバルブ4,6は、複数枚のリーフバルブ体を積層してなるが、リーフバルブ体の枚数は、このバルブ構造で実現する減衰特性(ピストン速度に対する減衰力の関係)によって任意とされて良く、また、複数枚とされるのに代えて、図示しないが、発生させる減衰特性によって一枚のみとされても良い。
一方、バルブストッパ7は、肉厚の環状に形成されていわゆる圧力作用で変形などしない機械的強度を有し、リーフバルブ4,6が圧力作用で外周側を撓ませて開口窓3c,3eを開放するときのリーフバルブ4,6における外周側の撓み量を設定する。
なお、バルブストッパ7の外径については、図示するところでは、リーフバルブ4,6の外形より小さくなるように設定されているが、これに代えて、図示しないが、シリンダ体1の内周との間における作動油の流れをいたずらに阻害しない限りにおいて、リーフバルブ4,6の外径と同一にあるいはより大径に設定されても良い。
ところで、この発明にあって、バルブディスクたるピストン体3は、端面に形成の開口窓3c,3eにおける開口面積を可変にする可変手段10を有し、この可変手段10は、ピストン速度が特定の速度領域になるまでは、開口窓3c,3eの大きさを当初の設定のままに維持するが、ピストン速度が特定の速度領域になるときには、その際の圧力作用で開口窓3c,3eにおける開口面積をピストン体3の外周側に向けて大きくするように拡大する。
図2は、リーフバルブ4を構成する一枚のリーフバルブ体、すなわち、ピストン体3におけるバルブシート部3b(図3参照)に着座して、開口窓3cを開放可能に閉塞するリーフバルブ体を背面側から観察する状態を示すが、この図2に示すように、可変手段10(図1および図3参照)は、その作動で、開口窓3cが当初の設定の大きさを維持している(図2中に破線図で示す)状態から、図2中に仮想線図で示すように、開口窓3cがリーフバルブ4の径方向に最大限拡大された状態になることを可能にする。
なお、この実施形態では、図示しないが、開口窓3eを開放可能に閉塞するリーフバルブ6におけるリーフバルブ体にあっても、図2に示すところと同様に、可変手段10によって、開口窓3eにおける開口面積を拡大し得るとする。
ちなみに、可変手段10は、結果として、ピストン速度が特定の速度領域になるときの圧力作用で開口窓3c,3eにおける開口面積の拡大を可能にするものであれば良いから、この構成については自由な構成を選択でき、たとえば、図示しないが、圧力作用でベーン状に形成の隔壁体が揺動などされて、開口窓3c,3eの開口面積を拡大可能にするとしても良い。
図示する実施形態にあって、可変手段10は、開口窓3c,3eにおける開口面積を広狭可能にする隔壁体11と、この隔壁体11を開口窓3c,3eにおける開口面積を狭める方向に附勢する附勢体12とを有してなり、開口窓3c,3eにおける圧力が附勢体12の附勢力に抗して隔壁体11をピストン体3の外周側に向けて、すなわち、背後側に移動させることで開口窓3c,3eにおける開口面積を拡大する。
以下に、可変手段10について詳しく説明するが、説明の都合上、可変手段10が開口窓3cにおける開口面積を拡大する場合について説明し、開口窓3eにおける開口面積を拡大する場合については、要する場合を除き、その説明を省略する。
先ず、可変手段10を設けるのにあって、図示するところでは、ピストン体3は、図3および図4に示すように、ピストン体3の下流側室R2に対向する端面で上端が開口しながら上記の開口窓3cを形成する放射溝13(図4参照)、すなわち、軸芯線がピストン体3の放射方向に延びる放射溝13を有してなる。
そして、この放射溝13は、ほぼ矩形の平面形状を有しながらピストン体3において四方に設けられて、平面視で十字状を呈するとし(図3参照)、可変手段10は、この四本の放射溝13内にそれぞれ隔壁体11および附勢体12を収装してなる。
ちなみに、この放射溝13が実質的に開口窓3cを形成するから、この放射溝13に伸側のポート3aの下流側端が開口するのはもちろんである(図4参照)。
ところで、放射溝13の形成については、任意の方策が選択されて良いが、たとえば、ピストン体3の軸芯部から外周側に向けて放射溝13を形成するとき、放射溝13の外周側端をピストン体3の外周に開口させるように形成する場合には、放射溝13の形成作業が簡単になると共に、爾後に、筒状体をピストン体3の外周に嵌装して、附勢体12の基端を担持させる部位を形成することが可能になり、この場合には、筒状体の外周にピストンリングPrを保持させることが可能になると共に、このピストンリングPrを保持した筒状体をピストン体3の外周に嵌装することで、ピストン体3に外周にピストンリングPrを配設する作業が容易になる点で有利となる。
一方、図4に示すように、放射溝13の底部は、部分的に、すなわち、ピストン体3の外周側寄りの部位で平坦面からなるとし、この平坦部に隔壁体11が載置されて、放射溝13の延在方向に、すなわち、ピストン体3における放射方向に摺動可能とされる。
隔壁体11は、図示するところでは、断面をL字状にして、立上部(符示せず)に連続する平坦部(符示せず)を有し、この平坦部が上記の放射溝13における底部の平坦面に載置されて放射溝13の延在方向に、すなわち、ピストン体3における放射方向に摺動可能とされる。
そして、隔壁体11にあって、立上部は、基本的には、放射溝13を横切る方向に配設されるが、図示するところでは、リーフバルブ4(図2参照)の外周側の曲率に一致する曲率を有する円弧状に形成されて(図3参照)、リーフバルブ4における外周側の撓み作動が周方向に均等に実現され易くなるように配慮している。
ちなみに、隔壁体11における立上部は、上記に代えて、図示しないが、上端側が円弧状に形成されるのに対して下端側が平板状に形成されるとしても良い。
また、この隔壁体11にあっては、放射溝13を形成する側壁、すなわち、図4中で左右方向に延びる側壁(符示せず)に立上部の側端を摺接させる(図3参照)と共に立上部の上端をリーフバルブ4の受圧面に当接させて(図1参照)、この立上部が図4中で左側となる前側にポート3aの下流側端を開口させて実質的に開口窓3cの開口面積を作る部屋(符示せず)を画成し、このとき、立上部の上端がバルブシート部3bに連なるいわゆるバルブシート部(符示せず)とされる。
そしてまた、この隔壁体11にあっては、立上部の上端部に切欠11a(図4参照)を有し、上記の部屋の作動油がこの切欠11aを通過して、立上部の図4中で右側となる後側に、すなわち、下流側室R2に流出するときにオリフィス特性の減衰力を発生し得るとしている。
このように、この可変手段10にあっては、隔壁体11を形成する立上部の上端部にオリフィスたる切欠11aを有するから、この切欠11aと同様に機能する打刻オリフィスをバルブディスクたるピストン体3に、また、切欠をリーフバルブ4に形成しなくて済む点で有利となる。
さらに、この隔壁体11にあっては、立上部が図3および図4に示すいわゆる最前進状態にあるときに、さらに前進して、上記の部屋を必要以上に小さくする、すなわち、開口窓3cの開口面積を必要以上に小さくすることを阻止するために、上記の側壁に形成される段部13aに立上部が当接されて、上記のさらなる前進が阻止されるとしている。
なお、この隔壁体11にあっては、平坦部が立上部のいわゆる背後側に位置決められるとするから、立上部の下端たる平坦部の先端が図3および図4に示す最前進状態にあるときに、伸側のポート3aの下流側端に干渉しないのはもちろんである。
また、この隔壁体11にあって、平坦部は、立上部を言わば立設させるものであるから、この観点からすれば、隔壁体11が断面を逆T字状にするように形成されて、立上部を平坦部のほぼ中央部に立設させるとしても良いが、上記したように平坦部の先端が伸側のポート3aの下流側端に干渉しないようにする上からは、上記したように断面がL字状とされて、平坦部が立上部のいわゆる背後側に位置決められるのが良い。
そして、上記の隔壁体11を放射溝13内に摺動可能に収装するについては、放射溝13における底部の上面および隔壁体11における平坦部の下面をフッ素樹脂処理するなどして両者間における摺動性を向上させるとしても良い。
そしてまた、この隔壁体11にあって、平坦部は、立上部が後退して開口窓3cの開口面積を大きくするとき、必要以上に大きくしないように、ピストン体3の外周側部、すなわち、放射溝13の外周側端部を形成するピストン体3における外周側部に当接される。
ちなみに、この平坦部のピストン体3における外周側部に当接で後述する附勢体12の必要以上の収縮が阻止されることになり、附勢体12の効果的な作動が保障される。
一方、附勢体12は、具有する附勢力で上記した隔壁体11を放射溝13内で前進方向に、すなわち、図3に示すところにあって、ピストン体3の軸芯に向けて移動し得るように附勢するもので、所定の附勢力を具有する限りにおいて、バネ部材やゴム部材など任意の言わば弾性部材が選択されて形成されて良い。
このとき、附勢体12は、隔壁体11に圧力作用があるだけでこの隔壁体11をピストン体3の外周側に向けて移動させないように、すなわち、ピストン速度が特定の速度領域にならない限りには隔壁体11の後退を許容しないように、いわゆる初期撓みを具有するとしている。
なお、附勢体12の図4中で左端となる先端は、隔壁体11における立上部に当接され、附勢体12の図4中で右端となる基端は、ピストン体3の外周側部、すなわち、放射溝13の外周側端部を形成するピストン体3における外周側部に担持されるとしており、このピストン体3の外周側部については前記したようにピストン体3の外周に嵌装される筒状体で形成されるとしても良い。
それゆえ、以上のように形成された可変手段10にあっては、開口窓3cにおける圧力がピストン速度に依存して所定の大きさになるときに、それまで言わば停止状態にあった隔壁体11が放射溝13内にあってこの放射溝13の延在方向に移動して、すなわち、後退して開口窓3cにおける開口面積を拡大してリーフバルブ4における受圧面積を大きくする。
そして、リーフバルブ4における受圧面積が大きくなると、作動油の流量が大きくなり、その分発生減衰力が低くなる。
その結果、ピストン速度が特定の速度領域になると、この可変手段10を有するバルブ構造を備える油圧緩衝器にあっては、高過ぎることになる減衰力の発生が抑制されることになる。
また、この可変手段10にあっては、構成部材たる隔壁体11と附勢体12がピストン体3に形成の放射溝13内に収装される構成とされるから、この高過ぎることになる減衰力の発生を抑制すること、すなわち、いわゆるハイカット現象を発現させるための構成をリーフバルブ4の背後側に設ける場合に比較して、ロッド体2の軸方向となるピストン部における軸長さを大きくしないで済む利点がある。
すなわち、上記のハイカット現象の発現を一次遅れの圧力を利用する構成とする場合には、たとえば、ピストン体3に配設されるリーフバルブ4の背後側に一次遅れの圧力室を画成し、この一遅れの圧力室における圧力でリーフバルブ4における撓み支点を変更する構成とされるであろうから、ピストン部の長さをロッド体2の軸方向に長くする傾向になり、油圧緩衝器における有効ストロークを短くする不具合がある。
それに対して、この発明にあっては、上記したように、可変手段10が言わばピストン体3に組み込まれるから、油圧緩衝器における有効ストロークを短くする危惧がない。
前記したように、この発明によるバルブ構造をピストン部に具現化する油圧緩衝器にあっては、基本的には、ピストン部がシリンダ体1内を図1中で下降するように移動する伸長作動時には、上流側室R1の圧力が上昇して上流側室R1からの作動油が伸側のポート3aを介して下流側室R2へ移動するようになる。
このとき、伸側のポート3aの下流側端を開口させる開口窓3cを開放可能に閉塞する伸側減衰バルブたるリーフバルブ4が上記の移動する作動油に抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめ、油圧緩衝器に所定の減衰力を発生させる減衰力発生要素として機能する。
また、上記と逆に、ピストン部がシリンダ体1内を図1中で上昇するように移動する収縮作動時には、下流側室R2の圧力が上昇して下流側室R2からの作動油が圧側のポート3fを介して上流側室R1へ移動するようになる。
そして、このときに、圧側のポート3dの下流側端を開口させる開口窓3eを開放可能に閉塞する圧側減衰バルブたるリーフバルブ6が上記の移動する作動油に抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめ、油圧緩衝器に所定の減衰力を発生させる減衰力発生要素として機能する。
一方、この油圧緩衝器にあっては、前記した可変手段10を有することもあって、たとえば、伸長作動時に図5に示すような減衰特性を呈する。
先ず、油圧緩衝器の伸長作動時には、ピストン部がシリンダ体1内で上流側室R1側に移動するから、上流側室R1の圧力が高まり、上流側室R1の作動油がピストン体3に形成の伸側のポート3aを通過して下流側室R2に移動しようとする。
そして、このとき、油圧緩衝器における伸縮速度となるピストン速度が、図5中に符号aで示す微低速領域、たとえば、0.1m/秒近辺に至るまでの領域にある場合には、リーフバルブ4の外周側がピストン体3におけるバルブシート部3bから離れず、したがって、リーフバルブ4は、バルブシート部3bおよび可変手段10における隔壁体11で形成される開口窓3cを開放可能に閉塞する態勢に維持される。
その結果、上流側室R1から開口窓3c、すなわち、放射溝13内に可変手段10における隔壁体11で画成される部屋に流入する作動油は、隔壁体11に形成の切欠11aを介して下流側室R2に流出し、このとき、オリフィス特性の減衰力が発生される。
そして、上記に引き続いて、図5中に符号bで示すように、ピストン速度が低速領域にあるとき、すなわち、ピストン速度が0・1m/秒近辺から0.3m/秒近辺に至るまでの領域にあるときには、リーフバルブ4の外周側がピストン体3におけるバルブシート部3bから離れるようになる。
その結果、上流側室R1から開口窓3c、すなわち、放射溝13内に流入する作動油は、リーフバルブ4の外周側とバルブシート部3bとの間に出現する隙間を介して下流側室R2に流出し、このとき、バルブ特性の減衰力が発生される。
また、上記に引き続いて、ピストン速度が図3中に符号cで示す領域にあるとき、すなわち、上記の低速領域を超えて、0.3m/秒近辺にあって、0・6m/秒近辺となる高速領域に至る前の中速領域にあるときには、可変手段10にあって、放射溝13における圧力作用で隔壁体11が附勢体12の附勢力に抗して後退することになる。
その結果、開口窓3cの開口面積がそれまでよりも拡大され、したがって、リーフバルブ4における受圧面積が広くなり、このとき、上流側室R1からの作動油量が大きくなるから、リーフバルブ4における面圧が下がり、それゆえ、図5中にB線で示すように、それまでリニアに上昇していた減衰力を一旦低下させるように、図中での傾斜角度を低くして、高い減衰力の発生状態から低い減衰力の発生状態に変わる。
すなわち、ピストン速度が中速領域になると、それまでリニアに上昇していた減衰力が一旦低くなるようになって、高い減衰力を発生しないハイカット現象が発現され、減衰力が高くなり過ぎることを回避し得る。
そして、このハイカット現象が発現された後は、図5中のC線で示すように、一旦低くなったポート特性の減衰力をあらためて上昇させることになる。
その結果、上記した油圧緩衝器にあっては、ピストン速度が特定の速度領域たる中速領域に至る前の微低速領域から低速領域にあるときには、オリフィス特性に引き続くバルブ特性となる減衰力が発生されて、この油圧緩衝器を搭載する車両における乗り心地を良好に維持することが可能になる。
そして、ピストン速度が上記した低速領域を超えて中速領域になるときには、可変手段10が作動するところで、上記のバルブ特性の減衰力にリニアに連続するようにポート特性の減衰力が発生する事態が回避されて、いわゆる高過ぎる減衰力が発生されなくなり、この油圧緩衝器を搭載する車両における乗り心地をいたずらに悪化させることを回避し得ることになる。
ちなみに、図5中のB線における傾斜については、可変手段10を構成する附勢体12におけるバネ定数の変更によって任意に変更できる。
前記したところでは、この発明によるバルブ構造が油圧緩衝器におけるピストン部に具現化されるとしたが、この発明が意図するところからすると、これに代えて、図示しないが、油圧緩衝器におけるシリンダ体1内に収装のベースバルブ部や、シリンダ体1の外となるいわゆる緩衝器本体の外に配設される減衰部に具現化されるとしても良いことはもちろんである。
そして、前記したところでは、この発明によるバルブ構造が圧側減衰バルブたるリーフバルブ6を有し、このリーフバルブ6が開放可能に閉塞する開口窓3eにおける開口面積も可変手段10で拡大可能とされるが、これに代えて、このリーフバルブ6側にあっては、可変手段10の配設が省略されるとしても良く、また、リーフバルブ6が圧側の減衰力の発生に関与せずして単なる吸込みバルブとして機能するとしても良い。
なお、この発明の範囲は、図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないのはもちろんである。
車両に搭載される油圧緩衝器に具現化されるとき、ピストン速度が特定の速度領域に至るまでは好ましい減衰力が発生されて車両における乗り心地を良好に保つ一方で、ピストン速度が特定の速度領域にあるときには、高すぎる減衰力の発生が抑制されて車両における乗り心地を悪化させないようにするのに向く。
1 シリンダ体
2 ロッド体
2a 先端部
2b,13a 段部
3 バルブディスクたるピストン体
3a,3d ポート
3b バルブシート部
3c,3e 環状溝
4 伸側減衰バルブたるリーフバルブ
5 ピストンナット
6 圧側減衰バルブたるリーフバルブ
7 バルブストッパ
10 可変手段
11 隔壁体
11a 切欠
12 附勢体
13 放射溝
Pr ピストンリング
R1 上流側室
R2 下流側室

Claims (3)

  1. 上流側室と下流側室とを画成しながらポートを有して上流側室と下流側室との連通を許容すると共に下流側室に対向する端面に形成されて上記のポートの下流側端を開口させる開口窓を有する環状のバルブディスクと、このバルブディスクに積層されて上記の開口窓を開放可能に閉塞するリーフバルブとを有してなるバルブ構造において、バルブディスクが上記の開口窓における開口面積を可変にする可変手段を有し、この可変手段がピストン速度を特定の速度領域に到達させたときに上記の開口窓における開口面積を拡大してなることを特徴とするバルブ構造。
  2. 可変手段が開口窓における開口面積を広狭可能にする隔壁体と、この隔壁体を開口窓における開口面積を狭める方向に附勢する附勢体とを有し、開口窓における圧力が附勢体の附勢力に抗して隔壁体を移動させて開口窓における開口面積を拡大してなる請求項1に記載のバルブ構造。
  3. バルブディスクにおける軸芯部から外周側に向けて上端を開口させる放射溝が形成され、この放射溝内に可変手段を構成する隔壁体が摺動可能に収装されると共に附勢体が伸縮可能に収装され、隔壁体が放射溝内にあって開口窓を画成し、附勢体が放射溝内にあって隔壁体をバルブディスクの外周側たる背後側から附勢してなる請求項1または請求項2に記載のバルブ構造。
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