JP5469915B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

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この発明は、例えば自動車のエンジンなどに使用される内燃機関の燃料噴射弁に関するものである。
内燃機関用の燃料噴射弁においては、噴射燃料粒子径が小さいほど、燃料の蒸発が促進されるとともに、エンジン内壁への燃料付着量が減少し、未燃焼の燃料排出量が低減され、燃費が向上し、有害排出ガス量が低減する。
従来の噴射燃料の微粒子化手段では、燃料が噴射される噴孔の下流に、噴孔径よりも小さい幅の燃料衝突部材が設けられており、この燃料衝突部材に燃料の一部分が衝突することにより、噴射燃料が液膜化され、噴射燃料の微粒子化が促進される(例えば、特許文献1参照)。
特開2008−31914号公報
上記のような従来の微粒子化手段においては、衝突後に形成される液膜の挙動が雰囲気条件変化によって変化し易く、雰囲気条件が変化すると微粒化特性が悪化することがあった。また、厳しくなる排出ガス規制に対応するためには、より一層の燃料の微粒子化が要求される。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、雰囲気条件が変化しても噴射燃料を安定して微粒子化できる燃料噴射弁を得ることを目的とする。
この発明に係る燃料噴射弁は、燃料が噴射するための噴孔に対向して配置され、衝突した燃料を液膜化する燃料衝突部材を備え、燃料衝突部材は、少なくとも一部に弾性部を備え、燃料の衝突によって振動する。
この発明の燃料噴射弁は、燃料衝突部材が燃料の衝突によって振動するので、燃料衝突部材に衝突して形成される燃料液膜が燃料衝突部材の振動によって振動されるが、燃料液膜が分裂して液滴化された際の液滴の粒子径は燃料衝突部材の固有振動数に支配されるので、雰囲気条件が変化した場合でも、噴射燃料を安定して微粒子化できる。
この発明の実施の形態1による燃料噴射弁の燃料拡散室の動作軸に沿う断面図である。 図1の燃料噴射弁の先端部分の拡大断面図である。 図2の噴孔から噴射された燃料の様子を模式的に示す斜視図である。 図3の燃料衝突部材から放出された後の燃料液膜の変化を模式的に示す説明図である。 この発明の実施の形態2による燃料噴射弁の要部を拡大して示す斜視図である。 この発明の実施の形態3による燃料噴射弁の要部を拡大して示す斜視図である。
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による燃料噴射弁の軸線に沿う断面図である。図において、磁気パイプ1の上端部には、非磁性パイプ2を介して円筒状の固定鉄心3が固定されている。磁気パイプ1、非磁性パイプ2及び固定鉄心3は、同軸に配置されている。
磁気パイプ1内の下端部には、バルブシート4とプレート5とが固定されている。プレート5には、燃料を噴射する複数の噴孔5aが設けられている。また、磁気パイプ1内には、弁部材であるボール6と、ボール6に溶接固定されたニードルパイプ7と、ニードルパイプ7の上端部(反ボール6側端部)に溶接固定された可動鉄心8とが挿入されている。
ボール6、ニードルパイプ7及び可動鉄心8は、磁気パイプ1内で摺動可能になっている。これにより、ボール6は、バルブシート4に着座・離座される。また、可動鉄心8の上端面は、固定鉄心3の下端面に接離される。
固定鉄心3内には、ボール6をバルブシート4に押し付ける方向へニードルパイプ7を押圧する圧縮ばね9が挿入されている。また、固定鉄心3内には、圧縮ばね9の荷重を調整するアジャスタ10が固定されている。さらに、燃料の導入部となる固定鉄心3の上端部には、フィルタ11が挿入されている。
固定鉄心3の下端部(可動鉄心8側端部)の外周には、電磁コイル12が固定されている。電磁コイル12は、樹脂製のボビン13と、その外周に巻線されているコイル本体14とを有している。磁気パイプ1と固定鉄心3との間には、磁気通路を構成する金属板15が溶接固定されている。
磁気パイプ1、固定鉄心3、電磁コイル12及び金属板15は、樹脂製ハウジング16に一体成形されている。樹脂製ハウジング16には、コネクタ部16aが設けられている。コネクタ部16a内には、コイル本体14に電気的に接続されたターミナル17が引き出されている。
図2は図1の燃料噴射弁の先端部分の拡大断面図である。バルブシート4には、燃料通路4aが設けられている。燃料通路4aの上流端の周縁部には、シート部4bが設けられている。また、バルブシート4内には、ボール6の往復動を案内するガイド部4cが設けられている。ボール6は、ガイド部4cに案内されてシート部4bに着座・離座される。これにより、ボール6の外周部とシート部4b及びガイド部4cとの間に形成されたバルブシート開口部4dが開閉される。また、ボール6の外周部は、五角形に加工されている。
燃料通路4aと噴孔5aとの間には、燃料拡散室18が形成されている。プレート5の燃料拡散室18とは反対側の面には、衝突した燃料を液膜化する複数の燃料衝突部材19が噴孔5aに対応して固定されている。各燃料衝突部材19は、円筒状であり、噴孔5aに対向する燃料衝突面19aを有している。また、各燃料衝突部材19は一端が固定された弾性体(弾性部)であり、燃料の衝突によって弾性変形することで燃料衝突後は固有振動数にて自由振動するように構成されている。
噴孔5aの軸線Bは、燃料噴射弁の軸線Cに対して角度θ1だけ傾斜している。燃料衝突部材19の軸線Dは、燃料噴射弁の軸線Cに対して、角度θ1よりも大きな角度θ2で傾斜している。また、燃料衝突部材19の軸線Dは、噴孔5aの軸線Bと角度θ3で交差している。
次に、燃料噴射弁の動作について説明する。外部からターミナル17を介して電磁コイル12に通電すると、固定鉄心3、金属板15、磁気パイプ1及び可動鉄心8で構成される磁気通路に磁束が発生し、磁気吸引力により可動鉄心8が固定鉄心3に引き付けられる。これにより、ボール6がシート部4bから離座し、バルブシート開口部4dが開放される。
燃料は、デリバティブパイプ(図示せず)を介して図1の上部から燃料噴射弁に導入され、フィルタ11、アジャスタ10、圧縮ばね9、ニードルパイプ7、ガイド部4cとボール6の外周との間の隙間、及び燃料通路4aを通り、燃料拡散室18に供給される。そして、燃料拡散室18に供給された燃料は、燃料拡散室18の中心部から燃料拡散室18の径方向外側へ向けて流れ、噴孔5aから外部に噴射される。
図3は図2の噴孔5aから噴射された燃料の様子を模式的に示す斜視図である。噴射燃料20は、噴孔5aからほぼ円柱状の形状で噴射され、角度θ3をもって燃料衝突面19aに衝突する。このとき、軸線B,C,Dは同一の平面内にあるため、噴射燃料20は、この平面と燃料衝突部材19の円筒面とが交差する位置にある稜線E上で燃料衝突面19aに衝突する。これにより、噴射燃料20の進行方向が変えられるとともに、噴射燃料20が拡散されて燃料液膜21が生成される。
ここで、燃料衝突部材19の先端面19b、即ち噴射燃料20の流れの下流側端面は、軸線Dに垂直な平面であり、円筒面である燃料衝突面19aとの間に水切り作用をもつ縁部19cが形成されている。また、燃料衝突部材19の先端部は、噴孔5aの軸線Bを横切るように配置されている。噴孔5aからの噴射燃料20は、燃料衝突部材19の先端部付近で燃料衝突面19aに衝突した後、燃料衝突面19aに沿って流れ、縁部19cから燃料液膜21として放出される。
燃料衝突部材19で生成される燃料液膜21は、燃料衝突部材19が振動しなければ、燃料衝突面19aに沿って横方向にほぼ一様な厚さで分散され、流れの方向に向かって径が次第に大きくなる半管状あるいは半割した漏斗状となる。
図4は図3の燃料衝突部材19から放出された後の燃料液膜21の変化を模式的に示す説明図である。生成された燃料液膜21は、燃料衝突部材19の振動、燃料圧力の脈動、空気との剪断などによって変形する。変形した燃料液膜21は、表面張力によって元の形状に復元しようとするため、波を打つように振動する。
この振動の振幅は下流に行くに従って発達するが、振幅がある大きさ以上になると表面張力による復元ができなくなり、燃料液膜21は、振幅の半波長分の長さ(λ/2)で分裂する。この後、分裂した液膜が変形して液糸となり、最終的に液滴になる。
形成される粒径の大きさは、式(1)で示される。分裂時の液膜の側面断面積、つまり液膜厚さhと液膜振動波長λに比例する。
Figure 0005469915
Figure 0005469915
Figure 0005469915
但し、d:粒子径、λ:液膜波長、h:液膜厚さ、f:液膜振動数、ρ:雰囲気密度、U:液膜速度、σ:燃料表面張力である。
分裂時の液膜波長λは、式(2)で示されるように、液膜速度Uと液膜振動数fの関数であり、液膜振動数は式(3)で示される。また、式(1)〜(3)より、粒子径は雰囲気密度ρの関数であり、雰囲気密度が変化すると液膜振動数が変化し、粒径が悪化することが分かる。このことから、雰囲気条件に左右されずに安定した微粒化性能を得るためには、液膜振動数を制御する必要があることが分かる。
上記のように、燃料衝突部材19は噴射燃料20の衝突によって振動するため、燃料衝突部材19に衝突して形成される燃料液膜21は、燃料衝突部材19の振動によって振動される。そして、その振動数は燃料衝突部材19の固有振動数となる。また、燃料液膜21は最終的に分裂して液滴化するが、液滴の粒子径は燃料衝突部材19の固有振動数に支配されるため、雰囲気密度等が変化した場合でも、微粒化性能が変化しない。
また、燃料衝突部材19の固有振動数を通常の液膜分裂周波数よりも大きく設定することで、更なる微粒化を実現することが可能である。
さらに、燃料衝突部材19の固有振動数を小さくすることにより、粒径を大きくし、噴霧の貫徹力を大きくすることも可能である。即ち、燃料衝突部材19の固有振動数を調整することにより、任意の噴霧特性を得ることが可能である。
例えば、本実施の形態では、燃料液膜21の速度を15[m/s]、空気密度を1.205[kg/m3]、燃料の表面張力を0.022[N/m]と設定しており、式(1)〜(3)によると分裂時の液膜振動数は14.5[Hz]となる。
また、本実施の形態では、燃料衝突部材19として、Φ0.4[mm]、長さ4[mm]のステンレス鋼を用いており、燃料衝突後に、燃料衝突部材19は約17.9[Hz]の固有振動数で振動する。このため、燃料液膜21は通常よりも高い周波数、つまり短い波長で分裂し、良好な微粒化を得ることができる。また、雰囲気密度が変化した場合でも微粒化特性は変化しない。
さらに、燃料衝突部材19の固有振動数は、燃料の噴射速度などの様々な条件によっても変えることが望ましい。具体的には、アイドリング時の燃料噴射周波数が約20[Hz]であり、液膜速度60[m/s](燃圧5MPa相当)時の液膜振動数が1MHzとなるため、燃料衝突部材19の固有振動数は、概ね20Hz〜1MHzの範囲内で設定すればよい。
このような燃料噴射弁では、噴射燃料20の衝突により燃料衝突部材19が所定の振動数で振動するようになっているので、雰囲気条件が変化しても噴射燃料を安定して微粒子化できる。
実施の形態2.
次に、図5はこの発明の実施の形態2による燃料噴射弁の要部を拡大して示す斜視図である。実施の形態2では、噴孔5aに対向する平板状の燃料衝突部材22がプレート5に固定されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
このような燃料衝突部材22を用いることにより、燃料衝突部材22の断面2次モーメントを小さくとることができるため、実施の形態1の燃料衝突部材19に比べて、燃料衝突部材22の長さが短い場合でも固有振動数を小さくすることができる。このため、燃料噴射弁先端部をよりコンパクトに構成することができる。
実施の形態3.
次に、図6はこの発明の実施の形態3による燃料噴射弁の要部を拡大して示す斜視図である。実施の形態3では、外周面に燃料衝突面23aを有し、断面C字型(丸括弧型)に湾曲された板状部材からなる燃料衝突部材23が用いられている。図6の燃料衝突部材23は、円形断面の管を軸心に沿ってほぼ2つ割りにした樋状の部材である。他の構成は、実施の形態1と同様である。
この構成においては、燃料衝突部材23が板状部材であるので、板状部材を曲げるなどして燃料衝突部材23の形状を容易に変更あるいは調整できる。これにより、燃料衝突部材23の断面2次モーメントを変化させ、固有振動数を任意の値に調整することが可能である。
なお、燃料衝突部材19,22,23の形状は実施の形態1〜3に限定されるものではなく、燃料の衝突によって所定の固有振動数で振動することが重要である。同様に、燃料衝突面19aは、円筒面に限定されるものではなく、他の可展面あるいは線織面(例えば柱面、錘面、接線曲面など)などの凸の曲面でもよい。
また、燃料衝突部材19,22,23の寸法、材料等も上記の例に限定されるものではない。
さらに、燃料衝突部材19,22,23は、プレート5に別部材として固定しても、プレート5に一体に形成してもよい。
さらにまた、例えば超音波素子等の振動発生装置によって燃料衝突部材19,22,23の振動数を制御してもよい。
さらに、燃料衝突部材19,22,23のプレート5と固定する部分のみを弾性体(弾性部)とし、燃料衝突部材19,22,23の他の部分を金属などで構成し、この固定部分を所定の固有振動数で振動させる構成としてもよい。
5a 噴孔、19,22,23 燃料衝突部材、20 噴射燃料。

Claims (1)

  1. 燃料を噴射するための複数の噴孔を有するプレートが、燃料通路の先に固定された燃料噴射弁であって、
    上記プレートの上記燃料通路と反対側の面に傾斜して一端が固定され、上記噴孔から噴射された燃料が他端に衝突する複数の燃料衝突部材、及び
    上記燃料衝突部材の振動数を制御する振動発生装置
    を備え、
    上記燃料衝突部材は、その幅が上記噴孔の径よりも広く、燃料の衝突によって振動する弾性体からなり、かつ燃料が衝突する凸の曲面を有する柱状又は板状の部材からなり、
    上記燃料衝突部材の固有振動数が20Hz〜1MHzの範囲内に設定されていることを特徴とする燃料噴射弁。
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