図1を参照すると、リヤサスペンション要素又はショックアブソーバを含むリヤサスペンション組立体の好ましい実施形態を有する自転車20(例えば、マウンテンバイク)が示されている。自転車20は、フレーム22を有し、このフレームは、好ましくは、全体として三角形のメインフレーム部分24及び好ましくはメインフレーム部分24に回動可能に連結された関節運動フレーム部分又はサブフレーム26で構成されている。図示の構成では、サブフレーム26は、互いに回動可能に連結された多数のリンク機構部材の組立体である。サブフレーム26は、メインフレーム部分24に(例えば、シートチューブ(立パイプともいう)27に)回動可能に連結されている。自転車20は、前輪28及び後輪30を更に有している。後輪30は、サブフレーム26によって支持されている。着座位置にあるライダの支持体となるサドル又はシート32がメインフレーム部分24に、特にシートチューブ27に連結されている。図示の構成では、シート32は、シートポスト又は支柱33を介してメインフレーム部分24に連結されている。しかしながら、他の構成では、シート32は、別の部材又は構造体、例えばシートチューブ27それ自体によって支持されても良い。前輪28は、フロントサスペンションフォーク34によってフレーム22に対して支持されている。幾つかの実施形態では、メインフレーム部分24は、全体として三角形でなくても良く且つ/或いは底部ブラケットまで途切れない状態で延びるシートチューブを備えていなくても良い。
サブフレーム26とメインフレーム部分24(好ましくは、メインフレーム部分24のトップチューブ(「上パイプ」ともいう))との間には、好ましい実施形態としてのリヤショック(以下、ショックアブソーバを単に「ショック」という場合がある)38が設けられている。本明細書において開示するショック38は、オフロード自転車用のリヤショックアブソーバとしてのその使用との関連で説明するが、本発明の利用可能性はそのようには限定されないということが注目される。本発明の観点は、フロントサスペンションユニット、例えば自転車フォーク34及び他の適当な用途にも利用可能である。
リヤショック38は、サブフレーム26の回動運動に影響を及ぼし、圧縮運動とリバウンド運動の両方においてサスペンションばね力及び減衰力をもたらす。好ましくは、ばねは、空気ばね装置であるが、コイルばね及び他の適当な装置も又使用できる。かくして、図1に示された自転車20は、後輪30とフレーム22との間に作動的に結合されたリヤショック38を有する。有利には、リヤショック38は、テレーンにより後輪30に及ぼされた衝撃力の自転車のオペレータへの伝達を実質的に減少させる。 さらに図2を参照すると、リヤショック38は、望ましくは、主要ユニット又は本体部分40及び遠隔ユニット又は補助若しくはリザーバ本体部分44を有している。図示のように、リザーバ本体部分44は、本体部分40に対して遠隔に配置されるのが良いことに注目されたい。即ち、リザーバ本体部分44は、好ましくは、本体部分40内には配置されない。図示の構成では、本体部分40及びリザーバ部分は、管組立体46を介して流体移送可能に結合されている。図1に示されているように、本体部分40は、リザーバ本体部分44とは別個に自転車20に結合されている。本体部分40は、好ましくは、一端のところのメインフレーム部分24(例えば、トップチューブ)から他端部のところのサブフレーム26(例えば、シートステー)まで延びると共にトップチューブの軸線に沿ってトップチューブの下に延びている。好ましくは、リザーバ本体部分44は、後輪30の回転軸線の近くに位置する箇所で自転車20に連結されている。図示の構成では、リザーバ本体部分44は、その後方端部の近くでシートステーのうちの1つに結合されている。好ましくは、リザーバ本体部分44の上端部は、シートステーに結合され、リザーバ本体部分44は、シートステーの下に延びている。図示の構成では、リザーバ本体部分44の軸線は、自転車20が水平面上で直立しているとき、シートステーに実質的に垂直であり且つ全体として鉛直である。しかしながら、図示の構成では、リザーバ本体部分44は、正確に鉛直ではなくても良い。
好ましくは、管組立体46は、管部分46a及びホース部分46bを含む。管部分46aは、比較的剛性の材料で構成され、全体として“S”字形を呈し、管部分の一端部は、差し込み型連結具によって本体部分40に結合されている。かかる連結により、管部分46aが連結部の軸方向において本体部分40にしっかりと結合されるが、管部分46aと本体部分40の相対回転が可能である。かかる構成は、有利には、本体部分40と管組立体46の相対運動を可能にすることにより自転車20へのショックアブソーバ38の組付けを容易にする。加うるに、管部分46aのS字形湾曲形状により、有利には、以下に詳細に説明するように、ダンパ部分を分解しないで、日常的点検整備のために本体部分40の空気ばね部分の部分分解が可能である。管部分46aの他端部は、任意適当なコネクタ、例えば差し込み型コネクタによってホース部分46bの第1の端部に結合されている。好ましくは、ホース部分46bは、比較的可撓性のホースで構成される。ホース部分46bの第2の端部は、任意適当なコネクタ、例えば差し込み型コネクタによってリザーバ本体部分44に結合されている。可撓性ホース部分46bは、メインフレーム部分24とサブフレーム26の相対運動に順応する。
かかる構成が現時点において好ましいが、別の構成では、リザーバ本体部分は、本体部分内、例えばフロントフォーク内に配置されても良い。幾つかの構成では、リザーバ本体部分は、本体部分の外部で本体部分に直接連結され、他の構成では、リザーバ本体部分は、自転車に別個に、ただし本体部分の比較的近くで自転車に固定されても良い。例えば、リザーバ本体部分は、後輪アクスル(又は回転軸線)の近くで結合されるのが良く、本体部分は、メインフレーム部分24から後輪の回転軸線の近くに位置する箇所まで延びるのが良い。さらに、本体部分40とリザーバ本体部分44の結合は、任意適当な手段、例えばリザーバ本体部分44を本体部分40内に直接ねじ込み又は圧力嵌めすることによって(これには限定されない)達成されるのが良い。変形例として、リザーバ本体部分44は、本体部分40と一体に形成されても良い。以下に詳細に説明するように、ショックアブソーバ38は、好ましくは、ショックアブソーバ38の減衰システム内に慣性弁を有する。本明細書において説明する慣性弁は、好ましくは、リヤショック38又はリヤショック38の或る特定の部分、例えばリザーバ本体部分44の加速度の変化に対して高い応動性を示すよう構成されるのが良い。さらに、幾つかの実施形態では、本明細書において説明する慣性弁コンポーネントは、製造にあたり比較的複雑ではなく且つ費用高価が良く、その結果、製造費が安く且つ製造上の誤差が少ない。具体的に説明すると、或る特定の好ましい実施形態は、個々のコンポーネント相互間の許容誤差の積み重ね、特に同心性に関するサイズの許容誤差の積み重ねと関連した組立て上の問題を減少させるよう構成される。以下に説明するように、リヤショック38は、好ましくは、慣性弁を有し、この慣性弁は、その加速方向に応じてリヤショック38の減衰率を変化させる。かかる構成では、慣性弁は、自転車のライダに起因してショックアブソーバ38に及ぼされる力と走行経路中の隆起部によってショックアブソーバ38に及ぼされる力を区別することができる。自転車の性能は、ライダにより生じた力がしっかりと(又は素早く)減衰され、路上の隆起部によって後輪30に及ぼされた力が穏やかに(又はゆっくりと)減衰される場合に向上する。これにより、例えばペダル踏みによるライダ誘発力に起因して生じるショックアブソーバの運動が減少し又は阻止される一方で、ショックアブソーバ38は、凸凹のテレーンにより後輪30に及ぼされる力を補償することができる。理解されるように、幾つかの実施形態では、ショックアブソーバは、ライダ誘発ペダル力に対する応動性が極めて低い。
リヤショック38の好ましい実施形態が図2〜図14に示されている。一般に、リヤショック38は、ばね、主ダンパ組立体及びリザーバを有する。好ましくは、本体部分40は、一般に、作動油本体部分又はダンパ管48、シールヘッド又は端キャップ52により閉鎖されたばね管又は空気スリーブ50、本体減衰ピストン(主ダンパピストンという場合がある)54及びダンパ管キャップ又はばねピストン56で構成されている。
ダンパ管48は、形状が円筒形であるのが良く、このダンパ管は、開放端部58及び下閉鎖端部60を有する。下閉鎖端部60は、下アイレット62を有し、この下アイレットは、ショック38を図1の自転車20の一部分、例えばサブフレーム部分26に連結するために用いられる。閉鎖端部60又は下アイレット62を便宜上、「下」端部又はアイレットと称する場合がある。というのは、サブフレーム26に結合された端部60は、メインフレーム部分24に結合されたショック38の他端部よりも自転車上で比較的低い位置に存在する場合が多いからである。しかしながら、本明細書で用いられる用語は、本発明を限定するものではない。
空気スリーブ50も又、形状が円筒形であるのが良い。空気スリーブ50は、開放端部64を有し、その反対側の上端部は、端キャップ52によって閉鎖されている。空気スリーブ50の端キャップ52は、リヤショック38を自転車20のシートチューブ27(又は他の適当な部分)に連結するために用いられる上アイレット66を有する。閉鎖端部52又はアイレット66を便宜上、「上」端部又はアイレットと称する場合がある。というのは、メインフレーム24に結合された端部52は、サブフレーム26に結合されたショック38の他端部よりも自転車上で比較的高い位置に存在する場合が多いからである。しかしながら、本明細書で用いられる用語は、本発明を限定するものではない。
空気スリーブ50の開放端部64は、ダンパ管48を摺動可能に受け入れる。この形態では、空気スリーブ50とダンパ管48は、自転車20のメインフレーム部分24とサブフレーム部分26との間で互いに対して入れ子式(伸縮)運動を行うことができるよう構成されている。かくして、ショックアブソーバ38は、自転車のメインフレーム部分24とサブフレーム部分26の相対運動に順応するよう長さが変化可能である。ショック38の長さを減少させがちな後輪30(及びサブフレーム26)の上方運動は、通常、圧縮運動と呼ばれ、又は単に圧縮と呼ばれる。ショック38の長さを増大させがちな後輪30(及びサブフレーム26)の下方運動は、通常、リバウンド運動と呼ばれ、又は単にリバウンドと呼ばれる。
図1は、自転車20のメインフレーム部分24(上アイレット66を用いて)及びサブフレーム部分26(下アイレット62を用いて)に取り付けられたリヤショック38の一実施形態をその好ましい形態において示している。図1及び図3を参照すると、図示の構成では、上アイレット66及び下アイレット62のそれぞれの取り付け軸線は、整列していない。下アイレット62の取り付け軸線は、上アイレット66の取り付け軸線に対してショック38の長手方向軸線回りに回転している。というのは、図1に示されているように、サブフレーム取り付けタブ26aが取り付け軸線と比較して異なる向きでメインフレーム部分24に設けられているからである。しかしながら、下アイレット62の取り付け軸線の向きは、図1〜図3に示された実施形態では上アイレット66の取り付け軸線の向きとは整列しておらず又は同一平面内には位置していないが、アイレット52,58のそれぞれの向きは、そのように限定されるわけではない。アイレット66,58の取り付け軸線は、リヤショック38が取り付けられたフレームに適当な任意相対的な向きで位置決め可能である。
別の実施形態では、リヤショック38の向きは、ダンパ管48がメインフレーム部分24のシートチューブ27又は他の部分に取り付けられ(「下」アイレット62のところで)他方、空気スリーブ50がサブフレーム26に取り付けられる(「上」アイレット66のところで)よう変更可能である。しかしながら、かかる構成が現時点において好ましい訳ではない。
空気スリーブ50は、その開放端部64のところに位置決めされたシール組立体68を有し、このシール組立体は、ダンパ管48の外面と空気スリーブ50の内面との間に実質的に気密シールを形成している。図3を参照すると、図示の実施形態では、シール組立体68は、環状軸受け72の上方に配置され又は開放端部64に対して車内側に(内側に)位置した実質的に長方形断面の環状シール本体70で構成されている。ワイパ74が空気スリーブ50の開放端部64に隣接して配置されていて、ダンパ管48が空気スリーブ50内に入っているときに、埃、汚れ、小石や他の潜在的に損傷をもたらすデブリが空気スリーブ50内に入り込むのを阻止するようになっている。
主ダンパピストン54は、ダンパ管48内に位置決めされると共にその内面に対して摺動する。ピストン54は、ピストンロッド78によって端キャップ52に連結され、ピストンロッド78は、ピストン54を空気スリーブ50内で運動可能に固定している。
上述したように、ダンパ管キャップ56は、ダンパ管48の開放端部58に固定されている。ダンパ管キャップ56は、ピストンロッド78がダンパ管キャップ56に設けられた中央開口部内で摺動することができるようピストンロッド78を支持している。かくして、ダンパ管キャップ56は、ダンパ管48のシールヘッドとして機能する。したがって、ダンパ管キャップ56は、空気スリーブ50の内面内で摺動し、かくして、空気ばねのピストンとしても機能する。ダンパ管キャップ56は、2つの部分を成して製造するのが容易なので、ダンパ管キャップ56は、好ましくは、上キャップ部分56a及び下キャップ部分56b(図3に示された位置に対して)で構成されている。下キャップ部分56bをダンパ管48の端部に嵌めた後、上キャップ部分56aは、好ましくは、上キャップ部分56aをねじ込んでダンパ管48の内面に形成されているねじ山に螺合させることによりダンパ管48に固定される。上キャップ部分56a及び下キャップ部分56bは、上キャップ部分56aを上述したようにダンパ管48に取り付けたとき、下キャップ部分56bも又、ダンパ管48にしっかりと取り付けられ、これら相互間の相対的軸方向運動は阻止されるよう構成されている。ダンパ管48からの作動油がダンパ管キャップ56とピストンロッド78との間及びダンパ管キャップ56とダンパ管48との間に形成された主要空気チャンバ86内に漏れ込むのを阻止するためにそれぞれ環状シール80,82が用いられることが好ましい。同様に、環状シール80,82は又、主要空気チャンバ86内に存在するガスがダンパ管48内に漏れ込むのを阻止する。
シール組立体88が好ましくは、ダンパ管キャップ56によって支持されている。シール組立体88は、好ましくは、シール部材90及びブッシュ94で構成され、シール部材90は、好ましくは、実質的に正方形断面の環状シールであり、一対の軸受け92相互間に位置決めされている。シール部材90とブッシュ94は一緒になって、ダンパ管キャップ56と空気スリーブ50との間及びダンパ管キャップ56とピストンロッド78との間にそれぞれシールを形成する一方で、ピストンロッド78がダンパ管キャップ56に対して並進することができるようにしている。注目されるべき事として、シール部材90の断面は、任意適当な形状のものであって良く、例えば円形又は長方形である。
リヤショック38の完全圧縮時に空気スリーブ50の閉鎖端部52とダンパ管48のダンパ管キャップ56の直接的な金属間接触を阻止するよう空気スリーブ50の閉鎖端部52の近くにボトムアウト(bottom-out)バンパ96を設けるのが望ましい。ボトムアウトバンパ96は、好ましくは、軟質、柔軟性且つ弾性の材料、例えばゴムで作られる。ボトムアウトバンパ96は、2つのワッシャ98a,98b相互間に位置決めされ、これらワッシャは、ボトムアウトバンパ96を閉鎖端部52に隣接して定位置に保持している。ワッシャ98a,98bも又、軟質柔軟性で且つ弾性の材料、例えばゴム又は任意他の適当な材料で構成可能である。同様に、環状リバウンド(又はトップアウト(top-out))バンパ(図示せず)をダンパ管キャップ56の下で、しかしながら軸受け64の上でダンパ管48の外部周りに位置決めされるのが良い。リバウンドバンパは、設けられた場合、好ましくは、ダンパ管キャップ56の底部と空気スリーブ50との金属間接触を阻止すると共にリヤショック38のリバウンド運動の終わりにおいて2つのコンポーネント相互間の衝突の大きさを和らげる。
特に図5及び図6を参照すると、ダンパ管キャップ56とシール組立体68との間の空間は、補助空気チャンバ102を構成し、この補助空気チャンバは、「負のばね」チャンバと呼ばれる場合がある。補助空気チャンバ102を満たす空気は、ショック38を圧縮する傾向があり又はリヤショック38のリバウンド運動に抵抗する圧力を及ぼす。主要空気チャンバ86と補助空気チャンバ102は、互いに連携して、リヤショック38のサスペンションばね部分を形成する。
主要空気チャンバ86は、空気スリーブ50の閉鎖端部52とダンパ管キャップ56との間の空間として定義される。主要空気チャンバ86内に入っている空気は、リヤショック38を伸張させ又はリヤショック38の圧縮運動に抵抗しがちな付勢力を及ぼす。理解されるように、主要空気チャンバ86は、主として、ショック38の動程範囲の大部分にわたってショック38のばね特性を担っている。補助空気チャンバ102は、例えばショック38の種々のシール組立体により生じる運動に対する初期抵抗に打ち勝つようショック38の初期圧縮を助けるようになっている。
以下、図2〜図7を参照してリヤショック38のダンパ組立体について説明する。ダンパ管48の内部空間又はチャンバは、ピストン54によって2つの部分に分割されている。図示の構成では、第1の部分は、圧縮チャンバ104であり、第2の部分は、リバウンドチャンバ106である。圧縮チャンバ104は、一般に、ピストン54とダンパ管48の閉鎖端部60との間の空間によって形成される。圧縮チャンバ104は、リヤショック38の圧縮運動中、容積が減少し、リヤショック38のリバウンド運動中、容積が増大する。リバウンドチャンバ106は、一般に、ピストン54とダンパ管キャップ56との間の空間によって形成されている。リバウンドチャンバ106は、リヤショック38の圧縮運動中、容積が増大し、リヤショック38のリバウンド運動中、容積が減少する。加うるに、ピストンロッド78は、リバウンドチャンバ106内に存在している。ピストン54がダンパ管48内に更に動くと、ピストンロッド78は、ダンパ管48内部の増大した部分を占める。かくして、リバウンドチャンバ106は、リバウンドチャンバ106内におけるピストンロッド78の存在に起因して、圧縮チャンバ104が圧縮中に減少するのと同じ容積だけ増大するわけではない。その結果、減衰流体は、圧縮時にリザーバ本体部分44に押し退けられ又は移されなければならず、次に、リバウンド中、本体部分40に戻されなければならない。上述したように、図3は、ピストン54が非圧縮状態にあるリヤショック38の一実施形態を示している。図5、図6及び図7は、リヤショック38の部分圧縮位置を示している。
図3に示されているように、好ましくは、中空のねじ山付き締結具又はピン108がピストン54をピストンロッド78に固定している。好ましくは、断面が長方形の環状型のシール110がピストン54によって支持されており、このシールは、ダンパ管48の内面と一緒になってピストン54を密封している。
図示の実施形態では、ピストン54は、好ましくは、複数個の圧縮流れ通路112を有する。圧縮流れ通路112の各々は、ピストン54を軸方向に貫通し、好ましくは、断面形状が円形である。好ましい一構成では、図4に示されているように、3つの群をなす3つの通路112に9つの圧縮流れ通路112が設けられている。変形例として、圧縮流れ通路112の各群は、単一の弧状(又は腎臓型)通路から成る。しかしながら、現時点において図示している構成は、有利には、ほぼ同じ量の流体の流れを提供する一方で、弧状通路の形成に必要な時間がかかり且つ高価なフライス加工作業ではなく、通路112を単純な穴開け作業で形成することができる。
種々の実施形態では、圧縮流れ通路112は、累積的に穴あけ状態であるのが良く、それ故、ピストン54の作業面積の10%〜60%、15%〜40%又は20%〜35%にわたり作動油の通過を可能にしている。本明細書で用いる「作業面積」という表現は、長手方向軸線に垂直な平面においてピストン54の周囲内に定められた面積を意味している。図示の構成では、作業面積は、ダンパ管48の内部空間の断面積に実質的に一致している。ピストン54の場合、長手方向軸線は、ピストンロッド78と整列する。圧縮流れ通路112は、累積的に穴あけ状態であるのが良く、作業面積の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%及び60%にわたり作動油の通過を可能にする。
圧縮流れ通路112は、ピストン54のリバウンドチャンバ106の側がシムスタック114によって覆われている。シムスタック114は、1つ又は2つ以上の可撓性の、好ましくは環状のシムで構成されるのが良い。シムスタック114は、好ましくは、逆止弁として働く。すなわち、シム114は、リヤショック38の圧縮運動中、圧縮流れ通路112を通る好ましくは絞りが最小限の流路の実現を可能にするよう撓み、他方、リヤショック38のリバウンド運動中、圧縮流れ通路112を通る流れを阻止する。図示の形態では、シムスタック114は、作動油がリヤショック38の圧縮運動中、最小限の絞り状態で圧縮流れ通路112を通って流れることができるよう好ましくはシムスタック114を容易に撓ませることができる任意適当な特性(例えば、厚さ、剛性及び直径)を有する多数のシムで構成されている。加うるに、結果的に比較的大きな流体力がシムスタック114に作用するようにする通路112の比較的大きな総面積は又、絞りが最小限の流れを可能にするのを助ける。リヤショック38の圧縮運動中における圧縮流れ通路112を通る作動油の実質的に非制限状態の流路(矢印で表されている)及びシムスタック114の撓み状態が図6に示されている。
圧縮流れ通路112を通る圧縮流れに加えて、圧縮流れは又、好ましくは、少なくとも追加の圧縮流路を通って可能になる。例えば、図示の構成では、ピストンロッド78を貫通して中央通路116が設けられている。中央通路116は、中空ピン108の通路118を介して圧縮チャンバ104と連通状態にある。さらに、中央通路116は、ピストンロッド78に設けられた半径方向ポート120を介してリバウンドチャンバ106と連通状態にある。図8は又、圧縮チャンバ104からピストンロッド78のポート120を通ってリバウンドチャンバ106内に至る作動油の流れを示している。この流路に関し、作動油は、圧縮チャンバ104から中空ピン108及びピストンロッド78の中央通路116を通って流れ、その後ポート120から流出してリバウンドチャンバ106内に流れ込む。この流路を圧力作動型流路と呼ぶ場合がある。というのは、流路を通る流体の流れが圧縮チャンバ104とリバウンドチャンバ106との圧力差に応答して生じるからである。
図示の実施形態のピストン54は、ピストン54を通って軸方向に延びる複数本の、好ましくは3本のリバウンド流れ通路122を更に有している。リバウンド流れ通路122の各々は、好ましくは、軸方向貫通穴部分122a及び半径方向チャネル部分122bを含む。半径方向チャネル部分122bは、ピストン54のリバウンド側に形成されており、この半径方向チャネル部分により、流体は、リヤショック38のリバウンド運動中、圧縮シムスタック114をバイパスすることができる。したがって、作動油は、リヤショック38のリバウンド運動中、半径方向チャネル122bと軸方向貫通穴122aの両方を通って流れる。この構成の顕著な利点は、リバウンド流れ通路122のサイズを制限せず、それ故、半径方向チャネル122bが存在しなければ必要な場合があるリバウンド流れ通路122を通って流れることができる流体の量を制限しないで、圧縮運動中ピストン54を通る作動油の極めて高い流量の実現を可能にするよう圧縮流れ通路112のサイズを増大させることができるということにある。また、これにより、ピストン54を多部品又はカップ設計ではなく、単一の材料片で形成することができる。
或る特定の実施形態では、リバウンド流れ通路122は、累積的に穴あけ状態であるのが良く、それ故、ピストン54の作業面積の2%〜25%、5%〜15%又は5%〜10%にわたり作動油の通過を可能にする。リバウンド流れ通路122は、累積的に穴あけ状態であるのが良く、それ故、ピストン54の作業断面積の2%以下、5%以下、10%以下、15%以下又は25%以下にわたり作動油の通過を可能にする。
リバウンドシムスタック124が1枚又は2枚以上の可撓性シムで構成されるのが良く、このリバウンドシムスタックは、好ましくは、ピストン54の圧縮側に設けられ、リバウンド通路122を覆う。リバウンドシムスタック124は、リヤショック38のリバウンド運動中、リバウンド流れ通路122を通る流れを可能にするが、その量を制御するよう撓む。したがって、リバウンドシムスタック124は、リヤショック38のリバウンド運動中、ピストン54を通る作動油の流れに対して抵抗をもたらす。リバウンドシムスタック124は又、リヤショック38の圧縮運動中、リバウンド流れ通路122を通る流れを阻止するが、好ましくは、圧縮運動中、圧縮流れ通路112を通る作動油の流れを妨げないよう構成されている。例えば、図示の構成では、ピストン54は、圧縮チャンバ104側に設けられていて、圧縮流れ通路112の開口部を含む凹部126を有する。凹部126は、リバウンドシムスタック124が閉じられた場合であっても圧縮流れ通路112を通る圧縮チャンバ104からの圧縮流れを可能にする。
図7は、リヤショック38のリバウンド運動中におけるリバウンドチャンバ106からリバウンド流れ通路122を通って圧縮チャンバ104に至る作動油の流路(矢印で表されている)を示している。加うるに、図7は、リヤショック38のリバウンド運動中、リバウンド通路122を通る流れを可能にするシムスタック124の撓み状態を示している。
図7は又、リヤショック38のリバウンド運動中におけるリバウンドチャンバ106からポート120、ピストンロッド78の中央通路116及び中空ピン108の通路118を通って圧縮チャンバ104内に至る作動油の流れを示している。ピストンロッド78のポート120は、リヤショック38が部分的に完全圧縮状態になったときに中央通路116とリバウンドチャンバ106との間で作動油を流すことができる通路となる。リヤショック38は図3に示されているように実質的に非圧縮位置にあるとき、ブッシュ94は、ポート120を閉鎖して作動油がポート120を通ってリバウンドチャンバ106又は中央通路116内に流れるのを阻止する。しかしながら、幾つかの構成例では、リヤショック38が非圧縮位置にあるときであっても流体の流れがポート120を通って可能であるように位置決めされ又は違ったやり方で構成されるのが良い。
図示の構成では、ポート120を通る流量を変化させ又は調節することができる調節機構体が設けられている。例えば、調節ロッド128がピストンロッド78の中央通路116を貫通して延びている。調節ロッド128は、好ましくは、圧縮運動時及びリバウンド運動時にポート120を通って流れることができる流体の流量を変えることによりリヤショック38の減衰力を変更するよう構成されている。これは、調節ロッド128を調節して調節ロッド128のニードル部分又は先端部130が中空ピン108の通路118の弁座部分132を部分的に又は場合によっては完全に閉塞し、かくしてポート120を通って流れる流体を制限し又は場合によっては流体がポート120を通って流れるのを阻止することによって達成される。先端部130及び弁座132は、対応のテーパ付き表面を有し、かくして、ニードル及びオリフィス型調整可能な弁として機能する。しかしながら、他の適当な形式の弁を追加的に又は代替的に用いることができる。
さらに、図2〜図7に示されている本体部分40の形態では、圧縮流れ通路112がリバウンド流れ通路122と比較してこれらを通る流体の量を著しく増大させることができるので、ポート120を通って流れることができる流体の量の調節は、リヤショック38のリバウンド運動に対する影響の方が圧縮運動に対する影響よりも著しく大きい。かくして、調節ロッド128の調節が圧縮運動とリバウンド運動の両方の間、圧縮チャンバ104からリバウンドチャンバ106への流体の流れを変更するが、調節ロッド128は、リヤショック38のリバウンド運動中における圧縮チャンバ104からリバウンドチャンバ106への流体の流れをより著しく調節する。リバウンド減衰は、圧縮減衰と比較して、以下の理由で調節ロッド128の調節の影響を大きく受ける。一例を挙げて説明すると、種々のシムスタックにより提供される流れの絞りを無視すると、圧縮流れ通路112は、望ましくは、リバウンド流れ通路122と比較してこれを通る流量を増大させることができるよう構成される。これは、上述したように、圧縮流れ通路112を構成する開口部の累積サイズがリバウンド流れ通路122を構成する開口部の累積サイズよりも望ましくは著しく大きいからである。さらに、ポート120を構成する開口部のサイズは、好ましくは、圧縮流れ通路112を構成する開口部の累積サイズよりも非常に小さい。或る特定の実施形態では、ポート120を構成する開口部のサイズは、圧縮流れ通路112を構成する開口部の累積断面積の2%〜30%、5%〜25%又は10%〜20%であるのが良い。或る特定の実施形態では、ポート120を構成する開口部のサイズは、圧縮流れ通路112を構成する開口部の累積断面積の30%以下、25%以下、15%以下、10%以下又は5%以下である。かくして、ポート120を通る追加の流れは、リヤショック38の圧縮運動中、圧縮チャンバ104からリバウンドチャンバ106への流れを著しくは増大させない。
同様に、ポート120を構成する開口部のサイズは、好ましくは、リバウンド流れ通路122を構成する開口部の累積断面積よりも小さい。或る特定の実施形態では、ポート120を構成する開口部の断面積は、リバウンド流れ通路122を構成する開口部の累積断面積の約15%〜約35あるのが良い。或る特定の実施形態では、ポート120を構成する開口部の断面積は、リバウンド流れ通路122を構成する開口部の累積断面積の25%以下である。以上要約すると、ポート120のサイズとリバウンド流れ通路122を構成する開口部のサイズの比は、ポート120のサイズと圧縮流れ通路112を構成する開口部のサイズの比よりも大きいので、ポート120を通る流れを可能にすると、リヤショック38の圧縮運動と比較して、リヤショック38のリバウンド運動中、正味の全体的流れに対する影響は著しくなる。したがって、調節ロッド128の調節は、好ましくは、リヤショック38の圧縮運動と比較してリバウンド運動に対する影響のほうが大きいことになる。
したがって、調節ロッド128は、リヤショック38のユーザにリヤショック38のリバウンド減衰を調節する能力を提供する。リバウンド調節ロッド128の端部に取り付けられた調節ノブ134により、ユーザは、調節ロッド128及びそれ故にリヤショック38のリバウンド減衰率を調節することができる。調節ノブ134は、リヤショック38の外部に設けられている。かくして、調節ノブは、リヤショック38の分解を必要としないで、減衰調節を行うためにユーザにより容易に且つ外部から接近可能である。ボール形戻り止め機構体136が調節ノブ134の複数の別々の調節位置を提供する。注目されるように、調節ロッド128の先端部130は、完全閉鎖又は最も下流側の位置でポート120を通る流れを完全に阻止する場合があり又はそうでない場合がある。すなわち、流体密シールは、完全閉鎖位置でも調節ロッド128の先端部130と弁座132との間に形成されない場合がある。かくして、幾分かの流体がポート120をその「閉鎖位置」において通って流れることができる。かかる流体の流れは、「ブリード流」と呼ばれる場合が多く、これは、好ましくは、比較的少量の流量に限定される。ブリード流のうちの幾分かの量は、意図的に可能にされる場合があり又は先端部130及び弁座132の寸法又は形状の通常の製造上のばらつきに起因して生じる場合がある。シール部材、例えばOリング138が、流体が調節ロッド128の先端部130を越えて中央通路116の上側部分内に流れるのを妨げ又は阻止する。
上述したように、リヤショック38は、本体部分40に結合されたリザーバ本体部分44を更に有する。リザーバ本体部分44の内部チャンバは、通路140aを介して圧縮チャンバ104と連通し、この通路140aは、本体部分40のダンパ管48の閉鎖端部60を貫通して延びている。これにより、作動油は、リザーバ本体部分44と圧縮チャンバ104との間を動くことができる。ショック38が伸縮しているときにピストンロッド78がダンパ管48の内部の漸変容積を占める例えば図示のリヤショック38では、圧縮中に、減衰流体は、本体部分40からリザーバ本体部分44に流れてダンパ管48内のピストンロッド78の漸増容積を許容し、リバウンド中、リザーバ本体部分44から本体部分40に動いてダンパ管48からのピストンロッド78の抜け出しにより生じるダンパ管48内の増大容積に取って代わる。かくして、リザーバ本体部分44は、リヤショック38内の減衰流体のためのリザーバ又はアキュムレータとして働く。
図2及び図8〜図14を参照すると、リザーバ本体部分44は、リザーバ管142を有する。リザーバ管142は、その両端が閉鎖されている。仕切り、例えば浮動リザーバピストン144がリザーバ管142の内部に位置決めされており、この浮動リザーバピストンはリザーバ管142の内部空間をリザーバチャンバ146とガスチャンバ148に分割している。図示の構成では、浮動リザーバピストン144は、リザーバ管142の内面と密封摺動係合関係をなしている。リザーバ管142の内面とリザーバピストン144との間の実質的に流体密のシールがシール部材150により提供されている。他の適当なシールも又使用できるが、シール部材150は、好ましくは、断面が実質的に円形の環状シールである。浮動ピストン144が比較的簡単な構造及び信頼性のある性能に起因して現時点においては好ましいが、他形式の仕切り、例えばブラダ装置を用いることができる。加うるに、圧縮部材、例えば独立気泡部材をリザーバ管142内に設けることができ、この独立気泡部材は、潰れてリザーバチャンバ146のサイズを拡大し、膨張してリザーバのサイズを減少させ、それによりそれぞれ、本体部分40から減衰流体を受け入れたり減衰流体を本体部分40に戻す(又は、その戻りを促進する)。
端キャップ152がリザーバ管142のリザーバチャンバ146の部分を閉鎖している。図示の構成では、端キャップ152は、リザーバ管142の上端部のところに配置されている。上述したように、管組立体46は、端キャップ152に取り付けられて、それにより、リザーバ本体部分44は、ダンパ管48の閉鎖端部60とインターフェイスして、作動油がダンパ管48の閉鎖端部60の通路140からリザーバ本体部分44のリザーバチャンバ146に流れることができるようになっている。具体的に説明すると、好ましくは、端キャップ152は、流体を管組立体46とリザーバ管142の内部との間で移送することができる流体通路153を備えている。
第2の端キャップ154がリザーバ管142のガスチャンバ148の端部を閉鎖し、この端部は、図示の構成では、リザーバ管142の下端部である(図8に示されると共に自転車20に組み付けられている)。キャップ154は、ガス、例えば窒素をガスチャンバ148に追加したりこれをガスチャンバ148から抜き出す弁組立体156を有している。ガスチャンバ148内の加圧ガスにより浮動リザーバピストン144に及ぼされる正圧により、浮動リザーバピストン144は、圧力をリザーバチャンバ146内の作動油に及ぼす。かかる構成では、正圧により、ガスチャンバ148は、拡張して、作動油がリザーバチャンバから圧縮チャンバ内に流れるときに利用可能になる空間を有するようになる。また、これにより、リヤショック38のリバウンド運動中におけるリザーバ本体部分44から圧縮チャンバ104内への流体の流れが促進される。
圧力作動型弁組立体及び慣性作動型(又は加速度作動型)弁組立体がリザーバ本体部分44内に設けられている。慣性弁組立体160は、リザーバシャフト164により摺動可能に支持された慣性質量体162を有する。慣性質量体162は、付勢部材、例えばばね166によって閉鎖位置に軽く付勢されている。図示の構成では、閉鎖位置は、慣性質量体162の開放位置に対して上方にある。慣性弁組立体160は、開放形態にあるとき、リザーバチャンバ146と圧縮チャンバ104の連通を可能にする。換言すると、慣性弁組立体160が開放形態にあるとき、作動油は、圧縮チャンバ104から通路140及びリザーバシャフト164の内部通路168を通って流れ、そしてリザーバシャフト流体ポート170から出てリザーバチャンバ146内に流入することができるようになっている。
好ましくは、圧力作動型弁組立体は、主要弁組立体172及び二方向又はブリード弁組立体174を有する。主要弁組立体172は、慣性弁組立体160の上方に又はリザーバ本体部分44内の圧縮流体の流れ方向に対して慣性弁組立体160の上流側に設けられている。主要弁組立体172は、リザーバ管142内に固定されていて、リザーバチャンバ146と圧縮チャンバ104(本明細書において、主要弁チャンバ182という)と連通するリザーバ管142の内部の上側部分との間の仕切りとなるピストン又は仕切り180を有する。図示の構成では、仕切り180は、端キャップ152によって支持され、この仕切りは、好ましくは、端キャップ152の雌ねじと螺合する雄ねじを有する。仕切りは、中央に配置された開口部を有し、この開口部は、リザーバシャフト164を支持している。図示の構成では、開口部は、リザーバシャフト164の雄ねじと螺合する雌ねじを有する。リザーバシャフト164の直径が減少している肩部分184が形成されている。肩184は、環状ワッシャ186を支持している。環状ワッシャ186は、主要弁組立体172の圧縮流れシムスタック188をピストン180の下面にあてて支持している。ワッシャ186は又、慣性質量体162の閉鎖位置を定めるよう慣性質量体162のための上側停止部となっている。
図示のように、仕切り180は、1つ又は2つ以上の軸方向圧縮流れ通路190及び1つ又は2つ以上の軸方向補充ポート192を有している。圧縮流れシムスタック188は、圧縮流れ通路190を通る作動油の流量を調節する。一実施形態では、ピストン54がダンパ管48内で約0.05m/秒の速度で動くことができるようにする流量で作動油が圧縮流れ通路190を通って流れることができるようにするほど圧縮流れシムスタック188を撓ませるためには、圧縮流れシムスタック188に50ポンド〜75ポンド(22.68〜34.02kg)の力を及ぼすことが必要である。別の実施形態では、ピストン54がダンパ管48内で約0.05m/秒の速度で動くことができるようにするためには、圧縮流れシムスタック188には25ポンド〜50ポンド(11.34〜22.68kg)の力を及ぼすことが必要である。
或る特定の実施形態では、少なくとも約25ポンド(11.34kg)、35ポンド(15.88kg)、45ポンド(20.41kg)、55ポンド(24.95kg)、65ポンド(29.48kg)又は75ポンド(34.02kg)の力が圧縮流れシムスタック188に及ぼされる場合、シムスタック188は、撓み、それにより減衰弁を開く。具体的に説明すると、圧縮流れシムスタック188は、ピストン54がダンパ管48内で約0.05メートル/秒の速度で動くことができるようにするほど撓む。
しかしながら、圧縮流れ通路190を通る作動油の流量を調節するため、一連のポートを備えた流れ要素をシムスタック188に換えて用いても良い。一般に、本明細書において説明しているシムスタックのうちのどれであっても、リヤショック38を構成する種々のコンポーネントを通る作動油の流量を調節する目的で、一連のポートを備えた流れ要素で置き換えることができ、又はかかる流れ要素で補強できる。加うるに、他の適当な装置も又使用できる。例えば、通路を通る減衰流体の流れを制御するための絞り板(付勢部材が設けられているかどうかを問わない)、エラストマー部材又は他の適当な方法も又使用できる。
軸方向圧縮流通路190は、累積的に穴あけ状態であるのが良く、それ故、仕切り180の作業表面積の10%〜50%又は25%〜35%にわたり作動油の通過を可能にし、かかる作業表面積は、仕切り180の周縁によって境界付けられた領域の面積として定義できる。図示の構成では、作業面積は、実質的に、リザーバ管142の内部空間の断面積に相当している。軸方向補充ポート192は、累積的に穴あけ状態であるのが良く、それ故、仕切り180の作業表面積の10%〜50%以上にわたり作動油の通過を可能にする。軸方向補充ポート192は、累積的に穴あけ状態であるのが良く、仕切り180の作業表面積の2%〜25%にわたり作動油の通過を可能にする。軸方向補充ポート192は、累積的に穴あけ状態であるのが良く、通路140を通って流れている流量にほぼ等しい、即ち、リザーバ本体部分44から本体部分40に流れている作動油の流量にほぼ等しい流量での仕切り180を通る作動油の通過を可能にする。
一実施形態では、圧縮流れシムスタック188は、リヤショック38の通常の動作圧力での圧縮流れ通路190を通る作動油の流れを可能にすれば、その流量を減少させるよう撓む構成になっている。或る特定の実施形態では、圧縮流れシムスタック188を構成するシムの各々は、好ましくは、金属合金で作られた曲げ可能な円板である。一実施形態では、互いに積み重ねられた直径約16mm、厚さ約0.15mmの5枚のシムは、ピストン54が約0.05m/秒の速度でダンパ管48内を動くことができるようにする流体流量で約75〜80ポンド(29.48〜36.29kg)の圧縮減衰力を生じさせる。別の実施形態では、互いに積み重ねられた直径約16mm、厚さ約0.15mmの4枚のシムは、ピストン54が約0.05m/秒の速度でダンパ管48内を動くことができるようにする流体流量で約65〜70ポンド(29.48kg〜31.75kg)の圧縮減衰力を生じさせる。別の実施形態では、互いに積み重ねられた直径約16mm、厚さ約0.15mmの3枚のシムは、ピストン54が約0.05m/秒の速度でダンパ管48内を動くことができるようにする流体流量で約55〜60ポンド(24.95kg〜27.22kg)の圧縮減衰力を生じさせる。別の実施形態では、互いに積み重ねられた直径約16mm、厚さ約0.15mmの2枚のシムは、ピストン54が約0.05m/秒の速度でダンパ管48内を動くことができるようにする流体流量で約45〜50ポンド(20.41kgkg〜22.68kg)の圧縮減衰力を生じさせ、以下同様である。別の実施形態では、外径約21mm、内径約8mm、厚さ約0.24mmの3枚のシムが約0.7mm皿形ピストン上に位置決めされると共に、約1インチ(2.54cm)/秒〜10インチ(25.4cm)/秒のシャフト速度で約250〜300ポンド(113.40〜136.08kg)の力を生じさせる外径約12mmピボットシム上に締め付けられている。これよりも少ない又は多い数のシムを有すると共に上述の減衰力よりも小さい又は大きい減衰力を生じさせるシムスタック形態も又使用できる。
本発明の圧縮流れシムスタック188は、リヤショック38の圧縮運動を減衰するよう働き、従って、この圧縮流れシムスタックは、作動油が、主要弁チャンバ182内の低い又は通常の動作圧力で圧縮流れ通路190を通って流れることができるよう撓むような構成になっているのが良い。一実施形態では、リヤショックの圧縮運動減衰の約90%以上は、リザーバ本体部分44内に設けられている圧縮流れシムスタック188によって達成され、これに対し、リヤショックの圧縮運動減衰の残部は、リヤショックの他のコンポーネント(例えば、本体部分40内に設けられている圧縮シムスタック114)によって達成される。別の実施形態では、リヤショックの圧縮運動減衰の約80%以上は、リザーバ本体部分44内に設けられている圧縮流れシムスタック188によって達成される。さらに別の実施形態では、リヤショックの圧縮運動減衰の約70%以上は、リザーバ本体部分44内に設けられている圧縮流れシムスタック188によって達成される。さらに別の実施形態では、リヤショックの圧縮運動減衰の約50%以上は、リザーバ本体部分44内に設けられている圧縮流れシムスタック188によって達成される。
上述したように、圧力作動型弁組立体は、二方向弁又はブリード弁174を更に有し、かかる弁は、圧縮方向とリバウンド方向の両方向において主要弁チャンバ182とリザーバチャンバ146との間の流体の流れを選択的に可能にする。ブリード弁174を圧力作動型弁(例えば加速度作動型弁とは対照的に)という場合がある。というのは、弁174は、主要弁チャンバ182とリザーバチャンバ146との間の圧力差に応動するからである。図示の構成では、ブリード弁174は、ニードル及びオリフィス型弁である。具体的に説明すると、好ましくは、調節ロッド194が端キャップ152から下方に延びている。調節ロッド194の上端部は、端キャップ152の中央開口部の雌ねじと螺合する雄ねじを有する。リザーバ調節ロッド194は、調節ロッド駆動部材196と回転的連携状態にあり、この調節ロッド駆動部材は、端キャップ152によって相対回転可能に支持されている。調節ノブ198が駆動部材196と一緒に回転可能に結合されている。調節ノブ134は、ユーザがショック38を分解することなく調節ノブ134に接近できるようリザーバ管142の外部に配置されている。調節ロッド194及び駆動部材196は、回転運動がこれら相互間に伝達されるが、並進運動が例えばスプライン付き連結部によって可能であるように構成されている。かくして、駆動部材196の回転(ノブ134の回転による)により調節ロッド194の回転が生じる。調節ロッド194と端キャップ152の間の螺合の結果として、調節ロッド194の回転の結果として、端キャップ152に対する調節ロッド194の同時並進又は軸方向運動が生じ、それにより、ブリード弁174を通る流体の流れを調節することができ、これについては以下において説明する。ノブ134と端キャップ152との間に設けられたボール形戻り止め機構体136が調節ノブ134の別々の調節位置をもたらしている。
調節ロッド194は、好ましくは、リザーバシャフト164内に設けられた計量ロッド流れポート202を通る作動油の流れを調節可能に制御する先端部194aを更に有している。先端部194aは、好ましくは、先端部194aの底端部(即ち、ポート202の最も近くに位置する端部)に向かって小さな断面直径までテーパしたテーパ付き表面を備えている。円錐形部分の最も大きな直径は、好ましくは、円筒形計量ロッド流れポート202の直径よりも大きく、円錐形部分の最も小さな直径は、好ましくは、円筒形計量ロッド流れポート202の直径よりも小さい。かかる構成では、計量ロッド流れポート202を通る作動油の流れを計量ロッド流れポート202中への調節ロッド194の先端部194aの前進によって減少させることができる。幾つかの構成例では、計量ロッド流れポート202を通る作動油の流れをブリード弁プラグ182の先端部194aと計量ロッド流れポート202の完全嵌合によって実質的に阻止することができる。しかしながら、流れのうちの幾分かの量は、先端部194aと計量ロッド流れポート202との間の隙間空間を通って生じる場合があり、これは、設計によって又はコンポーネントのうちで場合によっては先端部194a及びポート202のサイズ又は形状の通常の製造上のばらつきに起因して生じる場合がある。
有利には、図示のリザーバ本体部分44の全体的構造により、費用効果の良い仕方で製造できる減衰調節特徴部をショックアブソーバ38に設けることが容易である。例えば、好ましくは、仕切り180は、減衰流体を本体部分40から送り出す(通路153を介して)リザーバ管142の端部に設けられる。かくして、不必要な複雑さを追加しないで、外部から接近可能な調節特徴部(例えば、調節ロッド194及び関連のコンポーネント)を組み込むことができる。例えば、図示の構成では、調節ロッド194が減衰流体をリザーバ本体部分44に送り出す場合の起点となるリザーバ本体部分44の端部から延びているので、減衰流体は、容易に接近可能であり、調節ロッドは、過度に長いものである必要はない。具体的に説明すると、調節ロッド194は、浮動ピストン144のリザーバチャンバ146側でリザーバ本体部分44に入り、かくして、浮動ピストン144を貫通して延びる必要がないようにすることが有利である。調節ロッドが浮動ピストンを貫通して延びることが必要な構成では、調節ロッドと浮動ピストンとの間にシールを設けることが必要であり、それにより浮動ピストンに働く摩擦抵抗力が増大する。さらに、寸法公差(特に、同心性に関する寸法)は、妥当な寿命にわたるコンポーネントの組立て及び円滑な動作を可能にするよう厳密に制御されなければならない。かかる厳密に制御される公差により、ショックアブソーバの製造費が増大する。ブリード弁174の調節を可能にする調節ロッド194に加えて、主要弁172及び/又は慣性弁160は、好都合には、減衰流体を本体部分40から送り出す先となるリザーバ本体部分44の端部から接近可能であり、その結果、追加の外部から接近可能な調節機構体を例えば端キャップ152に組み込むことにより提供できるようになっている。
上述したように、仕切り180は、仕切り180を通るリバウンド流体流れを可能にする補充ポート192を更に有している。リバウンド流れシムスタック204が仕切り180の上面で補充ポート192を覆っている。図示の実施形態では、リバウンド流れシムスタック204は、付勢機構体、例えばばねによって好ましくは閉鎖位置に付勢されている単一なシムで構成されている。かくして、本明細書で用いられる「シムスタック」という用語は、1枚のシムを含む場合があり又は多数枚のシムを含む場合がある。図示の実施形態では、付勢機構体は、シム204と端キャップ152との間に位置決めされた少なくとも1つ、好ましくは多数枚の波形ワッシャ206である。好ましくは、波形ワッシャ206は、シム204を閉鎖位置に軽く付勢するが、シム204が比較的小さな開放力に応答して開くことができるようにする。図示の構成では、4枚の波形ワッシャ206が設けられ、単一の平べったいワッシャ208が波形ワッシャ206とシム204との間に介在して設けられている。かくして、リバウンド流れシム204は、流体が主要弁チャンバ182から補充ポート192を通ってリザーバチャンバ146に流れるのを実質的に阻止する一方で、リザーバチャンバ146から補充ポート192を通って主要弁チャンバ182内に至る流体の流れをそれほど妨げることはない。リバウンド流れシムスタック204は、その構成が好ましいが、図示の構成には限定されない。リバウンド流れシムスタック204は、上述の圧縮流れシムスタック188と同様な多数枚のシムで構成されるのが良い。
図示の実施形態では、リヤショック38のリバウンド運動の減衰制御手段は、有利には、少なくとも主として、リザーバ本体部分44内に設けられるのではなく、リヤショック38のショック本体内に設けられる。リバウンド流れ絞り又はリバウンド減衰手段が主としてリヤショック38のショック本体内に設けられるので、圧縮チャンバ104内への作動油の流れは、作動油が他の従来設計のリザーバ内に配置された流れ絞り装置又はシムスタックを通って吸い込まれ又は引き込まれるときに結果として生じる場合があるキャビテーション又は他の流れ妨害効果によって妨げられることはない。図示の実施形態では、リヤショックのリバウンド運動中、圧縮力がリバウンドチャンバ106内に設けられている作動油をリバウンド流れ通路122中に押し込み、かくして、もしそうではない場合に結果として生じることがあるキャビテーション又は他の流れ効率低下効果が回避される。圧縮減衰が主としてリザーバ本体部分44内で起こるようにすると共にリバウンド減衰が主として本体部分40内で起こるようにした場合のもう一つの利点は、各々によって生じる熱がシステム全体内の減衰流体の別々の部分に伝達されるということにある。
或る特定の実施形態では、リヤショック38のリバウンド運動減衰の少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%又は少なくとも50%、が本体部分40内で達成され、リヤショックのリバウンド減衰の残部は、リヤショックの他のコンポーネントによって(好ましくは、リザーバ本体部分44内で)達成される。一実施形態では、本体部分40内のこのリバウンド減衰は、本体部分40内に設けられたリバウンドシムスタック124によって実質的に達成可能である。
図12は、慣性弁160が閉鎖位置にあるときにおけるリザーバチャンバ146からリバウンド流れ通路192及びポート202を通る作動油の流れ並びにリバウンド流れシムスタック204の対応の好ましい撓み状態を示している。図示のように、好ましくは、リバウンド流れは、運動軸線沿いに慣性質量体162の側部に沿って且つ慣性質量体162の閉鎖方向に進む。かくして、有利には、リバウンド流体流れは、ショック38が圧縮運動からリバウンド運動に切り替わったときに慣性質量体162を迅速に閉鎖する傾向のある流体力を慣性質量体162に及ぼすことができる。
上述したように、慣性弁組立体160は、リザーバ管142内に設けられており、この慣性弁組立体は、リザーバシャフト164上に摺動可能に支持された慣性質量体162を含む。図13及び図14に示されているように、各々が好ましくは全体として円筒形の幾何学的形状を有する複数個の半径方向に延びるリザーバシャフト流体ポート170は、リザーバシャフト164を半径方向に貫通して延びている。リザーバシャフト流体ポート170は、通路168をリザーバチャンバ146に結合している。慣性質量体162は、常態では、付勢機構体、例えばばね166によって上方位置に付勢されており、それにより常態では、ポート170を閉鎖している。ばね166は、停止部210によって支持され、停止部210は、例えばねじ山付き連結部又は他の適当な装置によってリザーバシャフト164の下端部に固定されている。適当な加速力に応動して、慣性質量体162は、リザーバシャフト164に対して下向きの方向に摺動し、それによりポート170を開放し、これについては以下に詳細に説明する。
各リザーバシャフト流体ポート170の直径は、0.5mm〜5.0mmであるのが良い。図示のように、リザーバシャフト164は、好ましくは、各直径が約1.0mmに等しい全部で6つの等間隔を置いて設けられたリザーバシャフト流体ポート170を有している。別の実施形態では、各リザーバシャフト流体ポート170の直径は、約1.5mm以上である。別の実施形態では、各リザーバシャフト流体ポート170の直径は、約2.0mm以上である。別の実施形態では、各リザーバシャフト流体ポート170の直径は、約3.0mm以上である。さらに別の実施形態では、各リザーバシャフト流体ポート170の直径は、約4.0mm以上である。別の実施形態では、各リザーバシャフト流体ポート170の直径は、約5.0mm以上である。別の実施形態では、リザーバシャフト164は、リザーバシャフト流体ポート170の直径とは無関係に、2つ、4つ又は5つ以上のリザーバシャフト流体ポート170を有することができる。或る特定の実施形態では、リザーバシャフト流体ポート170の総断面積は、2平方ミリメートル〜100平方ミリメートル、2平方ミリメートル〜80平方ミリメートル、2平方ミリメートル〜60平方ミリメートル、2平方ミリメートル〜40平方ミリメートル、2平方ミリメートル〜20平方ミリメートル、2平方ミリメートル〜10平方ミリメートル又は2平方ミリメートル〜5平方ミリメートルである。或る特定の実施形態において、リザーバシャフト流体ポート170の総断面積は、12平方ミリメートル以下、10平方ミリメートル以下、8平方ミリメートル以下、6平方ミリメートル以下又は5平方ミリメートル以下である。
さらに、一実施形態では、慣性弁160を開放させ、ピストン54が約1.0m/秒の速度でダンパ管48内を動かすようにする上向きの加速力がリヤショック38のリザーバ本体部分44に加えられると(例えば、自転車20が隆起部に遭遇したとき)、慣性弁160を構成しているコンポーネントは、好ましくは、作動油の事実上全てがリザーバシャフト流体ポート170を経てリザーバチャンバ146内に流れ、従って、作動油のうちのほんの僅かな量(もしあれば)がピストン54のその運動速度で圧縮流れ通路190を通って流れるように構成される。しかしながら、この実施形態の慣性弁160は、好ましくは、リヤショック38がピストン54を約4.0m/秒の速度でダンパ管48内を動かすようにするより過酷な隆起部に遭遇したとき、慣性弁160を構成しているコンポーネントが、好ましくは、リザーバチャンバ146内に流れ込む作動油の全流量のうちの約20%以上がリザーバシャフト流体ポート170を通って流れ、リザーバチャンバ146内に流れ込む作動油の全流量の約80%以下が圧縮流れ通路190を通って流れるように構成されるような構成になっている。
或る特定の実施形態では、リヤショック38がピストン54を約4.0m/秒の速度で動かすような過酷な隆起部に遭遇したとき、慣性弁160を構成しているコンポーネントは、好ましくは、リザーバチャンバ146内に流れ込む作動油の全流量の少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%又は少なくとも35%が慣性質量体162によって閉鎖可能な通路以外の通路(例えば、図示の実施形態では、圧縮流れ通路190及びブリード弁ポート200に)を通って流れるよう構成される。
或る特定の実施形態では、慣性弁160は、好ましくは、リヤショック38がピストン54を約4.0m/秒の速度でダンパ管48内を動かすようにするより過酷な隆起部に遭遇したとき、慣性弁160を構成しているコンポーネントが、好ましくは、リザーバチャンバ146内に流れ込む作動油の全流量のうちの10%以下、20%以下、30%以下、40%以下、50%以下又は60%以下が慣性質量体によって閉鎖可能な通路を通って流れるように構成されるような構成になっている。
慣性質量体162は、好ましくは、比較的高密度の材料、例えば高密度金属、例えば真鍮で作られ、好ましくは、約2オンス(56.7g)以下の重さを有する。別の実施形態では、慣性質量体162は、好ましくは、約1.5オンス(42.5g)の重さを有する。別の実施形態では、慣性質量体162は、約32グラム即ち1.13オンスの重さを有する。別の実施形態では、慣性質量体162は、好ましくは、約1オンス(28.35g)以下の重さを有する。さらに別の実施形態では、慣性質量体162は、好ましくは、約0.5オンス(14.18g)以下の重さを有する。慣性質量体162は、好ましくは、慣性質量体162の長手方向中心を通る主円筒形通路及び更に慣性質量体162の内面に設けられた環状溝212以外の軸方向通路又は他の複雑精巧な内部特徴部若しくは輪郭が比較的ない。かかる通路及び複雑精巧な内部特徴部若しくは輪郭が設けられていない場合、慣性質量体162は、他の従来設計と比較して、有利には、製造が容易であり、内面に対する実質的なばり取りを必要とせず、リザーバシャフト164に引っ掛かり又はくっつく恐れが低い。環状溝212は、好ましくは、リザーバシャフト164の外面に接触する場合のある慣性質量体162の内面の表面領域の広さを制限し、それ故、2つのコンポーネント相互間の摩擦抵抗力の大きさを制限するよう慣性質量体162の内面に形成される。好ましくは、慣性質量体162は、質量と流れ抵抗の比を増大させるよう流線型の幾何学的形態を有する。加うるに、慣性質量体162の下端部は、付勢ばね166の上端部を受け入れる凹部214を有し、この下端部は、付勢ばね166の一端部と接触するばね受座を構成する。図示の構成では、慣性質量体162は、慣性質量体162を半径方向に貫通して延びて凹部214中に開口した1つ又は2つ以上、好ましくは一対の軸方向ポート216を有する。ポート216は、慣性質量体162が停止部210の運動を妨げないよう下方に動いているときに慣性質量体162と停止部210との間から流体を排出するのを助けることができる。幾つかの実施形態では、慣性質量体162は、慣性質量体162の外部周りに環状溝(図示せず)を更に有するのが良い。
上述したように、ばね166は、慣性質量体162がリザーバシャフト流体ポート170の開口部を覆って通路168からリザーバチャンバ146への流体の流れを実質的に阻止する上方又は閉鎖位置に付勢する。好ましくは、慣性質量体162が閉鎖(上方)位置にあるとき、リザーバチャンバ146への流れは、主として、仕切り180の圧縮流れ通路190を介して起こる。図11は、慣性弁160が閉鎖位置にある場合における、通路168から仕切り180の圧縮流れ通路190を通ってリザーバチャンバ146に至る作動油の流れ並びに圧縮流れシムスタック188の対応の好ましい撓み状態を示している。しかしながら、仕切り180の圧縮流れ通路190を通ってリザーバチャンバ146内に至る作動油の流路(しかしながら、必ずしも流量ではない)は、慣性弁160が開放位置にある場合であっても図11に示されている通りであるのが良い。
上述したように、慣性質量体162は又、ばね166の付勢力に抗して下方又は開放位置に動くことができる。図13及び図14に示されている開放位置では、慣性質量体162は、リザーバシャフト流体ポート170の少なくとも一部分を開けて又は露出させて流体がこれを通って流れることができるようにし、圧縮減衰率の減少が達成される。停止部210は、好ましくは、慣性質量体162のための最も下に位置する停止面として働く。図示の構成では、好ましくは、作動油は、通路168からリザーバシャフト流体ポート170を通って流れ、そして慣性質量体162上でこの周りに沿って流れてリザーバチャンバ146内に流入する。注目すべき事として、慣性質量体162が開放位置にある間、作動油は、図11に示されているように、慣性弁を通って流れるのに加えて、依然として、通路168から仕切り180の圧縮流れ通路190を通ってリザーバチャンバ146内に流れることができる。
注目されるように、慣性質量体162を開放位置及び閉鎖位置を有するものとして説明する場合があるが、慣性質量体162は、同様に、閉鎖位置におけるリザーバシャフト流体ポート170を通る流れを完全には阻止しない。すなわち、代表的には、慣性質量体162及びこれが摺動するリザーバシャフト164との間には流体密シールが作られない。かくして、幾分かの流体が慣性弁160の閉鎖位置においてこれを通って流れることができる。かかる流体の流れを「ブリード流」という場合が多く、これは、好ましくは、比較的僅かな流量に限定される。慣性質量体162とリザーバシャフト164との間に流体密シールを形成するためには、製造するのに費用が高くつき、しかも、比較的小さな加速力に応動したリザーバシャフト164上でのこれに沿う慣性質量体162の運動を妨げる場合のある正確な寸法上の公差が必要である。
図9〜図12を参照すると、図示の慣性弁160の別の有意な特徴は、リザーバシャフト164の外部に沿ってぐるりと設けられた周方向溝218である。溝218の中央平面は、好ましくは、リザーバシャフト流体ポート170の各々の軸方向中心線と整列している。溝218は、リザーバシャフト流体ポート170から流出する作動油の圧力を等しくする流れアキュムレータとして機能する。
溝218は、好ましくは、上側面取り部分、弧状部分及び下側面取り部分を有するのが良い。溝218の幅(即ち、上側面取り部分、弧状部分及び下側面取り部分の幅の合計)は、好ましくは、リザーバシャフト流体ポート170の各々の直径よりも大きく、従って、溝218は、リザーバシャフト流体ポート170の各々の上下に延びると共に相当な量の流体が溝218内に溜まる事ができるようになっている。別の実施形態では、溝218は、ポート170の直径よりも小さいのが良い。溝218により、流体圧力を慣性質量体162の内周部にわたって均等に分布させることができる。流体圧力の均等分布により、好ましくは、慣性質量体162の中心をリザーバシャフト164に一致させる傾向のある力が生じ、かくして、もしそのように構成されていなければ、個々のリザーバシャフト流体ポート170の配列場所若しくは向き又はこれら個々のリザーバシャフト流体ポート170相互間のサイズのばらつきに起因して生じる流体圧力の不一致を部分的又は完全に補償する。かかる特徴は、リザーバシャフト164上における慣性質量体162の引っ掛かりを阻止するのに役立つ。リザーバシャフト164上における慣性質量体162の引っ掛かりを阻止することは、自転車用途では有益である。というのは、慣性弁は、比較的僅かな加速力を慣性弁160に伝達するに過ぎない場合のあるテレーン特徴に対して非常に敏感であることが望ましいからである。
溝218の好ましい形態は、慣性質量体162がその閉鎖位置に戻っているときにリザーバシャフト流体ポート170の各々から流出する作動油流れのほぼ一様な(即ち、同時の)遮断をもたらす。これは、慣性質量体がリザーバシャフト流体ポート170によってオフセンター状態に押されないようにするうえで有益である。上述したように、溝218の好ましい形態は又、有利には、リヤショック38の圧縮運動中、慣性質量体162がリザーバシャフト流体ポート170を通る作動油の非一様な流れ又はリザーバシャフト流体ポート170を通って流れる作動油によって及ぼされる非一様な力によってオフセンター状態に押されないようにする。
加うるに、面取りは、有利には、慣性質量体162がその閉鎖位置に戻っているときにリザーバシャフト流体ポート170を通る作動油の流れの漸次遮断を可能にする。具体的に説明すると、慣性質量体162がリザーバシャフト流体ポート170に対して下方に動くようにする加速度が減少し、慣性質量体162を上方に動かしているとき、慣性質量体162は、まず最初に、下側面取り部分から遠ざかって流れる作動油の流れを止め、かくしてこの位置においてリザーバシャフト流体ポート170を通って進む作動油の流れのほんの一部分を遮断する。下側面取り部分の最も下の部分から流れる作動油は、下側面取り部分の上側部分から流れる作動油よりも少ない。かくして、慣性質量体162が引き続き上方に動いているとき、慣性質量体は、下側面取り部分から遠ざかって流れる作動油のうちの多くの量を次第に遮断する。慣性質量体162が引き続き上方に動いているとき、慣性質量体は、弧状部分の大部分及び最終的に上側面取り部分の大部分を次第に閉塞し、ついには、リザーバシャフト流体ポート170を通って流れる作動油の実質的に全てが止められるようになる。
図示のリザーバ本体部分44は、慣性弁160を有しているが、他の構成例では、慣性弁160を省いても良く又はこれに代えて他の圧縮又はリバウンド流体流れ弁を用いても良く、或いは、慣性弁160に他の圧縮又はリバウンド流体流れ弁を追加しても良い。しかしながら、慣性弁160は好ましい。というのは、慣性弁160は、テレーン誘発力をライダ誘発力から区別するよう働くからである。テレーン誘発力は、一般に、車両(例えば自転車)が隆起部に遭遇することによって引き起こされる全体として上向きの(圧縮)力である。ライダ誘発力は、自転車用途の場合、典型的には、ライダのペダル踏み行為又は他の力強い動きから生じる持続時間が短く大きさが比較的大きい力である。慣性弁は、変形例として、圧縮力ではなく、リバウンド力に応動して動作するよう構成されても良い。
図示の実施形態では、ショックアブソーバ38の特徴、観点及び利点のうちでとりわけ性能、耐久性、寿命、調節性及び製造性を向上させる多数の特徴を備えている。例えば、リザーバチャンバ146内の流体流れの方向は、ショックアブソーバ38の圧縮運動とリバウンド運動の両方の際に慣性質量体162の側を進む傾向がある。加うるに、この流れは、慣性質量体162の運動軸線と全体として一致する傾向がある。かくして、有利には、リザーバチャンバ146内の流体の流れは、圧縮中、慣性質量体162を開放するのを助け、リバウンド運動中、慣性質量体162を閉じるのを助ける傾向がある。したがって、上述の特徴に加えて、かかる構成により、流体が圧縮運動とリバウンド運動の一方又は両方の際に慣性質量体から隔離される構成と比較して、慣性弁160の感度又は敏感性が一段と向上する。
加うるに、上述したように、ショックアブソーバ38の圧縮減衰属性は、好ましくは、主として、リザーバ本体部分44内の圧縮減衰弁(例えば、主要弁組立体172及びブリード弁組立体174)の影響を受ける。したがって、本体部分40からリザーバ本体部分44に押し退けられる減衰流体の量が多ければ多いほど、減衰流体の流れを操作して所望の減衰効果を生じさせる可能性がそれだけ一層高くなる。例えば、リザーバ本体部分44(又は、主要減衰弁が配置されている場所であればどこでも)内に導入される減衰流体の量が多ければ、より多くの別個の減衰回路を利用することができると共に/或いはより多くの調節可能な減衰弁を設けることができる。
有利には、図示の本体部分40のダンパコンポーネント(例えば、ダンパ管48及びピストンロッド78)は、主ダンパがショックアブソーバ38の圧縮中、実質的にポンプとして機能するよう構成されている。すなわち、本体部分40のダンパコンポーネントは、圧縮中、ダンパ管48の全有効流体量の大部分を本体部分40からリザーバ本体部分44に移すよう構成されている。図示の構成では、かかるポンプ送り作用は、主として、ダンパ管48の内径に対して大きな外径のピストンロッド78を用いることによって達成される。したがって、ピストンロッド78は、完全圧縮ストロークの際、ダンパ管48内の全流体のうちの相当多くの量をリザーバ本体部分44に押し退ける傾向がある。押し退けられた流体の特定の割合は、すぐ以下に説明するコンポーネント又はショックアブソーバ38の寸法又は特性の考えられる組み合わせの任意のものについて計算できる。例えば、ダンパ管48の全容積、ピストンロッド78の全体積及びかくして押し退け割合は、例えば以下に説明する考えられるショックの長さ、ピストンロッド78の直径、ダンパ管48の直径、隙間又は比の各々に基づいて計算でき又は合理的に推定できる。好ましくは、ダンパ管48内の減衰流体の少なくとも約30%は、完全圧縮ストロークの際に、ピストンロッド78により押し退けられる。幾つかの構成例では、ダンパ管48内の減衰流体の少なくとも約40%、45%、50%、60%、70%、80%又は90%は、完全圧縮ストロークの際、ピストンロッド78により押し退けられる。現時点において好ましい一構成例では、ダンパ管48内の減衰流体の約46%が完全圧縮ストロークの際、ピストンロッド78により押し退けられる。ダンパ管48内の全流体の相当多くの割合の押し退けは又、本体減衰ピストン54(即ち、ピストン押し退け装置)を通る流体の流れを可能にしないようにすることによっても達成できる。しかしながら、好ましくは、上述したように、圧縮中に本体減衰ピストン54を通る流体の流れは、ショックアブソーバ38の次のリバウンド運動中に使用できる。ピストン押し退け装置では、リバウンドチャンバを充填する何らかの方法が必要であり、これは、手頃な製造費及び重量を維持しながら一体型リヤショックアブソーバ装置(即ち、ばねと減衰機能の両方)において達成するのが困難である。加うるに、図示の構成では、本体部分40及びリザーバ本体部分44は、マスタ/スレーブ関係を有するものとして説明できる。例えば、圧縮運動中、ショックアブソーバ38の減衰作用は、好ましくは、主として、リザーバ本体部分44内の圧縮減衰回路によって制御される。かくして、リザーバ本体部分44は、本体部分40をスレーブとした場合にマスタである。というのは、リザーバ本体部分44は、運動を制御し、本体部分40は、リザーバ本体部分44内の減衰作用によって許容されるように動くからである。リバウンドの際、役割を逆にすることができる。例えば、リバウンド減衰は、好ましくは、主として、本体部分44のリバウンド減衰回路によって制御され、本体部分40は、リバウンド流体の流れを制御するマスタとして働く。リザーバ本体部分44のリバウンド回路内の流れは、本体部分40のリバウンド減衰回路によって制御され、かくして、本体部分40のリバウンド減衰回路に対してスレーブとして作用する。
好ましい構成では、自転車用リヤショックアブソーバ38との関連において、ピストンロッドの外径は約6mm〜約20mm、より好ましくは約8mm〜約20mmである。しかしながら、ピストンロッドの外径は、約9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm又は19mmであるのが良い。特に好ましい一構成では、ピストンロッドの外径は、約12mmである。さらに、他の構成では、他の要因又は用途を考慮に入れて、ピストンロッドの外径は、上述の寸法よりも大きくても良く又は小さくても良い。好ましい構成では、ダンパ管内径は、約8.4mm〜約35mmである。より好ましくはダンパ管の内径は、約14mm〜約21mmである。現時点において好ましい実施形態としてのダンパ管の内径は、約17.7mmである。しかしながら、ダンパ管の内径は、好ましくはピストンロッド78の外径を考慮に入れると共に適当な密封装置を受け入れる2つのコンポーネント相互間の隙間の所望の大きさを設けた状態で、約9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、25mm、26mm、27mm、28mm、29mm、30mm、31mm、32mm、33mm又は34mmであっても良い。好ましくは、最小直径の隙間は、全体で少なくとも約1.5mm(即ち、半径方向隙間が約0.75mmである)。好ましい構成では、隙間は、全体として、約1.5mm〜約9.5mmである。より好ましくは、隙間全体は、約1.5mm〜約8mmである。しかしながら、隙間全体は、ショックアブソーバ38の寸法、用途又は他の関連の要因に応じて、考えられる寸法のうちとりわけ、約2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm又は9mmであるのが良い。
好ましい構成では、ダンパ管48の内径とピストンロッド78の外径の比は、約1.05:1〜約1.75:1である。現時点において好ましい構成では、この比は、約1.5:1、より具体的に言えば約1.48:1である。しかしながら、比は、約1.05:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1又は1.75:1であるのが良い。寸法が実質的に上述の範囲にあるピストンロッド外径及びダンパ管内径(好ましくは、約6〜20mmのピストンロッド外径、約8〜35mmのダンパ管内径、より具体的には、約12mmのピストンロッド外径、約17.7mmのダンパ管内径及び/又は以下に説明する長さ、動程及びてこの比の範囲の任意の組み合わせの範囲内)を有するショックアブソーバ38では、ダンパ管48の内径とピストンロッド78の外径の比は、約2.0:1又は約2.5:1という大きなものであるのが良い。
好ましいショックアブソーバ38は、約6.5〜約10.25インチ(16.51〜26.04cm)、より好ましくは約6.5〜約9.5インチ(16.51〜24.13cm)の長さ(通常、アイレット62,66の中心相互間で測定される)を有する。特定の好ましい実施形態の長さは、約7.36インチ(18.69cm)である。ショックアブソーバ38の全動程は、好ましくは、約1〜約5インチ(2.54〜12.7cm)、約1〜約4インチ(2.54〜10.16cm)又は約1〜約3.5インチ(2.54〜8.89cm)である。ショックアブソーバ38の特に好ましい実施形態の動程は、約47mm(又は約1.85インチ)である。ショックアブソーバ38の特に好ましい実施形態は、自転車に取り付けられた時、約4:1、より具体的には約3.98:1のてこ比を有する。てこ比は、ショックアブソーバの動程と比較したホイール軸線の移動距離の比である。かくして、ホイールは、ホイールの移動範囲全体を通じて平均でショック動程の約4倍の長さにわたり移動する傾向にある。しかしながら、てこ比は、全動程範囲の任意特定の部分で様々であって良い。
図1〜図14を参照してリヤショック38の作用について説明する。上述したように、リヤショック38は、好ましくは、自転車フレーム22の可動部分相互間、例えば自転車20のメインフレーム部分24(例えば、シートチューブ27)とサブフレーム部分26との間に作動可能に設けられる。好ましくは、リヤショック38のダンパ管48の部分は、サブフレーム部分26に連結され、空気スリーブ50(及びかくしてピストンロッド78及びピストン54)は、シートチューブ27に連結される。図1に示されているように、リザーバ本体部分44は、好ましくは、リヤアクスルの近くで自転車20のサブフレーム部分26に連結されている。リヤショック38は、圧縮運動とリバウンド運動の両方を行うことができる。
自転車20の後輪30が隆起部によって衝撃を受けると、サブフレーム部分26は、メインフレーム部分24に対して回転し、リヤショック38を圧縮する傾向がある。慣性質量体162は、閉鎖位置のままであるようにばね166の力によって付勢される。慣性質量体162がばね166の力に打ち勝って開放位置まで動き、流体が通路168からリザーバシャフト流体ポート170を通ってリザーバチャンバ146内に流れるようにするためには、リザーバ本体部分44の長手方向軸線に沿ってこのリザーバ本体部分の受ける加速度は、しきい値を超えなければならない。
リヤショック38の圧縮運動のためには(即ち、ピストン54がダンパ管48内に動くようにするためには)、ピストンロッド78により押し退けられた流体は、リザーバチャンバ146内に流れなければならない。しかしながら、慣性質量体162がリザーバシャフト流体ポート170に対して閉鎖位置にある場合、流体は、リザーバチャンバ146内への流体の流れは、好ましくは、実質的に妨げられる。慣性弁160が閉鎖位置にあるとき、リヤショック38は、好ましくは、実質的に硬直状態のままである。上述したように、圧縮チャンバ104からリザーバチャンバ146へのブリード弁174を通る流体の流れのうちの幾分かの量が好ましくは許容される。しかしながら、好ましくは、ブリード弁174を通る流体の流れは、ブリード弁174が主として所与の期間にわたり(比較的短い期間にわたり)、ショック38の停動又はサグ(sag)を許容することができるレベルまで制限される。ブリード弁174を通る流れは、好ましくは、ショック38がブリード弁174だけを通る流体の流れへの応答の際に隆起部に応動することができるようにするには不十分である。
しかしながら、慣性弁160が閉鎖位置のままである場合であっても、流体は、依然として、圧縮チャンバ104からリザーバチャンバ146に移ることができる。ただし、リヤショック38に加わる圧縮力が主要弁チャンバ182内の流体圧力を圧縮流れシムスタック188が開き、流体が主要弁チャンバ182から圧縮流れ通路190を通ってリザーバチャンバ146内に流れることができるようにする圧力しきい値まで増大させるのに十分な大きさのものであることを条件とする。
本明細書において説明した形態では、リヤショック38の正又は伸長ばね力は、主要空気チャンバ86内のガスの圧力によって生じる。圧縮の際の減衰率は、主として、リザーバ本体部分44内の圧縮流れ通路190を通る流れ並びに本体部分40内の圧縮シムスタック114により生じるかなり低い減衰効果により定められる。
十分な大きさの加速度がリザーバ本体部分44の長手方向軸線(即ち、慣性質量体162の移動軸線)に沿って与えられる場合、慣性質量体162は、ばね166の付勢力に打ち勝ってリザーバシャフト164に対して下方に動いて開放位置に至る。慣性弁160が開放位置にある状態で、作動油は、圧縮チャンバ104からリザーバシャフト流体ポート170を経てリザーバチャンバ146内に押し退け可能である。かくして、リヤショック38は、圧縮可能であり、圧縮減衰は、好ましくは、主として、リザーバ本体部分44内の圧縮流れ通路190並びにリザーバシャフト流体ポート170を通る流れによって定められる。
慣性質量体162の重さは、ばね166のばね定数及びばね166に加えられた予荷重は、慣性質量体162がばね166の付勢力に打ち勝って開放位置に動くための最小しきい値を定める。ばね166のばね定数及びばね166に加えられる予荷重は、好ましくは、リザーバ本体部分44の軸方向に加わる上向きの加速度がゼロの場合、慣性質量体162がばね166によって閉鎖位置に付勢されるよう選択される。しかしながら、慣性質量体162は、好ましくは、重力(G)の0.1〜3倍の加速度を受けた場合、ばね166の付勢力に打ち勝つ。好ましくは、慣性質量体162は、0.25〜1.5Gである加速度を受けると、ばね166の付勢力に打ち勝つ。しかしながら、所定のしきい値は、上述の値からばらつきがあっても良い。
図13及び図14を参照すると、慣性質量体162が開放位置にあるとき、ばね166は、慣性質量体162を閉鎖位置に向かって動かす傾向のある付勢力を慣性質量体162に及ぼす。有利には、ばね付勢力及び流体抵抗を考慮に入れなければ、慣性質量体162は、リザーバチャンバ146内に入っている流体内で自由に動き、それにより、後輪30に加わる力に対する慣性弁160及びそれ故にリヤショック38の応答性を高める。慣性弁160は、隆起部のある表面条件と滑らかな表面条件を区別し、それに従って減衰率を変える。滑らかな表面条件下では、慣性弁160は、閉鎖位置のままであり、減衰率は、望ましくは、安定し、それ故自転車20のライダの動きに起因した懸架運動を阻止する。最初の影響のある隆起部に遭遇すると、慣性弁160は、開いて、有利には、隆起部をリヤショック38によって吸収することができるよう減衰率を下げる。
リヤショック38が主要弁組立体172を通る流体の流れ若しくは慣性弁160を通る流体の流れ又はこれら両方によっていったん圧縮されると、主要空気チャンバ86と第2の空気チャンバ102の組み合わせにより生じるばね力が、ダンパ管48を空気スリーブ50から遠ざける傾向がある。リヤショック38がリバウンドするようにするため、リザーバ管142を出たピストンロッド78の体積に等しい流体の量がリザーバチャンバ146から圧縮チャンバ104内に引き込まれなければならない。リバウンド流れシムスタック204により提供される望ましくは軽い抵抗に抗して主要弁組立体172の補充ポート192を通るこの方向における流体の流れが可能になる。力を浮動リザーバピストン144に及ぼすガスチャンバ148内のガス圧力は、この補充流れを助けることができる。かくして、リバウンド減衰率は、主として、リバウンドシムスタック124の付勢力に抗する主要ピストン54のリバウンド流れ通路122を通る流体の流れによって定められる。
上述したように、本発明のリヤショック38は、慣性質量体162及びリザーバシャフト164を備えた慣性弁160を有し、リザーバシャフト164には、慣性質量体162に加える流体圧力の均等な分布状態を生じさせ、それにより、慣性質量体162がリザーバシャフト164に引っかかるのを実質的に妨げ又は阻止するようリザーバシャフト流体ポート170と整列した周方向溝218が設けられている。慣性質量体162のオフセンター状態により、慣性質量体162は、リザーバシャフト164に接触することができ、それによりリザーバシャフト164上における慣性質量体162の運動を妨げる傾向のある摩擦を生じさせる。慣性質量体162の重さは比較的小さく且つ慣性質量体162を僅かな加速度に応動させることが望ましいことに起因して、慣性質量体162とリザーバシャフト164との間に働く摩擦は、慣性弁160の性能を深刻なほど損ね、慣性弁を全く不作動状態にする場合がある。オフセンター状態は、慣性弁160のコンポーネントを製作するのに必要な製造プロセスと関連した典型的なばらつきに起因して生じる場合がある。さらに、慣性質量体162の引っ掛かり効果は、慣性質量体162の内面又はリザーバシャフト164の外面上に存在するばりに起因して生じる場合がある。慣性質量体162は、有利には、全体として滑らかな内面を有しているので、慣性質量体162の内面に対するばり取り作業は、実質的に単純化され、引っ掛かりの恐れが実質的に軽減される。
図2及び図15を参照すると、好ましくは、ショックアブソーバ38はダンパ部分を分解しないで、サスペンション又は懸架ばね部分の少なくとも部分的分解を可能にするよう構成されている。かくして、サスペンションばねの日常的な点検整備は、ダンパからの減衰流体の排出を必要としないで、可能になる。したがって、サスペンションばねの日常的な点検整備は、非常に楽である。サスペンションばねは点検整備では、通常、サスペンションばねの1つ又は2つ以上のシール(例えば、シール90、シール70)の交換及び/又は潤滑が行われる。しかしながら、何らかの目的による空気スリーブ50の内部への接近が促進される。
図示の構成では、空気スリーブ50を端キャップ52から結合解除し、これをダンパ管48の閉鎖端部60に向かって滑らせることができる。管組立体46は、空気スリーブ50が空気ばねの点検整備を可能にするのに十分な距離にわたり管組立体46の管部分46aを通り過ぎることができるよう構成されている。図示のように、好ましくは、管部分46aは、ダンパ管48の長手方向軸線に対して90°未満の角度をなしてダンパ管48から出ている。より好ましくは、管部分46aは、ダンパ管48の長手方向軸線に対して75°未満、60°未満又は45°未満の角度をなしてダンパ管48から出ている。好ましい一構成では、この角度は、ダンパ管48の長手方向軸線に対して約45°である。加うるに、管部分46aは、好ましくは、空気スリーブ50の内部空間の直径よりも小さい最大幅(全体として端部のところの開口部の中心を互いに結ぶ線に垂直な方向における寸法)を有する。かくして、空気スリーブ50は、好ましくは、管部分46aを部分的に又は完全に通り過ぎることができる。
好ましくは、空気スリーブ50は、空気ばねピストン56のシール90が露出され又は接近可能であるのに十分な距離にわたり管部分46aを通り過ぎることができる。少なくとも1つの構成では、空気スリーブ50は、シール70がダンパ管48の閉鎖端部60を越えて進むのに十分な距離にわたり管部分46aを通過するのが良い。少なくとも1つの構成では、空気スリーブ50は、管部分46aを完全に通過するのが良い。必要ならば又は所望ならば、新たなシール(例えば、シール70及び/又は90)がリザーバ本体部分44又は端キャップ52を通過することができるようにし、そしてシールをそれぞれ空気スリーブ50又はピストン56に組み付けるのが良い。幾つかの構成では、端キャップ52は、減衰流体をダンパから放出することなく、ピストンロッド78から取り外し可能であるのが良く、交換用シールがピストンロッド78を通過するようにしてこれを空気スリーブ50又はピストン56に組み付けるのが良い。
図16及び図17は、図1〜図15のリザーバ44の別の実施形態の一部分を示しており、この場合、種々の特徴は図1〜図15のショックアブソーバの同一又は類似の特徴の参照番号を用いて示されている。図16及び図17には示されていないショックアブソーバの部分は、図1〜図15を参照して説明したショックアブソーバの部分と同一又はほぼ同じであるのが良く、或いは、本明細書の開示内容を考慮して当業者には明らかな任意適当な構造のものであって良い。図16及び図17のリザーバは、慣性弁組立体160の作動状態を少なくともショックアブソーバ38の或る特定の用途にあわせて、例えば、オフロード自転車(例えば、図1の自転車20)に使用するために促進する仕方で慣性弁組立体160を通る流体の流れを案内する流体流れ制御装置250を有している。具体的に説明すると、好ましい流体流れ制御装置250は、少なくとも或る特定の環境では、慣性質量体162が完全開放位置に向かって十分にいったん動くと、慣性質量体162を開放位置(図16の向きでは下方)に向かって押圧する傾向のある力を生じさせるよう働く。流体流れ制御装置250により生じる力は、慣性質量体162に作用する加速力が慣性質量体162を加速力だけで開放位置に維持するのに必要な程度を下回った後、慣性質量体162を開放位置に維持することができる。公知のように、加速力は、通常、ショックアブソーバ38の圧縮ストロークの完了に先立って慣性質量体162を開放位置に維持するのに必要な程度を下回って減少する。したがって、好ましい流体流れ制御装置250は、慣性質量体162が、加速力が減少する程度を越えて、好ましくは、圧縮ストロークの実質的に終わりまで、開放位置のままである期間を延ばすことができる。或る特定の構成では、流体流れ制御装置250は、慣性質量体162が所望の作動しきい値を下回る加速力に応答して開くのを阻止することができる。
図示の流体流れ制御装置250は、仕切り180と慣性質量体162との間に位置決めされた流れ本体又は流体偏向キャップ252を有する。流体偏向キャップ252は、望ましくは、リザーバシャフト164を包囲すると共に好ましくは慣性質量体162が完全閉鎖位置(図16の最も上の位置)に位置する場合、慣性質量体162の上端部を包囲する全体としてキャップ状又はボウル状の構造体である。流体偏向キャップ252は、リザーバシャフト164の肩184で支持され、この流体偏向キャップは、圧縮シムスタック188を仕切り180の下面にあてて支持している。
図示の流体偏向キャップ252は、ネック部分254及びベース部分256を有し、これら部分254,256は、一緒になって、図1〜図15の実施形態の環状ワッシャ186の機能を実行する。すなわち、ネック部分254は、リザーバシャフト164の肩184に当接し、シムスタック188を仕切り180に当てて固定する。ベース部分256は、慣性質量体162の上側停止部となる。ベース部分256の頂面は、慣性質量体162とベース部分256との間の接触面積を減少させてこれら表面相互間に取り込まれて、慣性質量体162がベース部分256から離れるのを阻止する傾向のある吸引効果を減少させるための溝256aを有するのが良い。変形例として、慣性質量体162又はベース部分256は、同様な目的を果たす突起を備えても良い。しかしながら、溝256aを設けることが好ましい。というのは、溝は、作るのが楽だからである。
流体偏向キャップ252は、側壁部分258を更に有し、この側壁部分は、ベース部分256から慣性質量体162に向かって(図16において下方)軸方向に延び、上述したように、好ましくは、慣性質量体162が完全閉鎖位置にあるときに、リザーバシャフト164の長手方向軸線に沿って慣性質量体162の上端部とオーバラップする。好ましくは、リップ260が側壁部分258の自由端部又は下端部から慣性質量体162に向かって半径方向内方に延びているが、このリップは、慣性質量体162と環状流れ通路又は隙間空間C(図17)を構成して慣性質量体162がリップ260に接触しないで、リザーバシャフト164上でこれに沿って上下に自由に動くことができるようになっている。
図示の慣性質量体162の上端部は、望ましくは、慣性質量体162の中間部分よりも小さい外径又は最大断面寸法を定め、かかる慣性質量体は、図1〜図15の慣性質量体162とほぼ同じ断面サイズのものである。加うるに、流体偏向キャップ252の側壁部分258の外径又は最大断面寸法は、好ましくは、慣性質量体162の中間部分の外径とほぼ同じである。かくして、キャップ252と慣性質量体162は、実質的にほぼ同じ外側の寸法形状を有し、その結果、減衰流体が圧力又は速度の実質的な変化なしに、流体偏向キャップ252及び慣性質量体162の側を比較的スムーズに流れることができるようになっている。
慣性質量体162の上端部の下に位置する慣性質量体162の中間部分262の外面は、慣性質量体162が完全閉鎖位置にあるとき、流体偏向キャップ252のリップ260と全体として整列する。中間部分262は、リップ260の各側(図18参照)を越えて延びる凹部を備えても良く、或いは、断面寸法形状が図16及び図17に示されている上端部とほぼ同一又は類似していても良い。
慣性質量体162の上端部は、半径方向外方に向いた表面を備えたリップ部分又はリップ264を有する。リップ部分264は、慣性質量体162の最も上に位置する端のところに設けられている。しかしながら、他の構成では、リップ部分264は、この最上端から間隔を置いて設けられても良い。リップ部分264は、望ましくは、上述したように流体偏向キャップ252のリップ260により構成される空間を通過することができる外側寸法形状を有する。かくして、図示の構成では、流体偏向キャップ252のリップ260と慣性質量体162のリップ部分264との間には、隙間空間Cが形成されている。隙間空間Cは、流体偏向キャップ252のリップ260と慣性質量体162のリップ部分264との間に直線距離(慣性質量体162の運動軸線に垂直な方向に見て)を定めるのが良い。しかしながら、他の構成では、隙間空間Cは、流体偏向キャップ252の他の部分(又は均等構造体)及び慣性質量体162の任意適当な部分によって構成されても良い。さらに、隙間空間Cは、慣性質量体162の運動軸線に垂直な方向から見てオフセットした方向に直線距離を定めても良い。一般的に言って、隙間空間Cを可動慣性質量体162及び慣性質量体162に対して制止している構造体(例えば、流れ本体)の任意の互いに協働する表面であって、慣性質量体162が開放又は部分開放位置にあるときに互いに隣接して位置する任意の協働する表面によって作ることができる。図示の構成では、リップ260,264は、一般に、慣性質量体162の上端部がポート170を閉塞しはじめるときとほぼ同じに又はその直前に互いに隣接して位置するようになる(慣性質量体162が図16及び図17において上方に動いているときに)。
図示の構成では、隙間空間Cは、リップ260とリップ部分264との間の直線寸法を定め、この直線寸法は、慣性質量体162の挙動に影響を及ぼす局所流体流れ動力学的状態を生じさせるようショックアブソーバ38の減衰流体流れ通路の他の部分に対して設定されるのが良い。例えば、図示の構成の隙間空間Cは、リザーバシャフト164の1つ又は複数のポート170の面積の合計に対して、開放位置から閉鎖位置への慣性質量体162の戻りを遅くするよう寸法決めされている。具体的に説明すると、図示の構成では実質的に環状である隙間空間Cの総流れ面積は、ポート170の面積の合計に対して局所流れ絞りを生じさせるよう設定されるのが良い。ポート170の面積の合計は、慣性質量体162により制御される流体流れに有効な総面積である。流れ絞りにより、流体偏向キャップ252の内部の圧力増大が生じ、それにより、慣性質量体162が流体偏向キャップ252の内部チャンバ266に入って閉鎖位置に戻るのを阻止する傾向にある力が慣性質量体162に加えられる。流体偏向キャップ252内の増大した圧力が実質的に圧縮ストローク全体の間、開放又は少なくとも部分開放位置に保持するのに十分なレベルでショックアブソーバ38の圧縮ストロークの実質的に全体の間(圧縮流体流れが存在する期間全体にわたり)存在するのが良い。変形例として、圧力の増大状況が個々の圧縮ストロークの持続時間よりも短い持続時間にわたって存在しても良い。かかる構成では、慣性質量体162は、個々の圧縮ストロークの終わりに先立って、閉鎖位置又は部分閉鎖位置に動く場合がある。しかしながら、好ましくは、流体流れ制御装置250は、慣性質量体162にだけ作用する加速力が慣性質量体162を開放位置に維持するのに十分な箇所を越えて慣性質量体162が開放又は部分開放位置に保持されるよう構成される。さらに、流体流れ制御装置250は、或る特定のテレーン誘発力により衝撃を受ける場合のある慣性質量体162の運動量に起因して慣性質量体162が閉鎖するのを阻止するよう動作可能である。同様に、隙間空間Cを設けることにより、チャンバ266とチャンバ266の外部に位置するリザーバチャンバ146の部分との間に圧力差を生じさせることにより慣性質量体162が所望のしきい値よりも小さい加速力に応答して開くのを阻止することができる。
一構成では、隙間空間Cにより定められる面積は、ポート170の面積の合計以下である。例えば、隙間空間Cにより定められる面積は、ポート170の面積の合計の約25%〜約100%であるのが良い。好ましくは、隙間空間Cにより定められる面積は、ポート170の面積の合計の約50%〜約90%であり、より好ましくは、ポート170の面積の合計の約75%〜約85%である。一般に、隙間空間Cの面積がポート170の面積の合計の大きな割合として定められている場合、慣性質量体162を開放状態に保持する傾向のある流体力が減少し、隙間空間Cの面積がポート170の面積の合計の少ない割合として設定されている場合、慣性質量体162を開放状態に保持する傾向のある流体力が増大する。
変形例として、幾つかの実施形態において利益をもたらすには隙間空間Cにより定められる面積がポート170の面積の合計以下であることが必ずしも必要ではないということが本発明者により発見された。流体流れ制御装置250は、隙間空間Cにより定められる面積がポート170の面積の合計以上であっても慣性質量体162の動きに影響を依然として及ぼすことができる。好ましくは、隙間空間Cにより定められる面積は、ポート170の面積の合計よりもそれほど大きくない。かかる構成では、隙間空間Cにより定められる面積は、ポート170の面積の合計の約100%〜約110%であるのが良い。好ましくは、隙間空間Cにより定められる面積は、ポート170の面積の合計の約100%〜約105%であり、より好ましくは、ポート170の面積の合計の約100%〜約102%である。
注目されるように、隙間空間Cは、図示の構成ではポート170に対して寸法決めされているが、慣性質量体162の運動に所望通りに影響を及ぼす所望の流体流れ動力学的状態を作るためには、隙間空間Cは、隙間空間Cから見て上流側又は下流側に位置した減衰流体の流れ通路の他の部分に対して寸法決めされても良い。図示の構成では、リザーバシャフト164のポート170は、慣性質量体162の上方に位置する流体偏向キャップ252の内部チャンバ266に流体を供給する。かくして、ポート170の面積の合計は、隙間空間Cにより定められる面積の相対的設定を行う上で圧縮流体流れ通路の都合の良い部分を提供する。しかしながら、隙間空間Cを圧縮流体流れ通路の別の部分に対して寸法決めすることも可能である。
図1〜図15を参照して上述したように、リザーバ44の圧力作動型弁組立体は、主要弁組立体172及びブリード弁組立体174を含む。有利には、図16及び図17の図示の構成例では、主要弁組立体172及びブリード弁組立体174を通る流体の流れは、隙間空間Cを通過することがない。かくして、隙間空間Cは、慣性質量体162の運動に影響を及ぼすことができるが、隙間空間Cは、主要弁組立体172及びブリード弁組立体174を通る流れを制限することがない。したがって、主要弁組立体172及びブリード弁組立体174を通る流体の流れを最適化することができる。というのは、流体の流れは、隙間空間Cにより制限されることがないからである。それと同時に、隙間空間Cは、最適化すると、主要弁組立体172及びブリード弁組立体174を通る流体の流れにマイナスの影響を及ぼさないで、慣性質量体162に所望に応じて影響を及ぼすよう最適化可能である。
図16及び図17のリザーバ44を有するリヤショック38の作動は、図1〜図14を参照して説明したリヤショック38の作動と実質的に同じである。リヤショック38は、自転車フレーム22の可動部分相互間、例えば自転車20のメインフレーム部分24(例えば、シートチューブ27)とサブフレーム部分26との間に作動可能に設けられている。リザーバ44は、好ましくは、リヤアクスルの近くで自転車20のサブフレーム部分26に連結されている。自転車20の後輪30が隆起部によって衝撃を受けると、サブフレーム部分26は、メインフレーム部分24に対して回転し、リヤショック38を圧縮する傾向がある。慣性質量体162は、閉鎖位置のままであるようにばね166の力によって付勢され、慣性質量体162は、リザーバ本体部分44の長手方向軸線に沿ってこのリザーバ本体部分の受ける加速度がしきい値を超えた場合にのみ開放位置まで動く。リヤショック38の圧縮運動の際、ピストンロッド78により押し退けられた流体は、ピストンロッド78によってダンパ管48からリザーバチャンバ146内に移される。
慣性弁160が閉鎖位置にあるとき、圧縮チャンバ104からリザーバチャンバ146への流体の流れがブリード弁174及び/又は主要弁172を介して起こる。ブリード弁174を通る圧縮流体流れは、隙間空間Cを通過しないでリザーバシャフト164の内部通路168を通る。主要弁172を通る圧縮流体流れは、隙間空間Cを通らないで、仕切り180の圧縮流れ通路190を通り、圧縮シムスタック188を通り過ぎ、そして流体偏向キャップ252に沿ってこの周りを流れる。
十分な大きさの加速度がリザーバ本体部分44の長手方向軸線(即ち、慣性質量体162の移動軸線)に沿って与えられる場合、慣性質量体162は、ばね166の付勢力に打ち勝ってリザーバシャフト164に対して下方に動いて開放位置に至る。慣性弁160が開放位置にある状態では、作動油は、圧縮チャンバ104からリザーバシャフト流体ポート170を経てリザーバチャンバ146内に押し退け可能である。上述したように、圧縮流体流は、リザーバシャフト流体ポート170を通過した後、隙間空間Cを通り、その後、流体偏向キャップ252の内部チャンバ266の外部に位置するリザーバチャンバ146の部分に入る。
慣性質量体162が開放位置にあるとき、ばね166は、慣性質量体162を閉鎖位置に向かって(図16及び図17において上方に)動かす傾向のある付勢力を慣性質量体162に及ぼす。有利には、隙間空間Cを通って流れる圧縮減衰流体の絞りにより、ばね166の力に対抗する傾向があると共に慣性質量体162が流体偏向キャップ252ょリップ260を越えて閉鎖位置に至るのを阻止する力を慣性質量体162に加える高圧領域が内部チャンバ266内に作られる。圧縮流体流がいったん停止し又は相当な程度まで遅くなると、ばね166の力は、隙間空間Cを通る流体の流れの絞りによって作られた力に打ち勝ち、慣性質量体162を閉鎖位置に動かす。かくして、有利には、慣性質量体162は、加速力が減少し、しかも圧縮流体流が著しく遅くなり又は停止するまで、開放状態のままである。上述したように隙間空間Cは、圧縮流体流れの所望のレベルでばね166の閉鎖力に抗して慣性質量体162を開放位置に維持するよう寸法決めされるのが良い。加うるに、慣性質量体162の側の圧縮流体流れは、慣性質量体162を開放位置に向かって(図16及び図17において下方に)押圧する傾向がある。
ショックアブソーバ38が主要弁組立体172、ブリード弁174又は慣性弁160のいずれかを通る流体の流れ又はこれら任意の組み合わせによっていったん圧縮されると、主要空気チャンバ86と第2の空気チャンバ102の組み合わせによって生じるばね力は、ダンパ管48を空気スリーブ50から遠ざける傾向がある。リヤショック38がリバウンド運動を行うとリザーバ管142から出たピストンロッド78の体積に等しい流体の量がリザーバチャンバ146から圧縮チャンバ104に移動する。リバウンド流れシムスタック204により提供される望ましくは軽い抵抗に抗して主要弁組立体172の補充ポート192(図9参照、図16及び図17には示されていない)を通るこの方向の流体の流れが可能になる。慣性質量体162の側を通るリバウンド流れは、慣性質量体162を閉鎖位置に向かって押圧する傾向があり、その結果、慣性質量体162は、ショックアブソーバ38の圧縮ストロークの完了時に迅速に閉じるようになる。
図16及び図17は、ショックアブソーバ38の遠隔リザーバ44内の流体流れ制御装置250を示している。これは、顕著な利点を有するが、流体流れ制御装置250は、他の用途にも利用できる。例えば、リザーバ44は、例えばフロントサスペンションフォーク組立体内に位置決めされているショックアブソーバの本体に組み込み可能である。加うるに、仕切り180をこの仕切りが収納されているダンパ管に対して固定することが必要ではない。例えば、図18は、ダンパ管300内の可動ピストン(又は仕切り)180の一部として流体流れ制御装置250を示している。ダンパ管300は、自転車20の一部分に作動可能に結合された図1〜図15のダンパ管48とほぼ同じダンパ管であるのが良い。ダンパ管300は、ピストン180を支持したピストンロッド302と入れ子状に嵌合しており、ピストンロッド302は、図1〜図15のピストンロッド78とほぼ同じであるのが良い。ピストンロッド302は、自転車20の別の部分に結合されている。図示の構成では、ダンパ管300は、好ましくは、自転車のメインフレーム部分に結合され、ピストンロッド302は、自転車のサブフレーム部分又は車輪支持部分(例えば、下側フォーク脚部)に結合されている。図18の流体流れ制御装置250は、他の点においては、図16及び図17の流体流れ制御装置250と実質的に同一である。したがって、図16及び図17の参照符号は、図18の同一又は類似のコンポーネントを示すために用いられており、流体流れ制御装置250の詳細な説明を省く。しかしながら、ショックアブソーバの基本的な構造について以下に説明する。
仕切り又は主ピストン180は、ダンパ管300内で動くことができ、かかる仕切り又は主ピストンは、ダンパ管300をピストン180の上方に位置する圧縮チャンバ304とピストンの下方に位置するリバウンドチャンバ306に分割している。圧力作動型弁組立体は、主要弁組立体172及びブリード弁組立体174を含む。主要弁組立体172とブリード弁組立体174の両方は、圧縮チャンバ304からリバウンドチャンバ306への流体の流れを可能にする。ブリード弁組立体174を通る圧縮流れは、ピストンロッド302の内部からポート308を通ってリバウンドチャンバ306に至る。各弁組立体172,174を通る圧縮流れは、慣性弁組立体160及び慣性弁160と流れ本体又は流体偏向キャップ252との間に作られた隙間空間Cをバイパスする。適当な加速力に応動して、慣性弁組立体160は又、圧縮チャンバ304からリバウンドチャンバ306への流体の流れを可能にする。慣性弁組立体160を通る流体流れは又、流体流れ制御装置250を通過する。ブリード弁174を通ると共に常態では軽く付勢されたシム204によって閉じられているピストン180の1つ又は2つ以上の補充ポート192を通ってリバウンド流体流れが生じる。明示的には説明しなかったショックアブソーバ38及び流体流れ制御装置250の他の特徴は、図1〜図15又は図16及び図17を参照して上述した特徴と同一又は実質的に同一であると見なされ又は当業者には明らかな他の適当な構成のものであって良い。
添付の図面に示されているように、ショックアブソーバ38は、図示されているが本明細書においては説明しておらず、しかしながら当業者には明らかな他の特徴及びコンポーネント、例えばシールを有する。したがって、これらの特徴の説明は省かれている。
本発明を幾つかの好ましい実施形態に関して説明したが、図示の実施形態の小規模な改造例及び再配置例は、本発明の範囲から逸脱しないで想到できる。例えば、好ましい実施形態として圧縮減衰率を変更する自転車用ダンパを説明したが、教示した原理は、リバウンド減衰を変更する又は垂直加速力ではなく、横加速力に応動するダンパ実施形態にも利用できる(しかしながらこれには限定されない)。加うるに、好ましい実施形態をオフロード自転車用途との関連で説明したが、本発明のダンパは、種々の車両に使用できるよう又はダンパを用いることができる非車両用途に使用できるよう改造可能である。更に、慣性弁コンポーネントの圧力及び流れ均等化特徴は、加速力又は加速力以外の手段によって作動可能な他形式の弁に適用可能である。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められる。