JP5469593B2 - 末梢性オピオイド受容体アンタゴニストおよびその使用 - Google Patents

末梢性オピオイド受容体アンタゴニストおよびその使用 Download PDF

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Description

関連する出願の相互参照
本出願は、2007年3月29日に出願された米国仮特許出願番号第60/920,722号(その全体として出典明示により、本明細書の一部とされる)に対する優先権を主張する。
発明の背景
オピオイドは、苦痛を軽減するために、進行性の癌および他の末期疾患の患者に幅広く使用される。オピオイドは、中枢神経系に位置するオピオイド受容体を活性化して疼痛を緩和する麻酔性医薬である。しかしながら、オピオイドは、中枢神経系の外にある受容体とも反応して、便秘、悪心、嘔吐、尿閉、および重篤な掻痒を包含する副作用をもたらす。最も顕著なものは、胃腸管(GI)における影響であり、ここに、オピオイドは、胃内容排出および腸の推進性の運動活性を阻害し、それにより、腸管輸送速度を減少させ、便秘をもたらす。疼痛に対するオピオイドの有効性は、しばしば、結果として生じる副作用のために制限され、該副作用は患者を衰弱させることがあり、しばしば、患者にオピオイド麻酔薬の使用を止めさせることとなる。
麻酔性オピオイドにより誘発される副作用の他に、内在性オピオイド化合物および受容体もまた、胃腸(GI)管の活性に影響を及ぼすことがあり、動物および人間の両方における、腸運動および流体の粘膜輸送の正常な調節に関与しうることが研究により示唆されている(Koch, T. Rら、Digestive Diseases and Sciences 1991, 36, 712-728; Schuller, A.G.P.ら、Society of Neuroscience Abstracts 1998, 24, 524, Reisine, T., および Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996, 521-555 および Bagnol, D.ら、Regul. Pept. 1993, 47, 259-273)。かくして、内在性化合物および/または受容体活性の異常な生理学的レベルは、腸機能不全をもたらす。
例えば、外科手術、特に、腹部の外科手術を受けた患者は、しばしば、天然オピオイドレベルの変動によって引き起こされうる術後(外科手術後)イレウスと呼ばれる特定の腸機能不全に罹患する。同様に、最近出産した女性は、一般に、出産ストレスの結果として生じる同様な天然オピオイドレベルの変動によって引き起こされると考えられる産後イレウスに罹患する。術後または産後イレウスに関連する胃腸管機能不全は、典型的に、3〜5日間続き、いくつかの重篤なケースでは、1週間以上続くこともある。術後の患者へのオピオイド麻酔薬の投与は、現在、最もよく行われている慣行であるが、腸機能不全を悪化させることがあり、それにより、正常な腸機能の回復を遅らせ、入院を長引かせ、医療費を増加させる。
オピオイド受容体アンタゴニスト、例えば、ナロキソン(naloxone)、ナルトレキソン(naltrexone)およびナルメフェン(nalmefene)は、オピオイドの望ましくない末梢性影響を拮抗する手段として研究されてきた。しかしながら、これらの薬剤は、末梢性オピオイド受容体のみに作用するだけでなく、中枢神経系部位にも作用するので、時折、オピオイドの有益な麻酔作用を逆転させ、またはオピオイド離脱症状を引き起こす。オピオイド誘導性副作用の制御に使用するための好ましいアプローチには、血液脳関門を容易に横切らない末梢性オピオイド受容体アンタゴニスト化合物の投与がある。例えば、末梢性μオピオイド受容体アンタゴニスト化合物メチルナルトレキソンおよび関連化合物は、患者におけるオピオイド誘導性副作用(例えば、便秘、掻痒、悪心、および/または嘔吐)の抑制における使用について開示されている。例えば、米国特許第5,972,954号、第5,102,887号、第4,861,781号、および第4,719,215号、ならびにYuan, C. -S.ら、Drug and Alcohol Dependence 1998, 52, 161を参照のこと。同様に、末梢選択性ピペリジン−N−アルキルカルボキシレートおよび3,4−ジメチル−4−アリール−ピペリジンオピオイド受容体アンタゴニストは、オピオイド誘導性副作用 便秘、悪心または嘔吐、ならびに過敏性大腸症候群および特発性便秘の治療に有用であることが記載されている。例えば、米国特許第5,250,542号、第5,434,171号、第5,159,081号、および第5,270,328号を参照のこと。
上記の障害のいずれかの治療が必要な患者に投与するために、末梢性μオピオイド受容体アンタゴニスト化合物を提供することが望ましい。
米国特許第5,972,954号 米国特許第5,102,887号 米国特許第4,861,781号 米国特許第4,719,215号 米国特許第5,250,542号 米国特許第5,434,171号 米国特許第5,159,081号 米国特許第5,270,328号
Koch, T. Rら、Digestive Diseases and Sciences 1991, 36, 712-728 Schuller, A.G.P.ら、Society of Neuroscience Abstracts 1998, 24, 524 Reisine, T., および Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996, 521-555 Bagnol, D.ら、Regul. Pept. 1993, 47, 259-273 Yuan, C. -S.ら、Drug and Alcohol Dependence 1998, 52, 161
本発明は、式I:
Figure 0005469593
[式中、X、RおよびRは本明細書中で定義および記載されるとおりである]
で示される化合物を提供し、該化合物は、窒素に対して(R)配置である。本発明は、また、式Iの化合物を含む医薬組成物および処方を提供する。提供される化合物は、末梢性μオピオイド受容体アンタゴニストであり、したがって、オピオイド投与に関連する副作用、例えば、胃腸管機能不全(例えば、腸運動の阻害、便秘、GI括約筋収縮、悪心、嘔吐、胆道の痙攣、オピオイド腸機能不全、疝痛)、ディスフォーリア、掻痒、尿閉、呼吸の低下、乳頭収縮、心血管影響、胸壁硬直および咳の抑制、ストレス応答の低下、および麻酔性鎮痛薬の投与に関連する免疫抑制等、またはその組み合わせの治療、予防、改善、遅延、またはこれらの副作用の重篤度および/または発病率を減少させるのに有用である。提供される化合物の他の使用を下記に示す。
図1は、化合物II−1のHPLCクロマトグラムを示す。 図2は、化合物II−1のUVスペクトルを示す。 図3は、化合物II−1のH NMRスペクトルを示す。
発明の特定の具体例の詳細な説明
1.化合物および定義
ある特定の具体例において、本発明は、式I:
Figure 0005469593
[式中、RおよびRは、各々、独立して、C1−6脂肪族であり、
は、適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
「脂肪族」または「脂肪族基」なる語は、本明細書中で使用される場合、完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有する直鎖(すなわち、分枝していない)または分枝炭化水素鎖、あるいは完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式炭化水素(本明細書中、「炭素環」、「環状脂肪族」または「シクロアルキル」ともいう)であって、分子の残部に対する単一の結合点を有するものを意味する。ある特定の具体例において、脂肪族基は、1−4個の脂肪族炭素原子を含有し、また他の具体例において、脂肪族基は、1−3個の脂肪族炭素原子を含有する。いくつかの具体例において、「環状脂肪族」(または「炭素環」)は、完全に飽和しているか、または1以上の不飽和単位を含有するが、芳香族ではない単環式C−C炭化水素であって、分子の残部に対する単一の結合点を有するものをいう。かかる環状脂肪族基は、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル基を包含する。適当な脂肪族基は、限定するものではないが、直鎖状または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル基およびそのハイブリッド、例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルを包含する。例示的な脂肪族基は、アリル、ビニル、シクロプロピルメチル、メチル、エチル、イソプロピルなどを包含する。
「不飽和」なる語は、本明細書中で使用される場合、ある基が1以上の不飽和単位を有することを意味する。
「低級アルキル」なる語は、本明細書中で使用される場合、4個までの炭素原子、好ましくは、1〜3個の炭素原子、より好ましくは1〜2個の炭素原子を有する炭化水素鎖をいう。「アルキル」なる語は、限定するものではないが、直鎖および分子鎖、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはt−ブチルを包含する。
本明細書中で使用される場合、化合物または医薬上許容される組成物の「有効量」は、所望の治療および/または予防効果を達成することができる。いくつかの具体例において、「有効量」は、末梢性μオピオイド受容体の変調に関連する障害または病態の1以上の症状、例えば、オピオイド鎮痛療法に関連する副作用(例えば、胃腸機能不全(例えば、運動不全便秘など)、悪心、嘔吐(例えば、吐き気)など)を治療するのに十分な化合物または化合物を含有する組成物の少なくとも最少量である。ある特定の具体例において、化合物、または化合物を含有する組成物の「有効量」は、異常内在性末梢オピオイドまたはμオピオイド受容体活性に関連する1以上の症状、疾患(例えば、特発性便秘、イレウスなど)を治療するのに十分である。
「対象」なる語は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物を意味し、ヒトおよび動物対象、例えば、家畜(例えば、ウマ、イヌ、ネコなど)を包含する。
「罹患」なる語は、本明細書中で使用される場合、患者が診断されている、または疑いのある1以上の病態をいう。
「治療」なる語は、本明細書中で使用される場合、障害または病態、あるいは障害または病態の1以上の症状の部分的または完全な緩和、阻害、発症の遅延、予防、改善および/または軽減をいう。
「治療上活性剤」または「活性剤」なる語は、予防および治療を包含する療法(例えば、ヒト療法、獣医学的療法)に有用な物質をいい、生物学的活性物質を包含する。治療上活性剤は、薬物化合物、ペプチド、タンパク質、炭水化物、単糖類、オリゴ糖、多糖類、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチドまたはタンパク質、タンパク質に結合した小型分子、糖タンパク質、ステロイド、核酸、DNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、脂質、ホルモン、およびビタミンである有機分子を包含する。治療上活性剤は、疾患、病態、または障害の治療、予防、遅延、軽減または改善のための医薬として使用されるいずれの物質をも包含する。なかでも、本発明の処方において有用な治療上活性剤は、オピオイド受容体アンタゴニスト化合物、オピオイド鎮痛性化合物などである。治療上活性剤として有用な化合物のさらに詳細な記載は下記する。治療上活性剤は、例えば、第2の化合物の効力を増幅または負の影響を減少することによって、第2の化合物の影響または有効性を増加させる化合物を包含する。
「単位投与形態」なる表現は、本明細書中で使用される場合、治療すべき対象に適当な本発明の処方の物理的に別個の単位をいう。しかしながら、本発明の組成物の全一日量が、健全な医学的判断の範囲内で担当の医師によって決定されることは、理解されるであろう。いずれかの特定の対象または生物に対する特定の有効投与レベルは、治療されている障害および障害の重篤度、使用される特定の活性剤の活性、使用される特定の組成物、対象の年齢、体重、総体的な健康状態、性別および食事、使用される特定の活性剤の投与時期および排出速度、治療期間、使用される特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物および/または付加的な治療剤、および医学分野でよく知られた同様の因子を包含する種々の因子に依存するであろう。
2.例示的化合物の記載
一般的に上記したように、本発明は、式I:
Figure 0005469593
[式中、RおよびRは、各々、独立して、C1−6脂肪族であり、
は、適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
当業者は、式Iに描かれた窒素原子がキラル中心であり、したがって、(R)または(S)配置のいずれかで存在できることを理解するであろう。一の態様によれば、本発明は、化合物が窒素に対して(R)配置である式Iの化合物を提供する。本発明のある特定の具体例において、式Iの化合物の少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%が窒素に対して(R)配置である。
一般的に上記で定義したように、式IのX基は、適当なアニオンである。ある特定の具体例において、Xは適当なブレンステッド酸のアニオンである。例示的なブレンステッド酸は、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、およびリン酸を包含する。ある特定の具体例において、Xは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ギ酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩またはクエン酸塩である。一の態様によれば、Xは臭化物である。
式Iの化合物が四級化窒素基およびフェノール性ヒドロキシル基の両方を含有することは、容易に理解される。当業者は、式Iの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が式Iの化合物の四級化窒素と塩を形成できることを理解するであろう。かかる塩は、分子間相互作用を介して式Iの化合物の2つの分子間に形成することができ、または分子内相互作用を介して同じ化合物の基間に形成することができる。本発明は、かかる塩形態の両方を意図する。
ある特定の具体例において、本発明は、RがC1−4脂肪族であり、Rが低級アルキルである式Iの化合物を提供する。他の具体例において、R基は、(シクロアルキル)アルキル基またはアルケニル基である。ある特定の具体例によれば、Rは、シクロプロピルメチルまたはアリルである。他の具体例において、Rは、シクロプロピルメチルまたはアリルであって、Rはメチルである。
一の具体例によれば、本発明は、式II:
Figure 0005469593
[式中、Xは、本明細書に記載されるような適当なアニオンである]
で示される化合物を提供する。
式IIの例示的化合物は、化合物II−1およびII−2:
Figure 0005469593
を包含する。
別の態様によれば、本発明は、式III:
Figure 0005469593
[式中、Aは適当なアニオンである]
で示される化合物および少なくとも1つの式I:
Figure 0005469593
[式中、
およびRは各々、独立して、C1−6脂肪族であり、
は、適当なアニオンである]
で示される化合物を含む組成物を提供する。
一般的に上記で定義されるように、式IIIのA基は、適当なアニオンである。ある特定の具体例において、Aは、適当なブレンステッド酸のアニオンである。例示的なブレンステッド酸は、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、およびリン酸を包含する。ある特定の具体例において、Aは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ギ酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩またはクエン酸塩である。一の態様によれば、Xは臭化物である。
式IIIの化合物が四級化窒素基およびフェノール性ヒドロキシル基の両方を含有することは、容易に理解される。当業者は、式IIIの化合物のフェノール性ヒドロキシル基が式IIIの化合物の四級化窒素と塩を形成できることは理解されるであろう。かかる塩は、分子間相互作用を介して式IIIの化合物の2つの分子間に形成することができ、または分子内相互作用を介して同じ化合物の基間に形成することができる。本発明は、かかる塩形態の両方を意図する。
国際特許出願公開第WO2006/127899号は、化合物III−1、(R)−N−メチルナルトレキソン臭化物を記載し、下記の構造式:
Figure 0005469593
を有する。ここに、該化合物は、窒素に対して(R)配置にある。本発明のある特定の具体例において、化合物III−1の少なくとも約99.6%、99.7%、99.8%、99.85%、99.9%、または99.95%が窒素に対して(R)配置である。試料中に存在する(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物の量と比較した場合の同試料中に存在する(R)−N−メチルナルトレキソン臭化物の量を決定する方法は、WO2006/127899(出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に記載されている。他の具体例において、化合物III−1は、0.15%以下の(S)−N−メチルナルトレキソン臭化物を含有する。
ある特定の具体例において、本発明の化合物は、生物学的かつ病理学的現象において、末梢性ミューオピオイドアンタゴニストの研究のために、および末梢性ミューオピオイドアンタゴニストの比較評価のために有用である。
ある特定の具体例において、本発明は、単離形態の本発明の化合物を提供する。本明細書中で使用される場合、「単離」なる語は、化合物の通常の環境において存在しうる他の成分から分離した形態で化合物が提供されることを意味する。ある特定の具体例において、単離化合物は固体形態である。いくつかの具体例において、単離化合物は、適当なHPLC法によって決定された場合、少なくとも約50%純粋である。ある特定の具体例において、単離化合物は、適当なHPLC法によって決定された場合、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%純粋である。
ある特定の具体例において、本発明は、式III:
Figure 0005469593
[式中、Aは適当なアニオンである]
で示される化合物および少なくとも1つの式II:
Figure 0005469593
[式中、Xは本明細書に記載されるような適当なアニオンである]
で示される化合物を含む組成物を提供する。
他の具体例において、本発明は、化合物III−1:
Figure 0005469593
および化合物II−1:
Figure 0005469593
を含む組成物を提供する。
4.使用、処方および投与
上記の通り、本発明は、末梢性ミューオピオイド受容体アンタゴニストとして有用な式Iの化合物を提供する。本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の式Iの化合物を含み、医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含んでいてもよい医薬上許容される組成物が提供される。本発明のある特定の具体例において、かかる医薬上許容される組成物は、さらに、1以上の付加的な治療剤を含んでいてもよい。
上記のように、本発明の医薬上許容される組成物は、付加的に、医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含み、本明細書中で使用される場合、それらは、所望される特定の投与形態に適すような、あらゆる溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル、分散補助剤または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存料、固体結合剤、滑沢剤などを包含する。Remingtons Pharmaceutical Sciences, 17th edition, ed. Alfonoso R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA (1985)は、医薬上許容される組成物を処方するのに使用される種々の担体およびその製造のための既知の技術を開示する。いずれかの従来の担体媒体が、例えば、いずれかの望ましくない生物学的効果を生じることによって、あるいは、医薬上許容される組成物のいずれか他の成分と有害な方法で相互作用することによって、本発明の塩に不適合である場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあると解釈される。医薬上許容される担体として働くことのできる材料のいくつかの例は、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖類、例えば、ラクトース、グルコースおよびシュークロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;粉末状トラガカントゴム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココア脂および座薬用ワックス;油、例えば、ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質不含水;等張性セーライン;リンガー液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性適合性滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを包含し、同様に、着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味料、フレーバー剤および香料、保存料および抗酸化剤もまた、処方する者の判断にしたがって、組成物中に配合することができる。
ある特定の具体例において、本発明は、式Iの少なくとも1つの化合物および一以上の医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物に関する。かかる組成物は、許容される製薬手法、例えば、Remingtons(出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に記載の手法にしたがって調製される。医薬上許容される担体は、処方中の他の成分と適合性の担体であり、生物学的に許容されるものである。
本発明の組成物は、そのままで、または従来の医薬担体と組み合わせて、経口または非経口投与される。許容される固形担体は、フレーバー剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、増量剤、潤滑剤、圧縮補助剤、結合剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル材料としても作用することができる1以上の物質を包含する。粉末において、担体は、微粉化した活性成分と混合される微粉化した固体である。錠剤において、活性成分は、必要な圧縮性を有する担体と、適当な割合で混合され、次いで、所望の形状および大きさに成形される。適当な固形担体は、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、澱粉、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を包含する。
液体担体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルの調製に使用できる。活性成分は、医薬上許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、これら2つの混合物、または医薬上許容される油脂中に溶解またか懸濁することができる。液体担体は、他の適当な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存料、甘味料、フレーバー剤、懸濁化剤、増粘剤、着色料、粘度調節剤、安定化剤または浸透圧調節剤を含有することができる。経口および非経口投与用液体担体の適当な例は、水(特に、上記の添加剤を含有する水、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを包含する)およびその誘導体、および油(例えば、分別ココヤシ油および落花生油)を包含する。非経口投与の場合、担体は、油性エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルであることもできる。滅菌液体担体は、非経口投与用滅菌液体形態の組成物において使用される。加圧組成物用液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の医薬上許容されるプロペラントであることができる。
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋内、腹腔内または皮下注射によって投与することができる。滅菌溶液は、また、静脈内投与することもできる。経口投与用組成物は、液体または固体形態のいずれかであることができる。
ある特定の具体例において、本発明の組成物は、従来の座剤の形態で経直腸または経膣的に投与される。鼻腔内または気管支内吸入または通気による投与の場合、本発明の組成物は、水性または部分的に水性の溶液中に処方されることができ、ついでそれをエーロゾルの形態で利用することができる。本発明の組成物は、また、活性化合物および該活性化合物に不活性で、皮膚に非毒性で、かつ、皮膚を介する血中への全身的吸収のための薬剤のデリバリーを可能にする担体を含有する経皮パッチの使用によって経皮的に投与することもできる。該担体は、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲル、および閉塞性装置などのいくつかの形態を取ることができる。クリームおよび軟膏は、粘性液体または水中油型もしくは油中水型のいずれかの半固体エマルジョンであることができる。また、活性成分を含有するペトロリュームまたは親水性ペトロリューム中に分散させた吸収性粉末からなるペーストも適当である。担体を伴って、または伴わずに活性成分を含有するリザーバーを覆う半浸透性膜、または活性成分を含有するマトリックスなどの種々の閉塞性装置を用いて、活性成分を血流中に放出させることができる。他の閉塞性装置は、文献において知られている。
好ましくは、医薬組成物は、単位投与形態、例えば、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、エマルジョン、顆粒、または座剤の形態である。かかる形態において、組成物は、適量の活性成分を含有する単位投与量にさらに分けられ、該単位投与形態は、パッケージされた組成物、例えば、パックした粉末、バイアル、アンプル、予め充填したシリンジまたは液体を含有する小袋(sachet)であることができる。単位投与形態は、例えば、カプセルまたは錠剤自体であることができ、またはいずれかのかかる組成物の適当な数をパッケージした形態であることができる。
患者に提供される本発明の組成物の量は、投与されているもの、投与目的、例えば、予防または治療、患者の状態、投与方法などに依存して変化するであろう。治療的適用の場合、本発明の組成物は、疾患に罹患した患者に、該疾患の症状およびその合併症を治療または少なくとも部分的に治療するのに十分な量で提供される。これを達成するのに十分な量とは、本明細書中に上記したような「治療上有効量」である。特定のケースの治療において使用されるべき投与量は、担当の医師によって主観的に決定されなければならない。関与する変数は、特定の病態ならびに患者の大きさ、年齢および応答パターンを包含する。物質濫用の治療は、担当の医師の手引きの下、主観的薬物投与の同じ方法に従う。一般に、開始投与量は、1日に約5mgであり、1日に約150mgまで毎日の投与量において徐々に増加させて、患者における所望の投与量レベルを提供する。
本発明の他の具体例において、組成物は、少なくとも約97、97.5、98、98.5、99、99.5、99.8重量パーセントの量で式IまたはIIのいずれかの化合物を含有する(ここに、パーセンテージは、該化合物の遊離塩基に基づき、組成物の全重量に基づく)。他の具体例において、式IまたはIIのいずれかの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLC面積が約2.0パーセント以下の全有機不純物、より好ましくは、HPLC面積が約1.5パーセント以下の全有機不純物を含有する。
本発明の他の具体例において、式IIIの化合物、少なくとも1つの式IまたはIIの化合物、および少なくとも1つの医薬上許容される担体を含む組成物が提供される。いくつかの具体例において、組成物は、式IまたはIIの化合物を約1重量パーセント〜約99重量パーセントの量で含有する(ここに、パーセンテージは、該化合物の遊離塩基に基づき、組成物の全重量に基づく)。他の具体例において、式IまたはIIの化合物を含有する組成物は、HPLCクロマトグラムの全面積に対して、HPLC面積が約2.0パーセント以下の全有機不純物、より好ましくは、HPLC面積が約1.5パーセント以下の全有機不純物を含有する。
ある特定の具体例において、本発明は、上記のように、式Iの化合物のプロドラッグを含む組成物に向けられる。「プロドラッグ」なる語は、本明細書中で使用される場合、代謝手段(例えば、加水分解)によってイン・ビボで式Iの化合物に変換可能な化合物を意味する。例えば、Bundgaard, (編), Design of Prodrugs, Elsevier (1985); Widderら(編), Methods in Enzymology, vol. 4, Academic Press (1985); Krogsgaard-Larsenら(編) Design and Application of Prodrugs, Textbook of Drug Design and Development, Chapter 5, 113-191 (1991), Bundgaardら、Journal of Drug Delivery Reviews, 8:1-38(1992), Bundgaard, J. of Pharmaceutical Sciences, 77:285 et seq. (1988); およびHiguchi および Stella (編) Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems, American Chemical Society (1975)(各々、出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に論じられるような種々の形態のプロドラッグが当該分野で知られている。
組み合わせ生産物および組み合わせた投与
ある特定の具体例において、本発明の組成物およびその処方は、本明細書中に記載されるような1以上の障害を治療するために単独で投与してもよく、または本明細書中に記載されるような1以上の障害を治療するのに有用な1以上の他の活性剤と組み合わせて(同時または連続的に)投与してもよい。かくして、本発明の組成物またはその処方は、1以上の活性剤と同時に、1以上の活性剤より前に、または1以上の活性剤の次に投与することができる。
ある特定の具体例において、本発明の組成物は、式Iの化合物の他に、式Iの化合物ではない1以上の他の活性剤を含む。ある特定の具体例において、本発明は、式Iの化合物および少なくとも1つの付加的な活性剤をデリバリーする処方を提供する。
いくつかの具体例において、本発明の処方は、オピオイドおよび式Iの化合物の両方を含む。オピオイドおよび式Iの化合物の両方を含有するかかる組み合わせ生産物は、疼痛の軽減およびオピオイド関連副作用(例えば、胃腸影響(例えば、胃内容排出の遅延、GI管運動性の変化)など)の最小限化を同時に可能とする。
痛覚脱失の治療において有用なオピオイドは、当該分野で知られている。例えば、オピオイド化合物は、限定するものではないが、アルフェンタニル(alfentanil)、アニレリジン(anileridine)、アシマドリン(asimadoline)、ブレマゾシン(bremazocine)、ブルプレノルフィン(burprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、コデイン(codeine)、デゾシン(dezocine)、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、フェドトジン(fedotozine)、フェンタニル(fentanyl)、フナルトレキサミン(funaltrexamine)、ヒドロコドン(hydrocodone)、ヒドロモルホン(hydromorphone)、レバロルファン(levallorphan)、レボメタジルアセテート(levomethadyl acetate)、レボルファノール(levorphanol)、ロペラミド(loperamide)、メペリジン(meperidine)(ペチジン(pethidine))、メタドン(methadone)、モルヒネ、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン(nalbuphine)、ナロルフィン(nalorphine)、ニコモルヒネ(nicomorphine)、オピウム(opium)、オキシコドン(oxycodone)、オキシモルホン(oxymorphone)、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン(pentazocine)、プロピラム(propiram)、プロポキシフェン(propoxyphene)、レミフェンタニル(remifentanyl)、スフェンタニル(sufentanil)、チリジン(tilidine)、トリメブチン(trimebutine)およびトラマドール(tramadol)を包含する。いくつかの具体例において、オピオイドは、アルフェンタニル、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ニコモルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニルおよび/またはトラマドールから選択される少なくとも1つのオピオイドである。本発明のある特定の具体例において、オピオイドは、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、フェンタニル、トラマドール、およびその混合物から選択される。特定の具体例において、オピオイドは、ロペラミドである。他の具体例において、オピオイドは、ブトルファノールなどの混合アゴニストである。いくつかの具体例において、対象は、1よりも多くのオピオイド、例えば、モルヒネおよびヘロインまたはメタドンおよびヘロインを投与される。
本発明の組み合わせ組成物中に存在する付加的な活性剤の量は、典型的には、該活性剤を唯一の治療剤として含む組成物において通常投与される量よりも多くはない。本発明のある特定の具体例において、付加的な活性剤の量は、該化合物を唯一の治療剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
ある特定の具体例において、本発明の処方は、また、便秘および腸機能不全の改善を促進するために、胃腸機能不全の通常の治療と同時に、および/または組み合わせて使用してもよい。例えば、通常の治療は、限定するものではないが、腸管の機能的刺激、便柔軟剤、緩下剤(例えば、ジフェニルメタン緩下剤、寫下性緩下剤、浸透圧性緩下剤、セーライン緩下剤など)、バルク形成剤および緩下剤、滑剤、静脈内からの水分補給、および経鼻胃減圧を包含する。
本発明の処方の使用およびキット
上記で論じたように、本発明は、オピオイド鎮痛療法の望ましくない副作用(例えば、胃腸影響(例えば、胃内容排出の遅延、GI管運動性の変化)など)を拮抗するのに有用な式Iの化合物ならびにその医薬上許容される組成物および処方を提供する。さらに、式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、μオピオイド受容体に結合することによって改善される病態を有する対象を治療するために、またはμオピオイド受容体系の一時的な抑制が望まれるいずれかの治療において(例えば、イレウスなど)、使用してもよい。本発明のある特定の具体例において、処方の使用方法は、ヒト対象におけるものである。
したがって、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物または処方の投与は、オピオイド使用の副作用、例えば、胃腸管機能不全(例えば、腸運動の阻害、便秘、GI括約筋収縮、悪心、嘔吐、胆道の痙攣、オピオイド腸機能不全、疝痛、ディスフォーリア、掻痒、尿閉、呼吸の低下、乳頭収縮、心血管影響、胸壁硬直および咳の抑制、ストレス応答の低下、および麻酔性鎮痛薬の使用に関連する免疫抑制等、またはその組み合わせの治療、予防、改善、遅延、または減少させるのに有利でありうる。かくして、式Iの化合物、またはその医薬上許容される組成物または処方の使用は、オピオイドを受容する対象の生活の質の見地から、ならびに慢性便秘から生じる合併症、例えば、痔、食欲抑制、粘膜破壊、敗血症、直腸癌の危険性、および心筋梗塞を減少させるために有益でありうる。
いくつかの具体例において、式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、急性オピオイド投与を受けている対象への投与に有用である。いくつかの具体例において、提供される処方は、術後胃腸機能不全に罹患している患者への投与に有用である。
他の具体例において、式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、また、慢性オピオイド投与を受けている対象(例えば、オピオイド療法を受けている末期患者、例えば、AIDS患者、癌患者、心血管患者;疼痛管理のための慢性オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためのオピオイド療法を受けている患者)への投与に有用である。いくつかの具体例において、対象は、慢性疼痛管理のためにオピオイドを用いている対象である。いくつかの具体例において、対象は、末期患者である。他の具体例において、対象は、オピオイド離脱維持療法を受けている人である。
本明細書に記載される式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方に関する別法または付加的な使用は、例えば、内皮細胞(例えば、血管内皮細胞)の異常な移動または増殖、血管形成の増加、および日和見感染病原体(例えば、Pseudomonas aeruginosa)由来の致死因子産生の増加を包含するオピオイド使用の影響を治療、減少、阻害または予防するためであってもよい。式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方の付加的な有利な使用は、オピオイド誘導性免疫抑制の治療、血管形成の阻害、血管増殖の阻害、疼痛の治療、炎症性腸症候群などの炎症状態の治療、感染性疾患および筋骨格系の疾患、例えば、骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、ミオパシーの治療、および自己免疫疾患の治療を包含する。
ある特定の具体例において、本発明の式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、限定するものではないが、過敏性大腸症候群、オピオイド誘導性腸機能不全、大腸炎、術後または分娩後イレウス、悪心および/または嘔吐、胃運動および内容排出の減少、胃の阻害、ならびに小さい、および/または大きい腸推進力、非推進性分節性収縮の幅の増加、オッジ括約筋の収縮、肛門括約筋の緊張の増加、直腸拡張を伴う反射性弛緩異常、胃液、胆汁、膵液または腸液分泌の低下、腸内容物からの水の吸収増加、胃食道逆流、胃不全麻痺、筋けいれん、膨満、腹または上腹部の疼痛および不快、便秘、特発性便秘、腹部手術(例えば、結腸切除(例えば、右半結腸切除、左半結腸切除、横行半結腸切除、結腸切除テイクダウン(takedown)、低位前方切除))後の術後胃腸機能不全、および経口投与された医薬または栄養物質の吸収の遅延を包含する胃腸機能不全を予防、阻害、減少、遅延、低下または治療する方法において使用されうる。
式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方の提供される形態は、また、血管形成を伴う癌、免疫抑制、鎌状赤血球貧血、血管創傷、および網膜症を包含する病態の治療、炎症関連障害(例えば、過敏性大腸症候群)、免疫抑制、慢性炎症の治療において有用である。
まださらなる具体例において、式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方の使用の獣医学的適用(例えば、家畜、例えば、ウマ、イヌ、ネコなどの治療)が提供される。かくして、ヒト対象について上記で論じられたものと類似の獣医学的適用において提供される処方の使用が意図される。例えば、ウマの胃腸運動の阻害、例えば、疝痛および便秘は、ウマにとって致命的でありうる。疝痛に罹患したウマが経験する疝痛の結果生じる疼痛は、死誘導ショックをもたらすことができ、一方、長期の便秘もまた、ウマの死を引き起こしうる。末梢性オピオイド受容体アンタゴニストでのウマの治療は、例えば、米国特許公報第20050124657号(2005年1月20日公開)において記載されている。
また、当然のことながら、式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、組み合わせ療法において使用することができる。すなわち、式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、1以上の他の所望の治療薬または医学的手法と同時に、1以上の他の所望の治療薬または医学的手法の前に、または1以上の他の所望の治療薬または医学的手法の次に投与することができる。組み合わせ計画に用いるための特定の組み合わせ療法(治療薬または手法)は、所望の治療薬および/または手法ならびに達成されるべき所望の治療効果との適合性を考慮に入れるであろう。また、当然のことながら、用いられる療法は、同じ障害に望まれる効果を達成してもよく(例えば、処方は、同じ障害を治療するために使用される別の化合物と同時に投与されうる)、またはそれらは、異なる効果を達成してもよい(例えば、いずれかの負の影響の制御)。本明細書中で使用される場合、特定の疾患または病態を治療または予防するために通常投与される付加的な治療化合物は、「治療されている疾患または病態に適当」なものとして知られている。
他の具体例において、式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方、および単位投与形態は、限定するものではないが、オピオイド使用の副作用(例えば、胃腸副作用(例えば、腸運動の阻害、GI括約筋収縮、便秘)、悪心、嘔吐、ディスフォーリア、掻痒など)またはその組み合わせの治療に有用な医薬を包含する医薬の調製に有用である。本発明の化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方は、急性オピオイド療法を受けている患者(例えば、急性オピオイド投与を受けている術後胃腸管機能不全に罹患している患者)または慢性的にオピオイドを用いている対象(例えば、オピオイド療法を受けている末期患者、例えば、AIDS患者、癌患者、心血管患者;疼痛管理のための慢性オピオイド療法を受けている対象;オピオイド離脱の維持のためのオピオイド療法を受けている対象)の治療において有用な医薬の調製に有用である。またさらに、疼痛の治療、炎症状態、例えば、炎症性腸症候群の治療、感染性疾患の治療、筋骨格系の疾患、例えば、骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、ミオパシーの治療、自己免疫疾患および免疫抑制の治療、腹部手術(例えば、結腸切除(例えば、右半結腸切除、左半結腸切除、横行半結腸切除、結腸切除テイクダウン(takedown)、低位前方切除)後の術後胃腸機能不全、特発性便秘、およびイレウス(例えば、術後イレウス、分娩後イレウス)の療法、および血管形成、慢性炎症および/または慢性疼痛を伴う癌、鎌状赤血球貧血、血管創傷、および網膜症などの障害の治療において有用な医薬の調製に有用である。
またさらに、本願発明には、式Iの化合物、およびその医薬上許容される組成物および処方、および容器(例えば、ホイルまたはプラスチックパッケージ、または他の適当な容器)を含む医薬パックおよび/またはキットが包含される。かかるキットには、使用説明書が付加的に提供されていてもよい。
本明細書中に記載の発明がより十分に理解されるように、下記の実施例を示す。これらの実施例は、単なる例示目的であり、如何なる方法においても、本願発明を限定するものとして解釈されるものではないことが理解されるべきである。
本発明の各態様の全ての特徴は、適宜変更して、全ての他の態様に準用する。
一般的手法
化合物III−1は、国際特許出願公報第WO2006/127899号(出典明示により、全体として本明細書の一部とされる)に詳細に記載された方法にしたがって調製される。
実施例1
化合物II−1の調製:
Figure 0005469593
化合物III−1の溶液をサンテスト(UV照射装置)中、500ワット/時間にて48時間光に曝露して、化合物II−1を得た。該キノン生成物を分取HPLCによって単離し、得られた精製固体物質をHPLC単離物の凍結乾燥によって得た。化合物II−1のHPLCクロマトグラムを図1に示す。
分取HPLCは、下記の方法を用いて行われた。
カラム明細:Prodigy ODS−3、15cm x 2.0mm、3μmサイズ粒子、Phenomenex社製または同等物
移動相 強度(定組成): 75:25(v/v) 水中0.1%TFA/メタノール
移動相 A=95:5(v/v) 水中0.1%TFA/メタノール
移動相 B=35:65(v/v) 水中0.1%TFA/メタノール
勾配プログラム: 時間(分) %A
0 100
45 50
45.1 100
60 100
カラム温度: 50℃
流速: 0.25mL/分
検出: UV,280nm
化合物II−1の同定/構造解明は、単離物質のHPLC−UV(PDA)、HPLC−MSおよびNMR由来の分析データを用いて達成された。HPLC−UV(PDA)は、280nm(化合物III−1)から約320nm(化合物II−1)への吸光度(λ−max)におけるシフトにより、親化合物(出発材料)と異なるUVスペクトルを提供した。化合物II−1のUVスペクトルを図2に示す。該シフトは、付加的な結合共役の存在を示し、提供される結合構造を支持する。HPLC−MSは、HPLCにおいて観察されたピークが親化合物(化合物III−1)と同じm/z 356(ESI陽性)を有することを示し、また、割り当てられた構造を支持する。
単離物質のNMRは、DRX−400スペクトロメーターを用いて行われた。H NMRスペクトルを図3に示す。プロトン−プロトン同種核およびプロトン−炭素異種核長距離相関は、化合物II−1の構造を支持する。記載のこれらの技術から得られたデータは、全体として、光エネルギー(UV)に曝露後に化合物III−1から生じた化合物の構造が化合物II−1であるとして支持する。
単離化合物の化学シフト帰属を下記の表1に示す。ここに、化学シフトは、TMS(δH=0.0ppm)およびDMSO−d6(δ13C=39.5ppm)を参照とする。
表1:DMSO−d6における化学シフト帰属
Figure 0005469593
Figure 0005469593

Claims (6)

  1. 式II:
    Figure 0005469593
    [式中、Xは、適当なアニオンである]
    で示される化合物。
  2. が適当なブレンステッド酸のアニオンである請求項1記載の化合物。
  3. ブレンステッド酸がハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、硫酸またはリン酸である請求項2記載の化合物。
  4. が塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、炭酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ギ酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩、またはコハク酸塩である請求項2記載の化合物。
  5. が臭化物である請求項4記載の化合物。
  6. 化合物II−1またはII−2:
    Figure 0005469593
    である請求項1記載の化合物。
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