JP5469388B2 - コイル状導電性糸条、電波吸収体、および電波吸収構造体 - Google Patents
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Description
一方、電波吸収材としては、特許文献2には、表面に露出する金属線材及び導電性カーボン繊維の面積の割合をできるかぎり大きくした電波吸収織物が提案されている。しかしながら、金属線材及び導電性カーボン繊維の面積の割合をできるかぎり大きくしてしまうと、導電性を有するために、吸収性能は発現しないという問題点があった。
また、特許文献3には、カーボンマイクロコイルを用いた電波吸収体が提案されている。しかしながら、炭素繊維を用いていることから取扱いが大変難しいという問題点があった。
また、特許文献5は、ピラミッド型もしくはウェッジ型に成形された電波吸収体を想定しており、電波吸収体の厚さが数cm以上あり、電波暗室向けに用途が限られるといった問題点があった。
ここで、上記芯糸としては、熱接着性モノフィラメントが好ましい。
また、上記熱接着性モノフィラメントとしては、好ましくは芯鞘型ポリエステル系熱接着性モノフィラメントが挙げられる。
上記カバリング回転数は、好ましくは50〜10,000回/mである。
次に、本発明は、上記コイル状導電性糸条を、基材に植毛することにより得られる電波吸収体に関する。
ここで、本発明の電波吸収体は、コイル状導電性糸条に加え、絶縁特性を持つ糸条が植毛されていてもよい。
また、本発明の電波吸収体は、好ましくは植毛された糸条がランダムに配向している。
さらに、本発明の電波吸収体は、植毛された導電性糸条の脱落防止のために、電波吸収体の表面にカバーを設けることが好ましい。
さらに、本発明の電波吸収体は、コイル状導電性糸条の植毛の最大高さが、好ましくは吸収させる最低周波数のλ/2である。
次に、本発明は、上記電波吸収体とその電波吸収体における電波入射方向背面側に設けられる電波反射体とを備えてなることを特徴とする電波吸収構造体に関する。
次に、本発明は、コイル状導電性糸条を植毛することにより得られる電波吸収体を複数枚積層した積層体と、その電波吸収体における電波入射方向背面側に設けられる電波反射体とを備えてなり、吸収する周波数帯域を制御することを可能としたことを特徴とする電波吸収構造体に関する。
次に、本発明は、コイル状導電性糸条を植毛することにより得られる電波吸収体と、その電波吸収体における電波入射方向背面側に設けられる電波反射体との間に空隙を設けることにより、吸収する周波数帯域を制御することを可能とした電波吸収構造体に関する。
本発明において用いられる導電性糸条は、比抵抗値が好ましくは106Ωcm以下、さらに好ましくは10−6〜104Ωcmのものをいう。比抵抗値が、上記値を超えると、目的とする電波吸収性能が得られない。導電性糸条としては、具体的には、金属繊維、メッキや真空蒸着法によって金属を被覆した金属被覆有機繊維、カーボンブラックなどの導電性微粒子が分散された樹脂を被覆した導電性樹脂被覆有機繊維、複合紡糸技術により導電性微粒子分散重合体がブレンドまたは複合紡糸された複合繊維などが例示される。
ここで、芯に用いる所定の繊維とは、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなど特に制限するものではないが、特に繊維形成性の良いポリエステルが好ましい。なかでもポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましい。また、コイル状を保つために、芯糸が芯鞘型ポリエステル系熱接着性モノフィラメント(芯鞘型ポリエステル系複合繊維)であることが好ましい。熱処理により鞘成分が溶融することによって、コイル状を保持するために好適に使用することができる。芯鞘比率や芯鞘のポリエステル成分、融点については特に限定されるものではない。
すなわち、本発明のコイル状導電性糸条を製造するには、カバリング装置(合撚機)を使用し、芯糸に鞘糸となる導電性糸条を巻きつければよい。
コイル状を形成するためのカバリングにおける回転数は、従来のカバリング装置を活用することを考慮すると、好ましくは50〜10,000回/mである。カバリング回転数がカバリング糸条の導電性及びコイルのピッチ間隔に関係し、電波吸収性能に寄与する。回転数が50回/m未満であると、カバリングが解けてしまいコイル状導電糸条を実現することができないので好ましくない。一方、カバリング装置の限界から、回転数10,000回/mを超えることは実質的にできない。安定的な生産を考慮すると、より好ましくは1,000〜8,000回/mである。
ここで、本発明のコイル状導電性糸条のコイル直径を25〜600μmに調整するには、例えば導電性糸条をカバリング装置を用いて芯糸にカバリングしたのち、得られる糸条を、通常、150〜300℃、好ましくは200〜250℃の非接触式ヒータに通して熱処理を行えばよいが、この手法に限定されるものではない。
本発明において植毛される基材は、布帛、樹脂フィルム、プラスチックシート、金属、紙など様々な材質を用いることができ特に制限されるものではない。使用される状況にも依存するが、折り曲げが自由にできる織物が望ましい。
また、本発明の電波吸収体に用いられる植毛による立毛部分は100%導電性糸条である必要はない。絶縁性糸条を含む割合・量を制御することにより吸収する周波数帯域を制御することが可能である。
本発明の電波吸収体の形状は、このように立毛素材であることが好ましく、基材に植毛することにより得ることができる。その際、電気植毛を用いることにより立毛した繊維がランダム方向性を持ち、吸収する電波の周波数帯域の拡大や入射角度特性が良好になる。したがって、電気植毛による植毛がより好ましい。
ここで、電波反射体としては、アルミニウム板、アルミを蒸着したフィルム、金属線メッシュなど、金属が面状の構造しているものを挙げることができる。
本発明の電波吸収構造体は、電波吸収体の入射方向背面側に電波反射体が設けられているので、電波吸収体裏側面への電波の漏洩を完全に遮断できるという特徴を有する。
(1)コイル状導電性糸条の抵抗値測定
長さ10cmの繊維試験片を採取し、該試験片の両端間に、HIOKI社製の抵抗値測定機「ミリオームハイテスタ」を使用して、その抵抗値(Ω)を3点測定し、その平均値を算出した。
(2)コイル直径、コイルピッチ間隔測定
コイル状導電性糸条の表面をSEM(走査電子顕微鏡)により観察し、10点について繊維径測定し、平均値を算出した。
(3)電波吸収(構造)体の電波吸収測定
アンリツ株式会社製のネットワークアナライザ37169Aを用いて、1〜75GHzの周波数帯域における電波吸収測定を自由空間法にて行い、最も高い吸収を示す周波数と減衰率を測定観察した。
(コイル状導電性糸条の製造方法)
芯糸として、芯部にポリエチレンテレフタレート、鞘部に熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体からなるポリエステルエラストマーを用い、芯成分/鞘成分の複合割合(重量%)70/30で構成させた芯鞘型ポリエステル熱接着性モノフィラメント2200dtex/fil(帝人モノフィラメント社製)を、鞘糸としてポリエチレンテレフタレート繊維に銀を被覆させた抵抗値12Ω/10cmの導電性糸状条33dtex/12fil(三菱マテリアル社製)を用いた。カバリング機を使用し、上記芯糸に鞘糸をカバリング回転数1,000〜6,000回/mで巻きつけた。さらに、上記糸条を温度240℃の非接触ヒータに通すことにより、コイル状を保持させたコイル状導電性糸条を得た。
得られたコイル状導電性糸条のコイル直径、抵抗値、コイルピッチ間隔は表1にまとめた。
レーヨン基布に上記コイル状導電性糸条を5mmカットし、フロッキー加工(電気植毛加工)することによって電波吸収体を製造した。
芯糸として、芯部にポリエチレンテレフタレート、鞘部に熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体からなるポリエステルエラストマーを用い、芯成分/鞘成分の複合割合(重量%)70/30で構成させた芯鞘型ポリエステル熱接着性モノフィラメント27dtex/filを用い、実施例1〜3と同じ鞘糸をカバリング回転数3,000回/mで巻きつけた。得られたコイル状導電性糸条のコイル直径、抵抗値、コイルピッチ間隔は表1にまとめた。
次に、上記コイル状導電性糸条を5mmカットし、短繊維化した。
次いで、実施例1と同様にして、フロッキー加工することによって、電波吸収体を得た。
実施例1〜4で得られた電波吸収体における、周波数と反射吸収量の関係を示すチャートを図1に示す。
芯糸として熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体からなるポリエステルエラストマーを100重量%用いた融着糸7dtex/filを用い、この芯糸に実施例1と同じ鞘糸をカバリング回転数30回/mで巻きつけた。さらに、上記糸条を温度240℃の非接触ヒータに通したが、カバリングが解けてしまいコイル状導電糸条を得ることができなかった。
芯糸として、芯部にポリエチレンテレフタレート、鞘部に熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体からなるポリエステルエラストマーを用い、芯成分/鞘成分の複合割合(重量%)70/30で構成させた芯鞘型ポリエステル熱接着性モノフィラメント3,300dtex/filを用いて、実施例1と同じ鞘糸をカバリング回転数9,000回/mで巻きつける以外、実施例1と同様にしてコイル状導電性糸条を得た。このもののコイル直径は、620μmであった。その結果、カバリング回転数が多すぎるために安定的な生産を行うことができなかった。
実施例1で得た目付け1,090g/m2、厚さ5mmの電波吸収体の電波入射方向背面側に、電波反射板としてアルミ板を配置した電波吸収構造体を製造した。この電波吸収構造体の電波吸収特性は、ホーンアンテナを用い、周波数15〜40GHzでアンリツ株式会社製ネットワークアナライザを用いた自由空間法により測定した。22GHz以上の周波数帯域で-10dB以上の電波吸収特性を持っていた。一般的に-10dBの電波吸収特性を持つと実用上十分な特性を持っていると言われている。結果を図1に示す。
実施例1で使用したレーヨン基布に、実施例1で用いたものと同様のポリエチレンテレフタレート繊維に銀を被覆させた抵抗値12Ω/10cmの導電性糸条33dtex/12filをそのままの状態で5mmカットし、実施例1と同様にして電気植毛することによって目付け440g/m2、厚さ5mmの電波吸収体を製造し、その電波吸収体における電波入射方向背面側に設けられる電波反射板としてアルミ板を配置した電波吸収構造体を製造した。この電波吸収構造体の電波吸収特性は、ホーンアンテナを用い、周波数15〜40GHzでアンリツ株式会社製ネットワークアナライザを用いた自由空間法により測定した。35GHz以上の周波数帯域で-10dB以上の反射吸収特性を示したが、それ以下の周波数帯域では十分な電波吸収特性が得られなかった。結果を図1に示す。
実施例1で使用したレーヨン基布に、実施例1で用いたものと同様の、カバリング回転数1,000回転/mで5mmカットしたコイル状導電性糸条と、繊度14dtex、長さ4mmのナイロン66短繊維とを、実施例1と同様にして電気植毛することによって目付け880g/m2、厚さ5mmの電波吸収体を製造し、その電波吸収体における電波入射方向背面側に、電波反射板としてアルミ板を配置した電波吸収構造体を製造した。この際、コイル状導電性糸条と絶縁糸条の重量混率は1:4であった。この電波吸収構造体の電波吸収特性は、ホーンアンテナを用い、周波数1.0〜80GHzでアンリツ株式会社製ネットワークアナライザを用いた自由空間法により測定した。図2のように20GHzと50GHz付近に-10dB以上の反射吸収特性を示した。
実施例1で使用したレーヨン基布に、実施例3で得たものと同様の、カバリング回転数が6,000回転/mのコイル状導電性糸条を2mmカットし、実施例1と同様にして電気植毛することによって目付け1,018g/m2、厚さ2mmの電波吸収体を製造し、その電波吸収体における電波入射方向背面側に、電波反射板としてアルミ板を配置した電波吸収構造体を製造した。その電気植毛された電波吸収体を複数枚重ねて電波吸収特性の測定を行った。この電波吸収構造体の電波吸収特性は、ホーンアンテナを用い、周波数1.0〜18GHzでアンリツ株式会社製ネットワークアナライザを用いた自由空間法により測定した。図3から、重ねる枚数を変化させることにより、電波吸収周波数が変化し、制御できていることがわかる。
実施例7で得た電波吸収構造体において、その電気植毛された電波吸収体と反射板であるアルミ板の距離を発泡スチロールのスペーサで変化させた。この電波吸収構造体の電波吸収特性は、ホーンアンテナを用い、周波数1.0〜18GHzでアンリツ株式会社製ネットワークアナライザを用いた自由空間法により測定した。図4から、電波吸収体と反射板の距離を変化させることにより、電波吸収周波数が変化し、制御できていることがわかる。
実施例1で使用したレーヨン基布に、実施例3で得たものと同様の、カバリング回転数が6,000回転/mのコイル状導電性糸条を1mm(目付け878g/m2、厚さ1mm)、2mm(目付け1,018g/m2、厚さ2mm)、5mm(目付け1,090g/m2、厚さ5mm)にカットし、実施例1と同様にして、電気植毛することによって電波吸収体を製造し、その電波吸収体における電波入射方向背面側に、電波反射板としてアルミ板を配置した電波吸収構造体を製造した。なお、植毛の状態はランダムで立っている導電性糸条もあれば寝ている導電性糸条もある。この電波吸収構造体の電波吸収特性は、ホーンアンテナを用い、周波数1.0〜110GHzでアンリツ株式会社製ネットワークアナライザを用いた自由空間法により測定した。図5から、5mmカット品はλ/2が5mmの30GHz以上の周波数帯域で-10dB以上の反射吸収特性を示した。2mmカット品は50GHz以上の周波数帯域で-10dB以上の反射吸収特性を示した。1mmカット品は90GHz以上の周波数帯域で-10dB以上の反射吸収特性を示した。電気植毛された電波吸収体の植毛細大高さが吸収させたい最低周波数のλ/2以上で十分な特性を示すことから、単層で電波吸収構造体を実現するためには電気植毛された植毛の最大高さが吸収させたい最低周波数のλ/2であることが必要である。結果を図5に示す。
実施例5で得た電波吸収構造体の植毛表面を不織布ネットでカバーした。不織布ネット素材は、ポリエチレンにエンボス加工を施したフィルム状の、目付が40g/m2の市販不織布ネットである。カバーを施すことで植毛された導電性糸条の脱落を抑えることができた。
この電波吸収構造体の電波吸収特性は、ホーンアンテナを用い、周波数1.0〜50GHzでアンリツ株式会社製ネットワークアナライザを用いた自由空間法により測定した。図6から、電波吸収特性はカバー有り無しで差は見られなかった。
実施例3で得たものと同様の、カバリング回転数が6,000回転/mのコイル状導電性糸条を1mmにカットし、ポリエチレンテレフタレート製長繊維不織布(Dan Webforming International A/S社製、エアレイド不織布)に混ぜ込んで、目付け250g/m2、厚さ1.2mm電波吸収体を作製した。このとき、導電性糸条と長繊維不織布の重量比は、10:90であった。この電波吸収体における電波入射方向背面側に、電波反射板としてアルミ板を配置した電波吸収構造体を製造した。この電波吸収構造体の電波吸収特性は、ホーンアンテナを用い、周波数1.0〜75GHzでアンリツ株式会社製ネットワークアナライザを用いた自由空間法により測定した。充分な電波吸収特性は得られなかったが、この理由はコイル状導電性糸条がポリエチレンテレフタレート製長繊維不織布に埋没しており、電波入射面にコイル状導電性糸条が接していないためと考えられる。結果を図7に示す。
Claims (8)
- 導電性糸条を芯糸にカバリングすることによってコイル状に形成され、該コイルの直径が25μm〜600μm、且つ長さが0.1〜100mmであるコイル状導電性糸条であって、芯糸が熱接着性モノフィラメントであり、また熱接着性モノフィラメントが芯鞘型ポリエステル系熱接着性モノフィラメントであり、さらにカバリング回転数が50〜10,000回/mであるコイル状導電性糸条を、基材に植毛することにより得られる電波吸収体。
- コイル状導電性糸条に加え、絶縁特性を持つ糸条が植毛されている請求項1に記載の電波吸収体。
- 植毛された糸条がランダムに配向している請求項1または2記載の電波吸収体。
- 植毛された導電性糸条の脱落防止のために、電波吸収体の表面にカバーを設けた請求項1〜3いずれかに記載の電波吸収体。
- コイル状導電性糸条の植毛の最大高さが、吸収させる最低周波数のλ/2である請求項1〜4いずれかに記載の電波吸収体。
- 請求項1〜5いずれかに記載の電波吸収体とその電波吸収体における電波入射方向背面側に設けられる電波反射体とを備えてなることを特徴とする電波吸収構造体。
- 請求項1〜5いずれかに記載の電波吸収体を複数枚積層した積層体と、その電波吸収体における電波入射方向背面側に設けられる電波反射体とを備えてなり、吸収する周波数帯域を制御することを可能としたことを特徴とする電波吸収構造体。
- 請求項1〜5いずれかに記載の電波吸収体と、その電波吸収体における電波入射方向背面側に設けられる電波反射体との間に空隙を設けることにより、吸収する周波数帯域を制御することを可能とした電波吸収構造体。
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